法人税の欠損金制度の基本|赤字を将来の税務判断にどう活かすか

会社が赤字になった年度は、その事業年度だけを見れば、法人税の負担が小さくなる、あるいは発生しないということがあります。

ただ、法人税務で本当に重要なのは、赤字になった事業年度の申告を「税金が出ないのだから簡単だ」と考えないことです。

法人税法上の欠損金は、将来の黒字と相殺できる可能性を持っています。つまり赤字年度の申告内容は、将来の税負担や資金繰り、事業計画、金融機関への説明、さらにはM&A・組織再編・事業承継の選択肢にまで影響していきます。

とりわけ中小・中堅企業では、赤字年度の申告が軽く扱われがちです。

「今期は赤字だから法人税は出ない」 「欠損金は翌期以降に使えるはず」 「申告書は例年どおり出しておけばよい」

このような感覚のまま進めていると、後になって欠損金が使えない、金額が正しく管理されていない、組織再編やM&Aの場面で利用制限が問題になる、といった事態が生じることがあります。

本稿では、法人税の欠損金制度のうち、まず押さえておきたい基本である「青色欠損金の繰越控除」を中心に、実務上どのように管理すべきかを整理していきます。

なお、制度内容は改正により変わる可能性があります。本稿は、国税庁が公表している令和7年4月1日現在法令等に基づくタックスアンサー、および令和8年4月1日以後終了事業年度等分の法人税申告書別表情報を確認したうえで記載しています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
出典:国税庁|令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係

目次

欠損金とは何か

法人税は、基本的に各事業年度の所得金額に対して課税されます。

この所得金額は、会計上の利益そのものではありません。会計上の利益を出発点として、法人税法上の益金・損金の考え方により税務調整を行って計算されるものです。

こうした税務上の所得計算の結果、損金の額が益金の額を上回る場合に生じるマイナス部分が、法人税法上の欠損金にあたります。

ここで注意しておきたいのは、「会計上の赤字」と「法人税法上の欠損金」が必ずしも一致しないという点です。

会計上は赤字であっても、交際費、役員給与、寄附金、減価償却超過額、評価損といった税務調整の結果、法人税法上は課税所得が生じることがあります。反対に、会計上の利益が小さくても、過年度から繰り越された欠損金を控除することで、当期の課税所得が圧縮されることもあります。

そのため欠損金を理解するには、損益計算書の当期純損失を見るだけでは足りません。法人税申告書上で、別表四により所得金額を確認し、別表七(一)で欠損金の発生・控除・翌期繰越額を確認していく必要があります。

欠損金制度は「赤字の救済」だけではない

欠損金の繰越控除は、赤字になった法人が将来黒字になったときに、その黒字と過去の欠損金を相殺できる制度です。

この制度だけを見ていると、欠損金は「将来の節税材料」のように映ります。もちろん、税負担の軽減効果は重要です。ただ、実務上はそれだけにとどまりません。

欠損金は、次のような場面で会社の判断に影響してきます。

  • 将来黒字化したときの法人税負担の見通し
  • 資金繰り計画と納税予測
  • 金融機関に提出する事業計画
  • 繰延税金資産の回収可能性
  • グループ通算制度の適用判断
  • 合併・会社分割・M&A時の税務デューデリジェンス
  • 債務超過会社や再生局面での債務免除益への対応
  • 解散・清算時の期限切れ欠損金の検討

つまり欠損金は、「過去の赤字の記録」ではなく、将来の税務・会計・財務判断に使うべき情報だということです。

特に、その赤字が一時的なものなのか、事業構造上の赤字なのか、投資先行によるものなのか、あるいは粉飾修正や貸倒処理によるものなのかによって、欠損金の意味は大きく変わってきます。将来の税負担を考えるうえでも、金融機関に業績回復を説明するうえでも、欠損金の発生原因を整理しておくことが重要です。

青色欠損金の繰越控除を受けるための基本要件

青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、一定の要件を満たすことで、翌期以降の所得金額の計算上、損金の額に算入できます。

国税庁は、欠損金の繰越控除をする法人について、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人と説明しています。欠損金が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度に提出した申告書が白色申告書であっても、その欠損金については繰越控除の規定が適用されるとされています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

実務上は、次の3点を確認しておく必要があります。

1つ目は、欠損金が生じた事業年度に、青色申告書である確定申告書を提出していることです。青色申告の承認があるだけでは足りず、実際に青色申告書として確定申告書を提出していることが前提になります。

2つ目は、その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していることです。欠損金を使う年度だけ申告していればよいわけではなく、欠損金が生じた年度から利用年度までの申告の連続性が問われます。

