資金繰り改善の基本は売掛金・在庫・買掛金の管理にある

資金繰りが苦しくなると、多くの経営者がまず思い浮かべるのは「追加で融資を受けられないか」という選択肢ではないでしょうか。

たしかに、運転資金の借入が必要になる場面はあります。売上が伸びて売掛金や在庫が増えていく局面では、回収までのつなぎ資金を外部から補うことは、事業を続け、成長させていくうえで合理的な判断です。

ただ、資金不足の原因が別のところにある場合は話が変わります。売掛金の回収遅れ、過剰在庫や不良在庫、支払条件の悪化、取引先の与信管理の甘さ。こうした要因が背景にあるときは、借入だけで乗り切ろうとしても、資金繰りの体質そのものは変わりません。

資金繰り改善の出発点は、まず社内にある資金の「詰まり」を見つけることにあります。なかでも特に重要なのが、次の3つです。

管理対象資金繰りへの影響
売掛金売上は計上されても、入金されるまで資金にならない
在庫仕入・製造に資金を使っても、販売されるまで資金が寝る
買掛金支払時期が早いほど、売上回収前に資金が流出する

この3つは、貸借対照表の上ではそれぞれ別の科目として表示されます。しかし資金繰りの実務では、別々にではなく一体のものとして見ていく必要があります。

というのも、会社が日々直面する資金不足の多くは、「売掛金として未回収のままになっている資金」「在庫として滞留している資金」「買掛金として支払猶予を受けている資金」、この3つのバランスから生まれてくるからです。

目次

資金繰り改善は「借入の前」に見るべき領域がある

資金繰り改善というと、借入、借換、返済条件の変更、補助金、ファクタリングなど、外部から資金を入れる方法に目が向きがちです。

けれども、外部調達に踏み出す前に、確認しておきたいことがあります。それは、自社の運転資本が膨らみすぎていないか、という点です。

運転資本とは、日々の営業活動を回していくために必要な資金のことです。実務上は、次の式で捉えると分かりやすくなります。

運転資本 = 売掛金・受取手形 + 棚卸資産 − 買掛金・支払手形

売掛金と受取手形は、入金を待っている資金です。棚卸資産は、まだ販売・回収に至っていない資金です。そして買掛金と支払手形は、仕入先に支払いを待ってもらっている資金にあたります。

売掛債権は「入金待ち」の状態ですから、増えるほど現金化までのつなぎ資金が必要になります。在庫も「仕入れたが、まだ売れていない」状態であり、その分だけ資金が寝たままになります。一方で買掛金や支払手形は、支払いを先延ばししている状態ですから、増えると必要な運転資本を小さくする方向に働きます。

ここから見えてくる資金繰り改善の基本は、次の3つに整理できます。

  • 売掛金を、早く、確実に回収する
  • 在庫を、必要以上に持たない
  • 買掛金の支払条件を、取引関係を壊さない範囲で適正化する

追加借入は、すでに起きてしまった資金不足への対処です。これに対して売掛金・在庫・買掛金の管理は、そもそも資金不足が起きにくい体質をつくる取り組みだといえます。この違いを意識して分けて考えることが大切です。

利益が出ていても資金繰りが苦しくなる理由

黒字なのに資金が足りない。売上は伸びているのに、預金残高が増えない。利益は出ているはずなのに、月末の支払いが重くのしかかる。

こうした状況は、実務の現場では決して珍しいものではありません。原因は、利益と資金の動きが必ずしも一致しないことにあります。

売上を掛けで計上すれば、損益計算書には売上と利益が並びます。しかし入金が2か月後であれば、その間、手元の資金は増えません。その一方で、仕入代金、人件費、外注費、家賃、税金、借入返済といった支出は、待ってくれずに発生していきます。

掛け取引では、売上を計上した時点と入金される時点とがずれます。そのため、帳簿上は利益が出ていても資金の回収が間に合わず、いわゆる黒字倒産が起こり得るのです。利益計画だけでなく資金計画が欠かせないのは、まさにこの理由によります。

そして売上が増える局面では、このズレがいっそう大きくなります。

売上が増える。売掛金が増える。在庫や仕入も増える。人件費や外注費も膨らむ。それでも、入金は後からやってくる。

この空白を埋めるための資金が、増加運転資金です。増加運転資金が発生すると、その分だけ営業キャッシュフローは目減りします。だからこそ、売上債権、棚卸資産、仕入債務を、予想売上高と回転率をもとに見積もり、増加運転資金がどの程度になるのかをあらかじめ把握しておくことが重要になります。

