自己資金・資金使途・返済原資をどう説明するか|創業融資で問われる「借りる理由・使い道・返す力」

創業融資で問われる資金計画は、突き詰めれば次の3つに集約されます。

  • 自己資金をどのように準備してきたのか
  • 借りた資金を何に使うのか
  • その資金を、どの事業収益・キャッシュ・フローから返済するのか

この3つは、別々の項目ではありません。自己資金、資金使途、返済原資が一貫して説明できて、はじめて創業融資の資金計画として説得力を持ちます。

創業融資では、「事業内容は魅力的です」「売上は伸びる予定です」「融資を受けられれば頑張ります」といった説明だけでは足りません。金融機関が確認したいのは、創業者の熱意そのものではなく、その熱意が数字、資料、資金管理、返済可能性にきちんと落とし込まれているかどうかです。

日本政策金融公庫は、創業期の方について、営業実績が乏しいなどの理由で資金調達が難しくなる場合が少なくないという前提に立ち、創業融資を通じて創業・スタートアップを支援しています。あわせて、新規開業・スタートアップ支援資金では、資金の使いみちとして、事業開始時または事業開始後に必要となる設備資金および運転資金が示されています。

なお、制度内容や適用条件は変更される可能性があります。申込みにあたっては、必ず最新の公式情報をご確認ください。
出典:日本政策金融公庫|創業融資のご案内日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

本稿では、創業融資において、自己資金・資金使途・返済原資をどのように整理し、金融機関へ説明できる状態へ整えていくべきかを解説します。

目次

創業融資で見られるのは「借りたい金額」ではなく「説明できる金額」

創業される方は、どうしても「いくら借りられるか」に意識が向きがちです。

しかし、金融機関から見れば、最初に確認したいのは「いくら貸せるか」ではありません。まず、その事業に必要な資金はいくらなのか。その資金は何に使われるのか。使った後に、返済原資が生まれるのか。ここから確認していきます。

同じ借入希望額であっても、説明の仕方によって印象は大きく変わります。

たとえば「余裕を持って多めに借りたい」という説明では、使途が曖昧なままです。一方で「設備投資と、開業後数か月分の運転資金を合わせるとこの金額になる」という説明であれば、必要性を検討できます。

返済についても同じです。「売上が伸びれば返せる」という説明では、返済可能性が曖昧です。「売上、粗利、固定費、税金、社会保険、借入返済を月次で見ても資金が回る」という説明であれば、返済見通しを確認できます。

創業融資では、借入希望額を先に決めて計画をそこに合わせるのではなく、事業に必要な資金を積み上げ、その調達方法として自己資金と借入を整理し、返済原資まで確認していく。この順番が大切です。

自己資金は「残高」ではなく「準備過程」で説明する

自己資金とは、創業者ご自身が事業に投入できる資金です。預貯金、退職金、資産売却資金、法人設立時の出資金などが、その代表例にあたります。

自己資金が重視されるのは、単に「手元にいくらあるか」を確認するためだけではありません。自己資金は、創業者がどの程度準備を重ねてきたか、資金管理ができているか、創業に向けた計画性があるかを示す材料になります。

特に確認されやすいのは、次のような点です。

  • どの口座に、いつから、いくら準備してきたのか
  • 給与や事業収入から、計画的に蓄積してきた資金なのか
  • 退職金、保険解約、資産売却、贈与、親族借入などが含まれる場合、その出所を説明できるか
  • 開業準備としてすでに支出した金額がある場合、その支出内容と証憑を示せるか
  • 開業後に事業資金として使う部分と、生活資金として残す部分を分けているか
  • 法人を設立する場合、資本金として入れる金額と、役員個人に残す資金を整理しているか

自己資金の説明で避けたいのは、直前に一時的に入金された資金を、あたかも長期間かけて準備してきた資金のように見せることです。いわゆる「見せ金」と受け取られかねない動きは、金融機関から見て信頼を損ねます。

