リースを使うべきか購入すべきか|設備投資の資金繰り・会計・税務・所有リスクの判断軸

設備投資を検討する際、「リースにするか、購入するか」という問いは、多くの経営者の方が一度は突き当たる悩みです。

リースであれば初期資金を抑えられる。購入であれば自社の資産になる。リース料はそのまま経費になる。借入はこれ以上増やしたくないからリースにしたい。あるいは、税制優遇を使いたいから購入したい――。

実務の現場では、こうした声をよく耳にします。そのどれもが、一面では確かに正しい考え方です。ただ、いずれか一つだけを根拠に決めてしまうと、設備投資後の資金繰りや財務体質を見誤ってしまうことがあります。

リースと購入の違いは、単なる支払方法の違いではありません。

自社で資産を所有するのか、それとも一定期間だけ使用する権利を確保するのか。初期資金を抑える代わりに、将来の固定的な支払を受け入れるのか。総支払額、会計処理、税務、金融機関からの見え方、そして設備更新の柔軟性をどう捉えるのか。

突き詰めれば、これは財務判断そのものの問題です。

設備投資は、「買えるか」「借りられるか」で決めるものではありません。投資した設備を使って、資金繰りを崩さずに回収し、次の成長へつなげられるか。そこを軸に判断していく必要があります。

目次

最初に考えるべきは「リースか購入か」ではない

リースと購入を比較する前に、まず確認していただきたいことがあります。それは、その設備が、そもそも自社で所有すべき資産なのかという点です。

設備には、会社の競争力の中核を担うものもあれば、一定期間だけ使えればよいものもあります。長く使い続けることで価値が出てくる設備がある一方で、技術革新や事業環境の変化によって、短期間で陳腐化してしまう設備もあります。

自社の事業にとって、その設備がどのような位置づけにあるのか。そこを整理しないまま、リース料や金利だけを比べても、正しい判断にはたどり着けません。

リースと購入の検討は、まず次の問いから始めるのが順序だと考えています。

  • その設備は、自社の競争力の中核になるものか
  • 長期にわたって使い続ける見込みがあるか
  • 技術革新や仕様変更により、短期間で陳腐化する可能性があるか
  • 将来、売却価値や処分価値を自社で享受したい設備か
  • メンテナンスや管理を自社で担えるか
  • 投資後の資金繰りに、どの程度の余裕があるか
  • 借入余力を温存したい理由が明確か
  • リース料を継続して支払えるだけの営業キャッシュフローがあるか

つまり、リースか購入かという論点は、設備の性質、投資目的、資金繰り、財務体質を整理したうえで、その先に検討すべきものなのです。

リースは「借入ではないから安全」とは限らない

リースを選ぶ理由として多いのが、「借入をこれ以上増やしたくない」というものです。

確かにリースを利用すれば、設備の購入資金はリース会社が負担し、利用者は月々のリース料を払って設備を使うことになります。手元資金を温存できる分、それを運転資金や別の投資に回せるというメリットは、見逃せません。

ただ、ここで気をつけたいのは、リースは「支払義務のない資金調達」ではない、ということです。

リース契約を結べば、一定期間にわたってリース料を支払い続ける義務が生じます。中途解約ができない契約や、解約時に残りのリース料相当額の支払を求められる契約も、決して珍しくありません。法人税法上のリース取引についても、中途解約が禁止されているか、あるいは中途解約時に未経過期間に対応するリース料のおおむね全部を支払うものであることが、要件の一つとされています。

出典:国税庁|No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)

ですから、リースは借入金という表示科目には現れなくても、会社の将来キャッシュフローを確実に拘束する固定的な支払なのです。

金融機関の目線から見ても、リース料は返済原資を圧迫する支出にほかなりません。銀行融資の審査では、債務者評価、融資案件の事情、資金使途、融資形態、返済原資、保全面、他行の状況、資金調達余力などが、総合的に確認されます。毎月のリース料が固定化していれば、それは借入返済と同じように、資金繰りの余力へ影響していきます。

