補助金申請に必要な事業計画と数値計画|採択のためではなく、実行できる計画にするという考え方

補助金を申請するとき、事業計画書や数値計画の作成が必ずといってよいほど求められます。

ここで誤解が生じやすいのは、事業計画を「審査に通るための文章」としてとらえてしまうことです。もちろん、申請書として読みやすく、制度の趣旨や審査項目に沿って整理されていることは大切です。ただ、それだけでは足りません。

補助金の事業計画は、採択のためだけに作るものではないからです。

採択後に、実際に実行できるか。
支出に必要な資金を準備できるか。
対象経費として説明できるか。
売上や利益にどうつながるか。
補助金が入金されるまで、資金繰りが持ちこたえられるか。
実績報告や事業化状況報告に耐えられるか。
金融機関や社内の関係者に説明できるか。

ここまで含めて考えておかなければ、補助金は経営判断の助けにはなりません。

この記事では、個別の補助金ごとの申請様式や記載テクニックではなく、補助金申請に共通して必要となる「事業計画」と「数値計画」の考え方を整理します。

目次

補助金の事業計画は、作文ではなく「実行計画」である

補助金申請の事業計画には、制度ごとに求められる形式があります。

たとえば小規模事業者持続化補助金では、電子申請システムに「経営計画」と「補助事業計画」を入力し、必要書類を添付したうえで、地域の商工会等に事業支援計画書の作成を依頼する、という流れが示されています。つまり補助金申請では、補助対象経費を記載するだけでは足りず、自社の経営計画と補助事業計画を分けて整理することが求められているわけです。
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>事務局|小規模事業者持続化補助金【一般型・通常枠】

省力化投資補助金の一般型では、省力化の効果、投資回収期間、3〜5年の事業計画期間内における付加価値額の増加、人手不足の解消に向けた設備等の導入などが、事業計画上の要素として示されています。投資の内容だけでなく、その投資が業務量の削減、付加価値の向上、投資回収にどうつながるのかまで説明する必要がある、ということです。
出典:中小企業省力化投資補助金事務局|一般型とは

さらにミラサポplusでは、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金について、申請には3〜5年の事業計画、付加価値額の成長、賃上げ、GビズID、採択後の事業化状況報告などが必要である旨が案内されています。要件は補助金ごとに異なりますが、近年の補助金では、単年度の支出計画にとどまらず、数年単位の事業成果や、賃上げ・生産性向上との接続が重視される傾向にあります。
出典:ミラサポplus|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開

こうして見ていくと、補助金の事業計画は「採択されるための説明資料」ではないと分かります。「補助金を使って何を実行し、どの数字をどう変えるのかを説明する資料」なのです。

事業計画で最初に整理すべきなのは、制度ではなく事業目的

補助金申請で最初に考えるべきことは、「どの補助金を使えるか」ではありません。

先に置くべき問いは、自社が何を実現したいのか、です。

新しい商品・サービスを開発したいのか。
既存事業の生産性を高めたいのか。
人手不足を解消したいのか。
販路を広げたいのか。
設備投資によって原価を下げたいのか。
新しい市場へ進出したいのか。
賃上げに耐えられる収益構造をつくりたいのか。

事業目的が曖昧なまま補助金を探すと、制度に合わせて事業内容を組み立てる形になりがちです。

これは危うい進め方です。

補助金に合わせて作った事業計画は、採択後の実行段階で無理が出やすいからです。対象経費として申請したものの、実際には社内で使いこなせない。売上計画を高く置いたものの、営業体制が伴わない。設備投資はしたものの、原価低減や生産性向上を月次で確認できない。こうした状態では、補助金を受けても経営改善にはつながりません。

補助金の事業計画は、まず次の順番で考えていきます。

  1. 自社の経営課題は何か
  2. その課題を解決するために、どの事業施策が必要か
  3. その施策に必要な投資・支出は何か
  4. その投資・支出を補助金で支援してもらう合理性は何か
  5. 補助金がなくても、その事業に経営上の合理性があるか

この順番が崩れると、補助金そのものが目的になってしまいます。

補助金申請に必要な事業計画とは、制度に合わせた作文ではありません。事業目的から逆算された実行計画です。

「補助事業」と「会社全体の経営計画」は分けて考える

補助金申請で大切なのは、補助対象となる事業と、会社全体の経営計画を混同しないことです。

補助事業とは、補助金の対象として申請する特定の取り組みを指します。設備導入、システム構築、販路開拓、新商品開発、海外展開、省力化投資など、制度の目的に沿って実施する事業のことです。

