保証協会付き融資からプロパー融資へ|保証依存を減らし、金融機関から信頼される財務体制をつくる

中小企業の資金調達において、信用保証協会付き融資は欠かせない役割を担っています。

創業して間もない時期、業歴がまだ浅い時期、財務基盤が十分に固まっていない時期。あるいは設備投資や増加運転資金が必要になる局面。こうした場面では、信用保証協会の保証があることで、金融機関から融資を受けやすくなることが少なくありません。

ただ、会社が一定の収益力と財務基盤を備えるようになっても、保証協会付き融資だけに頼り続けていると、次のような悩みが生まれてきます。

  • 保証枠を使い切ってしまい、新たな投資資金を借りにくい
  • 金融機関が自社の信用力をどの程度評価しているのか分からない
  • プロパー融資を受けたいが、何を整えればよいのか分からない
  • 借入そのものはできているが、保証料や経営者保証の負担が気になる
  • 融資のたびに制度や保証枠の話になり、事業そのものを見てもらえていないと感じる

ここで一つ、押さえておきたい視点があります。プロパー融資を「保証協会付き融資より格上の融資」と単純にとらえないことです。

保証協会付き融資には、創業支援、資金繰り支援、危機対応、成長投資支援といった役割があります。一方のプロパー融資には、金融機関が自社の事業・財務・返済可能性を直接評価し、自らの判断で信用リスクを取るという意味があります。

つまり、保証協会付き融資からプロパー融資へ進むということは、単に「保証を外して借りる」という話ではないのです。

金融機関から見て、会社そのものの収益力、返済力、財務管理力、情報開示の姿勢、そして将来性。そうした要素を評価できる状態へと、会社を整えていくこと。それがプロパー融資への道筋だと、私は考えています。

目次

保証協会付き融資とプロパー融資の違いを正しく理解する

はじめに、両者の違いを整理しておきましょう。

信用保証協会付き融資とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が債務保証を行う制度です。中小企業庁も、信用保証協会の保証を「中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度」と位置づけています。

出典:中小企業庁|信用保証協会について

保証の割合についても触れておきます。一般保証では融資額の80%を信用保証協会が保証し、残る20%を金融機関が負担する責任共有制度が基本です。ただし、小規模事業者や創業者などを対象とする一部の保証では、100%保証となる場合もあります。

出典:中小企業庁|信用補完制度の見直し

これに対してプロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けず、金融機関が自らの判断とリスク負担で行う融資をいいます。

両者の違いを表にまとめると、次のように整理できます。

項目保証協会付き融資プロパー融資
信用リスク信用保証協会が一定割合を保証し、金融機関のリスクを補完する金融機関が原則として自らリスクを負う
審査主体金融機関と信用保証協会の双方金融機関
利用しやすい局面創業期、成長初期、財務基盤が弱い局面、制度融資、危機対応資金など収益力・財務基盤・返済実績・情報開示が整ってきた局面
コスト金利に加えて信用保証料が発生する保証料は不要。ただし金利・担保・保証条件は会社ごとに異なる
金融機関からの見え方保証により貸倒リスクが軽減される会社そのものの信用力が問われる
中長期の意味資金調達の入口・補完手段金融機関との信用取引の深化

保証協会付き融資では、銀行と保証協会の双方の審査を受けることになります。保証協会が、中小企業に対する銀行融資の連帯保証人のような役割を担い、銀行単独では対応しにくい資金調達を支える仕組みだとお考えください。

ただ、保証が付いているからといって、金融機関が何も見ていないわけではありません。

責任共有制度の対象となる保証協会付き融資では、銀行も原則として20%の貸倒リスクを負います。ですから保証協会付き融資であっても、銀行はプロパー融資に近い審査プロセスを踏み、そのうえで保証協会の手続きが加わっているのです。

このように考えると、保証協会付き融資とプロパー融資は、まったく別世界の融資というわけではありません。

保証協会付き融資をきちんと返済し、情報開示を続け、事業内容と返済原資を説明できる状態を一つずつ積み上げていく。その積み重ねが、将来のプロパー融資へとつながっていきます。

保証依存が強すぎると、なぜ問題になるのか

保証協会付き融資は、たいへん有効な制度です。

しかし、過度に依存してしまうと、会社にとっても金融機関にとっても、ある種の副作用が生じます。

中小企業庁も、この点を指摘しています。信用保証への依存が進むと、金融機関の側では事業性評価融資や期中管理・経営支援に取り組む動機が失われるおそれがある。同時に中小企業の側でも、資金調達が容易になることで、かえって経営改善への意欲が薄れてしまう。そうした副作用が懸念されているのです。