3つ目は、欠損金の金額を申告書上で適切に管理していることです。別表七(一)で、発生年度、当期控除額、翌期繰越額を継続的に管理していなければ、後から欠損金の残高を正しく説明することが難しくなります。

繰越期間は原則10年

現在、繰越控除の対象となる欠損金額は、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額です。ただし、平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額については、繰越期間は9年とされています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

この「10年」という期間は、単に長く使えるという意味ではありません。

事業計画のうえでは、10年以内に欠損金を使い切れるだけの課税所得が発生するかどうかを見通す必要があります。税効果会計を適用している会社であれば、繰延税金資産の回収可能性にも関わってきます。M&Aや組織再編を検討する場面では、欠損金の発生年度、残存期間、利用制限の有無が、評価やスキーム検討に影響します。

また、古い年度から順次控除されていくため、欠損金が複数年度にわたって発生している場合には、どの年度の欠損金がいつ消滅する可能性があるのかを管理しておく必要があります。国税庁も、繰越欠損金が2以上の事業年度で生じている場合には、最も古い事業年度に生じたものから順次損金算入すると説明しています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

控除できる金額には限度がある

欠損金があるからといって、すべての法人が当期所得の全額を自由に控除できるわけではありません。

中小法人等に該当する場合には、基本的に繰越控除前の所得金額を限度として欠損金を控除できます。一方、中小法人等以外の法人については、一定の例外を除き、平成30年4月1日以後開始事業年度では、繰越控除前所得金額の50%が損金算入限度額とされています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

この控除限度額は、資金繰りに直結します。

たとえば、過年度に大きな欠損金が残っていたとしても、中小法人等に該当しない会社では、黒字化した年度に所得の全額を欠損金で消せるとは限りません。課税所得の一部に法人税が発生し、納税資金が必要になる可能性があります。

そのため業績回復の局面では、「繰越欠損金があるから当面税金は出ない」と単純に判断するのではなく、次の点を確認しておく必要があります。

  • 自社が中小法人等に該当するか
  • 100%子法人等や大通算法人に該当しないか
  • 欠損金の残高と発生年度
  • 当期以降の課税所得の見通し
  • 控除限度額を踏まえた納税予測
  • 地方税・事業税への影響

特に、資本金が1億円以下であっても、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人など、一定の法人は中小企業向け特例措置の適用を受けられない場合があります。国税庁は、このような法人について、繰越欠損金の損金算入制限の不適用、欠損金の繰戻しによる還付制度などの中小企業向け特例措置が不適用になると説明しています。
出典:国税庁|No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について

中小法人等かどうかは、資本金だけで判断しない

欠損金の控除限度額を考えるうえで、中小法人等に該当するかどうかは重要な論点です。

しかし実務上、「資本金1億円以下だから中小法人等」と即断するのは危険です。大法人との完全支配関係、複数の大法人による完全支配関係、グループ通算制度における大通算法人への該当性などを確認する必要があります。

この判定は、単なる税率の問題ではありません。欠損金の控除限度額をはじめ、貸倒引当金、交際費、軽減税率、繰戻還付など、複数の中小企業向け特例に影響します。

特に、M&Aで大法人グループに入った会社、資本政策により株主構成が変わった会社、グループ通算制度を適用している会社では、従来と同じ感覚で欠損金の利用可能額を見積もると、誤る可能性があります。

別表七(一)は欠損金管理の中心資料

法人税申告書で欠損金を管理する中心資料は、別表七(一)です。

令和8年4月1日以後終了事業年度分の法人税等各種別表においても、国税庁は別表七(一)として「欠損金の損金算入等に関する明細書」を掲載しています。また、適格組織再編成等が行われた場合の調整後の控除未済欠損金額の計算、通算法人の欠損金の翌期繰越額の計算、解散の場合の欠損金の損金算入などに関する別表・付表も用意されています。
出典:国税庁|令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係

別表七(一)では、欠損金について主に次の情報を管理します。

  • 欠損金が生じた事業年度
  • 欠損金の種類
  • 当期首に残っている控除未済欠損金額
  • 当期に損金算入した金額
  • 繰戻還付の対象とした金額
  • 翌期に繰り越す金額

ここで重要なのは、別表七(一)が単なる申告書添付資料ではなく、将来の税務判断に使う管理表だという点です。

たとえば、数年後に黒字化したとき、M&Aの買い手が税務デューデリジェンスを行うとき、金融機関に将来の納税額を説明するとき、あるいは組織再編で欠損金の引継ぎや使用制限を検討するときには、過去の別表七(一)の整合性が確認されます。

