創業後に事業計画を見直す方法|月次決算・予実管理・資金繰りから行動計画へつなげる

創業時に作った事業計画が、開業後にそのまま実現するとは限りません。実際に事業を始めてみると、たとえば次のような場面に出会います。

  • 売上の立ち上がりが遅れる
  • 想定より広告費がかかる
  • 採用が予定どおり進まない
  • 原価率が上がる
  • 入金サイトが長くなる
  • 税金や社会保険料の支払いを、資金繰り表に入れていなかった
  • 借入返済が始まる時期になって、手元資金が急に薄くなる

こうしたずれ自体は、決して珍しいことではありません。本当に問題なのは、ずれが生じたことではなく、そのずれを把握できないまま進んでしまうことです。

事業計画は、融資申請や補助金申請のために一度作って終わる書類ではありません。事業を通じて達成したい定性的・定量的な目標に対して、どのような経営資源や施策が必要かという仮説を置き、その仮説を検証するための手順と指標を定めるものです。

ですから、創業後の事業計画の見直しとは、単に数字を作り直すことではありません。次のような一連の作業を指します。

  • 計画と実績の差を確認する
  • 差が出た原因を分解する
  • 一時的なずれなのか、前提そのものが間違っていたのかを判断する
  • 資金繰りへの影響を確認する
  • 必要な行動を修正する
  • 金融機関や専門家に説明できる形で記録する

ここまで行って、はじめて「計画を経営に使っている」といえます。

目次

事業計画は「当てるもの」ではなく「検証するもの」

創業時の計画は、どうしても仮説を含みます。たとえば、次のような数字です。

  • 顧客単価はいくらになるか
  • 月に何件の問い合わせが来るか
  • 商談から成約まで、何割が進むか
  • 広告費をいくらかければ反応が出るか
  • 人を採れば売上が伸びるか
  • 在庫は何か月分必要か
  • 入金は請求後、何日で回収できるか

これらは、実績がない段階では完全には分かりません。だからこそ、創業後は計画を「外れたかどうか」だけで終わらせず、「どの仮説が、どの程度ずれたのか」まで見ていきます。

事業計画の主要な変数については、それが実績に基づく値なのか、仮説なのか、経営者が戦略的に置いた設定値なのかを区別することが大切です。同じ「広告費100万円でリード100件」という数字でも、過去1年間の実績なのか、一度だけの実績なのか、他社事例からの推測なのか、根拠の薄い感覚値なのかで、計画の信頼度はまったく異なります。

創業後の見直しでは、まずこの区別から始めます。

  • 実績として確認できた数字は、次の計画に反映する
  • 仮説のまま残っている数字は、いつ、どのように検証するかを決める
  • 根拠が薄い数字は、実績や行動量に基づく指標へ置き換える

この作業をせずに、計画を毎月「それらしい数字」で上書きしてしまうと、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかが見えなくなります。

見直しの出発点は月次決算

事業計画を見直すには、まず実績が必要です。

ここでいう実績とは、単なる預金残高のことではありません。売上、原価、粗利、固定費、役員報酬、人件費、税金、社会保険料、売掛金、買掛金、在庫、借入残高、現預金残高を、月次で確認できる状態を指します。

月次決算がないまま計画を見直そうとすると、どうしても判断が感覚的になります。

  • 「思ったより売れていない」
  • 「広告費が高い気がする」
  • 「お金が減っている気がする」
  • 「忙しいのに、利益が残っていない」

この状態では、どこを直すべきか判断できません。

月次決算を活かす基礎は、経営者自身が会計を「読める・話せる・使える・見通せる」状態を作ることにあります。月次決算は、経営者が会社の最新業績を把握し、会計を経営に活かすための入口になるものです。

創業期の月次決算では、少なくとも次の資料を毎月確認します。

資料見るべきこと
月次試算表売上、原価、粗利、固定費、利益の実績
資金繰り表入金、支払、借入返済、税金、社会保険料、現預金残高
売掛金一覧請求済み未回収、回収遅延、取引先別残高
買掛金・未払金一覧支払予定、支払サイト、資金繰りへの影響
在庫表過剰在庫、滞留在庫、仕入計画とのずれ
借入一覧元本返済、利息、返済開始時期、追加資金需要
KPI表問い合わせ、商談、成約、継続率、解約率などの行動指標