親族や知人からの支援を受ける場合も、その資金が贈与なのか、借入なのか、出資なのかを曖昧にしてはいけません。借入であれば返済義務があり、創業後の資金繰りに影響します。出資であれば、法人の場合は株主構成や持分関係に関わってきます。贈与であれば、税務上の確認が必要になる場合があります。

自己資金は、「ある」と言えば足りるものではありません。どこから来た資金で、どのように準備され、事業にどう使われるのかを説明できること。これが重要です。

自己資金を全額使い切る計画は慎重に考える

自己資金が多いことは、創業準備の姿勢を示す材料になります。ただし、自己資金をすべて開業準備に使い切ればよい、というわけではありません。

創業直後は、売上の立ち上がりが遅れることがあります。入金サイトが長く、請求してから入金まで時間がかかることもあります。予定外の設備費、広告費、採用費、修繕費が発生することもあります。

だからこそ、自己資金は、開業資金として投入する部分と、事業が計画どおり進まなかった場合に備える部分とを、分けて考える必要があります。

法人を設立する場合も同じです。資本金を大きくすれば法人の初期資金は厚くなりますが、経営者個人の生活資金が不足すれば、結局は法人資金から役員報酬や貸付・立替という形で資金を出す必要が生じます。役員報酬を設定すれば、法人の損益、資金繰り、源泉所得税、社会保険料にも影響します。

自己資金の説明では、「いくら用意したか」だけでなく、「いくら事業に投入し、いくら手元に残すか」まで整理しておくことが大切です。

資金使途は「設備資金」と「運転資金」に分ける

資金使途とは、借りた資金を何に使うのか、という説明です。

創業融資では、この資金使途が曖昧だと、融資希望額の妥当性を判断しにくくなります。まずは、設備資金と運転資金に分けて整理していきます。

設備資金とは、事業を始めるため、あるいは事業を運営するために必要な設備・物件・機械・車両・内装・什器備品・システムなどに使う資金です。運転資金とは、仕入、人件費、家賃、広告費、外注費、通信費、その他経費など、事業を回すための日常的な支払に使う資金を指します。

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金でも、資金のお使いみちとして設備資金および運転資金が示され、返済期間についても、設備資金と運転資金とで異なる期間が案内されています。個別の返済期間や利率、担保・保証の有無などは、資金使途や審査結果によって異なり、希望に沿えない場合がある旨も明記されています。
出典:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

このように、制度上も、設備資金と運転資金は区別されています。創業計画書でも、両者を混同せずに整理する必要があります。

設備資金は「見積書」と「事業上の必要性」をセットで説明する

設備資金は、一見すると説明しやすい項目です。見積書や契約書があれば、金額の根拠を示しやすいからです。

しかし、見積書があるだけでは十分とは言えません。金融機関が確認したいのは、その設備が事業に本当に必要なのか、その金額が過大になっていないか、その投資がどのように売上や業務運営につながるのか、という点だからです。

設備資金では、次のような点を整理しておきます。

  • 購入・契約するものは何か
  • 支払先はどこか
  • 金額の根拠となる見積書・契約書・請求書はあるか
  • 支払時期はいつか
  • その設備がなければ事業を始められないのか
  • 開業後でも購入できるものではないか
  • 中古、リース、レンタル、外注で代替できないか
  • 売上、品質、効率、人員体制にどう影響するか
  • 許認可や業法上、必要となる設備か
  • 税務・会計上、固定資産として管理すべきものか

特に開業時は、気持ちが前向きになり、必要以上に高額な設備を入れたくなることがあります。しかし、設備投資は固定費や返済負担を増やします。創業融資の説明では、「欲しい設備」ではなく、「事業開始に必要で、資金回収の見通しがある設備」として説明できるかどうかが重要になります。

運転資金は「何か月分必要か」を資金繰り表で説明する

運転資金は、設備資金よりも説明が難しい項目です。設備資金のように一つひとつ見積書があるわけではなく、開業後の入金と支払のズレから必要額を見積もる必要があるからです。

