中小企業の資金調達手段を整理する|借入だけに頼らない資金戦略の考え方

中小企業の資金調達と聞いて、まず銀行からの借入を思い浮かべる方は多いと思います。

たしかに、銀行融資は中小企業にとって欠かせない資金調達手段です。運転資金、設備資金、賞与資金、納税資金、つなぎ資金、あるいは既存借入の見直しまで、経営のさまざまな場面で金融機関との関係は重要な意味を持ちます。

ただ、資金調達を「銀行からお金を借りること」とだけ捉えてしまうと、肝心の判断を誤ることがあります。

資金が足りない原因は、会社によってさまざまです。売掛金の回収が遅れているのか、在庫を抱えすぎているのか、赤字が続いているのか、成長投資による一時的な資金需要なのか、それとも返済負担そのものが重いのか。原因が違えば、本来とるべき対応も変わってきます。

ここを整理しないまま借入だけで穴を埋めてしまうと、一時的には資金繰りが落ち着いても、返済負担が増え、かえって将来の資金繰りを苦しくしてしまうことがあります。

つまり、資金調達は「いくら借りられるか」だけの話ではありません。

本来は、会社の資産・負債・資本・利益・資金繰り・事業計画を見渡しながら、どの手段を、どの目的で、どの順番で使うのかを考える経営判断です。そして、その手段は大きく分けると、内部資金改善・アセットファイナンス・デットファイナンス・エクイティファイナンスという四つの組み合わせとして整理できます。

目次

資金調達を考える前に、まず資金不足の原因を見る

資金が足りないとき、すぐに新規借入を考えたくなる気持ちはよく分かります。

ただ、資金不足には必ず原因があります。その原因を切り分けないまま資金調達に走ると、「本来は回収すべき売掛金を借入で埋める」「在庫を圧縮すべきなのに追加融資で維持してしまう」「赤字構造を改善しないまま借入で時間を稼ぐ」といった判断になりがちです。

まず確認したいのは、次のような点です。

  • 本業できちんと資金を生めているか
  • 売掛金の回収が遅れていないか
  • 在庫や仕掛品に資金が固定化していないか
  • 買掛金や支払条件とのバランスが崩れていないか
  • 借入返済額が、稼ぐ資金を上回っていないか
  • 設備投資や新規事業の資金需要を、あらかじめ見込めているか
  • 税金、賞与、社会保険料、消費税などの支出を織り込めているか

月次決算や資金繰り表が整っていない会社では、こうした原因がどうしても見えにくくなります。結果として、「資金が足りないから借りる」という単純な判断に流れてしまうのです。

しかし、資金繰りを本当に改善するには、複数の視点が必要になります。売上債権や棚卸資産を圧縮する、仕入債務とのバランスを見直す、借入返済額と稼ぎ出す資金とのバランスを整える、といった具合です。

そもそも運転資金とは、「現金 → 在庫 → 売掛金 → 現金」という営業の循環を回すために必要となる資金です。基本的には、売上債権と棚卸資産から仕入債務を差し引いて把握すると考えると分かりやすいでしょう。

資金調達は、こうした資金不足の原因を見極めたうえで、その先に考えるべきものです。

資金調達の基本分類

中小企業の資金調達手段は、細かく挙げればきりがありません。ただ、経営判断としては、まず次の四つに整理しておくと見通しが良くなります。

一つ目は、内部資金改善です。外部から新たに資金を入れる前に、会社の中に眠っている資金を生み出すという発想です。売掛金の回収、在庫の圧縮、支払条件の見直し、不採算事業の整理、利益改善などがここに含まれます。

二つ目は、アセットファイナンスです。会社がすでに保有している資産を活用して資金を生み出す方法で、遊休資産の売却、売掛債権の早期資金化、在庫の資金化、リースバック、動産・債権担保融資などが該当します。

三つ目は、デットファイナンスです。負債による資金調達であり、銀行融資、日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの融資、信用保証協会の保証付き融資、私募債、リース、前受金、既存借入の見直しなどが含まれます。

