簡易課税の第1種から第6種までの事業区分|みなし仕入率を誤らないための基本整理

簡易課税制度では、実際の仕入税額を一つずつ積み上げるのではなく、売上げに係る消費税額に「みなし仕入率」を掛けて仕入控除税額を計算します。

そのため、この制度を選んだ事業者にとって、最も重要な実務判断のひとつが、自社の売上が第1種から第6種までのどの事業区分に該当するかという点になります。

簡易課税には、仕入側のインボイス確認や課税仕入れの集計負担を軽くしてくれる面があります。ただ、その代わりに、売上側の分類を一つ誤ると、納付税額がそのまま変わってしまいます。とりわけ、複数の事業を営んでいる場合や、委託販売、製造小売、飲食、役務提供、不動産収入、固定資産売却などが混在する場合は要注意です。「会社全体の業種名」だけで判断してしまうと、思わぬ誤りが生じます。

本記事では、まず簡易課税制度の第1種から第6種までの事業区分について、全体像を整理していきます。個別の境界事例や、複数事業を営む場合の具体的な計算方法は、後続の記事であらためて詳しく扱います。

目次

事業区分は「仕入」ではなく「売上」の区分である

簡易課税制度でまず押さえておきたいのは、事業区分が、仕入や経費の種類ではなく、売上げに係る取引の種類を分類するものだということです。

原則課税では、課税仕入れごとに、支払先、用途、インボイス、課税売上割合などを確認しながら仕入税額控除を計算します。これに対して簡易課税では、売上げに係る消費税額を基礎に、売上の事業区分ごとのみなし仕入率を使って控除額を求めます。

つまり、簡易課税では次の順序で考えていくことになります。

  1. その収入が消費税の課税売上に該当するか
  2. 課税売上であれば、どの税率で売上税額を計算するか
  3. その課税売上が、第1種から第6種のどの事業区分に属するか
  4. その事業区分に応じたみなし仕入率を適用する

ここで、仕入先が登録事業者かどうか、仕入のインボイスを保存しているかどうか、実際の外注費が多いか少ないかといった点は、簡易課税の事業区分そのものを決める要素ではありません。

もちろん、仕入構造は原則課税との有利・不利を比較するうえでは重要です。しかし、簡易課税の申告計算においては、まず売上の性質を正しく分けることが出発点になります。

第1種から第6種までの全体像

簡易課税制度の事業区分とみなし仕入率は、次の6区分に整理されます。

事業区分主な内容みなし仕入率
第1種事業卸売業90%
第2種事業小売業、飲食料品の譲渡に係る農業・林業・漁業80%
第3種事業農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡以外、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業70%
第4種事業第1種、第2種、第3種、第5種、第6種以外の事業。飲食店業、一定の加工賃収入、固定資産売却など60%
第5種事業運輸通信業、金融・保険業、サービス業。ただし飲食店業に該当するものを除く50%
第6種事業不動産業40%

この6区分とみなし仕入率の対応関係は、第1種の卸売業90%から、第2種の小売業等80%、第3種の製造業等70%、第4種のその他の事業60%、第5種のサービス業等50%、第6種の不動産業40%まで、国税庁が示している整理とそのまま一致します。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

表にすると単純に見えますが、実務では次のような誤解が起こりがちです。

  • 「会社の主業種」で一括して判定してしまう
  • 売上ごとではなく、勘定科目だけで判定してしまう
  • 仕入や外注の多さから事業区分を決めてしまう
  • 飲食店業をサービス業として第5種にしてしまう
  • 不動産に関係する収入をすべて第6種にしてしまう
  • 製造、加工、修理、請負、販売を区別しない
  • 固定資産売却を本業の事業区分に含めてしまう

簡易課税の事業区分は、見た目よりも形式的な判断が難しい領域です。とくに、業種名と実際の売上内容が一致しない場合には注意しておきたいところです。

事業区分は、原則として取引単位で判定する

簡易課税の事業区分は、原則として、事業者全体でひとくくりにするのではなく、課税資産の譲渡等ごとに判定します。第1種から第6種までのいずれに該当するかは、その事業者が行う課税資産の譲渡等ごとに判定していくのが原則です。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

この考え方は質疑応答事例でも同様に示されており、事業区分は原則として資産の譲渡等ごと、すなわち取引単位ごとに判定します。混合取引で対価が区分されている場合には、その区分されたところによって事業の種類を判定することになります。
出典:国税庁|簡易課税の事業区分について(フローチャート)