日本政策金融公庫も、中小企業向けの書式として資金繰り表や経営改善計画書などの様式を案内しています。金融機関への対応という観点からも、資金繰り計画を策定するための資料をあらかじめ整えておくことが重要になります。
出典:日本政策金融公庫|各種書式ダウンロード 中小企業の方

計画と実績の差異は、5つに分けて見る

事業計画の見直しでは、差異を大きく5つに分けて捉えます。

  1. 売上差異
  2. 粗利差異
  3. 固定費差異
  4. 資金繰り差異
  5. 行動計画差異

この5つを分けずに「計画未達」とひとくくりにしてしまうと、対応を誤ります。同じ未達でも、原因はさまざまだからです。

  • 売上そのものが足りないのか
  • 売上はあるが、粗利が低いのか
  • 固定費が先行しているのか
  • 利益はあるが、入金が遅れているのか
  • そもそも、必要な行動量を実行できていないのか

原因が違えば、打ち手もまったく変わってきます。

売上差異は「単価・数量・時期・構成」に分ける

売上が計画を下回った場合、まずは単価と数量に分けて考えます。

売上高は、基本的には「単価×数量」です。ただ、実務ではもう一段細かく分ける必要があります。

  • 問い合わせ件数
  • 商談件数
  • 見積提出件数
  • 成約件数
  • 初回購入件数
  • 継続購入件数
  • 客単価
  • 購入頻度
  • 解約率
  • 紹介件数
  • 販売チャネル別売上
  • 商品・サービス別売上
  • 得意先別売上

たとえば、売上計画が月300万円、実績が月180万円だったとします。このとき、「売上が120万円足りない」と眺めるだけでは、次の一手が見えてきません。

  • 問い合わせ件数が少なかったのか
  • 問い合わせはあったが、商談化しなかったのか
  • 商談はあったが、見積提出まで進まなかったのか
  • 見積は出したが、成約率が低かったのか
  • 成約はしたが、単価が低かったのか
  • 大口案件の受注時期が、翌月へずれただけなのか
  • 継続率が、想定より悪かったのか

ここまで分解しなければ、広告を増やすべきか、営業プロセスを直すべきか、商品設計を見直すべきか、価格を変えるべきか、判断できません。

KPIは、KGIである売上や利益を達成するために管理すべき、一定の不確実性を含む指標です。売上高とほぼ同じ意味になってしまう顧客数を追うだけでは足りません。商談件数、成約率、リード獲得数といった、実際に管理し、行動へつなげられる指標を設定する必要があります。

創業後の売上差異は、次のような表で確認すると、実務に落とし込みやすくなります。

項目計画実績差異確認すべき原因
問い合わせ件数100件60件▲40件広告、紹介、SEO、展示会、営業活動
商談化率40%30%▲10pt問い合わせ品質、初回対応、ターゲット
成約率30%20%▲10pt提案内容、価格、競合、信頼形成
客単価30万円25万円▲5万円値引き、低単価商品の比率、見積設計
売上高360万円90万円▲270万円上記要因の複合

大切なのは、売上差異を「努力不足」の一言で片づけないことです。数字に分解していけば、次に変えるべき行動が自然と見えてきます。

粗利差異は「売れた内容」と「原価の実態」を見る

売上が計画どおりでも、粗利が下がることがあります。

創業期には、売上を作るために値引きをする、外注比率が高くなる、想定外の材料費がかかる、納品後の修正対応が増える、在庫ロスが出る、といったことが起こりがちです。

粗利差異は、主に次の観点で見ていきます。

  • 商品・サービス別の売上構成
  • 値引き率
  • 仕入単価
  • 外注費
  • 材料費
  • 物流費
  • 在庫ロス
  • 返品・クレーム対応
  • 作業時間
  • 人件費の原価化
  • 案件別採算

