消費税の調査でまず確認されるのは、「この取引を、どの区分で処理したのか」という一点です。
法人税や所得税の調査であれば、売上の計上時期や必要経費性、損金性、役員給与、外注費と給与の区分といった論点が中心になります。これに対して消費税では、その前提として、取引ごとに「課税」「非課税」「不課税」「免税」のいずれに当たるのかが問われます。
この4つは、いずれも申告書上の消費税額に直接影響します。なかでも非課税・不課税・免税は、請求の段階で消費税を載せないことがあるため、実務では混同されがちです。ところが、消費税法上はその性質がまったく異なります。
非課税なのか、不課税なのか。 不課税なのか、免税なのか。 課税売上なのか、非課税売上なのか。 そして、その区分は課税売上割合や仕入税額控除に影響するのか。
税務調査の場では、「消費税はかけていません」と説明するだけでは足りません。なぜその取引に消費税を課していないのか、どの法的分類に基づく判断なのか、帳簿・請求書・契約書・入出金資料と整合しているのか。そこまで説明できる状態が求められます。
本稿では、消費税調査で問題になりやすい「課税・非課税・不課税・免税」の判定を、実務でそのまま使える形に整理してお伝えします。
取引区分は、まず「課税対象かどうか」から考える
消費税の取引区分を考えるとき、いきなり「これは課税か、非課税か」と問いを立ててしまうと、判断を誤りやすくなります。
正しい順番は、まず「そもそも消費税の課税対象に入る取引なのか」を確認することです。
消費税の課税対象は、原則として、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等、特定仕入れ、保税地域から引き取られる外国貨物の引取りに限られます。国外で行われる取引や、資産の譲渡等に当たらない取引は、そもそも課税対象になりません。
出典:国税庁|No.6105 課税の対象
ここで押さえておきたいのは、課税対象になるかどうかを見極めるために、少なくとも次の要素を確認しておく必要があるということです。
| 判定要素 | 確認する内容 |
|---|---|
| 国内取引か | 取引が国内で行われたものか |
| 事業者が行うものか | 法人または個人事業者が行う取引か |
| 事業として行うものか | 反復・継続・独立して行われる取引か |
| 対価を得て行うものか | 反対給付がある取引か |
| 資産の譲渡等か | 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供に該当するか |
これらの要件を満たす取引のうち、非課税取引に当たらないものが、通常の課税取引になります。
一方で、この入口の要件を満たさない取引は、そもそも消費税の世界に入ってきません。これが「不課税取引」です。
「課税取引」とは何か
課税取引とは、消費税の課税対象に入り、かつ非課税取引にも免税取引にも当たらない取引をいいます。
典型例としては、商品の販売、製品の販売、サービスの提供、業務委託、広告、運送、修繕、飲食、宿泊、事務所の賃貸、事業用資産の売却などが挙げられます。
国税庁は、「資産の譲渡等」を、事業として対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供と整理しています。具体的には、商品・製品の販売、事業用設備の売却、特許権・商標権などの無体財産権の譲渡、工事、修繕、運送、広告、仲介、宿泊、飲食、情報提供、専門家による役務提供などが例示されています。
出典:国税庁|No.6117 「資産の譲渡等」とは
税務調査で課税取引が問題になるのは、税率を間違えた場合に限りません。たとえば、次のような点が確認されます。
- 入金を「雑収入」として処理しているが、実態は課税売上ではないか
- 「立替金」として処理しているが、実態は手数料収入を含む課税取引ではないか
- 「補助金」として受け取っているが、実態は役務提供の対価ではないか
- 事業用資産の売却を、消費税の対象外として処理していないか
- 海外取引として処理しているが、実態は国内取引ではないか
このように、調査で見られているのは勘定科目の名称ではなく、取引の実態です。
とくに注意したいのが、法人の場合です。法人は事業を行う目的で設立されたものとされ、その活動はすべて事業として行う取引になると整理されています。したがって、法人が事業用資産を売却したようなケースでは、通常の販売取引でなくても、消費税の課税対象に当たらないかを確認しておく必要があります。
出典:国税庁|No.6105 課税の対象
「非課税取引」とは何か
非課税取引とは、本来は消費税の課税対象に入る国内取引でありながら、消費税の性格や社会政策的な配慮から、法律上、消費税を課さないこととされている取引です。
