グループ会社がある場合の法人税務の全体像|単体申告からグループ経営税務へ

グループ会社がある場合、法人税務は「各社がそれぞれ申告すれば終わり」という単純なものではありません。

たしかに、法人税の申告は原則として法人ごとに行います。親会社も、子会社も、兄弟会社も、関連会社も、それぞれが別個の法人です。会計処理を行い、課税所得を計算し、申告・納付を進めていく点では、いずれも同じです。

しかし税務の世界では、会社間の資本関係や取引関係のあり方によって、通常の単体法人とは異なる取扱いが生じてきます。

とりわけ、100%の支配関係にある会社どうしでは、注意すべき論点が一気に増えます。資産譲渡、寄附金、受取配当、債権債務、出向・転籍、人件費負担、組織再編、M&A、欠損金、税額控除、税効果会計。これらはいずれも、単体申告だけを見ていると見落としやすいところです。

本記事では、グループ会社がある場合に、まず何を押さえておくべきかを整理します。グループ通算制度の詳細な計算にまでは踏み込みません。単体申告からグループ税務へと視野を広げるための、全体像の確認にとどめます。

グループ通算制度については、国税庁が制度概要、Q&A、取扱通達、様式、別表の記載例などを公表しています。制度そのものは、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
出典:国税庁|グループ通算制度 出典:国税庁|グループ通算制度に関するQ&A

目次

グループ会社があるだけで、なぜ法人税務が複雑になるのか

グループ会社があると法人税務が複雑になるのは、会社法上・会計上は別会社であっても、税務上は「資本関係のある会社間で、所得や価値を移転できてしまう可能性」が問題になるからです。

たとえばグループ会社どうしでは、次のような取引が日常的に行われます。

  • 親会社から子会社への資金貸付
  • 子会社への経営支援
  • グループ会社間での不動産・設備・株式の譲渡
  • 親会社による子会社の債務保証
  • 子会社への役員・従業員の出向
  • グループ内での業務委託、管理料、ロイヤリティの授受
  • 赤字会社と黒字会社の再編
  • 子会社株式の売却や清算
  • 持株会社化や事業承継のための組織再編

これらは、表面的には第三者間取引と変わらないように見えます。しかし実際には、親会社の方針、グループ全体の資金繰り、赤字会社の支援、事業再編、金融機関対応、承継対策といった事情を背景に行われていることが少なくありません。

そのため税務上は、いくつもの確認が必要になります。その取引条件は合理的か。無償・低額・高額の取引になっていないか。寄附金や受贈益が発生しないか。譲渡損益をいつ認識するのか。欠損金を不当に利用していないか。こうした点を一つひとつ見ていくことになります。

つまりグループ法人税務では、個々の仕訳を追うだけでは足りません。資本関係、取引の目的、契約内容、対価の設定、資金の移動、意思決定の経緯、さらには将来の再編の可能性まで含めて、全体を整理していく必要があります。

まず区別すべき3つのレイヤー

グループ会社がある場合の法人税務を理解するうえでは、次の3つを分けて考えることが大切です。

1つ目は、各法人がそれぞれ申告する「単体申告」です。

2つ目は、完全支配関係など一定の資本関係がある場合に、個別取引ごとに強制的に適用される「グループ法人税制」です。

3つ目は、100%グループ内の一定の法人が承認を受けて適用する「グループ通算制度」です。

この3つを混同してしまうと、実務の判断を誤りやすくなります。

たとえば、グループ通算制度を採用していない会社であっても、100%グループ内の資産譲渡や寄附金については、グループ法人税制の問題が生じることがあります。逆に、グループ通算制度を採用しているからといって、すべての税金やすべての取引が単純にグループ一体で処理されるわけでもありません。

グループ通算制度は、100%の資本関係にある企業グループ内の黒字と赤字を一定の仕組みで通算しながら、各法人がそれぞれ法人税額の計算・申告を行う制度です。かつての連結納税制度とは異なり、個別申告方式であること、損益通算・欠損金通算をプロラタ計算で行うこと、修正・更正による他法人への影響を遮断する仕組みがあることなどが特徴として挙げられます。

