特例事業承継税制を使う前に整理すべきこと|納税猶予を経営判断として考える

事業承継を検討し始めると、「事業承継税制を使えば、税金を払わずに株式を移せるのではないか」というお考えに行き着くことがあります。

確かに、法人版事業承継税制の特例措置は、非上場株式の承継に伴う贈与税・相続税の負担を大きく軽減し得る制度です。対象株式数の上限撤廃、納税猶予割合100%、複数株主から最大3人の後継者への承継。一般措置と比べても、効果の大きな仕組みといえます。

ただ、この制度を「税金がなくなる制度」と単純に受け止めるのは適切ではありません。

あくまで一定の要件を満たすことを前提に、贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の事由が生じた場合に猶予税額が免除される制度です。使った後には、報告、届出、株式保有、代表者・事業継続、雇用状況の説明といった、長期にわたる管理が残ります。

つまり、特例事業承継税制は、「使えるかどうか」だけで判断できる制度ではないということです。

後継者に経営を任せられる状態か。
株式をどこまで集中させるべきか。
将来のM&Aや組織再編の可能性をどう考えるか。
制度利用後の管理を継続できるか。
猶予が取り消された場合の資金リスクを見ているか。

ここまで整理して、はじめて経営判断として検討できる段階に立てます。

この記事では、法人版事業承継税制の特例措置について、制度の概要にとどまらず、使う前に整理しておきたい実務上の判断軸を解説します。

目次

特例事業承継税制とは何か

法人版事業承継税制は、後継者が、経営承継円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合に、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。そして、後継者の死亡等により、猶予税額の納付が免除されます。

平成30年度税制改正では、従来の一般措置に加えて、10年間の特例措置が創設されました。特例措置では、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限が撤廃され、納税猶予割合の引上げなども行われています。
出典:国税庁|法人版事業承継税制

特例措置の特徴は、主に次の点にあります。

  • 対象株式数の上限が撤廃され、承継する株式に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予の対象となる
  • 複数の株主から、親族外を含む代表者である後継者最大3人への承継が対象となる
  • 雇用確保要件について、一定の弾力化が図られている
  • 将来、事業売却や廃業等が生じた場合、一定の要件のもとで税負担の再計算が行われる仕組みがある

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ここで注意しておきたいのは、これは「承継の成功を保証する制度」ではないということです。

税負担の問題を軽くできても、後継者が経営できなければ承継は成立しません。株式を移せたとしても、会社の資金繰りや金融機関対応が不安定であれば、承継後の経営は苦しくなります。

特例事業承継税制は、税務上の制度であると同時に、経営承継の準備状況が問われる制度でもあるのです。

まず確認すべき期限

特例措置を検討するとき、最初に確認していただきたいのが期限です。

2026年7月時点で確認できる中小企業庁の公表情報では、特例承継計画は、平成30年4月1日から令和9年9月30日までに都道府県庁へ提出し、確認を受ける必要があります。あわせて、令和9年12月31日までに事業承継を行うことが求められます。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

西暦で整理すると、現時点の中小企業庁掲載情報では次のとおりです。

  • 特例承継計画の提出期限:2027年9月30日
  • 贈与・相続等による承継期限:2027年12月31日

この期限は、単なる形式的な日付ではありません。

特例承継計画を提出するには、後継者、承継予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを整理し、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受ける必要があります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

そのため、提出期限の直前に「書類だけ作る」という進め方は危険です。

後継者が決まっていない。株主構成が整理されていない。株価の概算も分からない。金融機関対応も未整理。こうした状態では、制度を使うかどうかの判断そのものができません。

期限に間に合うかどうかではなく、期限までに「使うに値する承継設計」ができるかどうかが重要です。

一般措置との違いを、税額だけで見ない

特例措置には、一般措置と比べて大きなメリットがあります。

国税庁のタックスアンサーでは、特例措置と一般措置の主な違いとして、対象株式数、納税猶予割合、承継パターン、雇用確保要件、事業継続困難時の免除、相続時精算課税の適用範囲などが整理されています。特例措置では、対象株式数は全株式、納税猶予割合は100%、複数の株主から最大3人の後継者への承継が可能とされています。
出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