運転資金を説明するときは、「当面の運転資金として必要です」という抽象的な言い方では足りません。何に、いつ、いくら必要なのかを、月次で示す必要があります。

運転資金に含めておきたい主な項目は、次のとおりです。

  • 仕入代金
  • 外注費
  • 人件費
  • 役員報酬
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • システム利用料
  • 保険料
  • 専門家報酬
  • 租税公課
  • 社会保険料
  • 源泉所得税
  • 消費税の納税資金
  • 借入返済
  • 予備費

ここで重要なのは、売上が発生する時期と、入金される時期を分けて考えることです。

請求書を発行して翌月末に入金される取引であれば、売上が立っても現金化は遅れます。仕入や外注費を先に支払う事業であれば、売上入金より先に資金が出ていきます。在庫を持つ事業であれば、商品が売れる前に仕入資金が必要になります。

運転資金は、売上がないから必要になるのではありません。売上があっても、入金と支払のタイミングがずれるために必要になる資金なのです。

生活資金を運転資金に紛れ込ませない

創業時には、経営者ご自身の生活資金も大切です。

ただし、生活資金を事業の運転資金に曖昧に含めてしまうと、資金計画の説明が不明確になります。個人事業の場合は、事業資金と生活資金が混ざりやすいため、事業用口座を分け、生活費への引き出しを管理する必要があります。

法人の場合は、法人と経営者個人は別人格です。経営者が法人から生活費を受け取るのであれば、役員報酬として設計するのが基本になります。役員報酬は、法人の損益、資金繰り、所得税、住民税、社会保険料に影響します。

創業融資で借りた資金は、基本的には事業資金です。経営者の生活費が必要であること自体は当然ですが、それをどのように役員報酬や事業主貸として見込み、事業資金と区別して管理していくか。ここが問われます。

生活資金を考慮しない資金計画は、開業後に崩れやすくなります。一方で、生活資金を事業資金として曖昧に扱えば、資金使途の説明が弱くなります。創業時には、事業資金と生活資金を分けたうえで、経営者が無理なく事業に集中できる資金設計を行っておく必要があります。

補助金を資金使途の穴埋めとして過大に見込まない

創業時には、補助金を併用できないか検討することがあります。補助金は原則として返済不要であり、設備投資や新たな取組みの後押しになる場合があります。

しかし、補助金を創業時の資金繰りに組み込むときは、慎重に考える必要があります。中小企業庁のミラサポplusでも、補助金について、融資と異なり原則返済不要である一方で、必ずしもすべての経費が補助されるわけではなく、審査があり、原則として後払いであることが説明されています。
出典:中小企業庁 ミラサポplus|補助金とは

後払いであるということは、先に支出する資金が必要だということです。採択される前提で資金繰りを組んでしまうと、不採択の場合や入金の遅れが生じた場合に、資金不足に陥ります。

補助金を資金計画に入れる場合は、次のような点を確認しておきます。

  • 採択されなくても事業を実行するのか
  • 補助金入金までの立替資金をどう確保するのか
  • 補助対象外経費を自己資金や借入で賄えるか
  • 交付決定前の発注・契約・支払が認められる制度か
  • 証憑、契約書、請求書、支払記録を保存できるか
  • 補助金の入金時期を、資金繰り表に保守的に反映しているか

補助金は、資金計画を補強することはあっても、創業時の手元資金不足を直ちに解消してくれるものではありません。

返済原資は「利益」だけでなく「現金」で見る

返済原資とは、借入金を返済するための元手です。

創業融資では、売上や利益の見通しを説明するだけでなく、その利益が現金として手元に残り、返済に充てられるかどうかまで確認する必要があります。

返済は現金で行います。したがって、返済原資は損益計算書上の利益だけでは判断できません。

  • 利益が出ていても、売掛金の入金が遅ければ現金はありません
  • 在庫が増えれば、利益が出ていても現金は在庫に変わっています
  • 設備投資をすれば、利益計算とは別に現金が出ていきます
  • 借入元本の返済は費用ではありませんが、現金は出ていきます
  • 税金や社会保険料は、利益計画に反映していても、支払時期を見誤ると資金繰りを圧迫します

