民事再生・破産・会社更生と法人税務|債務免除益・欠損金・申告義務を整理する

会社が資金繰りに行き詰まったとき、経営者の関心は、まず「事業を残せるか」「金融機関や取引先とどう交渉するか」「従業員をどう守るか」に向かいます。当然のことだと思います。

ただ、民事再生・破産・会社更生といった法的整理の局面では、これらと並行して、法人税務も大きく動き始めます。債務免除を受ければ債務免除益が発生し、資産を処分すれば譲渡損益が生じます。過年度の粉飾や、実在しない資産が見つかることもあります。申告していない期間があれば、倒産手続の中でそのまま放置できるとは限りません。

ここで押さえておきたいのは、法的整理に入ったからといって、税務が止まるわけではないという点です。むしろ通常時よりも、資産・負債・欠損金・申告義務・税務調査リスクを、短期間で整理しなければならない局面になります。

この記事では、倒産法手続そのものの詳細ではなく、民事再生・破産・会社更生の局面で法人税務上何を確認すべきかを、経営判断と実務整理の観点から整理していきます。

目次

まず、民事再生・破産・会社更生は税務上の前提が違う

ひとくちに法的整理といっても、税務上は同じ扱いにはなりません。

手続大きな性格税務上の基本視点
民事再生再建型。債務者が事業継続を前提に再生計画を進めることが多い債務免除益、資産評定、欠損金、再生計画後の黒字化を確認
破産清算型。法人財産を換価し、債権者に配当して法人を終了させる方向資産処分損益、消費税、申告義務、残余財産なし、期限切れ欠損金を確認
会社更生主に株式会社を対象とする大規模・厳格な再建型手続管財人管理、債務免除益、欠損金、株主・担保権者を含む権利変更を確認

民事再生法は、経済的に窮境にある債務者について、債権者の多数の同意と裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、債務者と債権者との間の民事上の権利関係を調整する制度です。出典:e-Gov法令検索|民事再生法

会社更生法は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定・遂行に関する手続を定め、債権者や株主その他の利害関係人の利害を調整しながら、事業の維持更生を図る制度です。出典:e-Gov法令検索|会社更生法

一方、破産法上の破産手続は、債務者の財産などを清算する手続として位置付けられています。出典:e-Gov法令検索|破産法

税務判断では、まず「再建を目指す手続なのか」「清算を前提にしているのか」を分けて考える必要があります。同じ債務免除であっても、事業継続を前提にした再生計画の中で行われるのか、清算の過程で弁済不能債務が切り捨てられるのかによって、確認すべき資料も、税務上の検討順序も変わってくるからです。

法的整理に入っても法人税の申告義務は消えない

倒産局面でよく耳にする誤解が、「もう破産するのだから、法人税の申告は不要ではないか」というものです。

これは危険な思い込みです。会社が破産・再生・更生の手続に入っても、法人格が存在し、課税所得・資産処分・消費税課税取引・源泉所得税の未納などがある限り、税務対応は残り続けます。

特に破産では、破産管財人が財産を換価する過程で不動産や備品を売却し、譲渡益や消費税の課税売上が発生することがあります。破産会社は赤字であることが多いため、申告をしても税額は出ないだろうと考えがちです。しかし、源泉税の還付、中間納付の還付、資産処分益、消費税、地方税などを確認しておかなければ、破産財団や債権者への配当に影響する場合があります。

破産管財人の申告義務が争われた裁判例でも、破産管財人は破産財団に対する管理処分権能の一環として申告義務を負うと整理され、所定の申告をしなかったことに正当な理由はないと判断されたものがあります。

倒産手続中の税務で確認すべき申告は、法人税だけではありません。

税目・手続確認すべき内容
法人税・地方法人税事業年度、資産処分益、債務免除益、欠損金控除
法人住民税・事業税清算中・再生中の地方税申告、均等割、外形標準課税の有無
消費税資産売却、事業譲渡、課税売上、仕入税額控除、簡易課税・本則課税
源泉所得税役員・従業員給与、退職金、士業報酬、未納源泉
償却資産税・固定資産税資産保有・売却・廃棄の時期
法定調書退職金、報酬、不動産使用料等
更正の請求・還付申告過年度誤謬、源泉税還付、中間納付還付
税務調査対応過年度粉飾、架空資産、売上除外、未申告期間

