損金算入は「経費にできるか」だけでは決まらない
法人税の申告実務に携わっていると、「これは経費になりますか」というご相談を本当によくいただきます。
ただ、法人税で問われているのは、その支出を会計上の費用として処理できるかどうかではありません。焦点は、その支出が税務上の「損金」として、法人税の所得計算のうえで控除できるかどうかにあります。
会計上は費用として処理していても、税務上は損金にならないものがあります。逆に、会計処理と税務処理のタイミングがずれて、申告書の上で加算や減算の調整が必要になるものもあります。
損金算入の判断を誤ると、単に法人税額が変わるだけでは済みません。税務調査で否認される、附帯税が発生する、過去の決算内容の説明に苦労する、金融機関や株主への説明に響く、さらには将来の組織再編・M&A・事業承継の局面で税務リスクとして表面化する——こうした問題に連なっていきます。
本稿では、個別費目の細かな要件に入る前に、あらゆる損金判断の土台となる「法人税における損金算入の基本」を整理しておきます。
1. 損金とは何か
法人税法上、内国法人の各事業年度の所得金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除して計算します。つまり法人税の課税所得を考えるうえで、損金は益金と並ぶ中心的な概念です。
法人税法22条3項では、損金の額に算入すべき金額について、別段の定めがあるものを除き、おおむね次の三つに整理しています。
- 一つ目は、売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価です。
- 二つ目は、販売費、一般管理費その他の費用です。ただし、償却費以外の費用については、事業年度終了の日までに債務が確定していないものは除かれます。
- 三つ目は、資本等取引以外の取引に係る損失です。
出典:国税庁|No.5387 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
ここで押さえておきたいのは、損金とは「会社がお金を支払ったもの」ではなく、「法人税法上、所得計算から控除することが認められるもの」だという点です。
支払済みであっても損金にならないものがあります。逆に、未払であっても要件を満たせば損金になるものがあります。領収書があっても損金にならないことがあり、契約書や請求書がなくても、他の資料で実態を説明できれば検討の余地が残ることもあります。
ですから損金算入の判断では、「支払ったか」「領収書があるか」「会計ソフトで費用科目に入っているか」だけを見ていても、判断材料としては足りません。
2. 会計上の費用と税務上の損金は一致しない
法人税の所得計算は、会社の会計処理を出発点とします。とはいえ、会計上の利益と法人税法上の所得は、同じものではありません。
会計は、会社の経営成績や財政状態を適切に表示することを目的としています。一方、法人税は、課税の公平や租税制度上の政策目的を踏まえて課税所得を計算します。目的が異なるため、会計上は費用であっても、税務上は損金にならないものが出てきます。
たとえば、会計上は費用処理される支出であっても、法人税法や租税特別措置法に「別段の定め」がある場合には、その定めに従って損金算入額が制限されます。
典型的には、役員給与、役員退職給与、交際費等、寄附金、減価償却費、資産の評価損、貸倒引当金などが問題になります。これらは、会計上の費用処理だけで結論が決まるわけではありません。支給時期、決議、届出、金額の相当性、限度額、損金経理、債務確定、実態、資料の保存といった点を、一つずつ確認していく必要があります。
法人税法22条4項は、収益の額および損金の額について、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとしています。この公正処理基準は、企業会計を出発点としながらも、法人税法固有の目的と切り離して考えられるものではありません。
出典:e-Gov法令検索|法人税法
出典:国税庁|公正処理基準に関する一考察
つまり会計処理は重要ですが、「会計上費用にしたのだから、当然に税務上も損金になる」とは考えないほうが安全です。
3. 損金算入を判断する基本視点
損金算入を判断するときは、まず次の観点を順に確認していきます。
3-1. 会社の事業に関係する支出か
法人が支出したものであっても、会社の事業活動と関係のないものは、法人税上の損金として認められにくくなります。
ここでいう事業関連性は、単に「会社名義で支払った」という意味ではありません。その支出が、売上獲得、取引維持、業務遂行、従業員管理、資産保全、経営管理といった会社の事業活動と、どのようにつながっているかが問われます。
実務では、次のような点を確認していきます。
- その支出は、会社のどの業務に関連しているのか
