会社分割の税務判断|分割型分割・分社型分割、適格要件、株主課税、消費税・登録免許税・不動産取得税まで確認すべき実務ポイント

会社分割は、事業を切り出すための代表的な組織再編スキームです。

不採算事業を別会社に移したい。M&Aの前に対象外の事業を切り離しておきたい。後継者に一部の事業を承継させたい。あるいは、持株会社化やグループ再編の前段階として、事業単位を整理しておきたい。実務の現場では、こうした場面で会社分割が検討されることがよくあります。

ただし、会社分割を「事業を別会社に移すための手続」とだけ捉えてしまうと、思わぬところでつまずきかねません。法人税務の世界では、会社法上の吸収分割・新設分割という区分とは別に、分割型分割か分社型分割か、適格分割か非適格分割か、株主課税はどうなるか、資本金等の額や利益積立金額はどう動くか、さらには消費税・登録免許税・不動産取得税まで、確認すべき論点が幾重にも重なります。

判断を一つ誤れば、想定外の譲渡益課税やみなし配当、株主側での譲渡損益、不動産取得税、登録免許税、消費税の届出漏れ、そして将来のM&Aや事業承継の場面で説明に窮する事態にもつながります。

前回の記事では、合併の税務判断を整理しました。合併は、被合併法人が消滅し、その資産・負債の全部が合併法人へ承継されるスキームです。これに対して会社分割は、分割法人が存続したまま、事業に関する権利義務の全部または一部を他の会社へ承継させる点に特徴があります。

会社法上の吸収分割は、株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後に他の会社へ承継させるものです。新設分割は、一または二以上の株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割によって新たに設立する会社へ承継させるものと整理されています。
出典:国税庁|吸収分割契約書・新設分割計画書の範囲

本稿では、会社分割を検討している会社が、専門家に相談する前に押さえておきたい税務判断の全体像を整理します。なお、会社法上の分割手続、債権者保護手続、反対株主への対応、労働契約承継法に基づく詳細な手続は本稿の主たる対象ではなく、あくまで法人税務を中心に扱います。

目次

会社分割で最初に整理すべき4つの軸

会社分割の税務判断では、まず次の4つを分けて考える必要があります。

判断軸内容税務上の意味
会社法上の類型吸収分割か、新設分割か承継先が既存会社か新設会社かを決める
法人税法上の類型分割型分割か、分社型分割か株主課税、資本金等の額、利益積立金額に影響する
税制適格性適格分割か、非適格分割か簿価移転か、時価課税かを左右する
分割対価株式か、親法人株式か、金銭か、無対価か適格要件、株主課税、不動産取得税に影響する

実務上の失敗の多くは、この4つを混同することから生じます。

たとえば、「吸収分割だから適格になる」「グループ内だから簿価で移せる」「新設会社を作るだけだから株主課税は生じない」といった理解は、いずれも不十分です。会社法上の手続と、法人税法上の課税関係は、同じ物差しで動いているわけではないからです。

吸収分割と新設分割|会社法上の入口

会社分割は、会社法上、大きく吸収分割と新設分割に分かれます。

類型内容実務上の使われ方
吸収分割既存の会社に事業を承継させるグループ内再編、M&A前の事業切出し、既存子会社への事業移管
新設分割新たに設立する会社に事業を承継させる新会社設立、事業承継、持株会社化、事業部門の独立

吸収分割では、分割会社と承継会社との間で吸収分割契約を締結します。新設分割では、分割会社が新設分割計画を作成します。吸収分割契約書とは、吸収分割をする会社と権利義務を承継する会社との間で締結される吸収分割契約を証する文書であり、新設分割計画書とは、新設分割をする会社が作成する新設分割計画を証する文書と位置づけられています。
出典:国税庁|吸収分割契約書・新設分割計画書の範囲

もっとも、税務判断においては、吸収分割か新設分割かだけで結論が出るわけではありません。むしろ問われるのは、分割対価が誰に交付されるのか、分割後に支配関係や事業が継続するのか、株主に課税関係が生じるのか、という点です。

分割型分割と分社型分割|税務判断の入口

法人税務では、会社分割を分割型分割と分社型分割に区分します。

この区分は、会社法上の吸収分割・新設分割とは別の切り口です。事業が既存会社に移るか新設会社に移るかではなく、分割対価が最終的に誰に帰属するかで捉えると、理解しやすくなります。

区分基本イメージ分割対価の帰属主な用途
分割型分割事業を切り出し、承継会社株式を分割法人の株主へ渡す分割法人の株主スピンオフ、兄弟会社化、事業承継、株主単位の事業分離
分社型分割事業を切り出し、承継会社株式を分割法人が保有する分割法人子会社化、M&A前の事業切出し、グループ内事業移管

分社型分割は、いわば「事業を子会社に移す」イメージです。分割法人は、事業を移した見返りとして分割承継法人の株式を取得します。分割法人の株主には、原則として直接の対価は交付されません。

