早期経営改善計画と経営改善計画策定支援|資金繰り悪化を制度で先送りしない判断軸

資金繰りが苦しくなったとき、経営者が最初に探しがちなのは「使える融資」「返済を待ってもらう方法」「補助金」「専門家費用の補助」といったものです。

しかし、経営改善の局面で最初に必要なのは、制度名を探すことではありません。

なぜ資金が足りないのか。本業は利益を出せているのか。借入返済が重いのか。在庫、売掛金、固定費、人件費、設備投資、税金、社会保険料のどこに問題があるのか。

金融機関に対して、どの程度の支援を求める必要があるのか。その支援を受けた後、どのように改善し、どう返済していくのか。

この整理がないまま制度だけを使っても、資金繰りの苦しさは一時的に先送りされるだけです。

この記事では、「早期経営改善計画策定支援」と「経営改善計画策定支援」、いわゆる405事業を、単なる専門家費用の補助制度としてではなく、経営改善を進めるための判断枠組みとして整理します。

なお、これらの制度は2026年3月31日および2026年5月1日に手引き・FAQ等の改定が行われています。制度内容、補助上限、対象となる金融支援、必要書類、運用は今後も変更される可能性がありますので、実際の利用判断にあたっては、最新の公的情報と個別事情の確認が欠かせません。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します

目次

経営改善支援は「危なくなってから使う制度」ではない

早期経営改善計画策定支援も、経営改善計画策定支援も、共通しているのは「計画を作ること」ではありません。

本質は、経営者が自社の現状を数字で把握し、金融機関や専門家と改善の方向性を共有し、実行後もモニタリングしていくところにあります。

資金繰りが厳しい会社では、経営者の頭の中に多くの不安が渦巻いています。

今月末の支払いは足りるのか。来月の返済はできるのか。売上が戻れば何とかなるのか。借入を増やしてよいのか。返済猶予を申し出るべきか。金融機関に相談したら、かえって信用を失うのではないか。

この不安を放置すると、判断が遅れます。判断が遅れると、選択肢は減ります。そして選択肢が減ってから計画を作っても、打てる手は限られてしまいます。

中小企業庁は、早期経営改善計画策定支援を、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握など、基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が、認定経営革新等支援機関の支援を受けて、資金繰り計画、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプランなどを含む経営改善計画を策定する際の費用を補助する制度と位置づけています。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援

つまり、早期経営改善計画は「金融機関に怒られてから作る計画」ではありません。資金繰り、収益構造、行動計画を早い段階で見える化するための制度です。

早期経営改善計画策定支援と405事業の違い

この2つの制度は似ていますが、使う局面が異なります。

大きく分ければ、早期経営改善計画策定支援は「基本的な経営改善を早めに始める制度」、経営改善計画策定支援、いわゆる405事業は「金融支援を伴う本格的な経営改善に使う制度」です。

区分早期経営改善計画策定支援経営改善計画策定支援、いわゆる405事業
主な目的資金繰り管理・採算管理・経営状況把握を早期に進める金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定する
想定される状態まだ深刻な金融調整に至っていないが、資金繰りや収益力に不安がある借入返済負担など財務上の問題があり、金融機関の支援が必要
金融機関との関係計画を金融機関へ早期に提出し、経営改善の端緒にする金融機関と計画について協議し、金融支援の合意・同意を得る
計画内容ビジネスモデル俯瞰図、経営課題、基本方針、アクションプラン、損益計画、資金繰表などDD・現状分析、改善施策、アクションプラン、金融支援を前提とした資金繰り計画、伴走支援など
向いている会社早めに数字を整理し、金融機関との対話を始めたい会社返済条件変更、新規融資、借換等を含む金融支援が必要な会社
注意点専門家費用の補助であり、運転資金そのものが入る制度ではない金融機関の合意が必要であり、計画の実現可能性が厳しく問われる

中小企業庁は、経営改善計画策定支援を、金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組を促す制度と位置づけています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援

両者を混同すると、制度選択を誤ります。

まだ金融支援が必要な段階ではないのに405事業を前提にすると、かえって話が重くなりすぎることがあります。反対に、すでに返済猶予や借換等が必要な状況なのに、早期経営改善計画だけで済ませようとすれば、金融機関との調整が遅れかねません。

