標準税率・軽減税率と旧税率の区分|同じ8%でも申告上は別管理が必要です

消費税の税率を確認するとき、実務ではどうしても「10%か8%か」という見方になりがちです。ただ、申告実務の現場では、それだけでは足りません。

とりわけ注意していただきたいのが、軽減税率8%と旧税率8%は、合計税率こそ同じでも、消費税と地方消費税の内訳が異なるという点です。

請求書やレシートには「8%」と表示されている。会計ソフトの税区分も「8%」になっている。前任者からも、そのように引き継いでいる。それでも、申告上は誤っている、ということが起こり得ます。

消費税の税率判定は、請求書に書かれた税率をそのまま受け入れる作業ではありません。取引の内容、取引時期、経過措置の有無、インボイスや帳簿の記載、そして申告書上の集計区分まで、ひとつながりで確認していく必要があります。

本稿では、標準税率・軽減税率・旧税率の違いを、申告実務と月次管理の視点から整理していきます。

目次

まず確認すべき、現在の消費税率

現在の消費税等は、標準税率10%と軽減税率8%からなる複数税率です。それぞれの内訳を整理すると、次のとおりです。

区分合計税率消費税率地方消費税率
標準税率10%7.8%2.2%
軽減税率8%6.24%1.76%
旧税率8%8%6.3%1.7%

標準税率10%と軽減税率8%の違いは、比較的わかりやすいものです。一方で、軽減税率8%と旧税率8%は、合計だけを見れば同じ8%にそろってしまいます。

しかし、申告書では国税部分と地方消費税部分を分けて計算します。そのため、両者を同じ税区分で処理することはできません。

この点については、国税庁も、標準税率10%・軽減税率8%の内訳に加えて、令和元年10月1日以後の取引であっても経過措置が適用されるものには旧税率8%、すなわち消費税率6.3%・地方消費税率1.7%が適用されると示しています。
出典:国税庁|No.6303 消費税および地方消費税の税率

実務上も、旧税率8%と軽減税率8%は区分して計算する必要があります。旧税率8%を軽減税率8%の欄で処理してしまうことは、典型的な判断ミスのひとつとして整理されています。

税率判定は「課税取引と分かった後」の判断です

税率を考える前に、まず確認しておきたいことがあります。その取引が、そもそも消費税の課税対象にあたるかどうかです。

消費税の判断は、次の順序で進めていきます。

  1. 自社に消費税の納税義務があるか
  2. 取引が国内取引または輸入取引に該当するか
  3. 課税・非課税・不課税・免税のいずれか
  4. 課税取引である場合、標準税率・軽減税率・旧税率のいずれか
  5. 請求書、インボイス、帳簿、会計処理、申告書集計が一致しているか

標準税率か軽減税率かを判断するのは、あくまで「課税取引である」と判断した後の段階です。

たとえば、同じ8%に見える取引でも、そもそも非課税取引であれば、売上税額や仕入税額控除の対象にはなりません。また、輸出免税取引であれば、課税取引ではあるものの、売上側の消費税を課さない別の処理になります。

会計ソフト上の税区分だけを見て「8%だから軽減税率」と判断するのではなく、その前提として、取引の法的性質を確認しておくことが大切です。

標準税率10%とは何か

標準税率とは、軽減税率や経過措置の対象とならない課税取引に適用される、通常の税率です。

現在の標準税率は、消費税と地方消費税を合わせて10%です。内訳は、消費税率7.8%、地方消費税率2.2%となっています。

標準税率が適用されるかどうかは、「食品ではないから10%」「サービスだから10%」といった単純な整理だけでは決まりません。判断にあたっては、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • その取引は、資産の譲渡・資産の貸付け・役務の提供のいずれか
  • 軽減税率の対象となる飲食料品または新聞の譲渡に該当しないか
  • 旧税率の経過措置の対象ではないか
  • 非課税取引や輸出免税取引ではないか
  • 複数の資産または役務が一体で提供されていないか