ここが、不課税取引との大きな違いになります。
不課税取引は、そもそも消費税の課税対象に入っていません。これに対して非課税取引は、いったん課税対象に入ったうえで、法律によって消費税を課さないとされる取引です。
国税庁は、主な非課税取引として、土地の譲渡・貸付け、有価証券等の譲渡、支払手段の譲渡、預貯金や貸付金の利子、一定の郵便切手類・印紙・証紙の譲渡、商品券・プリペイドカード等の譲渡、一定の行政手数料、外国為替業務、社会保険医療、介護保険サービス、社会福祉事業等、助産、火葬料・埋葬料、一定の身体障害者用物品、学校教育、教科用図書、住宅の貸付けなどを挙げています。
出典:国税庁|No.6201 非課税となる取引
非課税取引で気をつけたいのは、消費税を請求しないことだけではありません。
非課税売上があると、課税売上割合に影響します。課税売上割合が下がると、共通対応の課税仕入れについて、仕入税額控除できる金額が制限されることがあります。
つまり非課税取引は、売上に消費税がかからないというだけでなく、仕入側の控除にも影響する取引だということです。
たとえば、不動産賃貸業、医療・介護、金融取引、住宅賃貸、学校法人、社会福祉関係の事業などでは、非課税売上があることで仕入税額控除の計算が大きく変わってくることがあります。
税務調査では、非課税売上そのものの処理にとどまらず、課税売上割合、個別対応方式、一括比例配分方式、共通対応仕入れの整理にまで話が及びます。非課税取引の判定は入口でありながら、最終的には仕入税額控除の金額にまで影響する。この点を意識しておきたいところです。
「不課税取引」とは何か
不課税取引とは、そもそも消費税の課税対象にならない取引のことです。
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引に課税されます。これに当たらない取引には、消費税はかかりません。これが不課税取引です。国税庁は、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などを、その例として挙げています。
出典:国税庁|No.6209 非課税と不課税の違い
不課税取引でよく問題になるのは、「入金がある」「支出がある」という事実だけで消費税を判断してしまうことです。
たとえば、次のような入出金は、その内容を確認しなければなりません。
- 補助金
- 寄附金
- 保険金
- 損害賠償金
- 配当金
- 出資金
- 預り金
- 立替金
- 給与
- 役員からの借入金
- 金融機関からの借入金
- 税金の還付金
- 敷金・保証金の預り
- 単なる資金移動
これらは、会計上は収入や支出として現れることがあります。しかし消費税では、そこに「対価性」があるかどうかを確認する必要があります。
国税庁は、「対価を得て行われる」とは、資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供に対して反対給付を受けることをいうとしています。商品販売、事務所貸付け、工事請負などには対価性がありますが、交換、代物弁済、現物出資のように金銭の支払を伴わない資産の引渡しであっても、何らかの反対給付があるものは課税対象になり得ます。
出典:国税庁|No.6113 「対価を得て行われる」の意義
ここで大切なのは、「お金が動いていないから不課税」とは限らない、ということです。逆に、「お金が動いているから課税」とも限りません。
消費税調査で見られているのは、入出金の名目ではなく、その入出金が何の反対給付なのかという点です。契約書、請求書、振込摘要、稟議書、取引先とのメール、社内メモといった資料から、取引の実態を説明できるようにしておきたいところです。
「免税取引」とは何か
免税取引とは、課税取引には該当するものの、一定の要件を満たすことで消費税が免除される取引です。
その代表が、輸出取引です。
ここでいう免税は、「免税事業者」の免税とは意味合いが異なります。免税事業者とは、一定の要件により消費税の納税義務が免除される事業者をいいます。一方の免税取引は、取引そのものが輸出等に当たるために、その売上について消費税が免除される取引を指します。
国税庁は、免税取引として、商品の輸出、国際輸送、外国にある事業者に対するサービス提供などの輸出類似取引を挙げています。そして、免税取引は課税資産の譲渡等に当たるものの、一定の要件を満たす場合に売上に係る消費税が免除されるものであり、その免税取引のために行った課税仕入れについては、原則として仕入税額控除ができると整理しています。
出典:国税庁|No.6205 非課税と免税の違い
免税取引は、非課税取引と混同されやすいところです。