- 誰のための支出なのか
- 支出の相手方は誰か
- 支出の目的は何か
- 会社が負担すべき理由はあるか
- 役員や株主、関係会社、親族など、特定の者への利益供与になっていないか
- 同種の取引と比べて、金額や条件が不自然でないか
特に中小・中堅企業では、会社と役員、会社と株主、会社とオーナー家族、会社とグループ会社の関係が近く、会社の支出と個人的な支出との境界が曖昧になりやすい傾向があります。
法人税の損金判断では、「会社が支払ったか」ではなく、「会社が負担すべき支出か」を確認することが出発点になります。
3-2. 資本等取引ではないか
法人税法22条3項の損金は、資本等取引以外の取引に係るものを前提としています。
資本等取引とは、資本金等の額の増減を生ずる取引や、利益・剰余金の分配、残余財産の分配・引渡しなどをいいます。これらは、会社の損益計算とは異なる領域に属します。
たとえば、株主への資本の払戻し、自己株式の取得、減資、みなし配当が関係する取引などは、通常の費用処理とは異なる税務判断が必要になります。
この切り分けを誤ると、本来は損益ではなく資本項目として処理すべき取引を、費用として処理してしまうことがあります。特に、同族会社のオーナー貸付金、債権放棄、DES、自己株式取得、資本払戻しなどは、損金の論点だけでなく、益金、みなし配当、株主課税、贈与税、株価評価にまで波及します。
本稿では資本等取引の詳細には立ち入りませんが、「損金になるか」を考える前に、そもそも損益取引として扱うべきものかどうかを確認しておく必要があります。
3-3. その事業年度に帰属する費用・損失か
支出が事業に関係していても、それがどの事業年度の損金になるかは、また別の問題です。
法人税の申告は、事業年度ごとに行います。そのため損金算入では、金額だけでなく「時期」が極めて重要になります。
たとえば、当期中に支払った費用であっても、翌期以降の役務提供に対応する前払費用であれば、原則として当期の損金にできない場合があります。反対に、当期中に支払っていなくても、当期末までに債務が確定していれば、未払金として当期の損金にできることがあります。
この時期判断を誤ると、損金になる・ならないという問題にとどまらず、当期と翌期の所得配分そのものを誤ることになります。税務調査では、費用そのものの実在性だけでなく、「なぜこの期の損金なのか」が確認されます。
4. 販売費・一般管理費等では「債務確定」が重要になる
法人税法22条3項2号は、販売費、一般管理費その他の費用について、償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務が確定していないものを損金から除く、という構造をとっています。
この「債務が確定しているもの」とは、法人税基本通達2-2-12において、別に定めるものを除き、次のすべてに該当するものとされています。
- 一つ目は、その事業年度終了の日までに、その費用に係る債務が成立していること。
- 二つ目は、その事業年度終了の日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
- 三つ目は、その事業年度終了の日までに、その金額を合理的に算定できること。
出典:国税庁|法人税基本通達 第2款 販売費及び一般管理費等
この三つの要件は、損金算入の実務で非常に大きな意味を持ちます。
たとえば請求書が翌期に届いたとしても、当期末までに役務提供が完了し、会社が支払うべき義務が成立し、金額を合理的に見積もれる場合には、当期の未払費用として検討できることがあります。
一方で、当期中に支払っていても、まだ役務提供を受けていない、契約上の義務が発生していない、金額の根拠が曖昧だ、といった場合には、当期の損金として処理することが適切でないこともあります。
債務確定の判断では、「請求書があるか」だけでなく、契約、納品、検収、役務提供、作業完了、承認、金額の算定根拠までを確認していきます。
5. 支払ったことよりも、発生した事実を説明できることが重要
実務では、「現金で支払った」「クレジットカードで決済した」「領収書がある」といった事実が重視されがちです。
もちろん、支払いの事実を確認できる資料は大切です。しかし法人税の損金判断では、支払いの事実だけでは足りません。あわせて、次のような点を確認していく必要があります。
- 支払った相手は誰か
- 何の対価か
- いつ役務提供を受けたのか
- 会社の事業とどう関係するのか
- 金額は合理的か
- 契約や社内承認はあるか
- 役員・株主・関係会社・親族への利益供与ではないか
- 同じような支出について、継続的に同じ処理をしているか
こうした事実関係が整理されていなければ、税務調査の場で「なぜ会社の損金なのか」を説明することができません。
特に、次のような支出は、会計上の科目名だけで判断するのではなく、資料と実態を確認する必要があります。