過去申告書の別表七(一)と別表四、別表五(一)、決算書、税務調査の修正内容が整合していない場合には、欠損金の残高そのものに疑義が生じます。

なお、グループ通算制度では、繰越欠損金についても単体納税制度と同じく各通算法人で別表七(一)を作成します。一方で、法人税・住民税・事業税で欠損金の金額が異なり得るため、税目ごとに区分して管理する必要があります。

欠損金を使う順番と「使えない欠損金」

欠損金は、発生したものがすべて永久に残るわけではありません。繰越期間を経過すれば失効します。また、過去に繰越控除で使った金額や、繰戻還付の計算の基礎となった金額を、再度利用することはできません。

さらに、一定の特殊な局面では、欠損金の利用が制限されます。

代表的なものとして、次のような場面が挙げられます。

  • 他の者による特定支配関係が生じた欠損等法人に一定の事由が生じた場合
  • 適格合併等により欠損金の引継ぎ・使用制限が問題になる場合
  • グループ通算制度の開始・加入・離脱がある場合
  • 債務超過会社や赤字会社をM&A・組織再編の対象にする場合
  • 解散・清算により期限切れ欠損金の損金算入を検討する場合

国税庁は、欠損等法人が他の者による特定支配関係を有することとなった後、一定期間内に旧事業の全部廃止や、旧事業規模のおおむね5倍を超える資金借入れ等の一定事由に該当する場合には、その該当事業年度以後、一定の欠損金について繰越控除規定が適用されないと説明しています。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

この点は、M&Aで赤字会社を買収する場合や、事業休止状態の会社を活用する場合に、特に重要になります。過去の欠損金を使える前提でスキームを組んでも、支配関係の変化や事業内容の変更によって、利用制限が生じる可能性があるからです。

繰戻還付との違い

欠損金制度には、繰越控除だけでなく、欠損金の繰戻しによる還付制度もあります。

繰越控除は、赤字を将来の黒字と相殺する制度です。

これに対して繰戻還付は、一定の欠損金を過去の所得に繰り戻し、過去に納付した法人税額の還付を請求する制度です。

国税庁は、各事業年度の欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求する場合、解散等の事実が生じた場合、災害損失欠損金額が生じた場合などについて、欠損金の繰戻しによる還付請求の手続を案内しています。
出典:国税庁|C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求

繰戻還付は、資金繰りに直接効いてくる制度です。赤字年度に過去の法人税の還付を受けられれば、資金流出を抑える効果があります。

ただし、繰戻還付の適用可否、提出時期、対象法人、解散等の場合の取扱い、災害損失の場合の取扱いについては、個別に確認が必要です。また、繰戻還付の計算の基礎となった欠損金は、繰越控除の対象から除かれます。したがって、繰戻還付を受けるのか、将来の繰越控除として残すのかは、資金繰り、将来利益、税率、金融機関対応を踏まえて判断すべきものです。

欠損金がある年度ほど、帳簿書類の保存が重要になる

欠損金を将来使うためには、申告書上の金額だけでなく、その欠損金が正しく生じたことを説明できる帳簿・証憑が必要です。

国税庁は、法人の帳簿書類について原則7年間の保存を求めています。ただし、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度については、保存期間が10年間、平成30年4月1日前開始事業年度は9年間になると説明しています。
出典:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間

これは実務上、非常に重要な点です。

欠損金は、発生年度から長い年月が経過した後に使うことがあります。将来の税務調査で過年度の欠損金残高が問題になったとき、発生年度の帳簿、決算書、申告書、請求書、契約書、固定資産台帳、棚卸資料、貸倒関係資料などが残っていなければ、欠損金の正当性を説明しにくくなります。

特に、次のような赤字要因がある年度は、資料を丁寧に残しておくべきです。

  • 多額の貸倒損失
  • 棚卸資産の評価損・廃棄損
  • 固定資産の除却損・評価損
  • 役員退職金
  • 関係会社支援損
  • 債権放棄・債務免除
  • 過年度修正
  • 保険解約損益
  • 組織再編・事業譲渡
  • 災害損失

欠損金を「将来使う税務資産」と考えるなら、その取得原価にあたるものは、赤字年度の申告品質と保存資料だといえます。

欠損金と税効果会計

税効果会計を適用する会社では、繰越欠損金は繰延税金資産の検討対象になります。

税効果会計は、会計上の利益と税務上の課税所得の差異を調整し、法人税等を税引前利益と合理的に対応させる会計処理です。欠損金が将来の課税所得と相殺され、将来の法人税等を減少させると見込まれる場合には、一定の範囲で繰延税金資産の計上が検討されます。税効果会計では、会計上の資産・負債と課税所得計算上の資産・負債の相違を調整対象とし、法人税等と税引前利益の合理的な対応を図る考え方が基礎になります。

