外国税額控除と二重課税の基本

海外との取引が増えてくると、「海外でも税金を取られたのに、日本でもまた法人税がかかるのだろうか」という疑問に突き当たることがあります。

たとえば、日本法人が海外でサービスを提供して現地で源泉税を差し引かれた場合。海外支店が現地で法人税を納めた場合。海外子会社から配当を受け取る際に外国源泉税が控除された場合などです。

こうした場面で、「海外で税金を払ったのだから、日本の法人税から全額差し引けるはずだ」と単純に考えてしまうと、申告誤りにつながりかねません。

外国税額控除は、国際的な二重課税を調整するための重要な制度です。ただし、支払った外国税をそのまま無条件で全額控除できる制度ではありません。どの所得に対する税金なのか、控除の対象となる外国法人税なのか、国外所得金額はいくらか、控除限度額を超えていないか、繰越の管理は必要か、申告書の別表と証明資料は整っているか。こうした点を、ひとつずつ順を追って確認していく必要があります。

法人税法69条は、内国法人が外国法人税を納付することとなる場合に、一定の控除限度額を上限として、控除対象外国法人税の額を法人税額から控除する仕組みを定めています。
出典:e-Gov法令検索|法人税法

本稿では、外国税額控除と二重課税の基本を、国外所得、外国法人税、控除限度額、繰越、別表、資料保存という実務の流れに沿って整理していきます。

目次

外国税額控除は、なぜ必要になるのか

国際取引では、同じ利益に対して、複数の国がそれぞれ課税権を主張することがあります。

日本法人は、原則として日本の法人税申告において所得を計算します。その一方で、海外の国や地域も、自国で発生した所得や、自国内で行われた事業活動に対して課税してくることがあります。

具体的には、次のような場面です。

取引・所得の例海外で課税される理由日本側で問題になること
海外支店の事業所得現地で事業活動を行っている日本でも所得計算に含まれるため二重課税が生じ得る
海外顧客からのロイヤリティ現地法により源泉税が課される日本で益金計上する一方、外国源泉税の取扱いを検討する
海外子会社からの配当配当支払国で源泉税が課される外国子会社配当益金不算入や外国源泉税の取扱いを確認する
海外不動産・海外資産の運用益資産所在地国で課税される日本側の課税所得・外国税額控除との関係を確認する
移転価格調整後の追徴税額国外関連取引の価格調整により課税される日本側で二重課税調整や相互協議が問題になる

外国税額控除は、こうした国際的な二重課税を、一定の範囲で取り除くための制度です。

ただし、ここでいう二重課税については、少し注意が必要です。外国税額控除が主に想定しているのは、同じ法人の同じ所得に対して、日本と外国の双方で課税されている状態です。海外子会社の利益、海外子会社からの配当、外国で課された源泉税、移転価格課税による追徴税額などは、それぞれ制度上の扱いが異なります。

ですから、海外で税金が発生したときには、「これは外国税額控除で処理するもの」と決め打ちしてしまうのではなく、まずその税金の性質を確認することが出発点になります。

外国税額控除は「外国で払った税金を全額返してもらう制度」ではない

外国税額控除の基本的な構造は、次のように押さえておくと分かりやすくなります。

日本法人は、全世界所得を基礎として日本の法人税を計算します。そのうえで海外で課された外国法人税がある場合に、日本の法人税額のうち「国外所得に対応する部分」を上限として、その外国法人税を控除する。これが基本的な仕組みです。

大まかなイメージは、次の算式で捉えられます。

法人税の控除限度額 = 日本の法人税額 × 調整国外所得金額 ÷ 所得金額

これはあくまで、理解のために簡略化したイメージです。実際の計算では、国外所得金額、非課税国外所得、通算法人の場合の調整、地方法人税・地方税の取扱いなどを踏まえていくことになります。

ここで重要なのは、次の点です。

誤解しやすい考え方実務上の正しい見方
海外で税金を払えば全額控除できる控除限度額の範囲内でしか控除できない
海外の税金なら何でも対象になる控除対象外国法人税に該当する必要がある
源泉税なら必ず控除できる租税条約の限度税率超過部分などは対象外となる
配当に係る外国源泉税は当然控除できる外国子会社配当益金不算入との関係で対象外となることがある
別表に金額を入れれば足りる外国税を課されたこと・納付したことを証する資料が必要になる
当期に使えない外国税額は消える控除限度超過額や控除余裕額として繰越管理が必要になる場合がある

