創業後の追加資金調達で注意すべきこと|計画未達・追加運転資金・固定費の増加をどう説明するか

創業したあと、追加で資金が必要になる。これは、けっして珍しいことではありません。

売上の立ち上がりが、想定より遅れる。広告費が、予定より多くかかる。人を採用したものの、売上への貢献までには時間がかかる。仕入や外注費の支払いが先行する。設備やシステムに、追加の投資が必要になる。あるいは、売上は順調に伸びているのに、入金より先に支払いがふくらんでいく――。

創業前にどれだけ丁寧に計画を練ったとしても、いざ事業を始めてみれば、実績との間にズレが生じます。これは、どの会社にも必ず起こることです。

ただ、ここで気をつけたいことがあります。創業後の追加資金調達は、創業時の資金調達とは、金融機関の見方が変わるという点です。

創業のときは、「これから始める事業の計画」を説明する段階でした。一方、創業後はすでに実績が出ています。ですから、追加融資の相談では、「当初の計画では足りませんでした」という説明だけでは、どうしても物足りないものになってしまいます。

このとき、金融機関に対して説明すべきことは、次のような流れで整理できます。

説明すべき流れ内容
当初計画どのような売上、費用、資金繰りを想定していたか
実績実際にどうなったか
差異どこが、どの程度、計画とズレたか
原因売上、原価、固定費、入金条件、追加投資のどこに原因があるか
対策どのように改善するか
必要資金いつ、いくら、何のために必要か
返済原資どの資金から、どのように返済するか
今後の管理月次決算、資金繰り表、予実管理でどう確認するか

追加資金調達で本当に大切なのは、「足りない資金を埋めること」ではありません。

資金不足の原因を特定したうえで、その追加資金によって事業がどう改善し、どう返済できるのかを、きちんと説明できる状態にしておくこと。ここに尽きると思います。

目次

創業後の追加融資は「創業融資の延長」ではない

創業直後の段階では、金融機関は創業計画書、創業者の経験、自己資金、必要資金、売上計画などを中心に確認します。

これに対して、創業後の追加融資では、当初計画に加えて、実際の売上、原価、経費、資金繰り、手元資金、そして既存借入の返済状況までが確認の対象になります。

つまり、創業後の追加資金調達では、金融機関から次のような視点で見られることになります。

創業時の主な確認事項創業後の追加融資で追加される確認事項
創業動機当初計画どおりに進んでいるか
創業者の経験実際に事業を運営できているか
創業計画書計画と実績の差異を把握しているか
必要資金追加資金がなぜ必要になったか
自己資金手元資金をどう管理してきたか
売上計画売上未達または売上増加の原因を説明できるか
返済可能性既存返済に追加返済を上乗せしても資金繰りが回るか

創業時は実績がまだ少ないため、計画そのものの納得性が重視されます。これに対して創業後は、計画と実績のズレをどう認識し、どう修正しているか――その姿勢が重視されるようになります。

金融機関の融資審査では、債務者評価、融資案件の事情、資金使途、融資形態、返済原資、保全、他行の状況といった点が確認されます。創業後の追加融資では、これらに加えて「当初計画との比較」が、実務上の重要な論点になってくるのです。

追加資金が必要になった理由を分類する

創業後の追加資金調達で、まず取り組んでいただきたいのが、資金不足の理由を分類することです。

「資金が足りない」という状態は同じに見えても、その原因によって、金融機関への説明、調達の手段、返済期間、そしてリスクの見られ方は、大きく変わってきます。

追加資金が必要になる主な理由性質注意点
売上立ち上がりの遅れ計画未達による資金不足原因と改善策が説明できないと赤字補填に見られやすい
売上増加に伴う仕入・外注・在庫増加増加運転資金成長資金として説明できるが、回収サイトの確認が必要
広告費・販促費の追加投入成長投資または赤字補填投資効果と撤退基準が必要
人材採用・人件費増加固定費増加売上貢献までの期間と資金繰り耐性が重要
設備・内装・システムの追加投資設備資金または成長投資資金投資回収と返済期間の整合性が必要
税金・社会保険・家賃等の支払い遅れ資金繰り悪化金融機関からは慎重に見られやすい
借入返済開始後の資金不足返済負担の見込み違い据置期間終了後の資金繰り再設計が必要
補助金入金までの立替資金つなぎ資金採択、交付決定、対象経費、入金時期の確認が必要

