共同創業で会社を始めるとき、最初につまずきやすいのが「株式をどう分けるか」という問題です。
創業メンバーで均等に分けるべきか。代表者が多めに持つべきか。資金を出した人と、実際に手を動かす人とで、比率をどう考えればよいのか。会社の価値がまだ定まっていない段階では、どの配分にもそれなりの理屈が立つように見えるものです。
ただ、創業時の株主構成は、単なる「仲間内の取り分」ではありません。
持株比率は、会社の意思決定から始まり、追加の資金調達、役員選任、定款変更、M&A、IPO、事業承継、共同創業者の離脱、少数株主への対応、税務上の時価評価にまで影響していきます。創業時にはわずかな差に見えても、事業が前へ進むほど、後から直すことが難しくなっていきます。
とりわけスタートアップや成長志向の会社では、創業者、共同創業者、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、事業会社、ストックオプションの対象者と、時間の経過とともに株主構成が移り変わっていきます。エクイティファイナンスは、資金の返済が不要である一方で、経営権の一部を手放す性質を持ちます。ですから創業時の株式設計は、その後の資金調達や、持株比率の希薄化まで見据えて考えておく必要があります。
この記事では、共同創業者の持株比率を決めるときに確認しておきたい考え方を、創業初期の実務判断にそのまま使える形で整理します。株価算定や投資契約の細部は別の論点として脇に置き、ここでは「誰を株主にするか」「何%持たせるか」「辞めたときにどうするか」「将来困らないために何を残すか」の四点に絞ってお話しします。
共同創業時の株式配分は「貢献度」だけで決めない
共同創業者の株式配分は、しばしば「誰がどれだけ貢献するか」を軸に考えられます。もちろん、貢献度は大切な視点です。事業アイデアを出した人、顧客を開拓する人、プロダクトを作る人、資金を出す人、代表者として責任を負う人では、会社への関わり方がそれぞれ異なります。
しかし、持株比率を貢献度だけで決めてしまうと、後になって問題が起こりやすくなります。
創業時に見込んでいた貢献が、実際には続かないこともあります。最初は全員がフルコミットするつもりでいても、途中で関与の度合いが下がっていくことは珍しくありません。創業時は対等に見えていても、事業が進むにつれて、資金繰り、採用、金融機関への対応、投資家への対応、契約交渉、税務申告、役員報酬の決定といった責任が代表者に集中していく。その現実がはっきりしてくる場面もあります。
そのため、共同創業時の株式配分では、少なくとも次の観点を分けて考えておく必要があります。
| 判断軸 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 過去の貢献 | 事業アイデア、試作品、顧客開拓、資金提供など、設立前にどのような貢献があったか |
| 将来の関与 | フルタイムで関与するのか、副業的に関与するのか、いつから参加するのか |
| 役割の重要性 | 代表者、営業責任者、技術責任者、管理責任者など、代替が難しい役割か |
| 意思決定責任 | 誰が最終的に経営判断を負い、金融機関・投資家・従業員に説明するのか |
| 資金調達方針 | 将来、外部投資家を入れる可能性があるか、ストックオプション枠を確保する必要があるか |
| 離脱時の処理 | 共同創業者が退任・退職・関与停止した場合に、株式をどう扱うか |
創業時の資本政策で問われるのは、「今の納得感」だけではありません。将来の会社運営に耐えられる構造になっているかどうかです。
持株比率は、会社の意思決定権に直結する
株式会社では、株主は株式を通じて会社に関与します。株主は有限責任を前提としながら、株主総会で議決権を行使し、会社の基本的な事項に関わっていきます。会社法上、株主総会、取締役、取締役会、種類株式、株式の譲渡制限、株主総会の決議には、それぞれ細かなルールが定められています。ですから持株比率を考えるときは、単なる割合としてではなく、会社法上の意思決定の仕組みと合わせて確認しておくことが欠かせません。
