土地建物一括売買の価額区分|消費税で建物価額をどう合理的に按分するか

土地と建物をまとめて売買するとき、消費税の実務で最初に問われるのは「建物部分の価額をいくらと見るか」です。

土地の譲渡は非課税、建物の譲渡は課税取引です。ですから、同じ総額の売買であっても、建物価額をどう区分するかによって、その先の処理は大きく変わってきます。売主の売上税額、買主の仕入税額控除、インボイスの記載、固定資産台帳、減価償却、課税売上割合、そして税務調査での説明内容にまで影響が及びます。

この論点は、単なる計算技術ではありません。

契約書に内訳を書くのか。固定資産税評価額で按分するのか。鑑定評価を取るべきか。建物が古い場合でも固定資産税評価額だけでよいのか。売主と買主で異なる区分をしてよいのか。消費税額を減らすために建物価額を低くすることは許されるのか。問われる点は、いずれも実務の判断そのものです。

土地建物の価額区分は、取引価格、契約交渉、証憑、会計処理、申告、税務調査が一本の線でつながる、高難度の論点だといえます。

この記事では、土地建物一括売買の価額区分について、消費税の観点から、実務でどう考え、どのような資料を残しておくべきかを整理します。

なお、本稿で中心に扱うのは、土地建物一括売買における価額区分です。土地・建物の売却そのものの課税区分は「14-1. 土地・建物の売却に係る消費税」で、固定資産税等精算金・仲介手数料・取得付随費用は「14-7. 固定資産税等精算金・仲介手数料・取得付随費用」で、それぞれ詳しく扱います。ここでは、価額区分に必要な範囲で触れるにとどめます。

目次

土地建物一括売買では、なぜ価額区分が問題になるのか

土地と建物を一括で売買するとき、契約上は「土地建物一式」「不動産売買代金総額」として取引されることがあります。

しかし、消費税では、土地と建物の取扱いが異なります。

まず、土地の譲渡は非課税取引です。非課税取引の代表例として「土地の譲渡および貸付け」が挙げられており、この土地には、借地権など土地の上に存する権利も含まれます。
出典:国税庁|No.6201 非課税となる取引

一方、建物の譲渡は、土地の譲渡とは異なり、非課税取引としては列挙されていません。課税事業者が事業として建物を売却する場合、建物部分は原則として課税資産の譲渡等に該当します。国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡は消費税の課税対象であり、事業等に用いている建物の売却は、その資産の譲渡の具体例に含まれます。
出典:国税庁|No.6145 資産の譲渡の具体例

そのため、土地と建物をまとめて売買した場合でも、消費税の申告上は、少なくとも次のように分けて考える必要があります。

土地部分は、非課税売上または非課税仕入れに対応する部分です。建物部分は、課税売上または課税仕入れに対応する部分です。そして、建物部分の価額が、売主側では課税標準、買主側では仕入税額控除や固定資産台帳に影響してきます。

この点は制度上も明確で、土地とその上に存する建物を一括して譲渡した場合、土地の譲渡は非課税、建物部分についてのみ課税されます。したがって、譲渡代金を土地と建物部分に合理的に区分する必要があります。
出典:国税庁|No.6301 課税標準

つまり、土地建物一括売買では、「総額がいくらか」だけでは、消費税申告に必要な情報としては足りません。

「建物部分はいくらか」を、契約・評価・証憑・会計処理の面から説明できる状態にしておくことが求められます。

価額区分は、売主だけでなく買主にも影響する

価額区分というと、売主側の消費税額の問題として捉えられがちです。

確かに、売主が課税事業者であれば、建物部分の譲渡対価が大きいほど、売上税額も大きくなります。土地部分は非課税ですから、売主にとっては「建物価額をいくらと見るか」が、そのまま納付税額に直結します。

しかし、買主側の影響も、これに劣らず重要です。

買主が課税事業者で原則課税を適用している場合、建物部分に係る消費税は、要件を満たせば仕入税額控除の対象になります。他方、土地部分は非課税資産の取得ですから、土地取得部分について仕入税額控除はありません。

したがって、同じ売買総額であっても、建物価額が大きければ、売主の売上税額は増え、買主の控除可能な仕入税額も増える可能性があります。反対に、建物価額が小さければ、売主の納付税額は減る一方で、買主の控除対象額も小さくなります。

ここに、売主と買主の利害の違いが生じます。

売主は建物価額を小さくしたいと考えやすく、買主は建物価額を大きくしたいと考えやすい。そうした場面が実際にあります。特に、買主が原則課税で、建物部分について仕入税額控除を見込んでいる場合、契約書上の建物価額やインボイスの記載は、実質的な取得コストを左右します。