この違いだけを見れば、特例措置を使う方が有利に映ります。

しかし、制度の有利不利は、猶予される税額だけで決まるものではありません。

後継者の人数をどうするか。
複数後継者に株式を分けることで、将来の意思決定に支障が出ないか。
先代経営者以外の株主からも株式を移す必要があるか。
後継者が代表者として経営を継続できるか。
将来、会社を売却・廃業・組織再編する可能性があるか。

これらを整理しないまま「100%猶予だから有利」と判断してしまうと、承継後に身動きが取りにくくなることがあります。

特例措置は、効果が大きい分、承継設計への影響も大きい制度なのです。

特例承継計画は、単なる提出書類ではない

特例事業承継税制を使うには、事前に特例承継計画を提出する必要があります。

この計画に記載するのは、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などです。そのうえで、内容について認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けることが求められます。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ここで大切なのは、特例承継計画は「税務申告の添付書類」ではなく、承継後の経営を見通すための計画だということです。

計画には、少なくとも次のような内容が反映されている必要があります。

  • 後継者が誰か
  • いつ承継するのか
  • 承継までに何を整えるのか
  • 承継後の事業をどう進めるのか
  • 株式をどのように移すのか
  • 承継後の資金繰りをどう見るのか
  • 先代経営者の役割をどう整理するのか
  • 従業員、取引先、金融機関にどう説明するのか

形式的に計画を作るだけでは、制度利用後の実行管理に耐えられません。

特例承継計画は、税制適用のための入口であると同時に、後継者が経営者として会社を引き継ぐ準備状況を確認する機会でもあります。

後継者の経営意思を確認する

特例事業承継税制を検討する前に、最も重要なのは後継者の確認です。

誰に株式を移すのか。
誰が代表者として経営するのか。
その方が、本当に経営責任を負う意思を持っているのか。
先代経営者は、どの時点で代表権や意思決定権を手放すのか。

ここが曖昧なまま税制だけを進めてしまうと、後継者は「株式と責任だけを引き受けた」状態になりかねません。

特例措置では、親族外を含む後継者も対象となり得ます。柔軟な制度設計である一方、後継者を複数にする場合には、経営の意思決定構造を丁寧に設計しなければなりません。

後継者を最大3人まで対象にできることと、3人に承継することが望ましいことは、別の話です。

複数の後継者へ株式を承継する場合には、議決権割合、代表権、役割分担、将来の株式移動、意見が対立したときのルールまで考えておく必要があります。

特例税制は、後継者選定の迷いを解決してくれる制度ではありません。

後継者が決まっていない会社では、まず承継方針の整理が先になります。

株式をどこまで集中させるか

事業承継では、税負担と同じくらい重要なのが株式の集中です。

後継者が代表者になっても、議決権を十分に持っていなければ、重要な意思決定ができません。

一方で、株式を一人に集中させれば、他の相続人との公平性、遺留分、代償金、親族関係の調整といった問題が生じることもあります。

特例事業承継税制は、非上場株式の納税猶予を支援する制度です。株主間の感情や支配権の設計まで、自動的に解決してくれるわけではありません。

事前に確認しておきたいのは、次のような事項です。

  • 現在の株主名簿は正確か
  • 名義株や過去の株式移動に問題はないか
  • 議決権割合はどうなっているか
  • 後継者にどの株式を移すのか
  • 他の相続人とのバランスをどう取るのか
  • 遺言、遺留分対策、種類株式、自己株式取得などを検討すべきか
  • 将来のM&Aや組織再編の可能性をどう見るか