この「取引単位」という視点が、実務ではとても重要です。

たとえば、会社全体としてはサービス業を営んでいても、他から購入した商品をその性質・形状を変えずに販売する売上があれば、その売上は第1種または第2種に該当する可能性があります。逆に、小売業を営んでいる会社であっても、飲食店としての売上、固定資産売却、役務提供の売上があれば、それぞれ別の区分になることがあります。

簡易課税の事業区分は、「自社は何業か」ではなく、この売上は何を、誰に、どのような形で提供した対価かという角度から考える必要があるのです。

第1種事業|卸売業

第1種事業は、卸売業です。

ここでいう卸売業とは、他の者から購入した商品を、その性質・形状を変更しないまま、他の事業者に対して販売する事業をいいます。

判断のポイントは、主に次の3つです。

判断要素内容
仕入商品か自社で製造したものではなく、他から購入した商品か
性質・形状を変更していないか原則として、そのまま販売しているか
販売先が事業者か他の事業者に対する販売であることが明らかか

第1種事業では、販売先が決め手になります。同じ商品を販売していても、販売先が事業者であることが帳簿や書類等で明らかであれば卸売業になり得ますが、一般消費者向けの販売であれば、通常は第2種事業の小売業を検討することになります。

なお、消費者から購入した商品であっても、品質や形状を変更せずに他の事業者へ販売する事業は卸売業に含まれます。また、業務用に消費される商品の販売であっても、事業者に対する販売であることが帳簿・書類等で明らかであれば、卸売業として扱われます。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

実務上は、販売先マスター、請求書、取引基本契約書、納品書、販売管理データなどから、事業者向け販売と消費者向け販売を区分できる状態にしておく必要があります。

「卸値で売っているから第1種」「ロット販売だから第1種」といった判断では不十分です。事業者への販売であることを、後から資料できちんと説明できるかどうかが問われます。

第2種事業|小売業と飲食料品の譲渡に係る農林漁業

第2種事業は、主に小売業です。

小売業とは、他の者から購入した商品を、その性質・形状を変更しないで販売する事業のうち、第1種事業以外のものをいいます。仕入商品をそのまま販売するという点では第1種事業と共通しますが、販売先が事業者に限定されない点が異なります。

また、現在の取扱いでは、農業・林業・漁業のうち、飲食料品の譲渡に係る事業も第2種事業に含まれます。

第2種事業の判断では、次の点を確認します。

判断要素内容
仕入商品を販売しているか他から購入した商品を販売しているか
性質・形状を変更していないか商品の本質を変えていないか
第1種に該当しないか事業者向け卸売として明確に区分されていないか
農林漁業の場合飲食料品の譲渡に係る売上か

食料品小売については、店舗で一般的に行われる軽微な加工も、一定の要件を満たすものであれば第2種事業として扱って差し支えないとされています。具体的には、食料品小売店が他から購入した食料品を同一店舗内で軽微に加工して販売する場合が、これにあたります。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

ただし、どこまでが軽微な加工で、どこからが製造や飲食店業に近づくのかは、個別の判断が必要になります。本記事では第2種の全体像にとどめ、具体的な境界事例は、後続の記事「簡易課税の事業区分を取引単位で判断する」であらためて扱います。

第3種事業|製造業等

第3種事業は、製造業等です。

具体的には、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業を除くもの、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業などが含まれます。

第3種事業には、これらの業種が挙げられる一方で、第1種・第2種に該当するもの、および加工賃その他これに類する料金を対価とする役務提供は除かれます。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

第3種事業では、次の視点が重要になります。

判断要素内容
自社が製造・建設等をしているか自己の事業として製品・成果物を作っているか
単なる仕入商品の販売ではないか他から購入した商品をそのまま販売している場合は第1種・第2種を先に検討する
加工賃収入ではないか他人の材料等に加工を施す役務提供は第4種または第5種の検討対象となる
製造小売業か自己の製造した商品を直接消費者へ販売する場合も第3種に含まれる

消費税法基本通達でも、第3種・第5種・第6種の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎として判定するものとされています。そのうえで、他から購入した商品を性質・形状を変更しないで販売する事業は第1種または第2種に該当し、製造業等にあたる場合でも、加工賃等を対価とする役務提供は第4種に該当する、と整理されています。
出典:国税庁|消費税法基本通達 第13章 第2節 事業区分の判定

