事業承継・相続対策|会社・株式・財産を次の世代へどう引き継ぐか

事業承継・相続対策とは、会社、株式、事業用資産、そして個人の財産を、次の世代へどのように引き継いでいくかを考える領域です。

ご相談の入口は、たとえば次のような形で寄せられます。

  • 相続税を少しでも減らしたい
  • 自社株を後継者に移したい
  • 事業承継税制が使えるかどうか知りたい
  • 生前贈与を進めるべきか迷っている
  • 遺産分割で家族が揉めないようにしたい
  • 後継者はいるが、株式や借入、納税資金の整理まで手が回っていない
  • 後継者が不在のため、親族外への承継やM&Aも含めて考えたい

こうしたご相談は、入口こそ税金の話に見えても、実際には税金だけで終わることはほとんどありません。

後継者は誰なのか。株主構成はどうなっているのか。会社の資金繰りは承継後も回っていくのか。相続人の間で納得できる分け方になっているのか。非上場株式や不動産をどう評価するのか。納税資金をどこから確保するのか。承継後に会社を続けていくのか、それとも将来の売却という選択肢も残しておくのか。

このように、事業承継と相続は、会社と家族、経営と財産、税務と法務が幾重にも重なり合う領域です。

このページでは、事業承継税制と相続・贈与を、ばらばらの制度説明としてではなく、次の世代へ会社と財産を引き継ぐための一続きのテーマとしてご案内します。

読み進める順番シリーズ主なテーマ
1事業承継税制自社株、事業用資産、法人版・個人版事業承継税制、特例承継計画、認定申請、承継後の管理
2相続・贈与相続税、贈与税、財産評価、遺言、遺産分割、納税資金、二次相続、申告後のリスク

大切なのは、税額だけではありません

事業承継や相続対策を考えるとき、どうしても「税金がいくらになるのか」に目が向きがちです。

もちろん、税負担の見通しは重要です。相続税や贈与税の負担が重ければ、後継者や相続人の資金繰りに直接影響します。非上場株式や不動産の評価額が大きい場合には、納税資金をどう確保するかが、そのまま現実的な問題になります。

ただ、税額だけを先に見てしまうと、かえって判断を誤ることがあります。

  • 税負担を抑えるために株式を移したものの、後継者としての体制が整っていなかった
  • 相続税対策として贈与を進めたものの、家族の納得が得られていなかった
  • 事業承継税制を使ったものの、承継後の継続管理や取消リスクを十分に理解していなかった
  • 会社の承継を考えていたが、実は後継者が不在で、第三者承継やM&Aも検討すべき状況だった
  • 相続税は下がったものの、納税資金や二次相続、将来の不動産売却まで見通せていなかった

事業承継・相続対策で本当に大切なのは、税額、家族、経営、財産、資金、そして将来の選択肢を、一つの流れとして整理していくことだと考えています。

まず読むべきシリーズ

事業承継税制|自社株・事業用資産の承継と税務判断

事業承継税制シリーズでは、法人版事業承継税制、個人版事業承継税制、自社株評価、事業用資産、特例承継計画、認定申請、贈与・相続による承継、納税猶予、取消リスク、そして承継後の管理までを整理していきます。

事業承継税制は、単なる節税制度ではありません。後継者が一定の株式や事業用資産を取得した場合に、贈与税や相続税の納税を猶予し、一定の場合には免除へとつながる制度です。

ただし、非課税制度ではない点に注意が必要です。要件を外れてしまった場合には、猶予されていた税額を納付しなければならないことがあります。

だからこそ、制度を使えるかどうかだけでなく、そもそも使うべきかどうかを慎重に見極める必要があります。

このような方へ読むべき理由
自社株を後継者へ移したい法人版事業承継税制の対象会社、先代経営者、後継者、株式要件を整理できます
事業承継税制の特例措置を検討している特例承継計画、認定申請、贈与・相続時の申告、担保提供、期限管理を確認できます
生前贈与か相続承継かで迷っている税額だけでなく、経営権、後継者体制、家族関係、将来の選択肢を比較できます
個人事業を引き継ぎたい個人版事業承継税制、事業用資産、青色申告、事業継続要件を確認できます
制度適用後のリスクが不安継続届出、取消事由、組織再編、廃業、売却時の影響を整理できます

