発起人・株主・役員・機関設計の初期判断|法人設立時に所有と経営をどう設計するか

法人を設立するとき、商号や目的、本店、資本金といった基本事項を決めたあとに、いくつかの判断が待っています。「誰を発起人にするか」「誰を株主にするか」「誰を取締役に据えるか」「代表取締役は誰にするか」「取締役会や監査役を置くのか」。こうした問いに、順番に答えていく必要があります。

一見すると、これらは設立書類を完成させるための形式的な項目に思えるかもしれません。ですが実際には、会社の所有と経営、意思決定、責任の所在、資金調達、税務、社会保険、そして金融機関との向き合い方まで、幅広く関わってくるものです。

たとえば、発起人を誰にするかは、設立時の出資と株主構成を左右します。株主を誰にするかは、会社の支配権や利益の分配、そして将来の株式の動きに関わってきます。取締役を誰にするかは、業務執行と責任の所在に直結します。代表取締役を誰にするかは、対外的な契約や金融機関対応、税務・社会保険手続の責任者を決めることでもあります。取締役会や監査役を置くかどうかは、意思決定のスピードや牽制の仕組み、さらには登記・議事録・運営にかかるコストにまで影響します。

法人設立は、登記が終われば一段落、というものではありません。むしろそこからが本番で、税務届出、給与支払事務所の開設、社会保険、役員報酬の設定、創業融資、契約締結、会計ソフトの設定、月次決算体制の整備と、やるべきことが続いていきます。

だからこそ、発起人・株主・役員・機関設計は「会社をつくるための名前決め」ではなく、「会社を動かしていくための初期設計」として捉えていただきたいのです。

目次

まず分けて考えるべき4つの立場

法人設立の場面では、似た響きの言葉が次々と登場します。発起人、株主、取締役、代表取締役、監査役。字面が近いため、つい同じもののように扱ってしまいがちです。

しかし、これらを混同したまま設立を進めると、あとになって「出資してくれた人は、経営にも関わるつもりだったのか」「役員になってもらった人に、どこまで責任を負わせるつもりだったのか」「名義だけの株主や役員を、どう整理すればよいのか」といった問題が持ち上がりやすくなります。

まずは、次の4つの立場を分けて考えることが出発点になります。

発起人は、会社を設立する人

発起人とは、会社設立の手続そのものを進める人です。株式会社の設立では、発起人が定款を作成し、発起人全員が署名または記名押印します。あわせて、各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けることになっているため、会社が成立したあとは、原則としてそのまま株主になります。
出典:法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について

つまり発起人は、設立書類に載る単なる名前ではありません。設立時の出資、株式の引受け、そして設立手続の適法性にまで関わる立場だということです。

ですから、「手伝ってくれたから」「名前を借りやすいから」「信用がありそうだから」といった理由だけで発起人を増やすのは避けたいところです。発起人にするということは、そのまま設立時株主にするという意味を持ちます。

株主は、会社の所有者

株主は、会社に出資して株式を保有する人です。

株式会社では、所有と経営が分かれています。株主は株主総会で会社の重要事項を決め、取締役を選び、配当や残余財産の分配を受ける立場です。一方で、日々の業務執行を担うのは、取締役や代表取締役です。

創業時には株主と経営者が同じ人であることも多いのですが、法律上はあくまで別の立場だと理解しておく必要があります。

株主にするということは、将来の意思決定に関わる権利を持たせるということです。たとえ少額の出資であっても、株主には一定の権利があります。創業直後は問題にならなくても、増資、借入、役員変更、事業承継、M&A、共同創業者の離脱といった場面になると、株主構成が大きな意味を帯びてきます。

取締役は、会社を経営する人

取締役は、会社の業務執行に関与する役員です。

株式会社には、株主総会のほかに取締役を置かなければなりません。どの株式会社でも、少なくとも1名の取締役が必要です。
出典:e-Gov法令検索|会社法

取締役は、単なる肩書ではありません。会社に対して善管注意義務や忠実義務を負い、その任務を怠った場合には、責任を問われる可能性があります。

創業初期には、家族や知人、共同創業者、外部の協力者などを取締役に入れるかどうかを検討する場面が出てきます。しかし、実際には経営判断に関わらない人を安易に取締役にしてしまうと、責任だけが発生し、実態と登記がずれてしまうおそれがあります。

