会社を立ち上げた当初は、普通株式だけで始めるケースがほとんどではないでしょうか。しかし、共同創業者が加わる、優秀な人材を迎え入れたい、外部投資家から資金を調達したい、あるいは将来のIPOやM&Aを視野に入れ始める。こうした段階に入ると、普通株式だけでは整理しきれない論点が少しずつ表に出てきます。
そこで登場するのが、新株予約権、ストックオプション、そして種類株式です。
これらは、単なる「便利な制度」ではありません。使い方を誤れば、株主構成が複雑になり、その後の資金調達、投資契約、従業員インセンティブ、税務、会計、M&A、IPO審査にまで影響が及びます。反対に、初期段階から目的と順序を整理しておけば、人材採用や投資家対応、資本政策の柔軟性を大きく高めることができます。
本稿では、発行要項や契約書といった個別の書面づくりに入る前の「入口」として、新株予約権・ストックオプション・種類株式をどう理解し、創業期に何を確認しておくべきかを整理していきます。
まず、3つの位置づけを分けて理解する
新株予約権、ストックオプション、種類株式は、いずれも「株式まわりの制度」としてひとくくりに語られがちです。しかし、それぞれの役割は異なります。
| 項目 | 何か | 主な使い方 | 創業期での注意点 |
|---|---|---|---|
| 新株予約権 | 将来、一定条件で株式を取得できる権利 | 資金調達、インセンティブ、M&A、事業承継 | 将来の株式希薄化と、税務・会計処理を確認する |
| ストックオプション | 新株予約権を役職員等へのインセンティブとして使うもの | 採用・定着・企業価値向上への動機づけ | 税制適格要件、付与対象者、退職時の取扱いを確認する |
| 種類株式 | 普通株式とは異なる権利内容を持つ株式 | VC投資、優先分配、議決権調整、取得・転換設計 | 定款、投資契約、既存株主への影響を確認する |
会社法上、会社が普通株式以外に発行できる有価証券には、種類株式、新株予約権、新株予約権付社債などがあります。これらは、資金調達、インセンティブ制度、人材採用、M&A、事業承継といった場面で活用されます。
このうちストックオプションは、会社法上の独立した証券類型というより、「新株予約権を報酬・インセンティブの目的で使う場合の呼び方」と捉えると、頭の中が整理しやすくなります。
新株予約権は「将来、株式を取得できる権利」
新株予約権とは、あらかじめ定めた条件に従って、将来、会社の株式を取得できる権利のことです。
会社法では、新株予約権を発行する際に、目的となる株式の数、権利行使時に出資される財産の価額または算定方法、権利行使期間、権利行使により株式を発行する場合の資本金・資本準備金に関する事項、譲渡承認の要否、取得条項などを定めることが求められています。
出典:e-Gov法令検索|会社法
平たく言えば、新株予約権では、少なくとも次のような内容を決めておく必要があります。
| 決める事項 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 何株を取得できるか | 将来どれだけ株式が増えるか、希薄化に影響する |
| いくらで行使できるか | 権利者の利益、税務、既存株主との公平性に影響する |
| いつからいつまで行使できるか | 退職、上場、M&A、資金調達の時期と関係する |
| 誰に付与するか | 役員、従業員、外部協力者、投資家で目的が異なる |
| 譲渡できるか | 意図しない第三者への移転を防ぐ必要がある |
| 会社が取得できるか | 退職、契約違反、M&Aなどの場面で整理が必要になる |
| 行使後の資本金・資本準備金 | 会計・登記・税務上の処理に影響する |
ここで押さえておきたいのは、新株予約権は「今すぐ株式を渡す制度」ではない、ということです。あくまで、将来、条件を満たしたときに株式へと変わる可能性のある権利にすぎません。
そのため、発行の時点では株主でない人にも、将来の株主となる余地を与えることになります。この点は、資本政策を考えるうえで見落とせません。
新株予約権は「資金調達」と「インセンティブ」で使い方が違う
新株予約権には、大きく分けて2つの使い方があります。
ひとつは、資金調達です。投資家が将来株式に転換できる権利を取得する形で、シード期やバリュエーションの決めにくい段階で活用されることがあります。
もうひとつは、人材インセンティブです。役員、従業員、外部協力者などに対して、将来会社の価値が高まったときに利益を得られる権利を与えることで、会社の成長と個人の利益を結びつけます。