また、製造小売業は、日本標準産業分類では小売業に分類される場合がありますが、簡易課税制度上は第3種事業に該当します。
出典:国税庁|消費税法基本通達 第13章 第2節 事業区分の判定

したがって、事業区分を判断するときは、表面的な業種分類だけで済ませるのではなく、売上の対象が「仕入商品の転売」なのか、「自己の製造・建設等による成果物」なのか、「他人の材料等への加工役務」なのかを、丁寧に分けていく必要があります。

第4種事業|その他の事業

第4種事業は、第1種、第2種、第3種、第5種、第6種のいずれにも該当しない事業です。

代表的なものとしては、飲食店業などが含まれます。また、第3種事業から除かれる「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」も、第4種事業となります。

第4種事業は、第1種から第3種、第5種、第6種以外の事業であり、具体的には飲食店業などがこれにあたります。あわせて、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務提供も、第4種事業として扱われます。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

第4種事業で実務上見落としやすいのは、次のような点です。

項目注意点
飲食店業サービス業等ではなく、第4種事業になる
加工賃収入製造業等から除かれ、第4種事業となる場合がある
固定資産売却本業の区分ではなく、第4種事業となる
その他の収入どの区分にも当てはまらない課税売上を、安易に本業区分へ含めない

事業者が自己において使用していた固定資産等の譲渡を行う事業も、第4種事業に該当します。
出典:国税庁|消費税法基本通達 第13章 第2節 事業区分の判定

この点は、決算時にとくに見落とされやすい論点です。機械、車両、備品、ゴルフ会員権などの固定資産売却が発生したとき、その売上を通常の本業売上と同じ事業区分に入れてしまうと、簡易課税の計算そのものが誤ってしまう可能性があります。

第4種事業は「その他」と呼ばれるために軽く見られがちですが、実務上はむしろ重要な調整区分だと考えておくとよいでしょう。

第5種事業|サービス業等

第5種事業は、運輸通信業、金融・保険業、サービス業等です。ただし、飲食店業に該当するものは第5種事業から除かれます。

第5種事業は、第1種から第3種以外の事業を対象として、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎に判定します。日本標準産業分類上、運輸通信業、金融・保険業、サービス業に該当するものは、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務提供であっても、第5種事業に該当します。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

第5種事業を判断するときは、次の点を確認します。

判断要素内容
役務提供か商品販売ではなく、サービス提供の対価か
第1種から第3種に該当しないか仕入商品の販売、製造業等に該当する売上ではないか
飲食店業ではないか飲食店業は第4種に整理される
日本標準産業分類上の位置づけ情報通信、運輸、金融保険、専門サービス、医療福祉等に該当するか

サービス業等として整理されるものには、情報通信業、運輸業・郵便業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業のうち不動産業を除くもの、学術研究・専門技術サービス業、宿泊業、生活関連サービス業、医療・福祉、教育、複合サービス事業、サービス業等が挙げられています。
出典:国税庁|消費税法基本通達 第13章 第2節 事業区分の判定

実務上気をつけたいのは、「サービス」と名のつくものをすべて第5種にしてしまうのではなく、飲食店業や加工賃収入など、第4種に該当するものが混ざっていないかを確認することです。

また、医療、福祉、教育、金融、不動産関連などは、非課税売上が混在することがあります。第5種の事業区分を検討する前に、その収入が課税売上なのか、非課税売上なのかを先に整理しておく必要があります。

第6種事業|不動産業

第6種事業は、不動産業です。みなし仕入率は40%で、6区分の中では最も低い率になります。

第6種事業は、日本標準産業分類の大分類の区分が不動産業に該当するものをいいます。
出典:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

さらに基本通達では、この「不動産業」とは、日本標準産業分類の大分類に掲げる「不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものをいうと整理されています。
出典:国税庁|消費税法基本通達 第13章 第2節 事業区分の判定

ここで注意したいのは、不動産に関係する収入であっても、常に第6種とは限らないという点です。

たとえば、不動産業に該当する売上は第6種を検討しますが、自己使用していた固定資産の売却は第4種に該当します。また、土地の譲渡や住宅の貸付けなど、そもそも非課税取引にあたるものは、簡易課税の事業区分以前に、課税売上ではありません。

