計画策定後のモニタリングと月次管理|計画を作って終わらせないための実務

経営力向上計画、経営革新計画、先端設備等導入計画、早期経営改善計画、そして経営改善計画策定支援。

これらの制度を使うとき、多くの会社は「計画を作ること」「認定を受けること」「金融機関に提出すること」に意識が向きがちです。

しかし、実務上の失敗は、その後に起こります。

  • 計画書は作ったものの、月次試算表が出てくるのが遅い
  • 売上計画と実績に差が出ているのに、その原因を見ていない
  • 資金繰り表を更新していない
  • アクションプランの担当者と期限が曖昧なままになっている
  • 金融機関に提出した数字と、社内で見ている数字が一致していない
  • 計画未達が続いているのに、計画変更、追加支援、資金調達、撤退判断のタイミングを逃している

認定制度や経営改善計画は、作成した時点では、まだ「仮説」にすぎません。

その仮説が現実の経営で機能しているかどうかを確認する仕組みが、モニタリングと月次管理です。

本稿では、認定制度・改善計画の策定後に何を見ればよいのか、どの数字を月次で確認すべきか、そして計画未達の際にどう早期対応すべきかを整理します。

なお、早期経営改善計画策定支援および経営改善計画策定支援、いわゆる405事業については、2026年3月31日改訂の手引き・マニュアル等が公表されています。早期経営改善計画策定支援では、2026年5月1日改定の金融機関用マニュアル・FAQも掲載されています。実際に利用される際は、必ず最新の手引き、FAQ、様式、各協議会の案内をご確認ください。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援

目次

計画策定後のモニタリングは「報告作業」ではない

モニタリングという言葉は、実務の現場では「報告書を出すこと」と受け取られがちです。

しかし、本来のモニタリングは、報告書を作ることではありません。計画と実績の差を早く見つけ、その原因を分解し、必要な打ち手を決めることです。

たとえば、売上が計画を下回ったとします。

このとき、「売上未達です」と報告するだけでは、経営管理としては不十分です。見るべきなのは、次のような点になります。

  • 既存顧客の取引量が落ちたのか
  • 新規顧客の獲得件数が不足したのか
  • 受注件数は足りているが、単価が下がったのか
  • 単価は維持できたが、粗利率が悪化したのか
  • 営業活動は計画どおり実施したのか
  • 市場環境や競合条件が想定から変わったのか
  • 売上未達が、資金繰りにいつ影響するのか

ここまで見て、はじめて次の打ち手が決まります。

計画策定後のモニタリングとは、数字を見て終わる作業ではありません。経営判断を早めるための仕組みです。

まず確認すべきは「どの計画を管理しているのか」

一口に「計画」といっても、制度ごとに目的は異なります。

  • 経営力向上計画:生産性向上、人材育成、財務管理、設備投資などを通じて経営力を高める計画
  • 経営革新計画:新商品、新サービス、新たな生産方式、販路開拓など、成長施策に関する計画
  • 先端設備等導入計画:自治体認定を前提とした、設備導入に関する計画
  • 早期経営改善計画:資金繰り管理や採算管理など、基本的な経営改善を早めに進めるための計画
  • 405事業の経営改善計画:金融支援を伴う、本格的な改善を進めるための計画

同じ「月次管理」でも、見るべき重点は変わります。

設備投資型の計画であれば、稼働状況、減価償却費、固定費の増加、投資回収、補助対象資産の管理が重要になります。

販路開拓型の計画であれば、商談数、受注率、客単価、粗利率、広告費、回収条件が焦点になります。

経営改善型の計画であれば、営業利益、営業キャッシュフロー、借入返済、在庫、売掛金、固定費削減、金融機関報告が中心になります。

したがって、モニタリングの最初の確認事項は、「何のために作った計画か」ということになります。

計画の目的が曖昧なまま月次資料を眺めても、単なる試算表の確認で終わってしまいます。

早期経営改善計画では、PDCAを自社で回すことが目的になる

早期経営改善計画策定支援の手引きでは、資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図といった早期の経営改善計画を策定し、金融機関に提出することで、経営を見直す契機とすることが示されています。あわせて、資金繰り計画や月次試算表等を適時・適切に、正確な内容で金融機関等へ情報開示・説明し、事業者自身で計画策定や管理のPDCAサイクルを構築できるようになることが目的とされています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き

