みなし配当の基本と発生場面|自己株式取得・資本払戻し・組織再編・清算で見落としやすい株主課税

会社が「配当」として処理していないにもかかわらず、税務上は配当として課税される。こうした場面が、実務では確かに存在します。これが、みなし配当です。

みなし配当は、通常の利益配当だけに目を向けていると見落としやすい論点です。とりわけ、自己株式取得、資本剰余金の配当、減資、非適格合併、分割型分割、株式分配、解散による残余財産の分配といった取引では、会社側の会計処理や登記手続だけを追っていると、株主側で生じる配当課税や源泉徴収を取りこぼしかねません。

中小・中堅企業にとって、みなし配当は単なる税務計算の問題にとどまりません。事業承継のために会社が株式を買い取る、少数株主を整理する、資本剰余金を払い戻す、グループ再編を行う、会社を清算する。こうした経営判断の場面で、みなし配当は姿を現します。

本記事では、みなし配当の基本構造と発生場面を、法人税務・株主課税・源泉徴収・法人株主の取扱いまで含めて整理していきます。

目次

みなし配当とは何か

みなし配当とは、会社法上は「配当」と呼ばれない取引であっても、実質的には会社の利益が株主へ分配されたと評価できる場合に、税務上、配当とみなして課税する制度です。

法人税法24条1項および所得税法25条1項は、一定の事由により法人の株主等が金銭その他の資産の交付を受けた場合を対象としています。そのうえで、交付額が、当該法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式または出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分を配当等とみなす、という構造を採っています。
出典:e-Gov法令検索|法人税法
出典:e-Gov法令検索|所得税法

もう少し実務に引き寄せて言えば、こういうことです。会社から株主へ財産が交付されたとき、その交付額のうち「株主が出資した元本の払戻し」と考えられる部分を超える金額は、会社が蓄積してきた利益の分配とみなせます。この超過部分を、税務上、配当として扱う。これがみなし配当です。

基本的な考え方は、次の式で捉えると分かりやすくなります。

みなし配当の金額
= 株主が交付を受けた金銭その他の資産の価額
- その株式等に対応する資本金等の額

ここで見るべきは、会計上の勘定科目ではありません。税務上の「資本金等の額」と「利益積立金額」の考え方です。

会社法上、資本剰余金を原資として配当した場合であっても、税務上はその全額が元本の払戻しになるとは限りません。自己株式取得として処理した場合でも、株主側では、受け取った対価の一部が配当とみなされることがあります。

したがって、みなし配当は「会社が配当として決議したかどうか」で判断するものではありません。「会社から株主へ財産が移転した結果、税務上、利益の分配と評価される部分があるか」で判断します。会社法上の配当ではないものの、実質的には配当と変わらないものを租税法上配当とみなす制度であり、法人税法と所得税法でおおむね同様の制度として整理されています。

なぜ、みなし配当という制度が必要なのか

みなし配当を理解するには、「資本の払戻し」と「利益の分配」を分けて考える必要があります。

株主が会社に出資した元本が戻ってくるだけであれば、それは会社が稼いだ利益の分配ではありません。一方で、会社が過去に稼ぎ、内部に留保していた利益が、配当以外の形式で株主へ戻るのであれば、税務上は配当として扱う必要があります。

仮にみなし配当の制度がなければ、どうなるでしょうか。会社は通常の利益配当ではなく、自己株式取得、資本払戻し、資本剰余金の配当、清算分配といった形式を使うことで、実質的な利益分配を配当課税の外へ置けてしまいます。

そこで税法は、形式的な手続名ではなく、会社から株主へ移転した財産の経済的性質に目を向けます。会社から株主へ交付された金銭等のうち、税務上の資本金等の額に対応する部分は元本の払戻しとし、それを超える部分は利益の分配として扱う。これが、みなし配当の基本思想です。

この発想を持っていないと、次のような誤解が生じます。

  • 「資本剰余金の配当だから配当課税はない」
  • 「自己株式取得は株式売買だから配当ではない」
  • 「清算時の分配は残った財産を返すだけだから配当ではない」
  • 「合併や分割は組織再編だから株主課税は後回しでよい」