資金繰り改善においては、単に「利益を増やす」だけでは十分とはいえません。その利益が、いつ現金に変わるのか。そこまで見届ける視点が求められます。

売掛金管理:売上を「回収できる資金」に変える

売掛金は、売上の結果として生まれるものです。ですから、売掛金が増えていること自体が、ただちに問題だとはいえません。

大切なのは、その増加が、売上拡大に伴う健全なものなのか、それとも回収遅延による危うい増加なのかを区別できているかどうかです。

売掛金が増えたときには、売上が伸びた結果なのか、それとも回収が遅れているのかを必ず確認する必要があります。後者を見落とすと、資金繰りがショートしかねません。

売掛金管理で確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

確認項目実務上の意味
請求漏れがないか売上計上済みでも、請求が遅れれば入金も遅れる
入金予定日が管理されているか資金繰り表に反映できるか
入金遅延先が一覧化されているか滞留債権を早期に把握できるか
回収サイトが長期化していないか必要運転資金が増えていないか
取引先別の残高が把握されているか与信集中リスクを見ているか
売上拡大先の信用力を見ているか売上増加が貸倒リスクを伴っていないか
手形・電子記録債権の期日管理ができているか実際の資金化時期を把握できるか
回収条件を契約・見積段階で確認しているか営業現場と経理が連携しているか

売掛金管理で見落とされがちなのは、これを経理部門だけの問題にしてしまうことです。営業担当者が「売上を取った」と認識していても、経営者はさらに一歩踏み込んで、「それはいつ入金されるのか」まで確認しておく必要があります。

入金条件の悪い取引は、売上規模が大きいほど資金繰りを圧迫します。なかでも次のような取引には、注意が必要です。

取引の状態注意点
大口取引だが回収サイトが長い売上増加と同時に資金不足が起きやすい
取引先の支払条件が一方的に延びている資金負担が自社に移っている
新規取引先の信用調査をしていない貸倒・回収遅延リスクがある
請求書発行が月末後に遅れる入金サイクル全体が後ろ倒しになる
入金消込が遅い滞留債権の発見が遅れる
営業部門が回収遅延を把握していない追加受注がリスクを拡大する

売掛金は、売上の成果であると同時に、まだ現金化されていないリスク資産でもあります。売上を伸ばすことは、もちろん大切です。ただ、回収できない売上は、資金繰りの改善にはつながりません。

与信管理:売上先を増やす前に、回収可能性を見る

資金繰りを整えていくうえで、与信管理も欠かせない要素です。

与信管理とは、取引先に対してどこまで掛け売りをしてよいかを判断し、回収不能のリスクをコントロールする取り組みを指します。

中小企業では、取引先との関係や営業上の事情から、与信管理がどうしても後回しになりがちです。しかし、売掛金が回収不能になれば、失うのは利益だけではありません。資金そのものを失うことになります。

たとえば、粗利率20%の会社が100万円の売掛金を貸倒れたとします。この損失を取り戻すには、単純計算で500万円の追加売上が必要です。しかも、その追加売上もまた回収できなければ意味がありません。

与信管理では、次のような点を確認していきます。

与信管理の項目確認内容
取引開始前の確認会社概要、支払実績、信用情報、紹介元
与信限度額取引先ごとに掛け売り上限を設定しているか
支払条件締日、支払日、手形・電子記録債権の有無
滞留管理期日超過後、何日で誰が対応するか
追加受注の制限滞留がある取引先に追加納品していないか
契約書・注文書取引条件が書面で残っているか
部門連携営業、経理、経営者が同じ情報を見ているか

資金繰りのよい会社は、ただ売上先を増やしているのではありません。回収できるかどうかを見極めながら、売上をつくっています。

営業の面では魅力的に映る取引でも、回収サイトが長く、信用面に不安があり、在庫や外注費が先行するようであれば、資金繰りの観点からは慎重に判断すべきです。

在庫管理:在庫は「将来売れる資産」であると同時に「寝ている資金」である

在庫は、棚卸資産として貸借対照表に表示されます。会計上、棚卸資産とは、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品など、企業が営業目的を果たすために保有し、売却を予定している資産を指します。