出典:中小企業庁|信用補完制度の見直し

そして同庁は、プロパー融資と信用保証付き融資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金融機関が柔軟にリスクを分担していくことの重要性も説いています。

出典:中小企業庁|信用補完制度の見直し

これを経営者の立場から読み解くと、次のように理解できます。

保証協会付き融資は、資金調達を助けてくれる制度です。けれども、保証があるから借りられるという状態にとどまっている限り、金融機関は「会社そのものの信用力でどこまで貸せるか」を評価しにくくなってしまいます。

保証依存が強い会社には、こんな特徴が見られます。

保証依存が強い会社の状態金融機関からの見え方
借入のほとんどが保証協会付き融資金融機関自身がリスクを取れるだけの信用力が見えにくい
月次試算表や資金繰り表の提出が遅い足元業績や返済可能性を確認しづらい
借入の資金使途が曖昧返済原資との対応関係が弱い
借換を繰り返して元本が減っていない収益力ではなく制度や借換に依存していると見られやすい
赤字補填資金が長期化している返済原資が弱く、新規プロパー融資に慎重になられやすい
金融機関への報告が融資申込時だけ継続的な信頼関係が形成されにくい

プロパー融資へ進むうえで大切なのは、「保証協会付き融資を卒業する」という発想よりも、「保証付き融資とプロパー融資をどう組み合わせるか」という発想です。こちらのほうが、ずっと現実的だと感じます。

いきなり全額をプロパー融資に切り替える必要はありません。設備資金の一部、増加運転資金の一部、短期継続融資の一部。金融機関がリスクを取りやすいところから少しずつプロパー化を進めていく。実務上は、その進め方が自然です。

プロパー融資に進むために必要なのは「銀行交渉」ではなく「銀行が判断できる状態」

プロパー融資を受けたいと考えたとき、経営者はつい「銀行にどう頼めばよいか」「どのタイミングで交渉すればよいか」と考えがちです。

しかし、プロパー融資の本質は交渉ではありません。

金融機関が自社の信用リスクを判断できるだけの材料を、日常的に整えているかどうか。そこに尽きます。

銀行融資の審査は、債務者評価、融資案件の事情、資金使途・融資形態・返済原資、保全面、他行状況・資金調達余力、融資の狙い。こうしたプロセスを経て行われます。担保の有無から入るのではなく、まず「貸せる先なのか」という債務者評価から始まる点が、何より重要です。

この構造を踏まえると、プロパー融資へ進むために整えるべきことは、次の6つに集約されます。

  1. 収益力
  2. 返済原資
  3. 財務基盤
  4. 月次決算と資金繰り表
  5. 経営計画と予実管理
  6. 金融機関への継続的な情報開示

それぞれ、順に見ていきましょう。

1. 収益力|プロパー融資の前提は「本業で返せる会社」であること

プロパー融資において金融機関が最も重視するのは、会社が本業から返済原資を生み出せるかどうかです。

ここでいう収益力は、単に黒字か赤字かという話ではありません。

金融機関が見ているのは、次のような項目です。

確認項目見られるポイント
売上高売上規模、安定性、増減傾向
売上総利益粗利率、価格転嫁力、原価管理
営業利益本業で利益が出ているか
経常利益金利負担後も利益が残るか
EBITDA・簡易CF返済原資となるキャッシュを生む力があるか
得意先構成特定取引先への依存が高すぎないか
固定費構造売上減少時に赤字になりやすくないか

赤字であっても、一時的な要因であれば説明できる場合があります。

しかし、赤字の原因が分からない、改善策がない、資金繰りの穴埋めのための借入が続いている。そうした状態では、プロパー融資は難しくなります。

プロパー融資を目指すなら、まず本業の利益構造を説明できることが出発点です。

  • なぜ利益が出ているのか
  • どの取引が利益に貢献しているのか
  • 今後も利益が続く根拠は何か
  • 利益が落ちた場合に、どの費用を見直せるのか

この説明ができなければ、金融機関は保証なしでリスクを取ることをためらいます。

2. 返済原資|利益ではなく、返済後の資金繰りまで見られる

プロパー融資に進むには、利益が出ているだけでは十分とはいえません。

大切なのは、借入返済を済ませたあとも資金繰りが回るかどうかです。

利益計画だけでは、売掛金の回収、在庫、買掛金の支払い、税金、借入返済、設備投資といった入出金のタイミングまでは把握しきれません。掛け取引では、利益が出ていても資金の回収が遅れ、いわゆる黒字倒産が起こり得ます。だからこそ、利益計画とあわせて資金計画が欠かせないのです。