この分類をしないまま、「運転資金が必要です」とだけ説明してしまうと、金融機関から見て、資金使途があいまいに映ってしまいます。

とりわけ、赤字の穴埋め資金、売掛金の焦げ付きを補う資金、返済資金の不足は、通常の運転資金よりも慎重に見られるものです。こうした場合、金融機関は今後の資金繰りや売上計画への影響、返済原資を細かく確認しますので、資金繰り表と改善の説明が欠かせません。

売上未達による追加資金は、原因分析なしに借りてはいけない

創業後の追加資金で、もっとも注意したいのが、売上未達による資金不足です。

売上が想定どおりに立ち上がらないなか、家賃、人件費、広告費、仕入、外注費といった支払いが先行すると、手元資金は驚くほど早く減っていきます。このとき、追加融資を受けられれば、一時的には資金繰りが楽になります。

ただ、売上未達の原因を整理しないまま追加融資を受けてしまうと、数か月後には同じ問題が再び姿を現します。

確認すべきは、単に「売上が足りない」ということではありません。

売上未達の確認項目確認すべき内容
顧客数想定より少ないのか、問い合わせはあるが成約しないのか
客単価単価設定が低いのか、高すぎて売れないのか
販売数量販売数・契約数・稼働率が足りないのか
集客経路広告、紹介、既存人脈、Web、店舗導線のどこが弱いのか
成約率問い合わせから受注・購入につながっているか
入金時期売上はあるが入金が遅いのか
粗利売上はあるが原価や外注費が重いのか
固定費売上規模に対して固定費が過大ではないか
創業計画そもそも当初計画が楽観的ではなかったか

金融機関への説明では、「売上が計画未達です」で終わらせるのではなく、どの要素が未達なのかを分解しておく必要があります。

たとえば同じ売上未達でも、問い合わせ数は増えているのに成約率が低い場合と、そもそも問い合わせ自体が少ない場合とでは、打つべき手はまるで違ってきます。前者であれば営業導線や提案内容の見直しが、後者であれば集客施策の見直しが必要になります。当然、資金の使い道も変わってくるわけです。

追加融資は、売上未達の穴を埋めるためのものではありません。改善策を実行するための「時間」と「資金」を確保するためのものです。

ここで安易に増収を前提とした計画を作ってしまうと、計画未達がそのまま資金繰りの悪化につながります。売上計画を金融機関向けに整えることよりも、過去の実績や足元の反応を踏まえて、保守的な計画を立てること。そちらのほうが、はるかに大切です。

売上が伸びている場合でも、追加資金が必要になることがある

創業後の追加資金は、必ずしも悪い兆候とは限りません。むしろ、売上が伸びているからこそ、追加資金が必要になることもあります。

たとえば、売上の増加にともなって、仕入、外注費、人件費、在庫、広告費が先に増え、入金は後になる場合です。このとき、利益が出る見込みであっても、入金までの期間を埋める資金が必要になります。

これが、いわゆる増加運転資金の問題です。

売上増加に伴う資金需要資金が必要になる理由
仕入増加売上入金より先に仕入代金を支払う
外注費増加受注対応のため外注費が先行する
在庫増加販売前に商品・材料を保有する
人件費増加採用・教育後、売上貢献まで時間がかかる
売掛金増加売上計上後、入金まで資金が固定される
広告費増加集客投資が先行する