リースは「借入ではないから安全」なのではなく、借入とは形の違う、固定的な資金負担として捉えておく必要があります。

購入の特徴:所有できるが、初期資金と管理負担は重い

購入には、現金購入と、借入による購入の二通りがあります。

現金購入であれば、借入もリース料も発生しません。ただし、設備の取得時にまとまった資金が一度に流出します。手元資金を大きく減らしてしまうと、仕入、人件費、納税、賞与、増加運転資金、そして想定外の支出に対応しづらくなります。

借入による購入であれば、初期の資金流出は抑えられますが、当然ながら借入金として返済義務が生じます。設備資金の借入期間と返済原資が、投資の回収期間と噛み合っていなければ、その返済負担がそのまま資金繰りを圧迫してしまいます。

一方で、購入には次のようなメリットがあります。

  • 自社の資産として長期にわたり使用できる
  • 法定耐用年数を超えて使い続ければ、支払負担が軽くなった状態で利用できる
  • 売却価値や処分価値を自社で享受できる
  • 自社仕様への改造やカスタマイズがしやすい
  • 設備税制や補助金との相性を検討しやすい
  • 担保価値や固定資産管理の対象として明確になりやすい

ただし、所有には責任も伴います。

購入した設備は、固定資産管理、減価償却、修繕、除却、売却、償却資産申告などを、自社で管理していかなければなりません。固定資産は、取得後も台帳管理、実在性の確認、移動・廃棄の管理、減価償却の処理が必要であり、リース資産も含めて固定資産管理の体制を整えておくことが重要になります。

購入は、「支払えば終わり」ではありません。取得した後も、設備を管理し、使い切り、必要に応じて更新・除却していく責任が残り続けます。

リースの特徴:初期資金は抑えられるが、総支払額と固定費化に注意

リースの大きなメリットは、設備導入時の初期資金を抑えやすいことにあります。

設備を購入するなら、自己資金か借入金を用意しなければなりません。これに対してリースでは、リース会社が設備を購入し、事業者は月々のリース料を払って使用します。その分、手元資金を温存でき、運転資金や他の投資に回しやすくなります。

また設備によっては、リース会社が保険、税金、メンテナンス、車両管理などを組み合わせた契約を用意していることもあります。車両や機器を数多く保有する会社であれば、所有に伴う管理事務を軽減できる場合があります。

一方で、リースには次のような注意点があります。

  • リース料の総額が、購入より割高になることがある
  • 原則として中途解約が難しい契約がある
  • リース料の支払が固定費化する
  • リース期間の終了後、資産が自社に残らないことがある
  • 残価保証や返還条件に注意が必要になる
  • 改造や用途変更に制限がある場合がある
  • 税制優遇や補助金との関係を個別に確認する必要がある
  • リース契約が複数積み上がると、資金繰りの柔軟性が低下する

リース料には、設備代金そのものだけでなく、リース会社の調達コスト、事務コスト、利益、保険、メンテナンス費用などが含まれることがあります。そのため、借入による購入と比べると、総支払額が大きくなる場合があるのです。資金温存や事務省力化というメリットがある反面、リース料の負担が割高になり、リース期間中の支払が固定化し、原則として中途解約ができないという側面も持ち合わせています。

リースは「安く済ませる方法」ではありません。初期資金を抑え、使用期間にわたって費用を平準化していく方法として理解しておくのが適切だと考えます。

「リース料は経費になるから有利」という判断は危うい

リースを選ぶときに、税務上の扱いだけを理由にしてしまうのは、危うい判断です。

法人税法上、一定のリース取引については、リース資産の引渡し時に売買があったものとして取り扱われます。平成20年4月1日以後に締結する一定の資産の賃貸借が、法人税法上のリース取引に該当する場合には、リース譲渡の時にリース資産の売買があったものとされます。

出典:国税庁|No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)

所有権移転外リース取引によって賃借人が取得したものとされるリース資産については、法人税法上、償却方法がリース期間定額法とされます。さらに、圧縮記帳、特別償却、少額減価償却資産の損金算入、一括償却資産の損金算入などは適用されません。

