経営会議を数字で意思決定する場に変える|月次レビュー・予実差異・資金繰りを次の行動へつなげる

毎月きちんと経営会議を開いているのに、ふり返ってみると「報告を聞いて終わるだけの場」になっている。そうした会社は、決して少なくありません。

売上はどうだったか。利益はどうだったか。各部門で何が起きたか。では来月も頑張りましょう。

この流れを何度繰り返しても、経営判断の質はなかなか高まっていきません。

経営会議の本来の役割は、数字を確認すること自体にあるわけではありません。月次決算、予実差異、資金繰り、KPI、課題の進捗をふまえたうえで、次に何を決めるのか、誰が何を実行するのか、いつまでにその結果を確認するのか。ここを明確にすることこそが、会議の役割です。

予算管理の実務でも、月次で実績を集計し、予算との差異を分析し、対応策を検討する。そして、その内容を経営会議で議論し、次の一手につなげていく。この流れが何より大切になります。会議では、予実の状況を把握するだけでなく、各部門から上がってきた課題や対応策を議論し、必要に応じて方針を修正したり、追加の支援を決めたりしていく。そこまでが求められます。

経営会議は、数字を「眺める場」ではありません。数字をもとに「決める場」です。

目次

経営会議が報告会で終わる会社に起きていること

経営会議が意思決定につながらない会社では、いくつかの問題が同時に起きています。

第一に、月次数字が遅いことです。

会議の時点で前月の試算表が固まっていない。売上や粗利は分かっても、在庫・未払・資金繰りが反映されていない。部門別の数字がまだ出そろっていない。こうした状態では、そもそも判断に使える材料が足りません。

第二に、資料が多すぎることです。

売上明細、費用明細、部門別一覧、営業報告、KPI表、資金繰り表。これだけ並んでいても、論点が見えなければ、会議は数字の読み合わせに終わってしまいます。資料が分厚いほど管理が高度になる、というわけではないのです。

第三に、予実差異の原因が整理されていないことです。

「売上が未達でした」「粗利率が下がりました」「固定費が増えました」。これだけでは、次の行動は決まりません。数量の問題なのか、単価の問題なのか。商品構成なのか、値引きなのか、それとも原価なのか。ここを切り分ける必要があります。

第四に、資金繰りが別管理になっていることです。

損益の会議では黒字に見えていても、売掛金の回収遅れ、在庫の増加、借入返済、税金、賞与、設備投資が重なれば、資金は足りなくなります。利益の会議と資金の会議が分断されていると、投資判断も借入判断も、どうしても後手に回ります。

第五に、決定事項とフォローアップが弱いことです。

会議の場では「検討する」「対応する」「進める」といった言葉が飛び交います。ところが、誰が、いつまでに、何を、どの数字で確認するのかが曖昧なまま終わってしまう。そして翌月、同じ課題がまた繰り返される。これでは、会議が経営改善の仕組みにはなりません。

経営会議を変えるには、会議の進め方だけを直しても足りません。月次決算、予実管理、資金繰り、KPI、課題管理、資料設計、そしてフォローアップ。これらを一体のものとして整えていく必要があります。

経営会議の目的は「共有」ではなく「判断」である

経営会議でも、情報共有は欠かせません。

ただ、情報を共有するだけで終わるのなら、わざわざ会議を開く必要はありません。資料を配り、各自が読めば済む話です。

会議で本当に行うべきは、共有された情報をもとに判断を下すことです。

たとえば、こうした判断です。

売上未達に対して、価格を見直すのか、営業の活動量を増やすのか、重点を置く顧客を変えるのか。粗利率の低下に対して、値引きの承認ルールを変えるのか、仕入先と交渉するのか、低採算商品を見直すのか。固定費の増加に対して、採用計画を維持するのか、外注費を抑えるのか、広告投資の効果を検証し直すのか。在庫の増加に対して、発注基準を変えるのか、滞留在庫を処分するのか、販売計画を修正するのか。資金繰りの悪化に対して、回収条件を見直すのか、支払条件を交渉するのか、借入の相談を前倒しするのか。設備投資について、予定どおり進めるのか、時期をずらすのか、規模を縮小するのか。