一方の会社全体の経営計画には、既存事業も含めた売上、利益、資金繰り、人員、借入、投資、経営課題が含まれます。

補助金申請では、この二つを接続して説明する必要があります。

補助事業だけを立派に書いても、会社全体の経営状況と整合していなければ、実行可能性に疑問が残ります。反対に、会社全体の経営方針だけを広く書いても、補助金を使って実施する具体的な事業内容が曖昧であれば、補助対象事業としての妥当性は伝わりません。

整理すべき関係を並べると、次のようになります。

会社全体の課題
 ↓
補助事業で解決する課題
 ↓
補助対象となる投資・支出
 ↓
補助事業による売上・利益・生産性への影響
 ↓
会社全体の経営計画への反映
 ↓
実績管理・金融機関説明への接続

補助事業は、会社全体から切り離された別プロジェクトではありません。

会社全体の経営計画のなかで、その補助事業がどの位置づけにあるのかを示すことが求められます。

事業計画に必要なのは「思い」だけではなく、前提の整理である

補助金申請では、事業に対する熱意や社会的な意義を説明することも大切です。

しかし、思いだけでは事業計画にはなりません。

事業計画で重要なのは、読み手が「この会社は、何を、なぜ、どのように実行し、どの数字で成果を確認するのか」を理解できることです。

そのためには、少なくとも次の前提を整理しておく必要があります。

  • 現在の事業内容
  • 現在の課題
  • 対象となる顧客・市場
  • 競合や代替手段
  • 自社の強み
  • 補助事業で実施する内容
  • 既存事業との関係
  • 必要な設備・システム・外注・人員
  • 実行スケジュール
  • 売上・利益への影響
  • 資金繰りへの影響
  • 実行後の管理方法

この整理が足りない計画は、文章としては前向きに見えても、実行段階で必ず詰まります。

とくに補助金申請では、「何を買うか」ばかりが先行しがちです。本来説明すべきなのは、「その投資で何が変わるのか」のほうです。

機械を導入するなら、何の工程が改善されるのか。
システムを導入するなら、どの業務時間が削減されるのか。
広告を出すなら、どの顧客層に届き、どの売上につながるのか。
専門家に依頼するなら、どの成果物が生まれ、社内でどう活用するのか。

事業計画とは、支出の説明ではなく、支出によって実現する経営上の変化の説明です。

数値計画は、売上だけでは足りない

補助金申請の数値計画では、どうしても売上計画に意識が向きます。

けれども、売上だけでは事業の実行可能性は判断できません。

売上が増えても、粗利が低ければ利益は残りません。
利益が出ても、入金が遅れれば資金繰りは苦しくなります。
補助金が入っても、自己負担や対象外経費が大きければ手元資金は減ります。
設備を入れても、固定費が増えれば損益分岐点は上がります。

補助金申請に必要な数値計画では、少なくとも次の数字をつなげて考えていきます。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 粗利
  • 人件費
  • 外注費
  • 広告宣伝費
  • 減価償却費
  • 営業利益
  • 投資額
  • 補助対象経費
  • 補助対象外経費
  • 補助金入金予定額
  • 自己負担額
  • 借入必要額
  • 月次資金繰り
  • 投資回収期間
  • 付加価値額
  • 労働生産性
  • 賃上げ原資

とりわけ大切なのは、損益計画と資金計画を分けて考えることです。

損益計画上は黒字であっても、設備代金や外注費の支払いが先行し、補助金の入金が後になれば、資金繰りは一時的に悪化します。

補助金は、数値計画のうえでは「利益を増やす制度」ではなく、「一定の支出を後から補填する制度」として扱う必要があります。

売上計画は「数量」「単価」「稼働率」に分解する

売上計画をつくるときに避けたいのは、根拠の薄い売上目標です。

「新商品を販売するため、売上が増加する」
「広告を強化するため、売上が伸びる」
「設備を導入するため、生産量が増える」

これだけでは、数値計画としては弱いと言わざるを得ません。

売上計画は、できる限り構成要素に分解していきます。

たとえば、売上は次のように分解できます。

売上高 = 販売数量 × 販売単価
売上高 = 顧客数 × 購入頻度 × 客単価
売上高 = 稼働時間 × 稼働率 × 時間単価
売上高 = 問い合わせ数 × 受注率 × 平均受注単価