外国税額控除は、税負担を軽減する制度であると同時に、国外所得と外国税額を正確に対応させるための制度でもあります。控除額が大きくなる処理を選ぶほど、国外所得金額の計算、外国法人税の範囲、資料保存について、負うべき説明責任も重くなっていきます。

まず確認すべきは「外国法人税」かどうか

外国税額控除の対象になるのは、外国の法令によって課される、法人税に相当する税のうち、法令上の要件を満たすものです。

実務では、海外で支払った税金をすべて「外国税額控除の対象」と考えないことが、まず大切になります。

海外で発生する負担外国税額控除の検討
外国の法人所得税原則として検討対象になる
外国で源泉徴収された配当・利子・使用料等の税所得の種類、租税条約、控除対象性を確認する
海外支店の現地法人税国外所得との対応を確認する
VAT・GST・付加価値税通常、法人所得に対する税ではないため、外国税額控除とは別に処理を検討する
関税外国税額控除ではなく、仕入・取得価額等の問題として検討する
延滞税・罰金・ペナルティ控除対象性、損金性を個別に確認する
租税条約上、相手国が課税できない部分の税外国税額控除の対象外となる場合がある

国税庁は、租税条約に定める限度税率を超えて源泉徴収された外国法人税の額について、外国税額控除の対象とはならず、使用料の支払日の属する事業年度の損金の額に算入されるとする質疑応答事例を公表しています。
出典:国税庁|租税条約に定める限度税率を超える外国法人税の額の取扱い

この点は、実務上とても重要です。海外で源泉徴収された税額のなかに、租税条約上、本来その国が課税できない部分が含まれている場合、その超過部分は「海外で払った税金」ではあっても、外国税額控除の対象としては処理できないことがあるからです。

つまり、外国税額控除を検討するときは、「海外で税金を払ったかどうか」ではなく、次のように順に確認していきます。

  1. その税金は、法人所得に対する税か
  2. 日本の法令上、控除対象外国法人税に該当するか
  3. 租税条約により、相手国の課税権が制限されていないか
  4. 外国子会社配当益金不算入など、別の制度により控除対象から除かれないか
  5. 納付または源泉徴収を証明できる資料があるか

「国外所得金額」の計算が控除額を左右する

外国税額控除でもっとも実務判断が難しいのは、外国税額そのものよりも、むしろ国外所得金額の計算です。

控除限度額は、大まかにいえば、日本の法人税額のうち国外所得に対応する部分です。そのため、国外所得金額を過大に計算してしまうと、外国税額控除額も過大になるおそれがあります。反対に、国外所得金額を過小に計算すると、本来控除できたはずの外国税額を控除しきれない可能性が出てきます。

国外所得金額を計算する際は、単に海外売上や海外入金額を集計するだけでは足りません。

確認項目実務上の意味
海外売上・海外収益国外源泉所得に該当する収益を把握する
対応する原価・費用国外所得は収益ではなく所得で考える
外国源泉税の控除前・控除後税引後金額で処理すべき部分がないか確認する
為替換算収益、費用、外国税額をどの相場で換算するか確認する
非課税国外所得外国税額控除の限度額計算から除くべき所得がないか確認する
外国子会社配当益金不算入配当の益金不算入部分と外国源泉税の関係を確認する
CFC合算所得外国子会社合算税制で益金算入された金額との関係を確認する
PE帰属所得海外支店・PEに帰属する所得の計算資料を確認する
移転価格調整国外関連者との価格設定が国外所得に影響していないか確認する

国税庁の法人税基本通達では、外国税額控除を適用する場合の外国法人税額の円換算について、源泉徴収に係る外国法人税、国内から送金する外国法人税、国外事業所等で納付する外国法人税、租税条約により納付したものとみなされる外国法人税ごとに、適用する為替相場の考え方が示されています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第16章 第3款 その他 16-3-47

