キャッシュフローから返済可能性を判断する|利益ではなく営業CF・投資CF・財務CFで見る資金調達判断

「黒字なのだから、返済できるはずだ」 「利益は出ているのに、なぜ借入返済がこれほど重く感じるのか」 「設備投資をしても、減価償却費があるから返せるのではないか」 「金融機関から返済原資を尋ねられても、利益計画しか説明できない」

資金調達を検討するとき、最も大切な問いの一つは「借りられるか」ではなく、「返せるか」です。そして、この返済可能性は、損益計算書の利益だけで判断できるものではありません。

たとえば、借入金の元金返済は、損益計算書上の費用にはなりません。それでも、実際には毎月、預金口座から確実に現金が出ていきます。減価償却費はその逆で、損益計算書では費用になりますが、その月に現金が出ていくわけではありません。代わりに、設備投資を行った取得時点で、大きな資金が一度に流出しています。

売上が増えても、売掛金や在庫が膨らめば、現金はまだ手元に残りません。利益が出ていても、税金、仕入の支払い、設備投資、借入返済が重なれば、資金繰りはたちまち苦しくなります。だからこそ、返済可能性は「利益」ではなく、キャッシュフローで判断する必要があるのです。

この記事では、上場会社向けの開示実務としてのキャッシュ・フロー計算書の細かな話ではなく、中小企業が資金調達の判断、金融機関への説明、設備投資の検討、返済計画の検証に使うための、実務的なキャッシュフローの見方を整理していきます。

目次

返済可能性は「利益」ではなく「資金の流れ」で見る

キャッシュフローとは、会社に入ってくる資金と、会社から出ていく資金の流れのことです。企業活動を通じて資金がどう出入りし、結果として手元資金が増えたのか減ったのかを見る考え方だと捉えてください。

返済可能性を判断するうえで重要になるのは、次のような問いです。

判断すべき問い利益だけで判断できない理由
本業から現金を生み出せているか売上計上と入金の時期がズレるため
借入返済に回せる資金が残っているか元金返済は費用ではないため
設備投資後も資金繰りが回るか投資支出は先に発生し、回収は後からになるため
売上増加に伴う運転資金を吸収できるか売掛金・在庫が増えると現金が不足するため
既存借入と新規借入の返済が重なっていないか損益計画だけでは返済スケジュールが見えないため

利益は、会社の収益力を示す重要な指標です。しかし借入返済は、「利益が出ているか」だけでなく、「その利益が現金として残っているか」「その現金を返済に回せる状態にあるか」まで踏み込んで判断しなければなりません。

資金を念頭に置かず、利益計画だけを作り込んでしまうと、利益は出ているのに資金回収が間に合わない、いわゆる黒字倒産のリスクが生まれます。掛取引では売上計上と入金との間に時間差があり、利益と資金繰りは決して一致しないからです。

キャッシュフローは3つに分けて見る

キャッシュフローは、一般に次の3つに分けて整理します。

区分内容資金調達判断での意味
営業キャッシュフロー本業の営業活動による資金の増減借入返済の基本的な原資
投資キャッシュフロー設備投資、資産売却、貸付金回収などによる資金の増減将来の収益獲得のためにどれだけ資金を使っているか
財務キャッシュフロー借入、返済、増資、配当などによる資金の増減外部資金の調達と返済の状況

キャッシュ・フロー計算書の特徴は、営業活動・投資活動・財務活動という3つの区分でキャッシュの増減を示す点にあります。営業CFは本業による資金の増減を、投資CFは設備などの取得・売却を、財務CFは借入や返済の動きを、それぞれ表します。

この3区分で眺めると、会社の資金繰りの状態がかなりはっきりと見えてきます。

たとえば、営業CFがプラスで、投資CFがマイナス、財務CFもマイナスであれば、本業で稼いだ資金を設備投資と借入返済に充てている姿が見えてきます。一方、営業CFがマイナスで財務CFがプラスであれば、本業から資金が流出している状態を借入で補っている可能性があります。この場合は、資金調達に動く前に、慎重に原因を分析しておくべき状態だといえます。

キャッシュフローは、単に現金が増えたか減ったかを確認するための資料ではありません。どの活動で資金を生み、どの活動で資金を使い、どの活動で外部資金に依存しているのか――その構造を読み解くための資料なのです。