代表取締役は、会社を代表する人

代表取締役は、会社を対外的に代表する取締役です。

契約書、銀行口座、融資、税務届出、社会保険手続、許認可、取引先とのやり取り。こうした場面では、代表取締役が会社の代表者として扱われます。

取締役会設置会社では、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定する必要があります。一方、取締役会を置かない会社では、定款や発起人・取締役の互選などによって代表取締役を定めることができ、選定しない場合は設立時取締役の全員が設立時代表取締役となります。
出典:法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について

ここは見落とされやすいところです。取締役が複数いる会社で代表取締役をはっきりさせておかないと、全員が代表権を持つ形になる場合があります。実務の観点からいえば、契約、銀行対応、社内統制、権限の分掌のためにも、誰が代表権を持つのかは明確にしておくべきでしょう。

発起人を誰にするか

発起人は設立時の出資者であり、原則として設立後の株主になる立場です。そこで、発起人を決めるときには、次のような点を確認しておきます。

まず、実際に出資するのは誰かを確認します。名義だけの発起人を置いてしまうと、本当の資金負担者と、株主名簿上の株主とがずれてしまうことがあります。このズレは、税務、贈与、名義株、相続、株式譲渡といった場面で、後々の問題につながりかねません。

次に、その人を設立後も株主にしてよいのかを確認します。設立の時点では信頼関係があっても、将来、退任や退職、関係の悪化、相続、事業承継が起こることもあります。発起人にするということは、株主としての権利を持たせることだと、あらためて意識しておく必要があります。

さらに、設立時の意思決定を誰が担うのかも確認しておきます。発起人は、設立時発行株式に関する事項、資本金・資本準備金、設立時取締役等の選任などに関与します。発起人が複数いる場合には、設立手続に必要な同意や議決を、円滑に進められるかどうかも大切な視点です。

発起人は、いわば会社設立の入口に立つ人です。出資、株主構成、意思決定、そして将来の資本政策まで見据えたうえで決めていきたいところです。

株主を誰にするか

株主構成は、会社の支配権を決めるものです。

創業初期は、出資額の多い少ないだけで株主構成を決めてしまいがちです。しかし株主構成は、会社の将来に大きく影響します。

経営者と株主を一致させるか

経営者が全株式を持つ会社では、意思決定はシンプルです。株主総会、役員の選任、定款変更、配当、増資といった事項を、経営者自身が主導できます。

一方、複数の株主がいる会社では、意思決定に合意形成が必要になります。共同創業者や外部の出資者がいる場合には、誰がどの程度の議決権を持つのか、どの事項について誰の同意が必要なのかを、あらかじめ整理しておかなければなりません。

創業時は関係が良好でも、会社が成長するにつれて利害が分かれてくることがあります。役員報酬、配当、追加出資、借入、事業売却、退職、株式譲渡。こうした場面で、株主どうしの考え方の違いが表面化してきます。

少数株主を軽く見ない

少数株主であっても、株主である以上、一定の権利を持ちます。

計算書類の閲覧、株主総会での議決権行使、役員選任への関与、一定の場合の帳簿閲覧請求、株主代表訴訟。こうした会社法上の権利が、実際に問題になることがあります。

少数株主を置くこと自体が悪いわけではありません。問題は、「少数だから影響はない」と考えて、理由も出口も詰めないまま株式を持たせてしまうことです。

将来の資金調達、事業承継、M&A、株式譲渡、相続まで見据えると、創業時の株主構成は、できるだけシンプルで、説明のしやすい形にしておくことが大切です。

株式譲渡制限を確認する

創業会社の多くは、非公開会社として設計されます。ここでいう非公開会社とは、株式市場に上場していない会社という意味ではなく、発行する株式の全部について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社を指します。
出典:法務省|役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です

