初年度決算・申告に向けて月次で準備すること|売上・仕入・在庫・固定資産・税金を、決算直前に慌てない形へ

創業初年度の決算は、多くの会社にとって「最初の成績表」といえるものです。

ただ、決算書は期末になってから急に作れるものではありません。期中の売上、仕入、在庫、固定資産、役員報酬、税金、消費税、証憑、未収未払といった一つひとつの処理が積み重なった結果として、決算書と申告書ができあがります。

実務の現場を見ていると、決算直前に慌ててしまう会社は、決算作業そのものが難しいというより、月次で確認しておくべきことを後回しにしてきたケースが少なくありません。たとえば、次のような状態です。

  • 売上の計上月が曖昧になっている
  • 請求書はあるが、入金予定と売掛金残高が合わない
  • 仕入や外注費の請求書が、期末近くにまとめて出てくる
  • 在庫を数えておらず、売上原価が確定できない
  • 固定資産にすべき支出と、経費にすべき支出が混在している
  • 役員報酬や給与、源泉所得税、社会保険料の処理が未整理のままになっている
  • 消費税やインボイス対応を、期末まで意識してこなかった
  • 電子取引データ、領収書、契約書の保存場所がばらばらになっている

この状態では、決算書の作成に時間がかかるのはもちろん、経営者自身も「なぜこの利益になったのか」「なぜ現金が残っていないのか」「納税資金は足りるのか」を説明しにくくなってしまいます。

だからこそ、創業初年度は、決算対応を年に一度の作業として捉えるのではなく、月次決算の延長として設計しておくことをおすすめします。もっとも、月次決算を活かすうえでは、月次決算書の作り方と読みこなし方が壁になりやすいものです。会計を、経営者自身が使える状態にしておくことが何より重要になります。

目次

初年度決算は「期末作業」ではなく「月次の精度」で決まる

初年度決算で確定するのは、利益だけではありません。

法人であれば、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など、会社法や税務申告の前提となる計算書類・申告資料を整えていく必要があります。株式会社は、各事業年度に係る計算書類や事業報告、附属明細書を作成しなければならず、計算書類は作成時から10年間の保存が求められます。
出典:e-Gov法令検索|会社法

税務の面でも、法人税・地方法人税等の確定申告書は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出することになっています。提出期限が土日祝日にあたる場合は、その翌日が期限です。
出典:国税庁|地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)

法人の消費税についても、原則として課税期間終了日の翌日から2か月以内が確定申告分の納期限とされています。個人事業者の場合は、所得税・消費税について、年分ごとの申告期限を確認しておく必要があります。
出典:国税庁|主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日

こうして期限を並べてみると分かるとおり、決算日を迎えてから資料を探し始めたのでは、申告期限までの時間は想像以上に短くなります。

初年度決算で大切なのは、期末後に一気に処理することではなく、毎月の段階で、次のような状態を作っておくことです。

  • 月次試算表が作成されている
  • 現預金残高が、通帳・口座残高と一致している
  • 売掛金、買掛金、未払金の内訳が分かる
  • 在庫や固定資産の実態が、帳簿とつながっている
  • 役員報酬、給与、源泉所得税、社会保険料が、月次で処理されている
  • 消費税区分、インボイス、電子取引データの保存が、月次で確認されている
  • 納税見込と資金繰りが、早めに把握されている

