税務調査の終盤になると、調査官から「調査結果の内容説明」を受ける場面があります。
このとき大切なのは、その説明を単なる「追徴税額の案内」として聞き流さないことです。調査結果の説明とは、税務署がどの事実をどう認定し、どの法令・通達・考え方に基づいて、どの税目・年度・金額について申告内容に誤りがあると見ているのかを確認する場面にほかなりません。
ここでの整理が不十分なまま修正申告に進んでしまうと、後になって困ることがあります。たとえば、「実は事実関係が違っていた」「金額計算の前提がずれていた」「重加算税の意味を十分に理解しないまま応じてしまった」「他の税目への波及を見落としていた」といった問題です。
そこで、調査結果の説明を受けたときは、まず指摘事項を次の4つに分けて確認することをおすすめします。
1つ目は、事実関係です。何が起きていたと認定されているのか。
2つ目は、税務上の評価です。その事実が、なぜ申告誤りになると判断されているのか。
3つ目は、金額です。どの年度・税目に、いくらの増減があるのか。
4つ目は、附帯税です。過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、延滞税、重加算税などが、どのように関わってくるのか。
調査結果の内容説明は、調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合に、税目、課税期間、更正決定等をすべきと認める金額、その理由などについて、原則として口頭で行われるものとされています。あわせて、必要に応じて非違の項目や金額を整理した資料などを示しながら、納税者の理解が得られるよう説明することとされています。
出典:国税庁|調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
調査結果の説明は「結論」ではなく「判断材料」として受け止める
調査結果の説明を受けると、多くの方は「税務署がそう言うなら、もう決まったことなのだろう」と感じてしまいがちです。
しかし、この説明は、納税者が修正申告をするのか、それとも税務署の更正等の処分を待つのかを判断するための前提情報です。もちろん、税務署が一定の調査を経たうえで説明している以上、軽く扱ってよいものではありません。それでも、説明された内容が常にそのまま最終結論になるとは限らない、という点は押さえておく必要があります。
特に、次のような領域では慎重な確認が欠かせません。
売上計上時期、棚卸、外注費、役員給与、交際費、貸倒損失、消費税の仕入税額控除、源泉徴収、個人事業主の必要経費、家事関連費、相続税の名義財産、財産評価、生前贈与。こうした論点は、単なる金額の誤りにとどまらず、事実認定や評価判断が絡みやすいからです。
同じ「申告漏れ」という言葉で説明されていても、その中身が売上除外なのか、単なる期ずれなのか、証憑不備なのか、経費性の判断違いなのか、評価方法の相違なのかによって、その後の対応は大きく変わってきます。
ですから、調査結果の説明を受けたら、いきなり「指摘を受け入れるかどうか」を考えるのではなく、まず「何を根拠に、どのような構造で指摘されているのか」を整理することが先決です。
まず確認すべきは、対象年度・税目・指摘項目の範囲
最初に押さえておきたいのは、指摘の範囲です。
調査結果の説明を受けたときは、少なくとも次の点を確認しておきます。
- どの税目に関する指摘なのか
- どの事業年度、年分、相続開始日、課税期間に関する指摘なのか
- どの勘定科目、財産、取引、支払、届出、評価項目に関する指摘なのか
- 本税だけの話なのか、加算税や延滞税まで含む話なのか
- 他の税目や他年度にも波及する可能性があるのか
法人であれば、法人税だけでなく、消費税、源泉所得税、地方法人税、事業税、住民税へと波及することがあります。個人事業主であれば、所得税はもちろん、消費税、源泉所得税、住民税、事業税への影響も確認が必要です。相続税・贈与税であれば、相続人ごとの税額、贈与税申告、財産評価、過去の贈与、名義財産の認定、さらには重加算税の有無まで関係してくることがあります。
対象範囲が曖昧なまま話を進めてしまうと、後から「その年度も含まれていたのか」「消費税にも影響するのか」「源泉所得税の納税告知もあるのか」といった混乱が生じます。
調査結果は、必ず税目・年度・項目ごとに分解して把握しておきましょう。
「指摘内容」を事実・法令・金額・附帯税に分ける
調査官の説明は、必ずしも納税者側が判断しやすい順番で行われるとは限りません。
