グループ通算制度を検討するとき、多くの会社がまず気にされるのは、「黒字会社と赤字会社の損益を通算できるかどうか」という点です。
確かに、グループ通算制度は、完全支配関係にある企業グループについて、各法人を納税単位としながら、損益通算や欠損金の通算を行う制度です。国税庁も、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額を計算・申告しつつ、損益通算等の調整を行う制度と整理しています。
出典:国税庁|No.5900 グループ通算制度の概要
ただ、ここで理解を止めてしまうと、実務判断を誤ることになります。
グループ通算制度の中心に据えて考えるべきは、あくまで法人税です。法人税で損益通算ができたとしても、法人住民税や法人事業税まで同じように通算されるわけではありません。
さらに、税額控除にも性格の違いがあります。研究開発税制や外国税額控除のように、グループ全体で調整計算を行うものもあれば、賃上げ促進税制や設備投資税制のように、原則として各法人単位で要件を確認する色合いの強い制度もあります。
つまり、グループ通算制度を適用する会社では、次の3つを分けて考える必要があるのです。
| 区分 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 法人税 | グループ通算制度の中心。損益通算、欠損金の通算、遮断措置、一定の税額控除調整が問題になる |
| 地方法人税 | 名称に「地方」とあるが国税。法人税額を基礎に計算され、グループ通算制度の影響を受ける |
| 法人住民税・法人事業税 | 地方税。グループ通算制度は直接適用されず、個社単位の申告・納付と地方税特有の調整が必要になる |
この違いを理解しないまま税負担を試算すると、思わぬ食い違いが生じます。「法人税では節税効果があるはずなのに、地方税や外形標準課税まで含めると、思ったほど資金流出が減っていない」という状況は、その典型です。
グループ通算制度を適用しても、地方税は別の顔を持つ
まず押さえていただきたい結論があります。法人住民税と法人事業税には、法人税と同じ意味でのグループ通算制度は適用されない、ということです。
この点について、東京都主税局は次のように説明しています。法人税では個々の法人を納税単位としつつ損益通算等を行う一方、法人事業税と法人都民税では従前どおり個々の法人を納税単位とし、地方税の税負担が通算法人でない法人と同様になるよう、課税標準である法人税額等についてグループ通算制度による影響を遮断する仕組みを設けている、というものです。
出典:東京都主税局|通算法人の法人事業税、法人都民税の概要
これは、実務上かなり重要な点です。
法人税では、通算グループ内の所得法人と欠損法人の間で損益通算が行われます。ところが地方税では、その効果をそのまま反映させるのではなく、各法人の地方税負担が個社単位で計算されるよう、加算・控除の調整が行われるのです。
整理すると、次のようになります。
| 税目 | グループ通算制度との関係 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 法人税 | グループ通算制度の対象 | 損益通算、欠損金通算、遮断措置、税額控除調整を行う |
| 地方法人税 | 法人税額を基礎とする国税 | 法人税の通算効果が基本的に波及する |
| 法人住民税・法人税割 | 法人税額を課税標準とするが、通算影響を地方税上調整 | 通算対象所得・欠損調整、配賦欠損調整等の別表管理が必要 |
| 法人住民税・均等割 | 所得や法人税額にかかわらず資本金等・従業者数等に応じて発生 | 赤字・通算後所得ゼロでも発生し得る |
| 法人事業税・所得割 | 原則として各法人の所得を基礎に計算 | グループ内損益通算をそのまま反映しない |
| 法人事業税・外形標準課税 | 資本金等・付加価値・資本割等に基づく課税 | 通算による法人税減少とは別に税負担が残る |
地方税については、住民税・事業税にグループ通算制度が直接適用されない一方で、課税標準の出発点は法人税額・所得金額とつながっています。だからこそ、法人税、住民税、事業税を分けて管理するという発想が欠かせません。