いずれも、税務上は危険な理解です。

みなし配当の有無は、会社側の損益計算だけの問題ではありません。株主側の所得区分、源泉徴収、法人株主の受取配当等の益金不算入、株式譲渡損益、非上場株式評価、事業承継対策にまで影響が及びます。

みなし配当が発生する主な場面

法人税法24条1項および所得税法25条1項では、みなし配当が問題となる場面として、主に次の事由が掲げられています。

発生場面実務上の典型例注意点
合併非適格合併により株主が合併対価を受け取る適格合併では原則としてみなし配当は生じないが、非適格合併では株主課税を確認する
分割型分割非適格分割型分割により分割法人株主が分割承継法人株式等を受け取る会社法上は剰余金配当として整理されるため、株主側課税を見落としやすい
株式分配非適格株式分配により完全子法人株式等が株主へ交付される適格株式分配か非適格株式分配かで取扱いが変わる
資本の払戻し資本剰余金を原資とする配当、出資等減少分配資本剰余金を原資としていても、みなし配当が生じ得る
解散による残余財産の分配清算時に株主へ残余財産を分配する会社の出口局面で株主課税と源泉徴収を確認する
自己株式・出資の取得会社が株主から自社株を買い取る事業承継・少数株主整理で頻出する高リスク論点
出資の消却・払戻し、退社・脱退による持分払戻し持分会社や出資持分の払戻し株式会社以外でも同様の発想が必要
組織変更に伴う資産交付組織変更時に株式・出資以外の資産を交付実務上は頻度が高くないが制度上は対象となる

このうち、中小・中堅企業で特に問題になりやすいのは、自己株式取得、資本払戻し、解散残余財産の分配、そして非適格合併・分割型分割です。

自己株式取得とみなし配当

自己株式取得は、みなし配当が最も問題になりやすい場面の一つです。

会社が株主から自社株式を買い取る場合、株主から見れば「株式を会社に売却した」ように映ります。しかし、発行会社が自社株式を買い取るという行為には、経済的には、会社財産を株主へ払い戻している側面があります。

そのため、株主が受け取る金銭等の全額を株式譲渡対価として扱うのではなく、税務上は次のように分解します。

株主が受け取る金銭等
= みなし配当部分
+ 株式譲渡対価部分

発行会社側では、自己株式の取得そのものについて通常の売上や費用が生じるわけではありません。一方で、税務上は資本金等の額と利益積立金額の減少を整理し、株主側ではみなし配当と株式譲渡損益を区分する必要があります。

事業承継の場面でも、自己株式取得が使われることがあります。たとえば、後継者以外の株主から会社が株式を買い取る、相続人から会社が株式を買い取る、少数株主を整理する、といったケースです。

このとき、税務上は少なくとも次の点を確認します。

  • 発行会社側の資本金等の額
  • 発行会社側の利益積立金額
  • 売主株主が個人か法人か
  • 売主株主の株式取得価額
  • みなし配当と株式譲渡損益の区分
  • 源泉徴収の要否
  • 非上場株式の時価
  • 会社法上の分配可能額
  • 他の株主への価値移転の有無

自己株式取得をめぐっては、発行法人による自己株式取得によりみなし配当が生じる場面と、組織再編に伴う端数処理や反対株主買取請求など、みなし配当の有無を別途検討すべき場面とが区別されます。たとえば、合併親法人株式の1株未満端数に対して金銭が交付される場合。これについては、税務上、端数相当株式が交付され、直ちに代わり金により買い取られたものと扱われるため、自己株式取得によるみなし配当には該当しないと整理されています。

自己株式取得の詳細な税務処理は、本来、別記事で扱うべき論点です。ここではまず、「株式売買に見えても配当部分が混在することがある」という一点を押さえておいてください。

資本払戻し・資本剰余金配当とみなし配当

資本剰余金を原資として株主へ金銭等を交付する場合も、みなし配当が問題になります。

会社法上は、利益剰余金を原資とする配当だけでなく、資本剰余金を原資とする剰余金の配当も可能です。しかし税務上は、資本剰余金を原資としているからといって、その全額が「資本の払戻し」として配当課税の対象外になるわけではありません。