非課税取引は、消費税を課さない取引であり、その取引のために行った課税仕入れについては、原則として仕入税額控除が制限されます。
これに対して免税取引は、輸出等について国内消費税の負担をゼロにする趣旨の取引であり、あくまで課税売上としての性質を持っています。そのため、免税売上に対応する課税仕入れについては、原則として仕入税額控除の対象になります。
この違いは、消費税調査ではきわめて重要です。
輸出売上を免税として処理している場合、「海外向けです」と説明するだけでは足りません。輸出許可書、船荷証券、インボイス、契約書、送金記録、役務提供の内容、相手先の所在地、役務提供地、輸出証明に関する資料など、免税要件を支える資料が必要になります。
非課税・不課税・免税は、課税売上割合への影響が異なる
消費税調査でとくに意識しておきたいのが、非課税・不課税・免税それぞれが、課税売上割合に与える影響の違いです。
国税庁は、課税売上割合について、分母を総売上高(課税取引、非課税取引および免税取引の合計額)とし、分子を課税売上高(課税取引および免税取引の合計額)とした割合と説明しています。非課税取引は原則として分母のみに算入される一方、不課税取引は消費税の適用対象ではないため、分母にも分子にも算入されません。
出典:国税庁|No.6209 非課税と不課税の違い
これを整理すると、次のようになります。
| 区分 | 消費税の課税対象か | 売上に消費税を課すか | 課税売上割合への基本的な影響 |
|---|---|---|---|
| 課税 | 対象になる | 課す | 分子・分母に入る |
| 非課税 | 対象になるが非課税 | 課さない | 原則として分母に入る |
| 不課税 | そもそも対象外 | 課さない | 分子にも分母にも入らない |
| 免税 | 対象になるが免税 | 課さない | 分子・分母に入る |
この違いは、仕入税額控除に直結します。
たとえば、非課税売上が多い事業者では、共通経費に係る消費税について、全額を控除できないことがあります。反対に、輸出免税売上が多い事業者では、売上に係る消費税は免除されつつ、対応する課税仕入れについては仕入税額控除が可能となるため、還付申告につながることがあります。
そのため税務調査では、売上に消費税を乗せているかどうかだけでなく、その売上が課税売上割合の分子・分母にどう反映されているかまで確認されます。
国内取引か国外取引かの判定
課税・非課税・不課税・免税を判定する前提として、国内取引か国外取引かの判定も欠かせません。
国外取引は、消費税の課税対象になりません。すなわち、不課税取引です。
ただし、国内取引か国外取引かは、相手先が海外法人かどうか、請求書が外貨建てかどうか、入金が海外からあるかどうかだけで決まるものではありません。
資産の譲渡または貸付けの場合は、原則として、その譲渡または貸付けが行われる時に資産が所在していた場所で判定します。役務の提供の場合は、原則として、その役務の提供が行われた場所で判定します。電気通信利用役務の提供については、役務提供を受ける者の住所等によって、国内取引かどうかを判定します。
出典:国税庁|No.6210 国外取引
国際取引では、次のような誤りが起きやすくなります。
- 海外法人に請求しているから国外取引だと考えていた
- 外貨建ての契約だから消費税の対象外だと考えていた
- 海外向けサービスだから、すべて輸出免税だと考えていた
- 海外広告費の支払いを、通常の課税仕入れとして処理していた
- 三国間貿易の資産所在地を確認していなかった
- 国内外にまたがる役務提供の対価を区分していなかった
消費税の内外判定には、法人税や所得税の収益認識とは別の視点が必要です。契約書、役務提供の場所、資産の所在地、相手先の所在地、実際の業務内容を確認しなければ、申告書上の区分は説明できません。消費税は財・サービスの消費・流通に対して広く課税する多段階型の一般消費税であり、国内外の課税権の範囲を明確にするうえで、この内外判定が重要になります。
調査で問題になりやすい「勘定科目」と消費税区分
消費税区分の誤りは、特定の勘定科目に集中しやすい傾向があります。
たとえば、売上高、雑収入、受取手数料、立替金、仮受金、預り金、補助金収入、保険金収入、損害賠償金収入、受取配当金、受取利息、地代家賃、役務収益、国外売上、輸出売上といった科目です。
これらは、名称だけでは消費税区分が決まりません。
「雑収入」といっても、課税売上に当たるもの、不課税となるもの、非課税となるものが混在することがあります。「立替金」として処理していても、実態として手数料や役務提供の対価が含まれていれば、課税売上の問題が生じます。「補助金」とされていても、特定の役務提供についての対価性がある場合には、単純に不課税と整理できないことがあります。