「地方法人税」と「地方税」を混同してはいけない
名称が紛らわしいため、最初に切り分けておきたいのが「地方法人税」です。
地方法人税は、名称に「地方」とありますが、法人税とあわせて国に申告・納付する国税です。グループ通算制度では、各通算法人で計算された法人税額を基礎に、地方法人税額を計算します。そのため、損益通算や欠損金の通算によって法人税額が減れば、その影響は地方法人税にも及びます。
出典:国税庁|No.5900 グループ通算制度の概要
出典:国税庁|通算税効果額の計算方法
一方で、法人住民税や法人事業税は地方税です。こちらは都道府県・市町村に対する申告・納付であり、法人税の通算後の数字をそのまま持ち込むわけではありません。
この違いを表にすると、次のとおりです。
| 項目 | 地方法人税 | 法人住民税・法人事業税 |
|---|---|---|
| 税の性質 | 国税 | 地方税 |
| 申告先 | 国税 | 都道府県・市町村 |
| グループ通算制度の影響 | 法人税額を基礎とするため影響を受ける | 原則として個社単位で計算し、通算影響を調整 |
| 通算税効果額との関係 | 法人税とあわせて精算対象になりやすい | 精算対象に含めるかは社内規程で明確化が必要 |
| 実務上の誤り | 「地方」とあるため地方税と混同する | 法人税の通算効果がそのまま出ると誤解する |
グループ通算制度の税額試算では、「法人税+地方法人税」と「法人住民税・法人事業税」を別の列で管理することが基本になります。
法人住民税|法人税額を出発点にしながら、通算影響を調整する
法人住民税の法人税割は、法人税額を課税標準とします。そのため、法人税で損益通算を行えば、法人住民税の計算にも影響が出そうに見えます。
しかし地方税では、グループ通算制度による税負担の軽減・増加をそのまま反映させないよう、課税標準となる法人税額に加算・控除の調整を加えます。
この点について、東京都主税局の資料では、法人都民税の課税標準となる法人税額に加算対象通算対象欠損調整額等を加算し、控除対象通算適用前欠損調整額等を控除する仕組みが示されています。法人税割の課税標準が法人税額であるがゆえに、グループ通算制度の影響を遮断する目的で行われる調整です。
出典:東京都主税局|通算法人の法人事業税、法人都民税の概要
ここで登場する主な調整項目は、次のように整理できます。
| 調整項目 | どのような場面で生じるか | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 加算対象通算対象欠損調整額 | 法人税の損益通算で、他法人の欠損金を使って自社の所得が減った場合 | 地方税ではその通算効果を戻す方向に働く |
| 控除対象通算対象所得調整額 | 自社の欠損金が他法人の所得と通算された場合 | 地方税上は自社に特有の控除管理が必要になる |
| 加算対象被配賦欠損調整額 | 法人税の欠損金通算で、他法人の非特定欠損金の配賦を受けた場合 | 地方税では他法人欠損の利用効果を調整する |
| 控除対象配賦欠損調整額 | 自社の非特定欠損金が他法人に配賦された場合 | 将来の地方税計算で控除管理が必要になる |
| 控除対象通算適用前欠損調整額 | グループ通算開始・加入時に法人税上切り捨てられた欠損金がある場合 | 法人税と地方税で欠損金管理が分かれる |
これらは、単年度で完結する論点ではありません。
控除対象通算対象所得調整額や控除対象配賦欠損調整額は、将来年度の法人住民税計算にも影響します。そのため、地方税独自の繰越管理が必要になります。法人税の別表だけを見ていると、地方税で使える調整額や控除期限を見落としかねません。
法人事業税|損益通算は使えず、個社単位の所得と外形標準を見る
法人事業税については、さらに注意が必要です。
法人税でグループ内の損益通算を行っても、法人事業税で同じように黒字会社と赤字会社の損益を相殺できるわけではありません。法人事業税は、原則として各法人の所得を基礎に計算するからです。
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
| 法人 | 法人税上の通算前所得 | グループ通算後の法人税イメージ | 法人事業税の見方 |