税務上は、交付額のうち、その株式に対応する資本金等の額に相当する部分を元本の払戻しとし、それを超える部分をみなし配当として扱います。

この点は、実務上の誤りが生じやすいところです。会計上、その他資本剰余金の減少として処理していると、「利益剰余金を原資としていないから配当課税はない」と考えてしまいがちです。しかし、法人税法・所得税法上は、会社法上の原資表示だけでなく、税務上の資本金等の額に対応する部分を超えるかどうかを見ます。

特に注意が必要なのが、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする配当、いわゆる混合配当です。

最高裁令和3年3月11日判決は、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当について、混合配当全体が資本の払戻しに該当すると判断しました。あわせて、当時の法人税法施行令の計算方法のうち、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度で、法人税法の委任範囲を逸脱し違法・無効であることも示されています。
出典:国税庁|最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて

この判決を踏まえ、国税庁は、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等について、減少資本剰余金額を上限として取り扱うことを公表しています。
出典:国税庁|最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて

また、国税庁税務大学校の論稿でも、この構造が整理されています。会社法上は利益剰余金からの配当も資本剰余金からの配当も「剰余金の配当」として整理される一方、税法上は利益と資本の区別を前提としており、資本剰余金の減少を伴う資本の払戻しはみなし配当として扱う、というものです。
出典:国税庁税務大学校|資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする配当を受けた場合の法人税法上の区分について

資本剰余金配当や混合配当を検討する際には、単に「どの勘定科目を減らすか」という発想では足りません。次の点を整理する必要があります。

  • 配当原資は利益剰余金か、資本剰余金か、その双方か
  • 同一日に複数の配当決議があるか
  • 効力発生日は同一か
  • 税務上、一体の配当と見られる可能性があるか
  • 資本金等の額に対応する部分はいくらか
  • みなし配当部分はいくらか
  • 法人株主・個人株主それぞれの課税関係はどうなるか
  • 源泉徴収の要否はどうなるか
  • 株主への通知内容は整っているか

資本剰余金配当は、会計・会社法・税務が交差する典型的な論点です。実行後に計算を合わせにいくのではなく、決議前の段階で税務上の区分を確認しておく必要があります。

非適格合併とみなし配当

合併においても、みなし配当が問題になります。

適格合併の場合には、被合併法人の資産・負債が税務上の帳簿価額で合併法人に引き継がれ、被合併法人株主側でも原則としてみなし配当を認識しません。

これに対して非適格合併では、被合併法人の資産・負債が時価で移転したものとして扱われます。そのため、被合併法人の株主が受け取る合併対価について、みなし配当が問題になります。整理としては、被合併法人が資産・負債を時価で譲渡し、合併対価資産を取得して直ちに株主へ交付したもの、という形になります。

株主側では、合併対価のうち、被合併法人の資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当となります。さらに、株主が受け取った対価のうち、みなし配当部分を除いた金額は株式譲渡対価となり、被合併法人株式の帳簿価額または取得費との差額として株式譲渡損益が計算されることがあります。

合併対価が株式のみであるか、金銭等を含むか。この違いによって、株主側の課税関係は大きく変わります。

実務では、合併法人側の資産・負債の受入れや適格要件の検討に意識が向きがちです。しかし、被合併法人株主に対する課税関係まで確認しなければ、法人税務の判断としては不十分です。

特に同族会社グループでは、合併比率や対価設計が株主間の価値移転に影響することがあります。みなし配当だけでなく、株式譲渡損益、受贈益、寄附金、同族会社の行為計算否認、組織再編成に係る包括否認まで視野に入れて検討する必要があります。

分割型分割・株式分配とみなし配当

分割型分割でも、みなし配当が生じることがあります。

分割型分割は、会社法上、分割法人が取得した分割対価資産を、分割の日に分割法人の株主に対して剰余金の配当として交付したものと整理されます。そのため、税務上も株主側の配当課税が問題になります。非適格分割型分割では、分割法人の株主においてみなし配当を認識する仕組みが設けられています。