出典:国税庁|No.5704 所有権移転外リース取引

一方で、中小企業投資促進税制では、所有権移転外リース取引によって賃借人が取得したものとされる資産について、特別償却は適用できないものの、税額控除は適用できるとされています。

出典:国税庁|No.5433 中小企業投資促進税制

中小企業経営強化税制についても同様で、所有権移転外リース取引によって取得した特定経営力向上設備等については、特別償却こそ使えないものの、税額控除は適用できるとされています。

出典:国税庁|No.5434 中小企業経営強化税制

このように、リースの税務は決して単純ではありません。

「リース料は全額が経費になるから有利」「購入すれば減価償却だから不利」「税額控除を使うなら購入しかない」――こうした一律の判断は、成り立たないのです。

実際には、契約の内容、会計処理、法人税法上のリース取引に該当するかどうか、所有権移転外リース取引かどうか、設備税制の対象資産かどうか、特別償却と税額控除のどちらを使うか、補助金や圧縮記帳との関係といった点を、一つひとつ確認していく必要があります。

税務上のメリットはもちろん重要です。しかし、それを投資判断の中心に据えるべきではありません。税務効果は、あくまで投資回収と資金繰りを補完する要素だと位置づけています。

会計上も「リースはオフバランス」とは言い切れない

かつては、リースを利用すれば貸借対照表に資産や負債を計上せず、リース料だけを費用処理できる、という理解が広く行き渡っていました。

しかし、今はその単純な理解だけでは足りなくなっています。

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」では、リースは「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」と定義されています。そして借手は、リース開始日にリース負債を計上し、そのリース負債に一定の調整を加えた額で使用権資産を計上することとされています。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

この基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も認められています。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

新しいリース会計基準では、日本基準を国際的に整合性のあるものとするため、借手のすべてのリースについて資産および負債を計上することとし、借手のリースについては、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分を廃止するという考え方が示されています。ただし、短期リースおよび少額リースについては、簡便的な取扱いも認められています。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第35号『固定資産の減損に係る会計基準』の一部改正

なお、非上場の中小企業では、中小企業の実態に即して作られた「中小企業の会計に関する基本要領」を用いる場合もあります。この中小会計要領は、経理人員が少ないこと、会計情報の開示先が金融機関・取引先・税務当局等に限られること、主に法人税法を意識した会計処理が行われていることなど、中小企業の実情を踏まえて作られた会計ルールと位置づけられています。

出典:中小企業庁|中小会計要領について

したがって、会計処理は、会社が適用する会計ルール、規模、監査の有無、金融機関との関係によって、それぞれ確認が必要になります。

ただ、経営判断という観点では、たとえ会計上の表示が簡便であったとしても、リース料の支払義務が将来の資金繰りを拘束するという事実に変わりはありません。

資金繰りで比べる:見るべきは「初期資金」ではなく「総キャッシュ」

リースと購入を比較するとき、初期資金だけを見て決めてはいけません。

購入の場合は、最初に資金が出ていきます。リースの場合は、その負担が毎月の支払に分散されます。しかし設備投資の財務判断では、次のような項目を、総キャッシュとして並べて比較する必要があります。

  • 初期支出
  • 毎月の支払額
  • 支払総額
  • 借入返済額
  • 支払利息
  • リース料総額
  • メンテナンス費用
  • 保険料
  • 固定資産税・償却資産税
  • 減価償却費
  • 税額控除・特別償却の影響
  • 売却価値・処分価値
  • 更新時の追加支出
  • 契約終了時の返還・買い取り・再リース条件

ここで大切なのは、利益計画だけでなく、資金計画をきちんと作ることです。掛取引では、売上の計上と入金との間に時間差が生じます。利益が出ていても、資金の回収が間に合わないという事態は十分に起こり得ます。だからこそ、利益計画と資金計画は分けて考える必要があるのです。