|---|---|---|---|
| 親会社P社 | 1億円 | 子会社欠損と通算され、法人税所得が圧縮される | P社単体の所得を基礎に事業税を検討 |
| 子会社S社 | ▲6,000万円 | 親会社所得と通算される | S社の欠損金は地方税上、別途管理 |
| グループ合計 | 4,000万円 | 法人税では通算効果あり | 地方税では同じ合計課税にはならない |
法人税だけを見れば、グループ全体の課税所得は圧縮されます。しかし法人事業税では、P社の所得に対する課税が残り、S社の欠損は地方税上の繰越欠損金として別管理される可能性があります。
また、資本金1億円超の法人など、外形標準課税の対象となる法人では、所得割だけでなく、付加価値割・資本割も問題になります。外形標準課税は、所得が小さくても、あるいは赤字であっても税負担が生じ得る仕組みです。そのため、グループ通算によって法人税負担が下がる局面でも、地方税の資金流出が残ることがあります。
令和6年度税制改正では、外形標準課税の対象法人の見直しが行われています。東京都主税局は、従前の「事業年度末時点の資本金が1億円を超える法人」に加え、一定の前事業年度基準や100%子法人等に関する判定を含む見直しについて案内しています。外形標準課税の対象判定は、資本金額だけでなく、資本剰余金や親子関係まで含めて確認する必要があります。
出典:東京都主税局|外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定に関する改正について
グループ通算制度を適用している会社では、外形標準課税の対象判定を「単体法人の資本金だけ」で済ませないことが重要です。グループ内で資本政策、減資、増資、持株会社化、子会社再編を行う場合には、法人税だけでなく法人事業税の外形標準課税にも影響がないか、あわせて確認しておきたいところです。
地方税の欠損金管理は、法人税の別表七だけでは足りない
グループ通算制度では、法人税の欠損金と地方税の欠損金が一致しないことがあります。
法人税では、損益通算や欠損金の通算により、通算グループ内で欠損金が使われたり、配賦されたりします。ところが地方税では、グループ通算制度による損益通算や欠損金通算をそのまま行いません。そのため、地方税独自の欠損金残高や調整額を管理する必要が出てきます。
実務上、最低限分けて管理しておきたい項目は、次のとおりです。
| 管理項目 | 主な確認資料 |
|---|---|
| 法人税の繰越欠損金 | 法人税申告書別表七(一)等 |
| 法人税上の特定欠損金・非特定欠損金 | グループ通算関連別表 |
| 住民税特有の控除対象通算適用前欠損調整額 | 地方税第6号様式別表2等 |
| 住民税特有の控除対象通算対象所得調整額 | 地方税第6号様式別表2の3等 |
| 住民税特有の控除対象配賦欠損調整額 | 地方税第6号様式別表2の4等 |
| 事業税の繰越欠損金 | 地方税第6号様式別表9等 |
| 未払事業税 | 決算整理仕訳、補助元帳、申告調整資料 |
東京都主税局は、通算法人向けの添付書類として、控除対象通算適用前欠損調整額、控除対象通算対象所得調整額、控除対象配賦欠損調整額等に関する別表を案内しています。地方税の控除・調整は、法人税の別表だけでは管理しきれません。だからこそ、自治体別の様式・添付書類まで確認しておく必要があります。
出典:東京都主税局|法人事業税・法人都民税 通算法人の添付書類
グループ通算制度を適用している会社では、「法人税申告書を作成した後に地方税ソフトへ転記する」という発想だけでは危険です。地方税特有の繰越管理表を、法人税の欠損金管理表とは別に作っておくことをおすすめします。
税額控除は「グループ全体計算」と「個社計算」を分ける
次に、税額控除です。
グループ通算制度では、すべての税額控除を単純に個社計算するわけではありません。研究開発税制や外国税額控除については、グループ全体で調整計算を行う仕組みがあります。一方で、賃上げ促進税制や設備投資税制などは、制度ごとの要件・適用対象・当初申告要件・保存書類を、各法人単位で確認する性格が強くなります。
整理すると、次のようになります。