金融機関に説明すべき返済原資は、おおむね次のように整理できます。

借入の資金使途返済原資
経常運転資金売掛金回収、在庫販売、通常営業収支
増加運転資金増加した売上から生じる粗利・営業CF
設備資金設備投資後の営業CF、コスト削減効果、増産効果
季節資金季節売上の入金、賞与・納税後の通常収支
借換資金毎月返済額の軽減による資金繰り改善。ただし収益改善が前提
赤字補填資金本来は返済原資が弱く、改善計画が必要

プロパー融資で特に問題になりやすいのは、資金使途と返済原資が曖昧な借入です。

「運転資金」と説明していても、実態が赤字補填であれば、金融機関の見方は厳しくなります。「設備資金」と説明していても、投資効果が見えなければ、返済原資の説明は弱くなります。「借換」と説明していても、元本返済を先送りしているだけなら、根本的な改善とは受け取ってもらえません。

保証協会付き融資からプロパー融資へ進む会社は、資金使途ごとに返済原資を説明できること。ここが一つの分かれ目になります。

3. 財務基盤|借入余力は「借入残高」だけでは決まらない

金融機関は、借入残高そのものだけを見てプロパー融資の可否を判断しているわけではありません。

同じ1億円の借入でも、年商、粗利、営業CF、自己資本、手元資金、既存の返済額によって、評価は大きく変わってきます。

特に確認されやすいのは、次の指標です。

財務項目意味
自己資本比率会社の財務安全性。過去の利益蓄積があるか
債務償還年数借入金を何年程度のキャッシュフローで返済できるか
借入金月商倍率売上規模に対して借入が過大でないか
営業CF本業で資金を生み出しているか
手元流動性突発的な資金不足に耐えられるか
流動比率・当座比率短期の支払能力があるか
売掛金・在庫の増減運転資金が過大に膨らんでいないか
役員貸付金・役員借入金法人と経営者個人の資金関係が整理されているか

貸借対照表は、資金の調達元と運用先を示す資料です。調達の側には負債と自己資本があり、運用の側には流動資産と固定資産があります。損益だけでなく、こうした資金の構造を読み解くことが、財務の安全性を判断するうえで欠かせません。

プロパー融資に近づく会社は、次のような状態を目指したいところです。

  • 赤字が続いていない
  • 純資産が厚くなっている
  • 借入残高が営業CFに対して過大でない
  • 手元資金が一定の水準にある
  • 売掛金や在庫が過度に膨らんでいない
  • 税金・社会保険の滞納がない
  • 役員貸付金など、金融機関から説明を求められやすい項目が整理されている
  • 既存借入の返済実績がある

債務超過や大幅な資本欠損の状態では、プロパー融資のハードルは高くなります。純資産がマイナス、すなわち負債総額が資産総額を上回っている状態が債務超過であり、これは金融機関の評価に大きく影響します。

とはいえ、財務基盤は一夜にして改善するものではありません。

だからこそ、保証協会付き融資を利用している段階から、利益の蓄積、返済実績、資金繰り管理、情報開示。これらを地道に積み重ねていく必要があるのです。

4. 月次決算|プロパー融資に進む会社は、年次決算だけで勝負しない

プロパー融資を目指すうえで、月次決算は極めて重要です。

金融機関は、決算書だけでは足元の業績をつかめません。決算から半年以上も経っていれば、その後の売上、利益、資金繰り、借入返済、在庫、売掛金の動きが見えないからです。

月次決算を毎月積み重ねることで、経営者は経験や勘だけに頼らず、生きた数字をもとに会社の現状を把握し、次の一手を考えられるようになります。融資申込時には、過去の決算書に加えて直近の月次決算書を求められることもあり、これを提出できないと信用の低下につながりかねません。

プロパー融資に進むために、月次決算では少なくとも次の状態を整えておきたいところです。

月次決算で整えること金融機関への意味
月次試算表を翌月中に作成足元業績を迅速に説明できる
売上・粗利・固定費を月次推移で把握利益構造を説明できる
売掛金・在庫・買掛金を月次で確認運転資金の増減を説明できる
借入返済を月次資金繰りに反映返済可能性を説明できる
予算と実績を比較計画との差異と対応策を説明できる
決算着地見込みを早期に把握金融機関に先回りして説明できる

月次決算は、銀行に見せるためだけの資料ではありません。

プロパー融資に進むためには、経営者自身が月次の数字を見て、利益、資金繰り、返済可能性を判断できる状態が必要です。金融機関は、数字を提出するだけの会社よりも、数字を使って経営している会社を、より高く評価します。