ここまで整っていれば、初年度決算は「資料集め」ではなく、「月次で整理してきた数字を、決算基準で確定する作業」に変わります。

初年度決算に向けた月次確認の全体像

初年度の月次管理では、毎月すべてを完璧に処理することよりも、決算で詰まりやすい論点を放置しないことのほうが大切です。

創業初年度に月次で確認しておきたい主な領域を、次の表に整理しました。

月次で確認する領域決算で必要になる確認放置した場合の影響
売上計上月、請求、入金、売掛金、前受金売上漏れ、二重計上、期ズレ、資金繰りの誤認
仕入・外注費請求書、支払予定、買掛金、未払金原価漏れ、粗利の誤り、未払計上漏れ
在庫棚卸数量、評価、滞留在庫、廃棄売上原価の誤り、利益の過大・過小計上
固定資産取得価額、使用開始日、減価償却、資産台帳経費処理ミス、償却漏れ、固定資産台帳の不備
役員報酬・給与支給額、源泉所得税、社会保険料、未払損金算入、納付漏れ、給与台帳の不備
税金法人税等、消費税、源泉、社会保険、地方税納税資金不足、期限後納付、資金繰り悪化
消費税・インボイス課税区分、仕入税額控除、登録番号、請求書保存消費税額の誤り、仕入税額控除リスク
証憑契約書、請求書、領収書、電子取引データ税務調査・金融機関説明での根拠不足
未収未払未収収益、未払費用、前払費用、前受金損益の期ズレ、貸借対照表の不整合

この表は、経理担当者だけのチェックリストではありません。経営者自身が「月次で何を確認しておけば、初年度決算に耐えられるのか」を把握するための、整理表として使っていただければと思います。

売上は「請求日」だけでなく、発生時点・入金予定まで確認する

創業初年度で、最初に混乱しやすいのが売上です。

売上は、入金された日にだけ認識するものではありません。業種や契約内容によって、納品、役務提供、検収、期間経過、請求、入金のタイミングはずれていきます。

月次では、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • 売上を計上すべき月はいつか
  • 請求書は発行済みか
  • 入金予定日はいつか
  • 入金済みか、それとも売掛金として残っているか
  • 前受金や着手金として受け取ったものはないか
  • 返金、値引き、キャンセル、貸倒れの可能性はないか
  • 契約書、注文書、納品書、検収書、請求書がつながっているか

決算直前になって売上を確認すると、請求書ベースでは売上が分かっても、実際には決算期をまたいだ取引の処理に迷うことがあります。

たとえば、3月に作業を終えたが請求は4月になった。3月に前金を受け取ったが、サービス提供は4月以降になる。3月に納品したが、検収は4月になった。こうした取引は、契約条件や実態に基づいて慎重に判断していく必要があります。

月次の段階で、請求書発行リストだけでなく、売掛金一覧、入金予定表、前受金一覧まで作っておくと、決算時の確認は大幅に楽になります。

事業計画のうえでも、売上債権、棚卸資産、仕入債務は、月次で残高を見込んでおきたい項目です。売上が発生してから何か月後に入金されるのか、在庫を何か月分持つのか、仕入から何か月後に支払うのか。この時間差を整理しておくことが大切です。

仕入・外注費は「支払ったか」ではなく「発生しているか」で見る

仕入や外注費は、支払った時点だけを見ていると、決算で漏れが生じます。

創業初年度は、仕入先や外注先との請求サイクルが、まだ固まっていないこともあります。月末締め翌月末払い、案件完了後の請求、検収後の支払い、前払い、分割払いなど、取引条件がばらつきやすい時期です。

月次では、次の項目を確認しておきましょう。

  • 当月に発生した仕入・外注費は何か
  • 請求書は受領済みか
  • 請求書が未着でも、発生している費用はないか
  • 買掛金・未払金として計上すべきものはないか
  • 支払予定日はいつか
  • 契約書や発注書と、請求書の金額が一致しているか
  • 源泉徴収が必要な報酬・料金はないか
  • インボイスの登録番号や記載事項を確認したか

とくに外注費は、税務・労務・契約の境界にある費用です。

  • 雇用なのか、業務委託なのか
  • 報酬・料金の源泉徴収が必要か
  • 消費税の課税仕入になるか
  • 成果物や検収条件が、契約書に明記されているか

こうした点を月次で確認しておかないと、決算時に外注費の内容を説明しにくくなってしまいます。

また、創業初期は、クレジットカード払い、立替精算、個人口座からの支払いが混在しやすい時期でもあります。決算時の経費漏れや二重計上を防ぐには、月次のうちに支払手段ごとに整理しておくことが欠かせません。

在庫は「数えるだけ」ではなく、売上原価と資金繰りに接続する

在庫を扱う事業では、初年度決算で在庫の確認が大きな論点になります。

在庫は、期末に残っている商品・製品・材料を数えるだけでは足りません。月次で在庫を確認していないと、売上原価が正しく計算できず、利益が実態とずれてしまう可能性があります。

