在庫の価値が下がった。長く使われないままの固定資産がある。保有株式の時価が大きく下落した。子会社株式の実質価額が下がっている——。
決算の場面では、こうした資産について、会計上「評価損」や「減損損失」を計上すべきかどうかを検討します。経営の実態を正しく映し出すためには、回収の見込みが薄れた資産をいつまでも高い帳簿価額のまま残しておくのは適切ではありません。金融機関、株主、後継者、あるいはM&Aの相手方に対しても、資産価値を過大に見せた決算書は、後になって説明に苦慮する場面を招きかねません。
一方で、法人税務の世界では、会計上の評価損や減損損失がそのまま損金になるとは限りません。
むしろ法人税法は、資産の評価換えによって帳簿価額を減額した場合の評価損について、原則として損金算入を認めていません。認めるのは、災害、著しい陳腐化、著しい価額低下、法的整理といった一定の事実がある場合に限られる、という例外的な構造です。資産評価損は、課税所得を恣意的に調整しやすい項目だからです。
出典:国税庁|法人税法 第6章 損金の額の計算
本記事では、4-1「資産・負債の法人税務を判断する基本」を前提に、棚卸資産評価損、有価証券評価損、固定資産減損を中心として、会計と税務がどこでズレるのか、税務調整をどう考えるのか、そして後から説明するために何を残しておくべきかを整理していきます。
この記事で押さえる結論
評価損・減損の税務判断で何より大切なのは、「会計上の損失計上」と「税務上の損金算入」を切り分けて考えることです。
会計上は、資産の収益性や回収可能性を踏まえて評価損や減損損失を計上する場面があります。しかし税務では、法人税法33条および法人税法施行令68条等に定める要件を満たすかどうかを、あらためて確認しなければなりません。税務上損金算入できない場合には、別表四で加算し、別表五(一)で将来認容される可能性のある差異として管理していくことになります。
| 項目 | 会計上の視点 | 税務上の視点 |
|---|---|---|
| 棚卸資産 | 正味売却価額、販売可能性、滞留・陳腐化 | 低価法の適用、著しい陳腐化、破損・品質変化等の特別事実 |
| 固定資産 | 減損の兆候、将来キャッシュ・フロー、回収可能価額 | 災害による損傷、遊休、転用、所在場所の著しい変化等の法定事実 |
| 有価証券 | 保有目的区分、時価、実質価額、減損処理 | 市場価格の著しい低下、回復可能性、発行法人の資産状態の著しい悪化 |
| 税効果会計 | 一時差異・繰延税金資産の回収可能性 | 将来の認容減算が見込めるかを別途検討 |
| 税務調査対応 | 会計判断の合理性 | 法定要件、損金経理、資料保存、判断時点の説明可能性 |
会計処理を先に固めておき、税務調整は後から形式的に済ませる——このやり方だけでは、どうしても不十分です。評価損・減損は、決算書の信頼性、税負担、金融機関への説明、そしてM&A・事業承継時の資産評価にまで影響します。だからこそ、決算を迎える前の段階から、会計と税務の両面で検討しておきたい論点なのです。
評価損・減損は、なぜ税務上そのまま損金にならないのか
会計は、会社の財政状態や経営成績を適切に表示することを重視します。ですから、棚卸資産の販売価値が下がったとき、固定資産から将来回収できる金額が帳簿価額を下回ったとき、あるいは有価証券の価値が大きく下落したときには、損失を早めに認識することがあります。
これに対して法人税務が重視するのは、課税所得の公平な計算です。資産の評価損は、実際に売却したわけではない「未実現の損失」であることが多く、会社の判断次第で利益を大きく動かせてしまう項目でもあります。そこで法人税法は、資産の評価換えによる評価損を原則として損金不算入としたうえで、一定の客観的な事実がある場合に限って損金算入を認める、という立て付けをとっているのです。
国税庁の法人税基本通達でも、評価損の判定単位は、土地等、建物、棚卸資産、有価証券など、資産の種類ごとに整理されています。有価証券であれば銘柄ごと、棚卸資産であれば種類等の異なるものごとに判定する、という考え方です。
出典:国税庁|法人税基本通達 第9章 第1節 第1款 通則
実務では、この点をめぐって次のような誤解が生じやすくなります。
| よくある誤解 | 実務上の整理 |
|---|---|
| 会計上減損したので税務上も損金になる | 税務上の評価損要件を別途確認する |
| 時価が下がったので評価損を損金にできる | 単なる価格変動では認められないことがある |
| 子会社が赤字なので子会社株式評価損を損金にできる | 発行法人の資産状態の著しい悪化、価額低下、回復可能性等を確認する |