ところが資金繰りの視点に立つと、在庫は「すでにお金を使ったのに、まだ現金には戻っていないもの」として見えてきます。

売れる在庫は、将来の売上を生む資産です。一方で売れない在庫は、資金を固定化してしまう負担になります。

在庫が増えれば、その分だけ必要な運転資本も増えます。とりわけ、売上や利益に大きな変化がないにもかかわらず棚卸資産だけが増えている場合は、不良在庫が残っている可能性があり、早めに現金化を検討すべきサインといえます。

在庫管理で確認しておきたい項目は、次のとおりです。

確認項目実務上の意味
在庫数量実際にどれだけあるか
在庫金額いくら資金が固定されているか
在庫回転期間何か月分の在庫を持っているか
滞留在庫一定期間動いていない在庫がないか
不良在庫販売不能・品質劣化・陳腐化がないか
仕掛品作業中・製造中の資金が膨らんでいないか
受注見込み販売計画に対して過剰でないか
廃棄・値引販売いつ処分判断をするか
棚卸差異帳簿残高と実在庫が合っているか
倉庫・保管費在庫保有に伴う追加コストがないか

ただし、「在庫は減らせばよい」と単純に割り切ってしまうのも危険です。必要な在庫まで削ってしまえば欠品が起き、せっかくの売上機会を逃すことになります。製造業であれば、原材料や仕掛品を過度に削ると、生産そのものが止まりかねません。

医療、食品、建設、製造といった分野では、品質管理、納期、許認可、契約条件なども絡んできます。

したがって、在庫管理の目的は単なる削減ではありません。

売上を維持・拡大するために必要な在庫と、資金をいたずらに寝かせている在庫とを分けることにあります。

在庫回転期間で「何か月分持っているか」を見る

在庫管理を感覚に頼って進めていると、過剰在庫に気づくのが遅れてしまいます。そこで活用したいのが、在庫回転期間という指標です。

在庫回転期間 = 棚卸資産 ÷ 月平均売上原価

たとえば、月平均売上原価が500万円で、棚卸資産が1,500万円であれば、在庫回転期間は3か月です。これは、いま抱えている在庫が、売上原価ベースでおよそ3か月分にあたるという意味になります。

在庫回転期間を見ると、次のような判断ができるようになります。

状態読み方
売上増加に伴って在庫も増えている成長に必要な在庫の可能性がある
売上横ばいなのに在庫だけ増えている過剰在庫・滞留在庫の可能性がある
在庫回転期間が長期化している資金が在庫に固定されている
在庫回転期間が短すぎる欠品・機会損失の可能性がある
帳簿在庫と実在庫が合わない棚卸・原価管理に問題がある

棚卸資産の数量管理には、継続記録法と棚卸計算法があります。継続記録法は手間がかかるものの精度の高い管理ができ、重要性の高い棚卸資産に向いています。これに対して棚卸計算法は手間が少ない反面、在庫数量を適時に把握しにくいという特徴があります。

月次で在庫を把握できていない会社は、資金繰り表の精度も自然と下がっていきます。在庫が分からなければ、仕入代金の支払い、売上原価、粗利、資金需要の見通しがそろってずれてしまうからです。

買掛金管理:支払いを遅らせることと、信用を失うことは違う

買掛金は、仕入先に対する未払代金です。資金繰りの面から見れば、買掛金があるということは、仕入代金の支払いを一定期間待ってもらえているということでもあります。その意味で、買掛金は運転資金を支える大切な要素です。

しかし、買掛金管理を誤ると、資金繰り改善どころか、かえって信用不安を招くことになります。

買掛金が増えたときには、仕入れが増えた結果なのか、それとも支払いが滞っているのかを確認する必要があります。支払いの遅延は取引先からの信頼を損ない、ときには契約破棄にまで発展しかねません。

買掛金管理では、次のような点を確認していきます。

確認項目実務上の意味
支払予定表いつ、いくら支払うか把握しているか
仕入先別残高特定仕入先への未払が集中していないか
支払サイト売上回収より先に支払いが来ていないか
支払条件契約・発注書と実際の支払いが一致しているか
遅延の有無資金不足による支払遅延が発生していないか
早払いの有無値引き以上に資金繰りを圧迫していないか
交渉余地仕入先との関係を壊さず条件見直しできるか
代替先重要仕入先に依存しすぎていないか

