海外子会社配当と法人税申告

海外子会社から日本の親会社へ配当を戻す場面では、「配当金を受け取った」「海外で源泉税を差し引かれた」という会計処理だけでは足りません。

法人税申告にあたっては、その配当について、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。

確認すべき論点実務上の意味
その外国法人は「外国子会社」に該当するか外国子会社配当益金不算入制度を使えるかを左右する
配当のうち何%が益金不算入になるか原則として配当額の95%が益金不算入、5%が課税所得に残る
外国で差し引かれた源泉税をどう扱うか外国税額控除できるのか、損金算入できるのかを判定する
外国子会社合算税制との関係はないかすでに日本で合算課税された所得からの配当かを確認する
どの別表・資料が必要か申告書上の適用要件と税務調査時の説明力に直結する

海外子会社配当は、国際税務のなかでも「制度を知っているかどうか」で税負担が大きく変わる論点です。ただし、制度を当てはめることだけに意識が向くと、外国源泉税、CFC税制、租税条約、配当原資、会計処理、グループ通算制度との関係を見落としてしまいます。

本稿では、海外子会社から配当を受けた場合の法人税申告について、外国子会社配当益金不算入制度を中心に据えながら、源泉税、外国税額控除、CFC税制との接点、別表や資料保存までを、実務判断の流れに沿って整理します。

なお、本稿は2026年6月時点で公表されている法令・国税庁情報を前提としています。実際の申告では、対象事業年度、租税条約、現地税制、グループ通算制度の有無、外国子会社合算税制の判定結果によって取扱いが変わりますので、個別の確認が欠かせません。

目次

海外子会社配当は、なぜ法人税申告で重要論点になるのか

海外子会社配当は、日本の親会社にとって、海外で稼いだ利益を日本へ還流させるための手段です。

海外子会社の利益は、通常、その子会社の所在地国ですでに法人税の課税を受けています。この利益を日本の親会社へ配当すると、今度は配当支払国で源泉税が課されることがあります。さらに、日本でその配当をそのまま益金算入してしまえば、同じ利益に対して複数の段階で課税が重なることになります。

こうした重複を避けるため、日本の法人税法では、一定の外国子会社から受ける配当等について、一定額を益金不算入とする制度を設けています。これが「外国子会社配当益金不算入制度」です。

外国子会社配当益金不算入制度は、内国法人が外国子会社から受ける配当等について、一定額を益金の額に算入しない仕組みを定めたものです。出典:e-Gov法令検索|法人税法

この制度は、海外で稼いだ利益を日本へ還流させる動きを妨げないという点で、大きな意味を持ちます。ただし、「海外子会社からの配当だから、ほとんど税金はかからない」と単純に受け止めるのは危険です。持株割合、保有期間、配当の種類、外国源泉税、CFC税制との関係を確認しないまま処理すれば、申告誤りや税務調査での指摘につながりかねません。

まず押さえておきたい全体像

海外子会社から配当を受けたときの法人税申告は、次の順番で整理していくとわかりやすくなります。

検討順序確認すること
1配当を支払った外国法人が、法人税法上の「外国子会社」に該当するか
2受けた金額が、剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、みなし配当等に該当するか
3外国子会社配当益金不算入制度の対象外となる配当ではないか
4配当総額、外国源泉税、入金額を区分して会計処理しているか
5外国源泉税について、外国税額控除・損金算入・損金不算入のいずれになるか
6CFC税制で過去に日本で合算課税された所得からの配当ではないか
7別表八(二)、別表六、別表十七関係など必要な申告書類を確認する
8配当決議書、送金明細、源泉税証明、株主名簿、現地申告資料を保存する

実務上、最初につまずきやすいのは、「入金額」だけで処理を進めてしまうことです。

たとえば、海外子会社が100の配当を決議し、現地で10の源泉税が差し引かれ、日本の親会社に90が入金されたとします。このとき、税務判断の出発点は入金額の90ではありません。原則として、配当総額100、外国源泉税10、実入金90を分けて確認することが必要になります。

外国子会社に該当するための基本要件

外国子会社配当益金不算入制度は、すべての外国法人からの配当に使えるわけではありません。

基本的には、日本の内国法人が、その外国法人の株式等を一定割合以上保有し、その状態が一定期間続いていることが前提となります。

外国子会社配当益金不算入制度は、内国法人の外国法人に対する保有割合が25%以上であり、かつ、その状態が剰余金の配当等の支払義務確定日以前6月以上継続している外国法人から受ける配当等について、配当額から5%相当額を控除した金額を益金不算入とする制度です。出典:国税庁|第1 法人税基本通達関係