一方、適格分割型分割に該当する場合には、分割法人の株主において原則としてみなし配当を認識しません。

株式分配についても同様に、適格株式分配か非適格株式分配かによって取扱いが変わります。非適格株式分配に該当する場合には、完全子法人株式の時価をそのまま通常の受取配当とするのではなく、みなし配当として計算された金額が受取配当等の益金不算入の対象になる、という整理が必要です。

分割型分割や株式分配は、事業承継、持株会社化、グループ内再編、M&A準備の場面で検討されることがあります。形式的に会社法手続を進めるだけでは足りません。適格要件、株主課税、源泉徴収、株式簿価、別表処理を一体で確認する必要があります。

解散による残余財産の分配とみなし配当

会社を解散・清算し、残余財産を株主に分配する場合にも、みなし配当が問題になります。

清算時の分配は、会社に残った財産を株主へ返す手続のように見えます。しかし、株主に分配される残余財産の中には、株主が出資した元本に対応する部分だけでなく、会社が過去に稼ぎ、内部に留保していた利益に対応する部分が含まれることがあります。

そのため、株主が受け取る残余財産のうち、株式等に対応する資本金等の額を超える部分は、みなし配当として扱われます。

清算時のみなし配当では、次の点を確認します。

  • 残余財産の分配額
  • 分配時点の資本金等の額
  • 利益積立金額
  • 株主ごとの持株割合
  • 株主が個人か法人か
  • 源泉徴収の要否
  • 株式譲渡損益の有無
  • 期限切れ欠損金や債務免除益との関係
  • 現物分配がある場合の時価

会社の清算では、法人側の最終申告に意識が向きがちです。しかし、株主側の課税関係も同時に整理する必要があります。特に同族会社では、株主が個人であることが多く、配当所得・譲渡所得・相続税評価への影響まで見ておくべきです。

解散・清算時の残余財産分配についても、詳細は清算税務の記事で扱うべき論点です。もっとも、みなし配当の発生場面として、必ず押さえておく必要があります。

みなし配当と源泉徴収

みなし配当が生じる場合には、源泉徴収の要否を確認しなければなりません。

配当所得については、配当等の支払の際に源泉徴収が行われます。国税庁タックスアンサーによれば、上場株式等の配当等については、原則として所得税および復興特別所得税15.315%に加えて地方税5%。上場株式等以外の配当等や大口株主等が受ける上場株式等の配当等については、20.42%の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収されるとされています。
出典:国税庁タックスアンサー|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

中小・中堅企業で問題になる非上場株式のみなし配当では、多くの場合、20.42%の源泉徴収を確認することになります。ただし、株主が法人である場合や、完全子法人株式等・一定の関連法人株式等に係る配当等に該当する場合には、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき一定の配当等について、源泉徴収を行わない取扱いが設けられています。

国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし」では、一定の内国法人が支払を受ける配当等のうち、完全子法人株式等に係るもの、あるいは基準日等において一定の内国法人が直接保有する他の内国法人の株式等の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該株式等に係る配当等については、所得税を課さず、その配当等に係る源泉徴収を行わないとされています。この改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用されます。
出典:国税庁|源泉所得税の改正のあらまし

ただし、この源泉徴収不要の取扱いを、個人株主に対するみなし配当まで広げて理解してはいけません。個人株主が会社に株式を売却して自己株式取得が行われる場合や、同族会社のオーナー株主にみなし配当が生じる場合には、源泉徴収の要否を慎重に確認する必要があります。

また、組織再編では、株式のみが交付され、現金がないにもかかわらずみなし配当が生じることがあります。この場合、源泉税をどのように負担するかが実務上の問題になります。非適格分割型分割では、株主にみなし配当が発生し、分割法人において源泉徴収が必要となる場面があります。分割法人が源泉税を負担した場合には、その負担自体が株主への金銭交付として、追加的な整理を要することもあります。

したがって、みなし配当では、税額計算だけでなく「誰が、いつ、どの資金で源泉税を納付するのか」まで事前に確認する必要があります。

法人株主がみなし配当を受けた場合

株主が法人である場合、みなし配当は法人株主側で受取配当等として扱われ、一定の要件を満たすときには受取配当等の益金不算入の対象になります。

受取配当等の益金不算入制度では、配当等の額に係る株式等の区分に応じて、益金不算入割合が異なります。国税庁の法令解釈通達資料によれば、平成27年度税制改正により、完全子法人株式等は100%、関連法人株式等は100%、その他の株式等は50%、非支配目的株式等は20%の益金不算入割合とされました。
出典:国税庁|平成27年度法人税基本通達等の一部改正について