一方の分割型分割は、事業を移したうえで、その承継会社の株式を分割法人の株主へ渡すイメージです。このため、分割法人の株主側にも課税関係が生じ得ます。

法人税法上、分割型分割と分社型分割は、分割対価資産の交付先によって区分されます。無対価分割の場合も、分割の直前に分割法人が分割承継法人株式を保有しているかどうかなどを踏まえて、分割型分割か分社型分割かが判断されます。
出典:国税庁|分割対価資産がない分割型分割に係る適格判定について

分割型分割と分社型分割では、株主課税が大きく異なる

分割型分割と分社型分割の違いは、単なる用語の違いにとどまりません。株主課税の有無が大きく変わってきます。

区分分割法人分割承継法人分割法人の株主
分社型分割資産・負債を移転し、承継会社株式等を取得資産・負債を受け入れる原則として直接の課税関係は生じない
分割型分割資産・負債を移転し、対価を株主へ交付する形になる資産・負債を受け入れるみなし配当・株式譲渡損益の検討が必要

非適格の分社型分割では、分割法人において、移転する資産・負債に係る譲渡損益が発生し、分割承継法人はその資産・負債を時価で取得します。ただし、分社型分割は分割法人の株主に対して直接対価を交付する構造ではないため、分割型分割とは異なり、株主側でみなし配当や株式譲渡損益が問題になることは通常ありません。

これに対して非適格の分割型分割では、分割法人において譲渡損益が発生するだけでなく、分割法人の株主にもみなし配当が生じます。さらに、分割承継法人株式または親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産の交付を受ける場合には、株式譲渡損益も認識しなければなりません。

つまり会社分割では、「会社側の税務」と「株主側の税務」を必ず切り分けて確認する必要があるということです。とりわけ同族会社では、株主が個人オーナー、親族、資産管理会社、従業員持株会、少数株主に分かれていることも多く、分割型分割を選べば、その影響は株主側の所得税・法人税・源泉税にまで波及します。

適格分割と非適格分割|簿価移転か時価課税か

会社分割の税務判断で最も重要になるのは、適格分割に該当するか、非適格分割に該当するかという点です。

区分分割法人側分割承継法人側株主側
適格分割原則として移転資産・負債に係る譲渡損益を認識しない税務上の帳簿価額を基礎に受け入れる分割型分割では株主課税の繰延べ・みなし配当不発生を検討
非適格分割原則として移転資産・負債を時価で譲渡したものとして譲渡損益を認識する原則として時価で受け入れる分割型分割ではみなし配当・譲渡損益を検討

組織再編税制は、非適格の組織再編成を原則的な取扱いとしたうえで、一定の要件を満たすものを適格組織再編成と位置づけ、課税関係を継続させる制度設計になっています。適格分割に該当すれば、分割法人側で譲渡損益を認識せず、分割承継法人側は税務上の帳簿価額を引き継ぐ、または帳簿価額で譲渡したものとして処理します。

ここで押さえておきたいのは、適格分割は「自由に選べる特例」ではないということです。要件を満たせば簿価処理となり、満たさなければ時価課税になります。税負担の都合だけで、適格・非適格を任意に選択できるわけではありません。

この点は、実務上きわめて重要です。たとえばM&A前に事業を切り出す場面では、買い手側は非適格の分社型分割によって資産調整勘定を認識したいと考える一方、売り手側は含み益への課税を避けたいと考えることがあります。両者の利害は必ずしも一致しません。しかし、実際に適格になるか非適格になるかは、支配関係、対価、事業継続、株式の継続保有、後続取引の有無によって決まります。

適格要件で確認すべき実務上のポイント

適格分割に該当するかどうかは、分割法人と分割承継法人の関係に応じて確認していきます。大きくは、完全支配関係内、支配関係内、共同事業のための分割という3つの整理で考えると見通しが立ちます。

関係実務上のイメージ主な確認事項
完全支配関係内100%グループ内で事業を移す完全支配関係、対価、継続見込み
支配関係内50%超の支配関係があるグループ内で事業を移す支配関係、主要資産負債移転、従業者、事業継続、対価
共同事業資本関係が限定的またはない会社同士で共同事業化する事業関連性、規模、経営参画、従業者、事業継続、株式継続保有

実務上、とりわけ確認しておきたいのは、次の項目です。

要件・確認項目確認する内容
金銭等不交付要件分割対価として金銭その他の資産が交付されていないか
按分型要件分割型分割で、株主の持株割合に応じて株式が交付されるか
主要資産・負債移転分割事業に必要な主要資産・負債が移っているか
従業者要件分割事業に従事していた従業者が承継先で従事する見込みか
事業継続要件分割事業が承継先で継続される見込みか
株式継続保有要件株主や支配株主が交付株式を継続保有する見込みか
支配関係継続要件分割後も必要な支配関係が継続する見込みか
後続取引分割後の株式譲渡、合併、清算、事業売却が予定されていないか

分割事業に係る主要な資産および負債に該当するかどうかは、事業を行ううえでの重要性、資産・負債の種類や規模、事業再編計画の内容などを総合的に勘案して判定することとされています。また、分割事業に従事する従業者については、主として分割事業に従事しているかどうかによって判定し、出向によって分割承継法人の業務に従事する場合も含まれる旨が示されています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第1章第4節 組織再編成