たとえば、食品に関連する取引であっても、加工賃、販売手数料、運送サービス、保管サービスなどは、飲食料品そのものの譲渡ではなく、役務提供として標準税率になる場合があります。「食品に関連する取引であること」と「軽減税率の対象取引であること」は、必ずしも一致しないのです。

この点は、軽減税率そのものを扱う際に詳しく整理したい論点ですが、ここで押さえておきたいのは、標準税率は「軽減税率に当たらないもの」という消去法だけで決まるわけではなく、取引の実態から確認する必要があるということです。

軽減税率8%とは何か

軽減税率8%は、現在の複数税率制度のもとで、一定の対象品目の譲渡に適用される税率です。

対象を大きく分けると、酒類・外食等を除く飲食料品の譲渡と、定期購読契約に基づき週2回以上発行される新聞の譲渡になります。国税庁も、標準税率10%・軽減税率8%の内訳に加えて、軽減税率の対象となる飲食料品や新聞の範囲を整理しています。
出典:国税庁|No.6102 消費税の軽減税率制度

軽減税率の判定では、特に次の3点が重要になります。

1つ目は、軽減税率の対象が原則として譲渡である、という点です。飲食料品に関する取引であっても、加工、保管、運送、広告、販売代行などの役務提供は、飲食料品そのものの譲渡ではありません。

2つ目は、判定を行う時点です。国税庁は、軽減税率が適用される取引かどうかは、事業者が課税資産の譲渡等を行う時点で判定すると示しています。販売者が人の飲用または食用に供されるものとして譲渡した場合には、お客様がそれ以外の目的で購入・使用されたとしても、原則として飲食料品の譲渡に該当します。
出典:国税庁|No.6102 消費税の軽減税率制度

3つ目は、電子版の新聞のように、一般的な感覚では新聞に見えても、消費税法上は「新聞の譲渡」ではなく、電気通信利用役務の提供として整理されるものがある、という点です。実務でも、電子版新聞を軽減税率の対象としてしまう誤りは、典型的なミスとして知られています。

旧税率8%とは何か

旧税率8%とは、令和元年9月30日までの消費税等の税率、すなわち消費税率6.3%・地方消費税率1.7%の合計8%を指します。

令和元年10月1日以後は、原則として標準税率10%または軽減税率8%が適用されます。ただし、一定の経過措置が適用される取引については、令和元年10月1日以後に行われる資産の譲渡等または課税仕入れであっても、旧税率8%が適用されます。国税庁も、経過措置が適用されるものについては旧税率8%が適用され、経過措置の対象となる取引には必ず経過措置を適用すると説明しています。
出典:国税庁|平成31年(2019年)10月1日以後適用する消費税率等に関する経過措置

旧税率8%が問題となる典型的な取引には、たとえば次のようなものがあります。

  • 旅客運賃等
  • 電気料金等
  • 請負工事等
  • 資産の貸付け
  • 指定役務の提供
  • 予約販売に係る書籍等
  • 特定新聞
  • 通信販売
  • 有料老人ホーム
  • 家電リサイクル法に基づく再商品化等

これらに該当するかどうかは、単に契約日だけで決まるわけではありません。契約締結日、対価の受領時期、役務提供時期、資産の譲渡時期、契約内容、料金確定日などを、一つひとつ個別に確認していく必要があります。

ここで重要なのは、経過措置の対象となる取引について、事業者が任意に「今回は10%で処理する」「軽減税率8%で処理する」と選べるわけではない、ということです。経過措置の適用要件を満たす場合には、原則としてその取扱いに従うことになります。

「同じ8%」でも、軽減税率8%と旧税率8%は別物です

軽減税率8%と旧税率8%は、消費者や取引先との価格交渉の場面では、同じ8%に見えるかもしれません。

しかし、申告実務では別物です。

軽減税率8%は、消費税率6.24%・地方消費税率1.76%。旧税率8%は、消費税率6.3%・地方消費税率1.7%です。

合計税率はどちらも8%ですが、国税と地方税の配分が異なります。消費税申告書では、この違いがそのまま集計欄、付表、地方消費税の計算に影響してきます。

国税庁も、旧税率8%と軽減税率8%では国・地方の税率割合が異なるため、税率ごとに区分して記帳し、これに基づいて税額を計算して申告する必要があると案内しています。
出典:国税庁|消費税軽減税率制度対応申告前チェック!