- 接待・会議・贈答に関する支出
- 役員や従業員への支給
- 外注費・業務委託費
- 関係会社への支援金や負担金
- オーナーや親族に関係する支出
- 高額なコンサルティング費用
- 決算期末に集中して計上される未払費用
- 将来の効果が長期に及ぶ支出
- 契約書や成果物が残りにくい役務提供
領収書は、支払ったことの証拠にはなります。しかし、損金算入の根拠そのものではありません。大切なのは、支出の目的、内容、相手方、時期、金額、会社負担の合理性を、一体として説明できることです。
6. 「別段の定め」がある支出は、一般論だけでは判断できない
法人税法22条は、損金算入の基本を定めています。しかし同条は「別段の定めがあるものを除き」としています。
この「別段の定め」がある場合には、一般的な損金の考え方だけでは結論が出ません。
たとえば役員給与は、会社の費用であり、事業に関連する支出であっても、法人税法34条の要件を満たさなければ損金算入が制限されます。定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与、不相当に高額な部分、不正経理による支給など、通常の費用とは異なる判断が求められます。
役員退職給与も、退職の事実、支給額の相当性、株主総会決議等による金額の確定、支給時期などが問題になります。実務上は、原則的な損金算入時期や、支払時に損金経理した場合の取扱いなど、通常の債務確定とは異なる検討が必要です。役員退職給与については、支給額が具体的に確定する日の属する事業年度を原則としつつ、実際に支払った日の属する事業年度において損金経理した場合の取扱いなども、論点になります。
交際費等については、会計上は接待交際費、会議費、福利厚生費、広告宣伝費などに分けて処理していても、租税特別措置法上の交際費等に該当するかどうかを、別途判断する必要があります。
寄附金についても、会社にとって支出理由があるように見えても、相手方に対する経済的利益の供与と判断される場合には、損金算入が制限されます。関係会社への債権放棄や費用負担では、通常の費用ではなく、寄附金課税が問題になることがあります。
減価償却費、評価損、貸倒引当金などは、会計上の費用処理と、税務上の損金算入限度額・要件とが一致しないことがあります。
損金算入の基本を理解するうえで大切なのは、「まず法人税法22条の基本構造を確認し、次に別段の定めがあるかを確認する」という順序です。
7. 損金経理が要件になる場合がある
損金算入を考える際には、「損金経理」という言葉も外せません。
損金経理とは、法人がその確定した決算において、費用または損失として経理することをいいます。法人税法2条25号で定義されている概念です。
出典:e-Gov法令検索|法人税法
出典:国税庁|法人税法の損金経理要件について(要約)
法人税法上、すべての損金について損金経理が要件になるわけではありません。しかし特定の費用や損失については、損金経理が損金算入の要件とされることがあります。
実務上、損金経理が問題になりやすいものとしては、減価償却費、特別償却、少額減価償却資産、一括償却資産、繰延資産償却費、資産の評価損、貸倒引当金、一定の賞与や退職給与に関する取扱いなどがあります。損金経理要件が付されている費用・損失については、確定した決算における処理が税務上の取扱いに影響し、申告調整だけで自由に変更できない場面があります。
この点は、経営判断としても重要です。
- 決算時に費用処理するのか
- 資産計上するのか
- 特別償却を選択するのか
- 税額控除を選択するのか
- 損金経理要件がある処理を、当期決算で行っているか
- 申告時点での別表調整だけで対応できる論点なのか
これらを確認しないまま決算を確定してしまうと、後から「本来は損金にしたかった」と考えても、税務上その処理が認められない場合があります。
8. 勘定科目名ではなく、実態で判断する
法人税の実務では、勘定科目名だけで損金算入の可否を判断することはできません。
たとえば、会議費という科目で処理していても、実態として接待・供応であれば、交際費等に該当する可能性があります。福利厚生費として処理していても、特定の役員や一部の者だけを対象とした支出であれば、給与や役員給与と判断される可能性があります。外注費として処理していても、実態が雇用に近ければ、給与、源泉所得税、社会保険、消費税の問題が生じます。
税務上の判断は、科目名ではなく、取引の実態、契約内容、相手方、役務提供の内容、支出目的、社内承認、支払条件、金額の相当性によって行います。
ですから会計入力の段階でも、「どの科目に入れるか」だけを考えるのではなく、「この処理を税務調査でどう説明するか」を意識しておく必要があります。
9. 損金算入の判断で確認すべき資料
損金算入の可否を検討する際には、少なくとも次のような資料を確認します。