出典:e-Gov法令検索|会社法
創業初期の会社で特に意識しておきたいのは、過半数、3分の2、3分の1という三つのラインです。
過半数を持つ株主は、通常の株主総会決議に強い影響力を持ちます。3分の2以上を持つ株主は、定款変更などの特別決議事項について、強い決定力を持ちます。反対に、3分の1を超える株主は、特別決議事項に対して拒否権に近い影響力を持つ場面が出てきます。ただし、実際の決議要件は、定款、議決権を行使できる株式、出席状況、種類株式の有無などによって変わります。ですから「何%あれば必ず支配できる」と単純に言い切ることはできません。
それでも、創業時に次のような構造を意識しておくことには意味があります。
| 持株比率の目安 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 100% | 代表者が単独で所有と経営を一体管理できるが、共同創業・外部人材・投資家参加の余地は狭い |
| 3分の2以上 | 定款変更など重要事項に強い決定力を持ちやすい |
| 過半数超 | 通常の意思決定に強い影響を持ちやすい |
| 3分の1超 | 重要事項の決議を止める力を持ち得る |
| 少数持分 | 経済的権利はあるが、単独で経営を動かす力は限定的。ただし少数株主権には注意が必要 |
共同創業では、感情としては「対等に分けたい」と考えたくなるものです。しかし会社経営では、最後に誰が決めるのかが曖昧なままの状態こそ、危うさをはらみます。創業時の熱量が高いうちは表面化しなくても、資金繰りが苦しいとき、役員報酬を下げるとき、追加の投資を受けるとき、事業方針を変えるときになって、意思決定の詰まりが一気に表に出てくるのです。
50%・50%は公平に見えて、実務上は詰まりやすい
共同創業者が2人の場合、50%ずつ持つ形は、一見すると公平です。どちらか一方が支配するわけではなく、対等な関係を表せるため、創業時には納得しやすい配分でもあります。
しかし、50%・50%の資本構成は、意見が一致している間しか機能しません。
事業方針、追加の資金調達、役員報酬、採用、借入、事業売却、外部投資家の受け入れ、共同創業者の退任。こうした場面で意見が分かれると、会社の意思決定が止まってしまう可能性があります。とりわけ、株主でもあり取締役でもある2人が対立すると、株主総会でも取締役会でも結論が出しにくくなります。
共同創業者の関係は、会社設立の時点では、非常に近いところから始まります。ところが会社が進んでいくにつれて、責任、稼働量、リスク負担、経営判断の重さに差が生まれてきます。代表者が資金繰り、金融機関、投資家、従業員への説明を一身に背負うのであれば、その責任に見合った支配権を持てる設計のほうが、会社の運営は安定しやすくなります。共同創業の持株比率については、代表者が一定以上の比率を持ち、共同創業者には役割・貢献・将来の関与に応じて配分する、という考え方が実務上よく検討されます。
大切なのは、どちらが偉いかではありません。会社として、難しい局面でもきちんと意思決定できる構造になっているかどうかです。
共同創業者を株主にする前に確認すべきこと
共同創業者だからといって、必ずしも大きな株式を渡すべきとは限りません。
株式は、給与や役員報酬とは性質が異なります。いったん株主になれば、その人は会社の所有者としての地位を持ちます。役員を辞めても、従業員でなくなっても、株式を持ち続ける限り、株主として残り続けます。会社を離れた元共同創業者が大きな株式を持ち続けると、将来の資金調達、M&A、事業承継、重要な定款変更の場面で支障になることがあります。
そのため、共同創業者に株式を渡す前には、次の点を確認しておくべきです。
| 確認事項 | 実務上の意味 |
|---|---|
| フルコミットか | 副業的な関与なのか、生活を賭けて参加するのかで、株式配分の重みが変わる |
| 役割が代替困難か | その人がいないと事業が成立しないのか、外部採用でも代替できるのか |
| いつから参加するか | 設立時から参加するのか、数か月後・資金調達後に参加するのか |