四つ目は、エクイティファイナンスです。資本による資金調達で、増資、第三者割当増資、ベンチャーキャピタル、中小企業投資育成会社、エンジェル投資、従業員持株会、種類株式、新株予約権、株式投資型クラウドファンディングなどが挙げられます。

この四分類を押さえておくと、「借りるか、借りないか」という二択ではなく、「資産から生むのか」「負債で調達するのか」「資本を入れるのか」「そもそも内部で資金を作れないか」という形で、選択肢を立体的に検討できるようになります。

まず検討すべきは、内部資金改善

資金調達を考えるとき、最初に目を向けるべきは、実は外部からの調達ではありません。

まずは、自社の中に資金を生む余地がないかを確認することです。なぜなら、外部調達は原則として、将来の負担を伴うからです。借入であれば返済が必要になり、増資であれば株主構成や支配権に影響します。ファクタリングやリースバックにも、手数料や将来コストがついて回ります。

これに対して内部資金改善は、会社の資金循環そのものを良くしていく取り組みです。

たとえば、売掛金の回収サイトが長い会社では、売上が増えるほど資金が苦しくなることがあります。売上を計上してから入金されるまでの期間が長く、仕入や人件費の支払いが先に来てしまうためです。こうした場合は、借入で埋める前に、請求漏れ、入金遅延、回収条件、取引先別の滞留状況をまず確認すべきでしょう。

在庫が多い会社も同じです。決算では利益が出ているように見えても、現金が在庫に固定化していることがあります。売れない在庫、過剰な安全在庫、仕掛品、長期滞留品が積み上がると、資金繰りはじわじわと重くなっていきます。

固定費が高止まりしている会社では、追加借入で資金不足を埋めても、利益構造が変わらなければ返済原資が生まれません。この場合に必要なのは、売上拡大だけではありません。粗利率、固定費、部門別採算、不採算取引の見直しまで踏み込むことが求められます。

内部資金改善は、地味な作業です。けれども、資金調達の前提として、これ以上ないほど重要です。金融機関に相談するときも、「資金が足りないので貸してください」と伝えるより、「売掛金の回収、在庫、固定費、利益改善をひととおり確認したうえで、それでもこの資金需要が残っています」と説明できるほうが、会社の管理能力ははるかに伝わります。

アセットファイナンス|資産から資金を生む

アセットファイナンスとは、会社が保有する資産を活用して資金を調達する考え方です。

中小企業では、資金調達というとどうしても借入に意識が向きがちですが、貸借対照表の資産側にも、資金化できる余地が眠っていることがあります。遊休資産、過剰在庫、滞留債権、保険積立金、差入保証金、不要な固定資産などが、その対象になり得ます。

アセットファイナンスの特徴は、すでに会社が持っている資産を使う点にあります。借入と違い、資産の売却であれば返済義務は生じません。ただし、その一方で、売却した資産は将来使えなくなります。リースバックを使えば、資産を売却して資金化しながら利用を続けられる可能性がありますが、今度は将来のリース料負担が発生します。

売掛債権を早期に資金化するファクタリングも、アセットファイナンスの一つとして検討されることがあります。ただし、これは慎重に扱うべき手段です。金融庁も、売掛債権等を譲渡して資金を調達するファクタリングについて、高額な手数料や大幅な割引率による契約はかえって資金繰りを悪化させ、多重債務に陥る危険があると注意を促しています。さらに、ファクタリングを装い、貸金業登録のない業者が違法な貸付けを行う事案にも気をつけたいところです。

出典:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起

売掛債権や棚卸資産を担保とするABLも、資産を活用した資金調達の一つです。信用保証協会の保証制度には、こうした売掛債権や棚卸資産を担保に金融機関から借入を行う際の保証制度も用意されています。