単体申告とグループ税務の違い

単体申告だけを前提にすると、法人税務は「その会社の利益に対して、その会社が税金を納める」という構造に見えます。

ところがグループ会社がある場合、その会社単体の利益だけを見ていても、実態を十分にはつかめないことがあります。

たとえば、ある会社が赤字だとします。その赤字が単なる業績不振によるものなのか、グループ内の価格設定によるものなのか、親会社の方針による費用負担によるものなのか、あるいは将来の再編を見据えた先行投資によるものなのか。どれに当たるかによって、税務上の見方は変わってきます。

黒字会社が赤字子会社を支援している場合も同じです。その支援が事業上合理的なものなのか、寄附金に該当し得るものなのか、債権放棄や貸倒損失として整理できるものなのか、それとも組織再編や清算を検討すべき局面なのか。前提が違えば、結論も変わります。

こうしたことから、グループ会社がある場合の法人税務では、単体の損益計算書だけでなく、次のような情報をあわせて確認する必要があります。

  • グループ全体の資本関係
  • 各社の事業内容と機能分担
  • 各社の収益力と資金繰り
  • グループ会社間の取引内容
  • 取引価格や費用負担の決め方
  • 貸付金、未収金、未払金、保証債務の状況
  • 各社の繰越欠損金
  • 将来の再編、M&A、承継、清算の予定
  • 会計上の連結・税効果会計への影響

法人税務を経営判断に結び付けていくには、各社の申告書を個別に眺めるだけでは足りません。グループ全体として、利益、損失、資金、リスクがどこに偏っているのかを把握しておくことが重要です。

「完全支配関係」があるかどうかが出発点になる

グループ税務で最初に確認すべきは、資本関係です。

なかでも重要なのが「完全支配関係」です。完全支配関係とは、簡潔にいえば、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する一定の関係、あるいは一の者との間にその関係がある法人相互の関係をいいます。国税庁のQ&Aでは、完全支配関係と通算完全支配関係の意義が整理されており、通算承認を受けられる親法人による完全支配関係は、通算除外法人や外国法人が介在しない一定の関係に限られるとされています。
出典:国税庁|完全支配関係と通算完全支配関係の意義

ここで気をつけたいのは、「親子会社である」「関連会社である」といった感覚的な区分では足りない、ということです。

税務上は、持株割合、自己株式の有無、間接保有、兄弟会社関係、外国法人の介在、通算除外法人の有無などを、一つずつ確認していく必要があります。

さらに、同じ「完全支配関係」といっても、グループ法人税制で問題になる完全支配関係と、グループ通算制度で問題になる通算完全支配関係とは、必ずしも同じ範囲ではありません。

そこでグループ会社がある場合には、まず出資関係図を作成し、次の点を確認するところから始めるのが実務上の出発点になります。

  • 誰がどの会社の株式を保有しているか
  • 直接保有か、間接保有か
  • 100%保有か、それ未満か
  • 自己株式をどう考慮するか
  • 従業員持株会や新株予約権があるか
  • 外国法人や投資法人等が介在していないか
  • 清算中、破産手続中、青色申告取消後など、通算除外に関わる法人がないか

資本関係の整理を曖昧にしたまま、グループ会社間取引やグループ通算制度の検討に進んでしまうと、適用対象法人の判定、届出、申告、税額計算、税務調査対応と、あらゆる場面で誤りが生じやすくなります。

グループ法人税制は「制度選択」ではなく、取引ごとに問題になる

グループ通算制度は、承認を受けたうえで適用する制度です。

一方、グループ法人税制は、一定の完全支配関係がある法人間取引について、制度を選択したかどうかにかかわらず問題になります。

グループ法人税制では、完全支配関係、受取配当等の益金不算入、寄附修正、グループ法人間の資産譲渡、現物分配などが重要論点として整理されています。国税庁は、平成22年度税制改正に係るグループ法人税制関係の質疑応答事例として、完全支配関係、受取配当等、寄附修正、完全支配関係法人間の資産譲渡等についての情報を公表しています。
出典:国税庁|平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)

実務で特に注意しておきたいのは、次のような取引です。

  • 100%グループ内で土地、有価証券、固定資産などを譲渡する
  • 親会社が子会社を無償で支援する
  • 子会社の債務を免除する
  • グループ会社間で管理料、業務委託料、ロイヤリティを設定する
  • 子会社株式を譲渡する
  • グループ内で現物分配や組織再編を行う
  • 債権放棄、DES、清算、合併などにより赤字会社を整理する