月次で確認しておきたい在庫項目は、次のとおりです。

  • 月初在庫
  • 当月仕入
  • 当月の販売・使用数量
  • 月末在庫
  • 滞留在庫
  • 廃棄・返品・評価減の可能性
  • 在庫の保管場所
  • 棚卸表と会計帳簿の整合性
  • 在庫増加による資金の固定化

在庫は、利益だけでなく資金繰りにも影響します。

売上が伸びていても、在庫を増やしすぎれば現金は減っていきます。利益が出ているのに資金が足りないという会社では、売掛金や在庫に資金が固定化していることがあります。利益計画だけでは資金繰りは把握できませんし、掛け取引では売上計上と入金に時間差が生じるため、黒字倒産が起こり得るのです。

棚卸資産の評価方法は、税務上の届出や会計方針とも関係します。法人が棚卸資産の評価方法を選定する場合には届出手続があり、設立第1期については、確定申告書の提出期限などが提出期限として示されています。
出典:国税庁|棚卸資産の評価方法の届出書の記載要領等

在庫を扱う事業では、決算直前に初めて棚卸をするのではなく、少なくとも月次または四半期ごとに棚卸の仕組みを作っておきたいところです。

固定資産は、購入した時点で「台帳化」しておく

創業初年度には、設備、内装、什器、パソコン、車両、ソフトウェア、保証金、敷金など、まとまった支出が発生しやすくなります。

これらをすべて経費として処理してしまうと、決算時に修正が必要になることがあります。逆に、本来は経費処理できる少額の支出まで過度に資産計上してしまうと、月次利益が実態とずれてしまうこともあります。

月次で確認しておきたい固定資産項目は、次のとおりです。

  • 取得日
  • 使用開始日
  • 取得価額
  • 付随費用
  • 資産の種類
  • 設置場所
  • 耐用年数
  • 減価償却方法
  • 補助金や助成金との関係
  • リースか購入か
  • 固定資産台帳への登録
  • 除却・売却・移動の有無

減価償却資産の取得に要した金額は、取得時に全額が必要経費になるわけではなく、使用可能期間にわたって分割で費用化していくのが基本的な考え方です。
出典:国税庁|No.2100 減価償却のあらまし

また、取得価額が10万円未満のものなど、少額の減価償却資産に該当するかどうかは、1単位として取引される単位ごとに判定する取扱いになっています。
出典:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

固定資産は、決算時に領収書を見て分類するのでは遅いことがあります。購入した時点で「これは資産か、経費か」「いつから使い始めたか」「どこにあるか」を記録しておくこと。それが、初年度決算の精度を左右します。

役員報酬・給与は、税務と社会保険を月次で確認する

法人設立後の初年度決算では、役員報酬と給与の処理も重要になります。

役員報酬は、法人税、所得税、住民税、社会保険、そして資金繰りに影響します。とくに役員給与は、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などの要件に該当しないものについて、損金算入が制限される可能性があります。
出典:国税庁|No.5211 役員に対する給与

創業初年度は、利益が見えないまま役員報酬を決めることが多いものです。しかし、途中で資金繰りが厳しくなったから、あるいは利益が出そうだから増額したい、といった判断を安易に行うと、税務上の処理に影響する可能性があります。

月次で確認しておきたい項目は、次のとおりです。

  • 役員報酬の決定記録
  • 毎月の支給額
  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 社会保険料
  • 役員貸付金・役員借入金の発生有無
  • 給与台帳
  • 年末調整に向けた資料
  • 賞与・退職金・経済的利益の有無

従業員を雇用している場合は、給与、賞与、残業代、通勤手当、社会保険料、労働保険、源泉所得税、住民税の管理も必要になります。

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国へ納付する必要があります。給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者には、一定の源泉所得税について半年分をまとめて納付できる、納期の特例があります。
出典:国税庁|No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

健康保険・厚生年金保険料については、事業主が被保険者負担分と事業主負担分を合わせて納付し、納付期限は納付対象月の翌月末日とされています。
出典:日本年金機構|厚生年金保険料等の納付