たとえば、計画では粗利率60%を想定していたのに、実績が40%だったとします。このとき、「原価が高い」と結論づけるだけでは不十分です。

  • 高粗利商品が売れていないのか
  • 低粗利商品が、想定以上に売れているのか
  • 初期顧客の獲得のために、値引きしすぎたのか
  • 外注先の単価設定が合っていないのか
  • 自社メンバーの工数を見落としていたのか
  • 不良・手戻り・返品が増えているのか

創業期の粗利差異は、事業モデルそのものの検証でもあります。次のような兆候が出ているときは、注意が必要です。

  • 売れてはいるが、儲からない
  • 忙しいのに、現金が残らない
  • 受注するほど、外注費が増える
  • 安く売らないと、受注できない
  • 当初想定した顧客ではなく、別の顧客層に売れている

こうした兆候があるときは、単に売上計画を下方修正するのではなく、価格、提供範囲、契約条件、外注条件、商品構成そのものを見直す必要があります。

固定費差異は「使いすぎ」だけで判断しない

固定費が計画を超えると、すぐに削減を考えたくなります。

もちろん、不要な支出は見直すべきです。ただし、創業期の固定費には、将来の売上を作るための投資的な支出も含まれている点に注意が必要です。

  • 家賃
  • 役員報酬
  • 給与
  • 社会保険料
  • 広告宣伝費
  • システム利用料
  • 専門家報酬
  • リース料
  • 減価償却費
  • 保険料
  • 通信費
  • 採用費
  • 教育研修費

固定費差異を見るときは、「削るべき費用」と「成果を検証すべき投資」を分けて考えます。

広告宣伝費が計画より多い場合は、単に削るのではなく、リード獲得単価、商談化率、成約率、顧客獲得単価、回収期間を確認します。採用費や人件費が先行している場合は、その人員がどの売上・業務・管理体制を支えているのかを確認します。会計ソフト、証憑管理、給与計算、契約管理にかかる費用は、短期的にはコストですが、月次決算や税務説明、金融機関対応を支える基盤でもあります。

一方で、固定費が売上の立ち上がりよりも先に増えている場合は、注意が必要です。たとえば、次のような状況です。

  • 計画では3か月目から売上が伸びる前提だったが、実績はまだ検証段階にある
  • それにもかかわらず、人件費、家賃、システム費、広告費は予定どおり増えている
  • 資金繰り表では、6か月後に現預金が薄くなる

このような場合は、採用時期、広告投下、外注化、設備投資、役員報酬、借入計画までを含めて見直す必要があります。

固定費差異は、「計画超過だから削減」と機械的に判断するものではありません。「売上・粗利・資金繰りとの関係のなかで、維持できるかどうか」という視点で見るべきものです。

資金繰り差異は、利益差異より先に見る

創業後の事業計画の見直しで、もっとも重要なのは資金繰りです。

利益が出ていても、資金が足りなくなることがあります。掛け取引では、売上の計上と入金に時間差があり、利益は資金の出入りとは別に計算されます。そのため、黒字であっても資金の回収が間に合わなければ、資金ショートは起こり得ます。

資金繰り差異では、次の項目を見ていきます。

  • 売上入金の遅れ
  • 売掛金の回収遅延
  • 在庫の増加
  • 仕入・外注費の支払前倒し
  • 買掛金の支払サイト短縮
  • 税金の支払
  • 源泉所得税の納付
  • 社会保険料の納付
  • 消費税の納付・中間申告
  • 法人税・地方税の納付
  • 借入返済
  • 設備投資支出
  • 補助金入金の遅れ
  • 役員借入・親族借入の返済予定

資金繰り表は、少なくとも3か月先、できれば6か月から12か月先まで見ておきます。これは、売上、回収、原価支払、固定費、借入返済、税金支払をつなげて見る資料です。資金繰りを月次で把握し、予定と実績の差を検証することが、翌月以降の計画見直しに直結します。

創業期は、利益よりも先に、現預金残高の減り方が危険信号を出します。次のような項目は、いずれも損益計算書だけを見ていては気づきにくいものです。

  • 売上は増えているが、売掛金も増えている
  • 仕入や外注費の支払が、先に来る
  • 補助金は採択されたが、入金は数か月後になる
  • 消費税の納付時期を、資金繰りに入れていない
  • 社会保険料の会社負担を見落としている
  • 返済据置期間が終わり、元本返済が始まる