なお、平成29年度税制改正の後は、一定の分割型分割における支配関係継続要件について、分割後に同一の者と分割承継法人との支配関係が継続することが求められ、分割法人との支配関係の継続見込みまでは要件とされない場面があります。分割後に分割法人の解散が予定されていても、分割承継法人との支配関係継続要件を満たすかどうかの判断には影響しない、という整理も示されています。
出典:国税庁|分割後に分割法人が解散することが予定されている場合における適格要件の判定について(支配関係継続要件)

このように、分割の適格判定は、条文上の要件だけでなく、分割後に予定されている取引まで含めて判断する必要があります。

適格分社型分割|子会社化・事業切出しでよく使われる形

分社型分割は、分割法人が分割承継法人株式を取得する形です。たとえば、A社が自社のX事業を新設会社であるB社へ移し、A社がB社株式を保有する、といったケースが典型です。

適格分社型分割では、分割法人において移転する資産・負債に係る譲渡損益は発生せず、分割承継法人は、分割法人の税務上の帳簿価額を基礎に資産・負債を受け入れます。

この場合に確認しておきたい主な論点は、次のとおりです。

論点確認内容
移転資産・負債分割事業に必要な資産・負債が網羅されているか
税務簿価固定資産台帳、償却超過額、圧縮記帳、評価損否認額を確認したか
分割承継法人株式の取得価額移転資産の税務簿価から移転負債の税務簿価を控除した金額を基礎にしているか
資本金等の額分割承継法人側で資本金等の額がどう増減するか
利益積立金額分割法人・分割承継法人で引き継がれるかどうか
消費税届出簡易課税・課税事業者・インボイス登録を確認したか
地方税均等割、外形標準課税、事務所所在地を確認したか

適格分社型分割において、分割法人が取得する分割承継法人株式の取得価額は、適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から、移転負債の帳簿価額を減算した金額を基礎に計算します。

また、適格分社型分割では、分割法人の利益積立金額がそのまま分割承継法人へ引き継がれるわけではありません。分割承継法人側では、原則として、移転資産の税務簿価から移転負債の税務簿価を控除した金額が、資本金等の額に加算される整理となります。

ここで注意したいのは、会計上の純資産額と、税務上の簿価純資産額が一致しない場合です。税務上の資本金等の額は、会計上の分割仕訳を追うだけでは把握できません。その結果として、法人住民税の均等割や外形標準課税に影響が及ぶこともあります。会社分割後の申告では、別表五(一)と資本金等の額の管理が重要になります。

適格分割型分割|株主側の課税まで見る必要がある

分割型分割は、分割承継法人株式等が分割法人の株主に交付される形です。事業部門を兄弟会社化する、株主単位で事業を分ける、後継者ごとに事業を分離する、といった場面で検討されます。

適格分割型分割では、分割法人において移転資産・負債に係る譲渡損益は原則として発生せず、分割承継法人は税務上の帳簿価額を基礎に資産・負債を引き継ぎます。

ただし、分割型分割では、分割法人の株主に分割承継法人株式等が交付されるため、株主側の処理が重要になります。

適格分割型分割では、分割法人の株主においてみなし配当は発生せず、一定の株式のみが持株割合に応じて交付される場合には、株式譲渡損益も認識されません。その代わりに、分割法人株式の帳簿価額のうち移転純資産に対応する部分を、分割承継法人株式等の取得価額へ付け替える処理が必要になります。

株主側の確認項目内容
交付される対価分割承継法人株式か、親法人株式か、金銭等を含むか
按分交付分割法人株主の持株割合に応じて交付されるか
帳簿価額の付替え分割法人株式の取得価額の一部を承継法人株式へ付け替える必要があるか
みなし配当非適格分割型分割に該当しないか
株式譲渡損益金銭等交付や非按分交付がないか
少数株主反対株主、端数処理、株主間の価値移転がないか

同族会社の事業承継では、分割型分割を用いて「長男に製造業、次男に不動産賃貸業」といった整理を検討することがあります。この場合には、税制適格性だけでなく、株式評価、相続税・贈与税、みなし贈与、株主間の経済的公平性まで含めて検討しておく必要があります。

非適格分割|時価課税と資金負担を具体的に試算する

非適格分割に該当する場合、分割法人は、移転する資産・負債を時価で譲渡したものとして譲渡損益を認識します。分割承継法人は、原則として資産・負債を時価で取得します。

区分分割法人側分割承継法人側株主側
非適格分社型分割移転資産・負債に係る譲渡損益を認識時価で取得原則として直接の株主課税はない
非適格分割型分割移転資産・負債に係る譲渡損益を認識時価で取得みなし配当、金銭等交付があれば譲渡損益も検討

非適格分社型分割では、分割法人側に譲渡損益が発生し、分割承継法人側では時価取得となります。分割型分割とは異なり、分割法人の株主へ直接対価を交付する構造ではないため、株主側のみなし配当や株式譲渡損益は通常生じません。