売上増加にともなう追加資金は、金融機関に説明しやすい場合があります。ただし、説明の仕方を誤ると、単なる資金不足に見えてしまいます。

大切なのは、売上増加と資金需要の関係を、数字で示すことです。

説明すべき項目内容
売上増加の根拠受注、契約、予約、問い合わせ、販売実績
入金条件現金、カード、掛売、請求締め、入金サイト
支払条件仕入、外注、人件費、家賃、広告費の支払時期
必要運転資金売掛金・在庫・仕入債務の増減
返済原資売上入金、粗利、営業キャッシュフロー
必要期間一時的なつなぎか、恒常的な運転資金か

銀行融資では、決算書や試算表だけでなく、資金繰りの実績と予測が見える資金繰り表が重視されます。とくに期中の資金調達では試算表が重要になり、資金使途に応じて返済原資を説明していく必要があります。

売上が伸びている会社ほど、資金繰り表で先を読むことが欠かせません。売上増加は利益を増やす可能性をもたらしますが、その一方で運転資金を吸収していきます。ここを見落とすと、「成長しているのに資金が足りない」という、なんとも苦しい状態に陥ってしまうのです。

追加融資を受ける前に、当初計画との差異を整理する

創業後の追加融資では、当初の創業計画書を脇に置いて、新しい計画を一から作り直すわけではありません。

まず取り組むべきは、当初計画と実績の比較です。

比較する項目確認すべきこと
売上高計画を上回っているか、下回っているか
売上総利益原価率や外注比率が計画と違っていないか
固定費家賃、人件費、広告費、通信費、専門家費用が増えていないか
営業利益本業として利益が出ているか
現預金残高当初想定より早く減っていないか
売掛金入金遅れや回収サイトの長期化がないか
在庫過剰在庫や滞留在庫がないか
買掛金・未払金支払いを先延ばししていないか
借入返済据置期間終了後の返済負担を見込んでいるか
税金・社会保険後から発生する支出を見込んでいるか

実績が計画を下回っている場合には、主要施策、行動計画、売上高、売上原価、一般管理費といったどこに問題があるのかを検討し、改善策を実行していく必要があります。金融機関への説明においても、前月の実績や改善策を報告していく姿勢が、大きな意味を持ちます。

この差異分析がないまま追加融資を申し込むと、金融機関からは次のように見られがちです。

説明が不足している状態金融機関から見た懸念
なぜ資金が足りないか不明同じ資金不足が再発する可能性がある
売上未達の原因が不明返済原資が見えない
固定費増加の理由が不明資金繰りの改善余地が不明
追加資金の使途が曖昧赤字補填や穴埋めに見える
返済計画がない既存返済に追加返済を上乗せできるか不明
資金繰り表がないいつ資金ショートするか、いつ回復するか分からない

追加融資の相談前に当初計画と実績の差異を整理することは、なにも金融機関のためだけではありません。経営者ご自身が、「借りれば解決する問題」と「借りても解決しない問題」を切り分けるためにも、欠かせない作業なのです。

追加資金の使い道は、必ず分けて説明する

創業後の追加資金を、ひとまとめに「運転資金」と説明してしまうのは、できれば避けたいところです。

追加資金の中身は、できるだけ細かく分解していきます。

資金使途説明すべきこと
売上立ち上がりまでの運転資金何か月分の固定費・変動費を見込むか
仕入・外注費の先行支払いどの受注・販売に対応する支払いか
在庫資金どの商品・材料を、どの販売計画に基づき保有するか
広告宣伝費どの集客施策に使い、効果をどう測定するか
人件費誰を採用し、いつ売上貢献する見込みか
設備・システム投資投資目的、見積書、回収見込み、返済期間
補助金までのつなぎ交付決定、支払時期、実績報告、入金予定
税金・社会保険滞納防止か、すでに遅れているか