株式承継は、税務だけでなく、会社法、相続、資本政策、金融機関対応にも影響します。

税制の要件だけに合わせて株式を移すのではなく、承継後に経営が安定する株主構成を先に考えるべきです。

贈与で進めるか、相続で進めるか

特例事業承継税制では、贈与税の納税猶予と相続税の納税猶予が問題になります。

贈与による承継には、タイミングを選びやすいという利点があります。

先代経営者が生前に後継者へ株式を移し、経営権を計画的に引き継ぐことができます。後継者を代表者として据え、金融機関や取引先への説明を段階的に進めることも可能です。

一方で、贈与による承継では、後継者が経営を引き受ける覚悟を明確にする必要があります。

制度を使った後に経営方針が変わったり、後継者が経営から離れたりすれば、猶予税額の取扱いに影響する可能性があります。

これに対し、相続による承継は、先代経営者の死亡を契機として株式が移るため、タイミングを選べません。

後継者が相続開始時点で準備できていなければ、相続税申告、都道府県認定、遺産分割、金融機関対応、代表者変更が、短期間に集中することになります。

贈与か相続かは、単に税額で決めるものではありません。

後継者の準備状況、先代経営者の関与、相続人関係、株式評価、納税資金、金融機関対応、事業計画。これらを見ながら判断する必要があります。

雇用要件は「なくなった」のではない

特例措置では、雇用確保要件が弾力化されています。

事業承継後5年間平均で雇用の8割維持が必要とされていた点が見直され、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続できるようになりました。ただし、経営悪化等が理由の場合には、認定支援機関の指導・助言が必要とされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ここで誤解してはならないのは、「雇用を気にしなくてよい」という意味ではないということです。

雇用が8割を下回った場合には、その理由について都道府県への報告が必要になります。認定支援機関は、雇用減少の理由について所見を記載し、経営悪化または正当ではない理由による場合には、経営改善のための指導・助言を行うことが求められます。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

つまり、雇用要件は形式的には弾力化されていても、実務上は「なぜ雇用が減ったのか」「経営改善のために何をするのか」を説明できる体制が必要だということです。

承継後に売上が落ちた。
不採算部門を整理した。
人員構成を変えた。
採用できなかった。
事業転換を進めた。

こうした事情を、数字と計画で説明できるかが問われます。

月次決算、資金繰り、部門別損益、事業計画の管理ができていなければ、雇用減少の説明も説得力を持ちません。

年次報告・継続届出を続けられるか

特例事業承継税制を使った後は、継続的な報告・届出が必要になります。

認定後は、都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を年1回提出します。税務申告後5年以内は毎年これを繰り返し、6年目以後は税務署にのみ、継続届出書を3年に一度提出することになります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

また、特例措置の適用を継続して受けるためには継続届出手続が必要であり、継続届出書を期限までに提出しなかった場合には、その提出期限の翌日から2か月を経過する日に納税猶予の期限が確定します。
出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)

この点は非常に重要です。

制度を使った時点では贈与税・相続税の納付が猶予されていても、届出管理を怠れば、猶予を維持できなくなる可能性があります。

税制を使う前に、自社が長期的に次の管理を続けられるかどうかを確認しておく必要があります。

  • 株式保有状況の管理
  • 代表者・役員の状況確認
  • 雇用状況の確認
  • 会社の事業継続状況の確認
  • 年次報告書・継続届出書の提出期限管理
  • 税務署・都道府県への提出資料管理
  • 認定支援機関との継続的な連携

事業承継税制は、適用を受けるときよりも、適用を受けた後の管理こそが重要です。

担保提供も実務上の重要論点になる

納税猶予を受ける場合には、税務申告手続の中で担保提供が必要になります。

非上場株式等についての相続税の納税猶予の適用を受けるためには、相続税の申告書の提出期限までに、納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供することとされています。贈与税の納税猶予や特例措置についても、相続税の納税猶予における担保の取扱いに準じて取り扱う旨が示されています。
出典:国税庁|非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予(担保の提供に関するQ&A)
出典:国税庁|担保提供に関する書類等はいつまでに提出しなければならないのでしょうか

