消費税の税務調査は、税額計算の正誤だけを確かめる場ではありません。
そこで問われるのは、納税義務、課税区分、売上計上時期、仕入税額控除、インボイス、輸出免税、固定資産、届出、電子証憑といった一つひとつの判断を、契約・請求・帳簿・証憑・社内承認の流れに沿ってきちんと説明できるかどうかです。申告書に落とし込んだ判断の「裏付け」が、調査の本当の対象だと考えていただくとよいでしょう。
一方で、「課税庁から質問されるのだから、何でもその場で応じなければならない」というものでもありません。調査には、調査通知、事前通知、質問検査、資料提出、留置き、調査結果の説明、修正申告の勧奨、是認通知、更正処分という一連の手続があります。
事業者側に求められるのは、調査を過度に恐れることではありません。それぞれの手続の意味を理解したうえで、調査の対象、資料提出の範囲、説明すべき事実、専門家に確認すべき論点を落ち着いて切り分けることです。
いまの税務調査手続の枠組みは、平成23年12月の税制改正による国税通則法の改正によって整えられました。それまで運用上の取扱いにとどまっていた部分を法令上明確にし、手続の透明性と納税者の予見可能性を高め、調査における協力を促すことがそのねらいです。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
なお、税務調査手続に関するFAQは、令和8年7月改訂版が公表されています。本稿では、消費税シリーズ全体の制度確認基準を2026年6月26日としつつ、調査手続については、この令和8年7月改訂版のFAQも踏まえて整理します。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
本稿の位置づけ
本稿は、消費税の税務調査が「どのような手続で進んでいくのか」を整理する記事です。
前回の17-5では、税務調査で確認される事項、すなわち納税義務、売上、仕入税額控除、インボイス、輸出、固定資産、届出といった実体面を扱いました。本稿では、その前提となる次の手続面を取り上げます。
| 項目 | 本稿で扱う内容 |
|---|---|
| 調査と行政指導 | 税務署からの連絡が調査なのか、行政指導なのか |
| 調査通知・事前通知 | いつ、誰に、何が通知されるのか |
| 事前通知がない調査 | 無予告で臨場された場合の確認事項 |
| 質問検査権 | 調査担当者が質問・検査・提示提出を求められる範囲 |
| 資料提出 | 紙資料、電子データ、写し、原本の扱い |
| 留置き | 税務署に資料を預ける場合の手続 |
| 反面調査 | 取引先等への確認が行われる場面 |
| 調査対象の拡大 | 通知された税目・期間以外に調査が及ぶ場合 |
| 終了手続 | 結果説明、修正申告勧奨、是認通知、更正処分 |
| 事業者側の実務対応 | 調査記録、資料管理、社内窓口、専門家関与 |
なお、仕入税額控除の否認パターンや附帯税の詳細、不服申立ての具体的な手続までは、本稿では扱いません。これらは、17-7以降の記事で別途整理します。
税務調査の全体像
消費税調査の流れは、おおむね次のように整理できます。
| 段階 | 主な内容 | 事業者側の対応 |
|---|---|---|
| 1 連絡・通知 | 調査又は行政指導の区分、対象税目・期間の確認 | 連絡内容を記録する |
| 2 事前通知 | 実地調査の日時、場所、目的、税目、課税期間等の通知 | 税理士へ共有し、準備資料を整理する |
| 3 事前準備 | 申告書、帳簿、インボイス、届出、契約、電子証憑の確認 | 申告書と証憑の対応表を作成する |
| 4 実地調査 | 質問、帳簿書類の確認、電子データの確認、資料提出 | 事実・判断・証拠を分けて説明する |
| 5 追加確認 | 追加資料、取引先照会、反面調査、調査対象拡大 | 提出資料と回答履歴を管理する |
| 6 結果説明 | 非違事項、税額、理由、附帯税の説明 | 指摘内容を事実・法令・金額に分解する |
| 7 是正又は処分 | 修正申告、期限後申告、更正・決定、是認通知 | 納得できるか、争う余地があるか判断する |
| 8 事後対応 | 再発防止、税区分・証憑・届出管理の見直し | 月次管理へ反映する |
こうして並べてみると、調査手続は単なる「税務署対応」ではないことがわかります。どの取引をどの資料で説明するか、誰が社内窓口となるか、税理士がどの範囲で代理・立会いを行うか、電子データをどの形式で提示・提出できるか。そこまで含めた管理課題として捉えておく必要があります。
まず区別すべきは「行政指導」か「税務調査」か
税務署から電話があり、「申告内容を確認したい」「必要があれば修正申告を検討してほしい」と言われたとしても、それが直ちに税務調査とは限りません。
ここでいう調査とは、特定の納税者の課税標準等又は税額等を認定する目的で質問検査等を行い、申告内容を確認するものを指します。これに対して、税務当局が行政指導の一環として、申告書の計算誤り、転記誤り、記載漏れ、法令適用誤り等が疑われる場合に、自発的な見直しや修正申告書の提出を要請することもあります。両者は性格の異なる連絡です。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