整理すると、通常の基本要件は次のとおりです。

要件確認内容
外国法人であること日本に本店または主たる事務所を有しない法人か
持株割合原則として発行済株式等または議決権の25%以上を保有しているか
保有期間配当等の支払義務確定日以前6月以上、その状態が継続しているか
配当の性質剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、一定のみなし配当等か
除外対象損金算入配当、一定の自己株式取得予定に係るみなし配当等に該当しないか

ここで大切なのは、持株割合だけを見て判断しないことです。

25%以上を保有していても、保有期間が足りなければ制度は適用できません。反対に、租税条約によって、25%より低い保有割合でも外国子会社に該当する場合があります。とくに米国、オーストラリア、オランダなど、租税条約上の二重課税排除条項で保有割合が軽減されている国については、国内法だけで判断せず、条約の確認が欠かせません。

通算法人が外国法人から配当を受ける場合は、原則として通算グループ全体で保有する外国法人株式の保有割合が25%以上かどうかで判定します。また、通算グループ全体では25%未満であっても、租税条約締約国の居住者である外国法人について、通算法人単独の保有割合が租税条約の二重課税排除条項で軽減された割合以上であれば、外国子会社に該当し得るとされています。出典:国税庁|外国子会社から受ける配当等の益金不算入規定の適用がある外国子会社の判定

益金不算入になるのは、原則として配当額の95%

外国子会社配当益金不算入制度は、配当額の全額を益金不算入にする制度ではありません。基本は、配当額の95%を益金不算入とし、残りの5%を課税所得に残す仕組みです。

この5%は、配当に係る費用相当額として扱われるものです。実際に5%の費用が発生しているかどうかを個別に積み上げるのではなく、通常は制度上の費用相当額として整理されます。

たとえば、外国子会社から配当100を受けた場合の基本イメージは、次のとおりです。

項目金額
外国子会社からの配当総額100
益金不算入額95
日本で課税所得に残る部分5

この制度は、日本の親会社の法人税負担を大きく左右します。海外子会社の利益を配当で還流させるのか、現地に留保して再投資するのか、あるいはロイヤリティやマネジメントフィーとして回収するのか。こうした資金政策の選択にも影響してきます。

ただし、95%益金不算入という効果だけを見るのは禁物です。外国源泉税が損金算入できない場合があるため、現地の源泉税率が高い国からの配当では、手取り額への影響がなお残ります。

外国源泉税は「外国税額控除できる」とは限らない

海外子会社から配当を受けると、配当支払国で源泉税が差し引かれることがあります。

このとき多いのが、「海外で税金を取られたのだから、日本で外国税額控除できるはずだ」という誤解です。

外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当に係る外国源泉税については、原則として外国税額控除の対象にならず、さらに損金算入も制限されます。外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける剰余金の配当等に対して課される外国源泉税等の額は、損金不算入とされています。出典:国税庁|第1 法人税基本通達関係

基本的な整理は、次のとおりです。

配当の区分配当本体の日本側処理外国源泉税の基本処理
外国子会社配当益金不算入の対象となる通常の配当原則95%益金不算入原則として外国税額控除不可、損金不算入
外国子会社に該当しない外国法人からの配当原則益金算入外国税額控除または損金算入を別途検討
損金算入配当等として益金不算入対象から除外される部分原則益金算入または実額法により区分対応する外国源泉税は外国税額控除対象となる場合がある
CFCで課税済みの所得からの配当特定課税対象金額等との対応を確認源泉税の損金・控除関係を別途確認

実務では、外国源泉税について次の順番で確認していきます。

  1. 配当支払国で何%の源泉税が課されたか
  2. 租税条約により軽減税率・免税が使えたか
  3. 条約手続を失念して高い税率で源泉徴収されていないか
  4. その外国源泉税が、外国子会社配当益金不算入の対象配当に対応するものか
  5. 損金算入配当等、制度対象外部分に対応する源泉税がないか
  6. 外国税額控除の別表六関係に反映すべきものか
  7. 損金不算入として別表四調整すべきものか