| 税額控除等 | グループ通算制度上の見方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 研究開発税制 | グループ全体で税額控除限度額等を計算し、各通算法人に配分 | 研究費を負担した法人と控除を受ける法人が一致しないことがある |
| 外国税額控除 | 通算グループ全体の所得・国外所得・法人税額等を基礎に計算 | 海外所得・外国税額の資料をグループ全体でそろえる必要 |
| 賃上げ促進税制 | 制度ごとの対象法人・給与増加要件を各法人で確認 | 改正年度、上乗せ要件、保存書類、控除上限を確認 |
| 設備投資税制 | 対象法人、対象資産、取得・供用時期を各法人で確認 | 通算法人の中小企業者等判定、みなし大企業判定に注意 |
| 所得税額控除等 | 原則として各法人の税額計算で確認 | 配当・利子・源泉税資料を法人別に管理 |
| 地方税の外国税額控除 | 法人税の外国税額控除と接続しつつ、地方税独自の控除限度を確認 | 都道府県民税・市町村民税の控除順序と様式を確認 |
国税庁は、グループ通算制度において、研究開発税制および外国税額控除について所要の調整を行うと説明しています。
出典:国税庁|No.5900 グループ通算制度の概要
研究開発税制|研究した会社と控除を受ける会社がずれることがある
研究開発税制は、グループ通算制度の中でも、とりわけ注意を要する税額控除です。
国税庁のQ&Aでは、通算法人における一般試験研究費の税額控除について、税額控除可能額と税額控除可能上限額を通算グループ全体で計算し、そのいずれか少ない金額を、各通算法人の調整前法人税額の比で配分する計算が示されています。
出典:国税庁|通算法人における一般試験研究費の額に係る税額控除の計算
この仕組みのもとでは、研究開発費を実際に支出した法人と、法人税申告書上で税額控除を受ける法人とが、必ずしも一致しません。
たとえば、次のようなケースです。
| 法人 | 研究開発費 | 調整前法人税額 | 税額控除の実務上の見え方 |
|---|---|---|---|
| P社 | 研究開発費あり | 法人税額あり | 控除を受ける可能性がある |
| S1社 | 研究開発費なし | 法人税額あり | 研究開発費がなくても配分を受ける可能性がある |
| S2社 | 研究開発費あり | 法人税額なし | 研究開発費があっても控除を受けられない可能性がある |
そのため研究開発税制では、次の2つを分けて考える必要があります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 税法上の税額控除額 | 通算グループ全体の計算に基づき、法人税額のある法人へ配分される |
| 社内の経済的負担・利益配分 | 研究開発費を負担した法人、成果を利用する法人、控除を受けた法人の間で精算を検討する |
特に、研究開発部門が子会社にあり、販売会社や親会社に法人税額が発生しているグループでは、申告書上の控除額と、社内管理上の貢献度とがズレてしまいます。
このズレを放置すると、次のような問題が起こります。
| 問題 | 具体的な影響 |
|---|---|
| 研究開発子会社が控除メリットを受けていないように見える | 部門別損益、子会社評価、インセンティブ設計に影響 |
| 親会社だけ税金が減ったように見える | グループ内の税負担配分が不透明になる |
| 通算税効果額の精算対象が不明確 | 会計処理・資金精算・税務調査時の説明が難しくなる |
| 研究開発費資料が分散する | 税額控除の適用漏れ、過大適用、保存書類不足につながる |
研究開発税制そのものは、毎年度の改正確認が欠かせません。国税庁は、一般試験研究費、中小企業技術基盤強化税制、特別試験研究費などの制度区分や控除上限を案内しています。適用年度、対象費用、控除割合、上乗せ措置は、必ず最新情報で確認してください。
出典:国税庁|No.5441 研究開発税制について(概要)
外国税額控除|海外税額はグループ全体の情報管理が必要になる
外国税額控除も、グループ通算制度では単純な個社計算にはなりません。
