採用・雇用維持・人材育成で使う助成金の判断軸|人件費を増やす前に確認すべき実務ポイント

目次

助成金は「人を雇う理由」を作るものではない

採用や人材育成を考え始めると、自然と助成金の情報が目に入ってきます。

「人を雇うなら、使える助成金はないだろうか」
「社員教育をするなら、補助される制度はないだろうか」
「賃上げや正社員化をするなら、何か支援策はないだろうか」

制度を探すこと自体は、決して悪いことではありません。実際、厚生労働省は、雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金など、多くの雇用関係助成金を公表しています。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金一覧

ただし、助成金は「人を雇う理由」を作るものではありません。

採用すべき人材がいる。維持すべき雇用がある。育成すべき能力がある。改善すべき処遇や職場環境がある。そのうえで、制度要件に合う助成金があるかを確認する。

考える順番は、これが基本です。

助成金から採用を考えると、判断が逆さまになります。

  • 本来必要ではない採用をしてしまう
  • 維持できない人件費を抱えてしまう
  • 形式的な研修だけを実施してしまう
  • 制度終了後の処遇や配置に困ってしまう
  • 支給申請に必要な労務書類が整わず、受給できない

助成金は、あくまで人材投資の判断を補助する制度です。人材投資そのものの合理性を、代わりに証明してくれる制度ではありません。

まず整理すべきは「採用・維持・育成・定着」のどれか

雇用関係助成金を検討するとき、最初に行うべきことは制度名を調べることではありません。自社が解決したい課題が、次のどれに近いのかを整理することです。

  • 採用したいのか
  • 雇用を維持したいのか
  • 人材を育成したいのか
  • 非正規雇用を正社員化したいのか
  • 賃金や処遇を改善したいのか
  • 離職率を下げたいのか
  • 育児・介護・高齢者・障害者雇用など、働き続ける環境を整えたいのか

この整理をしないまま助成金を探すと、「使えそうな制度」は見つかっても、「自社に必要な制度」にはたどり着きにくくなります。

厚生労働省の雇用関係助成金は、一覧上も目的ごとに整理されています。たとえば、雇用調整助成金は休業・教育訓練・出向を通じた雇用維持を、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金は一定の求職者の雇入れを、人材確保等支援助成金は雇用管理制度や職場環境の整備を、人材開発支援助成金は職務に関連する訓練やリスキリングなどを対象としています。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金一覧

したがって、助成金の検討は、次の順番で進めるのが基本になります。

  1. 人材に関する経営課題を整理する
  2. その課題に対する自社の施策を決める
  3. その施策に対応する助成金を探す
  4. 要件、手続、資金負担、労務管理、税務・会計処理を確認する
  5. 助成金を受けた後も、その施策を継続できるかを見る

制度は、最後に当てはめるものです。最初に制度から入ってしまうと、経営判断そのものが制度に引っ張られていきます。

採用で使う助成金は「誰を、なぜ、どの条件で雇うのか」が先にある

採用場面で使われる助成金には、一定の求職者を雇い入れる制度、試行雇用を支援する制度、中途採用の拡大を支援する制度などがあります。

たとえば、特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が困難な方の雇入れを支援するコースを含みます。トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、試行的に雇い入れる制度として整理されています。早期再就職支援等助成金には、離職を余儀なくされた労働者の再就職支援や雇入れ支援、中途採用拡大に関するコースがあります。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金一覧

ここで大切なのは、「助成金があるから採用する」のではなく、「採用したい人材像があり、その採用に制度が合うか」を確認するという姿勢です。

採用の判断では、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。

  • その人材は、どの業務に必要なのか
  • 採用後の売上、粗利、生産性、顧客対応、管理体制にどう影響するのか
  • 雇用期間、労働時間、賃金、社会保険・雇用保険の適用関係はどうなるのか
  • 採用後に教育・定着支援が必要か
  • 助成金が支給されるまでの人件費を支払えるか
  • 助成金がなくても継続雇用できるか

採用助成金は、採用コストの一部を支えてくれることはあります。しかし、採用後の人件費、教育コスト、管理負担、配置の難しさまでを解消してくれるわけではありません。

採用は、会社の固定費を増やす意思決定です。助成金の支給額ではなく、採用後の利益計画と資金繰りで判断する必要があります。

雇用維持で使う助成金は「一時的な悪化」か「構造的な悪化」かを見極める

雇用維持に関する助成金は、事業活動の一時的な縮小、出向、休業、教育訓練などと関係します。

代表的なものとして、雇用調整助成金は、休業、教育訓練、出向を通じて従業員の雇用を維持する制度として整理されています。また、産業雇用安定助成金には、在籍型出向や産業連携、人材確保、スキルアップに関するコースが設けられています。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金一覧

