出向者給与の負担と寄附金課税|出向元・出向先の給与負担をどう整理するか

出向者の給与をめぐる税務判断で、いちばん危ういのは、途中で考えるのをやめてしまうことです。「給与なのだから人件費でよいはずだ」「グループ会社どうしなのだから、そこまで大きな問題にはならないだろう」「出向元が払っているのだから、出向元の費用でよい」。こうした整理で立ち止まってしまうと、大切な論点を見落とします。

出向者の給与は、誰が支払ったかだけでは判断できません。法人税務では、その出向者がどの法人のために働いているのか、その労務から利益を受けているのはどの法人か、そしてその給与を最終的にどの法人が負担すべきなのか。この三点を、一つずつ確認していく必要があります。

出向の実務では、直接支給・間接支給・双方支給という「支給形態」と、出向先の全額負担、出向元の全額負担、両者の共同負担という「負担形態」を、いったん切り分けて考えることが欠かせません。ここを混同すると、給与負担金、給与較差補填、寄附金、役員給与、源泉所得税、消費税といった判断が、次々と崩れていきます。

本記事では、「出向者給与の負担」と「寄附金課税」に焦点を当てます。社会保険や労働法上の出向手続、海外出向の細部、出向役員の役員給与、賞与・退職給与の負担調整といった論点にも関連する範囲では触れますが、あくまで中心に据えるのは、国内法人間の出向者給与を法人税の上でどう整理するか、という点です。

目次

出向者給与は「支払者」ではなく「負担すべき法人」から考える

出向者給与の税務判断では、まず次の問いを、それぞれ切り分けて確認することから始まります。

確認すべき問い税務上の意味
誰が給与を直接支払っているか源泉徴収、給与台帳、年末調整、資金流出の確認
誰が給与を最終的に負担しているか法人税上の損金算入、寄附金課税、法人間精算の確認
出向者はどちらの法人の業務に従事しているか給与負担の合理性、労務提供の帰属の確認
出向元との雇用関係は残っているか給与較差補填、出向元負担の合理性の確認
出向先で使用人か役員か使用人給与か役員給与かの確認
出向契約・負担合意はあるか税務調査で説明できる根拠の確認

法人税務では、実際に支払っている法人と、最終的に負担している法人とが異なること自体は、珍しくありません。出向元が給与を支払い、出向先が給与負担金を支払うこともあります。出向先が直接給与を支払い、出向元が一部を補填することもあります。出向元と出向先が、それぞれ一部ずつ支給することもあります。

問われるのは、その負担関係が、出向の実態、労務提供の内容、給与条件、出向契約、そして法人間の経済合理性と、きちんと整合しているかどうかです。

出向先が自己の負担すべき給与を負担する場合

出向者が出向先法人の業務に従事している場合、その労務提供に対応する給与は、基本的には出向先法人が負担すべきものとして整理されます。

法人税基本通達9-2-45では、出向元法人が出向者の給与を支給しているために、出向先法人が自己の負担すべき給与に相当する金額を出向元法人へ支出したときは、その給与負担金を、出向先法人における出向者への給与として取り扱うこととされています。そして、この取扱いは、実質的に給与負担金の性質を持つ金額を「経営指導料」などの名義で支出する場合にも及びます。
出典:国税庁|第9款 転籍、出向者に対する給与等

この取扱いのポイントは、名目ではなく実質を見る、という一点にあります。

たとえば、出向先が出向元へ毎月一定額を支払っているとします。その請求書の名目が「給与負担金」ではなく、「業務支援料」「管理指導料」「人材支援料」とされていたとしても、その中身が実質的に出向者の給与相当額の精算であれば、給与負担金として整理すべきです。