源泉徴収した所得税および復興特別所得税については、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。給与の支払が始まると、この納付資金を毎月の資金繰りに織り込んでおかなければなりません。
出典:国税庁|No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

また、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者については、一定の手続を行うことで、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金に係る源泉所得税等を年2回にまとめて納付できる、納期の特例があります。
出典:国税庁|A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

消費税についても、直前の課税期間の確定消費税額に応じて、中間申告・納付が必要となる場合があります。消費税は利益とは別に資金繰りへ影響しますので、課税事業者となる場合やインボイス登録を行う場合には、月次の資金計画に織り込んでおく必要があります。
出典:国税庁|No.6609 中間申告の方法

予実管理では「KGIとKPI」を分けて見る

創業後の予実管理では、売上高や利益だけを見ていては足りません。

売上高や利益は、あくまで結果指標です。これをKGIと捉えるなら、その手前にある行動指標、つまりKPIを合わせて確認する必要があります。

事業計画の予実管理は、売上高や利益などの財務業績について、計画と実績、差異、達成率を一覧化することが土台になります。ただし、PDCAのCheck・Actとして予実管理を機能させるには、財務業績だけでは不十分です。KGIに対する重要成功要因であるKPIも、あわせて議論する必要があります。

月次の確認では、たとえば次のように整理します。

区分指標例見直しの観点
KGI売上高、粗利、営業利益、現預金残高結果として、目標に届いているか
KPI問い合わせ数、商談数、成約率、客単価、継続率結果を生む前段階の行動が、足りているか
行動架電数、訪問数、広告出稿、提案書提出数実際に実行したか
資金指標売掛金残高、回収遅延、借入残高、返済額資金ショートのリスクがないか
管理指標月次締め日、証憑回収率、請求漏れ数字を信頼できる状態か

読み解き方は、状況によって変わります。

  • KGIが未達でも、KPIが改善しているなら、一定期間は施策を継続するという判断もあります
  • KGIが達成していても、KPIが悪化しているなら、将来の売上低下に注意が必要です
  • KGIもKPIも未達なら、計画の前提や行動量を見直す必要があります
  • KGIは達成しているが資金繰りが悪化している場合は、入金条件や在庫、支払条件を見直す必要があります

予実管理は、結果に一喜一憂するための資料ではありません。次の行動を決めるための資料です。

計画を見直すタイミング

創業後の計画見直しには、定期的に行う見直しと、臨時で行う見直しがあります。

毎月行う見直し

月次決算が出たら、毎月、次の項目を確認します。

  • 売上、粗利、固定費、営業利益
  • 現預金残高
  • 売掛金・買掛金
  • 在庫
  • 借入返済
  • 税金・社会保険料
  • KPI
  • 翌月以降の資金繰り

創業後1年目は、この毎月の見直しがとりわけ重要になります。計画の前提がまだ固まっておらず、少しのずれが資金繰りに大きく影響するためです。

四半期ごとに行う見直し

3か月ごとには、計画の前提をやや大きく見直します。

  • 顧客層は、想定どおりか
  • 商品・サービスは、想定した価格で売れているか
  • 広告投資の回収見込みはあるか
  • 採用計画を、前倒し・後ろ倒しすべきか
  • 設備投資の時期を、変えるべきか
  • 金融機関への報告内容に、変更が必要か

1か月だけのずれは、偶然かもしれません。しかし、3か月続くずれは、計画前提そのものの見直し対象と考えるべきです。

すぐに行う臨時の見直し

次のような場合は、月次を待たずに見直します。

  • 大口取引の失注
  • 主要取引先の入金遅延
  • 想定外の設備故障
  • 人員の退職
  • 大幅な原価上昇
  • 金融機関からの追加資料の依頼
  • 税金・社会保険料の支払見落とし
  • 補助金入金の遅れ
  • 売上の急増に伴う運転資金の不足
  • 許認可や契約条件の変更