リースを選べば初期資金は抑えられますが、その分、毎月の固定支払が増えます。購入を選べば初期資金や借入返済は重くなりますが、設備を長く使い続けられれば、支払が終わった後のキャッシュ創出力が高まることもあります。

つまり、比較すべきは「今いくら払うか」だけではありません。設備の使用期間全体を通じて、どちらが資金繰りを安定させ、投資回収に合っているか――そこを見極めることが肝心です。

リースが向いている設備

リースが適している可能性があるのは、次のような設備です。

技術革新が早く、陳腐化しやすい設備

IT機器、システム関連機器、通信機器、検査機器など、技術の変化が早い設備では、長期保有よりも、一定期間ごとに更新できる柔軟性のほうが重要になることがあります。

購入して長く使うつもりでいても、事業環境や技術仕様が変われば、想定より早く入替えが必要になる可能性があります。そうなったとき、所有していることのメリットよりも、更新しやすさのほうが効いてくるのです。

メンテナンスや管理事務が重い設備

車両、複合機、特定の機械設備などは、保険、点検、修理、税金、管理台帳、入替え対応といった事務負担が発生します。

メンテナンス込みのリース契約であれば、所有に伴うこうした管理負担を軽減できる場合があります。車両を多数保有する会社では、リースバックやメンテナンスリースを活用することで、資金化、管理事務の軽減、コスト管理のしやすさといった効果を期待できることもあります。

手元資金を温存する必要がある場合

成長局面では、設備投資だけでなく、仕入、在庫、人件費、広告費、採用費、立ち上がり費用など、さまざまな資金需要が同時に押し寄せます。

ここで設備を現金で購入し、手元資金を減らしてしまうと、運転資金が不足することがあります。借入枠を設備投資で使い切ってしまえば、増加運転資金や予備資金を確保しにくくなることもあります。

こうした場面では、リースで初期資金を抑えることに意味が出てきます。ただしその場合でも、リース料を払い続けられるだけの営業キャッシュフローがあるかどうかは、必ず確認しておく必要があります。

使用期間が明確な設備

特定のプロジェクト、期間限定の事業、短期的な増産対応など、使用期間がある程度はっきりしている設備では、購入よりもリースやレンタルのほうが合理的なこともあります。

ただし、リースは一般にレンタルよりも契約期間が長く、利用者が希望する資産をリース会社が購入して貸与する、という性格を持っています。これに対してレンタルは、レンタル会社がすでに保有している資産を貸す仕組みであり、契約の性質そのものが異なります。

一時的に使いたいだけであれば、リースではなくレンタルのほうが適している、というケースもあります。

購入が向いている設備

購入が適している可能性があるのは、次のような設備です。

長期にわたり使い続ける中核設備

会社の競争力の源泉となる設備、主力製品の生産設備、長期的に稼働する基幹設備、独自仕様の設備などは、購入のほうが適している場合があります。

長く使える設備であれば、借入返済や減価償却が進んだ後も使い続けることで、キャッシュ創出力が高まっていきます。

自社仕様への改造や管理が重要な設備

リースでは、契約上、改造、移設、用途変更、第三者使用、処分などに制限がかかる場合があります。

自社独自の仕様にカスタマイズする設備や、生産工程に深く組み込まれる設備では、所有して自由に管理できることが重要になることがあります。

売却価値や処分価値を自社で取り込みたい設備

中古市場があり、一定の残存価値が見込める設備であれば、購入によって将来の売却益や下取り価値を自社で享受できます。

一方でリースの場合、契約終了時に設備を返還するのが基本となることが多く、処分価値を自社で取り込めないことがあります。リース期間が満了して物件を返還する場合、所有者であるリース会社へ返すことになるため、処分益を享受できないというデメリットが生じます。

税制・補助金との関係を重視する設備

設備投資税制や補助金を活用する場合、購入とリースとで取扱いが異なることがあります。

特別償却、税額控除、圧縮記帳、補助対象経費、財産処分制限、証拠書類など、確認すべき点は個別の制度ごとに異なります。所有権移転外リース取引では特別償却が使えず、税額控除は条件を満たせば適用できる場合があるなど、制度によって取扱いが分かれます。