逆もまた然りです。給与負担金という名目にしていても、出向元の給与を超える金額を支払っている場合や、出向者の労務提供と対応しない金額を支払っている場合には、その超過部分を給与負担金として説明することはできません。国税庁のタックスアンサーでも、出向先法人が給与負担金として支出した金額が、出向元法人の支給する給与額を超えるときは、その超える部分に給与負担金としての性格はなく、合理的な理由がなく適正な金額の範囲内でもない場合には、出向元法人に対する寄附金として取り扱うこととされています。
出典:国税庁|No.5245 出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い

直接支給・間接支給・双方支給の違い

出向者給与の支給方法には、主に次のような形があります。

支給形態内容法人税上の見方
出向元が全額支給し、出向先へ請求出向者への給与支払は出向元、最終負担は出向先出向先の給与負担金として整理
出向先が直接支給出向者への給与支払も負担も出向先出向先の給与として整理
出向元・出向先がそれぞれ一部支給双方が給与の一部を支払う各支給部分の性格と負担理由を整理
出向元が較差補填部分を支給出向先給与と出向元給与条件との差額を出向元が支給出向元の給与較差補填として整理
出向先が出向元へ定額精算出向先が出向元に一定額を支払う金額の算定根拠と実態が重要

ここで大切なのは、支給方法の違いだけで結論を出さないことです。

法人税の上では、出向者が出向先の業務に従事し、出向先が自己の負担すべき給与に相当する金額を出向元へ支出しているのであれば、その金額は出向先法人の給与として扱われます。出向元が直接支給しているか、出向先が直接支給しているかは、実務処理の上では確かに重要ですが、負担の合理性そのものを決めるものではありません。

消費税についても、注意が必要です。国税庁は、出向において、雇用契約に基づく役務提供で支払対価が給与所得となる場合には課税仕入れに該当しないとしています。そのうえで、出向元が給与全額を支払って一部を出向先に請求する方法、出向先が給与全額を支払って一部を出向元に請求する方法、双方が一部ずつ支払う方法、そのいずれであっても、出向者に対して給与を支給したものとして取り扱い、給与負担金について消費税の課税関係は生じない、と説明しています。
出典:国税庁|No.6475 使用人の出向・人材派遣など

したがって、出向者給与の精算を請求書で行っているからといって、それを安易に課税仕入れとして処理してはいけません。人材派遣契約に基づく役務提供と、雇用関係を前提とした出向者給与の精算とは、消費税の上でも明確に区別する必要があります。

出向元が給与を全額負担する場合に問題となること

出向者が出向先で勤務しているにもかかわらず、出向元が給与を全額負担している。このような場合には、とりわけ慎重な検討が求められます。

出向元にその給与を負担する合理的な理由があるのなら、出向元側の損金として説明できる余地があります。たとえば、出向元の業務遂行上の必要性があり、出向者の教育・経験取得・将来の復帰を前提とした人材育成として説明できる場合。出向元の給与条件を維持するための較差補填として整理できる場合。あるいは、出向元との雇用関係維持に基づく処遇保障として説明できる場合などです。

しかし、出向先が実質的に労務提供を受け、その事業に利益が帰属しているにもかかわらず、出向元が合理的な理由もなく給与を負担している場合には、出向元から出向先への経済的利益の供与とみなされ、寄附金課税が問題になります。

ここでつまずきやすいのが、「グループ内なのだから、どちらが負担しても同じだろう」という考え方です。法人税は、原則として法人ごとに所得を計算します。グループ全体で見れば同じ資金の流出であっても、出向元法人と出向先法人との間では、損益の配分、資金の負担、所得の移転という問題が生じます。

出向元が全額を負担する場合には、少なくとも次の点を説明できる必要があります。

確認項目確認すべき内容
出向目的出向元の業務遂行、人材育成、グループ管理、再建支援などの目的
労務提供の実態実際に誰の指揮命令下で、どの法人の業務を行っているか
出向元負担の理由給与条件維持、較差補填、将来復帰、出向元業務への関連性
出向先の負担能力出向先が負担できない事情があるか
負担額の合理性出向元給与、出向先給与水準、同職位給与との比較
出向契約負担者、負担割合、出向期間、精算方法が明記されているか
社内承認稟議書、取締役会資料、出向命令等に判断過程が残っているか