たとえば、100%グループ法人間の一定の資産譲渡では、会計上は譲渡損益を認識していても、税務上は譲渡損益の繰延べが問題になります。また、100%グループ法人間の債権に対する貸倒引当金や、通算会社間の譲渡損益調整資産の譲渡損益についても、単体納税制度かグループ通算制度かにかかわらず、グループ法人税制上の取扱いを確認しておく必要があります。

ここで大切なのは、「グループ内だから自由に処理できる」と考えないことです。

むしろグループ内だからこそ、第三者間取引以上に、取引の目的、価格の設定、契約書、社内承認、資金の流れを、あとから説明できる形で残しておく必要があります。

グループ通算制度とは何か

グループ通算制度は、一定の100%グループ内の法人について、損益通算や欠損金の通算を行いながら、各法人がそれぞれ法人税額を計算し、申告する制度です。

令和2年度税制改正により、従来の連結納税制度が見直され、グループ通算制度へと移行しました。財務省の資料では、連結納税制度について、企業グループ内の各法人を納税単位としつつ、損益通算等の調整を行う仕組みへ移行するものと説明されています。適用時期は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度からとされています。
出典:財務省|ファイナンス 2020年2月号

連結納税制度では、グループ全体を一つの納税単位として計算する色彩が強く、修正・更正があると他の法人の計算にも波及しやすい構造でした。

これに対してグループ通算制度は、各法人がそれぞれ申告する方式を基本としながら、一定の損益通算や税額調整を行います。制度の簡素化や事務負担の軽減を意識した仕組みではあるものの、開始・加入・離脱、欠損金、時価評価、投資簿価修正、税効果会計など、実務判断は決して単純ではありません。

グループ通算制度を理解するにあたっては、少なくとも次の点は押さえておきたいところです。

  • 通算親法人と通算子法人の範囲
  • 通算完全支配関係
  • 承認申請の期限と手続
  • 損益通算
  • 欠損金の通算
  • 開始・加入時の時価評価
  • 開始・加入前欠損金の切捨て・利用制限
  • 修正・更正時の遮断措置
  • 地方税との違い
  • 研究開発税制、外国税額控除等のグループ調整
  • 通算税効果額の社内精算
  • 税効果会計と事業計画への影響

本記事では詳細な計算には入りませんが、グループ通算制度を「赤字会社と黒字会社を単純に相殺できる便利な制度」とだけ捉えるのは、やや危うい理解です。

制度の適用によって税負担が減ることはあります。しかしその一方で、欠損金の使い方が制限される場合、導入時に時価評価や欠損金切捨てが問題になる場合、地方税では期待した効果が出ない場合、会計上の繰延税金資産に影響する場合もあります。

通算親法人・通算子法人の範囲を誤ると制度設計が崩れる

グループ通算制度を検討する際、最初に確認すべきは「どの法人が通算グループに入るのか」です。

通算親法人となることができる法人は、内国法人である普通法人または協同組合等に限られます。清算中の法人など、一定の法人は除かれます。
出典:国税庁|通算親法人となることができる法人

通算子法人となることができる法人は、通算親法人となる法人、または通算親法人による一定の完全支配関係がある内国法人に限られます。ただし、通算除外法人は通算子法人になることができません。
出典:国税庁|通算子法人となることができる法人

この判定は、単に「100%子会社かどうか」を見るだけでは足りません。

実務上は、通算子法人にできない法人が含まれていないか、外国法人が介在していないか、清算中・破産手続中・青色申告取消後の法人がないか、過去に通算制度の取りやめをしていないか、といった点を確認していく必要があります。

また、グループ通算制度は、都合のよい法人だけを選んで適用できる制度ではありません。通算親法人との間に一定の完全支配関係がある内国法人については、原則としてグループ単位で検討する必要があります。

したがって制度の検討に入る前には、必ず出資関係図とグループ一覧を整備し、対象法人・除外法人・検討対象外法人を明確にしておくことが欠かせません。

承認申請と資料整備は、制度検討の初期段階で行う

グループ通算制度を適用するには、承認申請が必要です。

国税庁の手続案内によれば、原則として、グループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3月前の日が提出期限とされています。また添付書類として、通算子法人となる法人に対する持株割合を記載した出資関係図、通算親法人となる法人およびすべての通算子法人となる法人等を記載したグループ一覧が掲げられています。
出典:国税庁|C3-1 グループ通算制度の承認の申請

