返済負担が重いときの金融機関対応|リスケジュール・資金繰り表・改善計画の実務視点

借入金の返済が重くなってくると、経営者の意識はどうしても、今月の返済をどうするか、金融機関に何と言えばよいか、リスケジュールを申し出るべきか、といった目の前の論点に向かいます。資金繰りが差し迫っている局面では、それはごく自然な反応でしょう。返済、給与、仕入、外注費、税金、社会保険料が同じ時期に重なれば、経営者が強い不安を感じるのは当然のことです。

ただ、金融機関対応で最も避けたいのは、資金が足りなくなってから、根拠の薄い説明で「何とか待ってほしい」とお願いに走ることです。金融機関対応は、単なる交渉ではありません。会社の現状、資金繰り、返済原資、改善策、今後の見通しを、数字と事実に基づいて説明する、いわば経営管理の延長線上にあるものだと考えています。

返済負担が重いときにまず大切なのは、「返済できるか、できないか」を感覚で判断しないことです。資金繰り表を作り、事業の収益力を確認し、返済原資を見積もる。そのうえで、必要であれば返済条件の見直しも含めて、金融機関に早めに相談する。この順番が欠かせません。

本稿では、中小・中堅企業が返済負担に直面したときに金融機関とどう向き合うべきかを、リスケジュール、資金繰り表、返済原資、改善計画、全行対応、モニタリングという観点から整理してみます。

目次

返済負担が重い状態を「一時的な資金不足」とだけ見ない

返済が重い状態には、いくつかの段階があります。

一時的に入金が遅れているだけのこともあれば、季節要因で資金が薄くなっているケースもあります。大型設備投資のあとで返済額が増えている場合もありますし、売上の減少や粗利の低下によって、事業から生まれる資金が返済額に追いつかなくなっている場合もあります。

この区別をしないまま金融機関に相談すると、対応を誤りかねません。

一時的な資金不足であれば、短期資金の調達、入金の前倒し、支払時期の調整、運転資金の見直しなどで対応できることもあります。一方、本業のキャッシュフローが恒常的に返済額を下回っているのであれば、追加借入で乗り切るだけでは、問題の先送りにしかなりません。

返済負担を見るときは、少なくとも次の3つを分けて考える必要があります。

見るべき観点確認する内容判断への影響
短期資金繰り1か月、3か月、6か月先の資金残高いつ資金不足が起きるかを把握する
返済原資本業から生まれる営業キャッシュフロー返済を継続できる力があるかを判断する
債務構造借入残高、返済期間、金利、保証、担保、金融機関別残高条件変更や借換えの必要性を判断する

返済負担が重いという状態は、単に「借入が多い」という一点の問題ではありません。利益、資金繰り、借入条件、在庫・債権、設備投資、税金、そして経営改善策が絡み合った、複合的な問題なのです。

リスケジュールは「返済を止めること」ではなく、改善の時間を確保すること

返済負担が重く、通常どおりの元金返済を続けると資金が尽きてしまう。そうした場合には、金融機関へ返済条件の見直しを相談することがあります。一般にリスケジュールと呼ばれる対応です。

リスケジュールは、会社が立ち直るための有力な選択肢になり得ます。ただし、その意味を取り違えてはいけません。

リスケジュールは、返済を免除してもらう制度ではありません。元金返済の猶予、返済期間の延長、返済額の軽減などによって短期的な資金繰りを安定させ、その間に収益力の改善を進めるための対応です。

この点は、金融庁の監督指針からも読み取れます。金融機関には、借り手の状況をきめ細かく把握し、関係金融機関等と連携しながら、円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めることが求められています。そして、ここでいう貸付条件の変更等には、条件変更や旧債の借換え、DESといった債務弁済負担の軽減措置までが含まれます。出典:金融庁|中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 令和8年6月

ここで誤解してはならないのは、金融機関が無条件に返済猶予を認めるわけではない、という点です。金融機関は、会社の事業内容、業績、資金繰り、返済可能性、改善策をしっかり見ています。融資審査においても、担保より先に、まず債務者評価、つまり事業内容、業績、今後の見通しが確認されます。

ですから、リスケジュールを検討する場合でも、「資金が苦しいので待ってください」では足りません。

なぜ返済が重くなったのか。今後いつ資金不足が起きるのか。返済を一時的に軽くすれば、事業は本当に改善できるのか。改善後に、どの程度の返済原資を生み出せるのか。経営者はどの施策を、いつまでに実行するのか。