営業キャッシュフローは、返済原資の出発点になる

返済可能性を見るとき、最初に確認したいのは営業キャッシュフローです。

営業キャッシュフローとは、本業の活動によって生み出された資金のことです。商品やサービスを販売し、代金を回収し、仕入や人件費、経費、税金を支払ったうえで、最終的にどれだけ資金が残ったかを示します。借入返済の基本的な原資は、まさにこの営業キャッシュフローです。

金融機関にとっても、返済原資の説明は融資判断の重要な論点です。実際の融資審査では、債務者の評価、案件の事情、資金使途、融資形態、返済原資、保全、他行との取引状況といった点が、一つひとつ確認されていきます。

営業CFを見るときは、単に黒字か赤字かだけでなく、次のような観点で確認します。

確認項目見るべき理由
営業CFが継続的にプラスか本業で資金を生んでいるかを確認するため
営業CFが利益より少なくないか売掛金・在庫・支払条件で資金が詰まっていないかを見るため
営業CFが返済額を上回っているか既存借入の返済に耐えられるかを見るため
営業CFが投資支出後も残るか設備投資や成長投資後の返済余力を見るため
営業CFが一時要因に依存していないか資産売却や支払先送りで一時的に改善していないかを見るため

営業CFが安定してプラスであれば、返済可能性は説明しやすくなります。反対に営業CFがマイナスであれば、たとえ損益計算書上は利益が出ていても、資金繰りの面では返済原資が不足している可能性があります。

簡易キャッシュフローは「経常利益+減価償却費−法人税等」から考える

中小企業の実務では、まずは簡易的に返済原資をつかむために、次の式を使うことがあります。

簡易キャッシュフロー = 経常利益 + 減価償却費 − 法人税等

これは、損益計算書から営業CFに近い感覚をつかむための、簡便な見方です。

減価償却費は、費用として利益を減らしますが、その期に現金支出を伴いません。そのため、資金繰りを見るときには利益に足し戻して考えます。一方、法人税等は、利益が出れば実際に資金が流出していくため、返済原資から差し引いて考えます。

金融機関の実務でも、営業CFを損益計算書の数値だけで簡易的に把握する場面では、この「経常利益+減価償却費−法人税等」という考え方が用いられます。特別損益を混ぜると本業の営業CFとはズレてしまうため、あえて経常利益を出発点に置くわけです。

ただし、この簡易キャッシュフローだけで返済可能性を判断してはいけません。ここには、売掛金、在庫、買掛金といった運転資本の増減が、まだ反映されていないからです。

運転資本が増えると、営業CFは減る

売上が増えている会社ほど、営業CFが利益より少なくなることがあります。その理由は、売上の増加に伴って売掛金や在庫も増えていくためです。

売掛金が増えるということは、売上は計上されているものの、まだ入金されていない金額が増えているということです。在庫が増えるということは、仕入や製造に使った資金が、まだ販売・回収されないまま在庫として滞留しているということです。逆に、買掛金が増えれば、仕入代金の支払いを後ろ倒しにできるため、一時的には資金負担が軽くなります。

この関係を簡単に式で表すと、次のようになります。

営業CF = 簡易キャッシュフロー − 売上債権増加 − 棚卸資産増加 + 仕入債務増加 ± その他の営業資産・負債の増減

経常運転資金が増加すると、その増加分は増加運転資金となり、営業キャッシュフローを押し下げます。売上債権や棚卸資産が増えれば資金が吸い取られ、仕入債務が増えればその一部が相殺される、という関係です。

たとえば、次のような会社を考えてみます。

項目金額
経常利益2,000万円
減価償却費800万円
法人税等600万円
簡易キャッシュフロー2,200万円
売掛金の増加▲700万円
在庫の増加▲500万円
買掛金の増加+300万円
営業キャッシュフロー1,300万円

この会社は、損益上は2,000万円の経常利益を出しています。簡易キャッシュフローも2,200万円あります。ところが、売掛金と在庫の増加によって資金が吸収され、実際の営業CFは1,300万円まで減っています。

もし年間の借入元金返済が1,500万円だとすれば、利益は出ているのに返済資金が足りない、という状態になってしまいます。

この現象は、売上が伸びている局面でよく起こります。「売上が伸びているから返せる」と単純に考えるのではなく、「売上の増加に伴って運転資金がどれだけ増えるのか」まで織り込んでおく必要があるのです。