担保提供は、制度利用の実務を考えるうえで見落としやすい論点です。

非上場株式を担保にする場合、株券発行会社か株券不発行会社か、株主名簿、質権設定、印鑑証明書、会社側の承諾書類など、準備すべき事項が生じます。

申告期限の直前に気づいたのでは、書類の整備が間に合わない可能性があります。

特例事業承継税制を検討する際は、税額の試算だけでなく、担保提供の手続まで含めてスケジュールを組んでおく必要があります。

猶予が取り消された場合の資金リスクを見ておく

特例事業承継税制は、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。

そのため、要件を満たさなくなった場合や、必要な届出を怠った場合には、猶予期限が確定し、猶予税額の納付が必要になる可能性があります。

ここで問題になるのが、納税資金です。

制度を使った時点では、会社や後継者に現金負担が発生しないように見えるかもしれません。

しかし、猶予が取り消される、期限が確定する、株式を譲渡する、会社を清算する、事業継続が難しくなる。こうした場面では、納税資金をどう確保するかが問題になります。

特に、非上場株式はすぐに現金化できる資産ではありません。

株式の評価額が高い一方で、後継者個人に現金がない場合には、猶予税額の納付が資金繰りに大きな影響を与える可能性があります。

制度利用前に確認しておきたいのは、次の点です。

  • 猶予税額はいくらになり得るか
  • 後継者個人に納税余力があるか
  • 会社からの配当や役員報酬で対応できるか
  • 株式を売却できる可能性はあるか
  • 金融機関から資金調達できるか
  • 制度取消時に会社の資金繰りへ間接的な影響がないか

「猶予されるから大丈夫」ではなく、「猶予が外れた場合にも説明できるか」を見ておく必要があります。

株価対策と制度利用の順番を間違えない

事業承継税制を検討する会社では、自社株評価が重要になります。

株価が高い会社ほど、納税猶予の効果は大きくなります。

一方で、株価が高い理由が、内部留保、不動産、有価証券、過去の利益蓄積、含み益にある場合には、株式を移した後の経営や資産管理にも影響します。

ここで注意しておきたいのは、株価対策を税額だけで考えないことです。

役員退職金を支給する。
配当政策を見直す。
不動産を整理する。
自己株式を取得する。
種類株式を使う。
持株会社を検討する。
組織再編を行う。

こうした施策は、株価だけでなく、資金繰り、法人税、所得税、相続税、会社法手続、金融機関対応、少数株主対応にも影響します。

特例事業承継税制を使う場合も、株価対策を行う場合も、最初に見るべきなのは「後継者にどのような会社を引き継がせるか」です。

税額を下げることだけを目的にして会社の資金や経営体力を削れば、承継後の経営が弱くなることがあります。

先代経営者の退き方を決めておく

事業承継税制では、後継者が経営を引き継ぐことが前提になります。

そのため、先代経営者がどのように退くかも重要な論点です。

形式上は後継者が代表者になっていても、実質的な意思決定を先代経営者が続けているようであれば、後継者の経営責任は曖昧なままになります。

逆に、先代経営者が完全に退いたことで、取引先、従業員、金融機関との関係が不安定になることもあります。

必要なのは、段階的な役割整理です。

  • 代表権をいつ移すか
  • 先代経営者は役員として残るのか
  • 金融機関対応を誰が担うのか
  • 主要取引先への説明をどう進めるのか
  • 従業員への説明をいつ行うのか
  • 役員退職金を支給するのか
  • 退職後の報酬や関与をどう整理するのか

特例事業承継税制は、株式を移す制度です。

しかし事業承継の実務では、経営権、信用、人間関係、資金、意思決定の移行を、同時に設計しなければなりません。

M&Aや組織再編の可能性がある場合は慎重に考える

特例事業承継税制を使った後に、M&Aや組織再編を行う可能性がある会社では、慎重な検討が求められます。

将来的に第三者承継へ切り替える可能性がある。
後継者が一定期間経営した後、会社を売却する可能性がある。
グループ内再編や持株会社化を検討している。
不採算部門を分割・譲渡する可能性がある。
少数株主の整理や自己株式取得を予定している。

このような場合には、事業承継税制の適用要件、取消事由、再計算免除、株式保有要件、組織再編時の取扱いを、事前に確認しておく必要があります。

制度を使った後になって「やはりM&Aをしたい」「組織再編をしたい」となれば、税務上の制約が意思決定に影響することがあります。

M&Aや組織再編の可能性がある会社では、資本政策・組織再編の論点とあわせて検討すべきです。

特例税制を使うことは、将来の選択肢に影響します。

将来の選択肢を狭めないためにも、承継後の経営方針を先に確認しておく必要があります。

特例事業承継税制を使わない方がよい場合

特例事業承継税制は強力な制度ですが、すべての会社に適しているわけではありません。

たとえば、次のような場合には、慎重な判断が必要です。

  • 後継者がまだ決まっていない
  • 後継者の経営意思が固まっていない
  • 親族間・株主間の対立が解消されていない
  • 株主名簿や過去の株式移動が不明確
  • 将来M&Aを検討する可能性が高い
  • 承継後の事業計画が作れていない
  • 月次決算や資金繰り管理が不十分
  • 継続届出や年次報告を管理する体制がない
  • 猶予取消時の納税資金をまったく想定していない
  • 税額だけを理由に制度利用を急いでいる