ただし、法人株主であれば必ず有利に扱われる、というわけではありません。

特に注意すべきなのが、「自己株式等の取得が予定されている株式等」です。法人が、発行法人による自己株式等の取得が具体的に予定されている株式等を取得し、その予定されていた事由に基因してみなし配当を受ける場合。このみなし配当については、受取配当等の益金不算入規定を適用しないこととされています。国税庁は、公開買付期間中に取得した株式などを例に、この「予定されている」事由の考え方を示しています。
出典:国税庁|平成22年6月30日付課法2-1ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」の趣旨説明

これは、自己株式取得を利用した配当課税・受取配当等の益金不算入の濫用を防ぐ趣旨の制度です。

たとえば、会社が自己株式を買い取ることが具体的に予定されている段階で、法人がその株式を取得し、すぐに発行会社へ売却してみなし配当を受ける。このような取引では、受取配当等の益金不算入を当然に適用できるとは考えられません。

法人株主が関係するみなし配当では、次の点を確認します。

  • 完全子法人株式等、関連法人株式等、その他株式等、非支配目的株式等のいずれに該当するか
  • 配当等の計算期間を通じた保有要件を満たすか
  • 関連法人株式等について負債利子控除が必要か
  • 自己株式取得が予定されている株式等に該当しないか
  • 源泉徴収不要の対象となる一定の内国法人の配当等に該当するか
  • 法人税申告書別表八(一)の記載が必要か
  • 株式譲渡損益との区分が正しいか

法人株主の場合、みなし配当部分と株式譲渡対価部分の区分は、法人税額だけの問題ではありません。別表処理、所得税額控除、グループ会社間取引、M&A時の税務デューデリジェンスにも影響します。

個人株主がみなし配当を受けた場合

株主が個人である場合、みなし配当部分は原則として配当所得として扱われます。

非上場会社の株主であるオーナー、親族株主、少数株主、相続人などが、会社から自己株式取得や資本払戻し、清算分配を受ける場合には、みなし配当が発生しないかを確認する必要があります。

個人株主の場合、特に次の点が重要です。

  • 配当所得として総合課税になるか
  • 源泉徴収が必要か
  • 株式譲渡所得部分があるか
  • みなし配当部分と譲渡対価部分を区分しているか
  • 相続等により取得した非上場株式の自己株式取得特例が関係するか
  • 他の株主への価値移転がみなし贈与にならないか
  • 非上場株式評価に影響しないか

国税庁タックスアンサーによれば、上場株式等以外の配当等や大口株主等が受ける上場株式等の配当等については、総合課税の対象となり、申告分離課税や確定申告不要制度を選択できないとされています。
出典:国税庁タックスアンサー|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

非上場会社の自己株式取得では、個人株主にとっては「株式を売っただけ」のつもりでも、税務上は配当所得と株式譲渡所得の両方が生じることがあります。この区分を誤ると、申告税額、源泉徴収、住民税、相続税対策の前提までずれてしまいます。

みなし配当と株式譲渡損益の関係

みなし配当が生じる取引では、株式譲渡損益も同時に問題になることがあります。

たとえば自己株式取得では、株主が受け取る金銭等のうち、みなし配当部分を除いた金額が株式譲渡対価として扱われます。その譲渡対価と、株主の株式取得価額または帳簿価額との差額が、株式譲渡損益になります。

つまり、同じ金銭を受け取っていても、税務上は次の二つに分けて考えます。

受取額のうち、会社の利益分配に相当する部分
→ みなし配当

受取額のうち、株式の譲渡対価に相当する部分
→ 株式譲渡損益の計算対象

この区分は、法人株主・個人株主のいずれにとっても重要です。

法人株主の場合、みなし配当は受取配当等の益金不算入の対象となる可能性がある一方、株式譲渡損益は益金または損金として扱われます。個人株主の場合、みなし配当は配当所得、譲渡部分は株式等に係る譲渡所得等として扱われるため、所得区分そのものが異なります。