創業期は、売上が伸びても資金繰りが悪化することがあります。むしろ成長局面ほど、早めの見直しが必要です。

見直しには4つのレベルがある

事業計画の見直しといっても、いつもすべてを作り直す必要はありません。見直しには、レベルがあります。

レベル1:月次の修正予測

もっとも軽い見直しです。当月の実績を反映して、翌月以降の売上、支払、入金、現預金残高を更新します。

売上時期が1か月ずれた、支払時期が変わった、想定より広告費が増えた、といった場合に行います。

この見直しでは、元の計画を残します。上書きするのではなく、「当初計画」「最新見込」「実績」を分けて管理します。

レベル2:下期計画・年度計画の見直し

3か月から6か月の実績を見て、年間計画を修正します。

  • 売上の立ち上がりが遅れている
  • 粗利率が、当初想定と違う
  • 固定費を見直す必要がある
  • 採用時期を変更する
  • 借入返済に備えて、資金繰りを作り直す

この場合は、金融機関への説明にも使えるよう、見直しの理由を記録しておきます。

レベル3:事業モデルの見直し

売上・粗利・顧客層・KPIのずれが大きい場合は、事業モデルそのものを見直します。

  • 想定していた顧客が、買わない
  • 別の顧客層が、反応している
  • 販売チャネルが、機能していない
  • 価格が、市場に合っていない
  • 原価構造が、想定と違う
  • 営業体制を変えないと、伸びない

この段階では、単なる数字の修正ではなく、商品設計、価格、契約条件、営業体制、外注体制、在庫方針、採用計画までを検討します。

レベル4:資金調達・撤退基準の見直し

資金繰りが厳しくなる場合は、早めに資金調達や縮小の判断を検討します。

  • 追加融資が必要か
  • 自己資金を追加投入するか
  • 投資を延期するか
  • 固定費を削減するか
  • 採用を止めるか
  • 不採算商品をやめるか
  • 取引条件を変更するか
  • 事業の一部撤退を検討するか

ここで大切なのは、資金が尽きる直前になってから相談しないことです。

金融機関の融資審査では、事業内容、業績、今後の見通し、資金使途、返済原資などを個別に確認します。担保の有無よりも先に、「そもそも貸せる先かどうか」という債務者評価から審査が始まります。

資金繰りが悪化してから慌てて説明するよりも、早い段階で計画差異、対応策、資金見通しを示すほうが、金融機関との信頼関係を保ちやすくなります。

当初計画を消してはいけない

創業後に計画を見直すとき、やってはいけないことがあります。当初計画を消して、実績に合わせて都合よく書き換えてしまうことです。

計画を見直すこと自体は、必要です。ただし、その際も、当初計画、修正計画、実績は、必ず分けて残しておきます。

区分役割
当初計画創業時に、どの前提で判断したかを残す
修正計画実績を踏まえて、今後の見通しを更新する
実績実際に起こった結果を記録する
差異分析なぜずれたかを説明する
行動計画次に何を変えるかを決める

こうしておくことで、後から説明できる状態になります。

金融機関から見ても、税理士・公認会計士から見ても、将来の投資家や承継先から見ても、「計画を作りっぱなしにせず、実績を見て判断している会社」という印象につながります。

上場企業の例ではありますが、東京証券取引所のグロース市場では、上場会社に対して、「事業計画及び成長可能性に関する事項」について、少なくとも1事業年度に1回以上、進捗状況を反映した最新の内容で開示することが求められています。創業期の会社であっても、将来の資金調達やM&Aを見据えるなら、計画の進捗と更新内容を説明できる文化を、早いうちから作っておくことが大切です。
出典:日本取引所グループ|その他の情報 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示

計画未達の原因を「外部環境」だけのせいにしない

創業後に計画が未達になると、外部環境を理由にしたくなることがあります。

  • 景気が悪い
  • 競合が強い
  • 広告単価が上がった
  • 人が採れない
  • 物価が上がった
  • 顧客の意思決定が遅い

もちろん、外部環境は重要です。ただ、外部環境だけで話を終わらせてしまうと、改善策が出てきません。

計画未達の原因は、少なくとも次の4つに分けて考えます。

原因区分見直し方
外部環境市場縮小、競合、価格高騰、採用難市場・価格・販売チャネルの再確認
計画前提単価、成約率、原価率、入金サイトの見誤り前提数値を、実績に基づき修正
実行不足商談数不足、請求遅れ、広告未実施行動量・担当・期限を再設定
管理不足月次未整備、証憑不足、資金繰り未更新経理・会計・管理フローを整備