不動産関係では、次の順序で考えていく必要があります。

  1. その収入が課税売上か、非課税売上か、不課税収入か
  2. 課税売上である場合、不動産業としての売上か
  3. 固定資産売却など、第4種に整理すべき売上ではないか
  4. 住宅貸付け、土地取引など、非課税となるものが混在していないか

第6種はみなし仕入率が低いぶん、納付税額への影響が大きくなります。形式的に「不動産関係だから第6種」と処理してしまうのではなく、取引の法的性質を先に確認しておくことが大切です。

事業区分は「業種名」ではなく「売上の中身」で決める

簡易課税の事業区分で最も避けたいのは、会社案内、登記目的、会計ソフト上の部門名、勘定科目だけで判断してしまうことです。

判断のために本当に必要なのは、次のような売上の中身です。

確認すべき事項確認する理由
何を提供したか資産の譲渡か、役務提供か、貸付けかを分けるため
誰に販売したか第1種と第2種を分けるため
他から購入した商品か卸売・小売と製造等を分けるため
性質・形状を変更したか第1種・第2種に該当するかを確認するため
自社で製造・建設したか第3種を検討するため
他人の材料等に加工したか第4種または第5種を検討するため
飲食店業に該当するか第4種と第5種を分けるため
不動産業に該当するか第6種かどうかを確認するため
固定資産売却か第4種として整理すべきか確認するため

このように並べてみると、簡易課税の事業区分は、単なる税率表の暗記ではなく、売上取引の性質を一つずつ分解していく作業であることが見えてきます。

事業区分を誤ると、納付税額が直接変わる

簡易課税では、みなし仕入率が高いほど、控除される仕入税額が大きくなり、納付税額は小さくなります。反対に、みなし仕入率が低いほど、控除額は小さくなり、納付税額は大きくなります。

同じ売上税額でも、第1種事業は90%を仕入税額とみなすのに対して、第6種事業では40%しかみなし控除されません。事業区分を誤れば、それだけで税額の差は大きくなってしまうということです。

とくに注意しておきたいのは、次のような誤区分です。

誤りやすい処理本来確認すべきこと
会社全体を主業種だけで分類する売上取引ごとに判定する
サービス料だからすべて第5種とする飲食店業や加工賃収入に該当しないか確認する
不動産関係だからすべて第6種とする非課税取引、固定資産売却、第4種との切り分けを確認する
製造業だからすべて第3種とする仕入商品の転売や加工賃収入がないか確認する
卸売・小売を売上先で分けていない事業者向け販売かどうかを資料で確認する
固定資産売却を本業売上に含める第4種事業として整理すべきか確認する

事業区分の誤りは、単なる分類ミスにとどまりません。納付税額、修正申告、延滞税・加算税、そして税務調査時の説明可能性にまで、そのまま直結してきます。

複数の事業区分がある場合は、売上区分管理が必要になる

一つの事業者が、複数の事業区分に該当する売上を持つことは、決して珍しくありません。

簡易課税では、複数の事業を営む場合、原則として事業区分ごとに売上税額を区分したうえで、みなし仕入率を適用します。

ここで売上区分ができていないと、納税者に有利な主業種の率を自由に使える、というわけにはいきません。

事業の種類の区分が行われていない課税売上高については、その区分されていない課税売上高に含まれる事業のうち、最も低いみなし仕入率に係る事業として計算することになります。また、課税売上高の一部だけを区分している場合は、区分している部分はその区分により、区分していない部分は同じルールによって計算します。
出典:国税庁|事業の種類が区分されていない場合

これは、売上区分管理の重要性をそのまま物語っています。

会計ソフト上で「課税売上10%」「課税売上8%」と税率だけを区分していても、簡易課税ではそれだけでは足りません。必要なのは、税率区分に加えて、簡易課税の事業区分まで管理できる状態です。

税率区分と事業区分は別の管理項目である

簡易課税を適用する場合、売上管理では少なくとも次の2つの軸が必要になります。

管理軸内容
税率区分標準税率10%、軽減税率8%、旧税率、免税、不課税、非課税など
事業区分第1種、第2種、第3種、第4種、第5種、第6種

たとえば、軽減税率8%の売上であっても、第2種、第3種、第4種など、事業区分が異なる可能性があります。標準税率10%の売上であっても、卸売、小売、製造、サービス、不動産、固定資産売却などに分かれることがあります。