早期経営改善計画策定支援を使うべき場面

早期経営改善計画策定支援は、資金繰りが破綻しかけてから使う制度ではありません。

むしろ、次のような状態でこそ検討していただきたい制度です。

  • 売上はあるが、現金が残らない
  • 利益は出ているはずなのに、返済や税金の支払いが重い
  • 借入が増えているが、返済原資の説明ができない
  • 売掛金、在庫、固定費、人件費の増加が資金繰りにどう影響しているか分からない
  • 金融機関から試算表や資金繰り表の提出を求められている
  • 経営者自身が、今後6か月から1年の資金繰りを見通せていない
  • 補助金や追加融資を探す前に、そもそも本業の収益構造を整理したい

この段階で計画を作る意味は、「専門家費用が補助されるから」ではありません。資金繰りの不安を、数字と行動計画に置き換えることにあります。

早期経営改善計画では、ビジネスモデル俯瞰図によって収益の仕組みや商流を見える化し、経営課題と解決方針を整理したうえで、アクションプランに落とし込み、その改善効果を損益計画や資金繰表に反映していきます。さらに計画策定後も、数値計画と実績との差異、アクションプランの進捗、対応策、金融機関等への報告が想定されています。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援

この制度を使う会社に必要なのは、「今後どうしたいか」よりも先に、「いま何が起きているか」を正確に把握する姿勢です。

405事業を検討すべき場面

405事業は、早期経営改善計画よりも重い局面で使う制度です。

対象となるのは、金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者です。ここでいう金融支援には、返済条件の見直し、新規融資、借換、保証条件の調整などが関係することがあります。

ただし、具体的な金融支援の内容は一律ではありません。金融機関との協議、会社の財務状況、収益力、担保・保証の状況、計画の実現可能性によって変わってきます。

405事業を検討すべき典型例としては、次のような状況が挙げられます。

  • 借入返済が資金繰りを圧迫している
  • 既存借入の返済条件を見直さなければ資金ショートする可能性がある
  • 追加融資を受けたいが、金融機関に説明できる計画がない
  • 複数金融機関との調整が必要である
  • 赤字の原因が不明確で、事業面と財務面を同時に整理する必要がある
  • 経営者保証解除や保証条件の見直しも含めて検討したい
  • 現状分析、改善施策、返済原資、資金繰りを一体で説明する必要がある

中小企業庁の現行ページでは、通常枠について、DD・計画策定支援費用が補助率2/3、上限200万円、伴走支援費用が補助率2/3、上限100万円、経営者保証解除を目指す計画を作成し金融機関交渉を実施する場合の金融機関交渉費用が補助率2/3、上限10万円とされています。また、中小版GL枠では、DD費用、計画策定支援費用、伴走支援費用について別途上限が設けられています。
出典:中小企業庁|経営改善計画策定支援

ただし、405事業は「専門家費用が補助されるから使う制度」ではありません。金融機関に対して、会社の現状、改善施策、返済可能性を説明し、支援を受けるための土台を整える制度です。

計画の内容が甘ければ、金融機関の納得は得られません。現状分析が不十分であれば、改善施策も機能しません。

どちらの制度を選ぶかは、資金繰りの厳しさだけでは決まらない

「まだ大丈夫だから早期経営改善計画」「もう危ないから405事業」と単純に分けるのは危険です。

実務上は、次の順番で判断していきます。

まず、足元の資金繰りを確認する

今後3か月から6か月の現預金推移、入金予定、支払予定、借入返済、税金、社会保険料、賞与、設備支払、仕入支払を確認します。

資金ショートの可能性がある場合は、制度選択より先に、支払優先順位と金融機関相談のタイミングを整理します。

次に、本業の収益力を確認する

営業利益が出ているのか。赤字の原因は売上不足なのか、粗利率低下なのか、固定費過大なのか、人員配置なのか、在庫評価なのか、価格転嫁不足なのか。ここを見極めます。

そのうえで、借入返済の負担を確認する

会計上の利益が出ていても、元本返済は損益計算書に費用として表示されません。税引後利益から借入元本返済を支払えるかを見なければ、返済原資の説明はできません。

最後に、金融機関に何を求めるのかを整理する

単に現状を共有し、今後の改善計画を提出する段階なのか。返済条件変更や借換など、明確な金融支援を求める段階なのか。金融機関の合意が必要な段階なのか。弁護士等を含めた中小版GLや再生支援、再チャレンジ支援を検討すべき段階なのか。