この区分は、加算税やその後の対応に影響します。行政指導に基づいて自主的に修正申告書を提出した場合には、延滞税が生じることはあり得ますが、原則として過少申告加算税は賦課されません。ただし、当初申告が期限後申告であった場合には、無申告加算税の問題が残ります。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
実務では、最初の連絡を受けた時点で、次の事項を記録しておきます。
| 記録事項 | なぜ重要か |
|---|---|
| 連絡日時 | 調査通知・自主修正の時期判定に関係する |
| 担当部署・担当者 | 税務署、国税局、部署、職員名を明確にする |
| 調査か行政指導か | 手続、加算税、対応範囲が変わる |
| 対象税目 | 消費税のみか、法人税・源泉所得税等も含むか |
| 対象課税期間 | どの申告期間の確認か |
| 連絡内容 | どの項目に疑義があるか |
| 回答期限 | 社内確認と専門家確認の時間を確保する |
| 依頼資料 | 任意提出か、質問検査権に基づく提示・提出か |
調査か行政指導かが曖昧なまま帳簿書類を提出し、修正申告まで進めてしまうと、後から事実経過を整理するのが難しくなります。最初の電話対応を軽く見ないことが、実は大切なのです。
「調査通知」と「事前通知」は同じ意味で使わない
実務上、税務署から調査の連絡があること全般を広く「調査通知」と呼ぶことがあります。しかし、手続を正確に理解するためには、「調査通知」と「事前通知」を分けて考える必要があります。
| 用語 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 調査通知 | 調査が行われることを知る契機。加算税の場面で時期が問題になることがある |
| 事前通知 | 実地の調査に先立ち、調査開始日時、場所、目的、税目、課税期間等を通知する手続 |
| 行政指導の連絡 | 自主的な見直しを求める連絡であり、直ちに質問検査権の行使とは限らない |
| 実地外調査の連絡 | 来署依頼、電話確認、書面照会等。法令上の事前通知とは異なる場合がある |
特に、調査通知を受けた後、更正又は決定を予知する前に修正申告をした場合の加算税の取扱いは、17-9で扱う重要な論点です。本稿では、調査通知を受けた時点で、日時、相手方、税目、期間、通知内容を記録しておくこと、その一点をまず押さえてください。
事前通知で確認すべき事項
実地の調査を行う場合には、原則として、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により事前通知が行われます。このとき通知されるのは、調査を開始する日時・場所、対象税目・課税期間、調査目的などです。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
事前通知を受けたら、次の事項を確認します。
| 通知事項 | 事業者側で確認すべきこと |
|---|---|
| 調査開始日時 | 代表者、経理責任者、税理士の同席可否 |
| 調査場所 | 本社、支店、店舗、税務署、税理士事務所等のどこか |
| 調査目的 | 申告内容確認、還付原因確認、特定取引の確認など |
| 対象税目 | 消費税、法人税、源泉所得税、印紙税等の範囲 |
| 対象課税期間 | 何年分・何事業年度分か |
| 対象帳簿書類 | 総勘定元帳、補助元帳、請求書、契約書、電子データ等 |
| 調査担当者 | 所属、氏名、人数 |
| 税務代理人への通知 | 税務代理権限証書の記載内容と整合しているか |
| 日時・場所変更 | 業務上の支障がある場合に協議できるか |
事前通知は、原則として電話で行われます。その方法は法令上規定されていないため、口頭で行うのが原則であり、納税者の要望に応じて通知内容を記載した書面が交付されることはありません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
だからこそ、電話を受けた担当者がその場で判断してしまわず、通知内容を正確にメモし、経営者、経理責任者、税務代理人へすぐに共有できる体制を整えておくことが必要になります。
税務代理人への通知と税務代理権限証書
税理士に税務代理を依頼している場合でも、事前通知や調査結果の説明が、自動的にすべて税理士だけに行われるとは限りません。
平成26年7月1日以後の事前通知については、納税者の事前同意があり、その同意が税務代理権限証書に記載されている場合には、税務代理人に通知すれば足りることとされています。同意の記載がなければ、納税者と税務代理人の双方に事前通知が行われます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