| 固定資産が古いので減損すれば損金になる | 旧式化、過度使用、償却不足などだけでは税務上の評価損にならない場合がある |
| 翌期に回復したら前期の評価損を修正する必要がある | 判断時点が合理的であれば、事後的な回復だけで遡及是正するものではない |
評価損・減損は、「損失を計上したい」という結論から出発するものではありません。「どの資産について、どの事実が、いつ発生し、どの資料で説明できるのか」——ここから検討していく必要があります。
棚卸資産評価損|低価法と特別な評価損を分けて考える
棚卸資産については、まず「低価法による期末評価」と「法人税法33条による評価損」を分けて整理することが出発点になります。
低価法は、棚卸資産の評価方法として選定するものです。低価法を適用する場合の時価は、事業年度終了時にその棚卸資産を売却するものとしたときに通常付される価額によるものとされ、実務では、売却可能価額から見積追加製造原価や見積販売直接経費を控除した正味売却価額を用いることになります。
出典:国税庁|法人税基本通達 第5章 第2節 第2款 低価法
なお、棚卸資産の評価方法を選定する際には、所定の届出手続が設けられています。
出典:国税庁|C1-25 棚卸資産の評価方法の届出
これに対して、低価法を選定していない棚卸資産について、単に売れ行きが悪い、販売価格が下がった、相場が弱いといった理由だけで、任意に評価損を損金算入できるわけではありません。
法人税基本通達9-1-4は、棚卸資産の著しい陳腐化について、経済的な環境の変化によって価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態をいうとしています。例として挙げられているのは、季節商品が売れ残り、今後通常の価額では販売できないことが明らかな場合や、型式・性能・品質等が著しく異なる新製品の発売によって、通常の方法では販売できなくなった場合です。さらに、破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等によって通常の方法で販売できない場合も、評価損を検討し得る特別な事実とされています。
一方で、物価変動、過剰生産、建値変更等による単なる時価の低下だけでは、評価損を計上できる事実には当たらないとされています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第9章 第1節 第2款 棚卸資産の評価損
棚卸資産評価損については、次のように整理すると判断しやすくなります。
| 確認事項 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 評価方法 | 低価法を選定しているか、原価法か |
| 在庫の状態 | 破損、品質劣化、棚ざらし、型落ち、期限切れ等があるか |
| 販売可能性 | 通常価格で販売可能か、値引販売か、廃棄予定か |
| 回復可能性 | 一時的な価格下落か、今後通常販売できない状態か |
| 証拠資料 | 滞留在庫表、販売実績、値引販売実績、廃棄記録、写真、品質検査資料 |
| 税務処理 | 低価法による評価か、特別事実による評価損か |
棚卸資産評価損は、突き詰めれば在庫管理の問題でもあります。期末にまとめて「古い在庫を落とす」のではなく、月次で滞留在庫を把握し、販売可能性、値引販売、廃棄、仕入・生産計画の見直しまでを含めて管理していく。この積み重ねが、そのまま税務上の説明力にもつながっていきます。
固定資産減損|会計上の減損損失と税務上の評価損は別物である
固定資産の減損会計では、資産または資産グループについて減損の兆候を把握し、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合などに、減損損失を認識します。
固定資産の減損に係る会計基準では、減損損失の測定が将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存し、どうしても主観的にならざるを得ない面があることを踏まえ、減損の存在が相当程度に確実な場合に認識する、という考え方が示されています。
出典:ASBJ|固定資産の減損に係る会計基準
もっとも、会計上減損損失を計上したからといって、それだけで法人税法上の評価損が損金算入されるわけではありません。
