「自社のことは、経営者である自分が一番よく分かっている」
多くの場合、これはそのとおりだと思います。取引先との関係、現場の空気、社員一人ひとりの力量、価格交渉の難しさ、資金繰りの肌感覚。こうしたものには、経営者にしか分からない部分が確かにあります。
しかし、金融機関、後継者、M&Aの買い手、外部株主、支援機関、専門家といった人たちは、経営者の頭の中だけを見て判断することはできません。外部の関係者が見るのは、数字であり、資料であり、計画であり、説明であり、そして改善の実績です。
外部に説明できる会社とは、見栄えのよい資料を作れる会社のことではありません。まして、悪い数字を上手に隠せる会社のことでもありません。自社の現状、課題、資金の見通し、利益の構造、改善の方向性、将来計画を、数字と事実に基づいて説明できる会社のことです。
この説明可能性は、単なる対外対応の技術ではありません。信用力、資金調達力、承継の可能性、M&Aの選択肢、成長投資の実行力に関わる、経営管理の基盤そのものだと考えています。
「説明できる」とは、口がうまいことではない
外部説明というと、金融機関への説明資料、融資面談、事業計画書、プレゼン資料といったものを思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、それらも重要です。ただ、本質は資料の見た目にはありません。
外部に説明できる会社には、次のような特徴があります。
- 月次の数字が、一定のルールで作成されている
- 試算表、資金繰り表、借入一覧、売掛金・買掛金の状況をすぐに確認できる
- 売上、粗利、固定費、営業利益、資金残高の変化について、その理由を説明できる
- 過去実績と将来見通しがつながっている
- 経営計画に、売上目標だけでなく、利益計画、資金計画、行動計画がある
- 計画が未達の場合に、原因と改善策を説明できる
- 契約書、申告書、議事録、借入契約、許認可、株主関係資料などが整理されている
- 経営者だけでなく、経理担当者や幹部も、一定の範囲で数字の前提を理解している
つまり、説明できる会社とは、「質問されたときに、根拠資料を示しながら答えられる会社」です。
逆に、説明できない会社では、次のようなことが起こりがちです。
- 決算書はあるが、直近の業績が分からない
- 試算表はあるが、なぜ利益が増減したのか説明できない
- 利益は出ているが、資金がどれだけもつか分からない
- 借入金の残高や返済予定を、一覧で確認できない
- 経営計画はあるが、過去実績とのつながりが弱い
- 金融機関から質問されるたびに、資料を探している
- 後継者や買い手に、会社の実態を引き継げない
これは、会社が悪いという話ではありません。多くの中小・中堅企業では、日々の営業、採用、資金繰り、現場対応に追われ、説明のための仕組みづくりが、どうしても後回しになりがちです。
ただ、説明できない状態が続くと、いざ資金調達、投資、承継、M&A、経営改善が必要になったとき、選択肢が一気に狭まってしまいます。
なぜ外部説明が経営判断に直結するのか
外部説明は、一見すると会社の外に向けた作業に見えます。ところが実際には、経営者自身の判断の質を高める効果を持っています。
なぜなら、外部に説明するためには、自社の状態を構造的に整理しなければならないからです。たとえば、次のような問いです。
- 売上が増えているのに、利益が残らないのはなぜか
- 黒字なのに、資金が増えないのはなぜか
- 借入を増やすべきか、それとも返済を優先すべきか
- 設備投資をしても、資金繰りは耐えられるのか
- 不採算事業を続けるべきか、見直すべきか
- 後継者に、何を引き継ぐべきか
- 買い手から見て、自社のリスクはどこにあるのか
これらを外部に説明できる状態へ整えていく過程で、経営者自身も、自社の強み、弱み、資金余力、リスク、成長余地を把握しやすくなります。
説明可能性は、外部のためだけのものではありません。経営者が自分で納得して判断するための、整理でもあるのです。
外部に説明できる会社が整えている5つの材料
外部説明で大切なのは、単発の資料ではなく、複数の資料と説明がつながっていることです。
なかでも重要なのが、次の5つです。
1. 月次資料
年に一度の決算書だけでは、足元の経営状態を十分に説明することはできません。