非適格分割で重要なのは、譲渡損益が「いつ」認識されるかという点です。非適格分割型分割、非適格分社型分割、非適格現物出資、そして事業譲渡によって生じた譲渡損益は、原則として分割等の日の属する事業年度で計上します。合併のように、被合併法人の最後事業年度で整理するのとは異なります。

非適格分割では、次の事項を具体的に試算しておく必要があります。

項目確認内容
移転資産の時価不動産、有価証券、棚卸資産、無形資産、営業権、ソフトウェア
移転負債の時価借入金、未払金、引当金、退職給付債務、保証債務
譲渡損益税務簿価との差額が益金・損金になるか
資産調整勘定事業の移転として資産調整勘定・差額負債調整勘定が生じるか
留保金課税特定同族会社で譲渡益が留保金課税の対象にならないか
納税資金現金収入を伴わない場合でも税額資金を確保できるか
消費税・地方税法人税とは別に届出・課税関係を確認しているか

非適格分社型分割に係る譲渡損益は、通常の資産譲渡損益と同様に、特定同族会社の留保金課税の計算に含まれる点にも注意が必要です。非適格合併とは取扱いが異なるため、同族会社では、追加の税負担まで見込んで試算しておく必要があります。

移転資産・負債の範囲は、契約書だけでなく事業実態で確認する

会社分割では、どの資産・負債を移転するかが、税務判断の中心になります。

分割契約書や分割計画書に記載されていれば十分、というわけではありません。税制適格要件では、分割事業に係る主要な資産・負債が移転しているか、従業者が承継先で従事するか、分割事業が継続されるか、といった点が問われます。

確認しておくべき資産・負債は、少なくとも次のとおりです。

区分確認項目
流動資産売掛金、棚卸資産、前払費用、未収入金
固定資産建物、土地、機械装置、車両、工具器具備品
無形資産ソフトウェア、商標、特許、ノウハウ、顧客リスト
契約取引基本契約、賃貸借契約、リース契約、保守契約、代理店契約
負債借入金、買掛金、未払金、賞与引当、退職給付債務
人員従業員、役員、出向者、業務委託者
許認可許認可の承継可否、再取得の必要性
税務残高償却超過額、評価損否認額、圧縮記帳、引当金否認、繰延税金資産

主要な資産および負債の判定については、事業を行ううえでの重要性、資産・負債の種類や規模、事業再編計画の内容などを総合的に勘案するものとされています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第1章第4節 組織再編成

実務上は、会計上の部門別損益だけでは足りません。分割対象となる事業の資産・負債・契約・人員・許認可・社内システムを一覧化したうえで、「その事業を、承継会社が本当に継続できる状態になっているか」を確認する必要があります。

事業譲渡との比較|会社分割を選ぶ理由を説明できるか

会社分割は、事業譲渡と比較されることの多いスキームです。

比較項目会社分割事業譲渡
法的性質会社法上の組織再編個別の資産・負債・契約の譲渡
権利義務分割契約・計画に基づき包括承継される原則として個別移転
税務上の取扱い適格なら簿価移転、非適格なら時価課税原則として時価譲渡
株主課税分割型分割では株主課税が問題になる通常は譲渡法人側中心
消費税分割に伴う資産移転は課税対象外と整理される課税資産・非課税資産ごとに消費税検討
不動産取得税一定の会社分割では非課税措置あり原則として取得課税を検討
契約承継契約内容・許認可によるが包括承継の利点あり個別同意が必要になりやすい

事業譲渡のほうが、税務処理は直感的に分かりやすいといえます。その一方で、契約の承継や許認可、従業員の移転、消費税、不動産取得税の負担が大きくなることもあります。会社分割は法的にも税務的にも複雑ですが、事業単位での承継、グループ再編、M&A前の切出しといった場面では有効に機能します。

ただし、「会社分割なら消費税がかからない」「会社分割なら不動産取得税が非課税になる」といった単純な理由だけで選ぶべきではありません。適格要件、株主課税、登録免許税、地方税、労働契約、そして将来の株式譲渡まで含めて比較する必要があります。

M&A前の会社分割で注意すべきこと

M&Aの前に会社分割を行う場面では、とりわけ注意が必要です。

典型的には、次の2つの方向があります。

方法内容主な注意点
対象事業を切り出す買い手に渡したい事業を分割承継法人へ移す譲渡損益、資産調整勘定、消費税、不動産取得税
対象外事業を切り離す売却対象会社から不要事業を分割承継法人へ移す不動産取得税、登録免許税、株式譲渡益、支配関係継続要件

M&Aの対象外事業を切り離してから株式譲渡を行う場合、分割型分割を使うのか、分社型分割を使うのか、それとも事業譲渡を使うのかによって、税務上の結果は大きく変わります。

実務上、M&Aの対象外事業に不動産が含まれる場合には、どの事業を切り離すかによって、不動産取得税・登録免許税の負担が変わってきます。不動産取得税には一定の非課税要件がありますが、登録免許税は発生するため、事前の試算が欠かせません。

また、平成29年度税制改正の後は、一定の分割型分割について、分割後に分割法人株式を譲渡しても支配関係継続要件を満たし得る場面があります。ただし、適格分割型分割に該当したとしても、支配株主が分割法人株式を譲渡すれば、その株式譲渡に係る所得税・法人税の課税関係は別途生じます。