実務では、会計ソフトの税区分が「8%」とだけ表示されている場合があります。これでは不十分です。少なくとも、次のような区分は分けて管理しておく必要があります。

管理すべき税区分合計税率実務上の意味
標準税率10%10%現在の通常の課税取引
軽減税率8%8%飲食料品等・一定の新聞の譲渡
旧税率8%8%令和元年9月30日以前、または経過措置対象取引
旧税率5%等5%等過年度取引の返還、貸倒れ、修正等で問題となる場合
非課税土地、住宅貸付け、一定の金融取引等
不課税給与、配当、寄附金、国外取引等
免税0%相当輸出免税等

国税庁の申告案内でも、申告に係る課税期間に旧税率3%・4%・6.3%が適用された取引がある場合には、標準税率7.8%・軽減税率6.24%のみの場合とは別の付表を使用することが示されています。
出典:国税庁|消費税及び地方消費税の申告等

ここでいう3%・4%・6.3%は、申告書上の国税部分の税率です。実務で「旧税率8%」と呼んでいる取引でも、申告書上は消費税率6.3%として扱う場面があります。会計データから申告書付表へ連携する際には、この点に注意が必要です。

税率は「請求書に書かれた税率」ではなく「取引の事実」で決まります

税率誤りで最も危険なのは、請求書やレシートに記載された税率を、そのまま正しいものとして処理してしまうことです。

消費税の申告は、取引の実態に応じて適正な適用税率を判断し、その税率に基づいて行う必要があります。国税庁も、小売店などが買い手に対して誤った税率で税込対価を計算したレシートを交付していた場合であっても、「取引の事実」に基づく適正な税率で計算して申告する必要があると示しています。
出典:国税庁|事業者の皆様へ

売手側では、標準税率10%の商品を誤って軽減税率8%として販売していたとしても、申告上は取引事実に基づき、標準税率で計算する必要があります。逆に、軽減税率8%の商品を誤って標準税率10%として販売していた場合も、やはり取引事実に基づく整理が求められます。

買手側では、受け取ったレシートや請求書の税率に誤りがある場合、基本的には取引先に対して、取引事実に基づくレシートや請求書の再交付を依頼することになります。国税庁も、誤った税率で税込対価を計算したレシートを受領した場合には、取引先へ取引の事実に基づくレシートの再交付を依頼するといった対応が必要だとしています。
出典:国税庁|誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを受領した場合

ここで大切なのは、買手が勝手に税率を書き換えて済ませるわけではない、という点です。適用税率の誤りによって税込対価の額そのものが誤っている場合には、単なる追記では対応できない場面があります。実務でも、税率誤りへの対応は、「請求書表示の修正」「会計処理の修正」「申告税額への反映」をセットで確認していく必要があります。

売上側で税率を誤った場合の考え方

売上側で税率を誤った場合、まず確認したいのは、取引先からいくら受け取ったかではなく、その取引に本来どの税率が適用されるかです。

たとえば、本来は標準税率10%の商品について、誤って軽減税率8%として販売し、税込価格も8%を前提に計算していたとします。それでも、申告上は標準税率10%の取引として処理する必要があります。

この場合、追加でお客様から差額を回収できるかどうかは、税率判定とは別の問題です。取引条件や価格設定、お客様への対応の話であって、税率の判断とは切り離して考える必要があります。