「子会社支援だから」「親会社の方針だから」「赤字会社だから」といった説明だけでは、足りません。その支援が出向元自身の事業目的に沿うものなのか、それとも出向先に対する経済的利益の供与なのか、寄附金として整理すべきものなのか。ここを分けて考える必要があります。

給与較差補填は、出向元負担を正当化する重要な考え方

出向元が一定額を負担する場面で、最も重要になるのが給与較差補填です。

法人税基本通達9-2-47では、出向元法人が、出向先法人との給与条件の較差を補填するために出向者へ支給した給与の額は、出向先法人を経て支給した金額を含めて、出向元法人の損金の額に算入することとされています。あわせて、出向先法人が経営不振などで出向者に賞与を支給できないために出向元法人が賞与を支給する場合や、出向先法人が海外にあるために出向元法人が留守宅手当を支給する場合も、給与条件の較差補填として扱われます。
出典:国税庁|第9款 転籍、出向者に対する給与等

国税庁のタックスアンサーでも、出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するために出向者へ支給した給与は、出向期間中であっても、出向者と出向元法人との雇用契約が維持されていることから、出向元法人の損金に算入されると説明されています。
出典:国税庁|No.5241 出向者に対する給与の較差補てん金の取扱い

ただし、給与較差補填は、出向元が自由に負担してよい、という意味ではありません。

肝心なのは、「何との差額なのか」です。出向元の給与水準と出向先の給与水準との差なのか、国内勤務と海外勤務の処遇差なのか、あるいは出向元の雇用契約を維持するための処遇保障なのか。ここを明確にしておく必要があります。

較差補填として説明しやすいもの注意が必要なもの
出向元給与水準と出向先給与水準の差額出向先が本来負担すべき基本給を出向元が負担
出向元規程に基づく処遇保障出向契約に根拠のない定額補填
海外出向に伴う留守宅手当出向先業務の成果に対応する賞与を出向元が負担
出向先の経営不振等により支給困難な賞与出向先に負担能力があるのに親会社が肩代わり
出向元復帰を前提とした雇用条件維持子会社支援目的だけで出向元が全額負担

海外出向の場合も同じです。出向元による較差補填が合理的な範囲にとどまる限りは、出向元負担として説明し得ます。しかし、出向先である国外関連者に負担能力があるにもかかわらず、出向者の賞与を出向元が負担しているような場合には、較差補填とは認められにくい。そう整理しておく必要があります。

出向元・出向先が一部ずつ負担する場合の整理

実務では、出向者の給与を、出向元と出向先が一部ずつ負担することがあります。

この場合、負担割合が合理的であれば、それぞれの法人の損金として処理される方向で整理できます。しかし、負担割合が恣意的であったり、毎期変動しているのにその理由が記録として残っていなかったりすると、寄附金や給与負担金の過大・過少という問題が生じます。

一部負担の場合は、次のような考え方で整理しておくと、実務上、説明しやすくなります。

負担部分整理の考え方
出向先負担部分出向先の労務提供に対応する給与相当額
出向元負担部分出向元給与条件と出向先負担額との差額、処遇保障、較差補填
手当部分出向命令・赴任条件・就業規則・出向規程との整合性
賞与部分業績評価の帰属、出向先の支給能力、出向元規程との関係
役員相当部分出向先で役員となる場合は役員給与規制との関係

とりわけ、負担割合を「50%ずつ」「親会社が7割、子会社が3割」といった定率で決めている場合には、その割合の根拠が重要になります。給与水準、職務内容、出向目的、出向期間、出向先の給与規程、出向元の給与規程を踏まえて、きちんと説明できるようにしておく必要があります。