同じ入金額でも、所得区分が変われば税負担は大きく変わります。したがって、みなし配当を検討するときは、みなし配当の金額だけでなく、譲渡対価部分と株式取得価額の関係まで確認しなければなりません。

みなし配当が発生しない、または注意して判定すべき場面

みなし配当は幅広い制度ですが、資本取引のすべてで発生するわけではありません。

たとえば、通常の利益剰余金を原資とする剰余金の配当は、通常の配当として扱われ、みなし配当ではありません。適格合併、適格分割型分割、適格株式分配では、原則として株主側でみなし配当を認識しない場面があります。

また、組織再編に伴う端数処理や反対株主の株式買取請求についても、どの法人の株式を誰が取得するのか、法令上みなし配当を認識しない特例があるのか、といった点を確認する必要があります。たとえば、被合併法人の株主が反対株主の株式買取請求を行った場合。技術的に源泉所得税を徴収できないことなどを背景に、みなし配当を認識しない取扱いが定められています。一方、合併法人の株主による株式買取請求では、みなし配当および株式譲渡損益を認識する必要がある場面があります。

同じ「株式買取請求」でも、どの会社の株主が、どの手続で、どの株式について買取請求をしたのか。これによって、税務上の結論は変わってきます。

みなし配当の判断では、取引名だけで結論を出さず、次の順番で確認することが重要です。

  1. 会社から株主へ金銭その他の資産が交付されるか
  2. その交付が法人税法24条・所得税法25条の列挙事由に該当するか
  3. 適格組織再編等によりみなし配当を認識しない場面か
  4. 交付額が株式等に対応する資本金等の額を超えるか
  5. 株主側で配当所得・受取配当等・譲渡損益をどう区分するか
  6. 源泉徴収が必要か
  7. 会社法上の手続・財源規制に問題がないか

みなし配当を検討するときの実務チェックポイント

みなし配当を検討する際には、まず次の資料を確認します。

確認資料確認する理由
法人税申告書別表五(一)資本金等の額、利益積立金額を確認するため
株主名簿株主ごとの持株割合、法人株主・個人株主の区分を確認するため
株式取得価額・帳簿価額資料株式譲渡損益を計算するため
決算書・株主資本等変動計算書会計上の純資産項目の増減を確認するため
株主総会議事録・取締役会議事録配当、自己株式取得、減資、組織再編等の意思決定を確認するため
定款株式の譲渡制限、種類株式、自己株式取得手続を確認するため
登記事項証明書資本金、株式数、過去の資本変更を確認するため
組織再編契約書・計画書合併、分割、株式分配等の対価と効力発生日を確認するため
自己株式取得契約書取得対価、取得日、売主株主を確認するため
株価算定資料非上場株式の時価や株主間価値移転を確認するため
源泉徴収関係資料源泉税率、納付期限、支払調書等を確認するため

特に重要なのは、別表五(一)です。

みなし配当の計算では、税務上の資本金等の額が要になります。会計上の資本金や資本剰余金の残高だけを見ても、税務上の資本金等の額を正しく把握できるとは限りません。

また、過去に増資、減資、自己株式取得、組織再編、資本剰余金配当を行っている会社では、別表五(一)の履歴が正しく管理されているかを確認する必要があります。過去の資本等取引の処理が曖昧なまま自己株式取得や資本払戻しを実行すると、みなし配当の計算そのものが不安定になってしまいます。

経営判断としてのみなし配当

みなし配当は、単に「税務上配当になるかどうか」を判定するだけの論点ではありません。

会社が自己株式を取得すれば、資金が流出します。資本剰余金を払い戻せば、純資産や資本政策に影響が及びます。非適格合併や分割型分割では、株主課税だけでなく、資産の時価課税や繰越欠損金、事業承継、M&Aスキームにも影響します。清算時の残余財産分配では、会社の出口戦略と株主の税負担が直結します。