この判断ができて初めて、早期経営改善計画策定支援なのか、405事業なのか、あるいは中小企業活性化協議会の別の支援メニューなのかが見えてきます。

中小企業庁は、中小企業活性化協議会の支援メニューとして、収益力改善支援、早期経営改善計画策定支援、プレ再生支援・再生支援、経営改善計画策定支援、再チャレンジ支援などを段階的に整理しています。制度は単独で見るのではなく、自社がどのフェーズにいるかを確認したうえで選ぶ必要があります。
出典:中小企業庁|中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)

早期経営改善計画で作るべきもの

早期経営改善計画では、形式的な計画書を作るだけでは不十分です。

実務上、最低限整理しておきたいものは次のとおりです。

1. ビジネスモデル俯瞰図

どこから仕入れ、誰に販売し、どのように利益を得ているのかを整理します。

売上先、仕入先、外注先、金融機関、主要取引条件、回収サイト、支払サイト、在庫の持ち方、固定費の構造を見える化していきます。

ここで重要なのは、事業内容をきれいに説明することではありません。資金繰り悪化や収益力低下の原因が、商流のどこにあるかを見つけることです。

2. 経営課題と基本方針

経営課題は、「売上を増やす」「利益を改善する」といった抽象論では足りません。

たとえば、次のように分解していきます。

  • 既存顧客の取引量が減っている
  • 粗利率の低い案件を受け続けている
  • 在庫回転が悪化している
  • 人員配置に対して売上が不足している
  • 値上げできていない
  • 不採算店舗や不採算部門が全社利益を圧迫している
  • 設備投資後の売上が計画未達である
  • 借入返済額が営業キャッシュフローを上回っている

課題が具体的でなければ、改善策も具体的にはなりません。

3. アクションプラン

アクションプランでは、何を、誰が、いつまでに、どの数字を改善するために行うのかを決めます。

「営業強化」「コスト削減」「新規開拓」だけでは、金融機関への説明には耐えられません。

  • どの顧客群に何件訪問するのか
  • どの商品を値上げするのか
  • どの在庫を処分するのか
  • どの固定費をいつまでに見直すのか
  • どの部門の人員配置を変えるのか
  • どの借入について金融機関と協議するのか

ここまで落とし込む必要があります。

事業計画とは、達成したい定性的・定量的目標に対し、どの経営資源や事業施策が必要かの仮説を定め、目標達成と仮説検証の方法・手順・指標を定めるものです。計画を実務に落とすうえでは、活動計画と計数計画を切り離さないことが大切になります。

4. 損益計画

改善策を数字に反映します。

売上高、粗利率、人件費、地代家賃、広告宣伝費、支払利息、減価償却費、営業利益、経常利益を整理していきます。

ただし、計画上の利益を作ることが目的ではありません。どの施策によって、いくら改善するのかを説明できることが必要です。

5. 資金繰表

経営改善では、損益計画だけでは足りません。

資金繰表では、入金、支払、借入返済、税金、社会保険料、設備投資、賞与、借入実行、資金残高を月次で見ていきます。

特に重要なのは、最も資金が苦しくなる月を先に見つけることです。

「年間では足りる」ではなく、「何月にいくら足りないか」を見る。
「利益は出る」ではなく、「返済後に現金が残るか」を見る。
「売上が増える」ではなく、「回収時期まで資金がもつか」を見る。

中小企業庁の会計活用資料でも、中期利益資金計画として、設備投資・資金調達計画、要員計画、損益計画、資金計画を作成する必要性が整理されています。

405事業で問われる「金融支援」とは何か

405事業では、金融支援を伴う本格的な経営改善が前提になります。

ここで注意したいのは、「金融支援」という言葉を都合よく理解しないことです。

金融支援は、単に「銀行からお金を借りること」だけを指すわけではありません。返済条件変更、借換、元本返済猶予、新規融資、既存借入の条件見直し、保証条件の協議、場合によっては中小版GLに基づく計画策定など、会社の状況に応じて内容が変わります。