経営改善計画のような場面でも、売上計画を金融機関向けの見栄えから逆算して作ってしまうと、実績が未達になったときに資金繰りが回らなくなる危険があります。売上が減少傾向にある会社が、根拠なく右肩上がりの計画を作ることは、問題認識そのものを誤らせます。

これは、創業期でも同じです。

  • 「3か月目から、売上が伸びるはず」
  • 「広告を出せば、問い合わせが増えるはず」
  • 「採用すれば、売上が増えるはず」
  • 「単価を上げても、顧客は離れないはず」

これらはすべて仮説です。実績で検証し、違っていれば、早めに修正する必要があります。

行動計画まで修正して、はじめて見直したことになる

計画見直しでもっとも重要なのは、数字を変えることではありません。行動を変えることです。

  • 売上計画を下げるだけでは、経営は改善しません
  • 広告費を減らすだけでは、顧客は増えません
  • 粗利率を上げる計画にしても、価格や原価を変えなければ実現しません
  • 資金繰り表を作り直しても、入金条件や支払条件を交渉しなければ、現金は増えません

見直しをしたら、必ず行動計画にまで落とし込みます。

課題修正行動担当期限確認指標
問い合わせ不足既存顧客への紹介依頼、広告LP修正、週次で広告反応確認代表翌月末問い合わせ件数、CPA
成約率低下提案書テンプレート修正、価格別プラン作成営業担当2週間以内見積提出率、成約率
粗利率低下外注単価見直し、値引き承認ルール設定代表・経理当月末案件別粗利率
入金遅れ請求締日統一、入金予定表作成、遅延先への督促経理毎週売掛金回収日数
固定費増加サブスク棚卸、採用時期見直し代表翌月10日固定費総額
資金不足6か月資金繰り表作成、金融機関へ早期相談代表・税理士2週間以内月末現預金残高

行動計画では、必ず、担当者・期限・確認指標を決めます。

  • 「頑張る」
  • 「営業を強化する」
  • 「コストを見直す」

これでは、翌月に検証できません。「誰が、いつまでに、何を、どの数字で確認するか」まで決めて、はじめて見直しになります。

金融機関へは、悪い情報ほど早く説明する

創業融資を受けている場合、計画未達を金融機関に伝えるべきか迷うことがあります。

  • 悪い数字を見せると、不利になるのではないか
  • まだ挽回できるかもしれない
  • 聞かれるまで、黙っていたほうがよいのではないか

しかし、金融機関との関係では、悪い情報ほど、早めに整理して説明したほうがよい場面が多くあります。

このとき大切なのは、単に「売上が未達です」と報告することではありません。次のような内容を、セットで整理して説明します。

  • 当初計画
  • 実績
  • 差異
  • 原因
  • 対応策
  • 今後の資金繰り
  • 返済への影響
  • 追加資金需要の有無
  • 経営者としての判断

金融機関が事業計画を見る場合は、収益面の定量的な計画、つまり狭義の事業計画を重視する傾向があります。一方で、創業者側は、会社概要、顧客課題、商品・サービス、ビジネスモデルを含む広義の事業計画として捉えていることも多いものです。そのため、どの資料を、何の目的で提出するのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。

創業後の金融機関への説明では、次のセットを用意しておくと実務的です。

  • 月次試算表
  • 資金繰り表
  • 借入一覧
  • 売上・粗利の計画対実績表
  • 売掛金一覧
  • 主要KPI
  • 差異分析メモ
  • 今後3か月から6か月の対応策
  • 必要に応じた修正計画

融資審査では、直近の試算表、資金繰り表、銀行取引一覧表、事業計画書、納税証明書などの資料が求められることがあります。創業後も、これらをすぐに出せる状態にしておくと、追加融資や条件相談の際に対応しやすくなります。