さらに、買主にとって建物価額は、減価償却資産の取得価額にも関係します。建物価額が大きいほど、法人税・所得税上の減価償却費に影響します。土地は、そもそも減価償却できません。

このように、土地建物の価額区分は、売主の消費税だけでなく、買主の仕入税額控除、減価償却、固定資産台帳、資金繰り、価格交渉にまで波及していきます。

だからこそ、売主と買主がそれぞれ都合のよい区分をするのではなく、取引全体として説明できる価額区分を行う必要があるのです。

基本原則は「合理的に区分する」こと

土地建物一括売買の価額区分について、消費税法基本通達10-1-5は、事業者が異なる区分の資産を同一の者に同時に譲渡した場合、それぞれの資産の譲渡の対価を合理的に区分しなければならないとしています。そして、合理的に区分されていないときは、それぞれの譲渡に係る通常の取引価額を基礎として区分することに留意する、とされています。
出典:国税庁|消費税法基本通達10-1-5

ここで押さえておきたいのは、「契約書に書けばそれで済む」という単純な話ではない、ということです。

もちろん、契約書に土地価額、建物価額、建物に係る消費税額が明確に記載されていることは、実務上きわめて重要です。不動産売買では、土地建物双方を一括して売買する契約書式が想定されており、売買対象、代金、所有権移転、引渡し、登記、解除、手付、公租公課の負担などを明確にしておくのが基本になります。

しかし、契約書の内訳が、客観的な資料に照らして著しく不合理である場合には、契約書記載額だけで税務上当然に認められるとは限りません。

合理的な区分方法としては、次のものが示されています。

  • 譲渡時における土地および建物のそれぞれの時価の比率による按分
  • 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
  • 土地、建物の原価を基にした按分
  • 所得税または法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いによる区分

出典:国税庁|No.6301 課税標準

これらは、どれか一つだけが絶対的に正しい、という性質のものではありません。

大切なのは、対象不動産の状況、取引経緯、評価資料、契約内容、売主・買主それぞれの処理との整合性を踏まえたうえで、「なぜその方法を採用したのか」を説明できることです。

契約書に内訳がある場合でも、合理性の検討は必要

土地建物一括売買で最も望ましいのは、契約締結の時点で、土地価額、建物価額、建物に係る消費税額を明確にしておくことです。

ただし、契約書に内訳がある場合でも、実務上は次の点を確認しておく必要があります。

一つ目は、その内訳が当事者の真実の合意を反映しているかどうかです。

土地建物の売買価額は、当事者間の契約意思によって決まります。そのため、売買契約書に土地と建物それぞれの価額が記載されているときは、故意に実体と異なる内容を表示したなどの特段の事情が認められない限り、契約書記載の価額が重視される、という考え方が実務上あります。実際、平成20年5月8日の国税不服審判所裁決でも、土地建物売買契約書に土地価額、建物価額、建物に係る消費税額が記載されていた事案について、その契約書記載内容と固定資産税評価額との関係が検討されています。
出典:国税不服審判所|平成20年5月8日裁決・裁決事例集No.75 711頁

二つ目は、その内訳が客観的資料と大きく乖離していないかどうかです。

契約書上、建物価額が極端に低く、土地価額が極端に高い場合には、売主側の消費税額を小さくするための区分ではないか、と見られる可能性があります。逆に、買主側で仕入税額控除や減価償却費を大きくするために、建物価額を不自然に高くしていると見られることもあります。

三つ目は、売主と買主の処理が整合しているかどうかです。

売主が建物価額を低く処理し、買主が建物価額を高く処理していれば、同じ取引について、異なる経済的実態を前提にしていることになります。売主と買主は、実務上それぞれ別の納税者ですが、税務調査では、契約書、インボイス、決済明細、固定資産台帳、そして相手方の処理との整合性が確認される可能性があります。

したがって、契約書に内訳がある場合でも、契約書記載額、評価根拠、会計処理、インボイス、相手方との合意内容を、一体のものとして確認しておく必要があります。

契約書に内訳がない場合は、合理的な按分方法を選ぶ

契約書に土地・建物の内訳がない場合、または「土地建物一式」としか記載されていない場合には、売買総額を合理的な方法で、土地部分と建物部分に按分する必要があります。

このときに使われやすい方法は、主に次の三つです。

時価比率による按分

最も原則的な考え方は、譲渡時における土地と建物それぞれの時価を把握し、その比率で売買総額を按分する方法です。

不動産鑑定評価を取得している場合や、売買時点の市場価格を合理的に説明できる資料がある場合には、有力な方法になります。

ただし、時価比率による按分は、評価の精度が高い反面、評価コストや時間がかかります。また、土地と建物の時価をどう算定するかによって結果が変わるため、評価書や算定資料の内容が重要になります。