たとえば、「この外注費は給与に該当します」「この預金は名義財産です」「この請求書では仕入税額控除は認められません」「この処理は重加算税の対象になります」といった形で示されることがあります。
このとき、説明をそのまま一つの結論として受け止めるのではなく、次のように分解して整理していきます。
事実認定
まず、税務署はどの事実を前提にしているのか、という点です。
外注費であれば、契約書、請求書、業務内容、指揮監督、勤務実態、支払方法、相手方の申告状況などが問題になります。
名義預金であれば、資金の原資、通帳や印鑑の管理、入出金の経緯、名義人の認識、贈与契約の有無、運用収益の帰属などが論点です。
消費税であれば、取引内容、課税区分、請求書・帳簿の保存状況、インボイスの記載、取引先の登録状況などが問われます。
税務上の評価
次に、その事実が、なぜ申告誤りになるのか、という点です。
売上漏れなのか、計上時期の誤りなのか、損金性・必要経費性の否認なのか、給与認定なのか、仕入税額控除の否認なのか、相続財産への加算なのか、贈与の不成立なのか。これらを切り分けて確認します。
ここを曖昧にしたまま「税務署に言われたから修正する」と進めてしまうと、後から同じ処理を繰り返してしまうおそれがあります。
金額計算
続いて、どのような計算で税額が増えるのか、という点です。
所得金額の増加、損金不算入額、必要経費否認額、課税仕入れの否認額、源泉徴収漏れ、財産評価額の増加など、計算構造は税目ごとに異なります。
しかも、ある税目では増額になっても、別の税目では調整が必要になることがあります。法人税の否認が消費税や源泉所得税に波及するような場面では、本税だけを見て判断するのは危険です。
附帯税
最後に、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、延滞税、重加算税がどう扱われるのか、という点です。
とりわけ重加算税が示唆されている場合は、単なる申告誤りとは次元が異なります。帳簿書類の改ざん、虚偽記載、二重帳簿、売上除外、架空経費、名義財産の意図的な除外など、「隠蔽又は仮装」と評価される事実があるのかどうかを、慎重に確認しなければなりません。
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
説明資料は必ずもらえるとは限らない
調査結果の説明を受けるとき、「書面でいただけないか」と考える方も少なくありません。
ただ、ここは注意が必要です。調査結果の内容説明は原則として口頭で行われ、必要に応じて非違の項目や金額を整理した資料などが示されることはあっても、納税者からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはない、とされています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
したがって、説明を受ける側としては、自分たちで記録を残す姿勢が欠かせません。
その場で確認しておきたいのは、次のような事項です。
- 指摘項目の名称
- 対象年度・対象税目
- 税務署が問題にしている事実
- 税務署が根拠としている資料
- 適用される法令・通達・考え方
- 増加する所得、税額、課税価格、課税仕入れ否認額など
- 加算税や延滞税の見込み
- 重加算税の有無
- 修正申告を勧奨されているのか、それとも更正予定なのか
- 追加で提出すれば再検討される資料があるのか
調査官の説明を聞きながら、その場ですべてを理解するのは簡単なことではありません。分からない点は、曖昧なまま頷くのではなく、「どの資料を根拠にしていますか」「どの年度のどの金額ですか」「加算税は何を前提にしていますか」と、その場で確認しておくことが大切です。
修正申告の勧奨は、応じるかどうかを判断するもの
調査結果の説明を受けた後、修正申告を勧められることがあります。
この修正申告の勧奨は、納税者が必ず応じなければならないものではありません。勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、応じない場合には調査結果に基づいて更正等の処分が行われることになります。ただし、勧奨に応じなかったというだけの理由で、修正申告に応じた場合と比べて基本的に不利な取扱いを受けることはないとされています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
ただし、ここで一点、注意しておきたいことがあります。