支払サイトの見直しは、資金繰り改善に有効な手段です。しかし、一方的に支払いを遅らせることは、資金繰り改善とはいえません。それは、信用そのものを毀損する行為です。

支払条件を見直す際は、仕入先との関係、価格条件、納期、取引量、信用力といった要素を踏まえたうえで交渉を進める必要があります。

「払えないから遅らせる」のではなく、「継続的な取引のために支払条件を再設計する」。この姿勢の違いが、結果を大きく分けます。

売掛金・在庫・買掛金はセットで見る

売掛金、在庫、買掛金は、それぞれを個別に管理するだけでは十分ではありません。大切なのは、3つをセットで見ることです。

たとえば、次のような会社を考えてみましょう。

項目改善前
月商1,000万円
売掛金回収サイト3か月
月間仕入原価500万円
在庫保有期間3か月
買掛金支払サイト2か月

この場合、必要運転資金はおおよそ次のように見積もれます。

項目計算金額
売掛金1,000万円 × 3か月3,000万円
在庫500万円 × 3か月1,500万円
買掛金500万円 × 2か月▲1,000万円
必要運転資金売掛金+在庫−買掛金3,500万円

ここで、この会社が回収サイトを2か月に短縮し、在庫を2か月分まで圧縮し、支払サイトを3か月に延ばせたとします。すると、必要運転資金は次のように変わります。

項目計算金額
売掛金1,000万円 × 2か月2,000万円
在庫500万円 × 2か月1,000万円
買掛金500万円 × 3か月▲1,500万円
必要運転資金売掛金+在庫−買掛金1,500万円

必要運転資金は、3,500万円から1,500万円へと減少します。売上を一切減らすことなく、資金需要だけが2,000万円小さくなったわけです。

運転資金は「売掛金+在庫−買掛金」で確認できます。回収を早め、在庫を減らし、支払サイトを適正化できれば、事業を回すために必要な外部借入は、その分だけ少なくて済みます。

これは単なる資金繰りのテクニックではありません。会社の資金効率そのものを改善する、れっきとした経営判断です。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルで資金の寝る期間を見る

売掛金・在庫・買掛金を一体で捉える指標として、キャッシュ・コンバージョン・サイクルがあります。一般には、次のように考えます。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数

これは、仕入や製造に使った資金が、売上代金として回収されるまでに、実質的に何日寝ているのかを見るための指標です。

指標意味
売上債権回転日数売上が入金されるまでの日数
棚卸資産回転日数在庫が販売されるまでの日数
仕入債務回転日数仕入代金を支払うまでの日数

資金繰りを良くしていく方向性は、はっきりしています。売上債権回転日数を短くし、棚卸資産回転日数を短くし、仕入債務回転日数を、信用を損なわない範囲で長くする。これに尽きます。

ただし、ここには注意点もあります。回収を急ぎすぎれば、取引先との関係に影響が出ることがあります。在庫を削りすぎれば、納期遅延や機会損失を招きます。支払いを延ばしすぎれば、仕入先からの信用を失いかねません。

ですから資金繰り改善は、単に日数を短くしたり延ばしたりすればよいという作業ではありません。売上戦略、仕入戦略、在庫方針、取引条件、そして金融機関対応までをつなげたうえで判断していく必要があります。

資金繰り表では、売上と仕入を入出金タイミングに置き換える

資金繰り改善を実務に落とし込むうえで欠かせないのが、資金繰り表です。

損益計画では、売上や仕入を発生ベースで捉えます。これに対して資金繰り表では、入金日と支払日で捉えます。ここが両者の大きな違いです。

半年から1年先までの資金繰り予定表をつくる際は、まず月次の損益計画を立て、その数値を入出金のタイミングに置き換えていくのが一般的です。なかでも特に重要になるのが、売上代金の回収と仕入代金の支払いです。

資金繰り表では、次のように整理していきます。

損益計画の項目資金繰り表での見方
売上高いつ入金されるか
売掛金いつ回収されるか
仕入高いつ支払うか
在庫増加仕入代金として先に資金が出るか
買掛金いつ支払期日が来るか
人件費毎月いつ支払うか
経費支払月がいつか
税金中間納付・確定納付の時期
借入返済元金返済と利息支払いの時期

資金繰り表では、経常収支、投資収支、財務収支を分けて整理すると、資金不足の原因が見えやすくなります。経常収支は本業に伴う資金の収支であり、売掛金の回収、買掛金の支払い、人件費、経費、税金などが反映されます。