金融機関や外部関係者が知りたいのは、過去の決算ではなく、「今どうなっているのか」「これからどうなりそうなのか」です。そのためには、月次資料が欠かせません。
月次資料には、少なくとも次の内容を含めておきたいところです。
- 月次試算表
- 売上、粗利、営業利益、経常利益の推移
- 前年同月比較、予算比較
- 主要な増減理由
- 売掛金、買掛金、在庫、借入金の状況
- 資金残高と今後の資金見通し
- 経営上のトピックス
金融機関に月次決算を報告する場合、肝心なのは「利益が出ている月だけ提出すること」ではありません。業績が良い月も悪い月も、正確な月次決算を継続して示すことです。金融機関は、良い数字そのものよりも、会社が正確に現状を把握し、経営者自身がそれを説明できるかどうかを重視します。
月次資料は、細かければよいというものでもありません。毎月続けられることが前提です。
中小・中堅企業であれば、まずは次のような構成から始めるのが現実的だと思います。
- 1ページ目:損益の概要
- 2ページ目:資金繰りと借入の状況
- 3ページ目:今月の課題と来月の対応
この程度であっても、毎月同じ形式で作り、経営者がその内容を自分の言葉で説明できれば、外部説明の力は大きく変わってきます。
2. 経営計画
外部に説明できる会社には、将来の方向性があります。
ただし、ここでいう経営計画とは、きれいな理念集や、希望的な売上目標のことではありません。経営方針、数値計画、資金計画、行動計画がきちんとつながったものを指します。
経営計画がある会社は、金融機関から見ても、どのような将来を描いているのか、どのような資金使途があるのか、どのような改善を進めようとしているのかを理解しやすくなります。共通認識を持って支援しやすくなり、計画の進捗確認を通じて、改善の助言も受けやすくなります。
経営計画で外部に説明すべき主な内容は、次のとおりです。
- 会社の方向性
- 重点事業
- 売上計画
- 粗利・利益計画
- 固定費計画
- 人員計画
- 設備投資計画
- 借入返済計画
- 資金繰り見通し
- 主要施策と実行時期
- 責任者と確認指標
経営計画は、作って終わりではありません。外部に説明できる会社は、計画と実績を毎月、あるいは四半期ごとに比較し、差異が出た場合には、その原因と対応策を確認しています。
計画が未達であること自体よりも、未達の理由を把握せず、対応策を説明できないことのほうが、はるかに問題なのです。
3. 資金繰り表
会社は、利益だけでは動きません。現金で動きます。
外部に説明できる会社は、資金繰りを成り行きで眺めたりはしません。入金予定、支払予定、借入返済、税金、賞与、設備投資を織り込んだうえで、将来の資金残高を確認しています。
資金繰り表は、突然の資金ショートを避けるためだけの表ではありません。いつ資金が必要になるか、借入が必要か、返済に無理はないか、投資の余力があるかを説明するための資料です。具体的には、売上の回収と仕入・外注・経費の支払いのバランス、借入金や手形割引の推移、月別の過不足などを確認していきます。
とりわけ金融機関対応では、資金繰り表が重要な意味を持ちます。
借入を申し込むときに、「資金が足りません」だけでは、説明になりません。次のところまで示せて、はじめて説明と言えます。
- いつ不足するのか
- 不足額はいくらか
- 原因は、売上減少か、回収遅れか、在庫増加か、設備投資か、返済負担か
- 借入金は何に使うのか
- 返済原資はどこから出るのか
- 改善策は何か
- 借入後の資金残高は、どう推移していくのか
ここまで説明できると、資金調達は単なるお願いではなく、経営管理に基づいた対話になります。
4. 課題認識と改善策
外部に説明できる会社は、良いところだけを話す会社ではありません。
むしろ、課題を正しく認識し、改善策を持っている会社です。
外部関係者は、完璧な会社を求めているわけではありません。金融機関も、買い手も、後継者も、投資家も、会社に課題があることは理解しています。重要なのは、その課題を経営者が把握しているか、改善の優先順位を持っているか、実行状況を確認しているか、という点です。
課題認識では、たとえば次のような論点を整理します。
- 売上の伸び悩み
- 粗利率の低下
- 固定費の増加
- 不採算商品・不採算取引先
- 売掛金の回収遅れ