国税庁のQ&Aでは、通算法人に係る外国税額控除の計算について、各通算法人の所得金額、国外所得金額、法人税額等の合計額を用いて控除限度額を計算することが示されています。
出典:国税庁|通算法人に係る外国税額の控除の計算
外国税額控除では、次の資料をグループ全体でそろえる必要があります。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 海外源泉税の証明書 | どの法人が、どの国で、いくら課税されたか |
| 海外取引契約書 | 使用料、利子、配当、役務提供対価等の性質 |
| 租税条約届出書 | 源泉税率軽減の適用有無 |
| 国外所得計算資料 | 国外所得金額、国内外費用配賦 |
| 外貨換算資料 | 為替レート、換算時点 |
| 各通算法人の法人税額 | 控除限度額の配分計算 |
| 繰越外国税額控除資料 | 控除余裕額、控除限度超過額の管理 |
海外子会社配当、ロイヤリティ、海外支店、国外役務提供、外国源泉税が絡む会社では、1法人だけの資料では完結しません。ある法人の国外所得や外国税額が、通算グループ全体の控除限度額に影響を及ぼすことがあるからです。
また、地方税にも外国税額控除との接続があります。東京都主税局は、法人都民税・法人市町村民税において、法人税で控除しきれない外国税額を、地方税の控除限度額の範囲で控除する仕組みを説明しています。
出典:東京都主税局|通算法人の法人事業税、法人都民税の概要
外国税額控除は、法人税の別表六だけで完結するものではありません。地方税の控除、繰越管理、外国源泉税の損金算入可否、租税条約の適用漏れまで含めて確認する必要があります。
賃上げ促進税制・設備投資税制は「通算グループだから使える」とは限らない
研究開発税制や外国税額控除とは異なり、賃上げ促進税制や設備投資税制は、制度ごとに対象法人、適用要件、控除限度、保存書類、当初申告要件を確認していきます。
ここで重要なのは、グループ通算制度を適用している会社では、中小企業者等の判定や適用除外事業者の判定が、通算グループ全体で影響する場合があるということです。
国税庁は、グループ通算制度の概要のなかで、通算グループ内のいずれかの通算法人が適用除外事業者に該当する場合には、一定の中小企業向け特例の適用対象から除外される取扱いを示しています。
出典:国税庁|No.5900 グループ通算制度の概要
また、中小企業庁は、中小企業向け賃上げ促進税制について、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度に関する制度情報を公表しています。賃上げ促進税制は改正頻度が高い制度です。適用年度、教育訓練費、子育て・女性活躍支援関連の上乗せ要件、控除上限などは、最新情報で確認してください。
出典:中小企業庁|中小企業向け「賃上げ促進税制」
設備投資税制でも事情は同じです。投資判断の段階では、法人税の通算効果だけでなく、各法人が対象法人に該当するか、取得資産が要件を満たすか、供用時期が適用期間内か、税額控除と特別償却のどちらを選択するか、といった点まで確認しておく必要があります。
| 制度 | グループ通算会社での注意点 |
|---|---|
| 賃上げ促進税制 | 給与等支給額、比較年度、上乗せ要件、控除限度、保存資料を法人別に確認 |
| 中小企業投資促進税制 | 中小企業者等判定、みなし大企業、対象資産、指定事業、供用時期を確認 |
| 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画、証明書、取得・供用時期、税額控除・特別償却選択を確認 |
| 研究開発税制 | グループ全体計算と法人別配分を確認 |
| 外国税額控除 | グループ全体の国外所得・外国税額を確認 |
通算グループでは、1社だけを見ると中小企業のように見えても、株主構成やグループ内大法人の有無によって、優遇税制の適用可否が変わることがあります。制度を使う前に、法人税、地方税、通算グループ判定、申告書添付、保存書類を同時に確認しておきましょう。
通算税効果額|法令上の税額計算と社内精算は別物
グループ通算制度では、税法上の計算と、グループ内で税メリットをどう精算するかは、別の問題として整理する必要があります。