この手続面を軽く見てしまうと、制度の適用そのものに影響します。

グループ通算制度は、決算直前になって「税金が減りそうだから適用したい」と思い立って、間に合うような制度ではありません。

導入を検討する段階で、少なくとも次の資料は整理しておきたいところです。

  • 出資関係図
  • グループ会社一覧
  • 各社の決算書
  • 各社の法人税申告書・別表
  • 繰越欠損金の状況
  • 含み益・含み損のある資産
  • 子会社株式の帳簿価額
  • グループ会社間取引一覧
  • 税額控除の適用状況
  • 地方税申告の状況
  • 税効果会計の検討資料
  • 今後の組織再編、M&A、清算、承継予定

とりわけ、欠損金や含み損益を抱える法人がある場合には、制度適用前に、税務効果だけでなく、制限規定や将来の資本政策への影響まで検討しておく必要があります。

損益通算はできるが、赤字を自由に使える制度ではない

グループ通算制度の大きな特徴は、グループ内で損益通算ができることです。

黒字会社と赤字会社がある場合、一定の仕組みにより、欠損法人の通算前欠損金を所得法人の所得と通算します。

ただしこれは、「赤字会社の赤字を、自由に、好きな会社へ移せる」という意味ではありません。

ASBJの実務対応報告第42号では、損益通算について、欠損会社の通算前欠損金の合計額を、所得会社の通算前所得の合計額を限度として、所得会社の通算前所得金額の比で配分するものと定義しています。欠損金の通算についても、通算グループ全体の一定の繰越欠損金を、通算会社の損金算入限度額の比で配分するものとされています。
出典:ASBJ|実務対応報告第42号 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い

そのためグループ通算制度を検討する際には、単に「赤字会社があるから有利」と判断するのではなく、次の点を確認しておく必要があります。

  • 赤字が当期欠損金なのか、繰越欠損金なのか
  • 特定欠損金なのか、非特定欠損金なのか
  • 欠損金が切り捨てられる可能性がないか
  • 控除限度額の影響を受けるか
  • 中小通算法人に該当するか
  • 将来の黒字化見込みがあるか
  • 地方税で同じ効果が出るか
  • 税効果会計上、繰延税金資産の回収可能性にどう影響するか

特に、開始・加入前の繰越欠損金は、制度上の取扱いが重要になります。グループ通算制度では、特定欠損金について、損益通算後の個別所得を限度に控除額が計算されます。そのため、連結納税制度と比べると、欠損金の控除額が少なくなる場合があります。

開始・加入時には、時価評価と欠損金切捨てに注意する

グループ通算制度の導入時や、新たな子会社の加入時には、時価評価や欠損金切捨てが問題になることがあります。

国税庁のQ&Aでは、通算法人が時価評価除外法人に該当しない場合、または時価評価除外法人に該当しても一定の要件に当てはまる場合には、過年度の欠損金額のうち所定の金額が切り捨てられることが示されています。
出典:国税庁|通算制度の開始・加入の際の過年度の欠損金額の切捨て

この論点は、特に次のような会社で重要になります。

  • 多額の繰越欠損金を持つ会社
  • 含み損のある不動産や有価証券を持つ会社
  • 債務超過会社
  • 買収直後の子会社
  • 事業内容を変更した会社
  • グループ加入後に再編や売却を予定している会社

税務上の効果だけを見て制度適用を進めると、思わぬところでつまずきます。導入時点で欠損金が使えなくなる、将来のM&Aで子会社株式の譲渡損益に影響する、税効果会計上の繰延税金資産の評価が変わる、といった問題が生じかねません。

制度の有利・不利は、当期の法人税額だけで判断できるものではないのです。

修正・更正時の遮断措置があるからこそ、当初申告の精度が重要になる

グループ通算制度では、連結納税制度と比べて、修正・更正が他法人に波及しにくい「遮断措置」が設けられています。

国税庁のQ&Aでは、事後の税務調査により損益通算前の所得金額が当初申告と異なることとなった場合、原則として、損益通算に係る損金算入額または益金算入額は期限内申告の金額に固定して所得金額を計算することとされています。ただし、一定の場合には全体再計算が行われることも示されています。
出典:国税庁|所得の金額が当初申告と異なることとなった場合の損益通算の取扱い

遮断措置は、事務負担を軽減するための仕組みです。

ただし、これは「誤りがあっても問題にならない」という意味ではありません。むしろ逆で、当初申告時の所得金額、欠損金額、各社の調整額が、制度上の計算に大きな意味を持つことになります。だからこそ、申告前レビューの重要性はいっそう高まります。