なぜ使途を分けるのか。それは、使途によって返済原資が異なるからです。

たとえば、売上増加にともなう仕入資金であれば、売掛金の回収が返済原資になります。設備投資であれば、その投資によって生まれる営業キャッシュフローが返済原資です。広告費や人材投資であれば、売上増加や生産性向上の見込みを説明する必要があります。

資金使途と返済原資がつながっていない追加融資は、金融機関から見て、どうしても判断しづらいものになってしまいます。

追加融資で注意すべき固定費の増加

創業後、資金繰りを圧迫しやすいのが固定費です。

固定費は、売上が少ない月でも変わらず発生します。創業直後は、売上がまだ安定していないにもかかわらず、家賃、人件費、リース料、システム利用料、広告契約、専門家費用などが、先に固定化してしまいやすい時期です。

固定費の種類注意点
家賃売上が少ない月でも固定的に発生する
人件費採用後すぐに売上貢献するとは限らない
社会保険料給与だけでなく会社負担分も必要
広告契約効果が出る前に継続支出になることがある
リース料途中解約しにくい場合がある
システム利用料少額でも複数契約で固定費化する
外注固定契約売上に連動しない支払いになっていないか確認が必要

追加融資を受ける前に、まず固定費が現在の売上規模に見合っているかを確認しておきましょう。

金融機関に対しては、ただ「人件費が必要です」「広告費が必要です」と伝えるのではなく、次のように説明していく必要があります。

追加固定費の説明内容
なぜ必要か売上増加、業務処理能力、品質維持、顧客対応など
いつから発生するか採用月、契約開始月、支払開始月
いつ効果が出るか売上貢献、効率化、粗利改善の時期
効果が出ない場合どうするか契約見直し、採用抑制、広告停止、外注化など
資金繰りに耐えられるか固定費増加後の資金繰り表で確認する

固定費を増やすことは、資金繰りの自由度を下げることでもあります。追加融資で固定費の増加を支えるのであれば、売上が未達となったときに、どこまで耐えられるか――その耐久力まで確認しておきたいところです。

広告費・販促費の追加投入は「投資」か「穴埋め」かを分ける

創業後に多い追加資金の使い道のひとつが、広告費・販促費です。

創業前の想定より集客が難しく、広告費を追加したい――こうしたご相談は、よくいただきます。ただ、広告費は金融機関から見ると、判断の難しい資金使途です。設備のように資産として残るわけではなく、効果が出なければ、資金だけが流出していくからです。

広告費を追加融資でまかなう場合は、次の点を整理しておく必要があります。

広告費の確認項目内容
これまでの広告実績どの媒体に、いくら使い、どの反応があったか
顧客獲得単価1件の顧客獲得にいくらかかっているか
成約率問い合わせから販売・契約までの率
客単価・粗利1件獲得した場合にどれだけ粗利が残るか
回収期間広告費をいつ回収できるか
継続可否効果がない場合に停止できるか
検証方法月次でどの指標を見るか

広告費の追加は、「売上が足りないから広告を増やす」という説明では、どうしても弱くなってしまいます。

金融機関に説明するのであれば、「どの顧客層に、どの施策を行い、どの程度の反応を見込み、どの粗利で回収するのか」まで整理しておきたいところです。ここがあいまいな広告費は、成長投資ではなく、赤字の穴埋めに近いものと受け取られかねません。

人材採用の追加資金は、固定費化に注意する

人材採用は、創業後の成長に欠かせない投資です。

ただし、採用は資金繰りの面では、非常に重い投資でもあります。採用費、給与、社会保険、教育期間、管理の負担が発生し、しかも売上への貢献までには時間がかかります。

人材投資で見落としやすい資金負担内容
採用費求人広告、紹介料、採用媒体、面接対応
給与売上貢献前から毎月発生する
社会保険料会社負担分を見落としやすい
教育費研修、マニュアル、同行、管理時間
生産性低下採用直後は既存メンバーの時間も使う
退職リスク採用後すぐに定着しない可能性がある