ここで重要なのは、制度の目的が「計画書を作ること」ではなく、「自社で管理できるようになること」に置かれている点です。

つまり、専門家が作った計画書を保存しておくだけでは、制度の本来の効果は出ません。

会社側に求められるのは、少なくとも次の状態です。

  • 月次試算表が、一定の時期までに出てくる
  • 売上、粗利、固定費、営業利益を計画と比較できる
  • 資金繰り表を毎月更新できる
  • アクションプランの進捗を確認できる
  • 金融機関に説明できる数字と文章を持っている
  • 計画未達のときに、先送りせず対応策を決められる

会計の活用によって経営課題を可視化し、外部専門家の助言を得ながら取り組むことは、金融機関や取引先からの信頼向上にもつながります。具体的な会計活用の項目としては、3か月資金繰り表、翌月10日までの月次決算、実績検討会、全社予算管理、資金計画管理などが挙げられます。

405事業では、伴走支援と金融機関への報告が前提になる

405事業の経営改善計画では、計画策定後の伴走支援、いわゆるモニタリングが、より明確に位置づけられています。

制度上は、DD・計画策定支援として「現状を分析し課題を明確化し対応策を検討する」「今後の計画と実現に向けたアクションプランの検討」「金融支援を受けて資金繰りの安定を図る」ことが整理されており、伴走支援については「計画内容に応じた期間、認定支援機関等による伴走支援を実施」とされています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援

さらに手引き・マニュアルでは、伴走支援は認定経営革新等支援機関が経営改善計画に基づき原則として3年間実施し、伴走支援レポートや計画達成率等の報告を作成して金融機関へ提出し、協議会へも必要書類を提出することが示されています。伴走支援費用の支払申請を行わない場合であっても、原則として3年間、少なくとも年2回以上の伴走支援と協議会への報告が必要とされています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援事業 経営改善計画策定支援〈通常枠〉・中小版GL枠に関する手引き・マニュアル・FAQ

ここで注意したいのは、これは金融機関への報告が「年2回で足りる」という意味ではない、ということです。

制度上の伴走支援報告と、金融機関との実務上のコミュニケーションは、別のものです。

返済条件変更、借換、新規融資、保証協会対応、経営者保証解除などが関係する場合、金融機関から月次試算表、資金繰り表、借入金一覧、改善施策の進捗、受注状況といった資料の提出を求められることがあります。

そのため実務では、制度上の報告頻度だけを基準にするのではなく、金融機関との合意内容、自社の資金繰りリスク、計画未達の程度に応じて、月次または四半期で説明できる体制を作っておく必要があります。

月次管理で最初に整えるべき数字

計画策定後の月次管理といっても、最初から高度な管理会計を導入する必要はありません。

まずは、次の5つを毎月確認できる状態にすることが重要です。

管理資料目的見るべきポイント
月次試算表損益の実績確認売上、粗利、固定費、営業利益、経常利益
予算実績比較表計画との差異把握計画比、前年同月比、累計差異
資金繰り表資金ショートの予防入金、支払、返済、税金、社会保険料、資金残高
アクションプラン進捗表施策の実行確認担当者、期限、実施状況、未実施理由
借入金・返済予定表金融機関対応金融機関別残高、返済額、金利、保証、担保

この5つがないまま計画未達の原因を議論しても、判断はどうしても感覚論になります。

特に中小企業では、損益計算書上の利益と現金残高は一致しません。

売上が増えても、売掛金の回収が遅れれば、資金繰りは苦しくなります。利益が出ていても、借入元本の返済、税金、社会保険料、設備投資の支払いが重なれば、現金は減っていきます。

資金計画の管理においても、利益と資金は一致しないという前提に立ち、売上に伴う入金、原価・費用に伴う支払、設備投資、決算に伴う資金などを考慮しておく必要があります。

月次決算は「早さ」と「正確さ」の両方が必要

月次決算は、早ければよいというものではありません。

とはいえ、正確さを理由に遅すぎても、経営判断には使えません。

月次決算が翌月末にしか出ない会社では、前月の問題に気づく頃には、すでに次月の資金繰りや営業活動に影響が出ています。

経営改善計画や認定計画のモニタリングでは、月次試算表を「過去の記録」としてではなく、「次の行動を決める材料」として使う必要があります。

理想を言えば、翌月10日から15日程度までに、経営判断に使える月次試算表を確認できる状態です。

ただし、会社の規模、会計体制、請求の締め、在庫管理、部門別管理の有無によって、現実的な期限は異なります。

大切なのは、毎月同じルールで締めることです。

  • 売上計上基準が月によって変わる
  • 棚卸を行ったり、行わなかったりする
  • 未払費用や減価償却費を決算時だけ処理する
  • 補助金収入、助成金収入、固定資産の取得を月次で反映していない
  • 役員貸付金、仮払金、立替金が放置されている