どの分解方法が適切かは、業種や事業内容によって変わります。

大切なのは、売上目標を一つの大きな数字として置くのではなく、その数字に至る過程を説明できる状態にしておくことです。

売上計画の根拠として確認すべき事項は、次のとおりです。

  • 既存顧客からの売上か、新規顧客からの売上か
  • 販売数量はどのように見積もったか
  • 単価は既存商品・競合・見積実績と整合しているか
  • 受注率や成約率に根拠があるか
  • 生産能力や対応人員は足りているか
  • 販売開始までの期間を見込んでいるか
  • 季節変動や立ち上がり期間を考慮しているか
  • 売上増加に伴う原価や販管費を織り込んでいるか

売上計画は、高く書けばよいというものではありません。

実現可能性と成長性の、そのバランスが問われます。

粗利計画を作らなければ、投資判断はできない

補助金申請では売上増加の説明に意識が向きやすいのですが、経営判断としては粗利のほうが重要です。

会社に残る原資は、売上ではなく粗利だからです。

売上が増えても、材料費、仕入、外注費、手数料、配送費、ロイヤリティなどが増えれば、利益は想定したほど残りません。

補助事業として新商品や新サービスを始める場合、既存事業とは原価構造が異なることもあります。

確認しておきたいのは、次のような点です。

  • 既存事業と新事業で粗利率は違うか
  • 仕入単価や外注費は見積に基づいているか
  • 補助事業開始後に追加で必要となる人件費はあるか
  • 広告宣伝費や販売手数料を見込んでいるか
  • 不良品、返品、値引き、保証対応を見込んでいるか
  • 設備稼働率が低い初期段階でも、赤字になりすぎないか
  • 原価高騰や為替変動の影響を受けるか

補助金を使うことで、初期投資の一部は補填されるかもしれません。

しかし、補助事業そのものの粗利構造が弱ければ、補助金が終わった後に事業を継続できません。

補助金申請の数値計画では、「売上が伸びるか」だけでなく、「粗利が残るか」を必ず確認してください。

投資回収期間を見なければ、補助金の有利不利は判断できない

補助金は、投資判断を後押しする制度です。

だからこそ、その投資をどの程度の期間で回収できるのかを確認することが欠かせません。

省力化投資補助金の一般型でも、事業計画上の投資回収期間を根拠資料とともに提出することが示されています。補助金申請では、投資額と成果の関係を数値で説明する必要がある、ということです。
出典:中小企業省力化投資補助金事務局|一般型とは

投資回収を考えるときは、補助金控除後の自己負担額だけを見ていては足りません。

本来は投資総額を見たうえで、補助金がある場合とない場合の両方を確認すべきです。

確認したい数字は、次のようなものです。

  • 投資総額
  • 補助対象経費
  • 補助対象外経費
  • 補助金見込額
  • 自己負担額
  • 借入額
  • 借入返済額
  • 年間の増加粗利
  • 年間の削減コスト
  • 年間の追加固定費
  • 税務上の減価償却費
  • 補助金収入に伴う税務影響
  • 回収までの年数

補助金があることで、投資回収期間が短くなることはあります。

ただし、補助金があるからといって、投資そのものが合理的になるとは限りません。補助金がなければ成り立たない投資は、不採択のときや減額されたときに、大きなリスクを抱えることになります。

補助金申請の前に、少なくとも次の二つは比較しておきたいところです。

補助金が採択された場合の投資回収
補助金が不採択だった場合の投資回収

この比較をしてみると、補助金に依存した計画かどうかが見えてきます。

資金計画は「補助金入金後」ではなく「入金前」を見る

補助金の数値計画では、資金繰り表が要になります。

補助金は、採択されてすぐに入金されるわけではありません。多くの補助金では、交付決定後に補助事業を実施し、実績報告・確定検査を経て補助金額が確定し、その後に請求・入金という順序をたどります。ものづくり補助金の案内でも、公募開始、交付候補決定、交付申請・交付決定、補助事業開始、実績報告・確定検査、補助金額確定、事業化状況報告という流れが示されています。
出典:中小企業基盤整備機構|ものづくり補助金のご案内