5. 資金繰り表|プロパー融資の説明は「将来の入出金」まで必要になる

月次決算が過去と足元の数字を示す資料だとすれば、資金繰り表は、将来の資金不足と返済可能性を示す資料です。

プロパー融資では、金融機関が保証協会に頼らず自らリスクを取ります。そのぶん、「今後、本当に返済できるのか」を、より具体的に確認しようとします。

資金繰り表では、次の区分を整理します。

区分内容
経常収支売上入金、仕入支払、人件費、経費、税金など
財務収支借入実行、借入返済、利息支払など
投資収支設備投資、システム投資、車両購入など
手元資金残高月末預金残高、最低資金残高
一時的資金需要賞与、納税、季節資金、補助金入金までの立替資金
返済余力返済後に残る資金余力

プロパー融資を検討する金融機関に対しては、次のような説明ができると、ぐっと話が進みやすくなります。

  • いつ資金が不足するのか
  • 不足額はいくらか
  • 資金不足の原因は何か
  • 借入金は何に使うのか
  • いつ、どの入金で返済できるのか
  • 返済後の手元資金はいくら残るのか
  • 売上が下振れした場合、どこまで耐えられるのか

資金繰り表は、単なる銀行提出資料ではありません。プロパー融資を受けたあと、会社が本当に返済できるのかを、経営者自身が確認するための資料でもあるのです。

6. 経営計画|「右肩上がりの数字」ではなく、実行と検証ができる計画が必要

保証協会付き融資からプロパー融資へ進むためには、経営計画も大切な要素になります。

ただし、金融機関に提出するために売上と利益をただ右肩上がりに描いただけの計画は、かえって逆効果になることがあります。

金融機関が見たいのは、希望的な売上計画ではありません。

  • 何を改善するのか
  • どの取引を伸ばすのか
  • どの費用を抑えるのか
  • どの設備投資を行うのか
  • どの資金需要が発生するのか
  • その結果、返済原資がどう生まれるのか
  • 計画が未達だった場合、どう修正するのか

事業計画とは、事業を通じて達成したい定性的・定量的な目標を掲げ、そのために必要な経営資源や施策の仮説を立て、目標の達成と仮説の検証をどう進めるか、その方法・手順・指標まで定めたものです。

ですからプロパー融資に向けた経営計画では、次のような構成が求められます。

計画項目内容
現状分析売上、粗利、固定費、借入、資金繰り、業種特性
経営課題利益率低下、在庫過多、回収遅延、固定費増加、設備老朽化など
改善施策価格改定、原価改善、取引条件見直し、設備投資、販売強化
数値計画売上、粗利、営業利益、経常利益、税引後利益
資金計画運転資金、設備資金、返済額、手元資金
借入計画既存借入、新規借入、保証付き・プロパーの内訳
返済計画年間返済額、返済原資、返済後資金残高
予実管理月次で何を確認し、差異が出たらどう対応するか

とりわけ大切なのは、計画と実績の差異を説明できることです。

計画どおりに進む会社だけが評価されるわけではありません。むしろ、計画との差異を早期につかみ、その原因を説明し、修正策を示せる会社のほうが、金融機関からの信頼を得やすいものです。

7. 返済実績|保証付き融資の返済履歴は、プロパー融資への信用履歴になる

プロパー融資は、金融機関が会社の信用力を直接評価して行う融資です。

それだけに、既存借入の返済実績がものをいいます。

金融機関は、過去の返済状況から、次のような点を読み取ります。

返済実績の見方金融機関が確認すること
期日通りに返済しているか資金管理ができているか
延滞がないか支払能力に問題がないか
借換に頼りすぎていないか元本返済が進んでいるか
資金使途通りに使っているか信頼できる借り手か
短期借入を期日に返済しているか回収資金で返せる運転資金か
既存借入の返済額が過大でないか新規融資後も返済できるか

保証協会付き融資であっても、約定どおり返済している実績は、金融機関にとって大切な信用材料になります。

一方で、気をつけておきたいこともあります。

保証付きで借りた資金を、同じ銀行の既存プロパー融資の返済に充ててしまう。いわゆる「旧債振替」は、資金使途違反として問題になります。これが判明すると保証免責となるリスクがあり、借入人にとっても、その後の新たな融資が受けにくくなる重大な事態を招きかねません。

プロパー融資を目指す会社ほど、資金使途の透明性を大切にすべきです。「この会社は資金使途を守る」「約束した返済を守る」「状況が変われば早めに相談してくる」。金融機関にそう認識されることが、次のプロパー融資へとつながっていきます。