また、税務代理人が複数いる場合には、代表する税務代理人を定めて税務代理権限証書に記載しておくことで、その代表税務代理人への通知で足りる扱いとされています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
さらに、令和6年4月1日以後は、税務代理権限証書の様式に「調査の終了の際の手続に関する同意」欄が設けられました。提出済みの証書にこの同意が記載されていれば、調査結果の内容説明等は税務代理人に対して行われます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
消費税調査では、税務代理人への情報集約が特に重要になります。仕入税額控除、インボイス、課税売上割合、輸出免税、固定資産調整、届出の効力といった論点は、事実確認と法的判断が密接に絡み合っています。社内担当者だけで回答してしまうと、思わぬ誤解を招くことがあるのです。
調査日時・場所は変更できるか
事前通知を受けた日時に、必ず調査を受けなければならないわけではありません。
事前通知に際しては納税者や税務代理人の都合が尋ねられ、申告業務、決算業務、事務繁忙にも配慮したうえで調査開始日時が調整されます。また、事前通知の後であっても、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情等がある場合には、申出により変更を協議することができます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
ただし、単に「準備できていないから」という理由だけで長期の延期を求めるのは、現実的ではありません。延期を申し出る場合は、次のように整理しておきます。
| 確認事項 | 実務対応 |
|---|---|
| 変更理由 | 決算作業、棚卸、代表者不在、システム切替等 |
| 代替候補日 | 複数日程を提示する |
| 税理士の同席可否 | 税務代理人の日程を先に確認する |
| 資料準備状況 | どの資料がいつ揃うかを明確にする |
| 初回調査の範囲 | 初回は概要説明、後日詳細資料提示とする余地を検討する |
調査日時の調整は、調査を拒むためのものではありません。あくまで、正確な資料と説明を準備するためのものだと考えてください。
事前通知がない調査への対応
実地調査は原則として事前通知が行われますが、例外もあります。
申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれがある場合、その他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合には、事前通知が行われないことがあります。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
事前通知なしに調査担当者が来訪した場合、事業者側がまず確認すべき事項は、次のとおりです。
| 確認事項 | 対応 |
|---|---|
| 身分証明書等 | 所属、氏名、調査担当者であることを確認する |
| 調査対象 | 税目、課税期間、調査目的を確認する |
| 税務代理人 | 税理士に直ちに連絡し、立会いの要否を確認する |
| 社内窓口 | 代表者又は経理責任者に一本化する |
| 資料範囲 | その場で提示できる資料と後日整理すべき資料を分ける |
| 事実確認 | 記憶だけで即答せず、資料確認後に回答する |
| 記録 | 調査開始時刻、担当者、質問、提出資料を記録する |
なお、事前通知を行わなかった理由については、法令上、説明することとはされていません。ただし、事前通知がない場合でも、運用上、調査対象税目、課税期間、調査目的などは臨場後速やかに説明されます。また、事前通知が行われなかったこと自体は、不服申立ての対象となる処分には当たりません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
大切なのは、無予告であることに動揺して、資料を無整理に提出したり、推測で回答したりしないことです。調査に協力することと、未確認の事項を断定することは、まったく別のことだと切り分けておきましょう。
質問検査権とは何か
税務調査で調査担当者が行う質問、帳簿書類等の検査、提示・提出の求めは、国税通則法上の質問検査権に基づくものです。
ここでいう「調査」とは、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的、その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で、当該職員が行う一連の行為を指します。証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用などが、その中に含まれます。
出典:国税庁|国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達の制定について