ですから資金計画では、「最終的に補助金が入るから大丈夫」と構えるのではなく、補助金が入金されるまでに必要となる資金を確認しておかなければなりません。

資金計画で追いかけるのは、次の流れです。

  1. いつ発注するか
  2. いつ契約するか
  3. いつ納品されるか
  4. いつ支払うか
  5. いつ補助事業が完了するか
  6. いつ実績報告するか
  7. いつ補助金額が確定するか
  8. いつ入金される見込みか
  9. その間の運転資金は足りるか

補助金の数値計画では、損益計画だけでなく、月別の資金繰りを作っておくことが大切です。

とくに設備投資型の補助金では支払が先行しやすいため、自己資金、融資、リース、支払条件、借入返済スケジュールまで含めて確認しておく必要があります。

補助対象経費は、事業計画とつながっていなければならない

補助金申請では、見積書や経費明細を用意することがあります。

ここで大切なのは、経費をただ並べるのではなく、事業計画とつなげて説明することです。

なぜ、その設備が必要なのか。
なぜ、そのシステムが必要なのか。
なぜ、その外注が必要なのか。
なぜ、その広告費が必要なのか。
なぜ、その専門家費用が必要なのか。

補助対象経費は、補助事業の目的と対応している必要があります。

経費だけを見れば必要そうに思えても、事業計画との関係が弱ければ、補助事業としての必要性は伝わりません。逆に、事業目的が明確であっても、経費の使い道が曖昧であれば、実行可能性に疑問が残ります。

補助対象経費を整理するときは、次のように考えていくとよいでしょう。

  • 課題:何が問題なのか
  • 施策:その課題をどう解決するのか
  • 経費:その施策に何が必要なのか
  • 成果:その支出により何が変わるのか
  • 数字:売上、粗利、工数、原価、付加価値額にどう反映されるのか
  • 証憑:見積、契約、納品、支払、成果物をどう残すのか

補助金申請において、「経費の妥当性」と「事業の妥当性」は切り離して考えられません。

その経費が事業計画のどの部分を支えているのか。そこを説明できることが重要です。

審査で見られるのは、文章の上手さよりも整合性

補助金の審査には、制度ごとに審査項目が定められています。

内容は制度によって異なりますが、実務上、事業計画を見るときに重みを持つのは、計画全体の整合性です。

たとえば、次のような矛盾があると、計画の信頼性は下がります。

  • 課題は人手不足なのに、投資内容が売上拡大だけに寄っている
  • 新市場開拓を掲げているのに、顧客や販路が具体化されていない
  • 売上が大きく増える計画なのに、人員や生産能力が変わっていない
  • 粗利率が改善する計画なのに、原価低減の根拠がない
  • 賃上げを行う計画なのに、人件費増加を吸収する利益計画がない
  • 設備投資を行うのに、資金繰り表がない
  • 補助対象経費の必要性が、事業目的とつながっていない
  • 補助事業後の成果確認方法がない

事業計画では、部分ごとに良いことを書き並べるよりも、全体がつながっていることのほうが大切です。

現在の課題、実施内容、対象経費、売上計画、利益計画、資金計画、実行体制、効果検証が、一本の線でつながっているか。

ここが、事業計画の質を左右します。

数値計画には「根拠資料」が必要である

数値計画は、数字を置くだけでは不十分です。

問われるのは、その数字の根拠です。

補助金申請では、制度によって、見積書、決算書、試算表、賃金台帳、事業計画に関する書類、根拠資料などが求められることがあります。省力化投資補助金の一般型でも、投資回収期間を根拠資料とともに提出することが示されています。
出典:中小企業省力化投資補助金事務局|一般型とは

根拠資料には、次のようなものがあります。

  • 過去の決算書
  • 直近の試算表
  • 売上推移
  • 顧客別・商品別売上
  • 受注実績
  • 見積書
  • 商談状況
  • 市場データ
  • 既存設備の稼働状況
  • 作業時間の記録
  • 人員配置表
  • 原価資料
  • 資金繰り表
  • 借入返済予定表

根拠資料のある数字は、説明できます。

根拠資料のない数字は、希望や期待に見えてしまいます。

もちろん、将来計画である以上、すべてを確定的に証明することはできません。それでも、どの前提でその数字を置いたのかを説明できる状態にしておくことは必要です。

補助金申請では、数字を大きく見せることよりも、数字の作り方を説明できることのほうが重要です。

実行体制を軽く見ると、計画は机上のものになる

補助金の事業計画では、実行体制も見過ごせません。

計画そのものは魅力的でも、誰が実行するのか、いつ実行するのか、社内に必要な能力があるのか、外部委託先との役割分担はどうなっているのか。ここが曖昧であれば、実現可能性は弱くなります。