修正申告をした場合、その修正申告はあくまで納税者自身が行った申告です。そのため、原則として、その修正申告について不服申立てをすることはできません。後から誤りに気づいた場合には、更正の請求という手段を検討することになります。不服申立てが税務当局の更正等の処分に対して取消しなどを求める手段であるのに対し、更正の請求は、納税者自身の申告が過大であった場合に減額更正を求める手段である、と整理されています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
つまり、修正申告に応じるかどうかは、「税額がいくらか」だけで決めるものではないということです。
事実関係に納得しているか。税務上の評価に争う余地はないか。金額計算に誤りはないか。加算税、とりわけ重加算税の前提を理解しているか。将来、同じ論点が繰り返されないよう整理できているか。
こうした点を一つずつ確認したうえで、判断する必要があります。
金額だけで判断してはいけない
調査結果の説明を受けると、どうしても追徴税額に目が向きがちです。
もちろん、納付額は重要な要素です。資金繰りへの影響、納付時期、延滞税、地方税への波及、金融機関への説明など、経営判断にも直結します。
しかし、金額だけを見て「この程度なら修正して終わらせよう」と判断してしまうのは危険です。
たとえば、重加算税が関係する場合、その問題は単なる金額負担にとどまりません。税務署が「隠蔽又は仮装」と見ているということは、帳簿、証憑、説明内容、取引実態、社内管理に重大な問題があると評価されている可能性があるからです。
また、法人税の指摘が役員給与、架空外注費、使途不明金、関係会社取引に関するものであれば、源泉所得税、消費税、役員個人の所得税、さらには取引先調査や将来の税務調査にまで波及しかねません。
相続税で名義財産や生前贈与が問題になっている場合も同様です。今回の相続税だけでなく、過去の贈与税申告、他の相続人との関係、将来の財産承継にまで影響が及ぶことがあります。
調査結果の説明で見るべきなのは、「今回いくら払うか」だけではありません。「なぜその指摘を受けたのか」「その処理を今後どう変えるべきか」「同じ説明を金融機関、後継者、取引先、相続人、専門家にできるか」というところまで含めて考える必要があります。
根拠資料を確認する
調査結果の説明では、税務署がどの資料に基づいて指摘しているのかを、必ず確認します。
確認すべき資料は、税目や論点によって異なります。
法人税であれば、総勘定元帳、補助元帳、請求書、契約書、納品書、検収書、棚卸表、議事録、稟議書、通帳、メール、社内資料などが問題になります。
消費税であれば、請求書、適格請求書、帳簿、課税区分、取引内容、届出書、課税売上割合、輸出免税関係資料などです。
源泉所得税であれば、給与台帳、報酬支払明細、契約書、請求書、支払日、納付書、年末調整資料などが対象になります。
個人事業主であれば、売上台帳、レジ資料、予約表、通帳、領収書、クレジットカード明細、家事按分の根拠、業務日誌などが重要です。
相続税・贈与税であれば、預金通帳、入出金履歴、贈与契約書、贈与税申告書、財産管理状況、不動産評価資料、株式評価資料、遺産分割協議書などが問われます。
ここで大切なのは、資料が「存在するか」だけではありません。資料と説明が一致しているか、取引実態と整合しているか、金額の流れと対応しているか。そこまで確認することです。
税務調査における説明可能性は、資料の量で決まるのではありません。資料・事実・会計処理・税務判断が一本の線でつながっているかどうかで決まるのです。
税務署の計算方法を確認する
調査結果の説明では、税額そのものだけでなく、計算の構造を確認しておく必要があります。
法人税であれば、所得金額がどのように増加しているのか。損金不算入額、益金算入額、翌期認容、留保・社外流出、地方税への影響はどうなっているのか。
消費税であれば、課税売上、課税仕入れ、仕入税額控除、課税売上割合、簡易課税、インボイス不備、還付額への影響がどう計算されているのか。
源泉所得税であれば、どの支払いについて、どの税率で、どの時点を支払時期として源泉徴収漏れとされているのか。
所得税であれば、収入金額、必要経費、所得区分、家事関連費、青色申告特別控除への影響がどうなっているのか。
相続税であれば、各相続人の課税価格、相続税の総額、各人の税額、特例適用、加算税の対象額がどう変わるのか。
税務署側の計算資料が示された場合でも、その数字をそのまま受け取るのではなく、前提となる事実と計算過程まで確認します。
特に、複数年度にまたがる期ずれ、売上計上時期、棚卸、前払・未払、資産計上、貸倒れ、贈与時期、相続財産の評価などは、ある年度だけを見ても正しい結論にたどり着きにくいことがあります。