法人税法上、固定資産について評価損が損金算入されるためには、法人税法施行令68条に定める事実が必要です。実務では、災害による著しい損傷、1年以上にわたる遊休状態、他の用途への転用、資産の所在場所の著しい変化など、資産価値の下落を客観的に説明できる事実があるかどうかを確認します。単に事業計画が下振れした、稼働率が落ちた、収益性が低下した——というだけでは、税務上の評価損として認められるとは限りません。資産の評価損益について、税法は原則として評価換えを認めず、特別な事実がある場合に限って損金算入を認める。この整理を押さえておくことが、実務上とても重要です。
国税庁の法人税基本通達9-1-17では、固定資産の評価損が損金算入されるのは、法人税法施行令68条1項に規定する事実がある場合に限られる、としています。そのうえで、過度の使用または修理不足による著しい損耗、償却不足、取得価額が同種資産に比べて高かったこと、機械装置が製造方法の急速な進歩等によって旧式化していることなどは、固定資産評価損の損金算入事由には当たらない例として示されています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第9章 第1節 第4款 固定資産の評価損
固定資産減損では、会計と税務とで判断の軸そのものが明確に異なります。
| 観点 | 会計上の減損 | 税務上の評価損 |
|---|---|---|
| 判断単位 | 資産または資産グループ | 資産ごと、合理的な判定単位 |
| 中心となる判断 | 将来キャッシュ・フロー、回収可能価額 | 法令上の特別な事実の有無 |
| 損失計上の目的 | 将来に損失を繰り延べない | 課税所得の恣意的調整を防ぎつつ例外的に認容 |
| 資料 | 事業計画、減損兆候、CF見積り、割引率 | 遊休状況、転用事実、災害損傷、所在地変化、処分可能価額等 |
| 税務調整 | 税務上要件を満たさない場合は加算 | 将来売却・除却等で認容検討 |
会計上の固定資産減損は、金融機関への説明や経営判断にとって重要な意味を持ちます。赤字事業からの撤退、店舗の閉鎖、設備の更新、事業再編——こうした判断にも直結するからです。一方、税務上は、減損損失をそのまま損金算入できない場合、申告調整と税効果会計の検討が必要になってきます。
有価証券評価損|上場株式と非上場株式で確認事項が変わる
有価証券評価損は、評価損・減損のなかでも税務調査で確認されやすい論点です。とりわけ、上場株式、非上場株式、子会社株式、関係会社株式では、判断すべき事実がそれぞれ異なってきます。
国税庁のタックスアンサーでは、法人が所有する有価証券について、一定の事実が生じた場合には、原則として帳簿価額と時価との差額など一定の金額を限度に、評価損の計上が認められるとされています。ただし、完全支配関係がある子会社で清算中の法人等の株式や、通算法人が有する他の通算法人の株式等に計上する評価損については、損金算入されない場合がある点に注意が必要です。また、評価損を計上した場合、時価法による評価損益とは異なり、翌事業年度での洗替計算は必要ないとされています。
出典:国税庁|No.5574 有価証券の評価損が認められる場合
上場株式等の場合
市場有価証券等については、法人税基本通達9-1-7により、事業年度終了時の価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合に、「有価証券の価額が著しく低下したこと」に該当するとされています。回復可能性は、過去の市場価格の推移や発行法人の業況等を踏まえて、事業年度終了時に判断します。
出典:国税庁|法人税基本通達 第9章 第1節 第3款 有価証券の評価損
ここで押さえておきたいのは、50%の下落だけでは足りない、ということです。近い将来の回復可能性がないことについて、合理的な判断が求められます。
国税庁の質疑応答事例では、株価が帳簿価額の50%相当額を下回る場合であっても、必ずしも過去2年間にわたって50%程度以上下落している必要はないとされています。過去の市場価格の推移、市場環境、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限り、その基準は尊重される、という整理です。証券アナリスト等、第三者の見解も、合理的な判断の根拠のひとつになり得ます。
出典:国税庁|株価が50%相当額を下回る場合における株価の回復可能性の判断基準について
また、当期末の時点で合理的に回復可能性がないと判断して評価損を損金算入した後、翌期以降に株価が上昇したとしても、その事後的な事情だけで当期の処理を遡って是正する必要はないとされています。
出典:国税庁|評価損を計上した上場株式の時価が翌期に回復した場合の遡及是正について