寄附金課税が問題になる基本構造

出向者給与の負担が寄附金課税の問題になるのは、本来は負担すべきでない法人が、他の法人のために経済的利益を負担していると見られる場合です。

国税庁は、法人税法上の寄附金について、名義を問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与、もしくは無償の供与をいう、と説明しています。あわせて、低額譲渡などのように、その差額が実質的な贈与等と認められる場合には、その差額をもって寄附金の額を計算するとされています。
出典:国税庁|No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算

出向者給与で寄附金課税が問題になる典型的な構造は、次のとおりです。

状況税務上の見方
出向先が労務提供を受けている出向先が給与を負担すべき基礎がある
出向元が合理的理由なく給与を負担している出向先への経済的利益供与の可能性
出向先が負担すべき給与を出向元が肩代わりしている出向元側で寄附金認定の可能性
出向先が出向元給与を超える金額を支払っている出向元への寄附金認定の可能性
負担額の根拠資料がない税務調査で説明困難

寄附金に該当した場合、一般の寄附金であれば、損金算入限度額の範囲内でのみ損金に算入され、限度額を超えた部分は損金不算入となります。さらに、完全支配関係がある法人への寄附金や、国外関連者への寄附金では、通常の一般寄附金とは異なる取扱いが問題になります。

100%グループ内でも油断できない

出向者給与の負担は、100%グループ内で行われることの多い論点です。

内国法人が、法人による完全支配関係のある他の内国法人に対して支出した寄附金のうち、法人税法25条の2第2項に規定する受贈益に対応するものは、その全額が損金に算入されません。国税庁のグループ法人税制に関する資料でも、法人による完全支配関係のある内国法人間の寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入と整理されています。
出典:国税庁|No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算
出典:国税庁|グループ法人税制の適用対象法人等の比較

このため、100%の内国法人グループでは、寄附金・受贈益が課税所得に直接与える影響が限定される場面があります。しかし、それは出向者給与の負担を自由にしてよい、という意味ではありません。

理由は三つあります。

第一に、完全支配関係の判定を誤ると、取扱いそのものが変わってしまいます。法人による完全支配関係か、個人による完全支配関係か、あるいは外国法人が関与する完全支配関係かによって、寄附金・受贈益の取扱いは異なります。

第二に、グループ法人税制の適用があっても、別表調整、株式簿価、寄附修正、利益積立金額の管理といった、申告実務上の整理は避けられません。

第三に、少数株主が存在する会社、兄弟会社、オーナー関係会社、海外子会社との間では、単純な100%内国法人グループの処理では整理しきれません。

ですから、「100%グループなのだから寄附金でも問題ない」と考えるのではなく、そもそも給与負担として説明できるのか、寄附金として認定される可能性があるのか、グループ法人税制の適用関係をどう処理するのか。これらを分けて検討すべきです。

出向先が負担しすぎる場合にも寄附金課税は起こり得る

出向者給与の寄附金課税というと、出向元が本来は出向先に負担させるべき給与を負担している場面を、つい思い浮かべがちです。

しかし、逆の方向もあります。

出向先が出向元へ給与負担金を支払う場合、その金額が出向元法人の支給する給与額を超えていたり、出向者の労務提供と対応しない金額を支払っていたりすれば、その超過部分を給与負担金として説明することはできません。

国税庁のタックスアンサーでも、出向先法人が給与負担金として支出した金額が、出向元法人の支給する給与の額を超える場合、その超過部分には給与負担金としての性格がなく、合理的な理由がなく適正な範囲内でもないときは、出向元法人に対する寄附金として取り扱うこととされています。

実務上、次のような処理には注意が必要です。

処理問題になりやすい理由
出向元給与を超える定額を請求している超過部分の性格を説明しにくい
経営指導料に給与相当額を上乗せしている給与負担金と役務提供対価の区分が曖昧
出向者の人数・職務と無関係に請求している労務提供との対応関係が弱い
出向期間終了後も同額を請求している出向実態との整合性がない
請求額の内訳がない税務調査で根拠を提示できない