税務・社会保険・届出への影響も見直す

事業計画の見直しは、売上や利益だけの問題ではありません。計画が変わると、税務、社会保険、届出、契約、資金調達にも影響が及びます。

  • 利益が計画より増えた場合は、法人税・所得税・住民税・事業税の納税資金を、早めに見込む必要があります
  • 課税売上が伸びる場合は、消費税の納税義務や、インボイス登録後の納税負担を確認する必要があります
  • 人を採用する場合は、給与、源泉所得税、社会保険料、労働保険料を、資金繰り表に入れる必要があります
  • 役員報酬を変えたい場合は、法人税上の定期同額給与などの制約を確認する必要があります
  • 設備投資を前倒しする場合は、減価償却、消費税、補助金、融資、リースとの関係を確認する必要があります
  • 外注を増やす場合は、源泉徴収、インボイス、業務委託契約、下請関係を確認する必要があります

事業計画を見直すときは、数字だけでなく、制度面への対応もあわせて確認します。

特に創業初年度は、税務届出、給与支払事務所、源泉所得税、消費税、インボイス、電子帳簿保存法、社会保険、労働保険などが重なります。計画の変更によって、当初は想定していなかった手続や納付が発生することもあります。

計画見直しを月次会議に組み込む

事業計画の見直しは、気が向いたときに行うものではありません。月次の運用のなかに組み込むべきものです。

創業期であっても、次のような月次会議を設けると、計画が経営に使えるようになります。

月次会議の基本構成

  1. 前月実績の確認
  2. 売上差異の確認
  3. 粗利差異の確認
  4. 固定費差異の確認
  5. 資金繰り差異の確認
  6. KPIの確認
  7. 税金・社会保険・借入返済の確認
  8. 翌月以降の見通し更新
  9. 行動計画の修正
  10. 金融機関・専門家への共有事項の整理

月次会議で大切なのは、資料を読むだけで終わらせないことです。次のところまで決めます。

  • 「どの差異が一時的か」
  • 「どの差異が構造的か」
  • 「資金繰りに、何か月後に影響するか」
  • 「次に変える行動は何か」
  • 「誰が、いつまでに実行するか」
  • 「金融機関へ説明すべきか」

見直し後の計画は、実績管理しやすい形にする

事業計画を見直すとき、複雑すぎる表を作る必要はありません。むしろ創業期は、毎月更新できる形にしておくことが重要です。

月次で見る項目内容
売上商品別・得意先別・チャネル別
原価仕入、外注、人件費、物流費
粗利売上総利益、粗利率
固定費家賃、人件費、広告費、専門家費用、システム費
利益営業利益、経常利益
資金入金、支払、借入返済、税金、社会保険料
現預金月初残高、月末残高、最低残高
KPI問い合わせ、商談、成約、継続、解約
行動担当者、期限、実施状況

予測財務諸表を作る場合でも、PLだけでなく、BSやCFまで作ることで、資金の流れや使い方を、より精緻に設計できます。特に、運転資本、設備投資、法人税、消費税などは、支払のタイミングによってキャッシュフローを悪化させるため、事業計画上も考慮しておくことが望ましいといえます。

創業期から、最初に高度な財務モデルを作る必要はありません。それでも、少なくとも資金繰り表と月次試算表が連動している状態は、作っておくべきです。

見直しで避けたい3つの落とし穴

落とし穴1:実績に合わせて、計画を甘くする

  • 実績が下がったから、計画も下げる
  • 固定費が増えたから、そのまま計画に入れる
  • 資金繰りが厳しいから、売上入金を楽観的に置く

これでは見直しではなく、帳尻合わせです。計画を下げる場合でも、その理由と打ち手を明確にします。

落とし穴2:売上だけを上げる修正をする

資金繰りが厳しくなると、将来の売上を高めに置きたくなります。しかし、売上を上げるなら、その根拠となるKPI、広告費、営業人員、商談数、成約率、単価、回収条件も、一緒に見直す必要があります。