出典:全国信用保証協会連合会|さまざまな保証制度

とはいえ、アセットファイナンスは「資産があるなら資金化すればよい」という単純な話ではありません。

確認すべき点はいくつもあります。その資産を手放しても事業に支障が出ないか、手数料や将来コストは合理的か、資金化によって本当に資金繰りが改善するのか、そして金融機関や取引先にどう説明するのか。特に売掛債権や在庫を活用する場合には、債権管理、在庫管理、契約関係、取引先との信頼関係にも影響が及びます。

アセットファイナンスは、資金調達の手段であると同時に、貸借対照表を見直す良い機会でもあるのです。

デットファイナンス|負債で資金を調達する

デットファイナンスとは、借入や社債のように、返済義務を伴う資金調達のことです。

中小企業にとって最も身近なのは、やはり金融機関からの融資でしょう。民間金融機関のプロパー融資、信用保証協会の保証付き融資、日本政策金融公庫などの政府系金融機関の融資、制度融資などが代表的です。

中小企業庁も、政府系金融機関による融資や信用保証協会による保証を通じて、中小企業の資金繰りを支えています。ただし、制度の内容は随時更新されますので、利用を検討する際は最新の情報を確認しておきたいところです。

出典:中小企業庁|金融一般支援

日本政策金融公庫の中小企業事業は、中小企業向けの長期資金を中心に取り扱っており、短期の運転資金は扱っていないとされています。設備資金や長期的な資金需要を検討する場面では、公庫融資が選択肢になることがありますが、その際は事業計画、決算書、試算表、設備投資資料などをしっかり準備しておくことが大切です。

出典:日本政策金融公庫|事業資金 中小企業の方

信用保証制度は、中小企業・小規模事業者、金融機関、信用保証協会の三者を基本とする仕組みです。保証付き融資を活用すれば、金融機関のプロパー融資と併用しながら融資枠を広げられる場合もあります。ただし、保証付きだからといって返済義務がなくなるわけではありません。保証料、金融機関との関係、既存借入とのバランスまで含めて考える必要があります。

出典:全国信用保証協会連合会|もっと知りたい信用保証

デットファイナンスで最も大切なのは、資金使途と返済原資です。

銀行融資の審査では、事業内容、業績、今後の見通し、融資案件の事情、資金使途、融資形態、返済原資、保全、他行の状況などが、総合的に確認されます。担保の有無だけでなく、そもそも事業として返済できる相手なのかが見られているわけです。

たとえば設備資金であれば、その投資によって将来どのような利益・キャッシュフローが生まれ、どの期間で返済できるのかを説明する必要があります。運転資金であれば、売上債権・棚卸資産・仕入債務の関係から、どの程度の正常運転資金が必要なのかを整理しておかなければなりません。

この正常運転資金は、事業を続ける限り常に必要となる性質を持っています。そのため、約定返済付きの長期借入で機械的に調達してしまうと、返済そのものによって資金繰りが悪化することがあります。正常運転資金については、短期継続融資の活用が基本とされる考え方があります。

一方、設備資金で重要になるのは、投資による将来キャッシュフローと返済期間の整合性です。短期で回収できない投資を短期資金で賄えば資金繰りを圧迫しますし、逆に一時的なつなぎ資金を長期借入で調達すれば、不要な負債が後々まで残ってしまいます。

デットファイナンスでは、借入額だけに目を向けるのではなく、返済期間、据置期間、金利、担保、保証、財務制限条項、期限前返済条件、資金使途制限なども、あわせて確認しておきたいところです。

とりわけ経営者保証については、近年、これに依存しない融資慣行の確立に向けた取り組みが進められています。中小企業庁は、経営者保証ガイドラインの三要件として、法人と経営者の資産・経理の明確な区分、財務基盤の強化、適時適切な情報開示等を示しています。

出典:中小企業庁|経営者保証

つまり経営者保証の問題は、単に「保証を外せるか」という交渉だけの話ではないのです。会社と個人の資金が分かれているか、月次決算が整っているか、金融機関に継続的に情報を開示できているか、財務基盤を強化できているか。突き詰めれば、管理体制そのものの問題でもあります。