投資キャッシュフローは、将来の返済原資を生むための支出として見る

投資CFは、設備、車両、建物、内装、ソフトウェア、システム、研究開発資産、投資有価証券などに資金を使うとマイナスになります。反対に、固定資産や有価証券の売却、貸付金の回収などがあればプラスになります。

投資活動には、設備や有価証券の取得・売却、貸付金の貸出・回収などが含まれます。取得や貸出はキャッシュアウト、売却や回収はキャッシュインとして整理される、と考えるとわかりやすいでしょう。

設備投資や成長投資を行う会社では、投資CFがマイナスになること自体はまったく問題ではありません。本当に問われるのは、その投資が将来の営業CFを増やす見込みとつながっているかどうかです。

投資支出の種類返済可能性を見るポイント
更新投資現状維持に必要な投資か、返済原資を圧迫しないか
増産投資売上増加と増加運転資金を織り込んでいるか
合理化投資コスト削減効果が営業CFに反映されるか
DX投資保守費・運用費を含めた固定費増加を見ているか
新規事業投資立ち上がり期間の赤字と追加資金を見込んでいるか
補助金活用投資補助金入金までの立替資金を確保しているか

投資CFは、将来の営業CFを増やすために、先に出ていく資金です。ですから投資判断では、「設備を買えるか」ではなく、「投資後に営業CFが増え、その分を返済に回せるか」を確認することが大切になります。

財務キャッシュフローは、借入と返済の動きを示す

財務CFは、資金調達と返済の動きを示します。借入をすればプラスに、返済をすればマイナスになります。増資をすればプラス、配当を支払えばマイナスです。

財務キャッシュフローには、金融機関からの借入実行や返済、社債の発行・償還、株式の発行、配当金の支払いといった資金収支が表れます。借入や増資はプラス、返済や配当はマイナスの要因になります。

ここで押さえておきたいのは、借入によって一時的に現預金が増えても、それで返済可能性が高まったわけではない、という点です。

借入は、将来の返済義務を伴う資金流入です。財務CFのプラスは「資金が入った」ことを示しているにすぎず、「返済原資が増えた」ことを意味するわけではありません。

返済原資は、基本的には営業CFから生まれます。投資によって営業CFが増える見込みがあれば、その将来CFも返済原資になり得ます。しかし、単に借入で資金不足を埋めているだけであれば、将来の返済負担はむしろ重くなっていきます。

返済可能性を見る基本式

返済可能性を実務的に見るときは、次の順番で整理していくと考えやすくなります。

段階計算・確認内容意味
1経常利益+減価償却費−法人税等簡易的な返済原資
21に売掛金・在庫・買掛金などの増減を反映営業CF
3営業CFから維持投資・必要投資を差し引く返済前フリーキャッシュフロー
4既存借入の年間元金返済額と比較現在の返済負担に耐えられるか
5新規借入後の返済額を追加して比較借入後も資金繰りが回るか
6売上未達・原価上昇・入金遅延を織り込む計画が崩れた場合の耐久力を見る

簡単にいえば、次の式になります。

返済余力 = 営業CF − 維持投資 − 必要な自己資金支出

そして、

返済余力 > 年間元金返済額

であれば、返済可能性は説明しやすくなります。反対に、

返済余力 < 年間元金返済額

であれば、既存借入の返済条件、新規借入の金額や期間、設備投資の時期、運転資本の改善、借換の必要性などを、あらためて見直すべき局面だといえます。

経営改善や金融機関との調整の場面では、自社の努力で生み出せる借入返済前のフリーキャッシュフローをまず明確にし、その範囲に収まるよう返済額の軽減を金融機関に要請していく、という進め方もあります。

「減価償却費があるから返せる」と単純に考えない

返済可能性の説明で、よく引き合いに出されるのが減価償却費です。

確かに、減価償却費は現金支出を伴わない費用です。そのため、利益に減価償却費を足し戻して返済原資を考えることがあります。

しかし、「減価償却費があるから返済できる」と単純に考えるのは危険です。理由は3つあります。

1. 減価償却費は、過去の設備投資の費用配分である

減価償却費は、過去に取得した設備の取得価額を、使用期間にわたって費用化していく会計処理です。今期に現金支出がないのは確かですが、設備を取得した時点では、すでに資金が出ています。