加算税の有無を必ず確認する
調査結果の説明を受けたときは、本税だけでなく、加算税の有無も必ず確認してください。
過少申告加算税は、当初申告より税額が少なかった場合に問題になります。税務署からの調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合は過少申告加算税がかからない一方、調査の事前通知後や調査後の修正申告・更正では、一定割合の過少申告加算税がかかるとされています。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
延滞税は、法定納期限までに納付されなかった場合に、原則として法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課されます。修正申告や更正・決定で納付税額が生じる場合にも、延滞税の対象になります。
また、帳簿の提示・提出がない場合や、帳簿への売上金額等の記載が不十分な場合には、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて、過少申告加算税等への加重措置が問題になることがあります。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
調査結果の説明では、次の点を確認しておきましょう。
- 過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税のどれが問題になるのか
- 正当な理由の有無が検討されているのか
- 更正予知との関係はどう整理されているのか
- 帳簿不提示・帳簿記載不備による加重措置が関係するのか
- 重加算税が課される前提なのか
- 延滞税の計算期間に特例があるのか
- 地方税側にも波及するのか
ここは、専門家の関与が特に重要になる部分です。加算税は「本税に上乗せされるペナルティ」というだけでなく、税務署がその誤りをどのような性質のものと見ているのかを示す情報でもあるからです。
重加算税が示唆された場合は、特に慎重に対応する
調査結果の説明で「重加算税」という言葉が出てきたときは、すぐに結論を受け入れるのではなく、何が隠蔽又は仮装と見られているのかを確認する必要があります。
重加算税は、単なる計算誤りや解釈違いに対して当然に課されるものではありません。法人税の取扱いでは、二重帳簿、帳簿書類の破棄・隠匿、改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による虚偽証憑、売上げその他収入の脱ろう、棚卸資産の除外などが例示されています。
その一方で、翌期に収益計上されている売上の繰延べ、翌期に支出された経費の繰上計上、棚卸資産の評価換えによる過少評価、交際費等を単に他の費用科目に計上しているにすぎない場合などで、通謀や証憑書類の破棄・隠匿・改ざん等によるものでないときは、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等には該当しないとされています。
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
相続税・贈与税でも、帳簿書類の改ざん・偽造・破棄・隠匿、課税財産の隠匿、架空債務、虚偽答弁、名義や遠隔地にある状態を利用して課税財産として申告していない場合などが、不正事実として例示されています。
出典:国税庁|相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
ですから、重加算税が問題になる場合は、次の点を整理しておきます。
- 税務署はどの行為を隠蔽又は仮装と見ているのか
- その行為を誰が行ったのか
- 納税者本人、法人代表者、経理担当者、相続人、受贈者が認識していたのか
- 帳簿、証憑、契約書、通帳、メール等にどのような記録があるのか
- 単なる誤り、管理不備、期ずれ、解釈違いといえる余地はないのか
- 質問応答記録書や調査中の発言が、どのように扱われる可能性があるのか
重加算税の判断は、税額だけの問題ではなく、事実認定の問題です。ここで不用意に「そういう意図でした」「隠していたと言われても仕方ありません」といった説明をしてしまうと、後の処分や争いに影響しかねません。
分からないことは分からないと伝える。そして、記憶に基づく発言と、資料に基づく説明とを切り分けておく。この二点が重要です。
調査結果の説明後に、追加資料で前提が変わることもある