- 在庫の増加・滞留
- 借入返済負担
- 人員不足・採用難
- 経理・資金管理の属人化
- 契約管理・許認可・株主管理の不備
- 設備の老朽化
- 後継者不在
改善策については、抽象的な表現では不十分です。
「売上を増やす」ではなく、どの顧客層に、どの商品を、どの単価で、誰が、いつまでに、どの程度販売するのか。「経費を削減する」ではなく、どの費目を、どの基準で、誰が見直すのか。「資金繰りを改善する」ではなく、回収条件、在庫、支払条件、借入返済、投資計画をどう見直すのか。ここまで踏み込む必要があります。
経営改善計画の場面では、ビジネスモデル俯瞰図、会社概要、資金繰り実績、具体的施策、実施計画、モニタリング計画、財務計画などを整理し、金融機関に説明することが求められる場合があります。
そして、この考え方は通常時でも有効です。会社の課題を言語化し、数字と行動に落とし込むこと。これが、説明可能性を高めていきます。
5. 過去実績と将来見通しの整合性
外部説明で、最も見落とされやすいのが、過去実績と将来見通しの整合性です。
たとえば、過去3年間の売上が横ばいなのに、来期だけ売上30%増の計画になっている。粗利率が低下傾向なのに、根拠もなく粗利率が改善する計画になっている。固定費が増えているのに、人員計画や投資計画が反映されていない。借入返済が重いのに、資金繰り表に返済が織り込まれていない。
こうした計画は、外部から見ると、どうしても説明力が弱くなります。
将来見通しを作るときは、次の順番で整理していくとよいでしょう。
- 過去実績は、どう推移しているか
- 直近の月次では、何が起きているか
- 今後の売上・粗利・費用・資金に影響する要因は何か
- 経営者が打つ施策は、どの数字に影響するのか
- その効果は、いつ、どの程度表れる見込みか
- 未達の場合、資金繰りにどのような影響が出るか
- 代替策はあるか
外部に説明できる会社は、将来を楽観的に語るだけではありません。実績、前提、施策、リスク、資金影響をつなげて説明します。
金融機関に説明できる会社
中小・中堅企業にとって、外部説明の最も身近な相手は金融機関でしょう。
金融機関対応は、融資を受けるときだけ行うものではありません。日常的な月次報告、決算報告、計画説明、資金使途の説明、返済原資の説明を通じて、会社の信用を少しずつ積み上げていくものです。
融資審査では、担保だけでなく、事業内容、業績、今後の見通し、資金使途、融資形態、返済原資、保全、他行の状況などが確認されます。金融機関の担当者が、自社の事業内容を当然に深く理解しているとは限りません。だからこそ、会社側から事業内容や商流、収益構造を具体的に説明する姿勢が大切になります。
金融機関に説明するときは、次の資料を整えておくと有効です。
- 直近の月次試算表
- 前年同月比較・予算比較
- 資金繰り表
- 借入金一覧
- 返済予定表
- 売掛金・買掛金の状況
- 在庫の状況
- 経営計画
- 設備投資計画
- 資金使途の説明資料
- 返済原資の説明資料
- 改善策と実行状況
金融機関に対しては、良い情報だけを出すのではなく、悪い兆候も早めに共有することが重要です。資金繰りが厳しくなってから突然相談するよりも、数か月前から見通しを示し、対応策を相談できるほうが、選択肢は確実に増えます。
また、近年は経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組みも進められています。金融庁の「経営者保証改革プログラム」では、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させる方針が示され、監督指針の改正などによって、保証徴求手続の厳格化が進められています。経営者保証の解除や抑制を考える場合も、法人と個人の資産分離、財務基盤、経営の透明性など、会社として説明できる管理体制が重要になります。
後継者に説明できる会社
事業承継では、後継者に代表者の地位を渡すだけでは足りません。
会社の数字、資金、契約、借入、株主、組織、管理体制を引き継げなければ、承継後の経営は不安定になってしまいます。
後継者に説明できる会社とは、次のことを整理できている会社です。
- どの事業で利益を出しているか
- どの取引先に依存しているか
- 売掛金・買掛金・在庫は適切に管理されているか