M&A前の会社分割では、「対象事業を売るのか」「対象外事業を残すのか」「どちらを分割するのか」を、税負担だけでなく、買い手の希望、許認可、従業員、金融機関、契約の承継、株式価値まで含めて検討する必要があります。

株主課税|分割型分割ではみなし配当を必ず確認する

会社分割で株主課税が問題になるのは、主に分割型分割です。

分割型分割では、分割法人の株主に対して、分割承継法人株式や親法人株式、場合によっては金銭その他の資産が交付されます。そのため株主にとっては、旧株式の一部を処分した、あるいは利益分配を受けた、と整理されることがあります。

法人税法24条1項および所得税法25条1項では、みなし配当の発生事由として、適格分割型分割を除く分割型分割が掲げられています。みなし配当とは、会社法上の配当ではなくても、実質的に利益分配と考えられるものを、税務上は配当として扱う制度です。

分割型分割の株主課税は、次のように整理できます。

区分株主側の主な課税関係
適格分割型分割原則としてみなし配当なし。一定の株式のみの按分交付であれば譲渡損益も認識しない
非適格分割型分割・株式のみみなし配当の確認が必要
非適格分割型分割・金銭等ありみなし配当と株式譲渡損益の確認が必要
非按分交付株主間の価値移転、贈与税・寄附金リスクを確認
反対株主買取請求みなし配当・株式譲渡損益を確認

分割型分割では、株主名簿の確認が欠かせません。株主が法人か個人か、同族関係者か、非居住者か、少数株主かによって、法人税、所得税、源泉税、贈与税の論点が変わってくるからです。

とりわけ同族会社では、分割比率や交付株式の時価が適正でないと、株主間の価値移転が問題になることがあります。会社分割は、会社の事業再編であると同時に、株主間の財産移転でもある。この意識を、常に持っておく必要があります。

消費税|分割そのものは課税対象外でも、届出・課税売上割合は要確認

会社分割では、消費税についても確認が必要です。

実務上、会社分割に伴う資産の移転は、消費税の課税対象となる「資産の譲渡等」には該当しないと整理されます。これは、適格分割か非適格分割か、吸収分割か新設分割かを問わず、会社分割に共通する取扱いとして理解されています。

ただし、ここで安心してしまうのは早計です。分割そのものが課税対象外であっても、次のような消費税の論点は残ります。

消費税論点確認内容
課税事業者判定分割法人・分割承継法人の基準期間、特定期間、分割等の特例
簡易課税制度分割法人の届出の効力が承継法人に及ぶか
課税売上割合分割があった課税期間の課税売上割合をどう計算するか
インボイス登録分割承継法人の登録番号、取引先通知、請求書様式
仕入税額控除共通対応、個別対応、課税売上割合の管理
事業譲渡との比較会社分割では課税対象外でも、事業譲渡なら消費税が問題になる

分割法人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、分割によって事業を承継した分割承継法人には及びません。分割承継法人が簡易課税制度の適用を受けようとするときは、あらためて簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。
出典:国税庁|消費税基本通達 第13章第1節 通則

また、吸収分割があった日の属する課税期間における分割承継法人の課税売上割合は、その吸収分割があった日から当該課税期間の末日までの資産の譲渡等の対価の額を基礎として計算することとされています。
出典:国税庁|消費税基本通達 第11章第5節 課税売上割合の計算等

会社分割では、法人税の適格判定とは別に、消費税の届出一覧を作成し、分割の効力発生日までに必要な届出・登録・取引先への通知を確認しておくべきです。

不動産取得税|一定の会社分割では非課税だが、要件確認が必要

会社分割で不動産を移転する場合には、不動産取得税の確認が必要です。

地方税法では、法人の合併または政令で定める分割による不動産の取得について、不動産取得税を課することができないものとされています。地方税法第73条の7第2号後段および地方税法施行令第37条の14に定める会社分割によって不動産を取得した場合には、不動産取得税が非課税となる場合があります。
出典:愛知県|不動産取得税Q&A 21

ただし、会社分割であれば常に不動産取得税が非課税になる、というわけではありません。

会社分割による不動産取得税の非課税要件としては、分割型分割では、分割承継法人株式以外の資産が交付されないこと、その株式が分割法人の株主等の持株割合に応じて交付されることが挙げられます。分社型分割では、分割承継法人株式以外の資産が交付されないことに加え、分割事業に係る主要な資産・負債が移転していること、分割事業が分割後も引き続き営まれる見込みであること、そして分割直前の分割事業に係る従業者のおおむね80%以上が分割後に分割承継法人に従事する見込みであること等が求められます。
出典:東京都主税局|会社分割に係る不動産取得税の非課税措置

つまり、不動産取得税の非課税要件は、法人税の適格要件と似ている部分こそあるものの、完全に同じではありません。金銭対価を入れると、法人税上の適格要件だけでなく、不動産取得税の非課税要件にも影響が及ぶことがあります。

実務では、分割契約書、分割計画書、承継権利義務明細、貸借対照表、従業員資料、事業継続資料を用意したうえで、対象不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所に確認することが重要です。