- 契約書、注文書、発注書、請求書、領収書、納品書、検収書
- 業務報告書、成果物、作業記録、議事録、メール、チャット、稟議書
- 取締役会議事録、株主総会議事録、社内規程、承認フロー
- 支払明細、振込記録、クレジットカード明細、預金通帳
- 相手方との関係が分かる資料
- 価格の根拠、見積書、相見積り、算定資料
- 決算整理仕訳、総勘定元帳、補助元帳、別表四・五(一)との対応
すべての支出について、重厚な資料が必要というわけではありません。大切なのは、金額、重要性、相手方、取引の特殊性、税務リスクに応じて、求める資料の深さを変えることです。
少額で定型的な支出と、高額で非定型的な支出とでは、求められる説明の水準が異なります。通常の仕入代金と、関係会社への支援金とでは、確認すべき資料が違ってきます。一般従業員向けの福利厚生費と、特定役員への経済的利益とでは、税務上のリスクの大きさが異なります。
損金算入の判断は、税法だけの問題ではなく、資料管理の問題でもあるのです。
10. 税務調査で見られるポイント
税務調査では、損金処理された支出について、主に次のような観点から確認が入ります。
- 本当に取引があったか
- その取引は会社の事業に必要だったか
- 支出の相手方は実在し、役務提供や納品の実態があるか
- 金額は合理的か
- 当期の損金とする時期は適切か
- 役員、株主、関係会社、親族への利益供与ではないか
- 交際費、寄附金、役員給与、資本等取引など、別の税務区分に該当しないか
- 会計処理と申告調整が整合しているか
- 過年度から継続して同じ処理をしているか
- 資料や説明に不自然な点がないか
税務調査では、単なる入力ミスや判断誤りと、実態を隠す処理とは、区別して考えられます。ただし資料が不足していると、会社側に意図がなくても、説明が難しくなってしまいます。
損金判断で最も避けたいのは、「実際には会社の事業のための支出だったのに、資料が足りず、説明できない」という状態です。
税務判断は、結論だけでなく、その結論に至った過程を残しておくことが重要です。
11. 損金算入を検討するときの実務上の順序
損金算入の判断は、次の順序で確認していくと整理しやすくなります。
第1段階:支出または損失の実在性を確認する
まず、その取引や損失が実在するかを確認します。
請求書や領収書だけでなく、契約、納品、検収、成果物、作業実態、相手方とのやり取りまで確認します。架空経費や水増し支出は論外ですが、実在する支出であっても、内容が曖昧であれば税務上の説明力は弱くなります。
第2段階:会社の事業との関係を確認する
次に、会社が負担すべき支出かを確認します。
- 会社の業務に必要なものか
- 役員や株主の個人的支出ではないか
- 特定の関係者への利益供与になっていないか
- グループ会社や関係者が本来負担すべき費用を、肩代わりしていないか
ここで事業関連性を説明できない場合、損金算入は難しくなります。
第3段階:資本等取引や別段の定めを確認する
通常の費用に見えても、資本等取引、役員給与、交際費、寄附金、減価償却、評価損、貸倒れ、グループ法人税制などの別段の定めに該当する可能性があります。
この段階を飛ばして「通常の費用」として処理すると、税務調査で大きな修正につながることがあります。
第4段階:損金算入時期を確認する
続いて、その事業年度の損金としてよいかを確認します。
- 売上原価であれば、対応する収益との関係を確認します。
- 販売費・一般管理費であれば、債務確定を確認します。
- 損失であれば、その損失発生の事実が当期に生じているかを確認します。
前払費用、未払費用、引当金、評価損、貸倒損失などは、特に慎重な判断が必要です。
第5段階:損金経理要件と申告調整を確認する
最後に、会計処理と申告調整の関係を確認します。
- 損金経理が必要な処理か
- 別表四で加算・減算する処理か
- 別表五(一)で翌期以降に引き継ぐ処理か
- 当初申告での記載や添付が必要な制度か
- 後から更正の請求で対応できるものか
この確認を怠ると、制度上は損金算入が可能であっても、手続や経理処理の不足によって適用できない、ということが起こります。
12. 「節税」として損金を考えるときの注意点
損金算入は、法人税負担を軽減するうえで重要です。無駄な税負担を避けるために、適正に損金を計上することは、当然に必要なことです。
しかし、損金を「税金を減らすための道具」としてだけ見てしまうと、判断を誤ります。
たとえば決算直前に不要な支出を増やせば、当期の法人税は下がるかもしれません。しかし、その分だけ資金は流出します。会計上の利益も下がります。金融機関に提出する決算書の見え方も変わります。将来のM&Aや事業承継で、収益力や正常収益を説明する際に、調整が必要になることもあります。