給与負担金として処理するのであれば、出向者ごとの給与額、負担の対象期間、出向先での職務、負担割合、精算方法を、あらかじめ明確にしておく必要があります。

出向契約で必ず定めておくべき事項

出向者給与の負担関係を、後からでも説明できるようにしておくには、出向契約または出向協定の段階で、給与負担の前提を明確にしておくことが重要です。

少なくとも、次の事項は整理しておくべきでしょう。

契約・合意事項税務上の意味
出向期間給与負担対象期間、退職給与負担期間の確認
出向者の職務内容どの法人の業務に従事しているかの確認
指揮命令関係労務提供の帰属の確認
給与支給者源泉徴収、給与台帳、年末調整の確認
最終負担者法人税上の損金算入、寄附金認定リスクの確認
負担割合出向元・出向先の経済合理性の確認
較差補填の有無出向元負担の合理性の確認
賞与・手当の取扱い業績評価、支給義務、負担者の確認
精算方法請求書、精算書、会計処理との整合性
役員就任の有無役員給与規制への接続
海外出向の有無源泉、PE、移転価格、国外関連者寄附金への接続

出向契約は、労務管理のためだけに作るものではありません。法人税務の上では、給与負担の合理性を説明するための、中核となる資料です。

会計処理と法人税申告で注意すべき点

出向者給与の負担関係は、会計処理と法人税申告の両方で整合させる必要があります。

出向元が給与を支払い、出向先から給与負担金を受け取る場合、出向元では給与の支払と、給与負担金収入または給与費用の控除処理が生じます。出向先では、給与負担金を人件費または給与負担金として処理します。

ただし、会計処理の勘定科目名だけで、税務上の性格が決まるわけではありません。給与負担金として処理していても、実質が寄附金であれば税務調整が必要ですし、逆に、経営指導料として処理していても、その実質が給与負担金であれば、給与負担金として再整理すべきです。

法人税申告では、次の点を確認する必要があります。

確認項目内容
損金算入額給与負担金として合理的な範囲か
寄附金該当性本来負担すべきでない部分がないか
別表調整寄附金認定がある場合の損金不算入処理
完全支配関係グループ法人税制の適用有無
受贈益相手方法人側の益金・益金不算入処理
消費税区分課税仕入れにしていないか
源泉所得税実際の給与支払者の源泉処理が適切か
役員給与出向先で役員となる場合の決議・届出・定期同額性

ここでの目的は、単に税務調整を増やすことではありません。給与負担の実態と税務処理とを一致させ、後からでも説明できる申告書に仕上げることです。

税務調査で確認されやすい資料

出向者給与は、税務調査で確認されやすい論点です。

グループ会社間の取引であること、勘定科目だけでは実態が見えにくいこと、そして給与・寄附金・役務提供料・消費税・源泉所得税が交差すること。この三つが、その理由です。

税務調査では、次のような資料の提示を求められる可能性があります。

資料確認される内容
出向契約書・出向協定書出向期間、職務、負担者、負担割合
出向命令書・辞令出向の事実、開始日、終了予定
給与台帳支給額、支給者、源泉徴収
精算書・請求書法人間精算額、内訳、対象期間
出向元・出向先の給与規程給与較差補填の根拠
稟議書・取締役会資料出向目的、負担割合決定の背景
組織図・職務分掌出向者の業務内容、指揮命令関係
出向者の勤務実績出向先での実際の労務提供
グループ資本関係図完全支配関係、国外関連者該当性
消費税区分資料課税仕入れ処理の有無
源泉所得税資料源泉徴収義務者、年末調整、支払調書

なかでも重要なのは、負担割合を決めた時点の資料です。税務調査が行われる段になって後付けの説明を用意するのではなく、出向を始める時点で、なぜその法人がその金額を負担するのかを、記録として残しておく必要があります。