- 借入金はいくらあり、返済予定はどうなっているか
- 経営者保証はどうなっているか
- 重要契約や許認可はどこにあるか
- 株主構成は整理されているか
- 月次決算、資金繰り、経営会議はどう運用されているか
- 社内の承認権限や業務フローはどうなっているか
事業承継では、経営の承継と支配権の承継を分けて考える必要があります。経営者の交代だけでなく、株式、議決権、金融機関対応、社内権限、重要資料の整理が欠かせません。
後継者に説明できない会社は、後継者が悪いのではなく、引き継ぐべき情報が会社の仕組みとして整理されていないことが多いものです。
承継の前から、月次資料、資金繰り表、借入一覧、契約一覧、株主名簿、経営計画を整えておくこと。それは、後継者を守ることにもつながります。
M&Aの買い手に説明できる会社
M&Aでは、買い手は会社の将来だけでなく、過去と現在も確認します。
- なぜ利益が出ているのか
- その利益は継続するのか
- 売上は特定の取引先に依存していないか
- 簿外債務や未払税金はないか
- 役員貸付金や役員借入金はないか
- 契約書や許認可は整理されているか
- 株主は整理されているか
- 従業員、取引先、金融機関との関係はどうか
- 買収後に資金繰りが悪化する要因はないか
中小M&Aでは、譲渡前に会社を「見える化」し、「磨き上げる」ことが重要になります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、中小M&Aに先立つ事前準備として、株式や事業用資産等の整理・集約などが示されています。
M&Aのデューデリジェンスでは、ビジネス、財務・税務、法務、人事、ITなど、複数の分野が確認されます。なかでも財務・税務DDでは、過去の損益やキャッシュフローの実績、現在の財務状況、将来計画の基礎情報、税務リスクなどが確認されます。
つまり、M&Aの場面で求められる説明は、急に作れるものではないということです。
日頃から月次決算、資料保管、契約管理、株主管理、資金繰り、経営計画を整えている会社ほど、買い手に対して説明しやすくなります。
外部株主・投資家に説明できる会社
借入以外の資金調達、PEファンド、外部株主、将来的なIPOを検討する会社では、説明する相手がさらに広がっていきます。
外部株主や投資家が見るのは、単年度の利益だけではありません。
- 成長余地
- 収益性
- 資本効率
- キャッシュフロー
- 経営管理体制
- ガバナンス
- リスク
- 経営者の説明力
- 計画と実績の管理
- 外部株主との対話姿勢
IPOを例にとると、形式的な管理体制を整えるだけでは十分ではありません。IPOは、株式市場の投資家に対して自社株式を評価してもらう経営戦略であり、成長ストーリー、業績の裏付け、管理体制、説明責任が一体となって求められます。
一般的な中小・中堅企業が、すぐにIPOを目指すわけではないでしょう。それでも、外部株主や投資家に説明できる会社を意識することは、経営管理の質を確実に高めてくれます。
自社の価値を説明できる会社は、資金調達、承継、M&A、成長投資といった選択肢を広げやすくなるのです。
説明できる会社と、説明できない会社の違い
外部説明の差は、資料の量ではありません。
違いは、数字と事実のつながりにあります。
説明できる会社は、売上が増えた理由を、顧客数、単価、販売数量、商品構成、取引先別の変化で説明できます。一方、説明できない会社は、「営業が頑張ったから」としか言えません。
説明できる会社は、利益が減った理由を、粗利率、原価、外注費、人件費、固定費、値引きに分解できます。説明できない会社は、「なんとなく忙しかったのに、利益が残らない」と感じています。
説明できる会社は、資金が減った理由を、売掛金、在庫、設備投資、借入返済、税金、賞与で説明できます。説明できない会社は、「黒字なのに、お金がない」と不安になります。
説明できる会社は、計画未達の理由と改善策を持っています。説明できない会社は、「来月から頑張る」で終わってしまいます。
説明できる会社は、外部からの質問を、経営改善のきっかけにできます。説明できない会社は、質問を受けるたびに、資料探しと弁解に追われます。
この差は、会社の規模からではなく、管理の姿勢から生まれます。
外部説明で避けるべきこと