質問検査権に基づいて確認される主な事項は、消費税調査では次のようになります。
| 分野 | 質問・確認されやすい内容 |
|---|---|
| 納税義務 | 基準期間、特定期間、インボイス登録、課税事業者選択 |
| 売上 | 売上計上時期、課税区分、税率、売上返還等 |
| 仕入 | 課税仕入れの実在性、帰属、時期、用途区分 |
| インボイス | 登録番号、記載事項、保存、複数書類の関連性 |
| 非登録仕入れ | 経過措置割合、仕入先別集計、控除限度額 |
| 輸出免税 | 輸出許可、物流、入金、証明書類 |
| 輸入消費税 | 輸入申告名義、実質輸入者、通関書類 |
| 固定資産 | 取得時期、用途、居住用賃貸建物、高額特定資産 |
| 電子証憑 | 電子取引データ、検索性、原データ、仕訳との紐付け |
| 届出 | 課税選択、簡易課税、課税期間短縮、登録関係 |
調査担当者の質問に対しては、即答できる事項と、資料を確認してから回答すべき事項とを分けて考えます。たとえば、「この外注先は何をした会社か」「この仕入れは課税売上対応か」「輸出許可書の名義と売上主体がなぜ違うのか」といった質問は、契約・商流・成果物・通関・支払資料を確認したうえで回答すべき場合があります。
資料提出と電子データの提出
税務調査では、帳簿、請求書、契約書、領収書、インボイス、取引明細、固定資産台帳、輸出入資料、電子データなどの提示・提出を求められることがあります。
帳簿書類等の提示・提出を求められたのに、正当な理由なくこれを拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出したりした場合には、罰則が科されることがあります。もっとも、税務当局が罰則を背景に強権的に権限を行使するという運用は想定されていません。提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の理解と協力の下、その承諾を得て行われるのが基本です。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
電子データについては、令和8年7月改訂のFAQで扱いが整理されています。提示は、ディスプレイ画面上で調査担当者が確認できる状態にして示すこと、提出は、プリントアウト、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への保存、e-Tax、オンラインストレージサービス、メールなどによる場合があるとされています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
消費税調査では、電子データの提出に関して、次の点をあらかじめ確認しておくべきです。
| 項目 | 確認事項 |
|---|---|
| 会計データ | 対象期間、税区分、仕訳番号、補助科目 |
| 販売管理データ | 請求番号、売上計上日、税率、納品・検収日 |
| 購買データ | 仕入先、インボイス区分、検収日、用途区分 |
| 経費精算データ | 従業員名、立替日、証憑画像、承認履歴 |
| 電子請求書 | 原データ、修正版、旧版、保存場所 |
| EC・カード明細 | 決済明細と加盟店発行書類の対応 |
| 輸出入データ | 通関番号、物流資料、入金資料 |
| 固定資産台帳 | 取得日、供用日、用途、請求書との対応 |
電子データは便利である一方で、提出範囲を誤ると、対象外の期間や対象外の取引の情報まで不用意に渡してしまうことがあります。提出前には、対象税目、課税期間、ファイル範囲、個人情報、取引先の秘密、不要データの混入を、必ず確認しておきましょう。
留置きとは何か
調査担当者が帳簿書類等を税務署に持ち帰って確認する場合があります。これを「留置き」といいます。
留置きとは、当該職員が提出を受けた物件を、国税庁、国税局、税務署又は税関の庁舎において占有する状態を指します。ただし、調査の過程で提出するために納税義務者等が新たに作成した写しは、通常、留置きには当たりません。
出典:国税庁|第2章 法第74条の7関係(留置き)
留置きは、帳簿書類等を預かって税務署内で調査を続けたほうが、調査を円滑に進める観点や納税者の負担軽減の観点から望ましい場合に、お願いされることがあります。その際には、必要性が説明されたうえで、納税者の理解と協力の下、承諾を得て行われるものであり、承諾なく強制的に留め置かれることはありません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
留置きに応じる場合は、次の事項を確認します。
| 確認事項 | 実務対応 |
|---|---|
| 預ける資料名 | 資料名、期間、部数、原本・写しの区別を記録する |
| 留置きの理由 | 何の確認のために必要か確認する |
| 書面交付 | 留置きに関する書面を受け取る |
| 業務上の必要 | 原本が業務に必要なら写し提出で足りるか協議する |