消費税の実務では、ここを混同しないことが大切です。

  • 法令上の適用税率
  • お客様に提示した税込価格
  • 追加請求できるかどうか
  • 請求書またはレシートを訂正するかどうか
  • 申告上の売上税額をどう計算するか

これらは互いに関連しますが、同じ問題ではありません。

売手側でミスが発生した場合には、少なくとも次の順序で整理していきます。

  1. 対象取引の内容を確認する
  2. 本来の適用税率を判定する
  3. 誤った税込価格で販売していた期間と金額を集計する
  4. 請求書、レシート、インボイスの訂正要否を確認する
  5. お客様への対応と価格差額の取扱いを整理する
  6. 会計処理と消費税申告への影響を確認する
  7. すでに申告済みであれば、修正申告または更正の請求の可能性を検討する

「お客様から差額を回収できないから、申告も誤った税率のままでよい」と考えるのは危険です。消費税の申告は、あくまで取引の事実に基づいて、適正な税率で行う必要があります。

仕入側で税率を誤った場合の考え方

仕入側で税率を誤った場合も、同じく取引事実から判断していきます。

たとえば、仕入先から受け取った請求書に10%と記載されていたとしても、実際には軽減税率対象の飲食料品の譲渡であれば、軽減税率8%として整理すべき場面があります。ただし、仕入税額控除を受けるためには、インボイスまたは必要な請求書等の保存要件を満たしていることが前提となります。

令和5年10月1日からはインボイス制度が始まり、仕入税額控除のためには、帳簿と、登録を受けた課税事業者から交付を受ける適格請求書等の保存が必要になりました。適格請求書には、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等といった法定記載事項が求められます。
出典:国税庁|No.6102 消費税の軽減税率制度

したがって、仕入側で行うべき確認は、単に「請求書に税率が書いてあるか」ではありません。

  • 取引内容は何か
  • その取引に本来適用される税率は何か
  • 売手はインボイス発行事業者か
  • 適用税率と、税率ごとの消費税額等が適切に記載されているか
  • 旧税率や経過措置対象取引が混在していないか
  • 会計ソフトの税区分が、申告付表に正しく反映されるか

特に月次処理では、税率誤りを決算時にまとめて直すよりも、請求書を受領した時点で発見できたほうが、実務負担ははるかに小さくて済みます。後から税率を修正すると、会計処理、買掛金、固定資産台帳、棚卸資産、原価計算、部門別採算、申告集計にまで影響が及ぶことがあるからです。

「8%取引だけの会社」でも、区分経理は必要です

野菜、米、食品など、軽減税率対象の商品の販売が中心の事業者では、「売上がすべて8%だから、特に区分経理は不要」と考えてしまうことがあります。

しかし、これは誤りです。

まず、販売している商品がすべて軽減税率対象であっても、仕入れや経費には標準税率10%の取引が含まれます。広告費、運送費、保管料、販売手数料、会計事務所報酬、修繕費、備品購入、システム利用料などは、通常、標準税率となることが多いものです。

また、令和元年9月までの旧税率8%が残っている場合には、売上が8%だけに見えても、旧税率8%と軽減税率8%を区分して記帳する必要があります。国税庁も、軽減税率対象の商品の販売しかない場合であっても、令和元年9月までの旧税率8%と軽減税率8%は税率ごとに区分して記帳し、これに基づいて税額を計算して申告するよう案内しています。
出典:国税庁|消費税軽減税率制度対応申告前チェック!

実務上は、たとえば次のような会社でも、区分経理が必要になります。

  • 売上はすべて軽減税率対象品目である
  • 売上はすべて標準税率だが、仕入れ・経費に軽減税率対象取引がある
  • 過年度の返品、値引き、貸倒れ、請求修正がある
  • 経過措置により旧税率が適用される取引がある
  • 会計ソフトの税区分が「8%」だけで、軽減税率と旧税率を区別できていない