こうした説明が必要になります。

相談前にまず作るべきは、資金繰り表である

返済負担が重いとき、最初に整えるべき資料は資金繰り表です。

試算表や決算書だけでは、いつ資金が足りなくなるかは見えてきません。損益計算書上は黒字でも、売掛金の回収が遅れ、在庫が増え、借入返済や税金の支払いが重なれば、資金は不足します。利益計画だけでは黒字倒産を防げない以上、資金計画もあわせて必要になるのです。

資金繰り表では、少なくとも次の項目を整理します。

区分主な内容
入金売掛金回収、現金売上、その他入金、借入入金
支払仕入、外注費、人件費、家賃、経費、税金、社会保険料
借入返済金融機関別の元金返済、利息支払
一時支出賞与、設備投資、修繕、保険、決算納税
資金残高月初残高、月中増減、月末残高
不足時期いつ、いくら不足するか
対応策入金前倒し、支払調整、借入相談、返済条件見直し

実務上は、最低でも向こう3か月、できれば6か月から12か月先までの資金繰りを見ておきます。資金ショートが近い局面では、月次では粗すぎるため、週次、あるいは日次に近い粒度まで落として確認します。

こうした考え方は、中小企業庁の早期経営改善計画策定支援でも前提になっています。資金繰り管理や自社の経営状況の把握を土台に、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプラン、損益計画、資金繰表を作成していく、という流れです。出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援

金融機関に相談する際に必要なのは、「足元が苦しい」という説明ではなく、「このまま返済を続けると、いつ、いくら不足するのか」を示すことです。資金不足の時期と金額が具体的になれば、金融機関の側も、条件変更、借換え、追加支援の必要性を検討しやすくなります。

返済可能額は「利益」ではなく「返済原資」から考える

返済計画を作るときに、最も重要なのは返済原資です。

返済原資とは、将来の借入返済に充てられる資金のことです。損益計算書上の利益そのものではない、という点に注意が必要です。

一般的には、次のように考えます。

  • 営業利益または経常利益
  • + 減価償却費
  • − 法人税等
  • − 設備更新や維持投資に必要な支出
  • − 運転資金の増加
  • − 必要な手元資金の確保
  • = 返済に回せる資金

もちろん、会社の状況に応じた調整は欠かせません。役員報酬を一時的に下げているなら、将来元に戻す必要があるかどうかを前提に織り込むべきです。設備の修繕を先送りしているだけなら、将来の支出として見込んでおく必要があります。税金や社会保険料の支払いを遅らせている場合、それも当然、返済原資を圧迫します。

金融機関に説明する返済可能額は、楽観的な数字ではなく、下振れリスクを見込んだ保守的な数字であるべきです。複数の金融機関がある場合には、キャッシュフローの範囲内で返済総額を決めたうえで、借入残高割合に応じたプロラタ返済など、公平性を意識した返済計画を検討することもあります。

たとえば、年間のフリーキャッシュフローが1,000万円見込まれるからといって、その1,000万円すべてを返済に充てる計画は危険です。計画未達、季節変動、設備修繕、税金、賞与、突発支出に備える余地を残しておかなければなりません。返済可能額は、会社を継続するための必要資金を残したうえで考えるべきものです。

返済原資を無視した返済計画は、金融機関にとっても会社にとっても、結局のところ持続しません。

金融機関に説明すべき資料

返済負担が重いときの金融機関対応では、説明資料の質が大きくものを言います。資料が不足していれば、金融機関は会社の状況を判断できません。その結果、相談は後ろ倒しになり、選択肢はどんどん狭くなっていきます。

最低限、次の資料は整理しておきたいところです。

資料目的
直近試算表現在の業績と財務状態を示す
月次推移表売上、粗利、固定費、利益の変化を見る
資金繰り表不足時期、不足額、必要支援額を示す
借入金一覧表金融機関別残高、返済額、金利、保証、担保を整理する
返済予定表今後の返済負担を見える化する
経営改善計画改善策、数値計画、返済原資を示す
アクションプラン誰が、いつ、何を行うかを明確にする
税金・社会保険料の状況滞納や分納の有無、資金繰りへの影響を確認する
在庫・売掛金の明細資金化可能性、滞留、貸倒リスクを見る
担保・保証の一覧既存保全状況、経営者保証の論点を整理する

経営改善計画策定支援の枠組みでも、ビジネスモデル俯瞰図、会社概要、資金繰り実績表、具体的施策と実施時期、アクションプラン、モニタリング計画、資産保全表、財務三表等の計数計画、そして金融支援を含む計画などを整理していくことが想定されています。