「手続に入ったから税務は後回し」ではなく、手続の開始時点で税務論点を棚卸ししておくことが欠かせません。

事業年度の切れ目を確認する

倒産局面では、通常の決算期だけを見ていると、申告期限を誤ってしまうことがあります。

株式会社が解散等をした場合の清算中の事業年度について、国税庁は、会社法上の清算事務年度が法人税法上の事業年度に該当すること、また事業年度の中途で解散した場合には、解散日までの期間と、解散日の翌日から清算事務年度終了日までの期間について、みなし事業年度が生じることを示しています。なお、破産手続開始決定による解散の場合には清算事務年度が定められていないため、会社が定款等で定めた事業年度を法人税法上の事業年度として、法人税法13条・14条の規定が適用されるとされています。出典:国税庁|1 事業年度

実務では、次のような区切りを確認していきます。

局面確認する事業年度
民事再生開始通常の事業年度が継続するのが基本。再生計画認可・債務免除時期を確認
会社更生開始更生手続開始・更生計画認可・終了時期と、管財人管理下の申告を確認
破産手続開始破産手続開始決定日、定款上の事業年度、換価・配当の期間を確認
解散・清算解散事業年度、清算中事業年度、残余財産確定事業年度を確認
事業譲渡・スポンサー支援譲渡日、資産移転日、債務免除日、消費税の課税時期を確認

申告期限の管理を誤れば、無申告加算税や延滞税の問題が生じます。資金が乏しい会社ほど、余計な附帯税を発生させないための管理が重要になります。

債務免除益は「資金が入らない利益」である

再生・更生・清算局面の法人税務で、最も重要になるのが債務免除益です。

金融機関や仕入先、オーナー、関係会社から借入金や買掛金の免除を受けた場合、会社側では原則として債務免除益が発生します。現金は入ってこないものの、返済義務が消えることで純資産が増えるため、税務上は益金になる可能性があるのです。

たとえば、1億円の借入金免除を受けた会社に、使用可能な繰越欠損金が2,000万円しかなければ、単純に見れば8,000万円の課税所得が生じる可能性があります。実際には、期限切れ欠損金や評価損益、資産処分損、事業税、別表五(一)の利益積立金額などを確認していきますが、「債務を免除してもらったのに税金が出る」という事態は、決して珍しくありません。

項目確認すべきポイント
債務免除の相手金融機関、仕入先、親会社、オーナー、関係会社
債務免除の根拠再生計画、更生計画、破産配当、債権放棄通知、和解契約
免除時期債務免除益の認識年度に直結
債務の内容借入金、買掛金、未払金、保証債務、劣後債務
債務免除益の額元本、利息、遅延損害金、外貨建債務
欠損金との関係青色欠損金、期限切れ欠損金、災害損失欠損金
資産評価との関係資産評定、評価損益、実態貸借対照表
株主・関係会社への波及寄附金、貸倒損失、株価、みなし贈与

債務超過会社が債務免除を受ける場合、会社側では債務免除益が益金計上されます。そのため、通常は繰越欠損金や法人所得の圧縮策がある場合に実行する、という整理が実務上重要になります。オーナー貸付金の整理でも、債権放棄は課税関係が明確である一方、株価の上昇やみなし贈与への波及を確認しておく必要があります。

期限切れ欠損金を使えるかどうかが結論を左右する

債務免除益への課税を検討する際、青色欠損金だけを見ていては足りません。

倒産・再生局面では、過去に発生したものの繰越期間を経過してしまった欠損金、いわゆる期限切れ欠損金が重要な意味を持ちます。法人税法59条は、会社更生等による債務免除等があった場合や、一定の解散局面で、欠損金の損金算入を認める制度を置いています。出典:e-Gov法令検索|法人税法

国税庁の法人税基本通達では、会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金について、再生手続開始の決定に準ずる事実、欠損金額の範囲、債務免除等の金額、残余財産がないと見込まれることの判定などが整理されています。出典:国税庁|第3節 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

特に法人税基本通達12-3-2では、「前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額」は、法人税申告書別表五(一)の期首現在利益積立金額の合計額として記載されるべき金額が負である場合の、その金額によるとされています。出典:国税庁|第3節 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