消費税の区分経理は、食品事業者だけの問題ではありません。標準税率の売上しかない事業者でも、経費や仕入れに軽減税率対象取引があれば、区分経理が必要になります。

経過措置がある場合は「取引時期」だけで判断しない

旧税率8%の経過措置では、取引が令和元年10月1日以後に行われていても、契約や対価受領などの条件によって、旧税率が適用されることがあります。

そのため、旧税率の確認では、単純に「納品日がいつか」「請求日がいつか」だけを見るのでは不十分です。

確認しておきたい事項は、たとえば次のとおりです。

  • 契約締結日
  • 契約変更の有無
  • 対価の受領日
  • 料金確定日
  • 資産の引渡日
  • 役務提供日
  • 契約上、役務提供時期をあらかじめ定めることができるか
  • 軽減対象資産の譲渡等に該当するか
  • 経過措置対象取引として、請求書や契約書に根拠を残しているか

請負工事、長期契約、賃貸借、通信販売、定期継続供給、電気料金等では、取引の発生時期と税率適用時期がずれることがあります。会計処理上の売上計上時期や請求日だけで処理してしまうと、税率の判断を誤る可能性がある点に注意が必要です。

税率誤りは、申告書だけでなく社内の数字にも影響します

税率誤りは、消費税申告書の誤りにとどまりません。

特に、税込経理をしている場合や、部門別採算、商品別利益、案件別原価を見ている場合には、税率誤りが管理会計にも影響してきます。標準税率10%の取引を軽減税率8%で処理していれば、税込金額から割り戻した本体価格や消費税額が変わり、売上高、費用、利益率の見え方まで変わってしまうからです。

税抜経理をしている場合でも、仮受消費税、仮払消費税、未払消費税、固定資産取得価額、控除対象外消費税額等に影響することがあります。

また、インボイス制度では、税率ごとに区分した対価の額や消費税額等が、請求書上も重要になります。売上税額や仕入税額の計算方法として、割戻し計算・積上げ計算のいずれを選ぶかも関わってくるため、税率区分は月次の段階から整えておく必要があります。インボイス制度における税額計算でも、軽減税率対象売上は税込価額に100/108を、標準税率対象売上は税込価額に100/110を乗じて課税標準額を算出する、という整理が示されています。

税率区分を誤ると、次のような影響が生じます。

影響する領域税率誤りによる影響
消費税申告売上税額、仕入税額、地方消費税、付表集計が誤る
インボイス適用税率、税率別対価、消費税額等の記載誤りにつながる
会計処理税込・税抜処理、仮受・仮払消費税、未払消費税がずれる
月次管理売上高、原価、粗利、部門別利益の見え方が変わる
資金繰り納付見込額または還付見込額が変わる
税務調査取引事実と請求書・帳簿の不一致が説明課題になる

消費税の税率管理は、申告書作成担当者だけの問題ではありません。営業、販売、購買、経理、システム、経営管理がつながっていなければ、同じ誤りが繰り返し発生してしまいます。

税区分マスターは「8%」だけで作らない

税率誤りを防ぐには、会計ソフトや販売管理システムの税区分マスターを適切に設計しておくことが重要です。

最低限、次のように分けておく必要があります。

税区分の例用途
課税売上10%標準税率の売上
課税売上8%軽減軽減税率対象の売上
課税売上8%旧税率経過措置または旧税率対象の売上
課税仕入10%標準税率の仕入・経費
課税仕入8%軽減軽減税率対象の仕入・経費
課税仕入8%旧税率経過措置または旧税率対象の仕入・経費
非課税売上・非課税仕入非課税取引
不課税給与、寄附金、配当、国外取引等
免税売上輸出免税等

さらに、インボイス制度のもとでは、課税仕入について、次の情報も税区分と連動させておく必要があります。

  • 登録事業者からの仕入れか
  • 免税事業者等からの仕入れか
  • 経過措置の対象か
  • 少額特例や、帳簿のみ保存特例の対象か
  • 簡易課税、または2割特例・3割特例の適用対象事業者か