つまり、減価償却費は「現金が湧いてくる項目」ではありません。むしろ、過去の投資を、売上や利益を通じて少しずつ回収している過程と捉えるべきものです。

2. 設備更新や修繕が必要なら、将来また資金が出る

設備を使い続ける会社では、いずれ更新投資や修繕投資が必要になります。減価償却費をすべて借入返済に回してしまうと、将来の設備更新資金が不足してしまうことがあります。

とりわけ製造業、建設業、運送業、医業、飲食業など、設備負担の重い業種では注意が必要です。

3. 運転資金の増加で、減価償却分が吸収されることがある

減価償却費を足し戻して簡易CFが出ていても、売掛金や在庫が増えれば、その分だけ資金は吸収されてしまいます。

ですから、減価償却費だけを見て返済額を決めるのではなく、営業CF、投資CF、既存借入返済をセットで見ていく必要があります。

借入返済は「元金」と「利息」を分けて見る

借入返済を見るときは、元金返済と利息支払いを分けて考えます。

区分損益計算書での扱い資金繰りでの扱い
利息支払利息として費用になる現金支出になる
元金返済費用にならない現金支出になる

利息は損益計算書に反映されます。しかし、元金返済は費用ではありません。そのため、損益計算書では黒字でも、元金返済が大きければ資金繰りは悪化します。

たとえば、次のような会社を考えてみます。

項目金額
経常利益1,200万円
減価償却費300万円
法人税等300万円
簡易キャッシュフロー1,200万円
年間元金返済額1,800万円
差引▲600万円

この会社は黒字です。それでも、返済原資1,200万円に対して元金返済が1,800万円あるため、年間600万円の資金不足が生じます。

この不足を新規借入で埋め続けると、借入残高は減らないまま、返済負担だけが将来へ先送りされていきます。

債務償還年数は「何年で返せるか」を見る指標

返済可能性を見る代表的な指標に、債務償還年数があります。一般的には、次のように考えます。

債務償還年数 = 要償還債務 ÷ 返済原資

ここで大切になるのは、分子と分母をどう捉えるかです。

分子には、単純に借入金総額を使う場合もありますが、実務上は、現預金、正常運転資金、処分予定資産などを控除して要償還債務を考えることがあります。正常運転資金は、仕入の支払いと売上の回収との時間差を埋めるための資金であり、必ずしも利益で返済する性質の借入とは限らないためです。

つまり、すべての借入金を、同じ性質の負債として一律に見てはいけないということです。

借入の性質返済原資の考え方
正常運転資金売掛金回収・在庫販売・仕入債務との循環で見る
増加運転資金売上増加による資金需要と回収条件で見る
設備資金設備投資による営業CF増加・投資回収で見る
赤字補填資金収益改善がなければ返済原資が弱い
借換資金毎月返済額と返済期間の再設計で見る
成長投資資金将来CF、追加資金、撤退基準まで見る

債務償還年数は便利な指標ですが、絶対的な正解ではありません。会社の業種、投資の段階、運転資本の構造、借入の内訳、金融機関との取引状況によって、その見方は変わってきます。

重要なのは、数字を出すこと自体ではなく、借入金を何年で、どのキャッシュフローから返済するのかを、自分の言葉で説明できることです。

設備投資の返済可能性は、投資前後のキャッシュフローで見る

設備投資を行う場合、返済可能性の判断は、より慎重に進める必要があります。

設備投資では、投資の時点で大きな資金が出ていきます。そして、その後の売上増加、粗利改善、省人化、外注費削減、不良率の低下、生産性の向上などを通じて、少しずつ営業CFを増やしていくことになります。

したがって、設備投資の借入返済は、投資によって増える営業CFと整合している必要があります。

設備投資前に確認すべき項目確認内容
投資目的更新、増産、合理化、省力化、新規事業のどれか
投資額本体価格だけでなく付随費用も含めているか
自己資金手元資金を使いすぎないか
借入期間投資回収期間と合っているか
据置期間稼働開始・収益化までの時間を織り込んでいるか
減価償却利益・税金・返済原資への影響を把握しているか
維持費修繕費、保守費、保険料、人件費を含めているか
増加運転資金売上増加に伴う売掛金・在庫増加を見込んでいるか
売上未達リスク投資効果が遅れた場合に返済できるか