追加融資で採用資金をまかなう場合は、採用後の売上貢献や業務効率化について、きちんと説明する必要があります。

とくに創業初期は、「人が足りない」と感じやすい時期です。しかし、売上がまだ安定していない段階で固定の人件費を増やすと、資金繰りは一気に悪化します。

採用に踏み切る前に、外注、業務委託、業務改善、価格改定、営業対象の見直しなどで対応できないかも、あわせて確認しておきたいところです。採用は必要な投資ではありますが、いったん固定費化してしまうと、簡単には戻せません。

追加融資の相談では、資金繰り表が中心資料になる

創業後の追加資金調達では、資金繰り表が中心的な資料になります。

追加融資の相談で、金融機関が知りたいのは、次のようなことです。

金融機関が知りたいこと資金繰り表で示す内容
いつ資金が足りなくなるか月末資金残高、最低残高
いくら不足するか月別不足額、累積不足額
なぜ不足するか売上入金、仕入支払、固定費、返済、税金
追加資金はいくら必要か必要額と安全余裕
いつ資金繰りが改善するか売上入金、粗利改善、固定費削減
返済できるか追加返済後の資金残高
計画未達時に耐えられるか保守的な売上シナリオ

日本政策金融公庫も、創業関連の書式として、月別収支計画書、設備投資計画書、資金繰り表、経営状況振り返りシート、事業計画進捗報告書などを用意しています。月別収支計画書は月別の詳細な収支計画を、資金繰り表は資金繰り計画を策定する際に用いるものとされています。

出典:日本政策金融公庫|各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方〔国民生活事業〕

資金繰り表を作るときは、希望的観測で作ってはいけません。

次のような予測は、金融機関から見ても、そして経営者ご自身にとっても、危険なものです。

危険な資金繰り予測問題点
売上が急に伸びる根拠がないと返済原資が過大に見える
回収が急に早くなる取引条件の変更根拠が必要
原価率が急に下がる仕入条件や外注条件の根拠が必要
固定費が大きく減る実行可能な削減策が必要
追加費用が出ない前提創業後は想定外支出が起きやすい
返済開始後の残高を見ない据置終了後に資金不足が再発する

資金繰りの予測は、むしろ厳しめに作るくらいでちょうどよいと考えています。融資を受けるために楽観的な数字を並べるのではなく、資金繰りがもっとも苦しい月でも、支払いと返済に耐えられるかを確認する。そのために作るものです。資金繰り表の予測値は、売上、回収、原価、支払、固定費が希望的観測になっていないか、ひとつずつ確かめていきたいところです。

追加融資を申し込む前に準備すべき資料

創業後の追加資金調達では、金融機関に相談する前に、最低限、次の資料を整理しておきたいところです。

資料役割
当初の創業計画書当初想定との比較に使う
月次試算表実際の売上、原価、経費、利益を確認する
資金繰り表資金不足の時期、金額、原因、返済可能性を示す
借入一覧表既存借入、返済額、据置期間、残高を整理する
売上実績表顧客別、商品別、月別の売上推移を示す
受注・契約・予約資料今後の売上見込みの根拠を示す
売掛金一覧入金予定、回収遅延、貸倒リスクを確認する
在庫一覧過剰在庫、滞留在庫、仕入資金の必要性を確認する
固定費一覧家賃、人件費、広告費、リース料などを確認する
追加資金の使途明細何に、いつ、いくら使うかを示す
改善計画売上改善、固定費見直し、資金繰り改善策を示す

月次決算とは、毎月の営業成績や財政状態を明らかにするための仕組みです。これを毎月続けていくことで、経営者は数字から会社の現状を把握でき、銀行融資の場面でも、直近の月次決算書を提出できる状態を整えやすくなります。

追加融資の相談では、資料の量よりも、説明の一貫性が問われます。

「試算表では赤字なのに、資金繰り表では余裕がある」。「売上計画は増えているのに、広告費や人件費は増えていない」。「追加融資が必要と言いながら、その使途があいまい」。「返済額が増えるはずなのに、資金残高が減らない計画になっている」。