国税庁のQ&Aでは、通算税効果額について、損益通算や欠損金の通算など、通算法人等にのみ適用される規定によって減少する法人税・地方法人税の額に相当する金額として、通算法人間で授受される金額と説明しています。そして、その授受額は、益金の額・損金の額に算入しないとされています。
出典:国税庁|通算税効果額の計算方法
ここで大切なのは、通算税効果額の授受を行うか、どの項目を対象にするか、どの法人を通じて精算するか、といった点です。これらは実務上、社内規程や契約で明確にしておくべき事項になります。
| 検討項目 | 決めておくべき内容 |
|---|---|
| 精算の有無 | 通算税効果額をグループ内で授受するか |
| 精算対象 | 損益通算、欠損金通算、研究開発税制、外国税額控除等を含めるか |
| 計算方法 | 法人税率・地方法人税率を使うか、研究開発費比・法人税額比等を使うか |
| 地方税の扱い | 法人住民税・法人事業税の影響を精算対象に含めるか |
| 精算時期 | 確定申告時、中間申告時、修正申告時、税務調査後のどの時点で精算するか |
| 精算経路 | 通算親法人を通じて精算するか、各法人間で直接精算するか |
| 修正・更正時 | 過年度修正時に再精算するか |
| 会計処理 | 未収入金・未払金、法人税等、債権放棄時の処理をどうするか |
通算税効果額については、法令上、すべての精算方法が細かく定められているわけではありません。国税庁のQ&Aも、合理的な方法による計算例を示すにとどまっています。
出典:国税庁|通算税効果額の計算方法
ここを曖昧にしたままにすると、グループ内で次のような問題が生じます。
| 問題 | 具体例 |
|---|---|
| 赤字子会社が税メリットを受け取れない | 欠損を提供した子会社に資金精算されず、子会社の資金繰りが改善しない |
| 黒字会社だけ税負担が減ったように見える | 経営管理上、税効果の帰属が不透明になる |
| 研究開発会社と控除会社がズレる | 研究費を負担した法人にインセンティブが戻らない |
| 修正申告時に揉める | 過年度の通算税効果額を再精算するルールがない |
| 会計処理が不統一になる | 法人税等、未収入金、未払金、債権放棄の処理が法人ごとに異なる |
通算税効果額は、単なる税務計算の論点ではありません。グループ内の資金配分、業績評価、子会社管理にまで関わってくる問題なのです。
別表・申告管理|法人税と地方税を別々に追える体制が必要
グループ通算制度では、法人税申告書、地方税申告書、税額控除別表、通算税効果額計算資料を、一体で管理する必要があります。
国税庁は、通算法人について、各通算法人が個別に確定申告書を提出すること、また資本金等の額にかかわらず電子申告義務化の対象になることを示しています。
出典:国税庁|No.5900 グループ通算制度の概要
実務上は、次のような管理表を作っておくことが望まれます。
| 管理表 | 管理内容 |
|---|---|
| 通算法人一覧 | 通算親法人、通算子法人、加入日、離脱日、決算期、所在地 |
| 法人税所得計算表 | 通算前所得、損益通算、欠損金通算、通算後所得 |
| 法人税額計算表 | 調整前法人税額、税額控除、法人税額、地方法人税額 |
| 地方税調整表 | 加算対象・控除対象の通算調整額、住民税・事業税別管理 |
| 欠損金管理表 | 法人税、住民税特有の調整額、事業税欠損金を分けて管理 |
| 税額控除管理表 | 研究開発税制、外国税額控除、賃上げ、設備投資等 |
| 通算税効果額精算表 | 法人別の支払・受取額、精算日、会計処理 |
| 申告書提出管理表 | 法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税、事業税 |
| 修正・更正管理表 | 遮断措置、再計算、地方税への波及、再精算の有無 |
地方税については、自治体ごとに、様式、提出書類、申告期限延長の取扱い、添付書類の運用に違いが生じることがあります。東京都主税局の資料でも、法人事業税の申告・納付期限や申告期限延長、法人都民税の確定申告期限などが説明されています。
出典:東京都主税局|通算法人の法人事業税、法人都民税の概要