出典:国税庁|No.5433 中小企業投資促進税制

税務や補助金を含めた設備投資では、契約前にこうした点を確認しておくことが重要です。

リースと購入の比較で必ず見るべき7つの論点

1. 初期資金と手元資金

リースは初期資金を抑えやすい一方、購入は初期支出か借入のいずれかが必要になります。

ただし、手元資金を使わないこと自体が目的ではありません。設備投資の後に、必要な運転資金、納税資金、賞与資金、予備資金を確保できるかどうか――そこが本当に大切な点です。

初期資金を抑えられても、毎月のリース料で資金繰りが苦しくなってしまっては、本末転倒です。

2. 月額負担と固定費化

リース料は、毎月の固定支払になります。

固定費が増えると、売上が落ち込んだときに資金繰りが悪化しやすくなります。購入でも借入返済は固定支払になりますが、こちらは返済期間や据置期間を設計できる場合があります。

リースと購入を比較するときは、月額負担を資金繰り表に落とし込み、売上が未達のときでも支払えるかどうかを確認します。

3. 総支払額

リースは初期支出が少なくても、総支払額では購入を上回ることがあります。

リース料には、設備代金に加えて、リース会社の調達コスト、事務コスト、利益、保険、メンテナンス費用などが含まれることがあるからです。

比較する際は、月額だけでなく、リース期間全体の総額で見るようにします。

4. 会計処理と財務指標への影響

リースは、会計処理によって、資産、負債、費用、利息、減価償却の表示が変わってきます。

新しいリース会計基準の適用対象となる会社では、リースを使っても、使用権資産とリース負債が計上される方向に向かいます。使用権資産は、所有していた場合の科目に含める方法と、使用権資産として区分する方法があり、リース負債についても、貸借対照表上に区分表示するか、注記することとされています。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

したがって、リースを選べば財務指標が常に軽く見える、とは限らないのです。

5. 税務上の取扱い

税務上は、法人税法上のリース取引か、所有権移転外リース取引か、それともオペレーティング・リース取引かによって、処理が異なります。

オペレーティング・リース取引については、賃貸借取引に係る契約に基づいて支払う金額のうち、各事業年度において債務の確定した部分の金額を、損金の額に算入することとされています。

出典:国税庁|No.5705 賃貸借取引(オペレーティング・リース取引)についての取扱いの概要

会計上の処理と税務上の処理が、完全に一致するとは限りません。申告調整、消費税、適格請求書、設備税制との関係についても、あわせて確認が必要になります。

6. 所有リスクと管理負担

購入すれば、自社が所有者として管理責任を負うことになります。

修繕、故障、事故、保険、税金、売却、除却、償却資産申告などを、自社で管理しなければなりません。リースであれば、契約内容によって一部の管理負担をリース会社側に移せることがありますが、その代わりに使用上の制限や返還条件が付くこともあります。

どちらがよいかは、会社の管理体制と設備の性質によって変わってきます。

7. 更新・撤退の柔軟性

設備投資では、導入時だけでなく、更新時や撤退時も同じくらい重要です。

購入した設備は、自社の判断で売却、除却、転用がしやすい一方、売却価値がない場合には処分費用が発生します。リースは契約終了時に返還できる場合がありますが、中途解約や契約変更が難しいことがあります。

事業環境が変わりやすい投資では、更新や撤退の柔軟性を重視すべきです。

金融機関からの見え方:リースでも返済能力は見られている

リースを利用すると、銀行借入の残高は増えない場合があります。

しかし、だからといって金融機関がリース料を無視するわけではありません。リース料は将来の固定支出であり、営業キャッシュフローから支払われるものだからです。

金融機関へ設備投資を説明する際には、リースであっても、次のような情報を整理しておく必要があります。

  • リース対象設備の内容
  • リース期間
  • 月額リース料
  • リース料総額
  • メンテナンス費用の範囲
  • 中途解約条件
  • 契約終了時の取扱い
  • 設備導入による売上増加・コスト削減効果
  • リース料支払後の営業キャッシュフロー
  • 既存借入の返済との関係
  • 資金繰り表への反映
  • 税務・会計処理の方針