こうしたズレがあると、金融機関はどうしても慎重にならざるを得ません。

日本政策金融公庫や信用保証制度の対象でも、審査は別問題

創業後の追加資金調達では、日本政策金融公庫や、信用保証協会付きの融資を検討することもあります。

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とし、事業開始後に必要となる設備資金・運転資金にも使える制度です。融資限度額や返済期間などの概要も公表されていますが、適正な事業計画の策定と遂行能力が確認されること、そして審査の結果によっては希望に沿えない場合があることも、あわせて明記されています。

出典:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

また、創業期の方――すなわち、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方については、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できること、利率の引下げや長期返済に関する案内も示されています。ただし、これもあくまで制度上の案内であり、個別の融資の可否は、事業計画、実績、資金使途、返済可能性などの審査によって決まります。

出典:日本政策金融公庫|創業融資のご案内

信用保証協会についても、創業関連保証、再挑戦支援保証、スタートアップ創出促進保証制度など、創業を考える方や創業後間もない方に向けた保証制度が用意されています。全国信用保証協会連合会は、創業時の融資には創業計画書が必要であること、各保証を併用した場合の保証限度額、スタートアップ創出促進保証制度の対象や保証限度額などを案内しています。

出典:一般社団法人全国信用保証協会連合会|創業をお考えの方

制度に該当することは、たしかに重要です。

しかし、制度に該当することと、追加融資を受けるべきことは、同じではありません。さらに言えば、制度に該当することと、希望額どおりに調達できることも、同じではないのです。

創業後の追加資金調達では、制度の有無よりも、次の説明のほうが重みを持ちます。

制度より先に整理すべきこと内容
追加資金の原因計画未達なのか、成長に伴う資金需要なのか
必要額いくら必要で、過大でも過少でもないか
使途何に使うか、証拠資料があるか
期間一時的な資金か、長期的な資金か
返済原資どの売上・粗利・キャッシュから返済するか
既存借入返済負担が重くなりすぎないか
改善策資金投入後に何が改善するか
管理体制月次決算、資金繰り表、予実管理があるか

制度は、あくまで手段です。追加資金調達の本質は、自社の資金需要と返済可能性を、自分の言葉で説明できるかどうかにあります。

追加融資が危険な場面

創業後の追加資金調達は、必要な場面では、たしかに有効です。

しかし、次のような状態では、追加融資が問題を先送りするだけになってしまう可能性があります。

危険な状態理由
売上未達の原因を把握していない借りても同じ資金不足が再発する
固定費を見直していない資金流出が止まらない
広告費の効果測定をしていない追加広告費が回収できない可能性がある
採用後の売上貢献を見込めていない人件費負担だけが増える
税金・社会保険の支払いが遅れている資金繰り悪化が進んでいる可能性がある
借入返済のために借りようとしている返済原資が弱く、借入依存になりやすい
資金繰り表を作っていない追加融資後の資金残高が見えない
経営者個人からの貸付で穴埋めしている事業の継続可能性を再検討すべき場合がある
仕入・在庫・売掛金の管理ができていない内部改善で資金繰りが改善する余地を見落とす
計画未達を金融機関に報告していない信頼関係が弱くなる

とくに注意したいのが、経営者個人が自社に資金を入れ続けている状態です。月次決算や実質無借金経営への意識は黒字化にプラスの影響を与える一方で、経営者自身による自社への貸付は、ネガティブな影響を与える可能性が示されています。

経営者個人が会社を支えること自体が、ただちに悪いというわけではありません。けれども、外部から資金を調達できず、個人の資金で穴を埋めなければ続けられない状態であれば、事業の収益構造、固定費、撤退ラインを、いちど冷静に見つめ直すべきだと思います。