国外所得金額の計算は、海外取引担当者の一覧表だけで完結するものではありません。法人税申告書の別表四、別表六、外国税額関係資料、契約書、請求書、現地申告書、源泉徴収票、送金明細を突き合わせながら確認していく必要があります。

控除限度額を超えた場合は、繰越管理が必要になる

外国税額控除では、当期の控除対象外国法人税額が、当期の控除限度額を超えることがあります。

この場合、控除しきれなかった部分は「控除限度超過額」として、一定期間、翌期以降に繰り越して控除できることがあります。反対に、当期の控除限度額に余りがあるときは、それが「控除余裕額」となり、過去の控除限度超過額を吸収する余地になります。

実務上は、次のように整理しておくと分かりやすくなります。

状況発生する管理項目実務上の注意点
外国法人税額が当期控除限度額を超える控除限度超過額翌期以降の控除可能性を管理する
当期控除限度額が外国法人税額を超える控除余裕額過去の控除限度超過額を充当できるか確認する
過年度から繰越がある別表六(三)で管理古い年度から順に充当する処理を確認する
組織再編がある適格合併・適格分割等で引継ぎ可否を確認事業移転との対応関係を確認する
グループ通算制度を適用している通算法人ごとの計算と全体計算を確認単体申告とは別の確認が必要になる

国税庁は、令和8年4月1日以後終了事業年度分の法人税等各種別表として、別表六(二)「内国法人の外国税額の控除に関する明細書」、別表六(二の二)「当期の控除対象外国法人税額に関する明細書」、別表六(三)「外国税額の繰越控除余裕額又は繰越控除限度超過額の計算に関する明細書」、別表六(四)「控除対象外国法人税額に関する明細書」などを公表しています。
出典:国税庁|令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係

この繰越管理は、単年度の申告作業だけを見ていると見落とされやすい部分です。海外源泉税が毎年発生する会社、海外支店の所得が年度によって大きく変動する会社、海外子会社からの配当時期が不定期な会社では、過年度の別表六(三)を継続的に確認していく必要があります。

外国税額控除と損金算入は、税額だけでなく将来にも影響する

外国で課された税金を、外国税額控除の対象とするのか、それとも損金として処理するのか。この判断は、単年度の税額だけで決められるものではありません。

外国税額控除を適用すれば、法人税額から直接控除されるため、税額を軽減する効果は大きく見えます。その一方で、控除限度額を超える部分がある場合や、将来の国外所得・法人税額の見通しが弱い場合には、繰越管理が必要になってきます。

また、外国税額控除の対象とした金額については、法人税法上、損金算入との重複が制限されます。国税庁の質疑応答事例でも、租税条約上の限度税率超過部分については控除対象外国法人税に含まれず、法人税法41条による損金不算入の対象とはならないため、使用料の支払日の属する事業年度の損金に算入されると整理されています。
出典:国税庁|租税条約に定める限度税率を超える外国法人税の額の取扱い

このように、同じ「外国で取られた税金」であっても、その性質によって処理の方向は分かれていきます。

外国税の性質主な処理の方向性
控除対象外国法人税に該当し、控除限度額内外国税額控除を検討する
控除対象外国法人税に該当するが、控除限度額超過控除限度超過額として繰越管理を検討する
租税条約上の限度税率超過部分外国税額控除対象外となり、損金処理等を検討する
法人所得税ではない税仕入、経費、資産取得価額等として別途検討する
外国子会社配当益金不算入の対象配当に係る源泉税外国税額控除・損金算入の可否を別制度として確認する
還付される可能性がある税控除対象性、還付時の益金処理を確認する

「控除か損金か」という選択は、単なる税務テクニックではありません。将来の国外所得、法人税額、海外配当方針、グループ再編、税効果会計、そして金融機関への説明にまで影響する判断です。

外国子会社配当との関係は特に注意が必要

海外子会社から配当を受ける場合には、外国税額控除と外国子会社配当益金不算入制度を混同しないよう、特に気をつける必要があります。

外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当は、その一定部分が日本の益金に算入されません。その一方で、その配当に係る外国源泉税については、外国税額控除の対象から除かれる場合があります。外国子会社配当益金不算入の適用を受ける配当に係る外国源泉税は、外国税額控除の対象となる外国法人税の額から除かれるものと整理されています。