| 使い方 | 主な相手 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 資金調達型 | 投資家、エンジェル、VCなど | 将来株式化する前提で資金を受け入れる | 投資契約、情報提供、次回調達時の転換条件を確認する |
| インセンティブ型 | 役員、従業員、外部協力者など | 採用・定着・企業価値向上への動機づけ | 税制適格、退職時失効、ベスティング、付与割合を確認する |
近年は、種類株式や新株予約権を用いた投資ストラクチャーが増えてきました。新株予約権の場合、株式に転換されるまでは株主としての地位を得られません。そのため、投資契約などによって権利を補完しておく必要のある場面が出てきます。
出典:経済産業省|我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項
同じ新株予約権であっても、「誰に、何のために、どの条件で渡すのか」によって、設計はまったく変わってきます。ここを混同すると、投資家向けの条件と従業員向けの条件が曖昧になり、後から説明しづらい資本政策になりかねません。
ストックオプションは「報酬を株式価値と連動させる仕組み」
ストックオプションは、創業期の会社にとって重要なインセンティブ手段です。
創業直後は、十分な現金報酬を支払えないことも珍しくありません。一方で、優秀な人材に参画してもらうには、将来の企業価値向上によるリターンを共有する仕組みが必要になります。ストックオプションは、まさにそのために使われます。
ただし、ストックオプションは「何となく渡すもの」ではありません。付与する目的を整理しないまま発行してしまうと、次のような問題が起こりがちです。
| よくある問題 | 実務上の影響 |
|---|---|
| 付与割合を感覚で決める | 将来の投資ラウンドでオプションプールが不足する |
| 退職時の扱いを決めていない | 退職者が権利を持ち続けるかどうかで揉める |
| ベスティングを設計していない | 短期間在籍者にも過大な経済的利益が残る |
| 税制適格要件を確認していない | 権利行使時に課税が生じ、本人・会社双方に負担が出る |
| 行使価額の根拠が弱い | 税務、投資家説明、M&A・IPOで論点になる |
| 発行履歴を管理していない | 株主名簿、新株予約権原簿、潜在株式数の管理が崩れる |
ストックオプションは、いわば将来の株式を先に配るような効果を持ちます。したがって、採用施策であると同時に、資本政策そのものでもあるのです。
税制適格ストックオプションは、課税タイミングが大きく変わる
ストックオプションで最も誤解されやすいのが、税務です。
税制非適格ストックオプションの場合、一般に、権利行使の時点で「権利行使時株価-権利行使価格」に株式数を乗じた経済的利益が課税対象となります。さらに、株式を譲渡する時点では「売却価格-権利行使時株価」に株式数を乗じた部分が、譲渡所得として課税されます。つまり、権利行使時と株式譲渡時の二段階で課税が生じる、と理解しておくとよいでしょう。
出典:国税庁|No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について
一方、税制適格ストックオプションでは、権利行使時の経済的利益について課税が繰り延べられます。そして株式を譲渡した時点で、売却価格と権利行使価額との差額が株式譲渡所得として課税される仕組みになっています。
出典:国税庁|No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 権利行使時 | 株式売却時 | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| 税制非適格SO | 原則として経済的利益に課税 | 譲渡益に課税 | 株式売却前に納税資金が必要になる場合がある |
| 税制適格SO | 一定要件のもと課税繰延べ | 売却時に譲渡所得として課税 | インセンティブとして使いやすいが、要件管理が重要 |
税制適格ストックオプションは有利に見えますが、要件を満たさなければ適用を受けられません。付与対象者、権利行使期間、権利行使価額、譲渡制限、保管・管理方法、年間権利行使価額など、確認すべき要件は複数にわたります。
「後から税制適格に直せばよい」は危険
創業期にとりわけ注意したいのが、「とりあえず発行して、後から税制適格に直せばよい」という発想です。
この点について国税庁は、当初の付与契約が税制適格要件を満たしていない場合、権利行使前に契約内容を変更して要件を満たす形にしたとしても、租税特別措置法第29条の2の規定を適用して、株式取得による経済的利益を非課税とすることはできない、という見解を示しています。