調査では、おおむね次の順で確認されます。
- その入出金は、何のためのものか
- 契約書や請求書では、どう記載されているか
- 実際に資産の譲渡、貸付け、役務提供があるか
- 反対給付があるか
- 国内取引か、国外取引か
- 非課税規定に該当するか
- 免税要件を満たすか
- 課税売上割合や仕入税額控除に反映されているか
つまり、消費税区分は会計ソフトの税区分だけで完結するものではありません。取引の実態、契約、資料、会計処理、申告書のつながりで説明する必要があるのです。
課税・非課税・不課税・免税の判定順序
消費税の取引区分は、次の順序で考えると整理しやすくなります。
まず、国内取引かどうかを確認します。国外取引であれば、原則として不課税です。
次に、事業者が事業として行う取引かどうかを確認します。法人は原則として事業者であり、個人の場合は、その取引が事業として行われたものかを確認します。
続いて、対価性があるかを確認します。反対給付がなければ、原則として不課税です。ただし、みなし譲渡や低額譲渡など、別途確認すべき論点があります。
さらに、資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供に該当するかを確認します。ここに当てはまらなければ、不課税となります。
ここまでを満たして、はじめて消費税の課税対象に入ります。
そのうえで、非課税取引に当たるかを確認します。土地、有価証券、利子、社会保険医療、住宅の貸付けなど、法律上、非課税とされている取引に当たる場合は、非課税です。
非課税に当たらない場合は、免税取引に該当するかを確認します。輸出取引や輸出類似取引で、必要な証明・保存要件を満たす場合には、免税となります。
最後に、課税・非課税・不課税・免税の区分を、申告書、帳簿、請求書、契約書、入出金資料に反映します。
この順序を飛ばし、「これは消費税がかからないはず」という感覚で処理してしまうと、税務調査の場で説明が難しくなります。
非課税と不課税を混同すると何が起きるか
非課税と不課税を混同すると、課税売上割合が変わってしまう可能性があります。
非課税売上は、原則として課税売上割合の分母に入ります。これに対して不課税売上は、分子にも分母にも入りません。
そのため、本来は非課税売上として分母に入れるべき取引を不課税として処理していると、課税売上割合が過大になり、仕入税額控除を取り過ぎてしまう可能性があります。
逆に、本来は不課税取引であるものを非課税として処理していると、課税売上割合が過小になり、仕入税額控除を少なく計算している可能性があります。
この違いは、利益計算には直接表れにくいことがあります。しかし、消費税の申告書では、仕入控除税額に影響します。
とくに、非課税売上と課税売上が混在する事業者では、非課税・不課税の区分を誤ると、単なる売上区分の誤りでは済まないことがあります。共通経費の控除、固定資産取得時の控除、課税売上割合の変動、還付申告の妥当性にまで波及するためです。
非課税と免税を混同すると何が起きるか
非課税と免税の混同も、消費税調査では重要な論点です。
非課税取引は、消費税を課さない取引であり、その取引のために行った課税仕入れについては、原則として仕入税額控除が制限されます。
一方の免税取引は、課税資産の譲渡等に該当するものの、輸出等の一定の要件を満たすために、売上に係る消費税が免除される取引です。免税取引に対応する課税仕入れについては、原則として仕入税額控除の対象になります。
出典:国税庁|No.6205 非課税と免税の違い
このように、非課税と免税は、「売上に消費税をかけない」という見た目こそ似ていますが、仕入税額控除の考え方は大きく異なります。
この違いを取り違えると、輸出売上や海外向け役務提供の処理、医療・住宅賃貸・金融取引などの非課税売上の処理、共通仕入れの控除計算に影響が及びます。
調査で問題になりやすいのは、次のような場面です。
- 海外向け売上をすべて免税としているが、役務提供地や相手先要件を確認していない
- 国内の非課税取引を免税取引のように扱い、対応仕入れを全額控除している
- 輸出免税の証明資料が不足している
- 非課税売上があるのに、課税売上割合の計算に反映していない
- 非課税売上と免税売上を、会計ソフト上で同じ税区分にしている
消費税調査で確認されるのは、税区分コードの名称ではなく、その処理が申告書上どのように反映されているか、という点です。
医療・介護・不動産・金融取引では、とくに注意が必要
課税・非課税・不課税・免税の判定は、どの事業者にも必要なものですが、なかでも注意を要する業種があります。
医療機関では、社会保険診療が非課税となる一方で、自由診療や文書料、産業医報酬、物品販売など、内容によって課税関係が異なる取引が混在します。