税率区分とインボイス区分を別々に管理していると、月次では一見問題がなくても、申告時に集計の不整合が生じることがあります。税率マスターは、単なる会計ソフト上の選択肢ではなく、申告書までつながる管理項目だと捉えておきたいところです。

月次で確認すべき、税率区分のポイント

税率誤りを決算時に発見すると、修正の範囲がどうしても広くなります。月次で確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

売上側

  • 新商品、新サービス、新契約の税率を確認したか
  • 飲食料品、新聞、セット販売、委託販売、役務提供が混在していないか
  • 請求書、レシート、販売管理システムの税率表示が、取引事実と一致しているか
  • 旧税率の経過措置対象取引が残っていないか
  • 返品、値引き、割戻しが、当初売上の税率と対応しているか

仕入側

  • 受領したインボイスの適用税率が、取引内容と一致しているか
  • 税率誤りがある場合、再交付を依頼したか
  • 8%取引が、軽減税率なのか旧税率なのか区分されているか
  • 経費精算、クレジットカード明細、EC領収書の税率が確認できているか
  • 固定資産や棚卸資産に、旧税率または軽減税率が混在していないか

申告集計側

  • 税率別の売上・仕入集計が、申告付表に正しく連動しているか
  • 旧税率がある場合、通常の付表ではなく、経過措置対象取引用の付表を使う必要がないか
  • インボイスの積上げ計算・割戻し計算との整合性は取れているか
  • 仮受・仮払消費税の残高が、異常な動きをしていないか
  • 税率別の消費税額と、請求書控え・販売管理データが整合しているか

ここまで確認して、はじめて税率区分は「申告時の計算」ではなく「月次で管理された数字」になります。

税率誤りに気づいた場合の対応

税率誤りに気づいた場合には、まず影響範囲を分けて整理していきます。

1. まだ請求・交付前の場合

請求書、納品書、レシート、販売管理データを修正し、取引先に交付する前に正しい税率へ直します。社内承認フローがある場合には、税率変更の根拠を残しておくことが望ましいです。

2. 請求・交付済みだが、申告前の場合

売手側では、訂正インボイスや再交付の要否を確認します。買手側では、取引先へ再交付を依頼し、正しい書類に基づいて記帳します。税率誤りによって税込金額そのものが誤っている場合には、単なる追記では済まないことがあります。

3. 申告後に判明した場合

すでに申告済みであれば、税額への影響を確認したうえで、修正申告または更正の請求を検討する必要があります。売上側の税率誤り、仕入側の税率誤り、インボイスの記載不備、経過措置の見落としでは、必要な対応がそれぞれ異なります。

4. 継続的な誤りだった場合

過年度から同じ税区分を継続していた場合には、単月だけでなく、誤りが発生していた期間全体を確認します。販売管理システム、会計ソフト、商品マスター、取引先マスター、社内マニュアルに、原因が残っている可能性があるためです。

過去分を直すだけでなく、再発防止のために、税率判定の承認プロセスや、商品・役務マスターの見直しまで踏み込んでおきたいところです。

税務調査で説明できる状態にしておく

税率区分は、税務調査でも確認されやすい項目です。

特に、次のような取引は、後から説明できる状態にしておくことが重要になります。

  • 8%取引が、軽減税率なのか旧税率なのか
  • 飲食料品に関連する役務提供を、標準税率とした理由
  • セット商品や一体資産の税率判定
  • 新聞、電子版、定期購読契約の区分
  • 経過措置により旧税率を適用した根拠
  • 税率誤りを修正した経緯
  • 取引先から再交付を受けた請求書やインボイスの保存状況

税務調査で問われるのは、「どの税率で処理したか」だけではありません。なぜその税率で処理したのか、どの契約書・請求書・商品資料・業務フローに基づいて判断したのかが問われます。