良い数字だけを見せる
外部説明では、良い数字だけを見せても、信頼にはつながりません。
金融機関も、買い手も、後継者も、投資家も、悪い材料がまったくない会社だとは考えていません。むしろ、悪い材料を経営者が把握し、改善に向けて動いているかどうかを見ています。
計画を希望的に作る
売上が伸びる前提だけで計画を作ると、説明力が弱くなります。
売上増加の根拠、粗利率の前提、固定費の増減、設備投資、人員採用、そして資金繰りへの影響まで、ひととおり示す必要があります。
資金繰りを後回しにする
利益計画だけでは、会社は説明できません。
利益が出ていても、売掛金の回収が遅れ、在庫が増え、借入返済が重ければ、資金繰りは悪化します。利益計画と資金計画は、一体で説明する必要があります。
外部環境のせいだけにする
原材料高、人手不足、価格競争、金利上昇、取引先の動向。こうした外部環境は、確かに重要です。
しかし、外部説明では「環境が悪い」だけでは不十分です。その環境変化に対して、自社が何を見直し、どの数字にどう影響すると考えているかまで、説明する必要があります。
資料だけ整えて運用しない
一度だけ立派な資料を作っても、月次で更新されなければ意味がありません。
外部説明とは、資料作成ではなく、継続的な管理運用です。計画と実績を確認し、差異を分析し、次の行動を決める。その仕組みが必要になります。
まず整えるべき実務資料
外部説明を強くするために、最初から大がかりな管理体制を作る必要はありません。
まずは、次の資料を整えるところから始めましょう。
月次試算表
毎月、一定のタイミングで作成します。売上、粗利、営業利益、経常利益、そして主要な資産・負債の変化を確認します。
中小企業向けの会計ルールとしては、「中小企業の会計に関する基本要領」があります。これは、中小企業の実態に配慮したうえで、会社法上の計算書類等を作成する際に参照する会計処理や注記などを示したものです。
資金繰り表
少なくとも3か月先、できれば6か月から12か月先まで作成します。入金予定、支払予定、借入返済、税金、賞与、設備投資を織り込みます。
借入金一覧
金融機関別に、借入日、当初金額、残高、返済額、金利、返済期限、保証・担保の有無を一覧にします。
経営計画
最初はA4一枚でも構いません。会社の方向性、重点施策、数値目標、資金計画、行動計画を、簡潔にまとめます。
課題管理表
経営課題、原因、対応策、担当者、期限、進捗状況を一覧にします。金融機関、後継者、専門家との対話の場でも有効です。
重要資料一覧
契約書、借入契約、返済予定表、申告書控え、議事録、許認可、株主名簿、保険、固定資産資料などの保管場所を整理します。
重要な書類をすぐに取り出せる状態にしておくことは、業務効率の面だけでなく、情報漏えい、改ざん、紛失のリスク低減にもつながります。申告書・届出書等の控えについても、関与税理士任せにせず、会社側で保存・管理しておくことが大切です。
外部説明を月次運用に組み込む
外部に説明できる会社を作るには、毎月の運用に落とし込むことが欠かせません。
次のような月次レビューを行うと、説明力が高まっていきます。
- 月次試算表を確認する
- 前年同月・予算との差異を見る
- 売上、粗利、固定費、資金残高の変化を確認する
- 資金繰り表を更新する
- 借入返済、税金、賞与、投資予定を確認する
- 課題管理表を更新する
- 必要に応じて、金融機関や専門家に共有する
計画を策定した後も、少なくとも毎月、月次決算の際に計画と実績の差異を確認し、具体的な打ち手を決めて実行していくことが望ましいとされています。モニタリングは、財務面、事業面、資金繰り面の3つに分けて確認する考え方が有効です。
この月次運用があると、金融機関への説明、後継者への引継ぎ、M&Aの準備、外部株主への説明が、特別な作業ではなくなっていきます。
専門家を活用すべき場面
外部説明は、本来、経営者自身が行うべきものです。
ただし、数字の整理、資料の信頼性の確保、計画の前提確認、税務・会計・資金への影響整理は、専門家の関与が有効な領域です。
専門家を活用すべき場面としては、たとえば次のようなときが挙げられます。
- 月次決算が遅い、または数字の精度に不安がある
- 金融機関に、試算表や資金繰り表を説明できていない
- 借入の返済原資を説明できない