ここは、実務上の誤りが起きやすいところです。

配当の種類日本側の主な検討
外国子会社配当益金不算入の対象となる配当益金不算入、外国源泉税の控除・損金性を確認
外国子会社配当益金不算入の対象外の配当受取配当の益金算入、外国税額控除の可否を確認
CFC合算課税後の配当課税済所得との二重課税調整を確認
自己株式取得等に関連するみなし配当外国子会社配当益金不算入の適用制限を確認
租税条約により源泉税率が軽減される配当条約届出、居住者証明、限度税率を確認

海外子会社配当については、14-5「海外子会社配当と法人税申告」で詳しく扱う論点です。ただし、外国税額控除を扱う本稿でも、少なくとも「海外配当の源泉税は、当然に外国税額控除できるわけではない」という点は、押さえておいていただきたいところです。

グループ通算制度では、外国税額控除がさらに複雑になる

単体申告であれば、外国税額控除は、自社の国外所得、自社の外国法人税、自社の法人税額をもとに検討していきます。

ところが、グループ通算制度を適用している場合には、損益通算や欠損金の通算だけでなく、外国税額控除についても、通算グループ全体での計算が関わってきます。グループ通算制度における税額調整の全体計算項目として、外国税額控除が位置づけられているためです。

また、繰越外国税額控除については、別表六(三)で管理することが実務上重要になります。繰越外国税額控除は「別表六(三)外国税額の繰越控除余裕額又は繰越控除限度超過額等の計算に関する明細書」で、各通算会社が作成するものと整理されています。

グループ通算制度では、次のような確認が必要です。

確認事項単体申告との違い
通算法人ごとの国外所得個社ごとに国外所得を把握する必要がある
通算グループ全体の所得損益通算後の所得が控除限度額に影響する
繰越控除限度超過額通算法人ごとの発生・使用状況を確認する
地方法人税・地方税国税と地方税で取扱いが異なる部分を確認する
加入・離脱・組織再編繰越額の引継ぎや消滅を確認する
税効果会計繰越外国税額控除の回収可能性を事業計画と照合する

グループ通算制度を採用している会社では、外国税額控除を「海外取引がある会社だけの問題」として扱うと、思わぬ落とし穴があります。通算グループ全体の税額調整として、親法人・子法人の情報連携が欠かせません。

資料保存は、外国税額控除の成否を左右する

外国税額控除は、申告書上の計算だけでなく、資料の保存が大きな意味を持ちます。

国税庁の法人税基本通達では、外国税額控除を受けるための書類として、外国税を課されたこと・納付したことを証する書類に、申告書の写し、現地税務官署が発行する納税証明書等、更正・決定通知書、賦課決定通知書、納税告知書、源泉徴収票その他これらに準ずる書類、またはこれらの写しが含まれるとされています。
出典:国税庁|法人税基本通達 第16章 第3款 その他 16-3-48

実務上、保存しておくべき資料は次のとおりです。

資料確認目的
外国税務申告書の写し現地で課税された所得・税額を確認する
外国税務当局の納税証明書納付事実を確認する
外国源泉徴収票・withholding certificate源泉税額、支払者、所得種類を確認する
契約書所得の種類、支払条件、税負担条項を確認する
請求書・支払通知収益金額、源泉控除額、支払日を確認する
送金明細・入金明細実際の入金額、源泉控除、為替換算を確認する
租税条約届出・居住者証明書条約税率の適用関係を確認する
海外支店の損益計算書PE帰属所得・国外所得を確認する
国外所得計算資料控除限度額の基礎を確認する
過年度の別表六(三)繰越控除余裕額・控除限度超過額を確認する
取締役会資料・稟議書海外投資・配当・契約判断の経緯を残す

外国税額控除は、税務調査の場で「海外で税金を払いました」と説明するだけでは足りません。どの所得に対する税金なのか、その所得が日本側でどのように益金・損金計算に反映されているか、控除限度額の計算に含めた国外所得ときちんと対応しているか。ここまで説明できる状態にしておく必要があります。