だからこそ、返済原資を説明するには、利益計画だけでなく資金繰り表が欠かせません。

返済原資は「売上根拠」から順番に確認する

返済原資を説明するときは、いきなり「返済できます」と言っても説得力はありません。次の順番で確認していきます。

まず、売上の根拠を確認します。誰に、何を、いくらで、どのくらい販売するのか。単価、数量、客数、成約率、稼働時間、契約件数などに分解していきます。

次に、粗利を確認します。売上から仕入、材料費、外注費、販売手数料などを差し引いた粗利が、どの程度残るのかを見ます。

次に、固定費を確認します。家賃、人件費、役員報酬、広告費、通信費、システム利用料、保険料、専門家報酬など、売上に関係なく発生する支出を見込みます。

次に、税金・社会保険・消費税を確認します。創業初年度は、納税時期を見落としやすいところです。給与を支払う場合は源泉所得税や社会保険料を、インボイス登録や課税事業者に該当する場合は消費税の納税資金も確認しておきます。

最後に、借入返済を入れます。元本返済と利息支払を月次資金繰り表に反映し、返済後も手元資金が残るかどうかを確認します。

この流れをたどると、返済原資が単なる利益ではなく、事業から生まれる現金であることが見えてきます。

資金繰り表で「返済できる月」と「資金が薄くなる月」を見る

返済原資を説明するうえで、資金繰り表は欠かせません。

資金繰り表では、少なくとも次の項目を月次で整理します。

  • 月初現預金残高
  • 売上入金
  • その他入金
  • 仕入支払
  • 外注費支払
  • 人件費支払
  • 役員報酬
  • 家賃・固定費
  • 税金・社会保険料
  • 設備投資支払
  • 借入実行額
  • 借入返済額
  • 利息支払
  • 月末現預金残高

重要なのは、月末残高だけを見ないことです。創業直後は、月中に大きな支払が先に発生し、入金が月末になることもあります。月末残高では足りているように見えても、月の途中で資金ショートする可能性があるのです。

返済開始月にも注意が必要です。据置期間がある場合、その期間中は資金繰りに余裕があるように見えることがあります。しかし、返済が始まった途端に資金が薄くなることがあります。

返済原資の説明では、「年間では黒字です」だけでは不十分です。月次で、返済後の現金残高がどう動くかを確認し、資金が薄くなる月にどう対応するのかまで整理しておく必要があります。

自己資金・資金使途・返済原資は一本の線でつなげる

創業融資でもっとも重要なのは、自己資金、資金使途、返済原資が一本の線でつながっていることです。

たとえば、次のような状態では、どこかで計画の整合性が崩れてしまいます。

  • 自己資金は十分にあるが、何に使うかが曖昧である
  • 資金使途は具体的だが、返済原資が説明できない
  • 返済原資はあるように見えるが、売上根拠が薄い
  • 売上根拠はあるが、入金サイトや在庫資金を考慮していない
  • 補助金入金を前提にしており、後払いの立替資金が不足している
  • 法人設立後の役員報酬や社会保険を見込んでいない

反対に、次のように説明できれば、資金計画の見通しはかなり明確になります。

  • 創業前に、自己資金をいくら準備した
  • 開業準備として、設備資金にいくら使う
  • 開業後の入金遅れに備え、運転資金としていくら必要である
  • その不足分を借入で調達する
  • 売上は、単価、数量、顧客数、契約見込から積み上げている
  • 粗利と固定費を差し引いた後、返済に充てる現金が残る
  • 返済後も、資金繰り表上、一定の手元資金を維持できる

創業融資では、立派な言葉よりも、資金の流れが一貫していることが大切なのです。

個人事業・法人設立・法人成りで説明の重点は変わる

自己資金・資金使途・返済原資の説明は、事業を始めるルートによって重点が変わります。

個人事業として開業する場合は、事業資金と生活資金の区別が重要です。事業用口座を分け、売上入金、仕入支払、生活費の引き出しを管理する必要があります。確定申告、国民健康保険、国民年金、住民税なども、資金繰りに影響します。