出典:国税庁|ストックオプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合
これは、実務上きわめて重要です。
ストックオプションは、発行時の契約、発行決議、付与対象者、行使条件、管理方法を、最初から整えておく必要があります。採用時の口約束や、「後から整えればよい」という前提での簡易な発行は、将来の税務・労務・資本政策上のリスクとして残ってしまいます。
令和6年度税制改正で、年間権利行使価額の上限が引き上げられている
ストックオプション税制は近年も改正が続いており、創業期の会社ほど、最新情報の確認が欠かせません。
令和6年度税制改正では、一定の株式会社が付与するストックオプションについて、年間の権利行使価額の限度額が引き上げられました。具体的には、設立後5年未満の株式会社が付与するものは上限2,400万円/年、設立後5年以上20年未満で、非上場会社または上場後5年未満の上場会社が付与するものは上限3,600万円/年とされています。
出典:経済産業省|ストックオプション税制
あわせて、譲渡制限株式については、証券会社等による株式の保管委託に代えて、一定の場合には発行会社自身による株式管理も可能となりました。
出典:経済産業省|ストックオプション税制
このように、ストックオプション税制は「一度理解すれば終わり」というものではありません。改正によって活用の余地が広がる一方で、経過措置や適用時期を取り違えると、想定していた税務効果が得られないこともあります。
ストックオプション・プール制度も確認しておきたい
近時の制度としては、ストックオプション・プール制度も押さえておきたいところです。
これは会社法の特例として、産業競争力強化法に「募集新株予約権の機動的な発行」に関する仕組みが設けられたものです。経済産業大臣・法務大臣の確認を得たスタートアップを対象に、自社で定める一定の範囲内で、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できるようにする制度と位置づけられています。
出典:経済産業省|募集新株予約権の機動的な発行(ストックオプション・プール)に関する制度
ただし、この制度を活用するには経済産業大臣および法務大臣の確認が必要で、確認申請の前に事前相談を行うこと、手続には一定の期間を見込む必要があることにも留意が必要です。
出典:経済産業省|募集新株予約権の機動的な発行(ストックオプション・プール)に関する制度
創業初期から急速に採用を進める会社では、将来どの程度のストックオプション枠を確保するのか、通常の株主総会決議で足りるのか、それともプール制度の活用を検討するのか。こうした点を、資本政策とあわせて整理しておく必要があります。
もっとも、この制度はすべての会社が当然に使えるわけではありません。対象会社、要件、確認手続、株主との合意、既存の投資契約との整合性を、ひとつずつ確認しておくことが欠かせません。
種類株式は「普通株式とは違う権利を持つ株式」
続いて、種類株式です。
種類株式とは、普通株式とは異なる内容を持つ株式のことをいいます。会社法では、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権を行使できる事項、譲渡承認、取得請求権、取得条項、全部取得条項、種類株主総会を必要とする事項、取締役・監査役の選任などについて、内容の異なる種類の株式を発行できるとされています。
出典:e-Gov法令検索|会社法
スタートアップの実務でよく問題になるのが、優先株式です。VCなどから投資を受ける際に、普通株式ではなく、残余財産分配権や取得請求権、取得条項などが付された種類株式を発行することがあります。
| 種類株式の主な内容 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 剰余金の配当優先 | 普通株式より先に配当を受ける設計 |
| 残余財産分配優先 | 清算・M&A時に投資家が先に回収する設計 |
| 議決権の制限・調整 | 特定事項について議決権を制限・調整する設計 |
| 拒否権・種類株主総会 | 重要事項について種類株主の同意を必要とする設計 |
| 取得請求権 | 株主が会社に取得を請求できる設計 |
| 取得条項 | 一定事由で会社が株式を取得できる設計 |
| 普通株式への転換 | IPOや一定事由で普通株式へ転換する設計 |
種類株式は、単に「投資家に有利な株式」というだけのものではありません。投資家が高いリスクを取る代わりに、一定の優先回収やコントロール権を持つことで、投資判断をしやすくする、という役割を担っています。