| 退任時にどうするか | 辞めた後も株式を持ち続けるのか、一部または全部を戻すのか |
| 株式以外の報酬手段はないか | 役員報酬、給与、業務委託報酬、ストックオプションなどで調整できないか |
| 外部投資家を入れる予定があるか | 将来の希薄化や、投資家から見た資本政策の納得感に影響する |
創業時に最も避けたいのは、「仲間だから」「最初からいたから」「揉めたくないから」という理由だけで、大きな株式を渡してしまうことです。
株式は、後から簡単に取り戻せるものではありません。とくに会社の価値が上がった後に株式を買い戻そうとすると、買戻しの資金、税務上の時価、会社法上の手続、財源規制といった問題が次々に立ちはだかります。非公開会社には株式の流通市場がないため、価格の合意そのものも容易ではありません。少数株主への対策や自己株式の取得には、法務・税務の両面から慎重な検討が求められます。
創業株主間契約で「辞めたとき」を決めておく
共同創業者に一定割合の株式を持たせる場合は、創業株主間契約を検討しておくべきです。
創業株主間契約とは、創業者・共同創業者の間で、株式の保有、譲渡、退任・退職時の取扱い、競業、秘密保持、意思決定、買戻しなどをあらかじめ定めておく契約です。会社法上の定款とは別に、創業者どうしの合意として設計するものと考えてください。
とりわけ重要になるのが、共同創業者が途中で会社を離れる場合です。
設立時に大きな株式を持った共同創業者が、短期間で退任したにもかかわらず株式を持ち続ける。これは、残った創業者や会社にとって、大きな負担になります。辞めた人が議決権を持ち続ける。外部投資家を入れるときに、その人の同意が必要になる。M&Aの場面で、株式譲渡に協力してもらえない。こうした事態は、会社の成長を止める要因になりかねません。
創業株主間契約で検討しておきたい代表的な論点は、次のとおりです。
| 論点 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 譲渡制限 | 株式を第三者へ自由に譲渡できないようにするか |
| 退任・退職時の処理 | 会社を離れた場合に、株式の一部または全部を譲渡する義務を設けるか |
| 買戻価格 | 取得価額、時価、一定の算定式など、どの価格を使うか |
| ベスティング類似の考え方 | 一定期間の在籍・貢献に応じて、持ち続けられる株式を増やすか |
| Good Leaver / Bad Leaver | やむを得ない退任と、背信的な退任で扱いを変えるか |
| 競業・秘密保持 | 退任後に同じ事業を行うことや、機密情報の使用をどう制限するか |
| 議決権行使 | 重要事項について、事前協議や合意のルールを設けるか |
| 死亡・相続 | 共同創業者に相続が発生した場合に、株式をどう扱うか |
ここで気をつけておきたいのは、「契約に書けば必ずそのとおりに処理できる」と考えないことです。
会社自身が株式を買い取る場合には、自己株式取得に関する会社法上の手続や、財源規制が問題になります。共同創業者どうしで株式を譲渡する場合にも、譲渡制限株式であれば、会社の承認手続が必要になることがあります。契約内容、定款、株主総会・取締役会の手続、そして税務上の時価。これらが噛み合っていなければ、後から説明しにくい処理になってしまいます。
出典:e-Gov法令検索|会社法
株式の買戻し・譲渡には税務上の時価が関係する
共同創業者が辞めたときに株式を戻してもらう設計では、税務上の時価にも目を配っておく必要があります。
創業直後は、会社の価値がほとんどないように見えます。しかし、資金調達の後、売上が伸びた後、利益を計上した後、事業価値が上がった後には、株式の価値も上がっている可能性があります。その状態で、創業時の払込価額のまま株式を譲渡したり、無償で返還したりすると、贈与税、所得税、法人税、みなし配当、受贈益といった課税関係が問題になる場合があります。