法人を設立して始める場合は、資本金、役員報酬、社会保険、法人税、地方税、消費税、法人口座、会計ソフト、税務届出が、資金計画と連動します。法人の資金と個人の生活費を混同しない設計が必要です。

個人事業から法人成りする場合は、個人事業時代の売上・利益・資金繰りの実績を、説明材料にできます。一方で、法人化後は、役員報酬、社会保険、契約名義、資産移転、消費税、借入名義などが変わります。個人事業時代に利益が出ていても、法人化後の固定費や社会保険を加味すると、返済原資が変わってくることがあります。

同じ借入でも、どのルートで創業・法人化するかによって、金融機関に説明すべき論点は異なります。

融資面談では「資金の流れ」を自分の言葉で説明する

創業計画書や資金繰り表を専門家と一緒に作成することは有効です。ただし、融資面談では、創業者ご自身が内容を説明できなければなりません。

特に、次のような質問には、自分の言葉で答えられる状態にしておきたいところです。

  • 自己資金はどのように準備しましたか
  • 借入金は何に使いますか
  • 設備資金の見積りは、どのような根拠ですか
  • 運転資金は何か月分を見込んでいますか
  • 売上はどのように見込んでいますか
  • 返済は、どの利益・現金から行いますか
  • 売上が計画を下回った場合、資金繰りはどうなりますか
  • 補助金を見込んでいる場合、入金までの資金はどうしますか
  • 法人の場合、役員報酬や社会保険は織り込んでいますか
  • 開業後、月次でどのように数字を確認しますか

これらに答えられない場合、創業者ご自身が資金計画を理解していない、と見られてしまいます。創業融資は、計画書を提出すれば終わるものではありません。計画書、資金繰り表、補足資料、そして面談での説明が、互いに一致している必要があります。

準備しておきたい資料

自己資金・資金使途・返済原資を説明するためには、資料の整備も欠かせません。

最低限、次のような資料を整理しておくとよいでしょう。

  • 創業計画書
  • 資金使途一覧
  • 設備資金の見積書
  • 物件契約書または申込資料
  • 内装工事・機械・備品等の見積書
  • 仕入先・外注先の見積書や条件資料
  • 売上計画
  • 利益計画
  • 資金繰り表
  • 自己資金を確認できる通帳
  • 退職金・資産売却・贈与・借入等の資金出所が分かる資料
  • 既存借入の返済予定表
  • 法人設立後であれば、履歴事項全部証明書
  • 許認可が必要な場合の確認資料
  • 契約予定先・取引先候補との商談資料
  • 補助金を見込む場合の公募要領・交付決定関係資料

日本政策金融公庫は、創業計画書について、新たに事業を始める方に事業計画等を記入してもらう書式として公表しており、記入例や参考資料もあわせて案内しています。
出典:日本政策金融公庫|各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方〔国民生活事業〕

資料は、多ければよいというものではありません。重要なのは、計画書に書いた数字を裏付ける資料があることです。見積書、通帳、資金繰り表、売上根拠、返済予定が、互いに矛盾していないかを確認しておく必要があります。

創業融資で避けたい説明

創業融資で避けたいのは、資金の説明が曖昧なまま、前向きな言葉で押し切ろうとすることです。

たとえば、次のような説明には注意が必要です。

  • 自己資金はありますが、出所は説明できません
  • 借入金は、何に使うかまだ決めていません
  • 多めに借りておけば安心だと思っています
  • 売上は、頑張ればこれくらい行くと思います
  • 返済は、売上が上がれば何とかなると思います
  • 補助金が入る予定なので、それを運転資金にします
  • 役員報酬や社会保険は、後で考えます
  • 税金や消費税の支払は、まだ見込んでいません
  • 資金繰り表は作っていません
  • 計画書は専門家が作ったので、細かい数字は説明できません