一方、創業者の側から見ると、種類株式の内容は、将来のExit時の分配、次回資金調達、M&A交渉、IPO前の資本整理にまで影響します。定款と投資契約の両方を読み合わせ、将来どの場面でどの権利が発動するのかを理解しておくことが大切です。
優先株式で特に重要なのは「残余財産分配権」
種類株式のなかでも、スタートアップ投資でとりわけ重要になるのが、残余財産分配権です。
残余財産分配権は、会社を清算する場合や、実務上M&Aなどを清算に準じて扱う場合に、「誰が、どの順番で、どの金額を受け取るか」に関わってきます。優先株式では、投資家が普通株主より先に一定額を受け取れるよう設計されることがあります。
創業者が気をつけたいのは、「投資時の持株比率」と「Exit時の手取り」が、必ずしも一致しないという点です。
たとえば、投資家が少数持分しか持っていない場合でも、優先分配の倍率、参加型か非参加型か、みなし清算条項といった設計次第で、M&A時の分配結果が大きく変わることがあります。種類株式の実務では、残余財産分配権、普通株式への転換、みなし清算、ドラッグアロングなどが、投資契約・株主間契約と一体となって問題になります。
したがって、種類株式を発行する際は、「今いくら調達できるか」だけでなく、将来のExit時にどのような分配となるかを、あらかじめシミュレーションしておく必要があります。
新株予約権・種類株式は会計にも影響する
新株予約権や種類株式は、会社法や税務だけでなく、会計にも影響を及ぼします。
貸借対照表の純資産の部は、株主資本とそれ以外の項目に分けられ、株主資本はさらに資本金、資本剰余金、利益剰余金などに区分されます。加えて、株主資本以外の項目として、新株予約権が表示されることがあります。
創業期の会社では会計処理が後回しになりがちですが、資本政策を進める会社ほど、次のような管理が必要になります。
| 管理対象 | なぜ必要か |
|---|---|
| 株主名簿 | 株主、株数、種類、取得時期を管理する |
| 新株予約権原簿 | 付与対象者、個数、行使価額、行使期間、消滅事由を管理する |
| 資本政策表 | 現在株式数、潜在株式数、希薄化、次回調達後の持株比率を見る |
| 月次試算表 | 投資家・金融機関・税務申告への説明資料になる |
| 株主総会・取締役会議事録 | 発行決議や重要事項を後から説明するために必要 |
| 定款・登記事項 | 種類株式や新株予約権の内容と整合させる |
| 投資契約・株主間契約 | 種類株式、拒否権、情報提供、Exit条項を確認する |
月次決算は、経営者が会計を「読める・話せる・使える」状態にするための基礎です。創業期から会計体制を整えておくことが、経営管理の土台になります。
資本政策を進める会社ほど、「会計は税務申告のためだけのもの」という考え方では足りません。投資家、金融機関、M&Aの買い手、IPO審査に関わる方々に対して、きちんと説明できる数字と記録を整えておく必要があります。
創業期に確認すべき判断順序
新株予約権、ストックオプション、種類株式を検討するときは、いきなり制度を選ぶのではなく、次の順番で考えると整理がしやすくなります。
| 順番 | 確認すること | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 何のために使うのか | 採用、定着、投資、共同創業、M&A、承継のどれか |
| 2 | 誰に付与・発行するのか | 役員、従業員、外部協力者、投資家で制度が変わる |
| 3 | 普通株式で足りるか | 権利調整が必要な場合に種類株式や新株予約権を検討する |
| 4 | 税制適格を狙うか | 要件を満たせるか、当初契約から設計できるか |
| 5 | 希薄化をどこまで許容するか | 現在株主、将来投資家、SO枠を含めて資本政策表で確認する |
| 6 | 退職・失効・M&A時をどう扱うか | 権利が残る場面、消滅する場面を定める |
| 7 | 会計・登記・税務をどう処理するか | 議事録、原簿、定款、申告・源泉の要否を確認する |
| 8 | 投資契約と整合しているか | 事前承認、拒否権、希薄化防止、Exit条項を確認する |
制度を使うこと自体が目的になってはいけません。大切なのは、会社の成長に必要な人材・資金・意思決定を、どう設計するかです。
安易な発行で起こりやすい失敗
創業期に起こりやすい失敗は、制度を難しく考えすぎることではありません。むしろ、簡単に考えすぎることのほうにあります。
| 失敗しやすい判断 | 起こり得る問題 |
|---|---|
| 「SOは後でまとめて設計すればよい」 | 付与済みの約束と正式な発行条件がずれる |