調査結果の説明を受けた後であっても、説明の前提となった事実が異なることが明らかになった場合などには、必要に応じて調査を再開し、その結果に基づいて再度説明を行うことができるとされています。
出典:国税庁|国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達 第4章 第3節
これは、納税者の側から見れば、説明を受けた後でも、根拠資料や事実関係を整理し直して再検討を求める余地がある、ということを意味します。
もっとも、単に「納得できない」と言うだけでは足りません。
再検討を求めるには、調査官の説明のどの前提が違うのか、どの資料によってそれが確認できるのか、税務上の結論がどう変わるのかを、きちんと整理する必要があります。
たとえば、売上計上時期であれば、納品・検収・請求・入金の流れが分かる資料が必要です。経費性であれば、支出目的、業務関連性、相手先、社内承認、成果物などが求められます。名義財産であれば、資金原資、管理状況、贈与意思、受贈者の認識、収益帰属などが論点になります。
調査結果の説明を受けた後の対応で必要なのは、感情的な反論ではありません。資料に基づいて前提を修正していく姿勢です。
税理士・会計士が関与している場合の確認
税務代理人がいる場合でも、調査結果の内容説明などは、原則として納税者本人に対して行われます。ただし、納税者の同意があれば、税務代理人に対して説明等を行うことも可能です。なお、令和6年4月1日以後は、税務代理権限証書の様式に「調査の終了の際の手続に関する同意」欄が設けられています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
こうした場面では、専門家に同席してもらうことが望ましいケースが少なくありません。
たとえば、次のような場合です。
- 修正申告に応じるかどうかの判断が難しい
- 複数税目に波及している
- 重加算税が示唆されている
- 質問応答記録書が作成されている
- 資料提出や発言内容が不利に使われる可能性がある
- 名義財産、時価、関係会社取引、役員給与など、判断要素が多い
- 調査官の説明に納得できないが、どこを争点にすべきか分からない
専門家の役割は、税務署と対立すること自体ではありません。指摘内容を、事実、証拠、法令、金額、加算税、将来影響に分解し、納税者が納得して判断できる状態をつくることにあります。
調査結果の説明を受けた後の実務対応
調査結果の説明を受けたら、その場で結論を急がず、次の順番で整理していきます。
説明内容を記録する
口頭説明が中心になるため、説明内容を記録します。税目、年度、項目、金額、理由、根拠資料、加算税の有無を残しておきましょう。
曖昧な点は、後から確認しようとせず、その場で質問しておくことが大切です。
指摘事項を一覧化する
指摘事項を一覧にし、税目別・年度別・論点別に整理します。
法人税、消費税、源泉所得税、所得税、相続税・贈与税などが混在している場合、まとめて考えると判断を誤りやすくなります。
事実関係と証拠を照合する
税務署が認定している事実と、自社・自身・相続人側の資料が一致しているかを確認します。
資料が足りない場合には、追加提出によって結論が変わる可能性があるかどうかを検討します。
金額計算を検算する
税務署側の計算が示された場合でも、対象年度、税目、税率、控除、翌期認容、地方税、加算税、延滞税まで含めて確認します。
修正申告に応じるかどうかを判断する
事実関係、法令評価、金額、加算税に納得できる場合には、修正申告を検討します。
一方、重要な事実誤認や法令解釈の相違がある場合には、更正を待つことも選択肢になります。この判断については、次の記事「3-2. 修正申告に応じるか、更正を待つか」で詳しく整理します。
調査後の改善点を整理する
調査結果は、単なる過去の清算ではありません。
なぜその指摘が起きたのか。資料保存が弱かったのか。月次処理が曖昧だったのか。承認ルールがなかったのか。税務判断を事前に相談していなかったのか。
ここまで整理して初めて、次回以降の税務調査に耐えられる体制づくりにつながります。
調査結果の説明で確認すべきチェックポイント
調査結果の説明を受ける際は、最低限、次の観点を確認しておきましょう。
| 確認項目 | 確認すべき内容 | 見落とした場合のリスク |
|---|---|---|
| 税目 | 法人税、所得税、消費税、源泉所得税、相続税・贈与税など | 他税目への波及を見落とす |
| 対象期間 | 事業年度、年分、課税期間、相続開始日 | 他年度の影響を誤る |
| 指摘項目 | 売上、経費、棚卸、役員給与、仕入税額控除、名義財産など | 論点の性質を誤る |