法人税の申告期限延長を行っている場合でも、地方税側で必要な届出・申請・添付書類を確認しておく必要があります。特に、複数都道府県・複数市町村に事業所がある会社では、事業所別、自治体別、法人別の管理が欠かせません。
税務調査・地方税調査で説明できる状態にしておく
グループ通算制度では、法人税の計算が複雑になるだけでなく、地方税や税額控除の説明も複雑になります。
調査の場面で説明を求められやすいのは、次のような項目です。
| 調査・確認項目 | 説明すべき内容 |
|---|---|
| 損益通算の計算 | 各法人の通算前所得、通算対象所得・欠損金、通算後所得 |
| 地方税の調整 | なぜ法人税の通算効果を地方税で加算・控除しているか |
| 欠損金管理 | 法人税、住民税、事業税で欠損金残高が異なる理由 |
| 研究開発税制 | 試験研究費の範囲、グループ全体計算、法人別配分 |
| 外国税額控除 | 外国税額、国外所得、租税条約、控除限度額 |
| 通算税効果額 | 精算規程、計算方法、会計処理、資金移動 |
| 中小企業特例 | 適用除外事業者、みなし大企業、通算グループ判定 |
| 外形標準課税 | 対象法人判定、資本金等、付加価値割・資本割 |
| 修正申告・更正 | 遮断措置、地方税への影響、再精算の有無 |
グループ通算制度には、1法人の誤りが他法人に波及しないよう遮断措置が設けられています。その一方で、地方税や税額控除、通算税効果額の社内精算では、関係法人間の資料整合性が求められます。
「申告書は出しているが、なぜその数字になったのか説明できない」という状態は、避けたいところです。特に、地方税の控除対象通算調整額や研究開発税制の配分額は、翌期以降も影響が残ります。単年度の申告控えだけでは、どうしても不十分になります。
経営判断で見落としやすいリスク
グループ通算制度と地方税・税額控除をめぐっては、次のような誤解がよく起こります。
| 誤解 | 実際のリスク |
|---|---|
| 法人税で損益通算できるから、地方税も同じように減る | 法人住民税・法人事業税では通算影響が遮断・調整される |
| 赤字会社の欠損金はグループで使い切ったから管理不要 | 地方税では別途欠損金や調整額が残ることがある |
| 研究開発費を支出した会社が税額控除を受ける | グループ全体計算により、別法人に控除額が配分されることがある |
| 外国税額控除は海外取引をした法人だけで完結する | 通算グループ全体の所得・国外所得・法人税額が影響する |
| 通算税効果額は自動的に精算される | 授受の有無、計算対象、精算方法を社内規程で決める必要がある |
| 外形標準課税は資本金1億円だけ見ればよい | 改正により資本剰余金や100%子法人等の判定も確認が必要 |
| 法人税申告書を作れば地方税も自動で合う | 地方税特有の別表、控除額、欠損金管理が必要 |
| 税額控除は適用漏れがあれば後で直せる | 当初申告要件、添付書類、保存書類により制限を受けることがある |
これらは、単なる申告書作成上のミスにとどまりません。税額予測、資金繰り、子会社業績評価、M&A前の税務デューデリジェンス、金融機関への説明、税務調査対応まで、幅広く影響してきます。
決算前に確認すべきチェックリスト
グループ通算制度を適用している会社、または適用を検討している会社では、決算前に、少なくとも次の項目を確認しておきたいところです。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 通算法人の範囲 | 完全支配関係、加入・離脱、みなし事業年度、申告単位 |
| 法人税の通算計算 | 通算前所得、損益通算、欠損金通算、遮断措置 |
| 地方法人税 | 法人税額に基づく計算、通算税効果額への含め方 |
| 法人住民税 | 加算対象・控除対象の通算調整額、均等割、自治体別様式 |
| 法人事業税 | 個社所得、事業税欠損金、外形標準課税、分割基準 |
| 地方税欠損金 | 法人税欠損金とのズレ、地方税別表、繰越期限 |
| 研究開発税制 | グループ全体計算、研究費資料、法人別配分、社内精算 |
| 外国税額控除 | 外国源泉税、国外所得、控除限度、地方税控除 |