法人版事業承継税制の特例措置については、2026年7月時点で、特例承継計画を令和9年9月30日までに提出し、令和9年12月31日までに贈与・相続等による株式取得を行う、という制度設計が示されています。制度の期限や手続は、改正や延長によって変わる可能性がありますので、検討される時点での最新情報をご確認ください。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)
出典:国税庁|事業承継税制特集

事業承継税制シリーズは、「制度を使えるか知りたい」という入口から、「自社にとって使うべきかを判断する」という段階へと進んでいただくためのシリーズです。

相続・贈与は、節税策ではなく意思決定として

相続・贈与|個人資産の承継と相続税対策・申告実務

相続・贈与シリーズでは、相続発生前の準備、生前贈与、遺言、認知症対策、相続人・相続財産の確定、遺産分割、相続税の計算、財産評価、不動産評価、小規模宅地等、非上場株式、生命保険、納税資金、相続税申告、税務調査、二次相続までを整理していきます。

相続対策というと、生前贈与や不動産活用、生命保険、養子縁組といった、個別の方法論が先に出てくることがあります。けれども、相続対策で最初に確認すべきなのは、手法そのものではありません。

誰に、何を、どのように残したいのか。相続人は誰か。財産はどこに、どのような形であるのか。分けにくい財産はないか。納税資金は足りるのか。二次相続まで見据えたときに、家族全体として無理のない形になっているか。そして、税務調査で説明できる資料がきちんと残っているか。

ここが整理されないまま節税策だけを進めてしまうと、税額は下がっても、家族間の争い、納税資金の不足、申告後の修正、財産処分時の税負担といった、別の問題が生じることがあります。

このような方へ読むべき理由
相続対策で何から始めればよいか分からない家族、財産、税金、手続、納税資金を整理する順番を確認できます
生前贈与を進めたい暦年贈与、相続時精算課税、名義財産、みなし贈与、将来の相続財産加算を整理できます
遺言や遺産分割で悩んでいる税額だけでなく、家族の納得、遺留分、代償分割、換価分割を確認できます
不動産や非上場株式がある財産評価、評価根拠、資料収集、税務調査で問われやすい点を整理できます
相続税申告が必要か知りたい相続人、課税財産、基礎控除、特例、申告期限、必要資料を確認できます

相続・贈与シリーズは、「税金がかかるかどうか不安」という段階から、「家族と財産をどう引き継ぐかを整理する」という段階へ進んでいただくためのシリーズです。

この領域を読む、おすすめの順番

事業承継と相続は、どちらから読んでいただいても構いません。

ただ、オーナー経営者や後継者の方であれば、次の順番で読み進めると整理しやすくなります。

順番読むシリーズ理由
1事業承継税制会社、株式、後継者、経営権、制度適用の全体像を押さえる
2相続・贈与家族、個人財産、遺産分割、相続税申告、納税資金を整理する

会社を経営されている方は、まず「事業承継税制」シリーズから読むと、自社株や経営権の移転を整理しやすくなります。

一方で、事業用資産よりも個人財産、不動産、預貯金、生命保険、相続税申告についての不安が大きい場合は、「相続・贈与」シリーズから読み始めていただいても構いません。

もっとも、実際にはこの二つを切り離して考えることはできません。

オーナー経営者にとって、自社株は会社の問題であると同時に、相続財産でもあります。後継者に株式を集めることは経営権の問題であり、同時にほかの相続人との公平感にもかかわってきます。会社の借入や個人保証、役員退職金、生命保険、納税資金、不動産の使い方も、承継と相続の両方に影響します。