実務上は、次の順番で確認していきます。

確認順序内容
1債務免除益の額を把握する
2当期の通常損益・資産処分損益を見積もる
3青色欠損金の残高と控除限度を確認する
4別表五(一)の利益積立金額から期限切れ欠損金を把握する
5法的整理・私的整理・解散のどの制度に該当するか確認する
6資産評定・評価損益の有無を確認する
7青色欠損金と期限切れ欠損金の控除順序・切捨て影響を確認する
8地方税・事業税への波及を確認する
9申告書別表と添付資料を整える

清算中に終了する事業年度で残余財産がないと見込まれるときは、期限切れ欠損金を損金算入できる取扱いがあり、これが債務免除益に対する法人税負担を左右します。清算・債務超過局面では、別表五(一)の期首利益積立金額と青色欠損金額の関係を精査することが不可欠です。

「残余財産がない」とは、実態貸借対照表で説明する

破産や清算型の処理で期限切れ欠損金を検討する場合には、「残余財産がないと見込まれる」かどうかが重要な論点になります。

国税庁は、解散した法人が事業年度終了時に債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当することを示しています。そして、その説明資料として、資産・負債の価額により作成される実態貸借対照表を例示しています。資産価額は原則として事業年度終了時の処分価格によりますが、事業譲渡等を前提として資産が継続使用される見込みである場合には、使用収益されるものとして通常付される価額による、とされています。出典:国税庁|第3節 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

ここで大切なのは、帳簿上の貸借対照表ではなく、実態貸借対照表で説明するという点です。

帳簿上の論点実態貸借対照表での確認
回収不能な売掛金回収可能額まで評価
実在しない在庫実物確認に基づき除外
陳腐化した在庫処分可能価額を確認
使用不能な固定資産売却・スクラップ価額を確認
担保付き不動産担保権・処分見込額を確認
簿外債務未払税金、未払社会保険、保証債務を確認
関係会社貸付金回収可能性を確認
オーナー貸付金・借入金債務免除・DES・相殺可能性を確認

粉飾決算や仮装経理があった会社では、貸借対照表に実在しない資産が残っていることがあります。国税庁は、破産管財人の財産調査によって実在性のない資産が判明した場合について、実態貸借対照表上で債務超過であれば「残余財産がないと見込まれる」こととなり、期限切れ欠損金額を損金算入できるとする取扱いを示しています。出典:国税庁|平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例 問11 実在性のない資産の取扱い

この取扱いは、破産だけでなく、特別清算・民事再生・会社更生など裁判所が関与する法的整理手続や、公的機関・独立第三者が関与する一定の私的整理手続にも関係します。同じ質疑応答事例では、再生型の法的整理手続である民事再生または会社更生の手続開始決定後に清算手続が行われる場合なども、対象として整理されています。出典:国税庁|平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例 問11 実在性のない資産の取扱い

民事再生では「事業継続後の税負担」を見る

民事再生は、会社を残しながら債務を整理し、再生計画に基づいて弁済していく手続です。したがって税務上は、単に債務を圧縮する局面としてではなく、再生後の損益計画・資金繰り・税負担まで見ておく必要があります。

民事再生で確認すべき法人税務は、次のとおりです。

論点確認事項
債務免除益再生計画認可・債権者同意により、いつ益金計上するか
期限切れ欠損金法人税法59条の対象になるか、資産評定の有無
青色欠損金控除限度、繰越期間、将来所得との対応
資産評定評価損益の計上可否、税務上の評価損益規定の適用
事業譲渡譲渡損益、消費税、営業権、資産別対価
スポンサー支援増資、DES、株式譲渡、欠損金制限
役員・従業員未払給与、退職金、源泉所得税、社会保険
取引先債務買掛金カット、リース債務、保証債務
再生後の黒字債務免除後に税負担が復活する時期

民事再生等で一定の資産評定を行う場合には、期限切れ欠損金の損金算入制度の適用において、青色欠損金額等との調整が問題になります。国税庁は、会社更生の場合および民事再生等で一定の資産評定を行う場合と、資産評定を行わない場合・解散の場合とで、期限切れ欠損金と青色欠損金の扱いに違いが生じることを整理しています。出典:国税庁|会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

民事再生では、税務上の重要ポイントは「再生計画を成立させること」だけにとどまりません。債務免除益に対する税負担が再生計画の資金繰りに織り込まれているか、将来の黒字化によって欠損金がどう使われるか、税額控除や中小企業特例が使える状態に戻るのか。ここまで確認しておく必要があります。