これらは、創業者の能力が低いという話ではありません。創業前は、誰でも初めてのことが多く、資金計画に不慣れなものです。

だからこそ、融資申請の前に、自己資金、資金使途、返済原資を整理し、説明できる状態にしておくことが大切なのです。

創業融資は「借りるため」だけでなく「開業後に管理するため」に整える

創業融資の目的は、融資を受けることだけではありません。

借りた後に、事業を継続し、返済し、必要に応じて追加投資や追加借入を判断できる管理体制をつくること。これが重要です。

そのためには、創業時の資金計画を、開業後の月次決算と資金繰り管理につなげていく必要があります。

  • 毎月の売上は計画どおりか
  • 粗利率は想定どおりか
  • 固定費は増えすぎていないか
  • 売掛金の回収は遅れていないか
  • 在庫が資金を圧迫していないか
  • 税金・社会保険・消費税の支払資金は確保できているか
  • 借入返済後の手元資金は十分か
  • 計画と実績の差異を、金融機関に説明できるか

創業時に自己資金・資金使途・返済原資を整理することは、融資申請のためだけではありません。開業後に、経営者が数字を見て判断していくための出発点でもあるのです。

自己資金・資金使途・返済原資の整理は、早い段階で専門家に相談する価値がある

創業融資では、制度の選択よりも前に、資金計画の整合性を確認することが重要です。

  • 自己資金はいくらあり、その出所を説明できるか
  • 借入金は、設備資金と運転資金のどちらに使うのか
  • 運転資金は何か月分必要か
  • 売上根拠は分解されているか
  • 返済原資は、利益ではなく現金で確認できているか
  • 税金、社会保険、消費税、役員報酬を織り込んでいるか
  • 開業後に月次で管理できる会計環境を整えているか

これらは、創業者お一人では整理しきれないこともあります。特に、法人設立、役員報酬、社会保険、消費税・インボイス、会計ソフト、契約、許認可が絡む場合、資金計画だけを切り離して考えると、開業後の実務にズレが出やすくなります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、創業融資における自己資金、資金使途、返済原資の整理から、創業計画書、資金繰り表、法人設立後の税務・会計・月次管理までを、一体で確認する支援を行っています。

「自己資金の見せ方に不安がある」「借入希望額の根拠を整理したい」「資金使途と見積書の整合性を確認したい」「返済原資を資金繰り表で説明できるようにしたい」といった場合は、融資申請の直前ではなく、計画を作る段階でご相談ください。

お問い合わせページから、現在のご状況とご相談内容をお知らせください。創業前、法人設立前、個人事業からの法人成り前の段階でも、金融機関に説明できる資金計画を、一緒に整理していけます。

この記事の振り返り

確認項目重要な考え方見落としやすい点
自己資金金額だけでなく、準備過程と資金の出所を説明する直前入金や借入資金を、自己資金のように扱ってしまう
自己資金の使い方事業投入分と、手元に残す資金を分けて考える開業時に全額使い切り、売上遅れに耐えられなくなる
設備資金見積書、支払時期、事業上の必要性をセットで説明する欲しい設備と必要な設備を区別できていない
運転資金入金と支払のズレを踏まえ、何か月分必要かを資金繰り表で示す「当面の資金」とだけ書き、根拠が曖昧になる
生活資金事業資金と、経営者個人の生活資金を分けて整理する法人資金と個人資金が混在し、資金使途が不明確になる
補助金原則返済不要でも、審査があり後払いであることを前提にする採択・入金を前提に資金繰りを組んでしまう
返済原資利益だけでなく、現金で返済できるかを見る借入元本返済、税金、社会保険、消費税を織り込んでいない
売上根拠単価、数量、客数、成約率などに分解する「頑張れば売れる」という説明にとどまる
資金繰り表月次で、入金・支払・返済・納税・残高を確認する年間黒字だけを見て、月中・月次の資金不足を見落とす
説明の一貫性自己資金、資金使途、返済原資を一本の線でつなげる計画書、見積書、通帳、資金繰り表の数字が整合していない
開業後の管理融資申請用の資料を、月次決算・資金繰り管理へ接続する融資実行後、計画と実績の差異を確認しなくなる
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