雇用維持の場面では、助成金を検討する前に、会社の状態を二つに分けて見る必要があります。

一時的に仕事が減っているだけなのか。それとも、事業構造そのものが変わりつつあるのか。

前者であれば、雇用を維持しながら需要の回復を待つ判断が合理的な場合があります。後者の場合、単に雇用を維持するだけでは固定費の負担が重くなり、資金繰りを悪化させるおそれがあります。

雇用維持の助成金を検討するときは、次の点を確認すべきです。

  • 売上減少は一時的か、構造的か
  • 粗利率は回復する見込みがあるか
  • 人員配置を変えれば収益性は改善するか
  • 休業、教育訓練、出向のどれが合理的か
  • 人件費を維持する資金余力はあるか
  • 金融機関に説明できる改善計画があるか

資金繰りが厳しい会社ほど、「雇用維持のために使える制度」を探したくなるものです。しかし、制度の前に見るべきなのは、雇用を維持した後の収益力です。

中小企業の経営では、売上や利益だけでなく、現金の流れを見なければ判断を誤ります。資金繰り表で入出金のタイミングを把握し、固定費と変動費を分け、経常収支を確認する。こうした作業は、雇用維持の判断においても欠かせません。

雇用維持は、従業員を守るための重要な判断です。同時に、会社を維持できなければ雇用も守れません。

助成金を使うかどうかは、雇用維持の意思だけでなく、雇用維持後に会社を立て直せるかまで含めて判断する必要があります。

人材育成で使う助成金は「研修実施」ではなく「能力投資」として考える

人材育成に関する助成金としては、人材開発支援助成金が代表的です。

厚生労働省は、人材開発支援助成金について、人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなどのコースを示しています。人材育成支援コースでは、雇用する被保険者に対して職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、OJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練などが対象となり得ます。
出典:厚生労働省|人材開発支援助成金

ここで注意したいのは、人材育成助成金を「研修費を安くする制度」としてだけ捉えないことです。

研修は、実施すれば成果が出るというものではありません。

  • どの業務能力を高めるのか
  • その能力が売上、品質、生産性、管理体制にどうつながるのか
  • 研修後に配置や役割を変えるのか
  • 訓練時間中の賃金や代替人員をどう考えるのか
  • 教育費用をどの部門で負担し、どの成果指標で検証するのか

ここまで整理して、初めて「人材投資」と呼べるものになります。

そもそも事業計画とは、達成したい定性的・定量的目標に対して、必要な経営資源や施策の仮説を定め、検証方法と指標を決めるものです。人材育成助成金も、この考え方から外してはいけません。

人材育成を経営判断として見るのであれば、研修後には次のような数字を確認していくことになります。

  • 一人当たり売上高
  • 一人当たり粗利
  • 作業時間
  • 再作業やクレームの発生状況
  • 定着率
  • 部門別利益
  • 教育訓練費と人件費の関係

研修を実施したかどうかだけで終わってしまうと、助成金は「一時的な費用補助」で終わります。研修後の成果を月次で追うことで、助成金は「能力投資の一部」として位置づけられます。

処遇改善・正社員化で使う助成金は、将来の人件費まで見る

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等の正社員化、賃金規定等の改定、賞与・退職金制度の導入、社会保険適用時の処遇改善などに関係する制度として整理されています。厚生労働省は、令和8年度版のパンフレットやQ&Aも公表しています。
出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金

このような処遇改善型の助成金は、会社にとって前向きな制度です。一方で、経営判断としては、非常に慎重に見る必要があります。

正社員化、基本給の引上げ、賞与制度、退職金制度、社会保険適用、労働時間の延長は、制度を導入した後も継続していきます。

助成金は一時的な収入です。人件費は継続的な支出です。

この違いを見落とすと、助成金を受けた年度はよく見えても、その後の固定費負担が重くのしかかることになります。

処遇改善型の助成金を検討するときは、次の点を必ず確認すべきです。

  • 正社員化後の給与水準は、社内の賃金バランスと整合するか
  • 社会保険料を含めた会社負担はいくら増えるか
  • 賞与や退職金制度を継続できるか
  • 賃金規程や就業規則は実態に合っているか
  • 対象者以外の従業員との公平性に問題はないか
  • 処遇改善後の生産性向上や粗利改善を見込めるか