会社更生では、管財人・株主・担保権者まで含めて税務影響を見る

会社更生は、株式会社を対象とする再建型手続であり、民事再生よりも大規模かつ厳格な手続として用いられることが多い制度です。更生計画では、債権者だけでなく、担保権者や株主の権利変更が問題になることもあります。

税務上は、次の点が重要になります。

論点実務上の確認
管財人管理誰が申告書作成・提出・納税判断を行うか
債務免除益更生計画による免除・株式化・権利変更の税務処理
DES・株式発行債務の資本化、資本金等の額、債務消滅益
資産評定更生計画上の資産価額と税務上の評価損益
欠損金期限切れ欠損金、青色欠損金、制限の有無
株主課税既存株式の減資・消却・価値消滅
スポンサー支援増資、株式取得、欠損等法人の制限
税務調査過年度粉飾、仮装経理、未払税金、源泉税

会社更生では、債務の免除だけでなく、債権の現物出資、株式・新株予約権の発行、既存株主の権利変更などが絡んでくることがあります。法人税基本通達12-3-6は、会社更生法等により債権を有する者が更生計画に従い募集株式等の払込みをしたものとみなされる場合や、債権消滅と引換えに株式等が発行される場合などを、債務の免除以外の事由による消滅として整理しています。出典:国税庁|第3節 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

更生手続では、会計・税務だけでなく、裁判所、管財人、スポンサー、金融機関、株主、従業員が関与します。税務だけを切り離して判断してしまうと、更生計画上の弁済可能性やスポンサー支援条件と整合しない結論になりかねません。

破産では「税金が出るか」よりも「申告を完結できるか」が重要になる

破産は清算型の手続です。事業継続ではなく、法人財産を換価し、配当し、法人を終了させる方向で進んでいきます。

とはいえ、破産会社でも次のような税務論点が発生します。

論点
資産売却益不動産、機械、車両、有価証券、在庫の売却
消費税課税資産の譲渡、課税事業者判定、仕入税額控除
未払税金法人税、消費税、源泉所得税、地方税
源泉所得税破産前給与、退職金、士業報酬
実在しない資産粉飾在庫、架空売掛金、架空固定資産
債務免除益配当不能債務の切捨て、免除時期
欠損金青色欠損金、期限切れ欠損金、実態貸借対照表
還付中間納付、源泉税、消費税還付
申告期限破産開始後の事業年度、清算中の申告

破産では、会社の手元資金が乏しいため、税務申告を後回しにしたくなる場面があります。しかし、資産を売却した結果として税務申告が必要になる場合もあれば、逆に申告をすれば還付を受けられる場合もあります。

また、破産前に粉飾決算が行われていた会社では、破産管財人の財産調査で実在しない資産が見つかることがあります。この場合、その資産を単純に当期損失とするのではなく、過去の帳簿書類、発生原因、更正期限、修正経理、期限切れ欠損金への反映を整理しなければなりません。国税庁の質疑応答事例でも、実在性のない資産の発生原因が更正期限内の事業年度に生じた場合、更正期限を過ぎた事業年度に生じた場合、発生原因が不明な場合に分けて、処理が整理されています。出典:国税庁|平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例 問11 実在性のない資産の取扱い

スポンサー支援・第二会社方式では欠損金制限に注意する

再生局面では、スポンサーが入る、事業を譲渡する、第二会社へ事業を移す、旧会社を清算する、といった対応が検討されます。

このとき、単純に「債務を旧会社に残し、事業だけを新会社へ移す」と考えてしまうと、税務上の論点を見落としがちです。

スキーム税務上の主な論点
株式譲渡対象会社の過去申告リスク・欠損金制限・簿外債務
事業譲渡譲渡損益、消費税、営業権、資産負債の個別移転
会社分割適格要件、資産負債移転、欠損金、株主課税
第二会社方式旧会社と新会社の同一性、事業譲渡益、貸倒・寄附金
DES債務消滅益、資本金等の額、株価、債権評価
債権放棄後の譲渡債務免除益、債権者側貸倒損失、寄附金、株価