給与や社会保険は、決算だけでなく、毎月の資金繰りにも直結します。初年度決算で慌てないためにも、給与計算と会計処理を月次で連動させておくことが大切です。

税金は「申告時に計算するもの」ではなく、期中から資金繰りに入れる

創業初年度は、税金の支払いを見落としやすい時期でもあります。

とくに注意しておきたいのは、利益が出たときに税金が発生するだけでなく、赤字でも発生する支払いがあるという点です。

  • 法人住民税の均等割
  • 源泉所得税
  • 社会保険料
  • 消費税
  • 固定資産税や償却資産税
  • 労働保険料
  • 印紙税
  • 事業税、特別法人事業税等
  • 個人事業の場合の所得税、住民税、事業税、国民健康保険料等

法人税や消費税は、決算後に確定します。しかし、納税資金は決算後に急に生まれてくるわけではありません。

月次で税引前利益を把握し、半年時点、9か月時点、そして決算2か月前の段階で、税金の見込みと資金繰りを確認しておく必要があります。

事業計画や予測キャッシュ・フローでも、法人税や消費税などの納付タイミングには注意が必要で、税金の支払いを資金計画にあらかじめ織り込んでおくことが欠かせません。

初年度決算では、税金を「利益が出てから考える」のではなく、「月次利益と資金繰りの中で見込んでおく」こと。この発想の違いが、後々の余裕につながります。

消費税・インボイスは、期末ではなく取引ごとに確認する

消費税は、初年度決算でとくに誤りが起きやすい税目です。

創業時は、免税事業者か課税事業者か、インボイス登録をしているか、簡易課税を選択しているか、課税事業者選択届出を出しているかなど、初期設定によって扱いが変わってきます。

さらに、日々の取引ごとにも、次のような判断が必要になります。

  • 課税売上か、非課税売上か、不課税取引か
  • 課税仕入か、対象外か
  • 軽減税率の対象か
  • インボイスが保存されているか
  • 登録番号は正しいか
  • 税率別に区分されているか
  • 簡易課税や2割特例等の適用を前提にしてよいか
  • 設備投資による還付可能性や、届出期限に注意すべきか

インボイス制度では、仕入税額控除のためにインボイスの保存が必要です。インボイスのない仕入れや経費については、原則として仕入税額控除ができないものとされています。ただし、簡易課税制度や一定の特例、経過措置がありますので、自社の登録状況や制度選択に応じた確認が必要になります。
出典:国税庁|インボイス制度について

消費税は、売上時に預かった消費税から、仕入時に支払った消費税を差し引いて納付税額を計算する仕組みです。だからこそ、仕入税額控除の理解と請求書の保存が重要になります。

消費税の選択届出には、提出期限を誤ると、設備投資に係る還付などに影響するものがあります。とくに「課税期間の初日の前日まで」などとされている届出は、休日等による期限延長がないものもあります。決算直前ではなく、事前に確認しておきたいところです。

月次で消費税区分を確認していないと、決算時にすべての取引を見直すことになり、時間もリスクも大きくなってしまいます。

証憑は「保存している」だけでなく、会計処理とつながっている必要がある

初年度決算でよく起こるのが、証憑はあるのに会計処理と対応していない、という問題です。

  • 領収書はあるが、どの取引の支出か分からない
  • 請求書はあるが、支払済みか未払か分からない
  • 契約書はあるが、請求条件や検収条件を会計処理に反映していない
  • 電子メールで受け取った請求書PDFが、保存されていない
  • クレジットカード明細と領収書が、紐づいていない
  • 役員個人が立て替えた支出の精算が、未処理のままになっている

法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、その帳簿と、取引等に関して作成または受領した書類を、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは、10年間の保存となる場合があります。
出典:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする制度であると同時に、取引情報を含む電子データをやり取りした場合の保存義務や保存方法を定めています。
出典:国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト

電子帳簿保存法は、帳簿の電子保存、書類の電子保存、スキャナ保存、電子取引の保存という区分で整理されています。メールでの請求書データの授受など、紙を使わない取引のデータ保存が重要になってきます。

月次のうちに、証憑を次のように整理しておくと、初年度決算で困りにくくなります。

  • 取引日
  • 取引先
  • 金額
  • 税率
  • 支払方法
  • 会計科目
  • プロジェクト・部門
  • 契約書・注文書・請求書・領収書との関連
  • 電子データの保存場所
  • 承認者
  • 支払済み・未払の区分