このような状態では、計画と実績の比較ができません。

月次管理に必要なのは、完璧な決算書ではありません。経営判断に耐えうる、継続的なルールです。

予実差異は「未達かどうか」だけで見ない

計画管理でよく見かける誤りが、売上や利益について「達成」「未達」だけを確認して終わってしまうことです。

しかし、未達の原因によって、打ち手はまったく変わります。

たとえば、営業利益が計画を下回った場合でも、その原因は複数考えられます。

  • 市場環境が想定より悪化した
  • 仕入価格が上がった
  • 値上げが遅れた
  • 販売数量が不足した
  • 営業活動が計画どおり実施されなかった
  • KPI設定が実態に合っていなかった
  • 受注はあるが、納品・検収が遅れた
  • 固定費削減の実行が遅れた

したがって差異分析では、少なくとも「外部環境」「活動計画」「KPI」「会計処理・計上タイミング」に分けて考える必要があります。

事業計画の実行管理においては、予実差異を単なる金額の差として眺めるのではなく、環境要因、活動計画要因、KPI要因に分けて分析することで、その後の修正行動が効果的になります。

たとえば、営業訪問件数も商談数も計画どおりで、受注件数も目標を達成しているのに売上が未達であれば、単価、納品時期、顧客層、商品構成、そしてKPI設定そのものを見直す必要があります。

一方、そもそも訪問件数や提案件数が不足しているのであれば、営業活動の実行管理に問題があるということになります。

同じ未達でも、原因が違えば、修正すべき場所も違うのです。

KPIは「見るため」ではなく「動くため」に設定する

KPIは、管理資料を増やすために設定するものではありません。

KPIの役割は、売上や利益が悪化する前に、現場の動きを把握することにあります。

売上高や営業利益は、あくまで結果指標です。結果が出てからでは、対応が遅れることがあります。

そのため、計画策定後のモニタリングでは、結果指標に加えて、先行指標を持つ必要があります。

たとえば、次のような指標です。

目的結果指標先行KPIの例
売上改善売上高見積件数、商談件数、受注件数、受注率
粗利改善粗利額・粗利率値上げ実施件数、原価見直し件数、不採算案件比率
資金繰り改善現預金残高売掛金回収日数、滞留債権額、在庫回転期間
固定費削減営業利益契約見直し件数、外注費削減額、人員配置見直し
生産性向上付加価値額・労働生産性稼働率、作業時間、ミス・ロス件数、納期遅延件数
金融機関対応返済可能額営業CF、フリーCF、借入返済額とのバランス

KPIは、多ければよいというものではありません。

経営者と現場が毎月見て、行動を変えられる数に絞るべきです。

計数計画、活動計画、KPIを三位一体で進捗管理するレベルまで高めれば、予実差異を環境要因、活動計画要因、KPI要因に分けて分析しやすくなります。

資金繰り表は「入金予定表」ではなく経営判断表である

経営改善計画や認定制度の実行後に、最も見落とされやすいのが資金繰りです。

損益計画の上では改善しているように見えても、資金繰り表では、苦しい月が先に現れます。

  • 設備投資の支払い
  • 補助金の後払い
  • 消費税や法人税の納付
  • 社会保険料の支払い
  • 賞与支給
  • 借入返済
  • 売掛金の回収遅れ
  • 在庫増加
  • 仕入条件の短縮

これらは、損益計算書だけでは十分に把握できません。

月次モニタリングで見るべき資金繰りのポイントは、次の5つです。

1つ目は、最低資金残高です。
月末残高だけでなく、月中の資金ショートリスクを確認します。

2つ目は、営業キャッシュフローです。
本業から現金が生まれているかを見ます。

3つ目は、運転資金の増減です。
売掛金、在庫、買掛金の変化が資金を吸収していないかを確認します。

4つ目は、投資回収です。
設備投資やDX投資が、当初想定した売上、粗利、工数削減、外注費削減につながっているかを見ます。

5つ目は、返済可能額です。
営業キャッシュフローの範囲内で、借入元本の返済ができているかを確認します。

資金計画の実績差異分析では、在庫期間の短縮、入金遅れや滞留債権、回収条件の見直し、行き当たりばったりの投資の有無、投資回収、そしてフリーCFの範囲に返済額が収まっているかといった点が、確認のポイントになります。