| 「税制適格でなくても大丈夫」 | 権利行使時の課税・源泉徴収が問題になる |
| 「投資家には普通株でよい」 | 次回ラウンドで優先株式や投資契約の再整理が必要になる |
| 「優秀な人には多めにSOを渡す」 | 将来の採用枠や創業者持分が圧迫される |
| 「退職時はそのとき話し合えばよい」 | 退職者との権利関係が曖昧になる |
| 「議事録や原簿は後で作る」 | M&A・IPO・税務調査時に説明できない |
| 「弁護士・税理士・会計士の誰かに任せればよい」 | 会社法・税務・会計・資本政策の接続が漏れる |
新株予約権・ストックオプション・種類株式は、会社法、税務、会計、投資契約、人事制度が重なり合う領域です。特定の専門家だけに委ねるのではなく、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社労士と連携しながら検討することが望ましい論点だといえます。
相談前に整理しておきたい事項
専門家に相談する前に、次の情報を整理しておくと、検討の質が大きく変わります。
| 整理事項 | 確認内容 |
|---|---|
| 現在の株主構成 | 株主、株数、持株比率、議決権、共同創業者の有無 |
| 将来の資金調達予定 | エンジェル、VC、事業会社、融資との組み合わせ |
| 採用計画 | どの職種・役割に、どの時期にインセンティブを出すか |
| SOの目的 | 採用時の補完報酬、長期定着、役員インセンティブ、外部協力者向けか |
| 想定するExit | IPO、M&A、長期保有、事業承継のどれを重視するか |
| 税制適格の希望 | 要件を満たせる対象者・契約・管理体制があるか |
| 投資契約の有無 | 事前承認、情報提供、希薄化防止、Exit条項があるか |
| 種類株式の有無 | 優先分配、取得請求権、取得条項、転換条項の有無 |
| 会計管理体制 | 月次決算、株主名簿、新株予約権原簿、資本政策表の整備状況 |
| 過去の口約束 | 共同創業者・従業員・外部協力者への株式やSOの約束の有無 |
この整理ができていないまま制度だけを選んでしまうと、将来の資金調達やExitの局面で、論点が一気に噴き出してきます。反対に、最初から整理しておけば、専門家の側も、会社に合った選択肢を提示しやすくなります。
まとめ
新株予約権、ストックオプション、種類株式は、創業期の会社にとって強力な道具です。
新株予約権は、将来株式を取得できる権利として、資金調達にもインセンティブにも使われます。ストックオプションは、人材の採用・定着・企業価値向上への動機づけとして機能します。そして種類株式は、投資家のリスクとリターンを調整し、普通株式では表現しにくい権利設計を可能にします。
しかし、これらはいずれも、発行したあとで簡単に巻き戻せるものではありません。持株比率、潜在株式、税制適格、優先分配、投資契約、会計処理、議事録、原簿管理まで含めて、後から説明できる状態にしておく必要があります。
創業期にストックオプションや種類株式を検討している方、あるいは投資家・共同創業者・役職員への株式インセンティブをどう設計すべきか迷っている方は、犬飼公認会計士・税理士事務所へご相談ください。会社法・税務・会計・資本政策・月次管理を切り離すことなく、将来の資金調達、IPO、M&A、事業承継まで見据えたうえで、どの制度をどの順番で検討すべきかを整理いたします。
振り返り
| 論点 | 重要ポイント |
|---|---|
| 新株予約権 | 将来、一定条件で株式を取得できる権利。資金調達にもインセンティブにも使われる |
| ストックオプション | 新株予約権を人材インセンティブとして使うもの。採用・定着・企業価値向上と関係する |
| 税制適格SO | 権利行使時の課税を繰り延べ、売却時に譲渡所得として課税する制度。要件管理が重要 |
| 税制非適格SO | 権利行使時と株式譲渡時に課税が生じ得る。源泉徴収や納税資金に注意する |
| 後からの修正 | 当初契約が税制適格でない場合、後から変更しても税制適格扱いできない場合がある |
| SOプール制度 | 一定の確認を受けたスタートアップでは、機動的なSO発行を可能にする制度がある |
| 種類株式 | 普通株式と異なる権利を持つ株式。配当、残余財産分配、議決権、取得条項などを設計できる |
| 優先株式 | VC投資で使われることが多い。残余財産分配権や転換条項がExit時の分配に影響する |
| 会計管理 | 新株予約権、資本金、資本剰余金、純資産、潜在株式を月次・資本政策表で管理する |
| 相談前整理 | 株主構成、採用計画、資金調達予定、Exit方針、投資契約、SO付与方針を整理してから検討する |