設備投資では、「借入期間を長くできるか」だけでは不十分です。投資回収までの時間と、返済スケジュールがきちんと合っているかどうかが重要になります。

たとえば、設備投資の効果が出るまでに2年かかるにもかかわらず、初年度から重い返済が始まれば、資金繰りは苦しくなります。こうした場合には、据置期間や返済期間、自己資金の投入額、補助金入金までのつなぎ資金などを、一体として設計していく必要があります。

成長投資では、赤字期間と追加資金を織り込む

新規事業、DX、人材採用、研究開発、販路拡大といった成長投資は、通常の設備投資よりも不確実性が高くなります。

投資したからといって、すぐに営業CFが増えるとは限りません。むしろ立ち上がりの時期には、広告費、人件費、外注費、システム費、教育費、追加開発費などが先行し、営業CFが一時的に悪化することもあります。

このような投資では、次の3つを分けて考えます。

区分内容
初期投資システム、設備、開発、採用、広告などの初期費用
立ち上がり資金売上が十分に立つまでの赤字・固定費負担
追加資金計画未達、仕様変更、人員追加、販促強化などへの対応資金

成長投資の返済可能性は、「投資後の理想的な利益」ではなく、「投資が計画より遅れた場合にも資金繰りが持ちこたえられるか」で判断します。

金融機関へ説明する場合も、楽観的なシナリオだけでは不十分です。売上が計画比80%にとどまった場合。入金が1か月遅れた場合。原価率が想定より高く出た場合。追加投資が必要になった場合。そして、もし撤退するとなったとき、どの程度の損失で止められるのか。

ここまで整理して初めて、成長投資のための借入が「攻めの財務設計」として説明しやすくなります。

キャッシュフローの型で会社の状態を読む

キャッシュフローは、3区分の組み合わせから、会社の状態を読み取ることができます。

営業CF投資CF財務CF状態の見方
プラスマイナスマイナス本業で稼ぎ、投資と返済を行っている状態
プラスマイナスプラス成長投資を借入で補っている状態
プラス小さいマイナス投資を抑え、返済を進めている状態
マイナス小さいプラス本業の資金不足を借入で補っている状態
マイナスプラスプラス本業不振を資産売却と借入で補っている可能性
プラスマイナス大マイナス大投資と返済が重く、手元資金が減りやすい状態

最も注意したいのは、営業CFがマイナスで、財務CFがプラスになっている状態です。これは、本業から資金が出ていき、それを借入で埋めている可能性を示しています。

この状態が一時的なものであれば、資金調達に合理性がある場合もあります。しかし、構造的に営業CFがマイナスであれば、追加借入に動く前に、まず利益構造、売掛金の回収、在庫、固定費、価格設定、支払条件を見直す必要があります。

返済可能性を判断する実務例

次のような会社を考えてみます。

項目金額
経常利益3,000万円
減価償却費1,000万円
法人税等900万円
簡易キャッシュフロー3,100万円
売掛金増加▲800万円
在庫増加▲700万円
買掛金増加+300万円
営業CF1,900万円
維持投資▲600万円
返済前FCF1,300万円
既存借入の年間元金返済▲1,200万円
返済後余力100万円

この会社は、現状の返済であれば、何とか回っています。ただし、返済後の余力は100万円しかありません。

ここで新たに設備投資を行い、年間返済額が600万円増えると、返済後余力は▲500万円になります。つまり、現状の利益だけを見れば投資できそうに見えても、キャッシュフローで見ると資金繰りが崩れてしまう可能性があるのです。

この場合、検討すべきことは次のように整理できます。

検討論点判断内容
投資額の見直し投資規模を段階化できないか
借入期間の見直し投資回収期間に合わせて返済期間を設計できないか
据置期間収益化までの期間に元金返済を抑えられないか
運転資本改善売掛金回収、在庫削減、支払条件を改善できないか
既存借入の見直し借換で返済負担を平準化できないか
自己資金手元資金をどこまで使うべきか
投資効果営業CFがどの時期からどれだけ増えるか
追加資金計画未達時の資金余力はあるか

このように、返済可能性の判断は、単なる利益計画ではなく、資金繰り、貸借対照表、投資計画、借入返済予定をつなげて行う必要があります。

借換・一本化もキャッシュフローで判断する

既存借入の返済が重い場合、借換や一本化を検討することがあります。

借換によって毎月の返済額が下がれば、短期的な資金繰りは改善します。ただし、返済期間が延びれば、将来の負担はそのまま残ります。借換は返済可能性を改善する手段にはなり得ますが、収益改善そのものを代替するものではない、という点は押さえておきたいところです。