ただし、欠損金があるからといって、常に繰延税金資産を計上できるわけではありません。将来課税所得の見積り、事業計画の合理性、過去の課税所得の推移、赤字発生原因、将来減算一時差異の解消スケジュールなどを踏まえて、回収可能性を判断する必要があります。

ここで重要なのは、法人税申告上の欠損金管理と、会計上の繰延税金資産の検討は別物でありながら、密接に関係しているということです。

税務上は、要件を満たせば欠損金を繰り越せます。

会計上は、その欠損金による将来の税金減額効果を資産として計上できるかどうかを、別途検討することになります。

したがって、赤字会社が事業計画を作成する際には、単に「欠損金があるから将来税金が減る」と考えるのではなく、将来の課税所得がどの程度見込めるのか、その見込みはどの資料で説明できるのかを整理しておく必要があります。

グループ通算制度を適用する場合には、繰越欠損金の回収可能性も、特定欠損金と非特定欠損金に分けて検討する必要があります。特定欠損金は原則としてその通算法人の所得を限度に控除され、非特定欠損金は通算グループ全体の所得と関係するため、回収可能性の見方が異なるからです。

組織再編・M&Aでは欠損金の価値を慎重に見る

欠損金は、M&Aや組織再編の場面で重要な検討項目になります。

買収対象会社に多額の繰越欠損金がある場合、買い手は将来の税負担軽減効果を期待することがあります。しかし、欠損金は「そのまま使える資産」とは限りません。

組織再編税制では、適格合併により一定の要件を満たす場合に、被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことができます。一方で、繰越欠損金の不当利用を防止するため、支配関係やみなし共同事業要件などに応じて、引継制限や使用制限が設けられています。適格組織再編成では資産・負債が簿価移転される一方、欠損金の引継ぎや使用に制限が置かれる場面があり、特定資産譲渡等損失額の損金不算入も欠損金利用と密接に関係します。

そのためM&Aや組織再編の前には、少なくとも次の事項を確認すべきです。

  • 欠損金の発生年度
  • 残存期間
  • 青色申告・連続申告の状況
  • 税務調査・修正申告の履歴
  • 事業内容の継続性
  • 支配関係の変化
  • 過去の組織再編の有無
  • 含み損資産の有無
  • 別表七(一)・付表の整合性
  • 欠損金を前提とした買収価格への反映の妥当性

欠損金を過大に評価してしまうと、買収後に想定した税務メリットが得られない可能性があります。反対に、欠損金を正しく管理していれば、事業計画や再編スキームを検討するうえで重要な材料になります。

赤字年度の申告で確認すべき実務ポイント

赤字年度の法人税申告では、納税額が少ないことに安心するのではなく、将来使える欠損金を正しく残すことが重要です。

少なくとも、次の点は確認しておいてください。

1. 青色申告の承認と申告書の提出状況

欠損金が生じた年度に、青色申告書である確定申告書を提出しているかを確認します。

青色申告の承認取消し、期限後申告、無申告がある場合には、欠損金の利用に影響する可能性があります。

2. 会計上の赤字と税務上の欠損金の差異

損益計算書が赤字であっても、税務調整後の所得金額・欠損金額は異なります。

別表四で加算・減算項目を確認し、欠損金額がどのように計算されているかを把握します。

3. 別表七(一)の記載

発生年度別に欠損金が正しく記載されているか、当期控除額、繰戻還付の対象額、翌期繰越額が整合しているかを確認します。

4. 別表五(一)との整合性

欠損金そのものは別表七(一)で管理しますが、税務調整の留保項目や利益積立金額は別表五(一)に影響します。

過年度修正、評価損、貸倒損失、債務免除益などがある場合には、別表五(一)との整合性も確認が必要です。

5. 帳簿書類・証憑の保存

赤字の原因となった取引について、契約書、請求書、稟議書、議事録、固定資産台帳、棚卸資料、貸倒関係資料などを保存します。

欠損金が将来使われる時点では、発生年度から長期間が経過していることが多いため、資料保存の重要性は通常年度以上に高くなります。

6. 将来利益と納税予測

繰越欠損金がある場合でも、将来の黒字額、控除限度額、中小法人等の該当性によって納税額は変わります。

資金繰り表や事業計画には、欠損金の利用見込みを反映させるべきです。

7. 特殊局面の有無

次のような予定がある場合には、欠損金の利用制限や別表付表の検討が必要になります。

  • グループ通算制度の適用
  • 合併・会社分割
  • 株式譲渡・M&A
  • 大法人グループへの加入
  • 事業休止会社の再稼働
  • 債務免除・DES
  • 解散・清算