介護事業では、介護保険サービスとして非課税となる部分と、利用者の選択による特別なサービス等で課税となる部分とを、分けて整理する必要があります。
不動産業では、土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、事務所賃貸、駐車場、管理料、更新料、原状回復費、敷金・保証金の返還・償却など、取引内容に応じて区分が分かれます。たとえば、土地の譲渡や貸付けは原則として非課税ですが、1か月未満の土地貸付けや、駐車場その他の施設利用に伴って土地が使用される場合は、非課税とはされません。また、事務所などの建物貸付けは課税対象となり、住宅の貸付けは一定の場合を除いて非課税とされています。
出典:国税庁|No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など
金融・保険関係では、利子、保険料、保証料、有価証券等の譲渡などが非課税となる一方で、事務手数料、コンサルティング料、システム利用料などは課税取引となることがあります。
これらの業種では、「同じ取引先からの入金だから同じ区分」「同じ請求書に載っているから同じ区分」とは限りません。取引内容ごとに区分していく必要があります。
消費税区分の誤りは、複数年にわたり継続しやすい
消費税区分の誤りには、一度設定すると、そのまま何年も続いてしまいやすいという特徴があります。
会計ソフトの補助科目や取引先マスタに税区分を設定すると、毎月同じ処理が自動的に繰り返されます。最初の判断が誤っていれば、同じ誤りが複数年にわたって継続することになります。
消費税の選択届出書や税区分の誤りは、税賠事故の典型的な領域でもあります。税区分の誤りが続いていくリスクや、届出書の提出を失念するリスクは、実務上、決して軽視できません。
税務調査では、ある年度の誤りが見つかると、過年度にも同じ処理がないかを確認されることがあります。とくに、次のような処理は継続ミスになりやすい領域です。
- 毎月同じ取引先からの請求
- 毎月同じ補助科目で処理する売上
- 不動産賃貸収入
- 医療・介護の収入区分
- 海外サービス利用料
- 会費・協賛金・負担金
- 立替金・預り金
- 業務委託費
- 補助金・助成金
- 利息・保証料・保険料
- 商品券・ポイント・プリペイドカード関係
消費税調査では、「その期だけのミス」ではなく、「同じ処理が何年続いているか」という視点で確認が行われます。だからこそ、税区分の見直しは、決算時だけでなく、月次処理の段階で行っておく必要があります。
税務調査で説明できる状態にするための資料整理
課税・非課税・不課税・免税の判定は、頭の中で判断して終わり、というものではありません。調査の場で説明するには、資料による裏付けが要ります。
課税取引であれば、請求書、契約書、納品書、業務報告書、検収記録、入出金資料、売上台帳、会計帳簿が整合している必要があります。
非課税取引であれば、非課税となる根拠を示せる資料が必要です。土地や住宅の貸付けであれば、契約書、用途、貸付期間、施設利用の有無が重要になります。医療・介護であれば、保険適用の有無、サービス内容、請求区分が重要になります。
不課税取引であれば、対価性がないこと、国外取引であること、単なる資金移動であることなどを説明できる資料が必要です。補助金、寄附金、保険金、損害賠償金、立替金などは、契約書や支給決定通知、精算書、入金明細、相手方との合意内容を確認しておくべきです。
免税取引であれば、輸出や輸出類似取引に該当することを証明する資料が必要です。輸出許可書、船積書類、契約書、海外送金資料、役務提供の内容を示す資料、相手先情報などを整理しておく必要があります。
調査対応で大切なのは、資料が存在することそのものではありません。資料の内容と消費税区分とが、きちんとつながっていることです。
「この契約だから、この売上は課税です」 「この用途だから、この賃貸収入は非課税です」 「この支給決定内容だから、この入金は不課税です」 「この輸出証明があるから、この売上は免税です」
このように説明できる状態こそが、消費税調査における実務上の強さになります。
専門家を付けずに判断する場合のリスク
課税・非課税・不課税・免税の判定は、表面的には単純に見えます。
しかし実際には、次のような判断が絡み合っています。
- 国内取引か、国外取引か
- 対価性があるか
- 事業として行われたものか
- 資産の譲渡等に該当するか
- 非課税規定に該当するか
- 輸出免税の要件を満たすか
- 課税売上割合にどう反映するか
- 仕入税額控除にどう影響するか
- 帳簿・請求書・契約書と整合しているか