出向者給与の負担を検討するときの実務フロー

出向者給与を税務上整理していく際は、次の順番で検討すると、論点の漏れを防ぎやすくなります。

1. 出向か、派遣か、業務委託かを確認する

まず、人材移動の形式を確認します。出向であれば、出向元との雇用関係を維持しつつ、出向先でも雇用関係に基づいて勤務する形が前提となります。派遣や業務委託であれば、消費税や外注費・役務提供料の判断が変わってきます。

2. 出向者が誰の業務をしているかを確認する

次に、出向者が実際にどの法人の業務をしているのかを確認します。肩書や契約書だけでなく、指揮命令者、業務内容、成果の帰属、勤務場所、社内の承認経路まで確認します。

3. 給与の支給者と負担者を分ける

給与を誰が直接払っているかと、最終的に誰が負担しているかとを、分けて整理します。源泉所得税・給与台帳・資金移動と、法人税上の損金算入・寄附金判断とは、同じではありません。

4. 出向先負担額を算定する

出向先が労務提供を受けている部分について、出向先が負担すべき給与相当額を算定します。出向元給与、出向先給与水準、同職位給与、勤務期間、職務内容を踏まえて検討します。

5. 出向元負担部分を説明する

出向元が負担する部分がある場合には、それが給与較差補填なのか、出向元業務への関連性なのか、あるいは処遇保障なのかを、説明できるようにしておきます。

6. 寄附金該当性を確認する

本来は負担すべきでない法人が負担している部分がないかを、出向元・出向先の双方から確認します。完全支配関係、国外関連者、個人支配グループの有無もあわせて確認します。

7. 出向契約・精算資料・申告処理を整合させる

最後に、出向契約、給与台帳、請求書、会計処理、法人税申告、消費税区分、源泉所得税処理が、たがいに整合しているかを確認します。

出向者給与の判断を誤ると何が起きるか

出向者給与の負担関係を誤ると、単に勘定科目の修正だけでは終わらないことがあります。

誤り起こり得る影響
出向元が合理的理由なく給与を負担出向元で寄附金認定、損金不算入
出向先が過大な給与負担金を支出出向元への寄附金認定
給与負担金を課税仕入れ処理消費税の仕入税額控除誤り
出向先役員の給与負担金を通常給与として処理役員給与の損金算入要件不備
出向契約がない負担関係の説明困難
較差補填の根拠がない出向元負担の合理性を説明できない
グループ法人税制の判定を誤る別表調整、受贈益、株式簿価管理の誤り
海外出向を国内出向と同じ感覚で処理国外関連者寄附金、移転価格、源泉、PEリスク

出向者給与は、金額が大きくなりやすく、複数の期にまたがることも多い論点です。処理の誤りが続くと、税務調査で複数の事業年度にわたって指摘される可能性があります。

出向者給与は、節税ではなく説明可能性で設計する

出向者給与の負担関係を検討するときに大切なのは、どちらの法人で損金にしたほうが有利か、という発想だけで決めないことです。

もちろん、税負担への影響は重要です。しかし、出向者給与は、給与の支払、法人間の精算、寄附金、源泉所得税、消費税、グループ法人税制、そして海外出向の場合の移転価格にまでつながっていく論点です。短期的には税負担が軽く見える処理であっても、実態と契約が伴っていなければ、後から説明のできない処理になってしまいます。

出向者給与の負担を決める際には、次の順番で考えるべきです。

優先順位判断軸
1出向者がどの法人のために働いているか
2その労務提供の利益をどの法人が受けているか
3その給与をどの法人が負担すべきか
4出向元が負担する部分に較差補填等の理由があるか
5負担額が給与水準・職務内容・出向期間と整合するか
6出向契約・給与台帳・精算書・会計処理が一致しているか
7税務調査で第三者に説明できるか