8. 情報開示|金融機関との信頼は、融資申込時だけでは作れない

プロパー融資を受けられる会社は、融資申込のときだけ金融機関に資料を出す会社ではありません。

平時から、自社の状況を金融機関にきちんと伝えています。

金融機関との情報の非対称性を小さくするには、次のような定期報告が有効です。

報告資料報告頻度の目安内容
月次試算表毎月または四半期売上、利益、財務状態
資金繰り表毎月または融資相談前資金不足時期、返済予定
借入一覧表半期または融資相談時金融機関別残高、返済額、担保・保証
経営計画年1回以上事業方針、数値計画、資金計画
予実差異資料四半期または半期計画との差異と対応策
投資計画設備投資・成長投資前投資目的、必要額、回収計画
決算見込み決算前着地見込み、納税資金、来期計画

金融機関は、会社の内部に常駐しているわけではありません。経営者が説明しなければ、事業の強み、改善の状況、将来性、資金繰りの工夫は伝わらないのです。

銀行の担当者に自社の事業内容を十分に理解してもらうには、できるだけ具体的に説明する姿勢が欠かせません。担当者がすべての業界に精通しているわけではないため、事業内容が理解されないまま審査が進んでしまう事態は、できる限り避けたいところです。

プロパー融資を目指すなら、「銀行が分かってくれない」と感じる前に、「銀行が判断できる情報を、自分は出せているか」を振り返ってみてください。

9. 経営者保証の見直しとも関係する

プロパー融資への移行を考えるとき、経営者保証の見直しも大切な論点になります。

中小企業庁は、経営者保証について、資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、思い切った事業展開、早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因にもなっている、との指摘があると述べています。

出典:中小企業庁|経営者保証

また、経営者保証ガイドラインでは、経営者保証を外す、あるいは保証なし融資を受ける可能性を高めるための要件として、次の3点が示されています。

  • 法人と経営者の資産・お金のやりとりが、明確に区分・分離されていること
  • 財務基盤が強化され、法人のみの資産や収益力で返済が可能であること
  • 金融機関に対して、適時適切に財務情報が開示されていること

出典:中小企業庁|経営者保証

この3つの要件は、プロパー融資に進むための準備とも、ぴたりと重なります。

経営者保証ガイドラインの要件プロパー融資への意味
法人と個人の分離会社の資金繰りと経営者個人の資金関係が透明になる
財務基盤の強化法人自身の返済能力を説明しやすくなる
適時適切な情報開示金融機関が会社の状況を継続的に評価しやすくなる

つまり、プロパー融資を目指すことと、経営者保証に依存しない資金調達を目指すことは、方向性として近い関係にあるのです。

ただし、プロパー融資だから必ず経営者保証が外れる、というわけではありません。逆に、保証協会付き融資であっても、一定の要件を満たせば経営者保証なしで利用できる制度がある場合もあります。

大切なのは、「保証を外してください」と交渉することではありません。保証を外しても金融機関が判断できるだけの財務状態と情報開示体制を、こちら側で整えておくことです。

10. プロパー融資を相談するタイミング

プロパー融資の相談は、資金が不足してからでは遅いことがあります。

金融機関がプロパー融資を検討しやすいのは、次のようなタイミングです。

タイミング理由
黒字決算が続いている収益力を説明しやすい
保証協会付き融資の返済が進んでいる返済実績を示しやすい
月次試算表が安定して提出できる足元業績を確認しやすい
資金繰り表で返済後残高を説明できる返済可能性を示しやすい
設備投資や増加運転資金の目的が明確資金使途と返済原資が対応しやすい
複数期の経営計画がある将来見通しを説明しやすい
既存借入の過度な借換依存がない借入体質の健全性を示しやすい

逆に、次のような状態にあるときは、プロパー融資を急いで求めるよりも、まず財務改善を優先すべきです。

  • 赤字が続いている
  • 資金繰り表がない
  • 税金や社会保険料に滞納がある
  • 借入返済を借換でしのいでいる
  • 売掛金や在庫が膨らんでいる
  • 役員貸付金が多い
  • 月次試算表が遅い、または精度が低い
  • 資金使途が赤字補填なのに、通常運転資金として説明している
  • 金融機関への報告が融資申込時だけ

プロパー融資は、会社が必要になったときに突然求めるものではありません。普段から金融機関に説明し、数字を整え、返済実績を積み、信頼を形づくった結果として、はじめて検討されるものです。