株式譲渡制限を置いておくと、株主が第三者へ自由に株式を譲渡することを、一定程度コントロールできます。創業会社にとっては、株式が意図しない第三者に渡ってしまうのを防ぐうえで、この設計が重要になります。

もっとも、譲渡制限を置けばすべて安心、というわけではありません。株主が亡くなれば、相続によって株式が移ることがあります。共同創業者が退職した場合に、その株式をどう扱うのかも、別途検討しておく必要があります。

この領域は、共同創業や資本政策、株主間契約とつながっていきます。本記事ではまず、「株主にするということは、将来の意思決定権を持たせることだ」という点を押さえておいてください。

取締役を誰にするか

取締役は、会社の経営を担う人です。

設立時に誰を取締役にするかは、会社の実務運営に直結します。取締役は、重要な意思決定、契約、資金調達、採用、内部管理、会計体制の整備に関わっていくからです。

名義だけの取締役は避ける

創業時には、信用や体裁、人数合わせ、親族の協力といった理由から、実際には経営に関与しない人を取締役に入れることがあります。

しかし、取締役は責任を負う立場です。実務に関わらない人を登記上の役員にしてしまうと、本人も会社もリスクを正しく認識できないまま、責任だけが残ってしまう可能性があります。

取締役に就任してもらう人には、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • 会社の事業内容を理解しているか
  • 会社の資金状況を把握できるか
  • 取締役としての責任を理解しているか
  • 利益相反や競業の可能性がないか
  • 金融機関や取引先に説明できる役割があるか
  • 将来退任する場合の手続や関係の整理まで想定できているか

取締役は、肩書ではなく、会社経営を担う法的な立場です。

株主と取締役を分けて考える

株主は所有者、取締役は経営者です。

創業者が全株式を持ち、自ら取締役・代表取締役を務める場合、所有と経営は一致します。この形は初期の意思決定が速く、実務上も分かりやすい設計だといえます。

一方で、株主ではない人を取締役にすることもできますし、株主であっても取締役にしないという選択もできます。

大切なのは、出資する人、経営する人、責任を負う人、報酬を受ける人を、混同しないことです。

  • 出資したから取締役にする
  • 経営には関与しないが株主にする
  • 信用のためだけに役員にする
  • 報酬を払いたいから役員にする

こうした判断は、税務、社会保険、責任、株式の分散、金融機関対応にまで影響します。だからこそ、役割ごとに切り分けて決めていく必要があります。

代表取締役を誰にするか

代表取締役は、会社を代表して契約や対外手続を行う人です。

設立後の実務では、代表取締役の名前と住所が登記され、契約書、銀行口座、融資申込、税務届出、社会保険手続、許認可申請といった場面で確認されていきます。

代表取締役を決めるときは、単に「一番中心にいる人」というだけでなく、次のような観点を確認しておきます。

  • 会社の事業を最もよく説明できる人か
  • 金融機関や取引先との窓口になれる人か
  • 資金繰り、会計、税務、社会保険を把握できる人か
  • 契約上の責任を引き受ける意思があるか
  • 他社の役員、競業、兼業、副業、雇用契約上の制約がないか
  • 許認可業種において、代表者要件に問題がないか

とくに創業融資を受ける場合、金融機関は代表者の経験、自己資金、事業理解、資金の使途、返済の原資を確認します。代表取締役は、登記上の代表者であるだけでなく、事業と数字を自らの言葉で説明できる責任者なのです。

取締役会を置くか

取締役会を置くかどうかは、機関設計の中心的な論点です。

取締役会を置く会社を、取締役会設置会社といいます。この場合、設立時取締役は3人以上必要です。また、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定しなければなりません。
出典:法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について

取締役会を置くメリットは、重要な業務執行を複数の取締役で決定できること、対外的なガバナンスの説明がしやすいこと、そして将来の資金調達や組織の拡大に備えやすいことです。