そのため、最終的には両方のシリーズを行き来しながら、自社とご家族の状況に当てはめて考えていくことが大切になります。

事業承継・相続対策でよくあるお悩み

お悩みまず確認したいこと関連シリーズ
後継者に自社株を移したい株主構成、議決権、後継者要件、自社株評価、納税猶予の可否事業承継税制
事業承継税制を使うべきか迷っている税額効果、継続要件、取消リスク、承継後の経営方針、将来のM&A可能性事業承継税制
生前贈与か相続まで待つか迷っている後継者の準備状況、家族関係、株価、納税資金、将来の経営体制事業承継税制/相続・贈与
相続税がいくらかかるか不安相続人、財産一覧、債務、評価額、特例適用、納税資金相続・贈与
家族で揉めない分け方を考えたい遺言、遺産分割、遺留分、代償金、生命保険、分けにくい財産相続・贈与
不動産や非上場株式の評価が分からない評価単位、利用状況、資料、通達評価、評価根拠、税務調査対応相続・贈与
後継者がいない親族内承継、従業員承継、第三者承継、M&A、廃業時の影響事業承継税制/M&A・企業価値評価
認知症や判断能力の低下が心配財産管理、任意後見、家族信託、遺言、生前贈与の時期相続・贈与
納税資金が足りるか不安現預金、生命保険、延納、物納、不動産売却、会社からの資金移動相続・贈与
将来のM&Aも視野に入れたい株式集中、財務内容、税務リスク、承継後の選択肢事業承継税制/M&A・企業価値評価

事業承継税制を考えるときの注意点

事業承継税制は、税負担の面で大きな効果を持つ可能性のある制度です。

ただし、その効果だけを見て判断してしまうのは危険です。

制度を使う前には、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。

確認することなぜ重要か
後継者は本当に決まっているか税制上の後継者と、実際に経営できる後継者は、同じとは限らないため
株主構成は整理されているか株式が分散していると、経営権や議決権の安定に影響するため
自社株評価を把握しているか税額効果や制度適用の必要性を判断できないため
承継後も事業を続ける見通しがあるか制度適用後の継続管理や取消リスクにかかわるため
相続人間の公平感を考えているか後継者に株式を集中させると、他の相続人との調整が必要になるため
将来の売却・M&Aの可能性をどう考えるか制度の適用後に出口を変更すると、納税猶予への影響を確認する必要があるため
専門家の役割分担は明確か税務、会社法、相続法務、登記、金融機関対応が重なるため

事業承継税制は、「使えば安心」という制度ではありません。使う前の設計、使うときの手続、そして使った後の管理まで含めて考えるべき制度だと捉えています。

相続・贈与を考えるときの注意点

相続・贈与では、節税策そのものよりも、前提の整理が重要になります。

  • 財産一覧が不十分なまま対策を進めてしまう
  • 相続人の関係を確認せずに贈与を進めてしまう
  • 不動産や非上場株式の評価を、概算のまま判断してしまう
  • 名義預金や過去の贈与の証拠を確認しないまま進めてしまう
  • 二次相続を見ないまま、一次相続だけで分割を決めてしまう
  • 相続税の納税資金を考えずに、財産を分けてしまう

こうした進め方をしてしまうと、相続が発生した後に、もう一度整理し直すことになりかねません。

特に生前贈与は、制度改正の影響を受けやすい領域です。令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与については、相続税の課税価格に加算される期間が段階的に見直されています。贈与を検討される場合は、贈与を行う時点だけでなく、将来の相続税計算への影響までを確認しておく必要があります。

出典:国税庁|No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続対策は、早く始めるほど選択肢が広がります。ただし、早く始めることと、急いで手法を決めることは違います。まずは、家族、財産、税金、納税資金、そして将来の希望を、見える状態にしておくことが大切です。

承継と相続は、会社の未来を考える時間でもあります

事業承継や相続対策は、どうしても重いテーマです。

親子では話しにくい。兄弟姉妹の間で公平感を保つのが難しい。後継者がなかなか決まらない。会社の将来を考えると、現実を直視しづらい。相続税の話をしようとすると、結局は財産の分け方の話になってしまう——。