ただし、いずれにしても金融機関は次の点を見ています。

  • 現状の資金繰りはどうなっているか
  • 赤字の原因は何か
  • 本業の収益力は改善するのか
  • 経営者は何を変えるのか
  • 金融機関が支援した場合、会社はどのように正常化するのか
  • 返済原資はどこから生まれるのか
  • 計画未達の場合、どのように早期対応するのか
  • 月次で報告できる体制があるのか

405事業は、金融機関に「お願い」をするための制度ではありません。金融機関が支援判断をするために必要な情報を、会社側が整理するための制度です。

2026年改定でより重要になったこと

2026年3月26日に中小企業庁が公表した改定では、早期経営改善計画策定支援、経営改善計画策定支援について、再生支援の規律、伴走支援の強化、実効的でシームレスな支援体制の構築に向けた見直しが行われたとされています。

早期経営改善計画策定支援では、補助上限額の引き上げ、計画への実態貸借対照表の追加、伴走支援内容の強化などが示されています。金融機関が支援する場合についても、対象先の見直し、民間金融機関が実施する伴走支援の補助対象化、補助上限額の引き上げ、実態貸借対照表の追加などが示されています。

経営改善計画策定支援の通常枠では、策定する計画への数値基準の導入、対象となる金融支援の見直しなどが示されています。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します

この改定の方向性から読み取れるのは、制度が「計画を作る支援」から「実態を把握し、計画を実行し、伴走支援で改善を進める支援」へと重心を移していることです。

特に、実態貸借対照表の追加は重要です。

損益計算書だけでは、会社の苦しさは見えてきません。

  • 売掛金は本当に回収できるのか
  • 在庫は帳簿価額どおり売れるのか
  • 固定資産に含み損はないか
  • 役員貸付金や関係会社貸付金は回収できるのか
  • 未払税金や社会保険料はないか
  • 簿外債務、保証債務、リース、分割払いはないか

こうした実態を見なければ、返済原資も、再生可能性も、金融支援の妥当性も判断できません。

制度を使わない方がよい場合もある

制度活用に前向きな会社ほど、「使えるなら使いたい」と考えがちです。

しかし、早期経営改善計画策定支援や405事業を使わない方がよい場合もあります。

まず、経営者が計画を実行する意思を持っていない場合です。専門家が計画を作っても、値上げ、不採算取引の見直し、固定費削減、在庫圧縮、人員配置見直し、金融機関報告を実行しなければ、計画は意味を持ちません。

次に、足元の資金ショートが差し迫っており、計画策定よりも緊急対応が必要な場合です。この場合は、支払優先順位、金融機関への早期相談、税金・社会保険料の対応、取引先対応、専門家との緊急整理が先になります。

また、法的整理や私的整理を含めた再生・廃業判断が必要な局面では、405事業だけでなく、中小企業活性化協議会の再生支援、再チャレンジ支援、中小版GL、弁護士等との連携を検討すべきです。

さらに、社内だけで十分に月次管理、資金繰り表、金融機関説明ができ、金融支援も不要であれば、制度利用に伴う事務負担をかけずに、自社内で改善を進めるという判断もあり得ます。

制度を使うかどうかは、「補助されるか」ではなく、「その制度を使うことで改善が前に進むか」で判断すべきです。

金融機関に説明するために必要なこと

経営改善計画は、金融機関向けの作文ではありません。

しかし、金融機関に説明できない計画は、経営改善計画としても不十分です。

金融機関に説明する際に必要なのは、次の4つです。

1. 現状把握

まず、どの数字が悪化しているのかを明確にします。

売上、粗利、営業利益、経常利益、資金残高、借入残高、返済額、売掛金、在庫、買掛金、未払税金、社会保険料、役員貸付金、関係会社取引などを確認していきます。

「コロナの影響」「物価高」「人手不足」だけでは、説明になりません。どの数値に、どの程度影響しているかまで示す必要があります。

2. 原因分析

次に、悪化原因を分解します。

売上不足なのか、粗利低下なのか、固定費過大なのか、借入返済過多なのか、過剰在庫なのか、回収遅延なのか、投資失敗なのか、価格転嫁不足なのかを整理します。

原因が複数ある場合は、優先順位を付けます。

3. 改善施策

改善施策は、数値計画と対応していなければなりません。

  • 値上げをするなら、対象商品、実施時期、想定数量、顧客離れのリスクを示す
  • 人件費を見直すなら、採用抑制、配置転換、残業削減、生産性向上の方法を示す
  • 不採算部門を見直すなら、撤退コスト、売上減少、固定費削減効果を示す
  • 在庫を圧縮するなら、処分価格、回収時期、評価損の可能性を示す