つまり、みなし配当は、法人税申告書の一項目ではありません。会社と株主の関係をどう整理するかという、経営判断の一部です。

特に同族会社では、会社と株主の距離が近いため、次のような判断が必要になります。

  • 会社の資金をどのように株主へ戻すのか
  • 配当、役員退職金、自己株式取得、貸付金返済のどれを使うのか
  • 後継者と非後継者の株主間で価値移転が起きないか
  • 相続税・贈与税との関係はどうなるか
  • 金融機関や外部株主に説明できる処理か
  • 将来のM&Aや事業承継の選択肢を狭めないか

短期的な税負担だけで判断すると、会社の資金繰り、株主構成、後継者への引継ぎ、そして税務調査時の説明に、問題が残ることがあります。

みなし配当で専門家に相談すべきタイミング

みなし配当は、実行後に気づいても対応が難しい論点です。

特に、次の取引を検討している場合には、実行前に税務上の整理を行うべきです。

  • 会社が自己株式を取得する
  • 資本剰余金を原資として配当する
  • 減資や資本払戻しを行う
  • 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として配当する
  • 合併、分割型分割、株式分配を行う
  • 会社を解散・清算し、残余財産を分配する
  • 相続人から会社が株式を買い取る
  • 少数株主を整理する
  • 事業承継前に株主構成を見直す
  • M&A前に資本構成を整える
  • 過去の別表五(一)や資本金等の額に不安がある

みなし配当では、発行会社側、株主側、源泉徴収、会社法手続、会計処理、申告書別表が同時に関係します。どれか一つだけを見て判断すると、別の側面で問題が残ります。

まとめ

みなし配当は、配当という名称が付いていない取引に潜む株主課税です。

自己株式取得、資本払戻し、資本剰余金配当、非適格合併、分割型分割、株式分配、解散残余財産の分配。こうした場面では、会社側の会計処理だけでなく、株主側で配当課税が生じるかどうかを確認する必要があります。

重要なのは、次の三つです。

第一に、会社から株主へ財産が移転しているかを確認すること。

第二に、その交付額のうち、税務上の資本金等の額に対応する部分と、利益の分配と評価される部分を区分すること。

第三に、株主が法人か個人か、源泉徴収が必要か、株式譲渡損益が同時に生じるかを整理すること。

みなし配当は、法人税・所得税・源泉所得税・会社法・会計・事業承継が交差する領域です。実行後の申告段階で慌てて計算するのではなく、株主総会決議、契約締結、払戻し、自己株式取得、組織再編の前に検討しておく。それが、後から説明できる税務判断につながります。

自己株式取得、資本剰余金配当、減資、組織再編、清算分配などを検討している場合。あるいは、過去の資本等取引についてみなし配当の処理に不安がある場合。いずれも、実行前の段階で資料を整理し、税務上の影響を確認しておくことをおすすめします。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、みなし配当の計算だけでなく、資本金等の額、利益積立金額、株主課税、源泉徴収、事業承継・M&Aへの影響まで含めて、資本等取引の整理を支援しています。自己株式取得や資本払戻しを予定している場合は、実行前の検討段階でお問い合わせください。

振り返り

論点実務上のポイント
みなし配当の本質会社法上の配当でなくても、実質的な利益分配であれば税務上配当とみなされる
基本計算株主が受け取った金銭等から、株式等に対応する資本金等の額を控除した超過部分が基本的なみなし配当の考え方
自己株式取得株式売買に見えても、受取額がみなし配当部分と株式譲渡対価部分に分かれることがある
資本払戻し資本剰余金を原資としていても、税務上みなし配当が生じることがある
混合配当利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする配当は、最高裁判決・国税庁取扱いを踏まえた慎重な確認が必要
非適格合併被合併法人株主において、みなし配当と株式譲渡損益が問題になることがある
分割型分割・株式分配適格か非適格かにより株主側のみなし配当の有無が変わる
清算分配残余財産の分配額のうち資本金等の額を超える部分はみなし配当となり得る
源泉徴収個人株主や非上場株式のみなし配当では20.42%の源泉徴収を確認する場面が多い
法人株主受取配当等の益金不算入の対象になり得るが、自己株式取得が予定されている株式等には注意が必要
相談タイミング株主総会決議、契約、自己株式取得、払戻し、組織再編の実行前に確認する
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