また、賃上げに関しては、助成金だけでなく、賃上げ促進税制との関係も検討の対象になります。中小企業向け賃上げ促進税制は、対象期間や要件を満たす場合に、給与等支給額の増加に応じた税額控除を検討できる制度です。ただし、適用時期や要件は税制改正によって変わるため、最新の公式情報で確認する必要があります。
出典:中小企業庁|中小企業向け「賃上げ促進税制」

助成金と税額控除は、どちらも人件費に関係します。しかし、効果の出方は異なります。

助成金は、支給要件を満たして申請し、審査を経て入金される制度です。税額控除は、法人税や所得税の申告において税額を減らす制度です。

同じ「賃上げ支援」であっても、資金繰り、税務、会計処理、申告要件が異なります。賃上げを検討する場合は、助成金、税制、社会保険料、人件費率、価格改定、粗利率を一体で見る必要があります。

人材確保・定着型の助成金は「採用後に辞めない会社づくり」が前提になる

人材確保等支援助成金は、魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主などに対して助成するもので、人材の確保・定着を目的とする制度です。雇用管理制度や雇用環境整備、外国人労働者の就労環境整備、テレワークなど、職場定着に関するコースが設けられています。
出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金のご案内

この種類の助成金は、単なる採用費用の補助とは性質が異なります。採用した人が定着するように、制度や環境を整えることが中心になります。

  • 賃金制度
  • 諸手当制度
  • 人事評価制度
  • 職場活性化制度
  • 健康づくり制度
  • 業務負担軽減機器
  • 外国人労働者の就労環境整備
  • テレワークの適正な労務管理

こうした制度は、導入しただけでは意味がありません。運用され、従業員に理解され、実際に離職率や働き方に影響して、初めて意味を持ちます。

人材確保・定着型の助成金を検討する場合は、次の視点が必要です。

  • 離職の原因は何か
  • 制度導入でその原因に対応できるか
  • 制度を運用する管理者がいるか
  • 就業規則や賃金規程に反映できるか
  • 導入後の効果を測定できるか
  • 制度終了後も継続できるか

制度だけを整えても、現場の運用が変わらなければ定着にはつながりません。

採用難だから助成金を使うのではなく、採用後に辞めにくい会社にするための施策として助成金を位置づける。この視点が重要になります。

助成金活用に必要な労務管理は、申請時だけ整えるものではない

雇用関係助成金を検討する場合、避けて通れないのが労務管理です。

厚生労働省は、雇用関係助成金について、すべてに適用される共通の支給要領や共通様式を公表しており、実際に受給するためには、共通要領だけでなく各助成金の個別要件も満たす必要があるとしています。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金の申請にあたって

つまり、個別助成金のパンフレットだけを見ていても不十分です。共通要領、個別要領、申請様式、Q&A、改正情報を、あわせて確認する必要があります。

また、助成金の基礎になる労務管理は、申請直前に作るものではありません。

  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 出勤簿・勤怠データ
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿
  • 教育訓練記録
  • 有給休暇管理簿
  • 社会保険・労働保険関係書類

これらは、日常的に整備されている必要があります。

労働基準法上も、使用者には労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・賃金その他労働関係に関する重要書類の保存義務が定められています。
出典:e-Gov法令検索|労働基準法

労務実務の観点でも、就業規則、労働時間管理、年次有給休暇、労働者名簿、賃金台帳、労働保険・社会保険などは、経営労務診断や労務デューデリジェンスで確認される基本項目です。

助成金をきっかけに労務管理を整えることはできます。しかし、実態と合わない書類を、後から整えることはできません。

助成金に強い会社とは、申請書作成が上手い会社ではありません。日頃から労務管理が整っている会社です。

支給額より先に見るべき「人件費の継続負担」

助成金を検討するとき、どうしても支給額に目が行きます。しかし、経営判断として先に見るべきなのは、支給額ではなく、助成金が終わった後の人件費です。

採用すれば、毎月給与が発生します。正社員化すれば、社会保険料や賞与・退職金制度への影響が出ます。賃上げすれば、その後も上がった給与水準が続きます。教育訓練を行えば、受講時間中の賃金、代替人員、教育後の配置まで考える必要があります。