| 返還予定 | 返還時期、返還方法、担当者を確認する |
| 電子データ | コピーの範囲、媒体、提出経路を記録する |
| 個人情報・秘密情報 | 不要情報が混入していないか確認する |
留め置かれた帳簿書類等は、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還されることになっています。また、業務で使用する必要がある等の理由で返還を求めた場合には、特段の支障がない限り速やかに返還されます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
反面調査と取引先対応
消費税調査では、取引の実在性、輸出免税、課税仕入れの帰属、インボイス、支払事実などを確認するため、取引先等への反面調査が行われることがあります。
取引先など納税者以外の者に対する調査を実施しなければ、納税者の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合には、取引先等への反面調査が実施されることがあります。反面調査そのものには事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上、原則としてあらかじめ対象者へ連絡が行われます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
反面調査が想定される取引には、次のようなものがあります。
| 取引類型 | 反面調査が行われやすい理由 |
|---|---|
| 高額外注費 | 役務提供の実在性、成果物、支払事実の確認 |
| 紹介手数料・仲介料 | 役務内容、相手方、対価性の確認 |
| 輸出取引 | 物流、通関、海外取引先、入金の確認 |
| 非登録仕入先 | 取引実在性、請求書記載、経過措置区分の確認 |
| グループ会社間取引 | 帰属、価格、実体、立替・精算の確認 |
| 現金取引 | 金銭授受、領収証、相手方確認 |
| 還付申告 | 還付原因、課税仕入れ、免税売上の実態確認 |
| 固定資産取得 | 売買・工事・納品・検収・支払の確認 |
事業者側が避けるべきなのは、取引先に対して「こう答えてほしい」と説明を合わせようとすることです。求められるのは、事実と資料の整合性を自社で確認しておくこと、そして取引先から照会があった場合にも、同じ資料に基づいて説明できる状態を整えておくことです。
調査対象が広がる場合
事前通知を受けた税目・課税期間だけが、最後まで調査対象になるとは限りません。
実地調査の過程で、把握された非違と同様の誤りが、事前通知した調査対象期間より前にも生じていることが疑われる場合など、事前通知した事項以外について非違が疑われたときは、その事項についても調査が行われることがあります。この場合、追加する税目、課税期間等については説明され、理解と協力を得たうえで行われますが、追加する理由そのものは説明されません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
消費税で対象拡大が起こりやすいのは、次のような場面です。
| 当初の確認事項 | 拡大しやすい範囲 |
|---|---|
| 当期の税率誤り | 過年度の同一商品・同一サービス |
| 当期の外注費否認 | 同一外注先との過年度取引 |
| 当期のインボイス不備 | 同一仕入先・同一経費区分 |
| 当期の輸出免税証明不備 | 過年度の輸出取引 |
| 固定資産の取得時期誤り | 過年度取得資産、減価償却、仕入控除時期 |
| 非登録仕入れの経過措置誤り | 仕入先別集計、他の非登録仕入先 |
| 課税売上割合誤り | 非課税売上、共通対応仕入れの過年度処理 |
調査対象が拡大した場合は、口頭のやり取りだけで済ませず、追加された税目、課税期間、対象資料、提出期限を記録しておきます。
消費税還付申告と調査手続
還付申告をしている場合、資料提出の依頼や調査に移行することがあります。
消費税の還付申告については、還付金の支払をいったん保留し、還付申告の原因を確認するために、行政指導において証拠書類の提出が依頼されたり、税務調査が実施されたりする場合があります。特に、取引相手方と連絡が取れず取引実態の確認が困難な場合、金銭授受の確認が困難な場合、輸出等に係る証拠書類が適切に保管されていない場合には、確認に時間を要し、還付保留期間が長期にわたることがあります。
出典:国税庁|消費税還付申告に関する国税当局の対応について
還付申告に関連する調査では、次の資料をすぐに提示できる状態にしておく必要があります。
| 還付原因 | 準備資料 |
|---|---|
| 輸出免税 | 輸出許可通知書、物流資料、契約書、インボイス、入金資料 |
| 設備投資 | 契約書、請求書、納品書、検収書、固定資産台帳、支払資料 |
| 不動産取得 | 売買契約書、決済明細、土地建物内訳、仲介手数料、登記資料 |
| 高額仕入れ | 発注書、納品書、検収記録、支払記録、現物確認資料 |