追加資金調達は、早めに相談したほうが選択肢が多い

資金繰りが限界に近づいてから相談に来られると、どうしても選択肢は狭まってしまいます。

支払期限が迫っている。税金や社会保険が遅れている。仕入先への支払いが滞っている。既存借入の返済が難しい。手元資金が、もう数週間分しか残っていない――。

この段階まで来てしまうと、金融機関も慎重にならざるを得ず、追加融資だけでなく、返済条件の変更、経営改善計画、支出削減、事業再構築なども検討せざるを得なくなります。

創業後の追加資金調達は、次のようなタイミングで検討するのが望ましいと考えています。

相談すべきタイミング理由
資金繰り表で数か月後の不足が見えたとき対応策を検討する時間がある
売上が2〜3か月連続で計画未達になったとき早期に原因分析できる
広告費・人件費を増やす前投資回収と資金繰りを事前に確認できる
大きな受注・販売増加が見込まれる前増加運転資金を準備できる
据置期間終了前返済開始後の資金繰りを確認できる
税金・社会保険の支払いが重くなる前資金計画に織り込める
補助金採択後、支出前後払い資金の立替を設計できる

金融機関から評価される会社は、資金が尽きてから相談する会社ではありません。計画と実績を見比べ、計画を下回ったときには改善策を伝え、外部環境の変化で計画の変更が必要になったときには、速やかに報告する。そうした会社です。

金融機関への説明は「お願い」ではなく「報告と設計」にする

追加融資の相談で避けたいのは、資金不足になってから「何とか貸してください」とお願いする形です。

金融機関との面談では、次の順序で説明していきます。

説明順序内容
1. 現状開業後の売上、利益、資金残高、既存借入の状況
2. 当初計画との差異どこが計画と違ったか
3. 原因売上、原価、固定費、入金、支払い、投資のどこに原因があるか
4. 対策売上改善、費用見直し、回収改善、投資見直し
5. 必要資金いつ、いくら、何に使うか
6. 返済原資追加資金投入後、どの資金から返済するか
7. 資金繰り予測追加融資後の月別資金残高
8. 今後の報告月次試算表、資金繰り表、予実管理の共有方法

この説明ができれば、追加融資は単なる穴埋めではなく、事業を立て直すため、あるいは成長を支えるための資金として、位置づけやすくなります。

反対に、次のような説明では、どうしても弱くなってしまいます。

弱い説明不足している論点
思ったより売上が伸びませんでしたなぜ伸びないのか、どう改善するのか
広告を増やせば売上が伸びますどの広告で、どの程度の効果があるのか
人を採れば対応できます採用後の売上貢献と固定費負担
資金が足りないので運転資金が必要です何に、いつ、いくら必要なのか
返済は売上から行います売上から経費を引いた後に資金が残るか
補助金が入れば返せます交付決定、入金時期、対象経費、立替資金

追加融資の面談で大切なのは、借りたい理由を訴えることではありません。金融機関が判断できる材料を、きちんと提供することです。

創業後の追加資金調達で専門家に相談すべき場面

創業後の追加資金調達は、ただ金融機関に申し込めばよい、という場面ばかりではありません。

次のような場合は、申し込む前に、専門家と一緒に整理しておく価値があります。

相談したほうがよい場面理由
売上が計画を大きく下回っている追加融資前に事業計画の修正が必要
手元資金が急速に減っている資金不足の原因分析が必要
既存借入の返済が重い借入条件、据置、返済計画の見直しが必要
広告費や人件費を増やす予定がある投資回収と固定費負担の確認が必要
売上は伸びているのに資金が足りない増加運転資金の見積りが必要
補助金採択後の立替資金が必要後払い資金繰りと融資の組み合わせが必要
追加融資を断られた金融機関から見た懸念を整理する必要
税金・社会保険の支払いが苦しい資金繰り悪化の早期対応が必要
経営者個人資金で穴埋めしている事業継続可能性と財務構造の確認が必要