実行体制では、次の点を整理します。

  • 事業責任者
  • 実務担当者
  • 経理・証憑管理の担当者
  • 外注先・専門家の役割
  • 発注・契約・納品・検収の管理方法
  • スケジュール管理
  • 補助金事務局とのやり取り
  • 実績報告に必要な資料の管理
  • 事業開始後の月次確認

補助金申請では、事業の魅力だけでなく、「本当に実行できる会社か」が見られます。

しかも補助事業は、通常業務に加えて進めることになります。日常業務だけで手一杯の会社が、補助事業の管理、経費証憑の整理、進捗管理、実績報告まで行うには、それに見合った体制が要ります。

事業計画では、実行体制を曖昧にしないこと。ここは押さえておきたいところです。

補助金の事業計画は、金融機関にも説明できる必要がある

補助金を使う投資では、金融機関への説明が必要になる場面があります。

理由は単純です。

補助金は後払いであり、支出のほうが先に立つからです。

自己資金だけで対応できない場合、補助金入金までのつなぎ資金、設備資金、運転資金を金融機関から調達することになります。その際、金融機関は、補助金に採択されるかどうかだけを見ているわけではありません。

金融機関が知りたいのは、主に次の点です。

  • なぜ資金が必要なのか
  • 何に使うのか
  • 投資総額はいくらか
  • 補助金はいくら見込んでいるか
  • 自己負担はいくらか
  • 補助金が入金されるまで資金繰りは持つか
  • 不採択の場合はどうするか
  • 売上・利益はどう増えるか
  • 返済原資は何か
  • 計画未達の場合の対応はあるか

補助金申請用の事業計画と、金融機関説明用の事業計画が、それぞれ別の前提で作られていると、説明は難しくなります。

補助金申請で作成する数値計画は、金融機関への説明にも耐える形で作っておくべきです。

とくに、補助金の入金時期、借入返済時期、売上の立ち上がり時期がずれている場合には、月次の資金繰りで確認しておく必要があります。

税務・会計処理まで見込んでおく

補助金申請の段階では、採択や事業計画に意識が集中しがちです。しかし、税務・会計処理も早い段階から見込んでおくべきものです。

補助金を受け取れば、会計上・税務上の処理が必要になります。固定資産の取得や改良に充てる国庫補助金等については、一定の要件のもとで圧縮記帳の対象となることがありますが、補助金の種類、交付目的、取得資産、会計処理、申告要件によって判断が分かれます。国税庁の質疑応答事例でも、固定資産の取得または改良に充てるための国または地方公共団体の補助金等について、実質的に国や地方公共団体から直接交付を受けたものと認められる場合の取扱いが示されています。
出典:国税庁|間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳

ここで押さえておきたいのは、補助金の税務処理は「入金された後に考えればよい」ものではない、ということです。

事前に確認しておきたい事項は、次のとおりです。

  • 補助金収入をいつ認識するか
  • 固定資産を取得するのか、経費支出なのか
  • 圧縮記帳の対象となる可能性があるか
  • 消費税の取扱いに注意が必要か
  • 減価償却費にどう影響するか
  • 補助金入金年度の税負担がどうなるか
  • 税額控除や特別償却と併用する場合の整理が必要か
  • 月次決算でどのように処理するか
  • 決算・申告で必要な資料を保存しているか

補助金を使うと、損益、税金、固定資産、資金繰りが同時に動きます。

数値計画では、補助金の入金額だけを見るのではなく、税務・会計処理を経た後の実質的な影響まで見ておく必要があります。

計画未達のときに、何を見るかを決めておく

事業計画は、作成した時点で役目を終えるものではありません。

むしろ、補助事業を始めてから、計画と実績を比較するために使うものです。

ものづくり補助金の案内でも、補助金は受け取って終わりではなく、活用後にどう事業を伸ばしたか、どのような成果があったかを見ることが重要である旨が示されています。
出典:中小企業基盤整備機構|ものづくり補助金のご案内