| 課税売上割合 | 課税売上・非課税売上・免税売上の区分資料 |
| 居住用賃貸建物 | 用途、賃貸契約、設計図、募集資料、転用計画 |
| 輸入消費税 | 輸入許可書、納税書、通関業者精算書、実質輸入者の説明資料 |
還付が遅れているからといって、直ちに不正を疑われていると考える必要はありません。ただし、還付原因を説明する資料が不十分であれば、確認はどうしても長期化します。還付申告は、申告書を提出した時点で終わるのではなく、還付原因を第三者に説明できる資料管理まで含めて設計しておくべきものだと考えてください
調査結果の説明
調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、税務署から調査結果の内容説明があります。
この説明では、更正決定等をすべきと認める額やその理由など、非違の内容が伝えられます。説明は原則として口頭で行われますが、必要に応じて、非違の項目や金額を整理した資料などが示されることもあります。ただし、納税者の要望に応じて調査結果の内容を記載した書面が交付されることはありません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
消費税調査の結果説明を受ける際には、次のように整理します。
| 確認事項 | 具体的な確認内容 |
|---|---|
| 非違項目 | 売上漏れ、税率誤り、仕入控除否認、インボイス不備等 |
| 対象期間 | 当期のみか、過年度にも及ぶか |
| 本税影響 | 追加納付か、還付減少か、地方消費税への影響 |
| 理由 | 事実認定の問題か、法令解釈の問題か |
| 証拠 | どの資料を根拠に指摘されているか |
| 反証資料 | 追加提出できる契約書、成果物、物流資料、確認書等があるか |
| 附帯税 | 過少申告加算税、無申告加算税、重加算税、延滞税の可能性 |
| 翌期影響 | 固定資産調整、課税売上割合、棚卸資産、届出への影響 |
| 是正方法 | 修正申告、更正、翌期調整、更正の請求のどれか |
結果説明を受けた時点で大切なのは、指摘内容を「認める・認めない」の二択で考えないことです。事実誤認があるのか、資料が不足しているのか、法令解釈の相違なのか、それとも税額計算だけの誤りなのか。まずは切り分けて確認していきます。
修正申告の勧奨と更正処分
調査結果に非違がある場合、税務署から修正申告を勧奨されることがあります。
調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、原則として修正申告又は期限後申告が勧奨されます。これに応じるかどうかは納税者の任意判断であり、応じない場合には調査結果に基づいて更正等の処分が行われることになります。もっとも、勧奨に応じなかったことを理由に、応じた場合と比べて基本的に不利な取扱いを受けることはありません。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
ここで重要になるのが、修正申告と更正処分の違いです。
| 区分 | 内容 | 不服申立て |
|---|---|---|
| 修正申告 | 納税者が自ら申告内容を修正する | 修正申告自体には不服申立てできない |
| 更正処分 | 税務署長等が処分として税額を変更する | 処分に対して不服申立てが可能 |
| 更正の請求 | 納税者が自ら行った申告税額が過大と考える場合に減額を求める | 請求理由を証明する資料が必要 |
| 是認通知 | 実地調査の結果、更正決定等をすべきと認められない旨の通知 | 通知後も一定要件で再調査の可能性あり |
修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできますが、不服申立てをすることはできません。この点を理解したうえで修正申告を行うよう、あらかじめ説明されることになっています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
したがって、指摘内容に納得できない部分がある場合には、修正申告書を提出する前に、どの論点を争う可能性があるのか、追加資料で解決できるのか、更正処分を受けて不服申立てを検討すべきか、を慎重に整理しておく必要があります。
是認通知と「調査終了」の意味
実地調査の結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、その旨の通知が行われます。一般に「是認通知」と呼ばれるものです。
なお、実地の調査以外の調査で更正決定等をすべきと認められない場合には、書面による通知は行われませんが、調査が終了した際には、その旨が口頭で連絡されることになっています。
出典:国税庁|調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
是認通知を受けた場合でも、その税目・課税期間について将来絶対に調査がない、という意味ではありません。