「証憑を保存している」というだけでは、決算・税務調査・金融機関説明には不十分です。大切なのは、証憑、会計処理、資金移動が、後から追える状態にしておくことです。

未収・未払・前払・前受を月次で整理する

決算書の精度を大きく左右するのが、未収未払です。

現金主義的に入出金だけで処理していると、決算時に発生主義へ修正する必要が出てきます。創業初年度で月次決算を整えるなら、次の項目を毎月確認しておきたいところです。

  • 売掛金
  • 未収入金
  • 前受金
  • 買掛金
  • 未払金
  • 未払費用
  • 前払費用
  • 預り金
  • 仮払金
  • 立替金
  • 未払法人税等
  • 未払消費税等
  • 未払社会保険料
  • 未払源泉所得税

たとえば、保険料を1年分前払いした場合は、契約期間に応じて前払費用として処理すべき場合があります。家賃やシステム利用料、広告契約、保守契約、サブスクリプション契約なども同様です。

反対に、期末までにサービス提供を受けているものの、請求書が翌月に届くようなものは、未払金・未払費用として整理しておく必要があります。

決算直前にこれらをまとめて確認しようとすると、請求書の到着状況や契約期間を調べ直すことになります。月次で契約・請求・支払を整理しておけば、決算整理の負担はぐっと軽くなります。

月次での実務スケジュール

創業初年度の決算に向けては、月次作業の期限をあらかじめ決めておくことが大切です。

毎月1日〜5営業日まで

前月分の売上請求書、仕入請求書、経費精算、カード明細、通帳データ、給与資料、契約書、入出金予定を集めます。

この段階で重要なのは、資料がそろわない理由を放置しないことです。請求書の発行が遅い、外注先から請求書が来ない、領収書の提出が遅い、個人カードで支払っている——こうした決算を遅らせる原因を、月次のうちに一つずつ潰していきます。

毎月10営業日頃まで

月次試算表を作成し、現預金、売掛金、買掛金、未払金、在庫、固定資産、借入金、給与、源泉所得税、社会保険料を確認します。

この時点では、前月の損益だけでなく、貸借対照表の残高まで確認しておきます。

毎月中旬

経営者が、月次試算表と資金繰り表を確認します。

売上、粗利、固定費、営業利益、現預金、売掛金、在庫、借入返済、税金見込を見て、翌月以降の意思決定に反映していきます。

月次でキャッシュ・フローを見る場合、直接法は入金・出金を把握しやすく、間接法は貸借対照表の変動から作成するため、売上債権、棚卸資産、仕入債務の増減処理でミスが起こりやすい点に注意が必要です。

四半期または半年ごと

納税見込、消費税見込、資金繰り、役員報酬、採用計画、設備投資、借入返済、補助金の進捗を確認します。

とくに半年時点では、初年度決算の着地見込を一度作っておくことが重要です。

決算2か月前

在庫、固定資産、未収未払、税金見込、消費税区分、証憑不足を洗い出します。

この段階で、決算時に問題になりそうな取引を、専門家と確認しておきます。

決算月

売上・仕入の締め、在庫棚卸、固定資産確認、未収未払、前払前受、役員報酬、給与、税金、消費税、証憑保存を確定させます。

法人税等は、決算で利益が確定して初めて計算されるものです。貸借対照表上は、未払法人税等として認識される場面があります。

初年度決算でよくある見落とし

創業初年度では、次のような見落としが起こりやすくなります。

  • 設立前後の費用を整理していない
  • 創立費・開業費・通常経費の区分が曖昧である
  • 個人名義で支払った費用を、法人費用として整理していない
  • 役員借入金・役員貸付金が膨らんでいる
  • 売掛金の回収状況を確認していない
  • 在庫を期末まで数えていない
  • 固定資産台帳を作っていない
  • 源泉所得税や社会保険料の納付予定を、資金繰りに入れていない
  • 消費税の納税見込を確認していない
  • インボイスの保存状況を確認していない
  • 電子取引データの保存ルールがない
  • 補助金や助成金の収入・費用処理を確認していない
  • 借入金の元本返済と支払利息の区分が曖昧である
  • 法人税等の納税資金を確保していない