とりわけ、建物が古くても収益力がある場合、特殊な用途の建物である場合、大規模修繕の直後である場合、再調達価額と市場価値に差がある場合などは、固定資産税評価額だけでは実態を十分に反映しきれないことがあります。

相続税評価額・固定資産税評価額を基にした按分

実務で使われやすいのは、相続税評価額や固定資産税評価額を基に按分する方法です。

固定資産税評価額は、市区町村等が固定資産税の課税のために評価している金額であり、評価証明書や課税明細書で確認できます。取得しやすく、第三者が作成した公的性格のある評価資料であることから、実務上の説明資料として使いやすい方法です。

ただし、固定資産税評価額にも限界があります。

固定資産税評価額は、消費税の建物価額を算定するために作られた評価額ではありません。建物の実際の収益力、修繕状況、用途、老朽化、解体予定、特殊設備の価値などを、十分に反映しないこともあります。

そのため、固定資産税評価額による按分を採用する場合でも、「簡便だから」ではなく、「対象不動産の状況に照らして著しく不合理ではない」と説明できるかどうかを、確認しておく必要があります。

原価を基にした按分

土地と建物の原価を基に按分する方法もあります。

ここでいう土地・建物の原価には、取得費、造成費、一般管理費、販売費、支払利子等が含まれます。
出典:国税庁|No.6301 課税標準

原価を基にした按分は、不動産開発業者、建売業者、棚卸資産として土地建物を保有している事業者などで、検討されやすい方法です。取得・造成・建築・販売に係る原価データが整備されていれば、実態に即した説明が可能になります。

一方で、長年保有している不動産や、相続・合併・事業承継によって取得した不動産では、原価資料が十分に残っていないことがあります。また、過去の取得価額が現在の時価と大きく乖離している場合には、原価比率だけで現在の売買代金を按分することが合理的かどうかを、あらためて検討する必要があります。

固定資産税評価額による按分が常に安全とは限らない

固定資産税評価額による按分は、実務上よく使われます。

しかし、「固定資産税評価額で按分しておけば必ず安全」と考えるのは危険です。

固定資産税評価額は、公的な評価であるだけに説明しやすい方法ではあります。ただ、不動産の個別事情によっては、実際の価値を適切に反映しないことがあります。

たとえば、建物が古く、固定資産税評価額上は一定の価額が残っていても、実際には近く解体予定である、というケースがあります。このような場合に、建物へ高い価額を割り当てることが合理的かどうかは、解体条件、売買契約、買主の利用目的、引渡時の状態を確認したうえで判断する必要があります。

反対に、法定耐用年数を経過していても、適切に修繕され、収益を生み続けている建物であれば、固定資産税評価額だけでは建物の価値を低く見すぎている可能性もあります。

土地についても事情は同じで、固定資産税評価額は時価と一致するものではありません。再開発予定地、借地権負担付きの土地、接道条件に問題がある土地、地役権・越境・土壌汚染・造成費が見込まれる土地などでは、固定資産税評価額だけで実態を十分に説明できないことがあります。

そのため、固定資産税評価額による按分は、実務上は有力な方法ではあるものの、対象不動産の状態に照らして不合理な結果になっていないかを、必ず確認する必要があります。

価額区分で大切なのは、方法の名前ではありません。

「その方法が、この不動産、この契約、この取引時点で合理的か」という説明のほうです。

不動産鑑定評価を使うべき場面

すべての土地建物一括売買で、不動産鑑定評価が必要になるわけではありません。

しかし、次のような場面では、鑑定評価、またはそれに準ずる専門的評価を検討する価値があります。売買金額が大きく、建物部分の消費税額が重要である場合。土地と建物の評価額の差が大きく、簡易な按分では税額への影響が大きい場合。固定資産税評価額による按分結果が、実際の取引感覚と大きくずれる場合。建物が特殊用途で、通常の固定資産税評価額だけでは価値を説明しにくい場合。売主と買主の利害が対立し、客観的な第三者評価が必要な場合。そして、税務調査で争点化する可能性が高い場合です。