資料の目的は、きれいな書類を作ることではありません。金融機関が判断できる情報を、過不足なく示すことに尽きます。

金融機関には「原因」「現状」「改善策」「依頼内容」を分けて説明する

金融機関への説明では、話の順番が思いのほか重要です。

資金が苦しく経営者が焦っていると、つい「とにかく返済を待ってほしい」という依頼から入ってしまいがちです。しかし、それだけでは金融機関は判断のしようがありません。

説明は、次の順番で整理すると伝わりやすくなります。

1. なぜ返済負担が重くなったのか

売上減少なのか、粗利低下なのか、固定費の過大なのか、設備投資後の返済増加なのか、在庫や売掛金の増加なのか、あるいは税金や社会保険料の負担なのか。原因を切り分けて説明します。

原因が曖昧なままでは、改善策もまた曖昧になってしまいます。

2. 現在の資金繰りはどうなっているのか

現在の手元資金、今後の入出金、返済予定、納税予定、賞与、設備支出を示します。ここでは、資金繰り表が中心の資料になります。

3. どのような改善策を実行するのか

不採算事業の見直し、粗利改善、価格改定、固定費削減、在庫圧縮、売掛回収の強化、役員報酬の見直し、資産売却など、具体的な施策を示します。

「売上を増やす」「経費を削る」だけでは不十分です。改善効果は、数字で示す必要があります。

4. どのような金融支援を依頼するのか

元金返済の一時猶予、返済額の軽減、返済期間の延長、借換え、追加運転資金、保証条件の見直しなど、依頼内容を明確にします。

金融機関にとっても、何を検討すればよいのかがはっきりしている方が、対応しやすくなります。

5. 返済再開・返済額の根拠は何か

改善後に、どの利益・キャッシュフローから返済するのかを示します。返済額は、希望額ではなく返済原資から逆算します。

6. どのようにモニタリングするのか

毎月の試算表、資金繰り表、予実管理、アクションプランの進捗を、どの頻度で報告するかを決めます。

金融機関は、計画そのものだけでなく、計画を実行し、報告できる体制まで見ています。

複数金融機関がある場合は「全行対応」が基本になる

借入先が1行だけであれば、その金融機関との相談で済むこともあります。

しかし中小・中堅企業では、メイン銀行、サブ銀行、信用金庫、日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会付き融資など、複数の借入先を抱えていることが少なくありません。

このような場合、特定の金融機関だけに返済を続け、別の金融機関だけに返済猶予を依頼するといった対応は、原則として慎重に考えるべきです。金融機関間の公平性が問題になるからです。

複数の金融機関との調整では、バンクミーティングを開き、会社の状況、改善計画、必要な金融支援、返済計画を説明することがあります。経営改善計画策定支援の実務でも、複数金融機関との合意形成には、直接持ち回りで同意を得る方法とバンクミーティングによる方法があり、金融機関調整はメインバンクと協力して進めることが重要だと整理されています。

全行対応で押さえておきたいのは、次の点です。

論点実務上の注意点
メイン金融機関早めに相談し、計画策定や全行調整の進め方を確認する
借入残高金融機関別の残高、保証、担保、返済条件を一覧化する
公平性返済額を借入残高割合などに応じて検討する
保証協会付き融資保証協会の関与や手続が必要になる場合がある
公的金融機関民間金融機関とは判断や手続が異なる場合がある
税金・社会保険料金融機関返済だけでなく、公租公課の支払いも資金繰りに入れる
追加借入既存返済の見直しと同時に、新規資金の必要性と返済原資を説明する

金融機関ごとに個別対応を重ねていくと、説明内容にずれが生じたり、一部の金融機関に不公平感が残ったりします。厳しい局面ほど、全体像を一つの資料にまとめ、同じ前提で説明することが大切です。

返済条件の見直しと追加借入は別の論点である

返済負担が重いとき、経営者は追加融資を受けたいと考えることがあります。

たしかに、追加融資が必要な場面はあります。売掛金回収までのつなぎ資金、季節資金、受注増加に伴う増加運転資金、改善施策を実行するための資金などです。

しかし、既存借入の返済がすでに重く、本業のキャッシュフローで返済できていない状態であれば、追加借入だけで解決しようとするのは危険です。返済原資がないまま借入を増やせば、将来の返済負担はさらに重くのしかかってきます。