追加資金調達は、申込書を作って終わり、というものではありません。月次試算表、資金繰り表、既存借入、当初計画との差異、返済可能性を、ひとつにつなげて整理していく必要があります。

とりわけ創業後は、数字そのものはまだ少ない一方で、資金繰りの変化は早く現れます。だからこそ、早い段階で月次の管理を整え、計画と実績を見比べていくことが、何よりも大切になるのです。

創業後の追加資金調達で、最も大切なこと

創業後の追加資金調達で、もっとも大切なのは、追加融資を受けられるかどうかではありません。

その追加資金を入れることで、会社の状態が本当に良くなるのかを確認すること。ここに尽きると思います。

追加資金が必要になった理由が、売上立ち上がりの一時的な遅れであり、改善策も明確で、返済原資もきちんと見えている。そうであれば、追加融資は、事業の継続と成長を支える、有効な手段になります。

一方で、売上未達の原因が分からないまま、固定費も見直さず、資金繰り表もなく、返済原資もあいまいなまま追加融資を受けてしまえば、残るのは、将来の返済負担だけです。

創業後の追加資金調達で整理しておきたい問いは、次の4つです。

問い確認すべきこと
なぜ足りないのか計画未達、増加運転資金、固定費増加、追加投資のどれか
何に使うのか使途を分解し、証拠資料を用意できるか
どう改善するのか資金投入後の売上、粗利、固定費、資金繰りの改善策
どう返すのか返済原資と追加返済後の資金繰りを確認できるか

この4つに答えられる状態になってから、金融機関に相談する。

それが、創業後の追加資金調達を「その場しのぎの借入」から「事業を整えるための財務設計」へと変えていく、最初の一歩になります。

ご相談について

創業後に追加資金が必要になったときは、早めに金融機関へ相談することも大切です。ただ、その前に、資金不足の原因、当初計画との差異、必要額、返済原資、そして今後の資金繰りを整理しておくこと――これが欠かせません。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、創業後の追加資金調達について、単なる融資申込書の作成にとどまらず、月次試算表、資金繰り表、創業計画との差異、売上改善策、固定費、人件費、広告費、既存借入の返済負担を一体で確認し、金融機関にきちんと説明できる状態へと整理していきます。

創業後、想定より早く資金が減っている。売上は伸びているのに、仕入や人件費の支払いが先行して資金が足りない。追加融資を検討しているが、金融機関に何を説明すべきか分からない。当初の創業計画書と実績がズレており、計画を作り直したい。追加資金を借りるべきか、それとも固定費や投資計画を見直すべきか、判断に迷っている――。

こうした段階であれば、資金が尽きる前に整理しておくことで、選択肢を広く持つことができます。

創業後の追加資金調達を、場当たり的な資金繰り対応ではなく、会社を続け、育てていくための財務設計として見直したい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。

重要事項の振り返り

論点重要な考え方
創業後の追加融資創業融資の延長ではなく、実績と差異を踏まえて判断される
資金不足の分類計画未達、増加運転資金、固定費増加、追加投資を分ける
売上未達原因分析と改善策がない追加融資は危険
売上増加成長していても、仕入・在庫・売掛金で資金が不足する
固定費人件費、家賃、広告契約、リース料は資金繰りを圧迫しやすい
広告費投資効果、顧客獲得単価、回収期間、停止基準を確認する
人材投資採用費、給与、社会保険、教育期間、売上貢献時期を織り込む
資金使途「運転資金」で一括りにせず、何に使うかを分解する
返済原資売上ではなく、経費・税金・運転資金を差し引いた後のキャッシュで考える
資金繰り表追加融資の必要額、時期、返済可能性を説明する中心資料になる
制度融資・公庫融資制度に該当しても、計画・実績・返済可能性の審査は別問題
相談タイミング資金が尽きる前、数か月先の不足が見えた時点で整理する
専門家活用月次試算表、資金繰り表、計画差異、金融機関説明を一体で整える
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