一方で、相応のデメリットもあります。取締役を3名以上確保する必要があり、議事録の作成、開催の運営、監査役等の設置、登記、役員任期の管理といった実務の負担が増えていきます。

創業初期の会社で、実質的に経営者1名で意思決定をしているのであれば、最初から取締役会を置く必要があるとは限りません。

取締役会を置かない会社の考え方

取締役会を置かない会社では、取締役1名から設立できます。

非公開会社であれば、会社の実情に応じて取締役会を設置しない設計が可能です。取締役会非設置会社では株主総会の権限が広くなり、会社の基本的な事項を株主総会で決めていく形になります。

創業初期に、所有と経営が一致していて、外部株主や複数役員による牽制を必要としない場合には、取締役会非設置会社のほうが運営しやすいこともあります。

ただし、取締役会を置かない場合でも、意思決定の記録は必要です。株主総会議事録、取締役の決定書、役員報酬の決定記録、借入の決定記録、利益相反取引の承認記録。こうしたものを整えておかないと、税務調査、金融機関対応、将来のM&Aや承継の場面で、説明に困ることになります。

「取締役会を置かない=記録が不要」ではない、ということです。

監査役を置くか

監査役は、取締役の職務執行を監査する機関です。

取締役会を置く会社では、原則として監査役等の監査機関を設置することになります。会社法上、機関設計には、公開会社か非公開会社か、大会社かどうか、そして取締役会・監査役・会計監査人・監査等委員会等の組み合わせに応じたルールが定められています。
出典:e-Gov法令検索|会社法

創業初期の非公開会社では、監査役を置かない最小構成も多く見られます。他方で、複数の株主がいる場合、外部の出資者がいる場合、金融機関や取引先への説明を重視する場合などには、一定の牽制機能を持たせるために監査役を置くこともあります。

監査役を置くのであれば、実際に監査ができる人を選ぶ必要があります。名義だけの監査役では、牽制機能が働かないばかりか、役員本人にも責任が生じ得ます。

役員任期をどう決めるか

役員任期も、設立時に確認しておきたい論点です。

株式会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結時までとされています。監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結時までです。公開会社ではない株式会社であれば、定款で定めることにより、取締役および監査役の任期を、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで伸長できます。
出典:法務省|役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です

任期を長くすれば、重任登記の頻度は減ります。その反面、役員を変更したくなったときには、任期満了までの期間が長くなってしまいます。親族や共同創業者、外部の協力者を役員に入れる場合、任期を長くしすぎると、あとの関係整理が難しくなることがあります。

なお、再任の場合であっても、役員変更登記は必要です。株式会社では、役員の任期満了から2週間以内に役員変更登記を申請しなければならず、必要な登記を怠ると、代表者等が過料に処される可能性があります。
出典:法務省|役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です

役員任期は、「登記費用を抑えるため」という理由だけで決めるべきものではありません。役員構成の安定性、変更の可能性、関係の整理、そして登記の管理まで見渡したうえで、決めていきたいところです。

役員報酬・社会保険との関係

役員にするかどうかは、税務と社会保険にも関わってきます。

法人が役員に給与を支給する場合、法人税上は、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などの要件を満たさない役員給与は、原則として損金に算入されません。定期同額給与については、1か月以下の一定の期間ごとに支給され、各支給時期の支給額が同額であることなどが求められます。
出典:国税庁|No.5211 役員に対する給与

創業初期に役員を複数置くのであれば、それぞれに役員報酬を支払うのか、無報酬とするのか、いつから支給を始めるのか、議事録をどう残すのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。

また、法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて、健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。日本年金機構は、すべての法人事業所について、厚生年金保険・健康保険の両制度への加入と、被保険者資格取得届の提出が必要である旨を示しています。
出典:日本年金機構|適用事業所と被保険者

役員構成、役員報酬、社会保険料は、いずれも資金繰りに直結します。役員を増やすということは、単に登記上の人数を増やすことではありません。報酬、源泉所得税、社会保険、月次の損益、そして資金繰りまで含めて確認しておく必要があります。