とくに注意したいのが、配当支払国で租税条約の軽減税率を適用するための届出・居住者証明書等が必要になるケースです。日本側で配当を受ける立場であっても、現地側の手続確認を怠ると、過大な源泉税が差し引かれ、後から還付を求めるのに時間を要することがあります。

日本で非居住者等が租税条約に基づく源泉税の軽減・免除を受ける場合には、租税条約に関する届出書、特典条項に関する付表、居住者証明書等が問題になります。海外子会社から日本の親会社への配当では、確認すべきは相手国側の制度ですが、日本側で求められる手続の構造を理解しておくことは、海外側の手続を整理するうえでも参考になります。出典:国税庁|No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)

損金算入配当等は、通常の配当と扱いが変わる

近年の国際税務で重要になっているのが、いわゆるハイブリッド・ミスマッチへの対応です。

外国子会社の所在地国では、その配当の全部または一部が、子会社側の所得計算上、損金算入される場合があります。たとえば、法形式のうえでは配当に見えても、現地税制では支払利子に近い処理がされ、子会社側で損金算入されるようなケースです。

このとき、日本側でその配当を95%益金不算入としてしまうと、外国側では損金算入、日本側では益金不算入という組合せになり、二重非課税に近い結果が生じます。そこで法人税法では、一定の損金算入配当等を外国子会社配当益金不算入制度の対象から除外する仕組みが設けられています。

平成27年度税制改正では、外国子会社の本店所在地国の法令でその外国子会社の所得計算上損金算入される剰余金の配当等の額が、益金不算入の対象から除外されました。あわせて、その除外された配当等に係る外国源泉税等が外国税額控除の対象とされています。出典:国税庁|外国税額の控除 改正の概要

この論点で確認しておきたい資料は、次のとおりです。

確認資料確認目的
現地税務申告書配当支払額が子会社側で損金算入されていないか
現地税制上の配当・利子区分ハイブリッド金融商品に該当しないか
優先株式・償還株式等の契約税務上、配当か利子かを確認する
現地税務アドバイス損金算入配当等に該当するか確認する
日本側申告別表実額法・外国税額控除・損金不算入調整の整合性を確認する

ここでも、「配当」という名称だけで判断しないことが大切です。現地では損金、日本では益金不算入という組合せになっていないかを、丁寧に確認する必要があります。

みなし配当・自己株式取得・資本払戻しにも注意する

海外子会社からの資金還流は、通常の剰余金配当だけとは限りません。

たとえば、海外子会社が自己株式を取得したとき、資本払戻しを行ったとき、清算分配を行ったときには、日本側でみなし配当や株式譲渡損益が問題になることがあります。

みなし配当は、会社法上の配当ではないものの、実質的には配当と変わらないため、租税法上は配当とみなす制度です。合併、分割型分割、株式分配、資本払戻し、解散による残余財産分配、自己株式取得などが、その発生場面にあたります。

海外子会社から日本の親会社への資金移動については、次の区分を必ず確認しておきます。

資金移動の形日本側で確認する論点
通常の剰余金配当外国子会社配当益金不算入、源泉税
自己株式取得みなし配当、株式譲渡損益、制度除外対象
資本払戻し資本金等の額、利益積立金、みなし配当
清算分配みなし配当、株式譲渡損益、残余財産確定
グループ再編に伴う分配組織再編税制、適格性、株主課税
CFC課税済所得からの配当課税済所得との二重課税調整

配当決議書や送金明細だけでは、「何の分配なのか」が判然としないことがあります。そのため、現地の会社法上の手続、株主総会・取締役会の決議、資本勘定の動き、現地税務申告書までさかのぼって確認することが必要です。

外国子会社合算税制との接点

海外子会社配当では、外国子会社合算税制、いわゆるCFC税制との関係を確認しておく必要があります。

外国子会社合算税制は、一定の外国関係会社の所得を、日本の親会社の所得に合算して課税する制度です。租税特別措置法66条の6から66条の9までに定められた「内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例」がこれにあたります。

ここで重要なのは、外国子会社配当益金不算入制度における「外国子会社」と、外国子会社合算税制における「外国関係会社」は、同じ概念ではないという点です。

制度主な判定単位注意点
外国子会社配当益金不算入制度配当を支払う外国法人が外国子会社か原則25%以上・6月以上の保有
外国子会社合算税制外国関係会社に該当し、合算対象となる所得があるか原則50%超保有や実質支配、租税負担割合、経済活動基準等を確認
外国税額控除外国で課された税が控除対象か配当益金不算入との関係で対象外となることがある