登録免許税|会社分割では登記コストも試算する

会社分割では、登記手続に伴って登録免許税が発生します。

不動産を承継する場合には不動産登記が、分割によって会社を設立する場合や資本金が増加する場合には商業登記が、それぞれ必要になります。分割による株式会社・合同会社の設立、または分割による資本金の増加の登記については、資本金の額または増加した資本金の額を課税標準として、登録免許税が課されます。
出典:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

不動産を含む会社分割では、不動産取得税が非課税となる場合でも、登録免許税や司法書士報酬、登記関連費用は別途発生します。とりわけ、不動産を多数保有する会社、担保権が設定されている会社、事業用不動産を承継する会社では、法人税だけでスキームを比較してはいけません。

登記関連の確認項目内容
商業登記新設分割、吸収分割、資本金増加、役員変更
不動産登記所有権移転、抵当権・根抵当権の変更、賃借権登記
登録免許税資本金、増加資本金、不動産価額、登記原因
担保・借入金融機関の承諾、担保権の変更、財務制限条項
スケジュール分割効力発生日、登記申請日、申告期限、決算日

税務上の節税効果が見込まれる場合でも、登録免許税・不動産取得税・登記費用・金融機関対応コストまで含めて見ると、別のスキームのほうが合理的、というケースもあります。

労働契約・従業員承継|税務要件と労務手続は切り離せない

本稿では労働契約承継法の詳細な手続までは扱いませんが、会社分割の税務判断においても、従業員の承継は重要な論点です。

適格分割要件では、分割事業に従事していた従業者が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれているかが問われます。また、不動産取得税の非課税要件においても、分割事業に係る従業者のおおむね80%以上が分割承継法人に従事する見込みであることが求められる場合があります。

さらに、会社分割制度については、労働者保護の観点から、労働契約承継法、その施行規則、関係する指針が定められています。同法は、会社分割にあたり、労働者の理解や協力を得るよう努めたうえで、労働者・労働組合に対して労働契約の承継等に関する事項を通知し、一定の期間を設けて異議申出の機会を用意すること等により、労働者の保護を図るものです。
出典:厚生労働省|企業組織の再編(会社分割等)に伴う労使関係(労働契約の承継等)について

会社分割では、税務・会計・法務・労務が連動します。税務上の適格要件を満たすつもりで従業者要件を整理していても、労務手続が遅れれば、実行スケジュールに影響します。反対に、労務上の承継範囲を決めた結果として、税務上の主要資産負債移転や事業継続要件に疑義が生じることもあります。

会社分割でよくある実務上の失敗

会社分割の失敗は、難解な条文解釈だけで起こるわけではありません。むしろ、事業目的の整理不足、分割対象資産の洗い出し不足、後続取引の確認漏れ、株主課税の見落とし、消費税届出の失念といった、実務上の基本的なミスが原因になることが少なくありません。組織再編税務では、重大な事故の前には、必ずといってよいほど多数の確認漏れが潜んでいる。この感覚を持っておくことが大切です。

代表的な失敗は、次のとおりです。

失敗例何が問題になるか
吸収分割・新設分割だけで判断する分割型・分社型、適格・非適格の判定を誤る
グループ内だから適格と考える対価、事業継続、支配関係継続、後続取引で非適格になることがある
分社型と分割型を混同する株主課税、みなし配当、帳簿価額の付替えを誤る
金銭対価を軽く考える金銭等不交付要件、不動産取得税非課税要件に影響する
M&A後の株式譲渡予定を見落とす支配関係継続要件や非適格判定に影響する
分割対象資産を契約書だけで決める主要資産負債移転要件、事業継続要件に疑義が生じる
株主課税を確認しないみなし配当、譲渡損益、源泉税、贈与税リスクが残る
不動産取得税・登録免許税を試算しない法人税メリットを登記・地方税コストが上回る場合がある
消費税届出を確認しない簡易課税、課税売上割合、インボイス対応にズレが出る
税務判断メモを残さない税務調査、M&Aデューデリジェンス、金融機関説明で困る

とりわけ中小・中堅企業では、会社分割の検討が、司法書士、弁護士、M&A仲介会社、金融機関、顧問税理士の間で分断されてしまうことがあります。会社分割は、登記手続だけでも、税務申告だけでも完結しません。実行前に、全体設計を確認しておくことが重要です。

会社分割の税務判断を進める実務プロセス

会社分割を検討する際は、次の順番で整理していくと、論点の抜け漏れを減らせます。

1. 会社分割の目的を明確にする

まずは、なぜ会社分割を行うのかを整理します。

M&A前の対象外事業の切出しなのか、事業承継なのか、グループ内の事業集約なのか、不採算事業の整理なのか、それとも許認可・金融機関対応のためなのか。目的によって、適したスキームは変わってきます。

会社分割は、税負担を軽くするためだけに行うものではありません。事業目的、経済合理性、代替手段との比較を、資料の形で残しておく必要があります。

2. 吸収分割か新設分割かを整理する

承継先が既存会社なのか、新設会社なのかを決めます。

既存会社を使う場合は、その会社の過去申告、欠損金、消費税届出、株主構成、債務、許認可を確認します。新設会社を使う場合は、資本金、消費税、インボイス、金融機関口座、許認可、役員構成を確認します。