リースは銀行融資ではありませんが、資金繰り表のうえでは、毎月確実に出ていく支出です。

ですから金融機関に対しては、「借入を増やしていないから問題ない」ではなく、「リース料を支払っても返済原資が残る」ことを説明できる状態にしておくことが求められます。

セール&リースバックは、通常のリース判断とは分けて考える

リースの中には、セール&リースバックという方法もあります。

これは、自社が所有している資産をいったん売却し、その後も同じ資産をリースや賃貸の形で使い続ける方法です。固定資産の売却によって一時的に資金を調達し、その後はリース料として分割で支払っていく仕組みになります。

セール&リースバックには、まとまった資金を確保しながら、資産はそのまま使い続けられるというメリットがあります。資産を売却して資金化し、所有に伴う管理事務を軽減できる場合もあります。

ただし、これは通常の「新しく設備を導入するリース」とは、別の論点として捉える必要があります。

セール&リースバックでは、次の点に注意が必要です。

  • 売却後も継続して使用できるか
  • 売却価格は妥当か
  • 売却損益が発生するか
  • 将来のリース料負担に、資金繰りが耐えられるか
  • 実質的に金融取引と見られる可能性はないか
  • 担保・金融機関取引・税務処理に影響しないか
  • 事業再生局面での資金確保策なのか、通常の財務戦略なのか

このうち税務上の取扱いについては、セール・アンド・リースバック取引において、その資産の種類や、売買および賃貸に至った事情などに照らし、一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められる場合には、売買はなかったものとされ、金銭の貸付けがあったものとして扱われます。

出典:国税庁|No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)

資金繰りが苦しいから資産を売ってリースバックする、という判断は、慎重に行うべきです。短期的に資金は増えても、その先で将来の固定支払が増えることになるからです。

リースか購入かを決める実務手順

リースと購入の判断は、次の順番で整理していくと、実務的に進めやすくなります。

1. 設備投資の目的を確認する

まずは、設備投資の目的をはっきりさせます。

増産なのか、更新なのか、省力化なのか、品質改善なのか、それとも新規事業なのか。目的によって、投資効果の見方は変わってきます。

設備投資の目的が曖昧なままリースか購入かを決めようとすると、結局は支払条件だけの比較に陥ってしまいます。

2. 投資効果をキャッシュフローで見る

次に、投資効果を営業キャッシュフローに落とし込みます。

売上増加、粗利増加、コスト削減、人件費削減、修繕費削減、外注費削減、在庫増加、売掛金増加、保守費増加などを見込んでいきます。

購入であれリースであれ、最終的には営業キャッシュフローから支払うことになるからです。

3. 資金繰り表に購入案・リース案を並べる

リース案と購入案を、月次の資金繰り表に反映させます。

購入案では、自己資金の投入額、借入の実行額、返済額、利息、減価償却、税務効果を反映します。リース案では、月額リース料、契約期間、メンテナンス費、税務処理を反映します。

比較は、損益だけでなく、資金繰り表のうえで行うべきです。

4. 既存借入と固定支払を確認する

新しい設備のことだけを見るのではなく、既存の借入返済、既存のリース料、保険料、家賃、税金、社会保険料、賞与、納税資金まで含めて確認します。

リース料や借入返済が積み上がっていくと、売上が少し落ちただけで、資金繰りが一気に厳しくなります。

5. 会計・税務・補助金を契約前に確認する

リース契約を結んだ後になって、税制優遇が使えない、補助対象にならない、会計処理が想定と違っていた、と気づいても、後からの対応は難しくなります。

設備税制、補助金、消費税、リース会計、償却資産申告は、いずれも契約前に確認しておくべき事項です。

6. 契約終了時まで考える

リースでは、契約終了時に返還するのか、再リースするのか、買い取れるのかを確認しておきます。

購入では、耐用年数の後も使い続けるのか、売却するのか、更新するのかを見据えておきます。

設備投資は、導入時だけでなく、回収・更新・撤退までを含めて設計するものです。

リースが有利か、購入が有利かを、一律に決めない

リースと購入には、それぞれにメリットとリスクがあります。

リースは、初期資金を抑え、支払を平準化し、管理事務を軽減できる可能性があります。その一方で、総支払額が高くなる、固定費が増える、中途解約が難しい、資産が手元に残らない、といったリスクを伴います。