11. 保証協会付き融資からプロパー融資へ進む実務ステップ

ここからは、実際にどのような順序で整えていけばよいのかを見ていきます。

ステップ1:既存借入を「保証付き」と「プロパー」に分ける

まずは借入一覧表を作成し、すべての借入を整理します。

整理項目確認内容
金融機関名メイン行、サブ行、公庫、商工中金など
借入区分保証協会付き、プロパー、日本政策金融公庫、制度融資
残高現在の借入残高
当初借入額返済がどれだけ進んだか
借入日・最終期限返済期間と満期
毎月返済額資金繰りへの影響
資金使途運転資金、設備資金、借換、納税資金など
担保不動産担保、動産・債権担保、根抵当など
保証経営者保証、保証協会保証、第三者保証など
保証料保証料負担の有無
金利借入コスト
返済状況延滞、条件変更、借換の有無

この作業を通じて、保証依存度、返済負担、金融機関ごとの取引状況が見えてきます。

特に注意したいのは、有担保の保証協会付き融資とプロパー融資が混在しているケースです。根抵当権が保証協会付き融資とプロパー融資のどちらを担保しているのかは、銀行と保証協会との保証条件によって決まる場合があります。会社側からは見えにくい部分でもあるので、銀行の担当者に確認しておくとよいでしょう。

ステップ2:保証枠ではなく、総借入額と返済能力を見る

保証協会付き融資を利用している会社は、「まだ保証枠が残っているか」に意識が向きがちです。

しかし、金融機関は保証枠だけを見ているわけではありません。保証協会付き融資以外の融資も含めた総借入額、売上規模、返済能力、財務内容。そうした全体を見ています。保証限度額は必ずしも全額を使えるわけではなく、売上規模や決算内容、総借入額との関係で評価されます。信用保証協会もまた決算数値を重視しており、決算期から時間が経過している場合には、試算表の提出を求められることがあります。

プロパー融資を目指すなら、次のように考えていきます。

  • 保証枠は空いているか
  • プロパーでどの程度リスクを取ってもらえるか
  • 総借入額は営業CFで返済可能か
  • 借入返済後も手元資金が残るか
  • 金融機関ごとの役割分担は適切か

保証枠の空きだけを見て借入を増やすと、返済負担が過大になってしまいます。プロパー融資に進む会社は、保証枠ではなく、総借入額と返済可能性で資金調達を判断する必要があります。

ステップ3:月次決算・資金繰り表・借入一覧を定期提出する

プロパー融資を目指すなら、金融機関への定期報告を「仕組み」にしてしまうことをおすすめします。

融資申込のときだけ資料を出すのではなく、平時から次の資料を提出できる状態をつくっておきます。

  • 月次試算表
  • 資金繰り表
  • 借入一覧表
  • 予実差異資料
  • 決算着地見込み
  • 経営計画
  • 投資計画
  • 主要取引先の変化
  • 大口受注・大口失注の状況
  • 設備投資や人材投資の予定

ここで大切なのは、資料をきれいに作ることではありません。数字の意味を、自分の言葉で説明できることです。

  • 売上は増えたが、粗利率が下がった理由
  • 利益は出ているが、売掛金が増えて資金が不足している理由
  • 設備投資により減価償却費は増えるが、営業CFは増える見込みであること
  • 今期は一時的に利益が落ちるが、来期以降の改善施策があること

こうした説明ができる会社は、金融機関にとって評価しやすい存在になります。

ステップ4:一部プロパー化を現実的に検討する

保証協会付き融資からプロパー融資へ進む際に、最初から大きな金額を求める必要はありません。

実務的には、金融機関がリスクを取りやすいところから、一部プロパー化を検討していきます。

プロパー化を検討しやすい例理由
既存保証付き融資の返済が進んでいる会社の追加運転資金返済実績がある
増加運転資金の一部売上増加と返済原資の関係を説明しやすい
設備投資資金の一部投資回収計画を示せる
短期のつなぎ資金入金予定が明確であれば検討しやすい
当座貸越枠の一部資金繰り管理が整っていれば検討余地がある
保証付き融資とプロパー融資の協調金融機関と保証協会のリスク分担がしやすい

ここで大切なのは、「保証協会付き融資ではなく、全部プロパーでお願いします」と求めることではありません。金融機関がリスクを取りやすい資金使途、返済期間、金額、返済原資を、こちらから整理して提案することです。

たとえば設備投資であれば、全額プロパーではなく、自己資金、保証協会付き融資、プロパー融資を組み合わせる方法があります。増加運転資金であれば、売上増加に伴う必要運転資金を計算したうえで、その一部を短期継続融資や当座貸越で検討する方法もあります。