ここで分けて考えるべきなのは、次の2つです。

論点目的説明すべき内容
返済条件の見直し既存返済の負担を下げ、資金繰りを安定させる返済原資、改善計画、返済再開時期
追加借入改善・運転・投資に必要な新たな資金を確保する資金使途、必要額、返済原資、効果

追加借入を依頼する場合は、資金使途を明確にする必要があります。「足りないから借りたい」ではなく、「この資金を使うことで、どの入金をつなぐのか、どの改善を実行するのか、どの利益を生むのか」までを説明しなければなりません。

金融機関の融資審査では、債務者評価に加えて、資金使途、融資形態、返済原資、保全面、他行状況などが確認されます。

返済条件の見直しと追加借入を混同しないこと。これが金融機関対応の基本です。

経営者保証・担保も同時に整理しておく

返済負担が重い局面では、経営者保証や担保の問題も意識しておく必要があります。

新たな借入をする場合だけでなく、既存借入の条件変更、借換え、事業承継、M&A、再生手続を検討する場面でも、経営者保証や担保の状況が論点になってきます。

この点について金融庁の監督指針は、経営者保証に依存しない融資の促進や、保証契約を締結する場合・既存の保証契約がある場合に、なぜ保証が必要なのか、どのような改善を図れば変更や解除の可能性が高まるのかを、顧客の理解と納得を得ながら説明することを金融機関に求めています。出典:金融庁|中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 令和8年6月

会社側としては、次の整理が必要です。

項目確認内容
経営者保証どの借入に誰が保証しているか
物的担保不動産、預金、売掛債権、在庫、機械設備等の担保状況
保証協会保証付き融資の残高、保証割合、条件変更時の手続
法人・個人分離会社資金と経営者個人資金が混在していないか
情報開示月次資料や決算書を継続的に金融機関へ説明できているか
財務体質自己資本、債務償還年数、資金繰り管理の状況

経営者保証の見直しは、単に「外してほしい」と依頼すれば進むものではありません。会社と経営者個人の資産・資金の分離、財務基盤、適時適切な情報開示、ガバナンスなどが密接に関係します。

返済負担の相談をする段階で、保証と担保の一覧を整理しておくこと。これは、将来の選択肢を広げるためにも重要です。

金融機関対応で避けるべき行動

返済負担が重い局面では、焦りから不適切な対応をしてしまうことがあります。

特に避けたいのは、次のような行動です。

避けるべき対応なぜ問題か
資金不足の直前まで相談しない金融機関側の検討時間がなくなり、選択肢が狭くなる
楽観的な売上計画だけを示す返済原資の根拠が弱く、実現可能性を疑われる
一部の金融機関だけに説明する金融機関間の公平性に疑問が生じる
試算表や資金繰り表がない現状把握ができず、支援判断が難しくなる
税金・社会保険料の滞納を隠す資金繰り実態や優先支払の判断を誤る
返済猶予だけを目的化する改善策がなければ再び資金不足になる
改善計画を作った後に報告しない金融機関との信頼関係が弱くなる
口頭説明だけで済ませる後から説明内容が確認できず、社内外で共有しにくい

資金繰りが苦しいときほど、情報を隠したくなるものです。しかし金融機関対応においては、悪い情報こそ早く、正確に、改善策とセットで伝えることが重要になります。

情報を出さない会社よりも、課題を認識し、数字を示し、改善策を実行し、定期的に報告する会社の方が、金融機関は状況を判断しやすいのです。

中小企業金融では、金融機関と企業の間に情報の非対称性が存在します。金融機関から求められた情報だけを消極的に渡すのではなく、経営計画、月次・四半期資料、決算報告などを通じて、会社側から能動的に説明していく姿勢が欠かせません。

経営改善計画を作るべき場面

返済条件の見直しが必要な場合には、経営改善計画の作成が求められることがあります。

経営改善計画は、金融機関向けの形式資料ではありません。現状分析、改善策、損益計画、資金繰り、返済計画、モニタリングを一体として整理し、経営者、社内、金融機関が同じ前提で今後を判断するための資料です。

中小企業庁の経営改善計画策定支援は、金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者を対象としたものです。認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、DD・計画策定支援、アクションプランの検討、金融支援による資金繰りの安定、そして伴走支援までを行う、という仕組みになっています。出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援

計画に盛り込むべき主な内容は、次のとおりです。

項目内容
現状分析業績悪化・資金不足・返済負担の原因
財務実態資産、負債、借入、保証、担保、滞納の有無
事業改善策売上、粗利、固定費、在庫、債権、不採算事業の改善
損益計画売上、粗利、経費、利益の見通し
資金繰り計画入出金、返済、納税、必要資金の見通し
返済計画返済再開時期、返済額、金融機関別返済
アクションプラン担当者、期限、実施内容、効果
モニタリング月次・四半期で確認する資料と報告方法