補助金を使った後に見るべき数字は、制度や事業内容によって異なりますが、一般的には次のような項目です。

  • 補助対象事業の売上
  • 補助対象事業の粗利
  • 補助対象事業の受注件数
  • 問い合わせ数
  • 成約率
  • 生産数量
  • 稼働率
  • 作業時間
  • 外注費削減額
  • 人件費の増減
  • 付加価値額
  • 労働生産性
  • 資金繰り
  • 投資回収状況
  • 借入返済状況

計画未達それ自体が、ただちに問題になるわけではありません。

問題なのは、未達の原因を把握できないことです。

売上が届かなかったのか。
粗利率が届かなかったのか。
稼働率が届かなかったのか。
広告効果が届かなかったのか。
人員が不足したのか。
原価が上昇したのか。
資金繰りの制約で実行が遅れたのか。

事業計画と数値計画は、採択後の月次管理に使える粒度で作っておく必要があります。

採択される計画より、実行できる計画を作る

補助金申請では、採択されることが一つの目標になります。

けれども経営判断としては、採択されることだけを目的にしてはいけません。

採択されても、実行できなければ意味がありません。
実行できても、利益が残らなければ意味がありません。
利益が出ても、資金繰りが回らなければ意味がありません。
資金繰りが回っても、報告や証憑管理に耐えられなければ、問題は残ります。
補助事業の後に成果を説明できなければ、金融機関や社内に対する説明力も弱くなります。

補助金申請に必要な事業計画と数値計画は、次の三つを同時に満たすものでなければなりません。

  1. 制度の趣旨や要件に沿っていること
  2. 自社の経営課題と整合していること
  3. 採択後に実行・管理・説明できること

このうち一つでも欠ければ、補助金の活用は不安定なものになります。

補助金申請前に確認すべき事業計画・数値計画の振り返り

確認項目見るべきポイント
事業目的補助金を使う前に、自社が何を実現したいのかが明確になっているか
経営課題現在の課題と、補助事業で解決する課題がつながっているか
補助事業の内容何を実施し、何が変わるのかを具体的に説明できるか
対象市場・顧客誰に提供し、どの需要を取りに行くのかが整理されているか
売上計画数量、単価、顧客数、成約率、稼働率などの根拠があるか
粗利計画売上だけでなく、原価・外注費・手数料を踏まえて利益が残るか
販管費計画人件費、広告費、管理費、保守費などの追加コストを見込んでいるか
投資回収投資総額、補助金見込額、自己負担額、増加利益から回収可能性を見ているか
資金繰り補助金入金前の立替資金、不採択時、減額時の資金計画があるか
対象経費経費が補助事業の目的と直接つながっているか
実行体制事業責任者、経理担当、外注先、スケジュール管理が整理されているか
証憑管理見積、契約、納品、請求、支払、成果物を残せる体制があるか
税務・会計補助金収入、固定資産、圧縮記帳、消費税、減価償却への影響を確認しているか
金融機関説明資金使途、返済原資、補助金入金時期、事業効果を説明できるか
実績管理採択後に、計画と実績の差を月次で確認できるか

補助金申請を、経営判断に使える計画へ変える

補助金申請に必要な事業計画と数値計画は、採択のための形式的な書類ではありません。

自社の経営課題を整理し、投資内容を明確にし、資金繰りを確認し、税務・会計処理を見込み、採択後の実行管理までつなげていくための資料です。

事業計画を作る過程で、投資の目的が曖昧だったと気づくことがあります。
数値計画を作る過程で、資金繰りが足りないと分かることがあります。
粗利計画を作る過程で、売上は増えても利益が残らないと見えてくることがあります。
実行体制を確認する過程で、社内管理が追いつかないと分かることもあります。

これは、悪いことではありません。

申請前に分かるからこそ、投資内容を見直す、制度を変える、融資と組み合わせる、スケジュールを調整する、補助金を使わない判断をする、といった選択ができるのです。

補助金を経営に活かすためには、採択の可能性だけを見るのではなく、事業目的、数値計画、資金繰り、税務・会計、実行後の管理までを一体で整理しておくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、補助金申請を単なる書類作成としてではなく、事業計画、数値計画、資金計画、税務・会計処理、実行後の月次管理までを含めた経営判断として整理しています。

補助金を申請すべきか迷っている。事業計画や数値計画の前提を見直したい。採択後の資金繰りや税務処理まで見通しておきたい。このような場合には、現在の投資内容、試算表、資金繰り、見積書を整理したうえで、お問い合わせページよりご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次