売掛金・在庫・買掛金の管理が甘い会社では、せっかく資金繰り表をつくっても予測が外れてしまいます。逆に、これらの管理がしっかりできている会社では、資金不足の時期、金額、原因、そして対策を、早い段階で把握できるようになります。

金融機関は、運転資金の中身を見ている

金融機関に運転資金の融資を相談する際、「資金繰りが厳しいので貸してください」というだけでは、説明として十分とはいえません。

金融機関が知りたいのは、その資金不足が何によって生じているのか、という点です。

売上増加に伴う前向きな増加運転資金なのか。回収遅延による資金不足なのか。過剰在庫による資金の固定化なのか。あるいは赤字の補填なのか。既存借入の返済負担なのか。

資金使途によって、返済原資の見え方も、金融機関の評価も変わってきます。運転資金は、経常運転資金、増加運転資金、つなぎ資金、赤字運転資金、不良売上債権資金などに分けて捉える必要があります。

同じ「在庫増加」であっても、評価は分かれます。

売上の増加に伴い、回転期間は変わらないまま在庫が増えているのであれば、前向きな増加運転資金として説明しやすくなります。一方、売上は横ばいなのに在庫だけが増え、在庫回転期間が長期化しているのであれば、資金繰り体質の悪化として警戒されます。

銀行が前向きに評価するのは、売上アップに伴う増加運転資金です。これに対して、売上が変わらないまま在庫が増え、回転期間が延びている状態は、資金繰り体質の悪化と受け止められます。

金融機関に説明する際は、次のような資料が役立ちます。

資料説明できること
月次試算表売上・粗利・利益の推移
資金繰り表入金・支払・資金不足の時期
売掛金一覧取引先別残高、回収予定、滞留状況
在庫一覧商品別・製品別の在庫金額、滞留状況
買掛金一覧支払予定、仕入先別残高
受注明細売上増加の裏付け
販売計画在庫が販売される見込み
借入金明細既存返済負担
改善計画回収・在庫・支払条件の具体策

金融機関対応は、交渉のテクニックではありません。自社の資金の流れを、いつでも説明できる状態に整えておくこと。それが本質です。

ファクタリングやABLは、内部改善の代替ではない

売掛金や在庫を資金化する方法として、ファクタリングやABLが検討されることがあります。

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日を待たずに資金化する仕組みです。売掛債権が回収困難になった場合の扱いによってリコース型とノンリコース型に分かれ、いずれも手数料などのコストが発生します。

ABLは、売掛債権や在庫といった動産を担保として融資を受ける方法です。融資の申込みから、売掛先や在庫のチェック、担保資産の評価といった手続きを経て実行されます。

これらは、状況によっては有効な資金調達の手段になり得ます。しかし、資金繰り改善そのものの本質ではない、という点は押さえておく必要があります。

売掛金の回収管理が弱いままファクタリングを使えば、手数料の負担がかさみ、いつしか継続利用に依存していくおそれがあります。在庫管理が弱いままABLを使えば、担保評価、モニタリング、金融機関への説明といった負担が増えるだけで、在庫過多という根本原因は残ったままです。

ファクタリングやABLを検討する前に、次の点を確認しておくべきです。

確認項目判断の意味
売掛金の回収管理はできているか早期資金化の前に回収遅延を改善できないか
滞留債権が混在していないか資金化できる債権とできない債権を分けているか
在庫の実在性は確認できるか帳簿在庫と実在庫が一致しているか
不良在庫が混在していないか担保価値や販売可能性を過大に見ていないか
手数料・金利負担を見ているか資金繰り改善効果を上回るコストになっていないか
金融機関からの見え方を確認したか緊急資金化と見られない説明ができるか
継続利用の出口を考えているか一時対応か、恒常的な資金調達か

外部資金化の手段は、あくまで内部改善とセットで使うべきものです。売掛金・在庫・買掛金の管理ができていない会社ほど、外部資金化に伴うリスクもまた高くなります。

資金繰り改善は営業・購買・経理を横断する

売掛金、在庫、買掛金は、経理だけで管理しきれるものではありません。

売掛金は、営業部門が握る取引条件、請求、納品、検収、そして回収への意識と深く関わります。在庫は、営業見込み、購買、製造、物流、販売計画と結びついています。買掛金は、購買条件、仕入先との交渉、支払予定、信用管理に左右されます。