デットファイナンスは「返済できる借入」かを先に見る

借入を検討するときは、「借りられるか」よりも先に、「返済できるか」を見る必要があります。

返済原資の基本は、税引後利益に減価償却費を加えた資金です。長期借入金の元本返済額が、会社の稼ぎ出す資金を上回る状態が続けば、現金預金を取り崩すか、新たな借入で返済を補うしかなくなります。

ここで押さえておきたいのは、借入金の元本返済は損益計算書上の費用ではない、という点です。試算表の上では黒字でも、借入返済・税金・設備投資・賞与などを支払った後に現金が残らなければ、会社の資金繰りは強くなりません。

ですから、融資を受ける前には、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • 借入後の総借入残高はいくらになるか
  • 年間返済額はいくら増えるか
  • 税引後利益+減価償却費で返済できるか
  • 資金繰り表上、返済後の現預金残高は維持できるか
  • 売上計画が未達になった場合でも返済できるか
  • 既存借入との返済時期が重なりすぎていないか
  • 設備投資や採用といった追加の資金需要を織り込めているか

融資は、会社を成長させるための有効な手段です。ただし、返済原資を説明できない借入は、成長資金ではなく、将来の資金繰りリスクに姿を変えてしまいます。

エクイティファイナンス|資本で資金を調達する

エクイティファイナンスとは、株式やそれに類する資本性の手段によって資金を調達する方法です。

借入と大きく違うのは、原則として元本返済も利息支払いもない点です。そのため、成長投資、新規事業、研究開発、M&A、事業承継、財務体質の改善といった、一定のリスクを伴う資金需要に向いている場合があります。

ただし、エクイティファイナンスには、支配権、株主構成、利益分配、経営への関与、そして将来のM&A・承継・IPOへの影響が伴います。資金が入るからよい、と単純には割り切れません。

会社法上、株式会社は株式や新株予約権などを発行できますが、その発行にあたっては、会社法上の手続、既存株主との関係、発行価額、税務、会計、登記、契約条件などを検討する必要があります。

出典:e-Gov法令検索|会社法

増資は、会社に返済不要の資金を入れる方法です。借入のような元本返済も利息負担もありませんが、新たな株主が入ることで、議決権割合、配当、経営関与、将来の株式移動に影響が及びます。増資は単なる資金調達にとどまらず、資本提携、財務体質改善、事業承継、事業再生にも関わる、資本戦略の一手なのです。

種類株式や新株予約権を使えば、普通株式とは異なる権利設計も可能になります。たとえば、配当や残余財産に優先権を設ける、議決権を制限する、将来の株式取得権を付与する、といった設計が考えられます。資金調達、インセンティブ、M&A、事業承継などで活用されることがありますが、発行条件、評価、税務、既存株主との公平性、将来の資本政策への影響まで、慎重に検討しておく必要があります。

中小企業投資育成会社のように、中小企業の自己資本の充実と成長支援を目的とした、公的な性格を持つ投資機関もあります。中小企業投資育成会社は長期安定株主としての性格を持ち、自己資本の充実や経営の安定化を支援する機関とされています。

出典:東京中小企業投資育成株式会社

また、クラウドファンディングにはいくつかの類型があります。購入型や寄付型とは異なり、株式投資型クラウドファンディングなどの投資型クラウドファンディングは、金融商品取引法等の規制対象となり、日本証券業協会の自主規制規則も関わってきます。

出典:日本証券業協会|株式投資型クラウドファンディング 法令・規則・Q&A等

エクイティファイナンスは、返済負担を抑えながら成長資金を確保できる可能性を持っています。ただし、資金の出し手は、会社の将来性、事業計画、管理体制、株主保護、出口戦略をしっかりと見ています。

ですから、月次決算が遅い、資金繰りが見えていない、株主名簿が整理されていない、契約書や議事録が整っていない、事業計画の前提を説明できない――こうした状態では、エクイティファイナンスの検討はなかなか前に進みません。