不動産鑑定評価を使うメリットは、評価過程と評価根拠が文章として残ることにあります。

価額区分は、後から説明できなければ意味がありません。鑑定評価書には、対象不動産、評価時点、権利関係、取引事例、収益性、原価性、地域要因、個別要因などが整理されます。そのため、単なる社内計算よりも、第三者に説明しやすい資料になります。

ただし、鑑定評価を取れば、その評価額が必ず税務上認められる、というわけではありません。

評価前提が売買実態と合っているか。評価時点が適切か。建物の解体予定や利用状況を反映しているか。土地建物全体の売買価格と整合しているか。こうした点を確認しておく必要があります。

また、鑑定評価は、取得するタイミングも重要です。税務調査になってから後付けで評価を取るよりも、契約締結前、あるいは決済前の段階で、価額区分の根拠として検討しておくほうが、取引設計としては望ましいといえます。

「消費税額から建物価額を逆算する」場合の注意点

土地建物売買契約書に、土地価額・建物価額が明記されていなくても、「うち消費税額」が記載されていることがあります。

この場合、通常はその消費税額から、建物部分の税抜価額を逆算できます。たとえば、標準税率10%の課税取引であれば、契約書に記載された消費税額から、建物部分の税抜価額を推定することが可能です。

ただし、ここでも注意が必要です。

契約書の「うち消費税額」が、何を前提に計算されているかを確認しなければなりません。建物本体だけなのか。建物附属設備や構築物を含むのか。固定資産税等精算金の建物対応部分を含むのか。売主はインボイス発行事業者なのか。そもそも売主が課税事業者として建物を譲渡しているのか。

さらに、契約書に記載された消費税額が、税率や建物価額と整合していないこともあります。端数処理、税込・税抜の混同、土地部分まで含めて消費税額を表示してしまっている誤り、免税事業者である売主が消費税額を表示している問題などです。

したがって、「うち消費税額」の記載がある場合でも、その金額をそのまま受け入れるのではなく、契約書、決済明細、請求書、領収書、インボイス、そして売主の登録状況を確認する必要があります。

建物附属設備・構築物・庭園等をどう扱うか

土地建物一括売買では、「建物」と「土地」だけを見ていると、実際の売買対象を捉えきれないことがあります。

売買対象には、建物本体のほか、建物附属設備、構築物、舗装、フェンス、門扉、看板、受変電設備、給排水設備、空調設備、エレベーター、機械装置、什器備品などが含まれることがあります。

一方で、土地に付随する庭木、石垣、庭園等のうち、宅地と一体として譲渡される一定のものは、土地に含まれる場合があります。消費税法基本通達6-1-1によれば、「土地」には、立木その他独立して取引の対象となる土地の定着物は含まれませんが、宅地と一体として譲渡する庭木、石垣、庭園その他これらに類するもののうち一定のものは土地に含まれ、建物およびその附属施設は除かれます。
出典:国税庁|消費税法基本通達6-1-1

この区分は、消費税だけでなく、固定資産台帳や減価償却にも関係します。

不動産売買契約書上は「土地建物」とだけ記載されていても、税務上は、売買対象資産を次のように棚卸しする必要があります。土地。土地の上に存する権利。建物本体。建物附属設備。構築物。機械装置。器具備品。動産。庭園・石垣・樹木等。借地権その他の権利。

これらを一つずつ確認しておかなければ、土地と建物の価額区分だけでなく、課税・非課税の区分、減価償却資産の分類、償却資産税、買主側の固定資産台帳にまで、ずれが生じることがあります。

実務では、売買契約書だけでなく、固定資産台帳、償却資産申告書、建物図面、設備一覧、重要事項説明書、決済明細を確認し、売買対象に何が含まれているかを整理しておくことが重要です。

固定資産税等精算金も価額区分と連動する

土地建物一括売買では、売買代金のほかに、固定資産税・都市計画税の未経過分を精算するのが一般的です。

この固定資産税等精算金について、「税金の精算だから消費税の対象外」と考えてしまうことがあります。しかし、不動産売買の際に買主が固定資産税・都市計画税の未経過分を分担する場合、その分担金は、地方公共団体へ納付すべき固定資産税そのものではありません。私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するものと整理されています。
出典:国税庁|未経過固定資産税等の取扱い

消費税法基本通達10-1-6でも、固定資産税等の未経過分相当額を、資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、その未経過分相当額は、資産の譲渡の金額に含まれるとされています。
出典:国税庁|消費税法基本通達10-1-6