借換によって毎月の返済額を減らせれば、キャッシュフローをマイナスからプラスへ転じさせられる場合もあります。とはいえその際も、毎月の返済額を利益や減価償却費と突き合わせ、無理のない返済計画を立てることが欠かせません。

借換を検討するときは、次の順番で確認していきます。

確認項目内容
現在の年間返済額既存借入の元金返済総額
返済原資営業CF、返済前FCF
不足額返済原資と年間返済額の差額
借換後返済額返済期間延長後の返済額
総返済期間将来負担が長期化しすぎないか
金融機関別影響メイン行・サブ行との関係
根本原因返済負担だけか、収益不足か、運転資本過大か
改善計画借換後に何を改善するか

借換によって資金繰りが一時的に改善しても、本業の営業CFが増えなければ、数年後に再び資金不足に陥る可能性があります。

金融機関に説明すべき返済可能性の資料

金融機関へ返済可能性を説明する場合は、次の資料をつなげて説明することが大切です。

資料説明すべき内容
月次試算表足元の売上、利益、粗利率、固定費
貸借対照表売掛金、在庫、買掛金、借入金、自己資本
資金繰り表入金、支払、返済、投資支出の時期
借入一覧表金融機関別残高、返済額、金利、保証、担保
キャッシュフロー予測営業CF、投資CF、財務CFの見通し
投資計画投資額、目的、回収期間、効果、リスク
返済計画既存借入と新規借入を含めた返済可能性
感応度分析売上未達、原価上昇、入金遅延時の資金繰り

月次決算は、経営者が数字から会社の現状を把握し、月次予算と対比しながら次の一手を考えるための仕組みです。融資の申込時には、過去の決算書に加えて直近の月次決算書が求められることもあり、精度の高い月次資料は、金融機関への説明にも直接つながっていきます。

金融機関が知りたいのは、「返せます」という言葉ではありません。どの事業から、どの時期に、どの程度の営業CFが生まれ、既存返済と新規返済を合わせても資金繰りが回り、もし計画が未達となったときにはどの対策を取るのか――その筋道です。

返済可能性に不安がある会社のサイン

次のような状態が見られる場合は、追加借入に動く前に、いったんキャッシュフローを整理しておくことをお勧めします。

サイン注意すべき理由
黒字なのに現預金が増えない売掛金・在庫・返済で資金が吸収されている可能性
毎月の元金返済が利益+減価償却費を上回る返済原資が不足している可能性
売上増加時に資金繰りが苦しい増加運転資金が発生している可能性
設備投資後に手元資金が薄くなった投資回収と返済期間が合っていない可能性
短期借入で設備投資を賄っている短期資金と長期投資のミスマッチ
借換を繰り返している収益改善が追いついていない可能性
税金や社会保険料の支払いが遅れがち資金繰り悪化が進んでいる可能性
金融機関への説明が利益計画だけ返済原資の説明が不足している可能性
補助金入金までの資金を見込んでいない後払いによる立替資金不足の可能性
計画が売上右肩上がり前提になっている未達時の資金繰り悪化を見落としている可能性

返済可能性に不安があるとき、すぐに「追加で借りる」ことだけを考えるのは危険です。まずは、営業CFが不足しているのか、投資CFが重いのか、それとも財務CFの返済負担が重いのかを切り分ける必要があります。

安易な売上計画や、金融機関を意識した逆算の計画では、いざ計画が未達となったときに資金繰りが崩れてしまうことがあります。返済可能性は、現実的な売上・利益・キャッシュフローに基づいて検証してこそ、意味を持ちます。