したがって、簡易課税を適用する事業者では、売上伝票、請求書、レジデータ、販売管理システム、会計ソフトの税区分マスターを、次のように設計しておく必要があります。

  • 消費税率を区分する
  • 課税、非課税、不課税、免税を区分する
  • 簡易課税の事業区分を区分する
  • 売上対価の返還等も事業区分別に追跡する
  • 固定資産売却など、通常売上と異なる収入を別管理する
  • 事業区分判断の根拠を、契約書・請求書・売上明細と紐付ける

簡易課税は、あくまで仕入側の集計を簡便にする制度です。売上側の管理まで不要にしてくれる制度ではない、という点は押さえておきたいところです。

事業区分の判断に必要な資料

税務調査や申告内容の見直しに耐えるためには、事業区分の判断根拠をきちんと残しておくことが欠かせません。

少なくとも、次の資料を確認できる状態にしておきたいところです。

資料確認できること
取引基本契約書何を提供する契約か、販売か役務提供か
注文書・発注書取引内容、数量、仕様、相手方
納品書・検収書資産の引渡し、成果物、納品内容
請求書対価の内訳、税率、取引内容
レジ・POSデータ商品別、税率別、店舗別、販売形態別の売上
販売管理システム売上先、商品分類、販売ルート
取引先マスター事業者向け販売か、消費者向け販売か
製造指図書・作業記録自社製造か、加工賃収入か
固定資産台帳固定資産売却の把握
部門別売上資料複数事業の売上区分

とくに、第1種と第2種を分けるには、販売先が事業者であることを帳簿や書類で説明できる必要があります。第3種と第4種を分けるには、自社の成果物の販売なのか、他人の材料等に加工等を施す役務提供なのかを見極めることになります。第5種と第4種を分けるには、サービス業等なのか、飲食店業等なのかを確認しておく必要があります。

令和8年度改正と事業区分への実務上の視点

令和8年度税制改正では、国境を越えた電子商取引に関する消費税の課税関係について、見直しが行われています。税制改正大綱では、特定少額資産の譲渡について、簡易課税制度における仕入控除税額の計算の基礎となる課税資産の譲渡等の範囲から除外する旨が示されています。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱

これは、本記事で扱う一般的な第1種から第6種までの事業区分そのものの説明とは、別の論点になります。ただし、越境EC、プラットフォーム取引、国外発送の物品販売を行う事業者は、将来の改正適用時期、課税対象、簡易課税計算への反映を、別途確認しておく必要があります。

このように、簡易課税の事業区分は、国内の通常取引だけを見ていれば完結する、とは限りません。とくに、デジタル商流や越境取引がある場合には、事業区分だけでなく、そもそも日本の消費税の課税対象に含まれるのか、誰が納税義務者となるのかを、先に確認しておく必要があります。

事業区分を判断する実務フロー

簡易課税の事業区分を検討するときは、次の順序で整理していくと、判断が安定します。

1. その収入が課税売上かを確認する

非課税売上、不課税収入、免税売上、課税売上を、まず先に分けます。

簡易課税の事業区分は、課税売上に対してみなし仕入率を適用するための分類です。そもそも課税売上でないものを事業区分に入れてしまうと、売上税額そのものが誤ってしまいます。

2. 売上取引の単位を確認する

一つの契約や請求書の中に、資産の譲渡と役務提供が混在することがあります。

対価が明確に区分されている場合には、その区分ごとに事業区分を判定します。逆に、形式的には一つの請求であっても、実態としては複数の取引が混在していないかを確認しておきます。