これらを整理しないまま税務調査に臨むと、調査官の指摘に対して十分な説明ができないまま、修正申告を検討せざるを得ない、ということにもなりかねません。
とくに、非課税と不課税、非課税と免税の違いは、売上側の消費税だけでなく、仕入税額控除に波及します。調査官から指摘された区分誤りが、本税、加算税、延滞税、還付申告の見直し、さらには将来の申告体制にまで広がっていくことがあります。
専門家の関与が必要になるのは、税務署とのやり取りを代わりに行うためだけではありません。取引の実態を整理し、法的な区分を確認し、資料と申告書をつなげ、どこに争点があるのかを見極めるためです。
課税区分の整理は、調査後の経理体制改善にもつながる
消費税調査で区分誤りが見つかったとき、修正申告だけで終わらせるのは惜しいところです。
なぜ、その区分誤りが起きたのか。 会計ソフトの税区分設定に問題があったのか。 契約書や請求書の内容を確認しないまま処理していたのか。 営業部門や現場部門から、経理へ取引内容が伝わっていなかったのか。 海外取引や不動産取引について、事前相談の仕組みがなかったのか。 非課税売上があるのに、仕入税額控除の計算方法を見直していなかったのか。
ここまで確認しておくことが、再発防止につながります。
消費税は、決算時にまとめて直せる税目ではありません。日々の請求、入金、支払、契約、会計入力の段階で、すでに区分が決まっていきます。とくにインボイス制度後は、請求書保存の問題も重なるため、取引区分、請求書記載、帳簿記載、仕入税額控除を一体で整える必要があります。
課税区分の整理は、税務調査への備えであると同時に、経理体制そのものを整える作業でもあるのです。
消費税区分に不安がある場合のご相談について
課税・非課税・不課税・免税の判定に不安がある場合は、早めに確認しておく価値があります。
とくに、次のような状況では、調査通知を受けてからではなく、事前に整理しておくことが重要です。
- 非課税売上と課税売上が混在している
- 海外取引や輸出取引がある
- 補助金、保険金、損害賠償金、立替金、預り金が多い
- 不動産賃貸や不動産売買がある
- 医療・介護・福祉・教育関係の取引がある
- 住宅賃貸と事務所賃貸が混在している
- 会計ソフトの税区分を、長期間見直していない
- 課税売上割合や仕入税額控除の計算に不安がある
- 過去から同じ処理を繰り返しており、誤りが複数年に及ぶ可能性がある
犬飼公認会計士・税理士事務所では、消費税調査や消費税区分の整理について、申告書、帳簿、請求書、契約書、入出金資料、取引実態を確認しながら、調査対応・修正申告判断・今後の経理体制改善までを含めて検討いたします。
「この売上は課税なのか、非課税なのか」だけでなく、「なぜその処理をしたのかを税務署に説明できるか」までを確認したいという方は、お問い合わせページから、現在の状況をお聞かせください。
調査対応を一時的な不安への対処で終わらせず、今後も説明できる数字と資料を整えておくこと。それが、消費税リスクを抑えるための第一歩になります。
重要事項の振り返り
| 項目 | 内容 | 税務調査での確認ポイント |
|---|---|---|
| 課税取引 | 国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等 | 売上・仕入・経費の実態と税区分が一致しているか |
| 非課税取引 | 課税対象に入るが、法律上消費税を課さない取引 | 課税売上割合や仕入税額控除に反映しているか |
| 不課税取引 | そもそも消費税の課税対象に入らない取引 | 対価性、国内取引性、資産の譲渡等該当性を説明できるか |
| 免税取引 | 課税取引に該当するが、輸出等により消費税が免除される取引 | 輸出証明や役務提供内容など免税要件を示す資料があるか |
| 非課税と不課税の違い | 非課税は原則として課税売上割合の分母に入るが、不課税は分子にも分母にも入らない | 課税売上割合を誤っていないか |
| 非課税と免税の違い | 非課税は対応仕入れの控除が制限されやすく、免税は原則として控除対象となる | 仕入税額控除の計算に誤りがないか |
| 国内取引・国外取引 | 資産所在地、役務提供地、電気通信利用役務の受け手の住所等で判定する | 相手先が海外というだけで国外取引としていないか |
| 会計ソフトの税区分 | 一度誤ると同じ処理が複数年継続しやすい | マスタ設定や補助科目ごとの税区分を見直しているか |
| 調査対応 | 区分の結論だけでなく、判断根拠を資料で説明する必要がある | 契約書、請求書、入出金資料、帳簿がつながっているか |
| 再発防止 | 調査後は税区分設定、資料共有、事前相談体制を見直す | 決算時だけでなく月次処理で区分を管理できているか |