3. 分割型分割か分社型分割かを整理する

分割対価が誰に帰属するかを整理します。

分割法人が分割承継法人株式を保有するなら分社型分割、分割法人の株主に分割承継法人株式等を交付するなら分割型分割が基本です。株主課税の有無が大きく変わるため、ここを曖昧にしたまま進めてはいけません。

4. 分割対価を確定する前に税務確認を行う

分割対価が株式か、親法人株式か、金銭か、その他資産か、無対価かを確認します。

金銭対価を入れると、法人税上の適格要件だけでなく、不動産取得税の非課税要件や株主側の譲渡損益にも影響します。分割契約書・分割計画書を確定する前に、税務確認を済ませておくべきです。

5. 適格要件を判定する

完全支配関係、支配関係、共同事業のいずれで適格要件を満たすのかを確認します。

主要資産負債、従業者、事業継続、株式継続保有、支配関係継続、後続取引を整理します。分割後に株式譲渡、合併、清算、事業譲渡を予定している場合には、必ず判定に織り込みます。

6. 移転資産・負債の税務簿価と時価を確認する

適格分割では税務簿価が、非適格分割では時価が重要になります。

固定資産台帳、償却超過額、圧縮記帳、棚卸資産、貸倒引当、評価損否認額、借入金、未払金、退職給付債務、契約負債を確認します。

7. 株主課税を確認する

分割型分割では、株主課税を必ず確認します。

株主名簿を確認し、法人株主、個人株主、非居住者、少数株主、同族関係者の有無を整理します。みなし配当、株式譲渡損益、源泉税、みなし贈与、株式取得価額の付替えを確認します。

8. 消費税・登録免許税・不動産取得税を確認する

会社分割そのものが消費税の課税対象外と整理される場合でも、簡易課税届出、課税売上割合、インボイス登録、課税事業者判定は、別途確認が必要です。

不動産がある場合は、不動産取得税の非課税要件、登録免許税、担保変更、金融機関の承諾を確認します。

9. 申告・資料保存の体制を決める

会社分割の後は、分割法人・分割承継法人の双方で申告処理が必要になります。

別表四、別表五(一)、固定資産台帳、株式取得価額、資本金等の額、利益積立金額、消費税届出、地方税申告、そして税効果会計まで、整合させておく必要があります。

会社分割前に準備すべき資料

会社分割の税務相談では、次の資料があると、検討がスムーズに進みます。

資料確認する論点
会社分割の目的メモ事業目的、経済合理性、代替手段
分割前後の組織図支配関係、完全支配関係、後続取引
株主名簿分割型分割の株主課税、みなし配当、少数株主
分割契約書案・分割計画書案分割対価、承継資産負債、効力発生日
直近3期分の決算書事業規模、財務状態、含み損益
過去の法人税申告書税務簿価、別表五(一)、欠損金、税額控除
固定資産台帳移転資産の税務簿価、登録免許税、不動産取得税
部門別損益・事業計画事業継続、共同事業、税効果会計
棚卸表・債権債務明細分割対象事業の資産・負債
契約一覧取引先、リース、賃貸借、借入、保証
従業員一覧従業者要件、労働契約承継、不動産取得税要件
許認可一覧承継可否、再取得の必要性
消費税届出一覧簡易課税、課税事業者、インボイス登録
不動産資料登記簿、固定資産評価証明、担保、賃貸借
議事録・稟議書意思決定、リスク説明、承認記録

資料が不足した状態で「適格になりますか」「不動産取得税はかかりますか」と尋ねられても、正確な判断は難しいものです。会社分割では、結論よりもまず、前提となる事実の整理が重要になります。

会社分割は実行前に税務判断を終えるべき

会社分割の税務判断は、登記の後や申告書の作成時に行うものではありません。

分割契約書を締結し、株主総会を終え、債権者保護手続や労働契約承継手続が進んでから税務上の問題が見つかっても、そこからスキームを変更するのは容易ではありません。

とりわけ、次のような会社分割では、早い段階での税務検討が欠かせません。

会社分割の場面早期検討が必要な理由
M&A前の事業切出し適格判定、株主課税、資産調整勘定、不動産取得税
不動産保有事業の分割不動産取得税、登録免許税、時価、担保
事業承継のための分割株主課税、みなし贈与、非上場株式評価
グループ内事業移管完全支配関係、グループ法人税制、地方税
赤字事業・債務超過部門の分割債務免除益、簿価純資産、資本金等の額
少数株主がいる会社分割按分交付、反対株主、株主間価値移転
消費税の簡易課税を使っている会社届出効力、課税売上割合、インボイス登録
分割後に合併・株式譲渡を予定支配関係継続要件、包括否認、DD対応