欠損金を経営判断に活かす視点

欠損金制度は、税務上のルールであると同時に、経営判断の材料でもあります。

赤字年度の申告後、経営者や財務責任者が把握しておくべきなのは、単に「繰越欠損金がいくらあるか」ではありません。

重要なのは、次のような問いです。

  • その欠損金は、いつ発生したものか
  • あと何年使えるのか
  • どの程度の将来利益があれば使い切れるのか
  • 中小法人等として100%控除できるのか、50%制限を受けるのか
  • 繰戻還付を検討した方が資金繰り上有利か
  • 税効果会計上、繰延税金資産としてどこまで認識できるのか
  • M&A・組織再編で利用制限が生じないか
  • 金融機関に、赤字の原因と今後の回復計画を説明できるか
  • 税務調査で、欠損金発生年度の損失処理を説明できるか

欠損金は、申告書の中に残る数字です。

しかし、その数字の背景には、会社の事業構造、投資判断、取引判断、資金繰り、経営改善の履歴が反映されています。

したがって、欠損金を正しく管理することは、将来の税負担を抑えるだけでなく、会社の過去の意思決定を整理し、今後の経営計画を現実的に作ることにもつながっていきます。

専門家に相談する前に整理しておきたい資料

欠損金について専門家に相談する場合、次の資料を整理しておくと、検討が具体的になります。

  • 過去10年分の法人税申告書一式
  • 別表七(一)および関連付表
  • 別表四
  • 別表五(一)
  • 決算書・勘定科目内訳明細書
  • 青色申告承認申請書・承認状況が分かる資料
  • 税務調査結果、修正申告書、更正通知書
  • 欠損金発生年度の主要な損失資料
  • 貸倒、評価損、除却損、役員退職金、債務免除に関する資料
  • 将来の事業計画・資金繰り表
  • グループ会社がある場合の資本関係図
  • M&A・組織再編を検討している場合のスキーム資料

欠損金の検討は、申告書だけで完結するものではありません。

将来利益の見込み、資金繰り、組織再編、税効果会計、金融機関対応まで含めて整理することで、はじめて実務判断に使える情報になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について

欠損金は、赤字年度だけの問題ではありません。

将来の法人税負担、繰戻還付による資金繰り、繰延税金資産の回収可能性、M&A・組織再編時の税務リスク、解散・清算時の債務免除益への対応など、会社の重要な判断に影響します。

特に、過年度から欠損金が積み上がっている会社、黒字化が見えてきた会社、グループ会社を有する会社、M&A・組織再編・事業承継を検討している会社では、欠損金を「残高」ではなく、「使えるか、いつ使えるか、どのような制限があるか」という観点で確認することが重要です。

自社の繰越欠損金の状況を整理したい、赤字年度の申告内容に不安がある、将来の納税予測や税効果会計との関係を確認したい、M&A・組織再編前に欠損金の取扱いを確認したい。このようなお考えがありましたら、犬飼公認会計士・税理士事務所のお問い合わせページからご相談ください。

申告書の数字だけでなく、取引実態、会計処理、税務調整、資料管理、将来計画まで確認したうえで、会社としてどのように判断すべきかを整理いたします。

重要ポイントの振り返り

項目実務上のポイント
欠損金の意味会計上の赤字ではなく、法人税法上の所得計算で生じるマイナスを管理する
基本要件欠損金発生年度に青色申告書である確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出する
繰越期間原則10年。平成30年4月1日前開始事業年度に生じた欠損金は9年
控除限度額中小法人等は原則として所得金額まで控除可能。中小法人等以外は一定の例外を除き所得金額の50%制限
中小法人等判定資本金だけでなく、大法人による完全支配関係や大通算法人該当性も確認する
別表七(一)欠損金の発生、当期控除、翌期繰越を管理する中心資料
繰戻還付将来に繰り越すのではなく、過去の法人税還付を受ける制度。資金繰りへの影響が大きい
帳簿書類保存欠損金が生じた年度は10年間保存が必要になる場合がある
税効果会計欠損金は繰延税金資産の検討対象。ただし将来課税所得による回収可能性判断が必要
M&A・組織再編欠損金は価値評価に影響するが、引継制限・使用制限により使えない場合がある
経営判断欠損金は過去の赤字ではなく、将来の税負担・資金繰り・事業計画に関わる情報として管理する
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