| 事実認定 | 税務署がどの事実を前提にしているか | 誤った前提のまま修正申告する |
| 根拠資料 | 通帳、請求書、契約書、帳簿、メール、評価資料など | 反論・再検討の材料を失う |
| 法令・評価 | なぜ税務上誤りとされるのか | 単なる説明不足と否認を混同する |
| 金額計算 | 所得、税額、課税価格、控除、翌期影響 | 追徴税額や還付・認容を誤る |
| 加算税 | 過少申告、無申告、不納付、重加算税の有無 | 負担額とリスクを過小評価する |
| 延滞税 | 法定納期限、納付日、計算期間 | 納付資金を見誤る |
| 修正申告の効果 | 不服申立て不可、更正の請求の可否 | 後から争う選択肢を狭める |
| 追加資料 | 再検討に必要な資料があるか | 説明の前提を修正できなくなる |
| 再発防止 | 月次管理、証憑保存、社内ルール | 同じ指摘を繰り返す |
調査結果の説明を受けた段階で相談した方がよい場合
次のような場合は、修正申告に進む前に、専門家へ相談することをおすすめします。
- 指摘内容の法的根拠が分からない
- 説明された金額の計算過程が分からない
- 重加算税が示唆されている
- 修正申告に応じるべきか迷っている
- 複数税目に波及している
- 役員給与、外注費、関係会社取引、消費税、名義財産、財産評価など、判断が複雑である
- 調査官が認定している事実に違和感がある
- 追加資料を出せば結論が変わる可能性がある
- 将来の税務調査や金融機関対応、承継、M&Aへの影響が気になる
税務調査の終盤では、「早く終わらせたい」という心理が強く働きます。しかし、ここで確認を省いてしまうと、納税者にとって不利な前提がそのまま固定されてしまうことがあります。
調査結果の説明を受けた段階こそ、事実、証拠、金額、加算税、今後の対応を冷静に整理すべきタイミングなのです。
まとめ|調査結果の説明は、修正申告前の最重要ポイント
税務調査の結果説明は、調査の終わりであると同時に、納税者側にとっては判断の始まりでもあります。
ここで確認すべきことは、「税務署がいくら払えと言っているか」だけではありません。
どの事実を前提にしているのか。どの税務上の評価をしているのか。どの年度・税目に、どの金額が影響するのか。加算税や重加算税はどう扱われるのか。修正申告に応じることで、どのような法的効果が生じるのか。調査後にどのような管理体制を整えるべきなのか。
これらを整理して初めて、修正申告に応じるのか、更正を待つのか、追加資料を提出して再検討を求めるのか、専門家と争点を組み立てるのかを判断できます。
税務調査対応で大切なのは、税務署と対立することではありません。かといって、指摘された内容を何も確認せずに受け入れることでもありません。
必要なのは、事実と資料に基づいて、後から説明できる判断をすることです。
税務調査の結果説明を受け、判断に迷われている方へ
調査官から指摘を受けたものの、修正申告に応じるべきか、金額や加算税の前提が正しいのか、重加算税のリスクがあるのか分からない。そうした場合は、できるだけ早い段階で論点を整理しておくことが重要です。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、税務調査の結果説明を受けた後の指摘事項について、事実関係、根拠資料、税務上の評価、税額計算、加算税リスク、今後の対応方針を整理し、納得して判断できる状態づくりを支援しています。
「このまま修正申告してよいのか」「どこを確認すべきか」「専門家に相談する段階なのか」と感じておられる場合は、現在の説明内容と資料を整理したうえで、お問い合わせページよりご相談ください。
振り返り
| 重要ポイント | 実務上の意味 |
|---|---|
| 調査結果の説明は、追徴税額の案内ではない | 事実認定、法令評価、金額、加算税を確認する場面 |
| 修正申告の勧奨は任意判断 | 応じる前に、事実・金額・法的効果を確認する |
| 書面が必ず交付されるとは限らない | 口頭説明を自社側で記録する必要がある |
| 加算税の確認は必須 | 本税だけでなく、過少申告加算税・延滞税・重加算税を確認する |
| 重加算税は特に慎重に扱う | 単なる誤りか、隠蔽・仮装かの事実認定が重要 |
| 追加資料で前提が変わることがある | 調査結果の説明後でも、根拠資料により再検討の余地がある |
| 専門家の役割は交渉だけではない | 指摘事項を分解し、納税者が判断できる状態をつくること |
| 調査後の改善まで考える | 月次管理、証憑保存、取引記録、社内ルールに反映する |