欠損等法人の株式取得については、繰越欠損金の不当利用を防止するための制限があります。もっとも、会社更生法、民事再生法、特別清算、破産、一定の私的整理等による債務処理計画に基づく株式発行・譲渡については、特定支配関係が生じたとみなさない場合があると整理されています。

一方で、単なる企業再生ファンドによる支援や、合理的な債務処理計画に基づかない支援では、こうした特例的な取扱いを受けられず、繰越欠損金や評価損資産に制限がかかる可能性があります。

第二会社方式では、旧会社と新会社の同一性の排除が実務上の要になります。社名、役員構成、従業員処遇、固定資産の承継方法、事業譲渡契約、取引先の承継などを曖昧にしてしまうと、債権者側の貸倒損失や寄附金、旧会社側の債務免除益、新会社側の受贈益・営業権などが問題になってきます。

税務調査では「倒産した会社だから」で説明は終わらない

倒産局面では、税務調査は入らないだろうと思われがちです。しかし、次のような事情がある場合には、税務上の確認が問題になりやすくなります。

調査・確認されやすい論点背景
破産前の資産流出役員・関係会社への偏った支払、資産譲渡
粉飾決算架空売上、架空在庫、実在しない資産
売上除外簿外入金、現金売上、代表者口座
架空経費外注費、役員関係者への支払
源泉所得税未払給与・退職金・報酬
消費税資産売却、課税売上、簡易課税の適用
貸倒損失債権者側の損金算入時期
債権放棄寄附金該当性、合理的再建計画の有無
関係会社取引グループ内支援、無償・低額取引
申告漏れ破産後・清算中の申告未了

税務調査手続では、調査通知、事前通知、質問検査権、帳簿書類の提示、調査結果説明、修正申告の勧奨、更正といった流れが整理されています。倒産手続中であっても、税務署からの確認に対しては、管財人、代理人、税理士、会社関係者が連携し、事実関係と資料に基づいて対応する必要があります。

特に、再生・更生・破産に至る会社では、過去数期の決算が実態を反映していないことがあります。粉飾決算や仮装経理がある場合には、仮装経理に基づく過大申告の修正、税額還付制限、重加算税、青色申告承認取消しといった論点が別途生じます。粉飾決算は税務上、仮装経理として扱われ、通常の過大申告とは異なり、減額更正や還付に制限がある点にも注意が必要です。

法的整理前に整理すべき税務資料

民事再生・破産・会社更生を検討する段階では、弁護士に相談するだけでなく、税務資料も早期に整理しておく必要があります。

資料税務上の確認目的
過去5〜10期分の法人税申告書欠損金、税務調整、別表五(一)を確認
決算書・勘定科目内訳明細書資産負債の実在性、債権債務の内訳を確認
総勘定元帳粉飾、役員取引、資産処分、未払計上を確認
別表五(一)利益積立金額、期限切れ欠損金の基礎を確認
別表七(一)青色欠損金・災害損失欠損金を確認
借入金明細金融機関別債務、保証、担保を確認
債権者一覧債務免除・弁済・配当の対象を整理
売掛金・買掛金明細回収不能・支払不能・相殺関係を確認
棚卸表実在性、評価、廃棄見込みを確認
固定資産台帳売却・除却・担保・減価償却を確認
不動産資料時価、担保権、譲渡損益、登録免許税等を確認
消費税申告書課税事業者判定、資産売却時の税額を確認
源泉所得税資料未納源泉、退職金、士業報酬を確認
税務調査履歴過去指摘事項、修正申告、加算税を確認
金融機関提出資料決算書との整合、粉飾可能性を確認
再生計画案・更生計画案債務免除益、弁済計画、資金繰りを確認

税務資料の整理が遅れると、再生計画や更生計画に税負担が織り込まれないまま、手続が進んでしまうことがあります。破産の場合でも、還付を受けられる税額を見落としたり、逆に資産換価後の消費税負担を見落としたりする可能性があります。

手続別に見る、最初に確認すべき税務論点

民事再生を検討する場合

民事再生では、再建後の事業継続が前提になります。そのため税務上は、「債務免除益をどう処理するか」だけでなく、「再生後に利益が出たとき、欠損金をどう使えるか」まで確認します。