この順番を守ることで、単なる「税務上の処理」ではなく、会社の意思決定として説明できる出向者給与の設計になります。

専門家へ相談する前に整理しておくべき資料

出向者給与の負担関係についてご相談いただく場合、次の資料を準備しておくと、論点の整理が進みやすくなります。

資料内容
出向契約書・出向協定書出向期間、職務、負担割合、給与支給方法
出向命令書・辞令出向開始日、終了予定、勤務地
出向元・出向先の給与規程給与水準、賞与、手当、較差補填の根拠
給与台帳実際の支給額、支給者、源泉徴収
法人間の請求書・精算書精算額、対象期間、計算根拠
勤務実績・職務分掌出向先での業務内容、指揮命令関係
組織図・資本関係図グループ法人税制、国外関連者判定
稟議書・議事録出向目的、負担決定の経緯
会計仕訳・総勘定元帳勘定科目、消費税区分、収益・費用処理
法人税申告書別表寄附金、グループ法人税制、税務調整の確認

これらの資料が揃っていれば、出向先が負担すべき給与なのか、出向元の較差補填なのか、寄附金課税が問題になる部分があるのかを、具体的に検討できます。

出向者給与の負担は、グループ経営の税務設計である

出向者給与は、人事異動にともなう給与処理ではありません。

出向者がどの法人で働くかは、グループ内の機能配置そのものです。給与をどの法人が負担するかは、法人間の損益配分にほかなりません。

出向元が負担する部分は、給与較差補填なのか、子会社支援なのか、それとも寄附金なのかを説明する必要があります。出向先が負担しすぎる場合には、出向元への寄附金という、逆方向の問題も起こり得ます。

100%グループ内であっても、グループ法人税制、別表調整、株式簿価、そして将来の再編・M&Aへの影響を、無視することはできません。

出向者給与の負担関係に不安がある場合、決算の直前に勘定科目を見直すだけでは十分ではありません。出向を始める時、出向契約を締結する時、負担割合を決める時、給与を改定する時、出向先の役員に就任する時。それぞれの節目で、税務上の検討を行っておくことが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人税申告にとどまらず、グループ会社間取引、出向者給与、給与負担金、寄附金課税、役員給与、組織再編、M&A、そして国際税務までを踏まえ、後からでも説明できる税務判断の整理をご支援しています。出向者給与の負担割合や精算方法にご不安がある場合は、出向契約書、給与台帳、精算資料、資本関係図を整理していただいたうえで、お問い合わせページよりご相談ください。

重要事項の振り返り

論点確認すべきこと実務上の注意点
出向者給与の基本誰が支払ったかではなく、誰が負担すべきか支給者と負担者を分けて整理する
出向先負担出向先が労務提供を受けているか自己の負担すべき給与相当額か確認する
給与負担金出向元が支給し、出向先が精算する金額名目ではなく実質で判断する
給与較差補填出向元と出向先の給与条件の差差額の根拠を規程・契約で示す
出向元全額負担出向元が負担する合理的理由理由が弱いと寄附金課税の可能性
出向先過大負担出向元給与を超える負担金超過部分は出向元への寄附金となり得る
寄附金課税経済的利益の無償供与があるか一般寄附金、完全支配関係、国外関連者を区分
100%グループ法人による完全支配関係か損金不算入・益金不算入だけでなく別表管理が必要
消費税給与負担金を課税仕入れにしていないか出向と人材派遣を混同しない
出向契約期間、職務、負担割合、精算方法税務調査で説明できる資料にする

主な出典

出典:国税庁|第9款 転籍、出向者に対する給与等
出典:国税庁|No.5241 出向者に対する給与の較差補てん金の取扱い
出典:国税庁|No.5245 出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い
出典:国税庁|No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算
出典:国税庁|No.6475 使用人の出向・人材派遣など
出典:国税庁|グループ法人税制の適用対象法人等の比較

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