上場株式等については、次の資料を残しておくことが重要です。
| 確認事項 | 残すべき資料 |
|---|---|
| 期末時価 | 期末株価、期末前1か月平均を用いる場合の計算資料 |
| 下落率 | 帳簿価額との比較表 |
| 回復可能性 | 株価推移、業界動向、発行法人の決算資料、業績予想 |
| 第三者情報 | 証券アナリストレポート、格付情報、公開情報 |
| 会計処理 | 減損処理の稟議、決算整理仕訳 |
| 税務処理 | 評価損の損金算入要件検討メモ、申告調整資料 |
非上場株式・子会社株式の場合
市場有価証券等以外の有価証券については、発行法人の資産状態が著しく悪化したために、その価額が著しく低下したかどうかが問題になります。
法人税基本通達9-1-9では、発行法人に特別清算開始命令、破産手続開始決定、再生手続開始決定、更生手続開始決定があった場合が挙げられています。あわせて、事業年度終了日における1株または1口当たりの純資産価額が、取得時の1株または1口当たり純資産価額に比べておおむね50%以上下回ることとなった場合も示されています。
出典:国税庁|法人税基本通達 9-1-9 市場有価証券等以外の有価証券の発行法人の資産状態の判定
非上場株式評価損で実務上やっかいなのは、「時価がない」という点です。上場株式のように日々の市場価格があるわけではありませんから、発行会社の財務状態、実態純資産、事業計画、債務超過の有無、増資・減資・債務免除の影響などを確認していく必要があります。
法人税基本通達9-1-13は、市場有価証券等以外の株式について、売買実例があるもの、公開途上にあるもの、類似法人の株式価額があるもの、そしてそれ以外のものに分けて、事業年度終了時の価額をどう考えるかを示しています。さらに9-1-14では、一定の市場有価証券等以外の株式について、財産評価基本通達の例によって算定した価額を用いる場合の条件も示されています。
出典:国税庁|法人税基本通達 9-1-13・9-1-14
子会社株式や関連会社株式については、単に子会社が赤字である、債務超過である、業績が悪い——というだけでは足りません。取得時からの純資産価額の比較、増資・債務免除・組織再編等による資本構成の変化、今後の事業継続可能性、清算方針の有無などを確認していきます。増資直後の株式については、発行法人が増資の前後で債務超過であったとしても、直ちには評価損要件に該当しないものとする取扱いにも注意が必要です。
出典:国税庁|法人税基本通達 9-1-12 増資払込み後における株式の評価損
その他有価証券の評価差額と税効果会計
有価証券評価では、税務だけでなく、税効果会計もまた重要になります。
その他有価証券は、会計上、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗替方式に基づいて処理されます。評価差額は、全部純資産直入法または部分純資産直入法によって処理され、税効果会計上の一時差異となることがあります。
出典:ASBJ|金融商品会計に関する実務指針
評価損が税務上損金算入されない場合には、会計上の帳簿価額と税務上の簿価がズレます。この差異は、将来の売却等によって解消される可能性があるため、繰延税金資産の検討対象になります。ただし、繰延税金資産を計上できるかどうかは、将来課税所得やスケジューリング、会社分類、売却方針等に左右されます。
その他有価証券の評価差額に係る一時差異については、原則として個々の銘柄ごとにスケジューリングを行うこととされています。そのうえで、評価差損に係る将来減算一時差異について回収可能性を判断して繰延税金資産を計上し、評価差益に係る将来加算一時差異について繰延税金負債を計上する、という考え方が示されています。
出典:ASBJ|繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針
とりわけ注意したいのが、過年度にその他有価証券を減損処理していた場合、その後に時価が回復したときの処理です。減損処理によって生じた将来減算一時差異は、原則として個々の銘柄ごとに管理します。減損処理後の時価上昇による評価差益は、減損処理直前の取得原価に回復するまでは、将来加算一時差異ではなく、減損により生じた将来減算一時差異の戻入れとして扱うことになります。実務上も、減損処理したその他有価証券の評価差額は、他の銘柄と一括せず、個別に管理しておく必要があります。
評価損・減損の税務調整は、単年度で終わるものではありません。翌期以降の売却、清算、除却、時価の回復、そして繰延税金資産の回収可能性の見直しまで、つながっていく論点なのです。