また、短期的な節税を目的として不自然な支出を行うと、税務調査で否認されるだけでなく、会社の意思決定の過程そのものが問われる可能性があります。
損金算入を考える際には、次の視点が欠かせません。
- 税負担はどれだけ変わるか
- 資金流出はどれだけ生じるか
- 会計上の利益や自己資本にどう影響するか
- 金融機関への説明に耐えられるか
- 将来の組織再編、M&A、事業承継の選択肢を狭めないか
- 税務調査で、取引の目的と資料を説明できるか
法人税務における損金判断は、単なる税額計算ではなく、経営判断の一部なのです。
13. 経営者・経理責任者が決算前に確認すべきこと
決算前には、少なくとも次のような観点で損金項目を確認しておくことが望まれます。
- 高額な支出がないか
- 期末直前に集中して計上された費用がないか
- 未払費用の中に、債務確定が不十分なものがないか
- 前払費用として処理すべきものを、当期費用にしていないか
- 役員、株主、親族、関係会社への支出がないか
- 交際費・寄附金・役員給与に該当する可能性がないか
- 固定資産や繰延資産として処理すべき支出がないか
- 損金経理が必要な処理を、決算に反映しているか
- 税務調整が必要な費用を、別表で管理しているか
- 翌期以降に引き継ぐ留保項目が整理されているか
この確認は、申告書作成の直前に行うだけでは十分ではありません。役員給与や事前届出が必要な処理、設備投資税制、特別償却、税額控除、グループ会社間取引などは、事前の意思決定や資料整備が重要になります。
損金算入は、決算後に「何とかする」ものではなく、取引の発生時、契約時、支払時、決算時に、その都度整理しておくべきものです。
14. 専門家に相談すべき損金論点
次のような支出や損失がある場合には、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
- 役員報酬、役員賞与、役員退職金を支給する場合
- 関係会社やオーナーとの間で、費用負担、債権放棄、貸付金整理を行う場合
- 高額な交際費、接待費、紹介料、販売促進費、コンサルティング費用がある場合
- 外注費と給与の区分が曖昧な場合
- 貸倒損失や評価損を計上したい場合
- 修繕費と資本的支出の判断が必要な場合
- 決算直前に大きな未払費用や前払費用がある場合
- 組織再編、M&A、事業承継を予定している場合
- 税務調査で、過去の費用処理を説明する必要がある場合
これらの論点は、単に「損金になるか」だけで判断できるものではありません。税務上の要件、会計処理、契約、資料、意思決定、将来への影響までを、一体として確認する必要があります。
15. まとめ:損金算入の基本は「説明できる費用」に整えること
法人税における損金算入の基本は、単純に「支払ったものを経費にする」ことではありません。
- 会社の事業に関係する支出か
- 損益取引として扱うべきものか
- 当期に帰属する費用・損失か
- 債務が確定しているか
- 別段の定めによる制限はないか
- 損金経理が必要な処理か
- 資料と判断の過程を、後から説明できるか
これらを確認して初めて、法人税申告上の損金として適切に扱えるかどうかを判断できます。
損金算入の判断は、税額を下げるためだけの作業ではありません。会社の数字を整え、税務調査に耐え、金融機関や株主に説明でき、将来の経営判断につながる数字をつくるための実務です。
重要事項の振り返り
| 確認項目 | 実務上の意味 | 判断を誤った場合の主なリスク |
|---|---|---|
| 会計上の費用と税務上の損金の違い | 費用処理しただけでは損金になるとは限らない | 別表調整漏れ、税務否認 |
| 事業関連性 | 会社が負担すべき支出かを確認する | 役員給与、寄附金、個人的支出と判断される可能性 |
| 債務確定 | 当期の販売費・一般管理費として損金にできるかを判断する | 未払費用の否認、期間帰属の誤り |
| 別段の定め | 役員給与、交際費、寄附金、減価償却などの個別制限を確認する | 損金不算入処理の漏れ |
| 損金経理 | 決算上の費用・損失処理が要件になるものを確認する | 後から申告調整できない可能性 |
| 資料確認 | 契約、請求、納品、検収、議事録、稟議などで実態を説明する | 税務調査で説明不能になる |
| 経営判断との関係 | 税額、資金繰り、利益、金融機関対応、将来の選択肢を同時に見る | 短期節税が長期的な不利益になる |
法人税の損金算入について、自社の処理が「会計上の費用処理」にとどまっていないか、税務調査や将来の経営判断に耐えられる状態になっているかを確認したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所へご相談ください。決算・申告前の論点整理、役員給与や交際費・寄附金等の判断、資料整備、税務調査を見据えたレビューまで、会社の実態に即して整理いたします。