創業初期の機関設計は、シンプルさと説明可能性を重視する

創業初期の機関設計では、複雑にすること自体が専門的なわけではありません。

むしろ設立直後の会社では、次のような設計が望ましいことが多いといえます。

  • 誰が所有しているかが明確である
  • 誰が経営判断をするかが明確である
  • 誰が代表して契約するかが明確である
  • 役員報酬の決定過程が明確である
  • 金融機関に株主構成と役員構成を説明できる
  • 税務・社会保険・会計処理に無理がない
  • 将来の増資、採用、事業承継、M&Aに支障が少ない

創業の時点から、上場会社のような複雑な機関設計をする必要はありません。とはいえ、安易に「取締役1名・株主1名でよい」と決めてしまうのも、それはそれで危うさがあります。

大切なのは、自社の事業内容、資金計画、共同創業者の有無、外部出資の可能性、許認可、役員報酬、社会保険、そして将来の成長方針に合った設計にすることです。

判断の順番

発起人・株主・役員・機関設計は、次の順番で整理していくと、判断しやすくなります。

1. 事業を誰が主導するかを確認する

まずは、実際に事業を主導する人を確認します。事業内容を説明でき、資金繰りを把握し、契約上の責任を負い、金融機関と話せる人が、中心になります。

2. 誰が出資するかを確認する

次に、設立時に誰がいくら出資するのかを確認します。出資者は株主になります。単なる資金協力なのか、それとも経営参加を前提とした出資なのかを、ここで整理しておきます。

3. 株主構成を決める

議決権の比率、配当、将来の譲渡、相続、共同創業者の離脱、外部出資の可能性を確認します。株式を持たせる理由と、その将来の出口をあわせて考えます。

4. 取締役を決める

経営に関与する人、責任を負える人、金融機関や取引先に説明できる人を取締役にします。名義だけの役員は避けます。

5. 代表取締役を決める

会社を代表して契約し、資金調達、税務、社会保険、会計体制を主導できる人を代表取締役にします。取締役が複数いる場合は、代表権をはっきりさせておきます。

6. 取締役会・監査役を置くか決める

意思決定のスピード、牽制機能、外部への説明、運営コストを比較します。創業初期には最小構成が合う場合もありますが、複数株主や外部出資があるなら、牽制機能を検討します。

7. 役員任期と議事録管理を決める

役員任期、重任登記、役員変更時の対応、株主総会議事録、取締役決定書、役員報酬の決定記録を整えます。

よくある失敗

発起人を増やしすぎる

設立時に協力者を発起人に入れた結果、設立後の株主構成が複雑になってしまうことがあります。

発起人は、設立後に株主になる立場です。発起人を増やすのであれば、将来も株主として関与してもらう前提があるのかどうかを、確認しておくべきです。

株主と役員を混同する

出資した人を自動的に役員にする、あるいは役員にした人に株式を持たせる。こうした判断は、必ずしも必要なものではありません。

所有と経営は別物です。株主にする理由、取締役にする理由、代表権を与える理由を、それぞれ分けて整理していく必要があります。

名義だけの役員を置く

経営に関与しない人を役員にすると、実態と登記がずれてしまいます。役員本人も責任を十分に理解しないまま就任することになり、後々のトラブルの原因になりかねません。

共同創業者の離脱を想定していない

共同創業の際に株式を分けたものの、退任・退職・関係悪化のときに株式をどう扱うかを決めていない、というケースがあります。

株式は、そう簡単に「返してもらう」ことのできるものではありません。共同創業の場合には、株主間契約、譲渡制限、退職時の取扱いなどを、早い段階で検討しておくべきです。

取締役会を形式だけで置く

取締役会を置くと、取締役3名以上が必要になり、議事録や運営といった実務も生じます。実際には経営者1名で判断しているのに、形式だけの取締役会を置いてしまうと、会社法上の運営と実態がずれてしまいます。