したがって、土地建物一括売買で固定資産税等精算金を受け取る場合には、その精算金も、土地対応部分と建物対応部分に分ける必要があります。

土地対応部分は、土地の譲渡対価の一部として非課税売上になります。建物対応部分は、建物の譲渡対価の一部として課税売上になります。

実務でも、居住用賃貸アパートを譲渡した際に、買主から受領した固定資産税の未経過分を課税売上に計上し損ねる、あるいは事業供用していた土地建物を一括譲渡した際に、土地部分を課税売上割合の分母に含め忘れる、といった判断ミスは少なくありません。

価額区分を行うときには、売買代金本体だけでなく、固定資産税等精算金、管理費等精算金、修繕積立金精算金、賃料日割精算、敷金・保証金の承継など、決済時に授受される金銭を、一体のものとして確認しておく必要があります。

売主側の視点:建物部分の課税標準をどう説明するか

売主側で最も重要なのは、建物部分の課税標準を正しく把握することです。

消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額です。ここでいう対価には、資産の譲渡、資産の貸付けや役務の提供について受け取る金額または受け取るべき金額のほか、金銭以外の物や権利その他の経済的利益など、対価として受け取るすべてのものが含まれます。
出典:国税庁|No.6301 課税標準

土地建物一括売買では、この課税標準となるのが、建物部分の対価です。

したがって、売主側では、建物部分の売買代金、建物対応の固定資産税等精算金、建物附属設備や構築物に対応する金額、消費税額の表示、そしてインボイスの記載事項を確認しておく必要があります。

売主が課税事業者であり、インボイス発行事業者である場合には、買主が求めれば、建物部分について適格請求書を交付する必要があります。土地部分は非課税ですが、建物部分は課税取引ですから、契約書、決済明細書、領収書、請求書等のどの書類でインボイス記載事項を満たすかを、あらかじめ決めておく必要があります。インボイス制度のもとでは、仕入税額控除を受けるためにインボイスの保存が必要となり、そのインボイスを発行できるのは、登録を受けた課税事業者に限られる、という基本構造があります。

売主側で避けるべきなのは、消費税額を小さくする目的で、建物価額を根拠なく低く設定することです。

税務調査では、売買契約書、固定資産税評価額、鑑定評価、帳簿価額、減価償却明細、過去の取得価額、修繕履歴、建物の利用状況、買主側の処理などから、建物価額の合理性が確認されることがあります。

もっとも、建物価額を低くすること自体が、直ちに否認されるわけではありません。古い建物で解体予定がある、著しく老朽化している、買主が土地利用を主目的としているなど、実態に即した理由がある場合もあります。

しかし、その理由が契約書や評価資料に残っていなければ、後日、説明することは難しくなります。

買主側の視点:仕入税額控除と固定資産台帳をどう整合させるか

買主側では、建物部分の価額が、仕入税額控除と固定資産台帳の両方に影響します。

買主が原則課税であり、建物を課税事業に使用する場合には、建物部分に係る消費税について、仕入税額控除を検討することになります。その前提として、課税仕入れの支払対価の額を、土地部分と建物部分に合理的に区分する必要があります。

消費税法基本通達11-4-2は、一定の事業者が建物と宅地を同一の者から同時に譲り受けた場合、その譲受けに係る支払対価の額を、課税仕入れに係る支払対価の額と、その他の仕入れに係る支払対価の額とに合理的に区分しなければならないとしています。
出典:国税庁|消費税法基本通達11-4-2

ここで買主側が注意すべきなのは、売主側の契約書内訳と異なる建物価額で処理したい場合です。

たとえば、契約書上は建物価額が低く記載されているものの、固定資産税評価額で按分すると建物価額がもっと高くなるため、買主側ではより高い建物価額を用いて、仕入税額控除や減価償却を行いたい、という場面があります。

しかし、契約書に土地・建物の内訳が明示されている場合、その内訳は、当事者間の合意を示す重要な資料です。契約書に実態と異なる内容を表示したなどの特段の事情がない限り、契約書記載の価額が重視される可能性があります。実務上も、土地建物の売買契約書に総額と内訳が記載されている場合には、故意に実体と異なる内容を契約書に表示したなどの特段の事情が認められない限り、契約当事者双方の契約意思が表示された契約書記載の建物価額による、と整理するのが一般的です。

したがって、買主側では、契約締結後に「固定資産税評価額で按分し直したほうが有利だった」と気付いても、すでに遅い場合があります。

取得後の仕入税額控除、減価償却、固定資産台帳まで見据えるのであれば、契約締結の前に、土地建物の価額区分を確認し、必要であれば売主と協議して、契約書や決済書類に反映させておくべきです。