ある税目・課税期間について実地調査を行った場合には、原則としてその税目・課税期間について再調査は実施されません。ただし、実地調査の終了後に行われた取引先の税務調査で、当初調査の時点では把握されていなかった非違が明らかになった場合など、「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」は、既に調査対象となった税目・課税期間であっても再調査が実施されることがあります。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
調査終了後は、是認通知であるか、修正申告・更正処分であるかにかかわらず、次の整理を行っておきます。
| 項目 | 整理内容 |
|---|---|
| 調査対象 | 税目、課税期間、対象取引 |
| 提出資料 | 提出日、資料名、原本・写し、返還状況 |
| 指摘事項 | 指摘あり・なし、指摘内容 |
| 是正内容 | 修正申告、更正、翌期調整 |
| 附帯税 | 加算税、延滞税の有無 |
| 再発防止 | 税区分、証憑、承認、マスター修正 |
| 社内共有 | 経理、営業、購買、経営者への報告 |
| 専門家確認 | 次回申告・翌期処理への反映 |
理由附記と不服申立てへの接続
更正処分や加算税の賦課決定処分など、不利益処分が行われる場合には、理由附記が問題になります。
理由附記の対象となるのは、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分、又は不利益処分の全体です。青色申告者への更正処分のほか、白色申告者等への増額更正処分や加算税の賦課決定処分にも、理由が附記されます。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
消費税調査で更正処分を受ける可能性がある場合、処分理由は極めて重要です。たとえば、同じ仕入税額控除の否認であっても、理由が次のどれに当たるかで、反論の方法は変わってきます。
| 否認理由 | 争点の性質 |
|---|---|
| 取引が実在しない | 事実認定・証拠の問題 |
| 自社の課税仕入れではない | 取引帰属・契約当事者の問題 |
| 課税仕入れではない | 課税区分の問題 |
| 非課税売上対応である | 用途区分の問題 |
| インボイス要件を満たさない | 証憑保存要件の問題 |
| 計上時期が誤っている | 引渡し・役務完了時期の問題 |
| 輸出免税の証明がない | 免税要件・証明書類の問題 |
| 届出の効力がない | 期限・効力発生日・拘束期間の問題 |
不服申立てを検討するかどうかは、処分を受けた後に考え始める話ではありません。調査結果の説明を受けた時点から、準備は始まっています。修正申告をするのか、更正処分を受けるのか。その選択が、将来の救済手段に影響してくるからです。
税務代理人以外の立会い
調査対応では、経理担当者、記帳補助者、システム担当者、営業担当者などの説明が必要になることがあります。
ただし、税務当局に対して納税者の代わりに調査につき主張・陳述を行うことは税務代理行為に当たるため、原則として税務代理人しか行うことができません。税務代理人以外の第三者については、単なる立会いであっても、調査担当者の守秘義務に抵触する可能性がある場合には断られます。一方で、記帳事務等を担当している者については、調査を円滑に進めるため、調査担当者が必要と認めた範囲で同席することがあります。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
実務では、同席者の役割を明確にしておきます。
| 同席者 | 役割 |
|---|---|
| 代表者 | 事業実態、経営判断、重要契約の説明 |
| 経理責任者 | 会計処理、証憑保存、申告資料の説明 |
| 税務代理人 | 税務判断、主張・陳述、調査対応方針 |
| 営業責任者 | 売上時期、取引条件、軽減税率、返品等の説明 |
| 購買責任者 | 仕入先、インボイス、検収、非登録仕入れの説明 |
| システム担当者 | 電子データ、検索、保存、販売・購買システムの説明 |
| 現場担当者 | 実際の役務提供、納品、検収、物流の説明 |
説明者は、多ければ多いほど良いというものではありません。主たる窓口を決めておき、必要に応じて補足説明者を呼ぶ形が望ましいでしょう。
調査中に作成すべき記録
税務調査で最も避けたいのは、「何を聞かれ、何を提出し、何を説明したか」が後から分からなくなってしまうことです。
調査中は、次の記録を作成しておきます。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日時 | 開始・終了時刻、休憩、次回日程 |
| 調査担当者 | 所属、氏名、人数 |
| 立会者 | 社内担当者、税務代理人、補足説明者 |
| 質問事項 | 質問内容、対象取引、対象期間 |
| 回答内容 | 即答した事項、後日回答とした事項 |