これらは、決算時に発見できれば対応できる場合もあります。しかし、届出期限や契約条件、証憑保存、資金繰りに関わるものは、後からの修正が難しいこともあります。

専門家に相談すべきタイミング

初年度決算の相談は、決算日を過ぎてからではなく、できれば期中に行うことをおすすめします。

とくに次のような場合は、早めに税理士・公認会計士へご相談いただくとよいでしょう。

  • 創業融資を受けており、金融機関に月次資料を出す必要がある
  • 消費税・インボイス・簡易課税・課税事業者選択の判断がある
  • 設備投資や補助金を利用している
  • 在庫を扱う事業である
  • 外注費や業務委託が多い
  • 役員報酬をいくらにすべきか迷っている
  • 従業員を雇用している
  • 個人支出と法人支出が混在している
  • 資金繰りが計画とずれている
  • 初年度から黒字化し、納税資金が心配である
  • 赤字だが、欠損金や資金繰り、借入返済の説明が必要である

専門家に相談する際は、ただ「決算をお願いします」と伝えるのではなく、月次試算表、通帳、請求書、売掛金一覧、買掛金一覧、在庫表、固定資産資料、給与資料、源泉・社会保険資料、借入返済予定表、消費税・インボイス関係資料を整理しておくと、論点の把握がぐっと早くなります。

犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について

初年度決算には、創業後の経営管理体制が、そのまま表れます。

売上、仕入、在庫、固定資産、役員報酬、税金、消費税、証憑、未収未払を月次で整理できていれば、決算・申告は単なる年に一度の作業ではなく、経営判断と資金繰りを確認する機会になります。

反対に、月次管理が整っていないと、決算直前に資料集めや修正処理に追われ、経営者自身が数字を理解しないまま、申告だけが完了してしまうこともあります。

創業初年度の決算に向けて、どこまでを月次で整えておくべきか。会計ソフト、証憑保存、資金繰り表、税金見込を、どうつなげていくべきか。役員報酬、消費税、インボイス、在庫、固定資産、未収未払を、どの段階で確認すべきか。金融機関に説明できる決算書にするために、月次で何を準備しておくべきか。

こうした論点は、自社の業種、取引形態、資金繰り、法人化の経緯、そして今後の融資・採用・投資方針によって、整理の仕方が変わってきます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、創業・開業・法人化の初期段階から、月次決算、証憑管理、資金繰り、初年度決算・申告に向けた体制整備まで、一体でご支援しています。

初年度決算を「期限に間に合わせる作業」ではなく、今後の経営判断に使える基盤として整えていきたい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

重要項目月次で準備すること初年度決算での意味
売上請求、入金、売掛金、前受金、契約条件を確認する売上漏れ、二重計上、期ズレを防ぐ
仕入・外注費請求書、買掛金、未払金、支払予定を整理する売上原価・外注費の漏れを防ぐ
在庫月末在庫、滞留在庫、棚卸表を確認する売上原価と利益を正しく計算する
固定資産取得日、使用開始日、取得価額、資産台帳を整理する減価償却、資産計上、経費処理の誤りを防ぐ
役員報酬決定記録、毎月の支給額、源泉、社会保険を確認する損金算入・給与処理・資金繰りを整える
給与・社会保険給与台帳、源泉所得税、社会保険料を月次処理する年末調整・法定調書・未払計上につなげる
税金法人税等、消費税、源泉、社会保険の見込を作る納税資金不足を防ぐ
消費税・インボイス課税区分、登録番号、インボイス保存を確認する仕入税額控除や消費税申告の誤りを防ぐ
証憑契約書、請求書、領収書、電子取引データを紐づける税務調査・金融機関説明に耐える状態を作る
未収未払売掛金、買掛金、未払費用、前払費用、前受金を整理する発生主義に基づく決算書を作る
資金繰り月次試算表と資金繰り表を連動させる利益と現金のズレを早期に把握する
専門家相談決算後ではなく期中に論点を確認する初年度決算を経営管理の土台にする
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