税務調整は「当期の加算」で終わらせない
会計上、評価損や減損損失を計上したものの、税務上の損金算入要件を満たさない場合には、別表四で加算します。このとき、単に「評価損否認」として加算するだけでは十分とは言えません。
将来、売却、除却、清算、法的整理、あるいは損金算入要件の充足などによって税務上認容される可能性がある場合には、別表五(一)で留保項目として管理しておく必要があります。会計上は損失処理済みであっても、税務上は帳簿価額が減額されていないものとして扱われるため、将来の売却損益や清算時の損益計算にまで影響してくるからです。
| 処理 | 内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 会計上評価損を計上 | 損益計算書に評価損・減損損失を計上 | 決算書上の利益が減少する |
| 税務上損金不可 | 法人税申告で別表四加算 | 当期の課税所得は減らない |
| 別表五(一)管理 | 将来認容される可能性がある場合に管理 | 売却・除却時に認容漏れを防ぐ |
| 税効果会計 | 一時差異として繰延税金資産を検討 | 回収可能性がなければ資産計上できない |
| 将来処理 | 売却・清算・除却等で認容検討 | 過年度の否認額を追跡する必要がある |
税効果会計は、企業会計上の資産・負債の額と、課税所得計算上の資産・負債の額とに相違がある場合に、法人税等を適切に期間配分し、税引前利益と税金費用を合理的に対応させる手続です。評価損や減損のように、会計と税務との差異が生じやすい項目では、税務調整と税効果会計を一体のものとして確認していくことが欠かせません。
税務調査で確認されやすいポイント
評価損・減損は、税務調査において「なぜその期に損失を計上したのか」を問われやすい項目です。とりわけ、黒字年度に多額の評価損を計上している場合、関係会社株式や子会社株式の評価損を計上している場合、あるいは固定資産減損を税務上も損金算入している場合には、根拠資料の整備がものを言います。
| 調査で確認されやすい事項 | 確認の意図 |
|---|---|
| 資産の種類・判定単位 | 法令・通達上の判定単位に合っているか |
| 評価損の発生事実 | 災害、陳腐化、法的整理、価額低下等の客観的事実があるか |
| 評価額の算定根拠 | 時価、正味売却価額、純資産価額等の算定が合理的か |
| 回復可能性 | 一時的下落ではなく、回復見込みがないと判断できるか |
| 会計処理との関係 | 減損処理・評価損処理が会計上合理的か |
| 税務調整 | 別表四・五(一)で適切に管理されているか |
| 関係会社取引 | 子会社支援、債務免除、増資、寄附金との関係がないか |
| 将来処理 | 売却・除却・清算時に過年度否認額を追跡できるか |
評価損・減損の処理は、帳簿上の仕訳だけで完結するものではありません。稟議書、取締役会議事録、評価資料、販売実績、時価資料、事業計画、第三者資料——こうした一つひとつが、判断の質を支えていきます。
決算前に整理すべき資料
評価損・減損を検討するのであれば、決算作業の終盤で慌てて判断するのではなく、決算を迎える前から対象資産を棚卸ししておくことが肝心です。
| 対象資産 | 準備すべき資料 |
|---|---|
| 棚卸資産 | 棚卸表、滞留在庫一覧、販売実績、値引実績、廃棄予定表、写真、品質検査資料 |
| 固定資産 | 固定資産台帳、稼働状況、遊休期間、転用資料、修繕履歴、事業計画、処分見積 |
| 店舗・事業用資産 | 店舗別損益、撤退計画、賃貸借契約、原状回復見積、閉鎖決定資料 |
| 上場株式等 | 期末株価、帳簿価額比較、株価推移、発行法人の決算資料、アナリストレポート |
| 非上場株式 | 発行会社決算書、実態純資産、取得時資料、増資・減資履歴、事業計画 |
| 子会社株式 | 子会社の財務資料、支援方針、清算方針、増資・債務免除資料、グループ組織図 |
| 税務調整 | 別表四、別表五(一)、過年度否認額一覧、税効果資料 |
| 意思決定 | 稟議書、取締役会議事録、専門家意見、評価方針メモ |
評価損・減損は、経営判断の結果として表れることの多い項目です。事業からの撤退、設備の更新、在庫処分、子会社の整理、投資方針の変更——いずれも、税務だけの問題ではなく、経営会議の議題として扱うべきテーマだと言えるでしょう。
経営判断として見た評価損・減損
評価損や減損損失は、単に税負担を減らすための費用ではありません。