4. 返済原資とモニタリング

最後に、金融支援後にどのように返済していくかを示します。

  • 営業キャッシュフローはいくら生まれるのか
  • 返済可能額はいくらか
  • 計画未達時に、どの支出を抑えるのか
  • どの指標を月次で報告するのか
  • 金融機関への報告頻度はどうするのか

ここまで整理して初めて、金融機関との対話が成立します。

計画策定後の伴走支援を軽視してはいけない

経営改善計画は、作った瞬間がスタートです。

作成時点では、あくまで仮説にすぎません。実際には、売上が計画どおりに戻らない、値上げが進まない、仕入価格が上がる、人員が確保できない、在庫処分が遅れる、金融機関の支援条件が想定と異なる、といったことが起こります。

そのため、伴走支援では次の点を確認していきます。

  • 計画と実績の差異
  • 差異の原因
  • アクションプランの実行状況
  • 資金繰り表の更新
  • 金融機関への報告
  • 追加対応策
  • 計画の見直しの要否

中小企業庁の早期経営改善計画策定支援でも、計画策定後の伴走支援として、進捗・取組状況の確認、計画と実績に差異がある場合の対応策の検討、金融機関等への報告が整理されています。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援

伴走支援を軽く見る会社では、計画が机上で終わってしまいます。

特に重要なのは、悪い情報を早く出すことです。

売上未達を隠す。資金繰り悪化を先送りする。金融機関への報告を遅らせる。改善策の未実行を曖昧にする。

こうした対応は、会社の信用を損ないます。計画未達そのものより、未達を把握していないこと、対策を決めていないこと、報告していないことの方が問題になります。

会計・税務・資金繰りを分けて考えない

経営改善の局面では、会計、税務、資金繰りを分けて考えると判断を誤ります。

たとえば、損益計算書では黒字でも、借入元本返済、設備投資、税金、社会保険料の支払いによって現金が不足することがあります。

補助金や助成金を受けた場合でも、入金時期、収益計上時期、税務処理、消費税、対象経費、証憑管理を確認する必要があります。

債務免除、返済猶予、保証解除、リスケジュール、資産売却、不採算事業撤退が関係する場合には、税務上の取扱い、債務免除益、欠損金、消費税、源泉所得税、社会保険料、役員借入金、関係会社取引まで確認が必要になることがあります。

また、経営者保証の解除を検討する場合には、財務情報の適時適切な開示、法人と個人の資産・経理の分離、経営管理体制の強化、収益力改善の説明が重要になります。経営者保証を伴わない融資や保証解除を進めるには、税理士・公認会計士による財務情報の精査や経営改善計画の策定、中小企業診断士による管理体制整備、弁護士による金融機関交渉など、専門家連携が有用となる場面があります。

経営改善計画は、金融機関向けの資料であると同時に、会計・税務・資金繰りを一体で整理する資料でもあります。

相談前に整理しておきたい資料

早期経営改善計画や405事業について相談する前に、次の資料を準備しておくと、相談の質が大きく変わります。

資料確認する目的
直近3期分の決算書・申告書収益力、財務体質、借入依存度、税務上の論点を把握する
直近の月次試算表足元の売上、粗利、固定費、利益を確認する
資金繰り表入金、支払、返済、税金、資金残高を月次で確認する
借入金一覧金融機関別残高、返済額、金利、保証、担保、返済期限を把握する
返済予定表月次の返済負担と資金繰りへの影響を把握する
売上・粗利の内訳商品別、取引先別、部門別、店舗別の採算を確認する
固定費明細人件費、家賃、リース、保険、外注費などの削減余地を確認する
売掛金・在庫・買掛金明細運転資金、回収遅延、過剰在庫、支払条件を把握する
税金・社会保険料の納付状況滞納、分納、今後の支払予定を確認する
経営者個人との取引役員貸付金、役員借入金、個人資産との区分を確認する
既存の事業計画・予算これまでの計画と実績のズレを確認する