申告実務では別表のつながりを見る

外国税額控除の申告では、別表六(二)だけを眺めていても、全体像は見えてきません。

令和8年4月1日以後終了事業年度分の国税庁公表様式では、外国税額控除に関係する主な別表として、別表六(二)、別表六(二)付表、別表六(二の二)、別表六(三)、別表六(四)、別表六(四の二)、別表六(五)などが用意されています。
出典:国税庁|令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係

実務上の確認は、次のような流れになります。

別表・資料主な確認内容
別表四外国税額控除に関連する益金・損金調整を確認する
別表六(二)内国法人の外国税額控除額を計算する
別表六(二)付表国外事業所等帰属所得などを計算する
別表六(二の二)当期の控除対象外国法人税額を整理する
別表六(三)繰越控除余裕額・繰越控除限度超過額を管理する
別表六(四)控除対象外国法人税額の明細を整理する
別表六(四の二)外国子会社配当益金不算入対象外部分に対応する外国税額を整理する
別表六(五)利子等に係る控除対象外国法人税額等を整理する
別表一最終的な法人税額への反映を確認する
地方法人税・地方税関連別表国税以外の外国税額控除の反映を確認する

別表六(二)に数字が入っていても、国外所得金額の根拠資料、外国税額の証明資料、過年度繰越額の整合性がなければ、申告の品質が高いとはいえません。

外国税額控除を検討する実務フロー

海外で税金が発生したときは、次の順序で検討していきます。

1. 海外で課された税金の種類を確認する

まず、税金の名称だけで判断しないことが大切です。

「withholding tax」「corporate income tax」「business tax」「VAT」「GST」「royalty tax」など、国によって呼称はさまざまです。現地法上の性質、課税標準、税率、課税通知書、源泉徴収票を確認していきます。

2. どの所得に対応する税金かを確認する

外国税額控除では、外国税額と国外所得の対応関係が重要になります。

海外売上、ロイヤリティ、利子、配当、海外支店所得、CFC合算所得、移転価格調整所得など、どの所得に対応する税金なのかを確認します。

3. 租税条約を確認する

源泉税が課されている場合には、租税条約により相手国の課税権が制限されていないかを確認します。

条約上の限度税率を超える部分があるときは、外国税額控除の対象外となることがあります。

4. 控除対象外国法人税に該当するか確認する

外国法人税に該当していても、その全額が控除対象になるとは限りません。

高率部分、通常行われる取引と認められない取引に基因するもの、非課税所得に対応するもの、租税条約上課税できない部分などを確認します。

5. 国外所得金額を計算する

海外収益だけでなく、対応する費用、為替換算、非課税国外所得、別表四調整、外国子会社配当、CFC合算所得などを確認します。

6. 控除限度額を計算する

法人税額、地方法人税、地方税を含めて、控除限度額を確認します。

7. 繰越管理を確認する

過年度の控除限度超過額、控除余裕額がある場合には、別表六(三)で継続的に管理します。

8. 申告書と証明資料を整える

別表六関係だけでなく、現地申告書、納税証明書、源泉徴収票、送金明細、契約書、請求書、租税条約関係書類を保存します。

判断を誤ると何が経営上のリスクになるか

外国税額控除の誤りは、単なる法人税申告書の別表ミスにとどまりません。

判断ミス経営上の影響
控除対象外の外国税を控除した税務調査で否認され、追加納税・附帯税が発生する
国外所得を過大に計算した控除限度額が過大となり、税額控除額の誤りにつながる
租税条約上の限度税率超過部分を控除した外国税額控除の対象外として修正が必要になる
証明資料を保存していない税務調査で外国税額の根拠を説明できない
繰越管理をしていない将来使える控除を失う、または過大控除する
外国子会社配当と混同した益金不算入・源泉税処理を誤る
グループ通算制度の影響を見落としたグループ全体の税額計算を誤る
会計処理と税務処理が不整合税金費用、未収還付、繰延税金資産の説明が難しくなる

とりわけ、海外取引は税務調査で資料を取り寄せるのに時間がかかります。現地税務当局の書類、海外子会社の申告書、外国語の契約書、送金資料を後から集めようとしても、担当者の退職、現地制度の変更、子会社管理体制の不備などにより、必要な資料が揃わないことがあります。