金融機関が評価する計画は、前向きな言葉が多い計画ではありません。実現可能性があり、返済原資が明確で、改善策の進捗を確認できる計画です。

金融機関が求める経営改善計画では、売上計画を保守的で実現可能な内容にすること、固定費を削減すること、そして返済が「いつから」「いくら」できるのかを、具体的な期日と金額で示すことが重要になります。

中小企業活性化協議会や支援制度を使うべき場面

返済負担が重い場合でも、すべての会社が同じ支援制度を使うわけではありません。

資金繰りの管理や基本的な経営改善で対応できる段階なのか、金融支援を伴う本格的な経営改善計画が必要な段階なのか、あるいは事業再生や私的整理の検討段階なのか。まずはこの見極めが必要です。

中小企業庁は、中小企業活性化協議会の支援として、収益力改善支援、早期経営改善計画策定支援、プレ再生支援・再生支援、経営改善計画策定支援、再チャレンジ支援を整理しています。収益性のある事業はあるものの財務上の問題を抱える中小企業に対しては、事業面・財務面での改善を図る再生支援が用意されています。出典:中小企業庁|中小企業活性化協議会

なお、2026年3月26日には、中小企業庁が中小企業活性化協議会実施基本要領等の改定を公表しています。相談の早期化、支援メニューの適切な選択、出口の明確化、伴走支援の強化が重要性を増していることを踏まえた改定で、収益力改善支援については2026年10月1日適用で「金融支援あり」の廃止が示されています。制度を利用する際には、必ず最新の手引き・FAQ・申請様式を確認しておく必要があります。出典:中小企業庁|『中小企業活性化協議会実施基本要領』等を改定します

制度を使うべきかどうかは、補助金があるかどうかではなく、自社の局面そのもので判断すべきです。

状況検討しやすい対応
資金繰り管理が弱く、早めに改善したい早期経営改善計画策定支援
返済条件変更など金融支援が必要経営改善計画策定支援
収益性はあるが財務上の問題が大きい中小企業活性化協議会のプレ再生支援・再生支援
債務返済猶予や債務減免を含む私的整理を検討中小企業の事業再生等に関するガイドライン等の活用
再生が難しく保証債務や廃業も整理したい再チャレンジ支援、弁護士等との連携

中小企業の事業再生等に関するガイドラインについては、中小機構が第三者支援専門家候補者リストを公表しており、金融支援の区分として、債務減免等および債務返済猶予、債務返済猶予の登録区分が示されています。出典:中小機構|中小企業の事業再生等に関するガイドライン

返済条件の見直しで済む段階と、私的整理や法的整理を検討すべき段階とでは、対応がまったく異なります。そして、判断が遅れるほど、選択肢は確実に狭まっていきます。

モニタリングがなければ、金融機関対応は続かない

金融機関と返済条件の見直しに合意したあとも、対応は終わりません。

むしろ、そこからが本番です。

計画どおりに改善は進んでいるか。売上、粗利、固定費、利益、資金繰りは計画と比べてどうか。改善策はきちんと実行されているか。返済原資は予定どおり生まれているか。資金残高は危険水準に近づいていないか。

これらを継続的に確認していく必要があります。

経営改善計画策定支援の実務でも、計画の実行とモニタリングを行い、策定した計画が進捗し経営改善が図られているかどうかを、定められた期限ごとに金融機関等へ報告できるよう準備しておくことが想定されています。

モニタリングでは、次の3つを見ます。

モニタリング項目確認内容
財務面売上、粗利、営業利益、経常利益、借入残高、自己資本
事業面改善施策の実行状況、部門別採算、在庫、債権、価格改定
資金面資金繰り実績、資金繰り予定、返済、納税、手元資金

財務のモニタリングでは、売上高、限界利益額、当期利益などが計画目標に対してどの水準で推移しているかを確認します。事業面では、行動計画の実施状況や打ち手の有効性を見直し、資金面では、資金繰り実績表・予定表、支払一覧、入金一覧をもとに管理します。

金融機関は、計画の提出だけでなく、その後の実行状況を見ています。毎月、あるいは四半期ごとに数字を確認し、計画との差異を説明し、必要に応じて改善策を修正できる会社は、外部から見ても状況が把握しやすいものです。