売手買手で異なる区分をすると、どこにリスクが生じるか

土地建物一括売買では、売主と買主は、それぞれ独立した納税者です。

そのため、理論上は、売主側の売上処理と買主側の取得処理が完全に同一でなければならない、と単純に言い切れるものではありません。売主側には売却時の課税標準、買主側には取得価額・仕入税額控除という、別の問題があるからです。

しかし、同一の取引について、売主と買主がまったく異なる土地建物区分を採用している場合には、実務上の説明リスクが高くなります。

売主は「建物部分は少額」として消費税を少なく申告し、買主は「建物部分は多額」として仕入税額控除や減価償却を多く計上している。このような処理は、税務調査で、相手方資料、契約書、インボイス、決済資料を確認された際に、整合性の説明を求められる可能性があります。

とりわけインボイス制度のもとでは、売主が交付するインボイス上の課税対象額と税額、買主が保存するインボイス、そして買主の仕入税額控除が、互いに連動します。売主側の課税売上額と買主側の課税仕入額が不自然に一致しない場合には、その処理の根拠を説明できる必要があります。

価額区分は、税額だけの問題ではありません。

契約上の合意、請求・領収、インボイス、会計処理、固定資産台帳、税務申告が、一本の線でつながっているかどうかが重要です。

税務調査では何を見られるか

土地建物一括売買の価額区分は、金額的重要性が高く、税務調査で確認されやすい論点です。

税務調査では、主に次の点が確認される可能性があります。売買契約書に土地・建物の内訳があるか。建物に係る消費税額が記載されているか。その内訳を決めた根拠資料があるか。固定資産税評価額、相続税評価額、鑑定評価、帳簿価額、原価資料との整合性はあるか。固定資産税等精算金を譲渡対価に含めているか。売主と買主の処理は整合しているか。インボイスの記載内容と申告内容が一致しているか。建物附属設備や構築物を見落としていないか。土地売却による課税売上割合への影響を反映しているか。

税務調査では、単に「この方法で計算しました」と説明するだけでは足りません。

なぜその方法を採用したのか。ほかの方法では不合理な結果になるのか。契約時点でどの資料を確認したのか。売主・買主の双方が、その区分を認識していたのか。後から作成した資料ではなく、取引時点での判断資料が残っているか。こうした点が重要になります。

また、重加算税の問題と、通常の価額区分の誤りとは、分けて考える必要があります。価額区分に誤りがあったとしても、それが直ちに隠ぺい・仮装に当たるわけではありません。ただし、仮装の売買契約書を作成する、真実と異なる契約内容を故意に表示する、税額調整だけを目的として実態と異なる金額を記載するような場合には、単なる判断誤りとは別のリスクが生じます。土地建物の売買価額や契約の認識が争われた事例では、納税者の認識、契約の経緯、現金授受、仮装行為の有無が、重加算税判断の焦点になっています。

大切なのは、税額ありきで数字を作るのではなく、取引実態に基づく価額区分を、契約時点から資料で説明できるようにしておくことです。

価額区分が課税売上割合にも影響する

土地建物一括売買では、建物部分の売上税額だけでなく、土地部分の非課税売上が課税売上割合に影響することがあります。

非課税取引と不課税取引は、消費税が課されない点では同じですが、課税売上割合の計算では取扱いが異なります。課税売上割合は、分母を総売上高、すなわち課税取引・非課税取引・免税取引の合計額とし、分子を課税売上高、すなわち課税取引・免税取引の合計額として計算します。非課税取引は原則として分母のみに算入されますが、不課税取引は、分母にも分子にも算入されません。
出典:国税庁|No.6209 非課税と不課税の違い

土地の譲渡は非課税取引ですから、事業者が事業として土地を譲渡した場合、その土地売却代金は、課税売上割合の分母に影響します。

土地建物の価額区分によって、土地部分の非課税売上額と、建物部分の課税売上額が変わります。したがって、価額区分は、建物部分の売上税額だけでなく、課税売上割合の計算にも影響します。

土地の譲渡がたまたま発生したことで課税売上割合が減少し、その割合を適用すると事業の実態を反映しなくなる場合には、課税売上割合に準ずる割合の承認を検討する余地があります。実際、土地の譲渡対価は課税売上割合の計算上、資産の譲渡等の対価に含まれる一方で、たまたま土地の譲渡対価があったことにより課税売上割合が減少し、事業の実態を反映しない場合の承認取扱いが示されています。
出典:国税庁|たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認