役員任期を忘れる

役員任期が満了したあとの重任登記を忘れてしまうケースは、決して少なくありません。再任であっても登記は必要です。設立時に役員任期を決めたら、決算・定時株主総会・登記期限とあわせて管理していく必要があります。

役員報酬を後から感覚で決める

設立後に資金繰りや利益を見ながら、その場その場で役員報酬を決めてしまうと、法人税上の損金算入、源泉所得税、社会保険料、資金繰りに影響します。

役員構成を決める段階で、誰にいつから報酬を支払うのか、無報酬の期間を設けるのか、社会保険料を資金計画に織り込むのかを、あらかじめ確認しておくべきです。

後から説明できる状態を作る

発起人・株主・役員・機関設計は、設立時に決めて終わり、というものではありません。

あとから経緯を説明できるように、次のような資料を整えておくことが大切です。

  • 定款
  • 発起人決定書
  • 株主名簿
  • 設立時取締役・代表取締役の選定記録
  • 就任承諾書
  • 株主総会議事録
  • 取締役決定書または取締役会議事録
  • 役員報酬の決定記録
  • 株式譲渡制限に関する定款規定
  • 共同創業者間の合意書
  • 創業計画書・資金計画・資本政策表

税務署、金融機関、取引先、投資家、そして将来の承継先やM&Aの買い手は、会社の実態を見ています。登記上の役員や株主の名前だけでなく、「なぜその構成にしたのか」「誰が意思決定をしているのか」「株式がどのように保有されているのか」を確認される場面があります。

創業初期だからこそ、説明のできる会社設計にしておきたいのです。

発起人・株主・役員・機関設計でお悩みの方へ

発起人、株主、取締役、代表取締役、取締役会、監査役の設計は、会社法だけで完結する論点ではありません。

株主構成は、資本政策、相続、事業承継、M&Aに影響します。役員構成は、役員報酬、源泉所得税、社会保険、責任、金融機関対応に影響します。機関設計は、意思決定、議事録、登記、内部管理、そして将来の資金調達に影響します。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人設立を単なる登記手続としてではなく、設立後の税務届出、役員報酬、社会保険、創業融資、会計体制、月次決算、資本政策まで見据えた初期設計として整理しています。

誰を株主にすべきか。誰を取締役にすべきか。代表取締役をどう決めるべきか。取締役会や監査役を置くべきか。共同創業者や外部出資者との関係をどう整理すべきか。

設立前にこうした点を確認しておきたい場合は、お問い合わせページから、現在のご状況をお聞かせください。事業内容、出資関係、役員候補、資金計画、将来の成長方針をうかがいながら、法人設立時に優先して決めるべき論点を整理してまいります。

振り返り|発起人・株主・役員・機関設計の確認ポイント

項目初期判断の視点見落とした場合に起こりやすいこと
発起人実際に出資し、設立後も株主として関与させてよい人か名義株、株主構成の複雑化、設立後の関係整理
株主議決権、配当、株式譲渡、相続、将来の資金調達を見据えているか少数株主問題、共同創業者離脱時のトラブル、M&A時の支障
株式譲渡制限意図しない第三者への株式移動を防ぐ設計になっているか株式が想定外の人に移り、意思決定が難しくなる
取締役実際に経営に関与し、責任を理解している人か名義役員、責任の所在不明、金融機関・取引先への説明不全
代表取締役会社を代表して契約・融資・税務・社会保険対応を担える人か代表権の混乱、契約・銀行・行政手続の不整合
取締役会複数役員による意思決定と牽制が必要か形式的な取締役会、議事録不備、運営負担の増加
監査役監査・牽制機能を実際に担える人か名義監査役、実効性のないガバナンス、責任の不明確化
役員任期安定性と変更可能性、重任登記の管理を考えているか登記漏れ、過料リスク、退任・変更時の手続負担
役員報酬定期同額給与、源泉所得税、社会保険、資金繰りと整合しているか損金不算入、社会保険料負担の見落とし、資金繰り悪化
記録整備設立時の判断理由を議事録・決定書・合意書で残しているか税務・金融機関・投資家・承継先への説明が困難になる
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