資本を入れてもらうには、数字と管理体制の説明力が欠かせないのです。

補助金・助成金は資金調達とは性質が異なる

中小企業の資金確保を考えるとき、補助金や助成金が選択肢に挙がることもあります。

ただし、補助金は多くの場合、採択、交付決定、実績報告、検査、精算といった手続を経て支給されます。支出が先で資金が後、というケースも少なくありません。補助金があるからといって、資金繰りを軽く見てよいわけではないのです。

補助金は、資金調達というより、投資の負担を軽くする制度と捉えておくほうが実態に近いでしょう。設備投資、人材育成、経営力向上などに関しては、経営力向上計画のように税制支援や金融支援と結びつく制度もありますが、内容や要件は変更されますので、利用する時点で最新情報を確認しておく必要があります。

出典:中小企業庁|経営力向上支援

補助金ありきで投資を決めるのではなく、その投資が自社の成長や収益改善に本当に必要か、補助対象外の支出も含めて資金繰りが回るか、そして採択されなかった場合でも実行すべき投資なのか――こうした点を見極めることが大切です。

資金調達手段を選ぶための判断軸

資金調達手段を選ぶときは、手段の名前から入るのではなく、次の順番で整理していくと判断しやすくなります。

1. 資金使途は何か

資金使途が定まっていなければ、適切な調達手段は選べません。

運転資金なのか、設備資金なのか、赤字補填なのか、M&A資金なのか、事業承継資金なのか、税金・賞与資金なのか、それとも一時的なつなぎ資金なのか。それによって、調達方法も返済期間も、用意すべき説明資料も変わってきます。

2. 必要額はいくらか

「何となく不安だから多めに借りておく」という判断は、将来の返済負担を膨らませます。

必要額は、資金繰り表、投資計画、借入返済予定、税金支払予定、月次損益、売掛・在庫・買掛の動きから割り出すべきものです。必要額を説明できない資金調達は、金融機関や投資家にとっても判断しづらいものになってしまいます。

3. 返済原資または回収原資は何か

借入であれば、返済原資が必要です。設備投資なら投資後の利益・キャッシュフロー、運転資金なら売掛回収や営業キャッシュフロー、つなぎ資金なら特定の入金予定が、それぞれ返済原資になります。

エクイティであれば、投資家に対して、将来の成長、配当、株式価値、M&A、IPOといった出口をどう説明するかが重要になります。

4. 会社の財務体質に合っているか

借入余力のある会社と、すでに返済負担が重い会社とでは、同じ融資でも意味合いが違ってきます。自己資本が薄い会社、債務超過に近い会社、営業キャッシュフローが不安定な会社では、借入を増やす前に、資本増強や収益力の改善を検討すべき場合があります。

5. 経営の自由度にどのような影響があるか

借入には返済義務があり、保証や担保が付くこともあります。エクイティには返済義務こそありませんが、株主構成や経営判断に影響します。ファンドや外部株主が入る場合には、情報開示、ガバナンス、経営計画、出口戦略への対応も必要になります。

資金調達は、資金を得るだけの行為ではなく、将来の経営の自由度を左右する判断でもあるのです。

6. 実務運用に耐えられるか

どんな資金調達手段も、実務で回せなければ意味がありません。

月次決算、資金繰り表、事業計画、借入一覧、返済予定表、株主名簿、契約書、議事録、税務申告書、試算表、証憑管理――こうしたものが整っているかを確認しておく必要があります。

金融機関や投資家が求めているのは、見栄えのよい資料そのものではありません。数字の根拠、事実関係、そして将来計画との整合性です。

資金調達で避けたい判断

資金調達において避けたいのは、次のような判断です。

まず、資金不足の原因を見ないまま借入を増やすこと。赤字、在庫過多、回収遅延、固定費過大が原因であれば、借入だけでは根本的な解決になりません。

次に、短期資金と長期資金を混同すること。一時的なつなぎ資金を長期借入にする、長期投資を短期借入で賄う――こうした判断は、資金繰りを不安定にします。

また、返済原資を説明できない借入も危険です。資金使途が曖昧で返済原資の見えない借入は、金融機関にとっても、会社自身にとってもリスクが高くなります。

さらに、手数料や条件を確かめないまま資金化を急ぐことも避けたいところです。特にファクタリング、リースバック、ビジネスローンなどは、スピードだけでなく、実質的なコストや将来負担を必ず確認すべきです。