資金繰り表は、金融機関に見せるためだけの資料ではありません。

社長が「いつ、いくら、何のために資金が不足するのか」を先に知るための資料です。

アクションプランを月次で見なければ、数字は変わらない

計画の実行管理では、数字だけを見ていても改善しません。

売上を増やす。粗利を改善する。固定費を削減する。在庫を圧縮する。

これらはすべて、具体的な行動があって、はじめて数字に反映されます。

そのため月次モニタリングでは、必ずアクションプランを確認します。

アクションプランの確認項目確認内容
担当者誰が責任を持つか
期限いつまでに実行するか
実施状況完了、進行中、未着手、延期
未実施理由人手不足、判断保留、顧客都合、資金不足など
数字への影響売上、粗利、固定費、資金繰りへの反映
次の対応継続、修正、中止、別施策への切替

「営業強化」「コスト削減」「在庫圧縮」といった表現だけでは、実行管理はできません。

営業強化であれば、どの顧客に、何件、どの商品を、いつ提案するのか。

コスト削減であれば、どの契約を、いつ、いくら見直すのか。

在庫圧縮であれば、どの商品を、いくらで、いつまでに処分するのか。

ここまで落とし込んで、はじめて月次で確認できるようになります。

事業計画の実行にあたっては、活動計画を年別、四半期別、月別などに落とし込み、PDCAを回すためにKPIと活動計画を具体化しておくことが重要です。

金融機関への報告で重視されること

金融機関への報告では、きれいな資料よりも、説明の一貫性が重視されます。

金融機関が見たいのは、会社が計画どおりに進んでいるかどうかだけではありません。

計画から外れたときに、経営者が状況を把握し、原因を説明し、次の対応を決めているかどうかです。

月次または四半期で金融機関へ説明する場合、最低限整理しておきたい項目は次のとおりです。

報告項目説明すべき内容
損益実績売上、粗利、営業利益、経常利益の計画差異
資金繰り資金残高、今後3か月から6か月の入出金見込み
借入返済返済状況、返済原資、返済条件変更の要否
アクションプラン実施済み施策、未実施施策、遅延理由
KPI商談数、受注率、在庫回転、回収日数など
税金・社会保険料納付状況、滞納・分納の有無
今後の対応計画修正、追加施策、資金調達、支援制度の検討

避けるべきなのは、悪い情報を遅らせることです。

金融機関との信頼関係は、良い数字だけを報告することで作られるわけではありません。悪い数字が出たときに、原因と対応策を早く共有することによって維持されます。

特に、返済条件変更や金融支援を受けている会社では、「計画未達そのもの」よりも、「未達を把握していないこと」「対応策がないこと」「報告が遅いこと」の方が、はるかに大きな問題になります。

計画未達時に取るべき対応

計画未達が起きたとき、最初にすべきことは、責任追及ではありません。

原因を分けることです。

計画未達への対応は、次の4段階で考えます。

第1段階:社内で修正できる未達

営業活動の遅れ、値上げの未実施、在庫処分の遅れ、固定費見直しの遅れなど、社内で対応できる未達です。

この場合は、アクションプランを修正し、担当者、期限、次回確認日を決めます。

第2段階:計画の前提が変わった未達

市場環境、仕入価格、為替、競合、顧客需要、採用環境など、計画策定時の前提そのものが変わった場合です。

この場合は、計画自体の見直しが必要になります。売上計画、粗利率、投資回収、資金繰りを修正し、必要に応じて金融機関へ説明します。

第3段階:資金繰りに影響する未達

売上未達や回収遅延によって、数か月以内に資金不足が見込まれる場合です。

この場合は、早めに金融機関へ相談します。追加融資、借換、返済条件変更、保証協会対応、支払条件の見直し、資産売却などを検討することになります。

第4段階:抜本的な再生支援が必要な未達

計画と実績の乖離が大きく、通常の改善では資金繰りや返済を維持できない場合です。

早期経営改善計画の手引きでも、計画と実績の乖離が大きく、経営改善や抜本的な事業再生を行う必要がある場合には、経営改善計画策定支援事業の通常枠・中小版GL枠、または中小企業活性化協議会におけるプレ再生・再生支援の利用を条件として、伴走支援を終了できることが示されています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き