| 賃上げ促進税制 | 対象法人、給与等支給額、上乗せ要件、保存書類 |
| 設備投資税制 | 対象法人、対象資産、供用時期、証明書、別表 |
| 通算税効果額 | 精算規程、計算対象、精算時期、修正申告時の再精算 |
| 会計処理 | 法人税等、未収入金・未払金、税効果会計 |
| 申告期限 | 法人税、地方税、申告期限延長、電子申告 |
| 証憑管理 | 契約書、請求書、研究費明細、外国税証明、給与台帳、固定資産台帳 |
| 税務調査対応 | 計算過程、別表間の整合性、意思決定資料 |
グループ通算制度では、決算後に数字を集めるだけでは間に合わないことがあります。特に、研究開発税制、賃上げ促進税制、設備投資税制は、期中の投資・給与・教育訓練・証明書取得・稟議書の段階から準備しておく必要があります。
グループ通算制度と地方税・税額控除をご相談ください
グループ通算制度は、法人税の損益通算だけを見れば、有利に映ることがあります。
しかし実際の経営判断では、法人住民税、法人事業税、外形標準課税、地方法人税、研究開発税制、外国税額控除、賃上げ促進税制、設備投資税制、そして通算税効果額の社内精算まで含めて検討する必要があります。
法人税で税負担が減っても、地方税では個社単位の負担が残ることがあります。研究開発税制や外国税額控除では、グループ全体計算によって、税額控除の発生法人と経済的な貢献法人がズレることもあります。さらに、通算税効果額の精算ルールがなければ、子会社管理や決算説明にも影響が及びます。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、グループ通算制度を適用している会社、適用を検討している会社、そして通算グループ内で税額控除や地方税の管理に不安を抱えている会社に対して、法人税・地方税・税額控除・税効果会計・申告管理を一体で整理する支援を行っています。
グループ通算制度の適用判断、地方税を含めた税額試算、研究開発税制・外国税額控除の整理、通算税効果額の精算規程、申告前レビューをお考えの場合は、お問い合わせページよりご相談ください。申告書作成の段階だけでなく、決算前・投資前・グループ再編前に整理しておくことが、後から説明できる税務判断につながります。
振り返り:グループ通算制度と地方税・税額控除の重要ポイント
| 論点 | 重要ポイント | 実務で確認すべきこと |
|---|---|---|
| グループ通算制度の対象 | 中心は法人税。各法人が個別申告しつつ損益通算等を行う | 通算法人の範囲、申告単位、遮断措置 |
| 地方法人税 | 名称に「地方」とあるが国税。法人税額を基礎に計算 | 法人税額、地方法人税額、通算税効果額 |
| 法人住民税 | 法人税額を課税標準としつつ、通算影響を加算・控除で調整 | 第6号様式別表1、2、2の3、2の4等 |
| 法人事業税 | 損益通算は直接適用されず、個社単位の所得を基礎に計算 | 事業税所得、事業税欠損金、分割基準 |
| 外形標準課税 | 所得が少なくても税負担が発生し得る | 資本金、資本剰余金、100%子法人等の判定 |
| 地方税欠損金 | 法人税欠損金と一致しないことがある | 法人税・住民税・事業税を別台帳で管理 |
| 研究開発税制 | グループ全体で控除可能額を計算し、法人税額比で配分 | 試験研究費、調整前法人税額、社内精算 |
| 外国税額控除 | グループ全体の所得・国外所得・法人税額を基礎に計算 | 外国税額証明、国外所得、租税条約資料 |
| 賃上げ促進税制 | 適用年度・対象法人・上乗せ要件を各法人で確認 | 給与台帳、教育訓練費、認定資料 |
| 設備投資税制 | 対象法人・対象資産・供用時期を確認 | 固定資産台帳、証明書、計画認定資料 |
| 通算税効果額 | 税メリットをグループ内でどう精算するかは社内規程が重要 | 精算対象、計算方法、精算時期、会計処理 |
| 申告管理 | 法人税申告書だけでは地方税管理が不足する | 国税別表、地方税別表、自治体別提出資料 |
| 税務調査対応 | 計算過程と資料の整合性が重要 | 通算計算表、別表、証憑、議事録 |
| 経営判断 | 法人税だけで税負担を判断しない | 地方税、税額控除、資金繰り、会計処理を含めて試算 |