外国税額控除は、申告時だけでなく、海外取引の開始時、契約締結時、源泉税の発生時、配当決議時、海外支店の決算時から管理しておくべき論点なのです。

外国税額控除を申告前に確認するチェックリスト

申告の前には、少なくとも次の事項を確認してください。

確認項目確認内容
海外税金一覧国・地域、税目、税率、課税所得、納付日、源泉徴収日を一覧化しているか
所得との対応外国税額がどの国外所得に対応するか説明できるか
控除対象性控除対象外国法人税に該当するか確認しているか
租税条約限度税率超過部分や免税対象が含まれていないか
国外所得金額収益だけでなく対応費用・非課税所得・別表四調整を反映しているか
為替換算収益、費用、外国税額の換算方法が整合しているか
別表六(二)当期の外国税額控除額が正しく計算されているか
別表六(二の二)当期の控除対象外国法人税額の明細が整っているか
別表六(三)控除余裕額・控除限度超過額の繰越が正しく管理されているか
外国税証明資料納税証明書、源泉徴収票、現地申告書等を保存しているか
外国子会社配当益金不算入制度との関係を確認しているか
グループ通算通算グループ全体計算の影響を確認しているか
税効果会計繰越外国税額控除の回収可能性を検討しているか
将来計画海外所得・配当方針・現地税負担の見通しを反映しているか

まとめ:外国税額控除は、海外税金の「控除」ではなく国際税務の管理論点である

外国税額控除は、海外で課された税金を日本の法人税額から調整するための制度です。しかし、実務のうえでは、単に「外国税額を控除する」というだけの話にはとどまりません。

どの所得に対する税金なのか。控除対象外国法人税に該当するのか。租税条約上、相手国が課税できる税額なのか。国外所得金額はいくらか。控除限度額を超えていないか。繰越管理は必要か。外国子会社配当やCFC税制との関係はどうか。グループ通算制度により全体計算が必要か。こうした点をひとつずつ確認して、はじめて後から説明できる申告になります。

税負担の軽減はもちろん大切です。ただし外国税額控除では、短期的な控除額だけに目を向けてはいけません。将来の国外所得、海外配当方針、海外拠点の利益計画、税効果会計、そして税務調査への対応まで含めて判断していく必要があります。

最後に、重要な点を振り返っておきます。

論点重要ポイント
二重課税同じ所得に日本と外国の双方で課税される場合に調整が必要になる
外国税額控除外国で払った税金を全額控除する制度ではなく、控除限度額がある
外国法人税法人所得に対する税か、控除対象外国法人税かを確認する
国外所得金額控除限度額を左右するため、収益・費用・非課税所得・別表調整を確認する
控除限度額日本の法人税額のうち国外所得に対応する部分が基本的な上限となる
繰越管理控除限度超過額・控除余裕額を別表六(三)で継続管理する
租税条約限度税率超過部分は外国税額控除の対象外となることがある
外国子会社配当益金不算入制度との関係で外国源泉税の取扱いが変わる
グループ通算制度外国税額控除はグループ全体計算の影響を受ける
資料保存現地申告書、納税証明書、源泉徴収票、契約書、送金資料が必要になる
経営判断海外投資、配当方針、資金繰り、税効果会計、税務調査対応に影響する

外国税額控除・海外税務の申告前整理をご相談ください

海外で源泉税や法人税が発生している場合、外国税額控除を適用できるかどうかは、支払国、所得の種類、租税条約、外国法人税の性質、国外所得金額、別表六の作成、証明資料の有無によって変わってきます。

「海外で源泉税を引かれているが、日本で控除できるか分からない」 「外国子会社配当の源泉税と外国税額控除の関係を整理したい」 「過年度からの控除限度超過額・控除余裕額を正しく管理できているか確認したい」 「海外支店・海外子会社・グループ通算制度を含めて、国際税務を申告前にレビューしたい」

このような場合には、申告期限の直前ではなく、海外取引の一覧、契約書、現地納税資料、源泉徴収票、送金明細、過年度申告書をもとに、できるだけ早めに論点を整理しておくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人税申告を単なる申告書の作成にとどめず、海外取引、会計処理、税務調整、資料保存、そして将来の税務調査対応までを見据えた判断領域として支援しています。

外国税額控除、海外源泉税、海外子会社配当、国際税務の申告前整理が必要な場合は、当事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

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