国税庁は、個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合には、時価と対価との差額に相当する金額を、贈与により取得したものとみなす旨を示しています。また、「著しく低い価額」にあたるかどうかは、個々の具体的な事案に基づいて判定されるとしています。
出典:国税庁|No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
したがって、共同創業者の離脱時に株式を戻す条項を設ける場合でも、買戻しの価格をどう定めるか、税務上どの時点の価値をどう評価するか、そして会社・既存株主・譲渡人・譲受人のどこに課税関係が生じるかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
とくに、次のような処理は慎重に検討すべきです。
| 処理 | 注意点 |
|---|---|
| 創業時の払込価額で買い戻す | 会社価値が上がっている場合、低額譲渡・贈与・受贈益の論点が出る可能性がある |
| 無償で返還させる | 実質的な利益移転として、税務上の問題が生じる可能性がある |
| 会社が自己株式として取得する | 会社法上の手続・財源規制・みなし配当などの確認が必要 |
| 他の創業者が買い取る | 個人間譲渡・時価・贈与税の確認が必要 |
| 投資家が入った後に買い戻す | 優先株式・普通株式の価値差、投資契約、株主間契約との整合が必要 |
この領域は、創業者どうしの感覚だけで処理してよいものではありません。後になって「形式は売買だが、実質は利益移転ではないか」と見られてしまうと、税務上も会社運営上も、説明が難しくなります。
株式分散は、将来の資金調達・M&A・承継を難しくする
創業初期には、少額ずつ、多くの人に株式を持ってもらうことがあります。知人、親族、取引先、支援者、初期メンバー、顧問的な協力者などに出資してもらう形です。
資金が足りない時期には、確かに助かる場面もあります。しかし、株式が分散すると、将来の意思決定にかかるコストが上がっていきます。
少数株主であっても、会社法上の権利を持ちます。計算書類の閲覧、会計帳簿の閲覧請求、株主総会に関する権利、役員責任の追及、株式譲渡に関する手続。非公開会社であっても、少数株主の権利を無視することはできません。
株式分散が問題になるのは、単に「株主が多いと面倒だ」という話にとどまりません。外部の投資家から見れば、資本政策の整理状況は、その会社の管理体制そのものを映し出します。誰が何株を持っているのか。名義株主はいないか。退職者が株式を持っていないか。株主名簿と実態が一致しているか。過去の株式譲渡に、税務・法務上の問題はないか。こうした点は、投資、M&A、IPO準備、事業承継のいずれの場面でも確認されるところです。
経済産業省のスタートアップ投資契約に関する資料でも、スタートアップの成長段階に応じて、創業者の持株比率、取締役会、投資家、ガバナンス体制が変化していくことが整理されています。創業初期は、創業者が株主かつ経営者として意思決定する形も、一つのガバナンスのあり方です。しかしステージが進むにつれて、多様な投資家が入り、監督と執行を分離する体制の整備が重要になってきます。
出典:経済産業省|我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項
将来のIPOを意識するのであれば、事業計画や成長可能性の説明も重要になります。東京証券取引所は、グロース市場の上場会社に対して、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を継続的に開示することを求めています。これは資本政策そのものを扱った制度ではありません。それでも、将来の上場を考える会社では、創業初期の段階から、株主構成、資金調達、成長計画、ガバナンス、説明可能性を切り離さずに整えておく必要があります。
出典:日本取引所グループ|事業計画及び成長可能性に関する事項の開示
代表者がどの程度持つべきか
代表者がどの程度の株式を持つべきかについて、絶対的な正解はありません。事業の性質、共同創業者の人数、外部投資の予定、役員構成、将来のストックオプション枠、事業承継の可能性によって、答えは変わってきます。