3. 仕入商品の転売か、自社の製造・役務提供かを確認する

第1種・第2種は、他から購入した商品を性質・形状を変更しないで販売する事業です。

自社で製造したものを販売しているのか、他人の材料等に加工しているのか、それとも単なる仕入商品の販売なのか。ここで区分が変わってきます。

4. 販売先が事業者か、一般消費者かを確認する

仕入商品をそのまま販売する場合、第1種と第2種の違いは、主に販売先にあります。

事業者向け販売として第1種を適用するには、事業者への販売であることを帳簿や書類等で説明できる状態にしておくことが大切です。

5. 日本標準産業分類を参考にしつつ、例外を確認する

第3種、第5種、第6種は、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎として判定します。

ただし、分類名だけで結論を出すのではなく、購入商品の転売、加工賃収入、飲食店業、不動産業、固定資産売却といった例外的な整理を、あわせて確認しておきます。

6. 売上区分を会計処理へ反映する

判断した事業区分は、会計ソフト、販売管理、請求システム、レジ、部門別売上へと反映していきます。

判断だけが正しくても、月次処理で再現できなければ、申告時に集計することができません。簡易課税では、売上データの分類が、そのまま申告精度に影響します。

簡易課税の事業区分で相談が必要になりやすい場面

次のような場合には、事業区分を慎重に確認しておく必要があります。

状況注意点
卸売と小売が混在している第1種と第2種を販売先別に分ける必要がある
仕入販売と自社製造が混在している第2種と第3種の切り分けが必要
製造、加工、修理、保守が混在している第3種、第4種、第5種の判断が必要
飲食と物販が混在している飲食店業と商品販売の区分が必要
宿泊、飲食、サービス料がある第4種と第5種の切り分けが必要
不動産賃貸、不動産売買、固定資産売却がある第6種、第4種、非課税取引の整理が必要
医療、福祉、教育、金融等の非課税売上がある事業区分以前に課税・非課税の判定が必要
越境ECやプラットフォーム取引がある内外判定、納税義務者、改正適用時期も確認が必要
会計ソフトで売上区分を一括処理している税率区分と事業区分が混同されていないか確認が必要
固定資産売却が発生した本業の区分ではなく第4種に該当する可能性がある

これらは、単に「どの率が有利か」という問題にとどまりません。契約、請求、売上管理、証憑保存、そして税務調査時の説明可能性にまで関わってくる問題です。

まとめ

簡易課税の第1種から第6種までの事業区分は、みなし仕入率を決めるための分類です。

ただし、実務のうえでは、単なる業種表ではありません。事業区分は、会社全体の業種名ではなく、原則として売上取引ごとに判断していくものです。

押さえておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 第1種は、仕入商品を性質・形状を変えずに事業者へ販売する卸売業
  • 第2種は、仕入商品を性質・形状を変えずに販売する小売業等
  • 第3種は、製造業、建設業、農林漁業の一部など
  • 第4種は、その他の事業、飲食店業、加工賃収入、固定資産売却など
  • 第5種は、運輸通信業、金融・保険業、サービス業等。ただし飲食店業を除く
  • 第6種は、不動産業
  • 事業区分は、原則として課税資産の譲渡等ごとに判定する
  • 税率区分と事業区分は、別の管理項目である
  • 複数事業がある場合には、売上区分管理が申告精度を左右する
  • 区分していない売上は、納税者に都合のよい主業種で処理できるわけではない

簡易課税は、仕入側の実額計算を簡便にする制度です。しかし、その代わりに、売上側の分類、事業区分、証拠資料、月次処理の精度が問われます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、簡易課税の事業区分、原則課税との比較、インボイス制度後の方式選択、売上区分マスターの設計、月次経理への落とし込みまで、取引実態に即して整理する支援を行っています。

自社の売上が第何種に該当するか不安がある場合、複数の売上区分が混在している場合、あるいは過去からの会計ソフト設定を見直したい場合は、売上明細、契約書、請求書、販売管理データを整理したうえで、どうぞご相談ください。

振り返り

項目押さえるべきポイント
事業区分の基本簡易課税の事業区分は、仕入ではなく売上の分類である
判定単位原則として、課税資産の譲渡等ごと、つまり取引単位で判定する
第1種事業卸売業。仕入商品を性質・形状を変えずに事業者へ販売する事業
第2種事業小売業等。仕入商品を性質・形状を変えずに販売する事業で、第1種以外のもの
第3種事業製造業、建設業、農林漁業の一部など。製造小売業も含まれる
第4種事業その他の事業。飲食店業、一定の加工賃収入、固定資産売却など
第5種事業運輸通信業、金融・保険業、サービス業等。ただし飲食店業は除く
第6種事業不動産業。非課税取引や固定資産売却との切り分けが必要
税率区分との違い標準税率・軽減税率の区分と、第1種から第6種の区分は別管理
複数事業複数区分の売上がある場合、売上区分管理が必要
説明資料契約書、請求書、売上明細、取引先マスター、固定資産台帳等で判断根拠を残す
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