- 経営計画が、売上目標だけになっている
- 利益計画と資金計画がつながっていない
- 承継に向けて、株式、借入、保証、契約を整理したい
- M&Aを見据えて、会社の見える化を進めたい
- 経理や資金管理が属人化している
- 外部に説明できる管理体制を整えたい
専門家は、経営判断を代行する存在ではありません。経営者が判断するために、数字、事実、論点、選択肢を整理する存在です。
外部に説明できる会社を作るために必要なのは、耳ざわりのよい資料ではありません。後から確認できる数字と、実行可能な計画です。
参考となる公的情報
中小企業の会計処理や計算書類作成の基礎として、中小企業庁は「中小企業の会計に関する基本要領」を公表しています。
金融機関による融資や監督の考え方については、金融庁が「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を公表しています。
出典:金融庁|検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方
経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策については、金融庁が「経営者保証改革プログラム」を公表しています。
中小M&Aの進め方や支援機関との関係については、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を公表しています。
なお、制度、金融実務、税務・会計処理、M&A支援制度などは、改正・更新されることがあります。実際の対応にあたっては、最新の公式情報と個別の事情を確認する必要があります。
外部に説明できる会社へ整えたい方へ
犬飼公認会計士・税理士事務所では、中小・中堅企業が月次の数字、資金繰り、経営計画、課題整理、金融機関対応を、経営判断に使える状態へ整える支援を行っています。
- 試算表はあるが、経営判断に使えていない
- 金融機関に、何をどう説明すればよいか分からない
- 資金繰り表や借入一覧を整えたい
- 経営計画を作ったが、実績管理に使えていない
- 後継者や外部関係者に、会社の状態を説明できるようにしたい
- 将来の承継やM&Aも見据えて、資料と管理体制を整えたい
このような課題がある場合、まずは現在の月次資料、資金繰り、借入状況、経営計画、重要資料の整理状況を確認することから始められます。
外部に説明できる会社になることは、金融機関のためだけではありません。経営者自身が、自社の状態を数字と事実で理解し、次の一手を判断するための、土台づくりです。
自社の数字・資金・計画を、金融機関や後継者、外部関係者に説明できる状態へ整えたい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
振り返り
| 論点 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 外部に説明できる会社の意味 | 見栄えのよい資料ではなく、数字と事実に基づいて現状・課題・見通しを説明できるか |
| 月次資料 | 試算表、前年同月比較、予算比較、主要な増減理由、資金状況を毎月確認できるか |
| 経営計画 | 経営方針、数値計画、資金計画、行動計画がつながっているか |
| 資金繰り表 | 入金、支払、借入返済、税金、賞与、設備投資を織り込んで将来資金を説明できるか |
| 課題認識 | 売上、粗利、固定費、回収、在庫、借入、組織、契約などの課題を把握しているか |
| 改善策 | 抽象論ではなく、担当者、期限、実行内容、数字への影響まで整理しているか |
| 実績と見通しの整合性 | 過去実績、直近月次、将来計画の前提がつながっているか |
| 金融機関対応 | 資金使途、返済原資、業績見通し、改善状況を説明できるか |
| 後継者への説明 | 借入、保証、契約、株主、月次管理、資金繰りを引き継げる状態か |
| M&Aへの備え | 月次決算、契約、許認可、株主、資産負債、簿外リスクを説明できるか |
| 外部株主・投資家対応 | 成長性、収益性、資本効率、リスク、管理体制を説明できるか |
| 専門家活用 | 経営判断を丸投げせず、数字の信頼性、論点整理、外部説明資料の整備に専門家を活用しているか |