重要なのは、早期経営改善計画、405事業、再生支援を縦割りで考えないことです。

会社の状況が変われば、使うべき支援策もまた変わります。

モニタリングで確認すべき非財務情報

月次管理というと、どうしても売上や利益だけに目が向きがちです。

しかし、計画未達の兆候は、数字に出る前に現場に現れます。

確認しておきたい非財務情報には、次のようなものがあります。

  • 主要取引先の発注姿勢が変わっていないか
  • 値上げ交渉に対する反応はどうか
  • 仕入先の納期や価格条件に変化はないか
  • 社員の退職、採用難、残業増加が起きていないか
  • 設備の稼働率や故障頻度はどうか
  • 顧客からのクレーム、返品、手直し、納期遅延が増えていないか
  • 金融機関から追加資料を求められていないか
  • 税金や社会保険料の納付に遅れが出ていないか
  • 経営者個人と会社の資金のやり取りが増えていないか

伴走支援においても、数値計画と実績の差異を定量的に確認するだけでなく、内部統制、人員体制、外部環境といった数値以外の変化を把握することが重要とされています。
出典:中小企業庁|収益力改善支援に関する実務指針

数字は、あくまで結果です。

現場の変化を見ていなければ、数字の悪化に気づくのは、どうしても遅れます。

ガバナンス体制も月次管理の対象になる

経営改善や認定制度のモニタリングでは、数字だけでなく、会社の管理体制も見られます。

特に、金融機関や認定支援機関が関与する場合、次の点が重要になります。

  • 会社と経営者個人の資金が混在していないか
  • 役員貸付金、仮払金、未収入金が放置されていないか
  • 経営者個人所有の不動産や車両を会社が使用している場合、その条件が明確か
  • 月次試算表や資金繰り表を求められたときに、提出できるか
  • 会議体や意思決定の記録があるか
  • 経営計画が従業員に共有されているか
  • 改善施策の担当者と期限が明確か

実務指針においても、試算表や資金繰り表を支援者から求められた際に提供できる体制、事業者と経営者の資産等の分別管理、内部管理体制、社内会議、事業計画・経営計画の進捗管理などを確認することが整理されています。
出典:中小企業庁|収益力改善支援に関する実務指針

これは、形式的なコンプライアンスの話ではありません。

金融機関から見れば、会社と経営者個人の資金が曖昧な会社、月次資料を出せない会社、計画の進捗を説明できない会社は、将来の返済可能性を判断しにくい会社です。

月次管理は、金融機関に対する説明責任を果たすための基盤でもあるのです。

月次モニタリング会議の設計

計画策定後は、月次モニタリング会議を設けることが望ましいと考えます。

ただし、会議を開くだけでは意味がありません。会議で見る資料、その順番、そこで決める事項を固定しておく必要があります。

実務上は、次の流れが有効です。

  1. 前月のアクションプランの実施状況を確認する
  2. 月次試算表で、売上、粗利、固定費、営業利益を確認する
  3. 予算実績差異を確認し、差異の原因を分解する
  4. 資金繰り表で、今後3か月から6か月の資金残高を確認する
  5. KPIを確認し、売上・利益に先行する変化を把握する
  6. 税金、社会保険料、借入返済、補助金入金、設備支払を確認する
  7. 金融機関へ報告すべき事項を整理する
  8. 次月のアクションプラン、担当者、期限を決める

この会議で最も重要なのは、「次に何をするか」を決めることです。

実績を眺めるだけなら、会議を開く必要はありません。

未達の原因を分解し、次月の行動を変える。そこにこそ、月次モニタリングの意味があります。

専門家が関与すべき場面

計画策定後の月次管理は、会社だけで進めることも可能です。

ただし、次のような場面では、公認会計士・税理士、認定支援機関、金融機関、必要に応じて弁護士や中小企業診断士といった専門家と連携した方がよい場合があります。

  • 資金繰りが3か月以内に不足する可能性がある
  • 金融機関に返済条件変更を相談する必要がある
  • 補助金、税制優遇、設備投資、借入返済が同時に関係している
  • 月次試算表の数字が実態を反映しているか不安がある
  • 在庫、売掛金、固定資産、役員貸付金などに、実態とのズレがある
  • 経営者保証の解除を検討している
  • 税金や社会保険料の未納・分納がある
  • 計画未達が続き、405事業や再生支援への移行を検討すべき可能性がある
  • 金融機関に説明する資料をどう作るべきか分からない