つまり資金繰り改善とは、経理の集計作業ではなく、会社全体の業務改善にほかなりません。

経理部門の役割も、単に数字を集計することにとどまりません。企業戦略を数字へ落とし込む際には、売上や利益だけでなく、さまざまな制約を踏まえた現実的な数字が必要になります。

実務では、おおむね次のような役割分担が求められます。

部門資金繰り改善での役割
経営者資金繰り方針、取引条件、投資判断を決める
営業回収条件、与信、滞留債権、受注内容を管理する
購買仕入条件、発注量、支払サイトを管理する
製造・物流適正在庫、仕掛品、保管状況を管理する
経理月次試算表、資金繰り表、債権債務残高を整える
財務金融機関説明、借入、借換、資金調達方針を設計する

経営者が見るべきなのは、「経理が資金繰り表を作っているか」だけではありません。営業、購買、在庫、経理の数字が、きちんとつながっているかどうかです。

月次決算がなければ、資金繰り改善は遅れる

売掛金、在庫、買掛金を管理していくには、月次決算が必要です。

年次決算だけに頼っていると、資金繰り悪化の発見がどうしても遅れます。決算書ができあがった時点で、すでに売掛金が滞留し、在庫が膨らみ、支払いが苦しくなっている。そんなケースは少なくありません。

月次決算を行うことで、経営者は判断材料となる「生きた数字」をつかめるようになり、どう手を打つべきかが見えてきます。また、融資の申込みにあたっては、過去の決算書だけでなく、直近の月次決算書を求められることもあります。

月次で確認しておきたい項目は、次のとおりです。

月次確認項目見るべきポイント
売掛金残高売上増加か、回収遅延か
売掛金年齢表期日超過がどれだけあるか
在庫残高売上原価に対して過大でないか
在庫回転期間前月・前年同月と比べて悪化していないか
滞留在庫一覧販売・値引・廃棄の判断対象
買掛金残高仕入増加か、支払遅延か
支払予定表月末資金に不足がないか
資金繰り表3か月先、6か月先の不足時期
借入返済予定営業収支で返済できているか
粗利率在庫処分や値引きの影響が出ていないか

資金繰りを安定させるための取組みとしては、債権管理、債務管理、在庫管理、そして3か月先までの資金繰り表の整備といった項目が挙げられます。これは公的なガイドラインでも整理されている考え方です。

出典:中小企業庁|会計活用の手引き

資金繰り改善は、月末になって慌てて取り組むものではありません。月次で異常を早めに見つけ、それを次月以降の資金繰りに反映していく仕組みづくりが必要です。

資金繰り改善でやってはいけないこと

資金繰りが厳しいときほど、手っ取り早く資金を増やす方法に目が向きがちです。しかし、次のような対応は慎重に判断する必要があります。

対応注意点
回収不能に近い売掛金を売上として見続ける利益も資産も過大になり、判断を誤る
不良在庫を処分せず帳簿に残す実態より財務状態が良く見える
仕入先への支払いを一方的に遅らせる信用不安を招き、取引停止の可能性がある
赤字補填を通常運転資金として説明する返済原資が弱く、金融機関への説明が崩れる
ファクタリングに継続依存する手数料負担が資金繰りをさらに圧迫する可能性
在庫削減を急ぎすぎる欠品や納期遅延で売上機会を失う
回収条件だけを厳しくする取引先離れや価格交渉に影響する
資金繰り表を実績確認だけに使う予測と対策に活用できない
営業任せで与信管理をしない売上拡大と貸倒リスクが同時に増える
借入で資金不足を隠す根本原因が残り、借入依存が高まる

資金繰り改善とは、短期的な現金確保だけを指すものではありません。会社の資金の流れを正常な状態に戻し、次の資金調達や成長投資にも耐えられる体質をつくっていくこと。そこに本来の目的があります。

実務で使える資金繰り改善チェックリスト

自社の資金繰りを点検する際は、次のチェックリストを使うと、論点が整理しやすくなります。

売掛金

チェック項目確認
請求書は納品・検収後すぐに発行されているか
入金予定日を取引先別に管理しているか
期日超過債権を毎月確認しているか
滞留債権について営業担当者と共有しているか
新規取引先の与信確認をしているか
売上増加先の回収条件を把握しているか
回収サイトが長期化している取引先がないか
追加受注前に未回収残高を確認しているか