専門家に相談すべき場面

返済負担が重い場合でも、すべてを専門家に任せる必要はありません。むしろ、経営者自身が会社の資金繰り、収益力、返済原資を理解していることが何より重要です。

そのうえで、次のような状況であれば、公認会計士・税理士などの専門家と一緒に整理した方がよい段階だと考えています。

状況専門家と整理すべき理由
資金繰り表を作っていないいつ、いくら不足するかが分からない
月次試算表が遅い、または粗い現状の損益・財務状態を説明できない
借入金一覧が整理されていない金融機関別の返済負担や保証・担保が見えない
複数金融機関がある全行対応、公平性、バンクミーティングの整理が必要
返済条件変更を検討している返済原資、改善計画、金融機関説明が必要
税金・社会保険料の支払いも苦しい優先支払、分納、資金繰りへの影響を整理する必要
不採算事業や固定費見直しが必要改善策を損益・資金に落とし込む必要
経営改善計画策定支援や活性化協議会を検討している制度選択、申請、計画、モニタリングの整理が必要
法的整理や債務減免の可能性がある弁護士等との連携が必要

ここで一点、注意があります。認定支援機関が金融機関調整を支援する場合でも、金融機関調整そのものはあくまで事業者が行う必要があり、支援にあたっては非弁行為とならないよう留意しなければなりません。事業者による調整が難しい場合には、必要に応じて弁護士と連携する、あるいは中小企業活性化協議会へ相談することが有効です。

専門家に相談する目的は、金融機関との交渉を丸投げすることではありません。経営者が自社の状況を正確に理解し、金融機関に説明できる数字と資料を整え、納得して判断できる状態をつくること。そこにあります。

返済負担への対応は、会社を守るだけでなく、次の選択肢を残すために行う

返済負担が重い局面では、どうしても「目の前の返済をどうするか」に意識が向きます。

しかし、金融機関対応の本質は、目先の返済を一時的に軽くすることだけではありません。

資金繰りを安定させる。事業改善の時間を確保する。返済原資を見える化する。金融機関に説明できる資料を整える。経営者が改善策を実行する。月次でモニタリングする。そして、将来の借入、承継、M&A、再生、撤退判断といった選択肢を残す。

これこそが目的です。

厳しい局面であっても、早く相談し、数字を整え、改善策を実行すれば、選択肢は残りやすくなります。反対に、資金不足が表面化してから場当たり的に相談すると、打てる手は限られてしまいます。

金融機関対応は、お願いの技術ではありません。数字と事実に基づいて、会社の現状と改善可能性を説明する力です。

返済負担が重いと感じた段階で、資金繰り表、借入金一覧、返済原資、改善計画を整えること。それが、会社を守るための第一歩になります。

ご相談について

借入返済が重くなっている。資金繰り表を作れていない。金融機関にどのタイミングで何を説明すべきか分からない。リスケジュールや経営改善計画を検討すべきか迷っている。そうした状況では、まず数字を整理し、返済負担の原因と今後の資金繰りを見える化することが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、月次試算表、資金繰り表、借入金一覧、返済予定、部門別採算、改善施策をもとに、金融機関に説明できる資料づくりと、経営改善の論点整理を支援しています。

返済条件の見直しを検討する前に、自社の返済原資、必要資金、金融機関別の対応方針、改善計画の実現可能性を整理しておきたい場合は、現在お手元にある資料をもとに、お気軽にご相談ください。

重要ポイントの振り返り

論点確認すべきこと経営判断への影響
返済負担の原因売上減少、粗利低下、固定費、設備投資、在庫・債権、税金一時的資金不足か、構造的問題かを判断する
資金繰り表3か月から12か月先の入出金と資金残高いつ、いくら不足するかを把握する
返済原資営業キャッシュフロー、税金、設備更新、運転資金返済可能額を現実的に見積もる
リスケジュール元金猶予、返済額軽減、返済期間延長改善のための時間を確保する
追加借入資金使途、必要額、返済原資既存返済の問題と混同しない
金融機関説明原因、現状、改善策、依頼内容、返済計画支援判断に必要な情報を示す
全行対応複数金融機関、残高割合、公平性、バンクミーティング金融機関間の不公平感を避ける
経営改善計画現状分析、改善策、損益・資金計画、アクションプラン返済条件見直し後の実行可能性を示す
モニタリング月次試算表、資金繰り、予実、改善施策の進捗計画提出後の信頼関係を維持する
専門家活用資料整理、返済原資、制度選択、金融機関説明経営者が納得して判断できる前提を整える
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