確認事項実務上の意味
債務免除予定額再生計画上の税負担に直結
資産評定の有無期限切れ欠損金の控除順序・範囲に影響
青色欠損金残高再生後の税負担予測に影響
役員・株主構成経営責任、スポンサー支援、株式価値に影響
事業譲渡の有無消費税・譲渡損益・営業権に影響
未払税金再生債権・共益債権等の法的整理と連動
消費税再生後の資金繰りを圧迫しやすい

破産を検討する場合

破産では、清算を前提に、資産と負債を実態ベースで整理します。税務上は、換価処分、残余財産なし、期限切れ欠損金、未申告期間が中心になります。

確認事項実務上の意味
破産開始決定日事業年度・申告期限管理
換価対象資産売却益・消費税の発生
実態貸借対照表残余財産なしの説明
実在しない資産粉飾修正・期限切れ欠損金への反映
未申告期間無申告加算税・延滞税リスク
源泉所得税役員・従業員・士業報酬の未納確認
還付可能税額中間納付・源泉税・消費税還付

会社更生を検討する場合

会社更生では、手続の厳格性が高く、利害関係者も多いため、税務判断を計画全体に組み込む必要があります。

確認事項実務上の意味
更生計画上の債務カット債務免除益・欠損金に影響
株主権変更減資・株式消却・株主課税に影響
担保権者の扱い資産処分・弁済・税務上の時価に影響
DES・増資資本金等の額、債務消滅益に影響
管財人管理申告・納税・資料提出の責任関係
資産評定税務上の評価損益・期限切れ欠損金に影響
スポンサー支援欠損金制限、M&A税務、税務DDに影響

税務判断を誤ると、再建計画そのものが崩れることがある

倒産局面の法人税務は、単なる申告書作成ではありません。税務判断を誤れば、再建計画・清算配当・スポンサー支援・金融機関交渉に直接影響してきます。

判断ミス経営上のリスク
債務免除益を過小評価する再生計画にない税負担が発生
期限切れ欠損金を見落とす本来抑えられた税負担が発生
資産売却の消費税を見落とす換価後の資金繰りが不足
事業年度・申告期限を誤る無申告加算税・延滞税が発生
実在しない資産を放置する実態貸借対照表・粉飾修正に影響
関係会社の債権放棄を安易に行う寄附金・貸倒損失・株価に波及
第二会社方式を形式だけで進める旧会社・新会社の同一性、貸倒・寄附金リスク
税務資料を弁護士・管財人と共有しない再生計画・更生計画と申告が不整合
過年度未申告を放置する調査・加算税・信用低下に波及

会社を守るための法的整理であっても、税務を後から合わせようとすると、計画が数字に耐えられなくなることがあります。だからこそ、手続選択の段階で税務シミュレーションを行っておくことが重要です。

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犬飼公認会計士・税理士事務所では、債務超過会社、粉飾決算の修正、民事再生・破産・会社更生に関連する法人税務について、弁護士・金融機関・管財人・スポンサー候補との連携を前提に、税務論点の整理を支援しています。

特に、債務免除益、期限切れ欠損金、青色欠損金、実態貸借対照表、実在しない資産、資産処分益、消費税、源泉所得税、未申告期間、税務調査対応が絡む場合、申告期限が迫ってからでは十分な検討が難しくなります。

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この記事の振り返り

論点重要ポイント
民事再生事業継続を前提に、債務免除益、欠損金、再生後の税負担を確認する
破産清算型手続であっても、資産処分、消費税、申告義務、還付可能性を確認する
会社更生管財人管理、株主・担保権者の権利変更、債務免除益、欠損金を計画に組み込む
申告義務法的整理に入っても法人税・消費税・源泉税等の申告対応は残る
事業年度解散、清算、破産開始、再生計画認可などで申告対象期間を確認する
債務免除益現金収入がなくても益金となるため、税負担を資金繰りに織り込む
期限切れ欠損金債務免除益課税を左右するため、別表五(一)と別表七(一)を確認する
実態貸借対照表残余財産なし、債務超過、資産の実在性を説明する中心資料になる
実在しない資産破産・再生・更生で発見された場合、粉飾修正・期限切れ欠損金に影響する
スポンサー支援株式譲渡、事業譲渡、第二会社方式、DESごとに税務影響が異なる
税務調査倒産会社でも過年度申告、粉飾、源泉、消費税、関係会社取引が確認される
相談前資料申告書、決算書、別表五(一)、別表七(一)、債権者一覧、実態B/Sを早期に整理する
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