| 提出資料 | 資料名、期間、形式、原本・写し、電子データ |
| 留置き資料 | 預けた資料、書面交付、返還予定 |
| 追加依頼 | 追加資料、提出期限、提出方法 |
| 指摘事項 | 仮指摘、正式指摘、税額影響 |
| 未解決論点 | 追加確認、専門家確認、反証資料 |
| 次回対応 | 担当者、期限、準備資料 |
消費税調査では、どうしても資料の量が多くなりがちです。インボイス、電子取引、販売管理データ、購買データ、固定資産台帳、輸出入資料などが複数のシステムに分散している場合、提出資料管理表を作っておかないと、同じ資料を何度も探し直すことになってしまいます。
調査対応を月次管理に接続する
税務調査の手続を理解する目的は、調査当日にうまく対応することだけではありません。調査で問われる事項を、日常業務の管理項目へ戻していくことが重要です。
| 調査で問われる事項 | 月次管理に落とし込む項目 |
|---|---|
| 売上計上時期 | 契約、納品、検収、請求、入金の対応確認 |
| 税率 | 商品マスター、役務内容、販売時の意思確認 |
| 課税区分 | 非課税、不課税、免税、課税の判定メモ |
| 仕入税額控除 | 課税仕入れの成立、帰属、用途区分 |
| インボイス | 登録番号、効力日、記載事項、保存状況 |
| 非登録仕入れ | 経過措置割合、仕入先別限度額、税区分 |
| 電子証憑 | 原データ保存、検索性、仕訳紐付け |
| 固定資産 | 取得時期、用途、調整対象、届出影響 |
| 輸出免税 | 輸出許可、物流、入金、証明書類 |
| 届出 | 提出日、効力発生日、拘束期間 |
| 還付申告 | 還付原因資料、商流図、資金資料 |
調査対応は、過去の申告を守るだけの作業ではありません。翌期以降の処理品質を上げる機会でもあります。調査で指摘を受けた項目はもちろん、指摘はされなかったものの説明に時間がかかった項目も、社内運用を見直す対象として拾い上げておきましょう。
犬飼公認会計士・税理士事務所へご相談ください
消費税の税務調査では、事前通知を受けてから調査当日を迎えるまでの短い期間で、申告書、付表、帳簿、インボイス、電子データ、契約書、輸出入資料、届出書、固定資産資料を一気に整理しなければならないことがあります。
特に、還付申告、輸出免税、国外取引、非登録仕入先、大規模設備投資、不動産取得、居住用賃貸建物、簡易課税・特例選択、電子帳簿保存が関係する場合、単に資料を集めるだけでは足りません。どの資料がどの税務判断を支えているのかを、調査担当者に説明できる形で整理しておく必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、消費税を申告書作成だけの問題として捉えるのではなく、契約、請求、証憑保存、会計処理、資金繰り、税務調査対応までつながる経営管理の課題として整理します。
税務調査の通知を受けた場合、還付申告の後に資料提出を求められた場合、調査結果の説明を受けて修正申告をすべきか判断に迷っている場合、あるいは将来の調査に備えて消費税の証憑・月次管理を見直したい場合には、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
重要ポイントの振り返り
| 論点 | 振り返り |
|---|---|
| 行政指導と調査 | 税務署からの連絡が調査なのか行政指導なのかを最初に確認する |
| 調査通知 | 連絡日時、対象税目、対象期間、担当者、依頼内容を記録する |
| 事前通知 | 実地調査では原則として日時、場所、目的、税目、期間等が通知される |
| 書面通知 | 事前通知は原則電話であり、希望に応じた書面交付は予定されていない |
| 税務代理人 | 税務代理権限証書の同意欄、代表税務代理人の定めを確認する |
| 日程変更 | 業務上やむを得ない事情等があれば変更協議が可能 |
| 事前通知なし | 無予告調査でも対象税目、期間、目的、身分証明書等を確認する |
| 質問検査権 | 調査に必要な範囲で質問、検査、資料の提示・提出が求められる |
| 電子データ | 画面提示、出力、媒体、e-Tax、オンラインストレージ、メール提出があり得る |
| 留置き | 資料を預ける場合は理由、資料名、書面、返還方法を記録する |
| 反面調査 | 取引実態確認のため取引先等に確認が行われることがある |
| 調査対象拡大 | 通知された税目・期間以外に広がる場合は、追加範囲を記録する |
| 結果説明 | 非違内容、金額、理由、根拠資料、附帯税を分けて確認する |
| 修正申告勧奨 | 応じるかは任意だが、修正申告後は不服申立てができない |
| 更正処分 | 納得できない場合は更正処分を受け、不服申立てを検討する選択肢がある |
| 是認通知 | 実地調査で更正決定等をすべきでない場合に書面通知される |
| 再調査 | 新たに得られた情報に照らして非違がある場合には再調査があり得る |
| 社内管理 | 調査対応記録を残し、税区分・証憑・電子保存・届出管理に反映する |