助成金は、こうした負担の一部を補助することはあります。しかし、将来の人件費を消してくれるわけではありません。

そのため、助成金を検討する際には、月次損益で次の数字を見るべきです。

  • 人件費総額
  • 社会保険料を含む法定福利費
  • 売上総利益に対する人件費率
  • 一人当たり粗利
  • 部門別・事業別の採算
  • 採用後・賃上げ後の営業利益
  • 資金繰り表上の給与支払月と助成金入金見込み

中小企業庁の会計活用の手引きでも、資金繰り、月次決算、実績検討会、全社予算管理、資金計画管理、部門別業績管理など、会計を使って経営課題を可視化する考え方が示されています。

助成金の判断でも、考え方は同じです。助成金の有無だけでなく、人件費を増やした後の月次損益と資金繰りを見る。この視点がなければ、制度活用は経営改善につながりません。

税務・会計処理を後回しにしない

助成金は、支給された後の税務・会計処理も確認が必要です。

消費税については、国または地方公共団体からの補助金や助成金等は、一般的に対価を得て行う取引ではないため、消費税の課税対象とならないものとして国税庁が例示しています。
出典:国税庁|No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例

ただし、消費税が不課税であることと、法人税・所得税上の収益や所得になるかどうかは、別の論点です。

助成金を受けた場合には、少なくとも次の点を確認すべきです。

  • どの時点で会計上収益として認識するか
  • 営業外収益、雑収入など、どの区分で表示するか
  • 対象となった人件費や教育訓練費との対応を月次でどう見るか
  • 未収計上すべきか、入金時処理でよいか
  • 税務申告上、益金・収入として処理する必要があるか
  • 消費税の課税売上割合等に影響するか
  • 金融機関説明用の損益では、助成金収入をどう補足説明するか

助成金収入が入ると、その月の損益だけがよく見えることがあります。しかし、助成金は通常、本業の継続的な売上ではありません。

金融機関や経営会議で数字を説明する場合には、助成金収入を含めた利益と、本業の実力としての利益を分けて見る必要があります。

助成金を受けた月だけ黒字になっていても、人件費増加後の本業利益が弱ければ、経営判断としては慎重に見なければなりません。

助成金を使わない方がよい場合もある

助成金は、使えるなら使った方がよい制度とは限りません。次のような場合には、慎重に判断すべきです。

  • 採用自体の必要性がはっきりしていない
  • 助成金がなければ雇用を維持できない
  • 制度終了後の人件費を負担できない
  • 労務管理が実態と合っていない
  • 就業規則や賃金規程を運用する体制がない
  • 教育訓練をしても配置や評価に反映できない
  • 支給申請や記録管理の負担が社内で対応できない
  • 助成金のためだけに制度変更をしようとしている

助成金を使うことで、会社の労務管理が整うこともあります。一方で、制度に合わせるために無理な運用をすると、現場が混乱することもあります。

制度を使うかどうかは、金額だけで判断すべきではありません。

  • 会社の人事方針と合っているか
  • 現場で運用できるか
  • 数字で効果を確認できるか
  • 専門家に確認すべき労務・税務・会計論点があるか

ここまで見て、初めて制度活用の判断になります。

助成金選びは、次の順番で進める

採用・雇用維持・人材育成で助成金を検討する場合は、次の順番で整理すると判断しやすくなります。

1. 人材に関する課題を明確にする

人が足りないのか。辞めてしまうのか。能力が足りないのか。賃金や処遇に課題があるのか。働き方や職場環境に課題があるのか。

まずは、課題を分けるところから始めます。

2. 制度ではなく、会社としての施策を決める

  • 採用する
  • 雇用を維持する
  • 教育訓練を行う
  • 正社員化する
  • 賃金制度を見直す
  • テレワークや両立支援制度を整える
  • 高齢者や障害者の雇用環境を整備する

助成金は、この施策に対して使えるかどうかを見るものです。

3. 対応する助成金を探す

採用なら、雇入れやトライアル雇用に関する制度。雇用維持なら、休業・出向・在籍型出向に関する制度。人材育成なら、人材開発支援助成金。正社員化や処遇改善なら、キャリアアップ助成金。定着や職場環境整備なら、人材確保等支援助成金や両立支援等助成金。

制度名ではなく、目的との対応で探していきます。

4. 共通要領と個別要件を確認する

雇用関係助成金は、共通要領と個別要件の双方を確認する必要があります。厚生労働省は、雇用関係助成金支給要領を公表しており、令和8年5月14日現在の最新支給要領や改正箇所も掲載しています。
出典:厚生労働省|雇用関係助成金支給要領