そして最後に、エクイティを単なる返済不要の資金と捉えること。外部株主が入るということは、支配権、情報開示、将来の出口、株主間の関係まで設計しなければならない、ということなのです。

相談前に整理しておきたい資料

資金調達について専門家や金融機関に相談する前に、次の資料を整えておくと、論点がぐっと明確になります。

  • 直近の月次試算表
  • 過去数期分の決算書・税務申告書
  • 資金繰り表
  • 借入金一覧表
  • 返済予定表
  • 売掛金・買掛金・在庫の内訳
  • 設備投資や採用の予定
  • 資金使途の説明資料
  • 事業計画または経営改善計画
  • 担保・保証の状況
  • 株主構成、株主名簿
  • 主要契約、リース契約、保証契約
  • 税金、社会保険料、賞与などの支払予定

これらが揃っていると、「いくら必要か」「なぜ必要か」「どの方法が合うか」「返済できるか」「外部に説明できるか」を検討しやすくなります。

資金調達は、資料を作るための作業ではありません。会社の状態を数字と事実で整理し、次の判断へ進むための準備なのです。

まとめ|資金調達は、会社の将来をどう設計するかという問題である

中小企業の資金調達は、銀行借入だけではありません。

内部資金改善、アセットファイナンス、デットファイナンス、エクイティファイナンスを、組み合わせて考えていく必要があります。

ただ、選択肢が多いことは、必ずしも良いことばかりではありません。選べる手段が増えるほど、資金使途、返済原資、財務体質、支配権、実務負荷、将来戦略への影響を、その都度整理しなければならないからです。

借入がふさわしい場合もあります。資産を資金化すべき場合もあります。増資や外部資本を検討すべき場面もあります。逆に、外部から資金を入れる前に、利益改善、売掛回収、在庫圧縮、固定費見直しに取り組むべき場合もあるでしょう。

大切なのは、「どの資金調達手段が有利か」ではなく、「自社の状況と目的に照らして、どの手段を、どの順番で、どの条件で使うべきか」を見極めることです。

資金調達は、会社の守りを固める手段であると同時に、成長に向けた攻めの判断を支える手段でもあります。

資金調達の方針を、数字と事実から整理したい方へ

資金調達を検討するときは、金融機関に相談する前の段階で、資金使途、必要額、返済原資、月次実績、資金繰り表、既存借入の状況を整理しておくことが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、単に融資資料を整えるだけでなく、月次決算・資金繰り・利益計画・借入返済・経営計画をつなげ、経営者ご自身が判断でき、金融機関や外部関係者にも説明しやすい状態を整える支援を行っています。

「借りるべきか」「借りる前に何を整えるべきか」「資金調達手段をどう比較すべきか」を、数字と事実に基づいて整理したい場合は、お問い合わせページからお気軽にご相談ください。

振り返り

論点確認すべきこと
資金不足の原因売掛金、在庫、赤字、返済負担、投資、税金・賞与支出のどこに原因があるか
内部資金改善回収条件、在庫、固定費、不採算取引、利益構造を見直せるか
アセットファイナンス遊休資産、売掛債権、在庫、リースバック、ABLなどを活用できるか
デットファイナンス資金使途、返済期間、返済原資、担保・保証、既存借入とのバランスが合っているか
エクイティファイナンス返済不要資金として有効か、支配権・株主構成・将来戦略への影響を説明できるか
公的融資・信用保証最新制度、対象要件、保証料、金融機関との関係を確認しているか
経営者保証法人と個人の分離、財務基盤、情報開示体制が整っているか
相談前の準備月次試算表、資金繰り表、借入一覧、返済予定、事業計画を整理できているか
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