CFC税制で過去に日本側で合算課税された所得から、後日配当を受けた場合には、同じ所得について日本で再び課税しないための調整が必要になります。合算課税の対象となった外国関係会社が内国法人へ剰余金の配当等を行うと、同じ所得について日本で二重に課税されてしまうため、その配当については益金不算入とする仕組みが設けられています。

実務上は、次のような確認が求められます。

確認事項実務上の意味
過年度にCFC合算課税があったか後日の配当について二重課税調整が必要になる可能性
特定課税対象金額・部分課税対象金額の管理配当と課税済所得との対応を確認する
別表十七関係の作成履歴合算課税の有無と金額を確認する
外国子会社の利益剰余金の内訳どの年度の利益を原資とする配当か確認する
配当の基準日・決議日・支払日どの事業年度に係る配当か確認する
外国源泉税の取扱いCFC調整部分、通常配当部分、益金算入部分で取扱いが異なる可能性

CFC税制との関係は、単年度の配当処理として片付くものではなく、過年度からの管理が前提になります。過去の別表十七、海外子会社の財務諸表、現地申告書、配当可能利益の内訳を残していなければ、後から二重課税調整を説明することは難しくなります。

グループ通算制度を採用している場合の注意点

グループ通算制度を適用している場合、海外子会社配当の判定や税額調整は、さらに複雑になります。

グループ通算制度では、外国子会社配当金の益金不算入は通算グループ一体で判定する項目とされ、外国税額控除もグループ全体で計算する税額調整項目として位置付けられています。

グループ通算制度を採用している会社では、次の点を確認します。

確認項目確認内容
外国法人株式の保有会社親法人単独か、通算子法人も保有しているか
グループ全体の保有割合外国子会社判定を通算グループ全体で見る必要があるか
租税条約による軽減割合通算法人単独で条約上の軽減割合を満たすか
別表八(二)外国子会社配当益金不算入の明細
別表六外国税額控除が絡む場合の税額調整
別表十七CFC税制が絡む場合の合算課税関係
通算税効果会計税務調整が繰延税金資産・負債に影響しないか

グループ会社が分散して海外子会社株式を保有している場合、単体だけを見て「25%未満だから適用なし」と判断すると、誤ってしまう可能性があります。反対に、通算グループ全体での判定や条約上の軽減要件を確認しないまま適用すれば、税務調査で説明できない処理になりかねません。

会計処理と税務調整を分けて考える

海外子会社配当では、会計処理と税務調整を切り分けて整理することも重要です。

会計上は、配当収益、外国源泉税、為替差損益、未収配当金、送金手数料などが絡み合います。一方、法人税申告では、益金不算入、損金不算入、外国税額控除、別表調整を行っていきます。

基本的な確認項目は、次のとおりです。

項目会計上の確認税務上の確認
配当総額収益計上額を確認益金不算入対象額の基礎になる
外国源泉税費用・税金処理の科目を確認損金不算入または外国税額控除を判定
入金額送金明細と照合総額処理・源泉税控除の整合性を確認
為替換算決議日・支払日・入金日の相場確認円換算額の根拠を保存
未収配当金配当決議後未入金の場合の処理益金計上時期との整合性を確認
税効果会計将来課税・一時差異の有無を確認永久差異か一時差異かを整理

税効果会計の観点では、会計上の利益と税務上の課税所得の差異を整理する必要があります。税効果会計は、企業会計上の資産・負債の額と課税所得計算上の資産・負債の額に相違がある場合に、法人税等を税引前利益と合理的に対応させるための手続です。

外国子会社配当益金不算入による95%の益金不算入は、通常、税務上永久に課税所得へ戻らない性質を持ちます。そのため、税効果会計上の一時差異とは異なる整理になることがあります。他方で、外国税額控除の繰越、CFC合算課税、グループ通算制度の影響がある場合には、税効果会計や将来課税所得の見通しに影響が及ぶこともあります。

申告書ではどの別表を見るべきか

海外子会社配当を受けた場合、申告書では次の別表を確認します。

別表主な役割
別表四益金不算入、損金不算入、外国源泉税の税務調整
別表五(一)利益積立金額・税務上の資本関係への影響確認
別表六(二)関係外国税額控除がある場合の控除計算
別表六(四の二)外国子会社配当益金不算入対象外部分に対応する控除対象外国法人税額
別表八(二)外国子会社から受ける配当等の益金不算入等に関する明細
別表十七(三)等外国子会社合算税制が関係する場合の明細
地方税申告書国税処理との連動・差異の確認