会社分割では、税務上の結論を出すだけでなく、金融機関、株主、後継者、買い手候補、従業員、そして税務調査に対して、きちんと説明できる状態にしておくことが重要です。

この記事で扱わない範囲

本稿では、会社分割の法人税務判断について、その全体像を扱いました。

一方で、次の論点は、別途詳細な検討が必要になります。

  • 会社法上の吸収分割・新設分割手続の詳細
  • 債権者保護手続、反対株主の株式買取請求
  • 労働契約承継法の詳細手続
  • 共同事業要件の詳細判定
  • 分割比率・株式価値算定
  • 分割型分割における株式取得価額の具体的計算
  • みなし配当・源泉所得税の具体的計算
  • 資本金等の額・利益積立金額の別表処理
  • 特定資産譲渡等損失額の損金不算入
  • グループ通算制度における会社分割
  • 組織再編成に係る包括否認規定

会社分割は、単独で完結する論点ではありません。後続の記事では、株式交換等・株式移転・株式交付、現物出資・現物分配・株式分配、組織再編における欠損金の制限、包括否認へと、論点をさらに掘り下げていきます。

会社分割を検討する前に、自社で整理しておくべき問い

会社分割を検討している場合、次の問いに答えられる状態にしておくと、専門家との相談がぐっと具体的になります。

問いなぜ必要か
なぜ会社分割を行うのか事業目的・経済合理性を説明するため
何を承継させるのか主要資産負債移転要件、事業継続要件を確認するため
吸収分割か新設分割か承継先、登記、消費税、許認可に影響するため
分割型か分社型か株主課税、みなし配当、帳簿価額付替えに影響するため
分割対価は何か適格要件、不動産取得税、株主課税に影響するため
分割後に株式譲渡・合併・清算を予定しているか支配関係継続要件、包括否認リスクに影響するため
不動産は含まれるか不動産取得税、登録免許税、担保変更が必要なため
従業員はどう承継するか従業者要件、労働契約承継、不動産取得税要件に影響するため
消費税届出はどうなっているか簡易課税、課税売上割合、インボイスに影響するため
判断過程を資料化できるか税務調査・M&A・金融機関説明に備えるため

会社分割では、結論だけでなく、その判断過程を会社に残しておくことが重要です。分割の目的、代替案、税務への影響、資金への影響、株主課税、消費税・地方税、登記コスト、労務対応を資料の形にしておくことで、後からきちんと説明できる再編になります。

会社分割の税務判断は、事業の切出し後の未来まで見る判断である

会社分割は、事業を切り出すための便利な手段です。

しかし税務の観点からは、分割型分割か分社型分割か、適格分割か非適格分割か、移転する資産・負債の範囲は適切か、株主にみなし配当が生じないか、消費税の届出は整っているか、そして不動産取得税・登録免許税まで含めて資金繰りに耐えられるか、といった点を確認しておく必要があります。

会社分割を実行すると、事業、資産、負債、従業員、契約、株式価値、税務残高が動きます。その影響は、分割した期の申告だけで終わるものではありません。将来のM&A、事業承継、金融機関対応、税務調査、そして後継者への説明にまで残り続けます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、会社分割、合併、M&A前後の事業切出し、事業承継に伴う組織再編について、税務上の結論だけでなく、判断過程、資料化、会計処理、申告実務、そして将来の説明まで見据えた検討を大切にしています。

会社分割を検討している場合は、分割契約書・分割計画書を確定する前に、分割の目的、組織図、株主名簿、決算書、法人税申告書、固定資産台帳、移転資産負債一覧、従業員一覧、消費税届出、不動産資料を整理したうえで、ご相談ください。

実行した後で税務処理をつじつま合わせするのではなく、実行の前に説明できる会社分割を設計しておくこと。それが、会社の将来の選択肢を守ることにつながります。

振り返り|この記事の重要ポイント

項目重要ポイント
会社分割の本質分割法人の事業に関する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させる手続
会社法上の類型吸収分割は既存会社へ承継、新設分割は新設会社へ承継
税務上の類型分割型分割と分社型分割を区分する必要がある
分社型分割分割法人が分割承継法人株式等を取得する形で、子会社化・事業切出しに使われる
分割型分割分割法人の株主に分割承継法人株式等が交付され、株主課税が重要になる
適格分割原則として移転資産・負債に係る譲渡損益を認識せず、税務簿価を基礎に処理する
非適格分割原則として移転資産・負債を時価で譲渡したものとして譲渡損益を認識する
適格要件対価、支配関係、主要資産負債、従業者、事業継続、株式継続保有を確認する
移転資産負債契約書だけでなく、事業継続に必要な資産・負債・人員・契約を確認する
株主課税分割型分割では、みなし配当・株式譲渡損益・みなし贈与を確認する
消費税分割に伴う資産移転自体は課税対象外と整理されるが、簡易課税・課税売上割合・インボイスは要確認
不動産取得税一定の会社分割では非課税措置があるが、金銭等不交付、主要資産負債、事業継続、従業者要件を確認する
登録免許税不動産登記、会社設立、資本金増加の登記コストを試算する
M&A前分割対象事業を切り出すか、対象外事業を切り離すかで税務・登記・地方税の結果が変わる
最も重要な姿勢会社分割は、実行前に税務・会計・法務・労務・資金影響を整理し、判断過程を資料化することが重要
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