むしろ評価損・減損は、過去の投資判断、在庫管理、与信管理、子会社管理、そして事業計画の見直しを映し出すシグナルです。適切に処理すれば、決算書の信頼性が高まり、金融機関や後継者に対しても、実態に即した説明がしやすくなります。反対に、根拠が弱いまま評価損を計上してしまうと、税務調査で否認されるだけでは済みません。金融機関から「利益調整ではないか」「資産管理に問題があるのではないか」と見られてしまう可能性もあります。
とりわけ中小・中堅企業では、次のような場面で、評価損・減損が将来の選択肢に影響してきます。
| 場面 | 影響 |
|---|---|
| 金融機関対応 | 自己資本、債務償還年数、担保価値の説明に影響 |
| M&A | 税務DD・財務DDで資産評価、過去申告リスクとして確認される |
| 事業承継 | 非上場株式評価、後継者への引継ぎ、株主説明に影響 |
| グループ再編 | 子会社株式評価損、欠損金、特定資産譲渡等損失との接点が生じる |
| 税効果会計 | 繰延税金資産の回収可能性、将来課税所得の説明に影響 |
| 税務調査 | 損金算入時期、要件充足、資料保存が確認される |
短期的な節税効果だけに目を向けるのではなく、決算書の信頼性、将来の資金調達、再編・承継の選択肢まで視野に入れて判断していく。そうした姿勢が、この論点では特に大切になります。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
評価損・減損・有価証券評価は、会計処理、法人税申告、税効果会計、金融機関への説明、そしてM&A・事業承継のすべてにかかわる論点です。
会計上は評価損や減損損失を計上すべき場面であっても、税務上は損金算入できないことがあります。逆に、税務上は損金算入できる可能性があるにもかかわらず、資料の不足や申告調整の漏れによって、適切な処理ができていないケースも少なくありません。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、評価損・減損の処理について、単年度の税額だけにとどまらず、会計上の整合性、税務調整、資料保存、金融機関への説明、そして将来の売却・清算・再編への影響まで含めて検討いたします。
棚卸資産の評価損、固定資産の減損、有価証券・子会社株式の評価損、税効果会計や別表管理にご不安がある場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、どうぞお気軽にご相談ください。
振り返り|評価損・減損・有価証券評価の重要ポイント
| 論点 | 重要ポイント | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 基本姿勢 | 会計上の評価損・減損と税務上の損金算入は別判断 | 会計処理をそのまま申告に反映しない |
| 法人税法の原則 | 資産の評価換えによる評価損は原則損金不算入 | 法定事実があるかを確認する |
| 判定単位 | 有価証券は銘柄ごと、棚卸資産は種類等ごと | 判定単位を誤ると説明が難しくなる |
| 棚卸資産 | 低価法と特別な評価損を分ける | 物価変動・過剰生産・建値変更だけでは不十分 |
| 棚卸資産の資料 | 滞留在庫、販売実績、値引実績、廃棄記録 | 決算時だけでなく月次管理が重要 |
| 固定資産減損 | 会計上は将来CF・回収可能価額で判断 | 税務上は法令上の特別事実が必要 |
| 固定資産評価損 | 遊休、転用、災害損傷等を確認 | 旧式化、償却不足、取得価額が高いことだけでは不足 |
| 上場株式 | おおむね50%超の下落と回復可能性を確認 | 50%下落だけでなく合理的な回復可能性判断が必要 |
| 非上場株式 | 発行法人の資産状態の著しい悪化を確認 | 取得時純資産との比較、法的整理、実態純資産が重要 |
| 子会社株式 | グループ内支援、清算、増資、債務免除と関係 | 完全支配関係・通算制度の制限にも注意 |
| 回復可能性 | 判断時点は原則として事業年度末 | 事後的な時価回復だけで遡及是正するものではない |
| 税務調整 | 損金不算入なら別表四加算・別表五(一)管理 | 将来売却・除却時の認容漏れを防ぐ |
| 税効果会計 | 一時差異・繰延税金資産の回収可能性を検討 | 評価損否認額を将来解消できるかが重要 |
| 説明資料 | 評価資料、稟議、議事録、専門家意見を残す | 税務調査・金融機関・M&Aで説明できる状態にする |
| 経営判断 | 評価損・減損は資産管理と投資判断の見直し | 節税目的だけでなく将来の選択肢を意識する |