プロパー融資は、会社の成長段階に応じて、少しずつ積み上げていくものです。

ステップ5:保証付き融資を「使わない」のではなく「使い分ける」

プロパー融資を目指す会社が誤解しやすいのは、保証協会付き融資を使うこと自体が悪いことだと考えてしまう点です。

そうではありません。

保証協会付き融資は、これから先も必要となる場面があります。

資金需要保証付き融資が適する可能性
創業・新規事業実績が乏しく、金融機関単独ではリスクを取りにくい
大型設備投資投資額が大きく、金融機関単独では負担が重い
危機対応資金災害、売上急減、外部環境の悪化への対応
事業承継資金株式取得資金、承継時の資金需要
経営改善局面金融機関調整や保証制度の活用が必要な場合
小規模事業者支援事業規模や財務基盤から公的保証が有効な場合

一方で、通常の運転資金、安定した返済実績のある設備資金、資金使途が明確な増加運転資金など。こうした場面では、プロパー融資の余地がないかを検討してみてください。

目指すべきは、保証協会付き融資をゼロにすることではありません。自社の信用力、資金使途、返済原資、金融機関との取引状況に応じて、保証付き融資とプロパー融資を適切に組み合わせていくことです。

プロパー融資に進む会社が日常的に整えていること

プロパー融資を受けられる会社は、融資申込のときだけ努力しているわけではありません。

日常的に、次のような状態を整えています。

日常管理具体的な状態
月次決算翌月中に試算表が出る
資金繰り管理3か月先、6か月先、12か月先の資金繰りを確認している
予実管理計画と実績の差異を月次で見ている
借入管理金融機関別、資金使途別、保証別に借入を把握している
手元資金管理最低限必要な現預金の水準を決めている
売掛金管理回収遅延を把握している
在庫管理滞留在庫や過剰在庫を把握している
税金・社会保険納付遅れがない
経営者個人との資金関係役員貸付金・役員借入金を説明できる
金融機関報告定期的に業績と見通しを共有している

会計を通じて経営課題を可視化し、資金繰り、業績共有、先を読む管理を、段階的に整えていく。その積み重ねが、金融機関や取引先からの信頼の向上につながっていきます。

プロパー融資は、金融機関に「お願いして取るもの」ではありません。日常的な財務管理の積み重ねによって、金融機関が「この会社なら一定のリスクを取れる」と判断できる状態を、自らつくっていくものなのです。

プロパー融資を急ぐより、先に整えるべき会社もある

もっとも、すべての会社がすぐにプロパー融資を目指すべきとは限りません。

次のような状態にある場合は、プロパー融資への移行よりも、まず収益改善・資金繰り改善・財務整理を優先すべきです。

状態優先すべきこと
赤字が続いている収益改善、固定費見直し、事業構造の再検討
資金繰りが毎月逼迫している資金繰り表作成、支払・回収条件の見直し
借入返済が重い借換、条件見直し、返済計画の再設計
税金・社会保険に滞納がある納付計画の整理、資金繰り改善
債務超過である利益改善、資本増強、役員借入金整理
役員貸付金が多い法人・個人間の資金関係整理
月次試算表が遅い経理体制の整備
経営計画がない短期・中期の数値計画作成
リスケ中である経営改善計画、モニタリング、金融機関調整

プロパー融資を焦って申し込み、断られてしまうよりも、半年から1年ほどかけて数字を整え、返済実績を積み、金融機関との対話を重ねていく。そのほうが、結果として資金調達力は高まります。

特にリスケ中であったり、赤字補填資金が続いていたり、税金の滞納があったりする場合は、通常の資金調達ではなく、経営改善や事業再生の論点として整理していく必要があります。

これからの金融機関対応は、担保・保証だけでなく事業の将来性を説明する方向へ

金融機関の融資実務もまた、担保や保証だけでなく、事業そのものを見ようとする方向へと進んでいます。

金融庁は、金融機関の取組みを「見える化」することで、担保・保証に過度に依存しない融資を促そうとしています。金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群を設定し、主要行等や地域銀行に対して実績の公表を求めているのです。

出典:金融庁|地域金融機関による金融仲介機能の発揮に向けた取組みについて

また、2026年5月25日に更新された金融庁の公表情報では、企業価値担保権について、事業の将来性に基づく融資を後押しする新しい制度と位置づけられています。

出典:金融庁|企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について

もちろん、こうした制度や方針があるからといって、すべての会社がすぐにプロパー融資を受けられるわけではありません。

むしろ、金融機関が事業性や将来性を見る方向へ進むほど、会社側にはこれまで以上に説明責任が求められます。

  • 事業内容を説明できる
  • 収益構造を説明できる
  • 資金使途を説明できる
  • 返済原資を説明できる
  • 月次業績を説明できる
  • 計画との差異を説明できる
  • 将来投資の回収可能性を説明できる