グループ通算制度を適用する場合には、親会社だけでなく、各通算子法人の決算・申告の品質も問われます。

一社の資料遅延、勘定科目の誤り、税額控除の適用漏れ、役員給与の処理誤り、棚卸資産の計上漏れ、関係会社取引の精算漏れ。こうしたものが、グループ全体の税務管理に影響を及ぼす可能性があります。

地方税は「法人税と同じように通算される」と考えない

グループ通算制度を検討するうえで見落としやすいのが、地方税です。

法人税と地方法人税については、グループ通算制度の影響を受けます。しかし法人住民税や法人事業税については、法人税と同じように単純な損益通算が行われるわけではありません。

実務上は、法人税の計算で通算効果があったとしても、法人住民税・法人事業税では、各法人ごとの申告・納付、調整計算、外形標準課税、均等割などを、あらためて確認する必要があります。

グループ通算制度の実務整理においても、地方税については単体納税制度と同様に各通算法人で申告納付を行い、通算グループ内の所得と欠損の損益通算や繰越欠損金の通算ができないこと、住民税・事業税の課税標準計算では通算影響を排除する調整が必要になることが整理されています。

したがって制度の導入を検討する場合には、法人税だけで税負担を試算するのではなく、法人住民税、法人事業税、外形標準課税、均等割、そして地方税申告書への影響まで見ておく必要があります。

税効果会計・事業計画への影響も無視できない

グループ通算制度は、税務申告だけでなく、会計にも影響します。

ASBJの実務対応報告第42号は、グループ通算制度を適用する場合の法人税・地方法人税、税効果会計の会計処理および開示の取扱いを明らかにすることを目的としており、連結財務諸表・個別財務諸表の双方に適用されます。
出典:ASBJ|実務対応報告第42号 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い

なかでも重要になるのが、繰延税金資産の回収可能性です。

単体納税では回収可能性が乏しい将来減算一時差異や欠損金であっても、グループ通算制度のもとでは、他の通算会社の課税所得を考慮できる場合があります。その一方で、開始・加入時の欠損金切捨てや、特定欠損金の制限によって、回収可能性がかえって低下する場合もあります。

グループ通算制度に基づく税効果会計では、法人税および地方法人税に係る繰延税金資産について、将来減算一時差異は通算会社単独の課税所得だけでなく、他の通算会社の課税所得も考慮して回収可能性を判断すること、繰越欠損金は非特定欠損金と特定欠損金とで判断の考え方が異なることが整理されています。

このためグループ通算制度を検討する際には、税額の試算だけでなく、事業計画、将来課税所得、繰延税金資産、さらには金融機関への説明、株主への説明まで、視野に入れておく必要があります。

税務上は有利に見える制度選択が、会計上の利益や純資産、財務指標、借入交渉に影響を及ぼすこともあるのです。

通算税効果額の精算ルールを決めておく

グループ通算制度を適用する場合、グループ内で税負担や税効果をどのように精算するかも、重要な論点になります。

通算税効果額とは、損益通算、欠損金の通算その他のグループ通算制度に関する法人税法上の規定を適用することにより減少する法人税・地方法人税の額に相当する金額として、通算会社間で授受が行われた場合に益金または損金に算入されない金額をいいます。ASBJの実務対応報告第42号でも、通算税効果額の定義が整理されています。
出典:ASBJ|実務対応報告第42号 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い

ここで実務上問題になるのは、税額が減った会社と、その税額減少の原因となった会社とが、必ずしも同じではない、という点です。

赤字会社の欠損金によって黒字会社の税額が減少する場合、グループ内でその効果をどう配分するのか、どの会社がどの会社にいくら支払うのか、会計処理をどう行うのか。これらを決めておかないと、あとで社内説明や株主説明に困ることになります。