このような状態で制度を使えば、税務上のメリットよりも、承継後の管理負担や将来の制約の方が大きくなる可能性があります。

制度を使わないことは、失敗ではありません。

制度を使わない方が、将来のM&A、株式売却、相続分割、事業再編を進めやすい場合もあります。

重要なのは、自社の承継方針に照らして合理的かどうかです。

相談前に整理しておきたい資料

特例事業承継税制を検討する際には、相談前に次の資料を整理しておくと、判断が具体化しやすくなります。

  • 直近数期分の決算書・申告書
  • 直近の試算表
  • 株主名簿
  • 定款
  • 過去の株式移動に関する契約書・議事録
  • 役員構成・代表者の履歴
  • 借入金一覧
  • 経営者保証の状況
  • 固定資産台帳
  • 役員貸付金・役員借入金の有無
  • 後継者候補の状況
  • 事業計画・資金繰り表
  • 相続人関係の整理
  • 生命保険・退職金・個人資産の概況

これらを確認しないまま、制度適用の可否だけを判断することは危険です。

特例事業承継税制の検討では、税額試算、株式承継、資金繰り、相続、金融機関対応、承継後の経営計画を、同時に見ていく必要があります。

まとめ|特例事業承継税制は、納税猶予ではなく承継設計として考える

特例事業承継税制は、非上場株式の承継に伴う贈与税・相続税の負担を軽減し得る、重要な制度です。

しかし、制度を使う前に整理すべきことは、決して少なくありません。

後継者は本当に決まっているか。
株式をどこまで集中させるべきか。
贈与で進めるのか、相続で進めるのか。
雇用要件を満たせない場合に説明できるか。
年次報告・継続届出を管理できるか。
担保提供の手続を準備できるか。
猶予が取り消された場合の資金リスクを見ているか。
将来のM&Aや組織再編の可能性をどう考えるか。

これらを確認しないまま制度を使えば、税負担は一時的に軽くなっても、承継後の経営判断が難しくなることがあります。

特例事業承継税制は、税金を減らすためだけの制度ではありません。

後継者に会社をどう引き継ぎ、承継後の経営をどう安定させるかを考えるための制度です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、特例事業承継税制の適用可否だけでなく、株式承継、資金繰り、税務影響、金融機関説明、承継後の月次管理まで含めて、事業承継を経営判断として整理することを重視しています。

特例承継計画を提出すべきか、贈与と相続のどちらで進めるべきか。制度を使わないという選択肢も含めて整理したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

制度を使うかどうかを決める前に、自社の株式・後継者・資金・承継後の経営体制を整理すること。それが、最初の一歩になります。

重要事項の振り返り

論点確認すべきこと判断上の注意点
制度の位置づけ贈与税・相続税の納税猶予制度であること税金が完全になくなる制度と誤解しない
提出期限特例承継計画の提出期限と承継期限期限に間に合うかではなく、承継設計が整っているかを見る
後継者誰が代表者として経営を担うか後継者の意思と経営能力が曖昧なまま進めない
株式集中議決権割合、少数株主、相続人関係税制だけでなく支配権・遺留分・株主関係を整理する
贈与か相続か生前承継か相続承継か税額だけでなく、承継時期・準備状況・相続関係で判断する
特例承継計画後継者、承継時期、経営見通し、5年間の事業計画書類作成ではなく、承継後の経営計画として考える
雇用要件雇用減少時の理由説明と認定支援機関の関与弾力化されていても、説明責任は残る
年次報告・継続届出都道府県・税務署への継続的な提出提出漏れは猶予継続に重大な影響を与える
担保提供申告期限までの担保提供手続非上場株式を担保にする場合は書類整備に時間がかかる
取消リスク猶予期限確定時の納税資金猶予が外れた場合の資金繰りを事前に確認する
株価対策役員退職金、自己株式、種類株式、組織再編等株価を下げることだけを目的にしない
将来の選択肢M&A、組織再編、廃業、株式売却の可能性制度利用が将来の意思決定を制約する場合がある
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次