そのため、判断に迷う取引については、税率判定メモを残しておくことが有効です。メモには、少なくとも次の事項を残しておくと、後から説明しやすくなります。

  • 取引の概要
  • 商品または役務の内容
  • 取引時期
  • 契約書・注文書・請求書の確認結果
  • 適用税率の判断
  • 判断根拠
  • 承認者
  • 再確認が必要となる条件

これは、形式的な書類作成ではありません。後から数字を説明できる状態にしておくための、実務上の防御策です。

標準税率・軽減税率・旧税率の区分で、専門家に相談すべき場面

日常的な物品販売や経費処理であれば、社内ルールと会計ソフトの設定で対応できる場合も多いでしょう。

一方で、次のような場合には、個別に確認する価値があります。

  • 旧税率または経過措置対象取引が残っている
  • 8%取引の内訳が、軽減税率か旧税率か分からない
  • 食品関連の売上に、加工、委託販売、販売手数料、セット販売が含まれる
  • レシートや請求書の税率誤りが、継続的に発生している
  • 販売管理システムと会計ソフトの税区分が一致していない
  • 税率誤りが、すでに申告済みの課税期間に及んでいる
  • インボイスの記載税率と取引事実が一致しているか不安がある
  • 税率区分が、部門別損益や資金繰りにも影響している

税率区分は、一つひとつは小さな違いに見えるかもしれません。しかし、同じ誤りが続くと、申告税額、納税資金、取引先対応、税務調査対応に、大きく影響してきます。

まとめ

標準税率・軽減税率・旧税率の区分は、消費税申告のなかでも基本的な論点です。ただ、基本的であるからこそ、会計ソフトや前例に任せきりになりやすい領域でもあります。

特に、軽減税率8%と旧税率8%は、合計税率が同じでも、国税と地方消費税の内訳が異なります。税率表示が同じ8%に見えても、申告上は別の税区分として扱う必要があります。

消費税の税率管理では、次の考え方が重要になります。

  • 請求書の表示ではなく、取引事実から税率を判断する
  • 軽減税率8%と旧税率8%を区分して管理する
  • 経過措置対象取引は、任意に税率を選べるものではない
  • 税率誤りは、請求・記帳・インボイス・申告・資金繰りへ波及する
  • 決算時ではなく、月次で税率区分を確認する
  • 判断に迷う取引は、契約書、請求書、商品資料、判断メモを残す

税率区分を正しく管理することは、単に申告書の数字を合わせるためだけのものではありません。自社の取引を、後から第三者に説明できる状態にしておくための、基礎そのものだと考えています。

消費税の税率区分、インボイス対応、旧税率・経過措置の整理、会計ソフトの税区分マスターの見直しについて不安がある場合は、早い段階で、現在の取引と証憑を整理しておくことが大切です。犬飼公認会計士・税理士事務所では、申告時の計算だけでなく、契約、請求、会計処理、証憑保存、月次確認までを含めて、後から説明できる消費税管理の仕組みづくりを支援しています。税率区分に不安のある取引がありましたら、お問い合わせページよりご相談ください。

振り返り

確認項目実務上のポイント
標準税率現在の通常の課税取引は10%。消費税率7.8%、地方消費税率2.2%。
軽減税率飲食料品等・一定の新聞の譲渡が対象。合計8%だが、消費税率は6.24%。
旧税率8%経過措置対象取引等で問題となる。合計8%だが、消費税率は6.3%。
同じ8%の注意点軽減税率8%と旧税率8%は、国税・地方税の内訳が異なるため同じ税区分にできない。
請求書の税率誤り請求書表示ではなく、取引事実に基づいて判断する。必要に応じて再交付を依頼する。
経過措置要件を満たす場合は旧税率を適用する。任意に10%や軽減税率を選ぶものではない。
会計ソフト「8%」だけでなく、「軽減8%」「旧税率8%」を区分できる税区分設計が必要。
月次確認新規取引、請求書、レシート、経費精算、旧税率取引を月次で点検する。
税務調査対応契約書、請求書、商品資料、判断メモを残し、税率判断の根拠を説明できる状態にする。
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