だからこそ、早い段階で数字と事実を整理しておくことに、大きな意味があります。

会社の株式はいくらなのか。会社にはどのくらいの借入があるのか。後継者が引き継ぐものは何か。後継者以外の相続人には、どのような財産を残せるのか。納税資金はどこから出すのか。会社を続ける場合と、将来売却する場合とで、準備はどう変わってくるのか。

こうした情報が見えてくると、家族で話し合うべきこと、専門家に確認すべきこと、そして今すぐ決めなくてもよいことが、少しずつ分かれてきます。

数字は、家族の思いを否定するためのものではありません。会社や財産を次の世代へ引き継ぐために、話し合いの前提を整えるためのものです。

ご相談の前に整理しておきたいこと

事業承継・相続対策についてご相談いただく前に、完璧な資料をそろえていただく必要はありません。

ただ、次のような情報があると、論点を整理しやすくなります。

分野あるとよい資料・情報
会社の承継決算書、申告書、株主名簿、定款、登記簿謄本、役員構成、借入一覧、事業計画
自社株株主構成、過去の株式移動、株価試算資料、配当実績、類似業種比準価額の計算資料
後継者後継者候補、親族関係、役員就任状況、経営への関与状況、将来の承継時期
事業承継税制特例承継計画の有無、認定申請状況、贈与・相続の予定時期、継続届出の管理状況
個人財産預貯金、不動産、有価証券、生命保険、借入、保証債務、過去の贈与
相続関係家族構成、推定相続人、遺言の有無、相続人間の関係、分けにくい財産
納税資金現預金、生命保険、売却可能資産、会社からの退職金・配当の可能性
共通何を引き継ぎたいか、誰に引き継ぎたいか、いつまでに決めたいか

分からない部分があっても問題ありません。

大切なのは、「何を決める必要があるのか」「どの資料があり、どの資料が足りないのか」「税務だけでなく、家族や会社の論点として何が残っているのか」を、見える状態にしておくことです。

情報の時点について

本ページは、事業承継税制および相続・贈与に関する各シリーズへの入口としてご用意しています。制度の期限、適用要件、税額計算、財産評価、相続税・贈与税の改正事項は、法令改正や個別の事情によって結論が変わることがあります。

事業承継税制の計画提出期限、認定申請、贈与・相続の実行期限、相続時精算課税、暦年課税贈与の加算期間、相続登記、各種特例については、検討される時点での最新情報をご確認ください。

まとめ

ポイント内容
事業承継・相続対策の本質税額だけでなく、会社、株式、財産、家族、資金、将来の選択肢を整理すること
事業承継税制自社株・事業用資産の承継について、納税猶予・免除、手続、承継後管理を確認する
相続・贈与生前対策、遺言、遺産分割、財産評価、納税資金、相続税申告を一体で考える
注意点税制を使えるかだけでなく、使うべきか、続けられるか、家族に説明できるかを見る
相談前の準備会社資料、株主構成、財産一覧、家族関係、納税資金、承継の希望を整理する
全体の考え方守りを仕組みにし、会社と財産を、次の世代へ説明できる形で引き継ぐ

ご相談について

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継や相続対策を、単なる節税策や申告手続としてではなく、会社と財産を次の世代へ引き継ぐための意思決定として捉えています。

  • 自社株を後継者へ移したい
  • 事業承継税制を使うべきか判断したい
  • 相続税や贈与税の負担を見通したい
  • 家族で揉めない分け方を考えたい
  • 会社の承継と個人財産の相続を、一体で整理したい
  • 将来のM&Aや親族外承継も含めて、選択肢を残しておきたい

このようなお悩みがありましたら、まずは現在のご状況をお聞かせください。

個別の判断は、会社の状況、株主構成、財産の内容、相続人の関係、過去の贈与、そして制度の最新情報によって変わってきます。本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、具体的な税額、制度適用、税務上の取扱い、承継の結果を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては、最新の情報と個別の事情を確認したうえでご検討ください。