令和8年4月1日以後終了事業年度分の法人税等各種別表では、別表八(二)として「外国子会社から受ける配当等の益金不算入等に関する明細書」が掲載されています。また、別表六(四の二)として「外国子会社配当益金不算入の対象とならない剰余金の配当等の額のうち特定課税対象金額等を超える金額等に対応する控除対象外国法人税額に関する明細書」が掲載されています。出典:国税庁|令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係

申告時には、別表を作成するだけでなく、そこに記載した金額の根拠資料を残しておくことが重要です。税務調査では、別表の数字そのものよりも、配当の性質、持株割合、保有期間、源泉税、現地税務処理をきちんと説明できるかどうかが問われます。

保存すべき資料

海外子会社配当の処理を後から説明できるようにするためには、次の資料を保存しておく必要があります。

資料確認目的
海外子会社の株主名簿・出資証明持株割合の確認
株式取得契約書・出資払込資料保有開始日、保有期間の確認
配当決議書・株主総会議事録配当の支払義務確定日、配当総額の確認
配当計算書配当総額、源泉税、実入金額の確認
送金明細・銀行入金資料実際の入金額、為替、手数料の確認
外国源泉税証明書源泉税額、税率、課税根拠の確認
租税条約適用書類軽減税率・免税の適用根拠
現地法人税申告書配当原資、損金算入配当該当性、CFC判定の確認
現地財務諸表利益剰余金、配当可能利益、事業実体の確認
CFC税制の過年度別表課税済所得からの配当か確認
日本側申告書別表別表四、六、八、十七の整合性確認
稟議書・取締役会資料配当方針、資金還流方針、意思決定過程の記録

「配当を受けた」という事実だけでなく、なぜそのタイミングで配当したのか、どの利益を原資としたのか、現地でどのように課税されたのか。こうした背景まで残しておくことは、税務調査への対応にとどまらず、金融機関・株主・後継者への説明にも役立ちます。

海外子会社配当でよくある申告ミス

実務では、次のようなミスが起きやすいものです。

ミス何が問題になるか
入金額だけを配当収益にしている源泉税控除前の配当総額との整合性が取れない
25%以上保有だけで適用判断している6月以上の保有期間を満たしていない可能性
租税条約上の軽減割合を確認していない適用可否を誤る、または源泉税が過大になる
外国源泉税を外国税額控除している外国子会社配当益金不算入対象配当に係る税は控除不可となる場合がある
外国源泉税を損金算入している法人税法39条の2により損金不算入となる場合がある
損金算入配当等を確認していない本来益金不算入対象外となる配当を除外しないリスク
CFC課税済所得を確認していない二重課税調整を誤る、または過少・過大申告となる
みなし配当を通常配当として処理している自己株式取得・資本払戻し等の処理を誤る
別表八(二)を作成していない益金不算入の適用要件を満たさない可能性
現地資料を保存していない税務調査で根拠を説明できない

海外子会社配当は、金額が大きくなりやすく、ひとつの判断ミスが税額に大きく響きます。しかも、海外資料の取得には時間がかかるため、申告期限の直前に初めて確認したのでは、必要な資料が揃わないことも少なくありません。

経営判断としての海外配当政策

海外子会社配当は、税務申告だけの問題ではありません。

配当を行うかどうかは、グループ全体の資金繰り、海外事業への再投資、日本の親会社の借入返済、株主還元、M&A資金、事業承継、為替リスクにまで影響します。

経営判断税務上の確認
日本親会社へ資金を戻す外国子会社配当益金不算入、源泉税、租税条約
海外子会社に利益を留保するCFC税制、現地税制、再投資計画
ロイヤリティ・役務提供料で回収する移転価格、源泉税、契約実態
貸付利息で回収する移転価格、過少資本税制、源泉税
株式売却・清算で回収する株式譲渡損益、みなし配当、現地課税
グループ再編で整理する組織再編税制、CFC、外国税額控除

税負担だけを見れば、配当が有利に映ることがあります。しかし、源泉税率の高い国、為替リスクの大きい国、CFC税制の対象になり得る子会社、現地で資金需要がある子会社では、配当の時期・金額・原資を慎重に設計しなければなりません。