ただし、創業初期に確認しておきたい基本姿勢は、はっきりしています。
代表者が実質的な経営責任を負うのであれば、代表者が会社の重要な判断を進められるだけの持株比率を持っておくことが望ましい。そういう場面は多いものです。共同創業者が重要な役割を担う場合であっても、代表者と共同創業者とで、責任・関与・リスクが同じとは限らないからです。
反対に、代表者が過度に高い比率を持ちすぎると、共同創業者のインセンティブが弱くなってしまうことがあります。外部の投資家から見て、経営チーム全体のコミットメントが弱く映ることもあります。将来のストックオプション枠や、投資家への割当ての余地も考えておく必要があります。
そのため、代表者の持株比率は、次の順番で検討していくと整理しやすくなります。
- 会社の最終的な意思決定を誰が担うか
- 共同創業者の役割と関与期間をどう評価するか
- 外部投資家を入れる予定があるか
- 将来の役職員向けインセンティブ枠を確保するか
- 定款変更・資金調達・M&Aで意思決定が詰まらないか
- 共同創業者が離脱した場合に株式をどう扱うか
持株比率は、感情ではなく、意思決定とリスク負担の設計です。
共同創業者に株式を渡さない選択肢もある
共同創業者や初期メンバーに対して、必ず設立時に普通株式を渡さなければならないわけではありません。
創業初期には、株式ではなく、役員報酬、給与、業務委託報酬、成果連動報酬、将来のストックオプション、新株予約権、リストリクテッド・ストックに近い設計といった、別の方法でインセンティブを組み立てることもできます。
もちろん、これらにも会社法、税務、会計、労務の論点があります。とくに新株予約権やストックオプション、種類株式は、資金調達、インセンティブ、M&A、事業承継といった場面で活用される一方、発行条件、評価、税務、会計処理の検討が欠かせません。
ここで大切なのは、「株式を渡すか、渡さないか」ではありません。その人に何を期待し、どの期間コミットしてもらい、どの成果に対して、どの経済的利益を与えるのか。この点を整理しておくことです。
創業メンバーへのインセンティブを普通株式だけで設計してしまうと、離脱時の問題が重くのしかかります。将来の貢献に応じて報いる仕組みを作りたいのであれば、普通株式以外の方法も含めて検討する価値があります。
定款・株主名簿・議事録・契約書を整えておく
共同創業時の資本政策は、口頭の合意で済ませてはいけません。
設立時には、定款、発起人の決定、出資の払込み、設立登記、株主名簿、議事録、役員選任、代表取締役の選定など、会社法上の基礎資料が整っている必要があります。定款は、会社の組織や活動に関する自治規範であり、会社設立後の株主や機関を拘束する重要な文書です。
共同創業者との間では、少なくとも次の資料を整えておきたいところです。
| 資料 | 役割 |
|---|---|
| 定款 | 株式譲渡制限、発行可能株式総数、機関設計、公告方法などを定める |
| 株主名簿 | 誰が何株を持っているかを明確にする |
| 設立時の決定書・議事録 | 発起人、出資、役員、代表者などの決定根拠を残す |
| 創業株主間契約 | 共同創業者間の株式・退任・譲渡・競業・秘密保持を定める |
| 出資金の払込記録 | 実際に誰がいくら払ったかを説明できるようにする |
| 株式譲渡契約書 | 株式移動があった場合の原因・対価・時期を残す |
| 税務上の検討メモ | 時価、課税関係、会計処理を後から説明できるようにする |
これらは、形式的な書類ではありません。将来、金融機関、投資家、税務署、M&Aの相手方、そして後継者に対して、会社の成り立ちを説明するための基礎資料です。
共同創業時に避けたい資本政策の典型
共同創業時には、次のような設計を避けておくべきです。
| 避けたい設計 | なぜ問題になるか |
|---|---|
| 何となく均等に分ける | 意思決定が止まりやすく、責任と権限が一致しない |
| 副業的な関与者に大きな株式を渡す | 実際の貢献が続かない場合に、株式だけが残る |