売上の数字だけを上げても、資金繰りは改善しません。

落とし穴3:資金繰りを見ずに、投資を続ける

創業期は、成長投資と資金繰りのバランスが難しい時期です。

  • 広告を止めれば、売上が伸びない
  • 採用しなければ、対応できない
  • 設備投資しなければ、生産性が上がらない

しかし、資金が尽きれば、事業は続きません。投資を続ける場合は、回収期間、追加資金需要、最悪ケースの資金残高を確認しておきます。

専門家に相談すべきタイミング

次のような場合は、早めに税理士・公認会計士へ相談する価値があります。

  • 月次試算表が、翌月中に出ていない
  • 資金繰り表を作っていない
  • 売上はあるのに、現金が残らない
  • 粗利率が、計画と大きく違う
  • 固定費が、想定以上に増えている
  • 納税資金を見込んでいない
  • 消費税やインボイスの影響が分からない
  • 役員報酬を変えたい
  • 採用・給与・社会保険を、計画に入れていない
  • 追加融資を検討している
  • 金融機関に、計画未達を説明する必要がある
  • 補助金の採択後の管理や実績報告が不安である
  • 事業モデル自体を見直すべきか、判断できない

専門家に相談する際は、「計画を作ってください」ではなく、次の資料を持って相談すると、より具体的な検討ができます。

  • 創業時の事業計画
  • 月次試算表
  • 資金繰り表
  • 売掛金・買掛金一覧
  • 借入一覧
  • 固定費一覧
  • 商品・サービス別売上
  • KPI管理表
  • 税務届出の控え
  • 給与・社会保険の状況
  • 契約書・請求書のひな形
  • 今後の投資・採用予定

計画の見直しは、税務申告のためだけに行うものではありません。経営判断、資金繰り、金融機関対応、月次決算体制のために行うものです。

創業後の計画見直しについて相談したい方へ

犬飼公認会計士・税理士事務所では、創業・開業・法人化の段階から、事業計画を「融資や申請のための書類」としてではなく、月次決算、資金繰り、税務、金融機関説明、初年度の運用につながる経営管理の土台として整理することを重視しています。

  • 創業後に、計画と実績がずれてきた
  • 売上はあるのに、資金が残らない
  • 月次決算をどう見ればよいか、分からない
  • 資金繰り表を作り直したい
  • 金融機関に計画未達をどう説明すべきか、整理したい
  • 税金、社会保険、借入返済まで含めて、事業計画を見直したい
  • 創業初年度のうちに、会計・証憑・資金管理の体制を整えたい

このような段階では、計画数値を修正するだけでは足りません。自社の場合に、どの差異を重視し、どの行動を変え、どの資料を整え、どのタイミングで金融機関や専門家に説明するかを、あわせて確認する必要があります。

創業後の事業計画の見直しについて、月次決算や資金繰りまで含めて相談したい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

論点実務上の確認事項
事業計画の位置づけ創業時に作って終わる書類ではなく、仮説を検証し続ける経営管理資料である
見直しの出発点月次決算、資金繰り表、売掛金・買掛金一覧、KPI表を整える
売上差異単価、数量、時期、商品構成、チャネル、成約率に分解する
粗利差異原価率、外注費、値引き、商品構成、在庫ロス、案件別採算を確認する
固定費差異削る費用と、成果を検証すべき投資的支出を分ける
資金繰り差異入金遅れ、売掛金、在庫、税金、社会保険料、借入返済を確認する
KGIとKPI売上・利益だけでなく、問い合わせ、商談、成約、継続率など行動指標を見る
見直し頻度月次で実績確認、四半期で前提見直し、重大変化時は臨時で見直す
見直しレベル月次修正、年度計画修正、事業モデル修正、資金調達・撤退基準修正に分ける
当初計画の扱い当初計画、修正計画、実績を分けて保存し、上書きしない
行動計画誰が、いつまでに、何を行い、どの指標で確認するかを決める
金融機関対応計画未達は、原因、対応策、資金繰り、返済影響とセットで早めに説明する
税務・社会保険源泉所得税、消費税、法人税、社会保険料、役員報酬への影響を確認する
専門家相談数字の修正だけでなく、月次決算、資金繰り、税務、金融機関説明まで含めて相談する
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