海外子会社配当は、「利益が出たから配当する」という単純な判断ではなく、グループ全体の資金戦略と税務管理を結び付けて考えるべき領域です。

申告前チェックリスト

海外子会社から配当を受けた会社は、申告前に次の項目を確認してください。

チェック項目確認内容
配当支払法人外国法人に該当するか
持株割合原則25%以上か、租税条約上の軽減割合を満たすか
保有期間支払義務確定日前6月以上継続保有しているか
配当の性質通常配当、みなし配当、資本払戻し、清算分配のどれか
配当総額源泉税控除前の金額を把握しているか
外国源泉税税率、条約適用、控除・損金性を確認しているか
損金算入配当等現地で子会社側の損金になっていないか
CFC税制過年度に合算課税された所得からの配当ではないか
グループ通算通算グループ全体での保有割合・税額調整を確認したか
別表八(二)外国子会社配当益金不算入の明細を作成したか
別表六関係外国税額控除対象部分がある場合に反映したか
別表十七関係CFC税制が絡む場合に整合しているか
証明資料配当決議書、源泉税証明、現地申告書、送金明細を保存しているか
会計処理配当総額、源泉税、為替差額が整合しているか
将来方針配当政策、再投資、資金繰り、税効果への影響を検討したか

まとめ:海外子会社配当は「95%益金不算入」で終わらせない

海外子会社配当の法人税申告では、外国子会社配当益金不算入制度により、原則として配当額の95%が益金不算入となります。

しかし、実務判断はそこで終わりません。

外国子会社に該当するか。保有期間を満たすか。租税条約で保有割合が変わるか。外国源泉税は外国税額控除できるのか、それとも損金算入できるのか。損金算入配当等に該当しないか。CFC税制で過去に合算課税された所得からの配当ではないか。みなし配当や資本払戻しではないか。別表八(二)、別表六、別表十七、そして証明資料が整っているか。

これらを順番に確認して初めて、海外子会社配当を後から説明できる法人税申告になります。

最後に、重要な事項を振り返っておきます。

論点重要ポイント
外国子会社の判定原則25%以上保有、支払義務確定日前6月以上継続保有が基本
租税条約25%より低い保有割合で判定できる国があるため条約確認が必要
益金不算入額通常は配当額の95%が益金不算入、5%が課税所得に残る
外国源泉税通常の制度対象配当に係る源泉税は、外国税額控除不可・損金不算入となる場合がある
損金算入配当等現地で損金算入される配当は、益金不算入対象から除外される可能性がある
CFC税制過年度に合算課税された所得からの配当は、二重課税調整を確認する
みなし配当自己株式取得、資本払戻し、清算分配などは通常配当と分けて確認する
グループ通算外国子会社判定や外国税額控除にグループ全体計算が関係する
別表別表八(二)、別表六、別表十七関係を確認する
資料保存配当決議書、株主名簿、源泉税証明、現地申告書、送金明細を保存する
経営判断配当政策は資金繰り、再投資、為替、M&A、承継にも影響する

海外子会社配当・国際税務の申告前整理をご相談ください

海外子会社から配当を受ける場合、法人税申告では、外国子会社配当益金不算入、外国源泉税、外国税額控除、CFC税制、租税条約、グループ通算制度、会計処理を一体で確認する必要があります。

とくに、次のような状況では、申告前の早い段階で論点を整理しておくことが重要です。

状況相談前に整理したい資料
初めて海外子会社から配当を受ける株主名簿、出資契約、配当決議書、現地源泉税資料
源泉税が差し引かれている源泉税証明、租税条約確認資料、送金明細
海外子会社が低税率国にある現地申告書、財務諸表、CFC判定資料
複数のグループ会社で株式を保有しているグループ組織図、保有割合一覧、通算制度資料
自己株式取得・資本払戻しを予定している現地決議書、資本勘定資料、株式取得資料
過年度にCFC合算課税がある過年度別表十七、課税対象金額管理表、配当原資資料

犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人税申告を単なる申告書作成にとどめず、海外取引、子会社管理、資金還流、会計処理、税務調整、資料保存、さらには将来の税務調査対応まで見据えた判断領域として支援しています。

海外子会社配当、外国源泉税、CFC税制、外国税額控除、国際税務の申告前整理が必要な場合は、当事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

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