ここでも、価額区分の影響は大きくなります。

土地部分を過小にすれば、建物部分の課税売上は増えますが、土地の非課税売上による課税売上割合への影響は小さくなります。土地部分を過大にすれば、建物部分の売上税額は小さくなりますが、課税売上割合が低下する可能性があります。

つまり、価額区分は、売上税額だけを見て判断できるものではありません。仕入控除税額、課税売上割合、共通対応課税仕入れ、申告付表まで含めて確認する必要があります。

実務で採用する按分方法を決めるときの判断軸

土地建物一括売買の価額区分では、次の順序で確認していくと、整理しやすくなります。

最初に、契約書に土地・建物の内訳があるかを確認します。内訳がある場合には、それが当事者の合意を示すものとして、出発点になります。ただし、実態と異なる内容を表示した事情がないか、著しく不合理な金額ではないかは、あわせて確認します。

次に、契約書に内訳がない場合、または内訳に不合理性が疑われる場合には、評価資料を確認します。固定資産税評価額、相続税評価額、時価評価、鑑定評価、取得原価、建築原価、簿価、過去の売買資料、周辺取引事例などを比較します。

続いて、対象不動産の個別事情を確認します。建物の築年数、修繕状況、用途、賃貸状況、解体予定、買主の利用目的、土地の開発可能性、借地権や賃借人の有無、土壌汚染、接道、境界、用途地域、収益性を確認します。

さらに、売手買手の処理の整合性を確認します。売主側の売上税額、買主側の仕入税額控除、インボイス、固定資産台帳、減価償却、決済資料に矛盾がないかを確認します。

最後に、税務調査で説明するための資料を保存します。評価資料、計算メモ、契約交渉資料、社内承認資料、専門家の検討資料を、契約書や決済明細と一緒に保管します。

この流れを踏むことで、単に「固定資産税評価額で按分した」「契約書に書いた」という形式的な処理ではなく、取引実態に即した価額区分として、説明しやすくなります。

価額区分の資料は、契約締結前に整える

土地建物の価額区分は、売買後の会計処理の段階で考えるのでは遅い、ということがあります。

契約書に土地・建物の内訳が記載されないまま決済が終わると、後から評価資料を集めて按分する必要が生じます。売主と買主で認識が異なる場合には、インボイスや決済明細の修正が難しくなることもあります。

また、契約書に不合理な内訳を記載してしまった場合、後から「本当は別の按分のほうが合理的だった」と主張しても、その説明にはハードルがあります。契約書は、当事者の合意を示す重要な証拠だからです。

そのため、不動産売買では、契約締結前、少なくとも決済前に、次の事項を確認しておくべきです。土地・建物の内訳を契約書に明記するか。建物に係る消費税額をどう表示するか。固定資産税評価額、相続税評価額、鑑定評価、原価資料のどれを根拠にするか。固定資産税等精算金をどのように区分するか。売主はインボイス発行事業者か。買主は仕入税額控除を予定しているか。売主買主の双方で同じ内訳を使うか。税務調査時に提示できる資料を、どこに保存するか。

月次監査や決算監査の観点からも、新規契約、設備投資、資産売却・除却の有無を、事前に確認しておくことが重要です。特に資産売却は、会計データに表れる前に契約条件が固まってしまうことが多く、発注、販売、請求、代金回収までのプロセスや証憑書類を、早い段階で確認しておく必要があります。

不動産売買の消費税は、申告書の作成時に初めて検討する税目ではありません。

契約条件が決まった時点で、消費税の結論は、すでに相当程度まで決まっています。

税額ありきの価額区分は避ける

土地建物の価額区分では、税額への影響が大きいため、どうしても「消費税を少なくしたい」「仕入税額控除を大きくしたい」という発想が、先に立ちやすくなります。

しかし、税額ありきで建物価額を動かすことは、避けるべきです。

建物価額を小さくすれば、売主の消費税額は小さくなります。しかし、買主側の仕入税額控除や減価償却との整合が、問題になる可能性があります。反対に、建物価額を大きくすれば、買主にとっては有利に見えることもありますが、売主側の課税売上やインボイスとの整合が必要になります。