資料が揃っていない場合でも、相談は可能です。ただし、資料がないほど、判断は粗くなります。

「何を出せばよいか分からない」という状態も、経営改善の入口です。その場合は、まず資料の棚卸しから始めるとよいでしょう。

早期相談の意味

資金繰りが悪化してから相談する会社は、少なくありません。

しかし、金融機関や専門家から見れば、早く相談する会社ほど選択肢を持っています。

資金がまだ残っている段階なら、事業の見直し、支払条件の交渉、在庫処分、固定費削減、借入条件の整理、金融機関説明、補助制度の検討を、比較的落ち着いて進められます。

資金ショートが目前に迫ってからでは、支払停止、税金・社会保険料の滞納、取引先不安、従業員不安、金融機関不信が一気に重なります。

中小企業庁の2026年改定でも、相談の早期化、支援メニューの適切な選択、出口の明確化、伴走支援の強化が重要であるとされています。
出典:中小企業庁|早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します

早期相談は、弱さを見せることではありません。選択肢を残すための経営判断です。

専門家に期待すべき役割

早期経営改善計画や405事業における専門家の役割は、申請書を整えることだけではありません。

重要なのは、次のような支援です。

  • 現状の数字を整理する
  • 資金繰り悪化の原因を分解する
  • 本業の収益力を見極める
  • 金融機関に説明できる言葉と数字にする
  • 改善策をアクションプランに落とす
  • 返済原資を検証する
  • 計画未達時の対応を設計する
  • 月次モニタリングの仕組みを作る
  • 会計・税務・資金繰り上の影響を確認する
  • 必要に応じて、金融機関、弁護士、中小企業活性化協議会、他の専門家と連携する

認定経営革新等支援機関は、中小企業等経営強化法に基づき認定された支援機関であり、商工会、商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが主な認定支援機関として位置づけられています。
出典:中小機構|認定経営革新等支援機関による支援(再生等)

専門家に依頼する価値は、制度を通すことにはありません。経営者が意思決定できる状態まで、数字と論点を整理することにあります。

ご相談について

早期経営改善計画策定支援や405事業は、資金繰りが厳しい会社にとって有効な選択肢になり得ます。

ただし、制度を使うこと自体が目的ではありません。

本当に必要なのは、自社の資金繰り、収益力、借入返済、税務・会計上の論点、金融機関への説明、実行後の月次管理を、一体で整理することです。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、早期経営改善計画や経営改善計画を、単なる申請支援や書類作成ではなく、経営判断・資金繰り・税務会計・金融機関説明をつなぐ実務支援として整理することを重視しています。

資金繰りに不安がある、金融機関から計画提出を求められている、返済条件の見直しを検討している、早期経営改善計画と405事業のどちらを検討すべきか分からない。そうした場合は、直近の決算書、試算表、借入一覧、返済予定表、資金繰りの状況を可能な範囲で整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

確認する論点重要な判断
制度の目的専門家費用の補助ではなく、経営改善を実行するための現状把握・計画策定・伴走支援の仕組みとして見る
早期経営改善計画資金繰り管理、採算管理、経営状況把握を早期に進めたい会社に向く
405事業金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な会社に向く
制度選択資金繰りの厳しさだけでなく、金融機関に何を求める段階かで判断する
資金繰り表最も苦しい月、返済後の資金残高、税金・社会保険料・設備支払まで確認する
損益計画売上目標ではなく、粗利、固定費、人件費、営業利益、経常利益の改善根拠を示す
アクションプラン誰が、何を、いつまでに、どの数字を改善するために実行するかを明確にする
金融機関説明現状、原因、改善策、返済原資、月次モニタリングを説明できる状態にする
伴走支援計画と実績の差異を確認し、早期に対応策を決め、金融機関へ報告する
使わない判断社内で十分に改善できる場合や、逆に再生・廃業判断が必要な場合には、別の対応を優先する
専門家相談制度申請の直前ではなく、資金繰り不安や金融機関対応が見え始めた段階で相談する
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