購入は、自社の資産として長期利用でき、売却価値や税制優遇を検討しやすいというメリットがあります。けれども、初期資金、借入返済、所有リスク、管理負担が発生します。

どちらが正しいかは、会社の状況によって変わります。

大切なのは、リースと購入を「得か損か」だけで単純に比べないことです。判断すべきは、次の三点だと考えています。

その設備投資が、会社の成長に本当に資するのか。その支払条件で、投資回収まで資金繰りが持つのか。会計・税務・金融機関対応まで含めて、きちんと説明できる状態になっているのか。

ここまで整理できていれば、リースを選ぶにせよ、購入を選ぶにせよ、経営判断としての精度は確実に高まります。

リース・購入の判断に不安がある場合はご相談ください

リースを使うべきか、購入すべきか。これは、設備の種類や金額だけで決まるものではありません。

月次の業績、手元資金、借入余力、既存返済、設備投資の目的、投資回収、税制優遇、補助金、会計処理、そして金融機関への説明可能性。これらをあわせて判断していく必要があります。

特に、次のような場合は、契約前に一度整理しておくことをおすすめします。

  • リース料と借入返済の、どちらが資金繰りに合うのか分からない
  • 設備税制や補助金との関係を確認したい
  • リース契約の総支払額や中途解約条件を、十分に把握できていない
  • 金融機関に設備投資の妥当性を説明する必要がある
  • 手元資金を温存すべきか、自己資金を使うべきか悩んでいる
  • 購入後、あるいはリース契約後の月次資金繰りに不安がある
  • 会計処理や税務処理が、自社にどう影響するのかを確認したい

犬飼公認会計士・税理士事務所では、リースか購入かの比較を、単なる支払総額の比較にとどめず、資金繰り、投資回収、税務、会計、金融機関対応までを含めた財務設計として整理いたします。

設備投資を検討しているものの、リース契約や購入資金の判断に迷っているという場合は、決算書、試算表、資金繰り表、見積書、リース条件、借入条件をもとに、投資の前に一度整理してみることをおすすめします。

ご相談は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご連絡ください。

まとめ

判断項目リースで確認すべきこと購入で確認すべきこと
初期資金初期支出は抑えられるが、月額支払が続く自己資金または借入が必要
資金繰りリース料が固定費化し、将来キャッシュを拘束する借入返済や自己資金の流出が資金繰りに影響する
総支払額リース会社のコストや利益が含まれ、割高になることがある借入利息、修繕費、管理費、処分費まで含めて見る
会計処理適用基準によって、使用権資産・リース負債の計上が必要になる場合がある固定資産計上、減価償却、借入金管理が必要
税務法人税法上のリース取引、所有権移転外リース取引、オペレーティング・リース取引で処理が異なる減価償却、特別償却、税額控除、圧縮記帳等を確認する
所有リスク所有しない代わりに、契約上の使用制限や返還条件がある修繕、保険、税金、売却、除却、償却資産申告を自社で管理する
更新柔軟性契約終了時の返還・再リース・買い取り条件を確認する長期使用や売却はしやすいが、陳腐化リスクを負う
金融機関からの見え方借入ではなくても、固定支払として返済能力に影響する借入残高、返済原資、担保、財務安全性に影響する
向いている場面陳腐化が早い設備、管理負担が重い設備、手元資金を温存したい場合長期使用する中核設備、残存価値がある設備、自社仕様の設備
最終判断初期資金の少なさだけでなく、支払総額と資金繰りで判断する所有メリットだけでなく、投資回収と借入返済で判断する
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