確認すべきなのは、支給額だけではありません。

  • 対象事業主
  • 対象労働者
  • 雇用保険の適用関係
  • 計画届の要否
  • 実施前手続の有無
  • 申請期限
  • 賃金要件
  • 併給調整
  • 不支給要件
  • 保存書類
  • 支給申請後の調査対応

この確認を後回しにすると、施策を実行した後になって「制度に合わなかった」と分かることがあります。

5. 資金繰りと月次損益を確認する

助成金は、多くの場合、支出や実施が先にあり、支給は後になります。

  • 採用後の給与
  • 教育訓練中の賃金
  • 社会保険料
  • 制度導入費用
  • 外部研修費
  • 代替人員の費用
  • 申請支援に関する専門家費用

これらを資金繰り表に入れ、助成金が入金される前でも会社が回るかどうかを確認します。

6. 税務・会計処理と説明方法を確認する

  • 助成金収入をどのように会計処理するか
  • 消費税の取扱いはどうなるか
  • 法人税・所得税上どう処理するか
  • 月次損益で本業利益とどう分けて説明するか
  • 金融機関にどのように説明するか

ここまで整理したうえで、制度を使うかどうかを決めます。

専門家に相談すべきタイミング

助成金の相談は、「申請書を出す直前」では遅いことがあります。

計画届が必要な制度では、施策の実行前に手続が必要になる場合があります。採用、訓練、正社員化、賃金改定、制度導入のタイミングによっては、後からでは対象にできないこともあります。

相談すべきタイミングは、次のような段階です。

  • 採用計画を立てる前
  • 教育訓練を申し込む前
  • 正社員化や賃金改定を決める前
  • 就業規則や賃金規程を変更する前
  • 雇用維持のための休業・出向を検討する前
  • 人件費増加後の資金繰りに不安がある段階
  • 賃上げ促進税制や他制度との関係を確認したい段階

雇用関係助成金は、社会保険労務士の専門領域と密接に関係します。一方で、採用後の人件費、資金繰り、税務・会計処理、月次管理、金融機関説明は、公認会計士・税理士の支援領域とも深く関わります。

助成金を本当に経営に活かすには、労務、会計、税務、財務を分けずに見る必要があります。

「助成金が使えるか」だけではなく、「その採用や賃上げを会社が続けられるか」「教育訓練が収益性にどう結びつくか」「制度活用後の数字をどう管理するか」。ここまで整理しておくことが重要です。

主な参照情報

本記事は、2026年7月12日時点で確認できる公的情報をもとに、採用・雇用維持・人材育成に関する助成金の判断軸を整理しています。実際の申請・適用にあたっては、必ず最新の支給要領、パンフレット、Q&A、各労働局の案内、個別制度の要件をご確認ください。

振り返り|採用・雇用維持・人材育成で助成金を使う前の判断軸

検討場面見るべき助成金の方向性先に確認すべき経営判断実務上の注意点
採用特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、中途採用関連制度などその人材が本当に必要か、採用後の粗利・生産性にどう影響するか雇用契約、雇用保険、賃金、勤務実態、定着支援を確認する
雇用維持雇用調整助成金、産業雇用安定助成金など売上減少が一時的か構造的か、雇用維持後に収益回復できるか休業、教育訓練、出向の実態と記録、資金繰りを確認する
人材育成人材開発支援助成金などどの能力を高め、それが売上・粗利・品質・生産性にどうつながるか訓練計画、受講記録、賃金支払、配置・評価への反映を確認する
正社員化・処遇改善キャリアアップ助成金など正社員化後・賃上げ後の人件費を継続できるか就業規則、賃金規程、社会保険料、社内公平性を確認する
人材確保・定着人材確保等支援助成金、両立支援等助成金など離職原因に対して制度導入が有効か制度を導入するだけでなく、運用・効果測定まで必要
税務・会計助成金収入全般入金額ではなく、損益・税務・資金繰りへの影響を分けて見る消費税、収益計上、月次損益、金融機関説明を確認する

助成金を検討するときに「どの制度が使えるか」だけで判断してしまうと、人件費の継続負担、労務管理、税務・会計処理、月次管理でつまずくことがあります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、助成金そのものの要件確認にとどまらず、採用計画、人件費の資金繰り、賃上げ後の収益構造、税務・会計処理、月次管理まで含めて、制度を経営判断に組み込むための整理を支援しています。

採用・雇用維持・人材育成に関する制度活用を、単なる申請ではなく、会社の数字と経営判断に結びつけて検討したい場合は、お問い合わせページからご相談ください。

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