通算税効果額の授受については、実務上、社内規程や契約により、授受の有無、計算対象、計算方法、精算方法、精算時期を明文化しておくことが望ましいと整理されています。

グループ通算制度は税務申告の制度ではありますが、実際には、グループ内の資金精算、子会社管理、経営管理、ガバナンスの問題でもあるわけです。

グループ会社間取引で特に確認すべき法人税務論点

グループ会社がある場合、グループ通算制度を採用するかどうかにかかわらず、関係会社間取引の整理が重要になります。

なかでも次の論点は、申告前レビューで確認しておきたいところです。

1. グループ会社間の価格設定

管理料、業務委託料、ロイヤリティ、賃料、利息、保証料などは、金額の合理性が問われやすい取引です。

契約書があるか、実際に役務提供が行われているか、金額算定の根拠があるか、継続的に同じ基準で処理されているか。こうした点を確認する必要があります。

2. 親会社による子会社支援

赤字子会社への支援、債権放棄、費用負担、無利息貸付、保証料なしの債務保証などは、寄附金、受贈益、貸倒損失、債務免除益、同族会社の行為計算否認などに関係する可能性があります。

「グループ全体では必要だった」という説明だけでは足りません。その法人が支出・負担することの合理性を説明できるかどうかが問われます。

3. 固定資産・不動産・株式の移転

グループ会社間で資産を移転する場合には、譲渡損益、時価、譲渡損益調整資産、固定資産台帳、減価償却、消費税、登録免許税、不動産取得税などを確認する必要があります。

特に不動産や非上場株式は、税務上の時価が問題になりやすいため、価格の根拠を残しておくことが大切です。

4. 出向・転籍・人件費負担

出向者給与、役員出向、賞与、退職金負担、海外出向は、法人税だけでなく、源泉所得税、給与課税、寄附金、移転価格税制にもつながります。

出向契約書、給与負担合意、精算書、源泉処理、在籍関係を、あらかじめ整理しておく必要があります。

5. グループ内再編・M&A・承継への影響

グループ会社間取引は、その時点の申告だけでなく、将来の組織再編、子会社売却、事業承継、M&Aのデューデリジェンスにも影響します。

関係会社間の未精算取引、役員貸付金、債務保証、税務調査リスク、欠損金、含み損益。これらは、買い手、金融機関、後継者から確認されやすい項目です。

グループ会社がある会社で、申告前に整理すべき資料

グループ税務の判断では、申告書だけを見ても十分とはいえません。

少なくとも次の資料を整理しておくと、税務判断の質は大きく変わってきます。

  • 最新のグループ組織図
  • 株主名簿、出資関係図
  • 各社の決算書、勘定科目内訳書
  • 各社の法人税申告書、地方税申告書
  • 別表四、別表五(一)、別表七
  • 繰越欠損金の明細
  • 関係会社間取引一覧
  • 貸付金、借入金、未収入金、未払金の明細
  • グループ会社間契約書
  • 出向契約書、転籍合意書、給与負担契約
  • 固定資産台帳
  • 不動産・株式など時価評価資料
  • 債権管理資料、回収可能性資料
  • 税額控除・優遇税制の適用資料
  • 税務調査履歴
  • 今後の再編、M&A、承継、清算予定

これらの資料が整っていないと、税務上の論点を把握する前に、事実確認だけで時間を要してしまいます。

特に、親会社が子会社を複数抱えている場合には、各社の申告時期、決算期、会計処理、顧問税理士、会計システム、資料の保存状況が、ばらばらになっていることがあります。

グループ税務を適切に管理するには、税務判断に入る前に、まずグループ全体の数字と資料を「見える化」しておくことが必要です。

グループ税務でよくある誤解

グループ会社がある場合の法人税務では、次のような誤解が実務上よく見られます。

「グループ内取引だから、どの会社で利益が出ても同じ」

税務上は、同じではありません。

各法人は別個の納税主体であり、どの法人に利益が帰属するのか、どの法人が費用を負担するのかは重要です。価格設定や費用負担に合理性がなければ、寄附金、受贈益、役員給与、移転価格などの問題につながっていきます。

「100%子会社なら、資産を簿価で移せる」

会計上も税務上も、常に単純に簿価で移転できるわけではありません。

完全支配関係法人間の譲渡損益調整、組織再編税制、適格要件、時価、消費税、地方税、会計処理を、それぞれ区別して確認する必要があります。

「グループ通算を使えば、赤字会社の欠損金は全部使える」

必ずしもそうとは限りません。

欠損金には、当期欠損金、繰越欠損金、特定欠損金、非特定欠損金の区分があり、開始・加入時の切捨てや控除制限が問題になることがあります。

「法人税で有利なら、制度を採用すべき」

法人税だけで判断するのは危険です。

地方税、税効果会計、事務負担、申告期限、グループ内精算、そして将来のM&A・組織再編・子会社売却への影響まで、あわせて確認する必要があります。

「会計上の連結と税務上の通算は同じ」

同じではありません。

会計上の連結は財務報告のための制度であり、税務上のグループ通算制度とは、目的も範囲も計算も異なります。連結財務諸表を作成しているからといって、税務上当然にグループ通算制度を適用していることにはなりません。