こうした説明力こそが、保証協会付き融資からプロパー融資へ進むための土台になります。

保証協会付き融資からプロパー融資へ進むためのチェックリスト

最後に、自社がプロパー融資へ進む準備ができているかを確認するためのチェックリストを整理しておきます。

確認項目チェックポイント
黒字基調本業で営業利益または経常利益が出ているか
返済原資借入返済後も資金が残るか
月次決算翌月中に試算表を作成できるか
資金繰り表3か月先、6か月先、12か月先を見通せるか
借入一覧保証付き・プロパー・公庫・制度融資を区分できているか
資金使途新規借入の使い道を明確に説明できるか
返済実績既存借入を期日通り返済しているか
財務基盤自己資本、手元資金、債務償還年数を把握しているか
情報開示金融機関へ定期的に業績報告しているか
経営計画売上・利益・資金繰り・返済計画がつながっているか
法人個人分離役員貸付金・役員借入金などを説明できるか
税金・社会保険滞納がないか
投資計画設備投資や成長投資の回収可能性を説明できるか
金融機関取引メイン行・サブ行の役割を整理しているか

このチェックリストの多くに「いいえ」が付くようであれば、すぐにプロパー融資を求めるより、まず財務管理体制を整えることが先決です。

反対に、すでに多くの項目が整っているなら、既存の金融機関に対して、保証付き融資とプロパー融資の組み合わせを相談する余地が十分にあります。

プロパー融資は「ゴール」ではなく、継続的な資金調達力の一部である

保証協会付き融資からプロパー融資へ進むことは、中小企業にとって、一つの重要なステップです。

しかし、プロパー融資を受けること自体がゴールではありません。

本当に大切なのは、調達した資金を事業に活かし、利益とキャッシュを生み、きちんと返済し、次の成長投資へとつなげていくこと。そこにあります。

プロパー融資を受けたあとも、次の管理は続いていきます。

  • 月次決算
  • 資金繰り表
  • 借入返済管理
  • 予実管理
  • 金融機関への定期報告
  • 投資効果の検証
  • 財務安全性の確認
  • 保証付き融資とプロパー融資のバランス見直し

プロパー融資に進める会社とは、単に「銀行から信用された会社」ではありません。自社の事業、数字、資金繰り、返済可能性を、自分の言葉で説明できる会社です。そして、その状態を一度きりではなく、継続的に維持していける会社です。

保証協会付き融資からプロパー融資への移行に関するご相談について

保証協会付き融資を利用している会社が、将来的にプロパー融資の比率を高めたいと考えたとき、最初に行うべきことは、金融機関への依頼ではありません。

自社の月次決算、資金繰り表、借入一覧、財務指標、返済原資、経営計画を整理し、「金融機関が判断できる状態」をつくること。ここが出発点になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、保証協会付き融資とプロパー融資のバランス、既存借入の整理、月次決算体制、資金繰り表、経営計画、金融機関への説明資料の整備について、会計・税務・資金繰り・金融機関実務をつなげながらご支援しています。

「保証枠が残っているか」だけではなく、「自社の財務状態で、どの資金を、どの順番で、どの程度調達すべきか」を整理したい。そうお考えのときは、金融機関へ相談される前に、一度お問い合わせください。

重要ポイントの振り返り

論点振り返り
保証協会付き融資の役割信用保証協会が金融機関の貸倒リスクを補完し、中小企業の資金調達を支援する
プロパー融資の意味金融機関が信用保証なしで自らリスクを取り、会社の信用力を直接評価する融資
保証依存の注意点保証に頼りすぎると、金融機関による事業性評価や経営支援の動機が弱まりやすい
目指すべき姿保証付き融資を否定するのではなく、プロパー融資と適切に組み合わせる
最重要論点資金使途と返済原資を明確に説明できること
収益力本業で利益とキャッシュを生み、返済原資を確保できる状態が必要
財務基盤自己資本、手元資金、債務償還年数、借入金月商倍率などを把握する
月次決算年次決算だけでなく、足元業績を継続的に説明できる体制が必要
資金繰り表将来の入出金、返済後残高、資金不足時期を見える化する
経営計画右肩上がりの数字ではなく、実行施策と予実管理がある計画が必要
返済実績保証付き融資の約定返済は、将来のプロパー融資に向けた信用履歴になる
情報開示金融機関への定期報告により、情報の非対称性を小さくする
経営者保証法人個人の分離、財務基盤、適時適切な情報開示は、保証見直しにも関係する
実務ステップ借入一覧の整理、月次資料の整備、一部プロパー化、金融機関との定期対話の順で進める
最終目的プロパー融資を受けることではなく、調達した資金を活かし、返済し、成長につなげること
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