キャッシュフロー予測は、借入前に作る

資金調達のあとに資金繰り表を作るのでは、間に合わないことがあります。本来は、借入の前に、次の順番でキャッシュフロー予測を作っておくべきです。

1. 借入をしない場合の資金繰りを見る

まず、現状の営業CF、投資CF、財務CFを確認します。借入欄を空欄にしたうえで、いつ、いくら不足するのかを把握します。

2. 不足原因を分類する

不足の原因が、売上減少なのか、売掛金の増加なのか、在庫の増加なのか、設備投資なのか、それとも借入返済なのかを切り分けます。

3. 必要資金額を計算する

不足額に加えて、最低限残しておくべき手元資金、納税、賞与、予備費を含めたうえで、必要資金を算定します。

4. 借入期間と返済額を設計する

資金使途に応じて、短期借入か長期借入か、据置期間が必要か、毎月の返済額が営業CFの範囲に収まっているかを確認します。

5. 借入後のキャッシュフローを見る

新規借入後の返済を反映し、既存借入と合わせても資金繰りが回るかどうかを確認します。

6. 計画未達時のシナリオを見る

売上が計画比80%、90%にとどまった場合。入金が遅れた場合。原価が上がった場合。追加投資が必要になった場合。こうしたシナリオを置いて、資金繰りの耐久力を確かめます。

日本公認会計士協会は、中小企業の経営者が自社の健全な経営を進めていけるよう、キャッシュ・フロー計算書作成シートや経営計画書作成シートを公表しています。

出典:日本公認会計士協会|中小企業のためのキャッシュ・フロー計算書作成シート及び経営計画書作成シートの改訂について

まとめ:返済可能性は、営業CF・投資CF・財務CFをつなげて判断する

返済可能性は、利益だけでは判断できません。

利益は、もちろん重要です。しかし、その利益が現金として回収されるまでには、時間差があります。売掛金や在庫が増えれば、資金は営業資産に吸収されます。設備投資を行えば、資金は固定資産に姿を変えます。借入返済は費用ではありませんが、現金は確実に出ていきます。

ですから、資金調達を考えるときは、次の順番で整理しておく必要があります。営業CFで、本業が資金を生んでいるか。投資CFで、どの程度の資金を将来のために使うのか。財務CFで、既存借入と新規借入の返済がどう動くのか。返済前FCFが、年間の元金返済額を上回るのか。投資効果が遅れても、手元資金が持ちこたえられるのか。そして、金融機関に資金使途と返済原資を、数字で説明できるのか。

資金調達は、資金を確保するためだけの手続きではありません。会社が将来生み出すキャッシュフローを見極め、その範囲で無理なく投資し、返済し、成長へつなげていくための財務設計です。

キャッシュフローから返済可能性を整理したい方へ

次のような状況にある場合は、借入の申込みに進む前に、いったんキャッシュフローを整理しておくことをお勧めします。

利益は出ているのに、借入返済後に資金が残らない。設備投資やDX投資を検討しているが、返済期間をどう設定すべきか分からない。売上の増加に伴って運転資金が不足している。既存借入の返済負担が重く、借換や追加借入を検討している。金融機関に返済原資を説明する資料を整えたい。資金繰り表、月次試算表、借入一覧、投資計画がバラバラになっている。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、資金調達を単なる融資申込としてではなく、営業キャッシュフロー、投資計画、既存借入、返済原資、財務の安全性、金融機関への説明可能性を一体で整理する財務設計として支援しています。

返済可能性を感覚ではなく数字で確認したい方は、お問い合わせページより、直近の決算書、月次試算表、資金繰り表、借入一覧、投資計画をご準備のうえご相談ください。

この記事の振り返り

論点重要ポイント
返済可能性の基本利益ではなく、返済に回せるキャッシュフローで判断する
営業CF本業から生まれる資金であり、借入返済の基本原資になる
投資CF設備投資や資産売却など、将来収益に関わる資金の動きを示す
財務CF借入、返済、増資、配当など、資金調達と返済の動きを示す
簡易CF経常利益+減価償却費−法人税等で概算する
運転資本売掛金・在庫が増えると営業CFは減り、買掛金が増えると一部相殺される
減価償却費現金支出を伴わないため足し戻すが、設備更新資金を無視してはいけない
元金返済損益計算書の費用ではないが、実際には現金が出ていく
返済余力営業CFから維持投資等を差し引いた資金と年間返済額を比較する
債務償還年数要償還債務を返済原資で割り、何年で返せるかを見る
設備投資判断投資回収期間、返済期間、据置期間、増加運転資金を合わせて見る
成長投資判断初期投資だけでなく、赤字期間、追加資金、撤退基準を織り込む
金融機関説明月次試算表、資金繰り表、借入一覧、投資計画、CF予測をつなげて説明する
相談すべき局面利益はあるのに資金が残らない、返済負担が重い、投資前に返済可能性を確認したい場合
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