グループ会社がある場合の法人税務は、経営判断そのものである

グループ法人税務は、単なる申告書作成の問題ではありません。

どの会社に利益を残すか。どの会社に資金を置くか。どの会社の欠損金を、どう使うか。赤字子会社を支援するのか、清算するのか、合併するのか。グループ通算制度を採用するのか。子会社を売却する前に、何を整理しておくのか。後継者には、どの会社を承継させるのか。金融機関には、グループ全体の数字をどう説明するのか。

これらはすべて、法人税務と関係しています。

税負担を軽減することは、もちろん大切です。しかし短期的な税額だけを見て判断してしまうと、将来の資金調達、M&A、組織再編、事業承継、税務調査対応の場面で、かえって不利益が生じることがあります。

グループ会社がある場合には、税務判断を「各社の申告作業」として捉えるのではなく、「グループ全体の経営管理」として捉えていく必要があります。

専門家に相談する前に整理しておきたいこと

グループ会社がある場合に専門家へ相談する際は、単に「グループ通算制度は有利ですか」と尋ねるよりも、次のように論点を整理しておくと、検討の精度が高まります。

  • 現在の資本関係はどうなっているか
  • 100%グループ内の法人はどれか
  • 各社の利益・欠損金・含み損益はどうなっているか
  • グループ会社間取引はどのような内容か
  • 契約書や精算資料は整っているか
  • 赤字会社を今後どうする予定か
  • M&A、承継、組織再編の予定があるか
  • 法人税だけでなく地方税も含めて試算しているか
  • 税効果会計や金融機関説明への影響を確認しているか
  • 税務調査で説明できる資料が残っているか

これらを整理しておくと、グループ通算制度を採用すべきかどうかだけでなく、グループ会社間取引をどう整えるべきか、申告前にどの論点を確認すべきか、将来の再編に向けて何を準備すべきかが、見えやすくなります。

グループ法人税務の整理をご相談ください

グループ会社がある場合、法人税務は単体申告だけでは完結しません。

完全支配関係、グループ法人税制、グループ通算制度、関係会社間取引、欠損金、地方税、税効果会計、そして将来の組織再編やM&Aまで含めて、早い段階で全体像を整理しておくことが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、グループ会社を有する中小・中堅企業について、申告書作成だけでなく、資本関係、関係会社間取引、税務調整、資料整備、さらには将来の再編・承継・M&Aを見据えた法人税務の整理を支援しています。

自社グループの税務論点を一度整理したい場合や、グループ通算制度の検討、関係会社間取引の見直し、子会社整理・再編前の税務確認が必要な場合は、お問い合わせページよりご相談ください。

振り返り:グループ会社がある場合に確認すべき法人税務

確認項目実務上の意味見落とした場合のリスク
資本関係完全支配関係、通算完全支配関係、対象法人を判定する基礎グループ法人税制やグループ通算制度の適用判断を誤る
単体申告とグループ税務の区別各法人の申告とグループ全体の調整を分けて理解する「グループ内だから同じ」と考え、所得帰属や費用負担を誤る
グループ法人税制100%グループ内の資産譲渡、寄附金、受取配当等を確認する譲渡損益、寄附金、受贈益、時価の処理を誤る
グループ通算制度損益通算・欠損金通算を行う制度選択を検討する欠損金切捨て、時価評価、事務負担を見落とす
欠損金当期欠損金、繰越欠損金、特定欠損金、非特定欠損金を区分する想定した節税効果が得られない
地方税法人税・地方法人税と、法人住民税・事業税を分けて確認する法人税だけで有利不利を判断してしまう
関係会社間取引契約、価格、役務提供、資金移動を確認する寄附金、受贈益、役員給与、移転価格等の問題が生じる
税効果会計繰延税金資産の回収可能性と事業計画を確認する会計利益、純資産、金融機関説明に影響する
申告前レビュー各社の申告内容とグループ全体の調整を確認する遮断措置があっても当初申告の誤りが税務管理上の問題になる
将来の再編・M&A・承継現在の処理が将来の選択肢に与える影響を確認する子会社売却、合併、承継時に税務リスクが顕在化する
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