在庫

チェック項目確認
月次で在庫数量・金額を把握しているか
在庫回転期間を確認しているか
滞留在庫・不良在庫を一覧化しているか
実地棚卸を定期的に行っているか
帳簿在庫と実在庫の差異を把握しているか
販売計画と仕入計画が連動しているか
廃棄・値引販売の判断基準があるか
倉庫費・保管費まで含めて在庫コストを見ているか

買掛金

チェック項目確認
支払予定表を作成しているか
仕入先別の残高を把握しているか
支払サイトと回収サイトのズレを確認しているか
支払遅延が発生していないか
支払条件を契約書・発注書で確認しているか
早払い・前払いが資金繰りを圧迫していないか
重要仕入先との条件交渉余地を確認しているか
仕入先への信用を損なう対応をしていないか

まとめ:資金繰り改善は、会社の「資金の流れ」を整える経営判断である

資金繰りが苦しいとき、追加融資は有力な選択肢のひとつです。しかし、資金不足の原因が売掛金、在庫、買掛金にあるのなら、借入だけでは根本的な改善にはつながりません。

売掛金の管理は、売上を現金へと変えていく管理です。在庫の管理は、投じた資金を回収するまでの管理です。買掛金の管理は、仕入先との信用を守りながら、支払時期を設計していく管理です。

この3つを整えていくことで、必要運転資金は小さくなり、借入への依存度は下がり、金融機関への説明力も高まっていきます。

資金繰り改善は、単なる経理処理ではありません。営業、購買、在庫、経理、財務をつなぐ経営管理です。会社が調達した資金を活かし、返済し、成長へとつなげていくためには、まず自社の資金がどこで寝ているのかを、目に見える形にしておく必要があります。

売掛金・在庫・買掛金から資金繰りを改善したい方へ

次のような状況に心当たりがある場合は、追加借入を検討する前に、まず運転資本の整理から始めることをお勧めします。

  • 売上はあるのに、預金残高が増えない
  • 黒字なのに、月末の資金が苦しい
  • 売掛金の回収遅延が増えてきている
  • 在庫は増えているが、どれが売れる在庫なのか分からない
  • 買掛金の支払いが重く、仕入先への支払いに不安がある
  • 資金繰り表は作っているが、入金・支払予定の精度が低い
  • 金融機関に、運転資金の必要額をうまく説明できない
  • ファクタリングやABLを検討しているが、その前に社内改善すべきか判断したい

犬飼公認会計士・税理士事務所では、資金繰り改善を、単なる資金調達手段の選択としてではなく、売掛金回収、在庫管理、買掛金・支払条件、月次決算、資金繰り表、金融機関説明をつなげた財務設計として整理いたします。

「追加借入が必要なのか、それともその前に社内で改善できる資金があるのか」を確認したい方は、お問い合わせページより、直近の試算表、資金繰り表、売掛金一覧、在庫一覧、買掛金一覧、借入金明細をご準備のうえ、ご相談ください。

この記事の振り返り

論点重要ポイント
資金繰り改善の基本追加借入だけでなく、売掛金・在庫・買掛金を見直す
運転資本売掛金・受取手形+棚卸資産−買掛金・支払手形で把握する
売掛金売上ではなく、いつ回収できるかが資金繰りを左右する
与信管理回収不能リスクを見ずに売上を増やすと資金繰りが悪化する
在庫将来売れる資産である一方、販売まで資金が寝る
在庫回転期間何か月分の在庫を持っているかを確認する
買掛金支払猶予は資金繰りを支えるが、支払遅延は信用を失う
回収サイト短縮できれば必要運転資金が減る
支払サイト適正化できれば資金繰りは改善するが、取引関係への配慮が必要
CCC売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数で資金の寝る期間を見る
資金繰り表売上と仕入を入出金タイミングに置き換える
金融機関説明運転資金の中身と返済原資を説明できることが重要
ファクタリング売掛債権の早期資金化だが、手数料・継続利用リスクを確認する
ABL売掛債権や在庫を担保にできるが、資産管理の精度が前提になる
月次決算売掛金・在庫・買掛金の異常を早期に把握する基盤
経営判断資金繰り改善は経理だけでなく、営業・購買・在庫・財務を横断する取り組み
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