| 退任時の株式処理を決めていない | 離脱者が大株主として残り、将来の調達・M&A・承継に影響する |
| 少額出資者を増やしすぎる | 株主対応、同意取得、株式管理が複雑になる |
| 株主名簿と実態がずれている | 名義株主、過去の譲渡、相続で説明が難しくなる |
| 低額・無償で株式を戻す前提にする | 税務上の時価・贈与・受贈益の論点が生じる可能性がある |
| 投資家を入れる前提がない | 希薄化、ストックオプション枠、優先株式発行時に設計し直しが必要になる |
創業時は、会社の価値がまだ小さく、関係者どうしの信頼も厚いため、細かな合意をつい後回しにしがちです。しかし資本政策は、会社が成長した後になるほど、修正が難しくなっていきます。
相談前に整理しておきたい事項
共同創業者との持株比率を専門家に相談する場合は、次の事項を整理しておくと、論点がはっきりします。
| 整理事項 | 確認内容 |
|---|---|
| 創業メンバー | 誰が、いつから、どの程度関与するのか |
| 代表者 | 最終的な経営責任を誰が負うのか |
| 出資額 | 誰がいくら出資するのか、金銭以外の貢献をどう扱うのか |
| 役割分担 | 営業、開発、財務、管理、採用、資金調達を誰が担うのか |
| 将来の資金調達 | 公庫融資、銀行融資、エンジェル、VC、事業会社投資を検討するか |
| ストックオプション枠 | 役職員向けのインセンティブを想定するか |
| 離脱ルール | 退任、退職、死亡、競業、重大な義務違反のときにどうするか |
| 株式移動の方法 | 個人間譲渡、会社買取、自己株式取得、種類株式などを検討するか |
| 税務上の確認 | 時価、低額譲渡、贈与、みなし配当、受贈益の可能性 |
| 将来の出口 | IPO、M&A、事業承継、長期保有のどれを想定するか |
これらを整理しないまま株式比率だけを決めてしまうと、後になって契約、税務、会計、資金調達、意思決定のどこかで無理が生じます。
まとめ
共同創業者との株式配分は、単なる創業メンバー間の取り分ではありません。誰が会社の意思決定を担うのか。誰が経営責任を負うのか。誰が将来の資金調達や金融機関への対応に向き合うのか。途中で離脱した人の株式をどう扱うのか。外部投資家や役職員へのインセンティブを入れる余地を残しておくのか。
こうした点を整理したうえで持株比率を決めていく。それが、創業初期の資本政策です。
創業時は、会社の将来がまだ見えない段階です。だからこそ、勢いや信頼関係だけで決めてしまうのではなく、後から説明できる形で、定款、株主名簿、創業株主間契約、出資記録、税務上の検討を整えておく必要があります。
共同創業者との株式配分、創業株主間契約、法人設立時の株主構成、そして将来の資金調達を見据えた資本政策について整理したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所へご相談ください。創業時の手続だけでなく、税務、会計、資金繰り、月次決算、金融機関への対応、さらには将来の投資・M&A・承継まで見据えて、どこから整えていくべきかを一緒に確認していきます。
振り返り
| 論点 | 重要な考え方 |
|---|---|
| 共同創業者の株式配分 | 貢献度だけでなく、将来の関与、責任、意思決定、離脱時の処理まで含めて決める |
| 代表者の持株比率 | 会社の最終判断を担う人に、責任に見合う決定権があるかを確認する |
| 50%・50% | 公平に見えるが、意見対立時に意思決定が止まる可能性がある |
| 創業株主間契約 | 退任・退職・譲渡・競業・秘密保持・買戻しを事前に定める |
| 離脱時の株式処理 | 契約だけでなく、会社法上の手続と税務上の時価を確認する |
| 株式分散 | 少数株主対応、投資、M&A、IPO、承継で問題になりやすい |
| 税務上の時価 | 低額譲渡や無償返還は、贈与税・所得税・法人税などの論点が生じる可能性がある |
| 資料整備 | 定款、株主名簿、議事録、出資記録、株主間契約を、後から説明できる形で残す |