認定経営革新等支援機関は、税務、金融、企業財務に関する専門的知識や支援実務経験が一定レベル以上である個人・法人・中小企業支援機関等を、国が認定する制度です。制度活用後の月次管理では、単に申請書を作成するだけでなく、数字の整合性、資金繰り、金融機関への説明、実行後の改善管理まで支援できるかどうかが重要になります。
出典:中小企業庁|認定経営革新等支援機関

計画を作って終わる会社と、改善につなげる会社の違い

計画を作って終わってしまう会社には、共通点があります。

  • 計画書を、社長と専門家だけで作っている
  • 月次試算表が遅い
  • 資金繰り表が更新されない
  • アクションプランに担当者と期限がない
  • 予実差異の原因を分解していない
  • 金融機関への報告が遅い
  • 未達が続いても、計画を見直さない

一方、改善につなげる会社は、違います。

  • 月次で数字を見る
  • 数字と行動を結びつける
  • 資金繰りを先に見る
  • 計画未達を早く共有する
  • 金融機関に説明できる資料を持っている
  • 計画を、必要に応じて修正する
  • 専門家を、申請代行ではなく、経営判断の相手として使う

実務指針でも、計画期間中に計画どおりの進捗となっていない場合は、問題点や阻害要因を明らかにしながらアクションプランを見直すこと、計画期間の終了後も取組結果を踏まえて次期計画を検討すること、そして課題設定、計画策定、実行、検証・見直しというPDCAサイクルを回していくことが重要とされています。
出典:中小企業庁|収益力改善支援に関する実務指針

計画は、正解を固定するものではありません。

変化に対応するための、基準線です。

基準線があるから、ズレに気づけます。ズレに気づくから、早く動けます。そして早く動くから、資金繰り、金融機関対応、税務処理、投資判断の選択肢を残すことができます。

ご相談について

経営改善計画や認定計画は、作成した時点では、まだ実務の入口にすぎません。

本当に重要なのは、その後に月次で数字を確認し、資金繰りを見通し、アクションプランを更新し、金融機関に説明できる状態を維持していくことです。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、制度活用を単なる申請や認定で終わらせず、計画策定後の月次管理、予算実績管理、資金繰り確認、税務・会計処理、金融機関への説明までを一体で整理することを重視しています。

計画は作ったものの実績確認ができていない、金融機関に何を報告すべきか分からない、資金繰り表を更新できていない、計画未達が続いているが次の対応を決められない。このような場合は、直近の決算書、月次試算表、資金繰り表、借入金一覧、策定済みの計画書を可能な範囲で整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

論点確認すべきこと判断のポイント
モニタリングの意味計画と実績の差を確認し、原因を分解し、次の対応を決める報告書作成ではなく、経営判断を早める仕組みとして使う
対象となる計画経営力向上計画、経営革新計画、早期経営改善計画、405事業など計画の目的によって、見るべき数字とKPIが変わる
月次決算売上、粗利、固定費、営業利益、経常利益を毎月確認する早さと正確さの両方が必要
予算実績管理計画比、前年同月比、累計差異を確認する達成・未達だけでなく、原因を分解する
資金繰り表入金、支払、返済、税金、社会保険料、資金残高を確認する利益が出ていても資金ショートする可能性を見る
KPI商談数、受注率、在庫回転、回収日数などを設定する売上・利益に先行する現場の動きを見る
アクションプラン担当者、期限、実施状況、未実施理由を確認する数字だけでなく、行動が変わっているかを見る
金融機関報告損益、資金繰り、返済原資、改善施策、今後の対応を説明する悪い情報ほど早く共有する
計画未達時社内修正、計画見直し、金融機関相談、再生支援への移行を判断する先送りせず、資金繰りに影響する前に動く
専門家関与会計・税務・財務・金融機関対応を一体で整理する申請代行ではなく、実行後管理の支援として活用する
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