さらに、課税売上割合への影響を考えると、土地価額をどう区分するかも、申告全体に影響します。

価額区分は、節税策ではなく、取引実態の表示です。

もちろん、複数の合理的な方法があり、その中から実務上適切な方法を選ぶことは、あり得ます。しかし、その場合でも、選択の理由を説明できることが前提になります。

「消費税額が少なくなるから」「減価償却費を多く取れるから」という理由だけでは、合理的な価額区分とはいえません。

価額区分メモに残しておくべき事項

税務調査で説明できるようにしておくには、価額区分メモを残しておくことが有効です。

メモには、少なくとも次の内容を整理しておくとよいでしょう。

対象不動産の概要。土地の所在地、地目、地積、権利関係、用途地域、接道状況。建物の種類、構造、床面積、築年数、利用状況、修繕履歴、賃貸状況。売買契約の概要。売買総額、土地・建物の契約内訳、消費税額、固定資産税等精算金、引渡日、所有権移転日。

採用した按分方法。固定資産税評価額による按分、時価比率、鑑定評価、原価比率など、どの方法を採用したか。採用しなかった方法とその理由。評価資料。固定資産税評価証明書、課税明細書、路線価、鑑定評価書、取得価額資料、建築原価資料、固定資産台帳、減価償却明細。

消費税処理。土地部分の非課税売上または非課税仕入れ。建物部分の課税売上または課税仕入れ。建物に係る消費税額。インボイスの記載書類。固定資産税等精算金の区分。課税売上割合への影響。

承認・確認の記録。社内承認、売主買主間の確認、専門家による検討、契約書・決済明細への反映。

書類管理の観点からは、必要な資料をすぐに取り出せるように整理・保存しておくことが重要です。申告書・届出書の控えも、関与税理士任せにせず自社でも管理しておくことが、コンプライアンスの強化につながります。

土地建物一括売買の価額区分は、後から再現できなければ、実務上の品質が大きく下がってしまいます。

「どう計算したか」だけでなく、「なぜその計算が合理的と判断されたのか」を残しておくことが重要です。

まとめ

土地建物一括売買の価額区分は、消費税実務の中でも、特に金額的重要性が高く、売主・買主の双方に影響する論点です。

土地は非課税、建物は課税、という基本だけでは足りません。売買総額をどのように土地と建物に区分するか。その区分は契約書にどう反映されているか。固定資産税評価額、時価、原価、鑑定評価のどれを根拠にしたのか。固定資産税等精算金をどう扱うのか。売主と買主の処理は整合しているか。課税売上割合や仕入税額控除にどう影響するか。

これらを、一つずつ整理していく必要があります。

とりわけ重要なのは、価額区分を申告時に後付けで考えない、ということです。

不動産売買では、契約締結の時点で、価額区分、消費税額、インボイス、決済明細、固定資産台帳への反映が、ほぼ決まります。契約後に会計処理だけで整えようとしても、相手方との書類、合意内容、証憑との整合が取れないことがあります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、土地建物一括売買の消費税について、単に按分計算を行うだけでなく、契約書、評価資料、インボイス、決済明細、会計処理、申告、そして税務調査での説明可能性まで含めて整理します。

土地建物の一括売買を予定していて、建物価額の決め方、固定資産税評価額による按分の妥当性、鑑定評価の要否、売主買主間の内訳調整、インボイスや仕入税額控除への影響に不安がある場合は、契約締結前、または決済前の段階でご相談ください。後から税額だけを調整するのではなく、取引時点から説明できる価額区分を整えておくことが重要です。

振り返り

論点基本的な考え方実務上の注意点
土地建物一括売買の基本土地は非課税、建物は課税総額だけでは建物部分の課税標準を計算できない
価額区分の原則土地と建物の対価を合理的に区分する契約書記載額だけでなく、客観的資料との整合を確認する
契約書に内訳がある場合当事者の合意を示す重要資料になる実態と異なる表示や著しい不合理がないか確認する
契約書に内訳がない場合時価、固定資産税評価額、相続税評価額、原価等で按分するどの方法を採用したか、理由と資料を残す
固定資産税評価額実務上使いやすい按分基準古い建物、特殊建物、解体予定、収益物件では実態とずれることがある
鑑定評価高額・特殊・争点化しやすい取引で有効評価前提、評価時点、契約内容との整合が必要
固定資産税等精算金譲渡対価の一部として扱う土地対応部分と建物対応部分に区分する
売主側の影響建物部分が課税標準となる消費税額、インボイス、課税売上割合に影響する
買主側の影響建物部分が仕入税額控除・減価償却に関係する売主側の契約内訳やインボイスとの整合が重要
税務調査対応区分方法の合理性と証拠が確認される契約書、評価資料、計算メモ、決済明細を一体で保存する
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