経営会議の価値は、資料の分厚さではなく、判断の質によって決まります。

会議資料は「説明する資料」ではなく「論点が見える資料」にする

経営会議を数字で意思決定する場へ変えていくうえで、資料の設計は重要なポイントです。

予実管理を効果的に進めるには、報告資料の作り方そのものが問われます。分かりづらかったり、量が多すぎたりすると、中身の濃い議論にはなりません。大切なのは、資料を見た瞬間に論点がつかめること。そのためには、サマリーを用意し、グラフを活かし、重要なテーマに絞り込み、不要になった管理は思い切ってやめる、といった工夫が必要になります。

中小・中堅企業の会議資料は、最初から完璧な管理会計パッケージである必要はありません。

むしろ、まず整えたいのは、次の5つです。

全社サマリー

売上、粗利、営業利益、経常利益、資金残高、借入残高、主要KPI。これらを1枚で確認できるようにします。

予実差異の要約

計画に対して、どの数字が、いくら、なぜズレたのか。単なる一覧にするのではなく、重要な差異に絞って原因を書き添えます。

部門別・商品別・取引先別の採算

全社利益だけを見ていても、どこを伸ばし、どこを見直すべきかは判断できません。会社の実態に合わせて、部門別、商品別、顧客別、プロジェクト別など、意思決定に使える切り口を選びます。

資金繰りの見通し

当月の資金残高にとどまらず、今後3か月から6か月程度の入出金、借入返済、税金、賞与、設備投資、そして資金不足の可能性まで確認します。

課題管理表

前回の会議で決めた事項、担当者、期限、進捗、未完了の理由、次回の対応を一覧にまとめます。

会議資料は、細かく作り込むことよりも、意思決定に必要な論点を浮かび上がらせることが大切です。

月次レビューで確認すべき数字

経営会議の中心に据えたいのが、月次レビューです。

月次決算は、年に一度の決算とは性格が違います。会社が自らの意思で毎月の業績を把握し、その結果を経営に活かすために行うものです。預金通帳を眺めているだけでは、その月の経営成果は見えてきません。月次決算を通じて現状を具体的な数字でとらえ、実態を直視できるようになります。

月次レビューでは、少なくとも次の数字を確認します。

  • 売上高
  • 粗利額・粗利率
  • 営業利益
  • 固定費の増減
  • 部門別損益
  • 主要商品・主要顧客の採算
  • 売掛金残高と回収遅延
  • 在庫残高と滞留在庫
  • 買掛金・未払金
  • 資金残高
  • 借入返済予定
  • 税金・社会保険・賞与などの将来支出
  • 主要KPI
  • 計画との差異
  • 前回決定事項の進捗

ここで気をつけたいのは、数字を増やしすぎないことです。

すべての数字を、毎月同じ深さで見る必要はありません。毎月必ず目を通す基本指標と、その月に重点的に見るテーマとを、分けて考えるべきです。

たとえば、原価率が悪化している月であれば、粗利と仕入・外注費を重点的に見る。資金繰りが厳しい月であれば、売掛回収、在庫、支払予定、借入返済に焦点を当てる。新規事業を立ち上げている時期なら、売上よりもKPI、投資額、検証結果を追う。採用を強化している時期なら、人件費、採用費、稼働率、教育コストを見ていく。

毎月同じ資料を形式的に確認するだけでなく、その時点で会社にとって本当に重要な論点に焦点を当てる。そこに意味があります。

予実確認は「未達の確認」ではなく「仮説の検証」である

予実確認をしていると、どうしても「達成したか、未達か」という話に流れがちです。

しかし、経営会議で本当に確かめたいのは、予算を作ったときの仮説が正しかったのかどうかです。

売上計画は、想定した顧客数、単価、受注率、納品時期をもとに組み立てられています。粗利計画は、商品構成、仕入単価、外注費、値引き、原価率をふまえています。固定費計画は、採用、広告、設備、外注、システム、人件費を見込んでいます。資金計画は、売上の回収、支払、借入返済、税金、投資を前提に作られています。

予実差異が出たということは、どこかの仮説と現実とのあいだにズレが生じている、ということにほかなりません。

「売上が足りない」と言うだけでは、次の行動は決まりません。

必要なのは、差異を分解することです。

売上差異であれば、数量差異、単価差異、商品ミックス差異、顧客別差異、時期ズレに分けて見ます。粗利差異であれば、販売単価、仕入単価、外注費、値引き、商品構成、ロス、不良、手直しに分けます。固定費差異であれば、人件費、広告費、採用費、地代家賃、システム費、外注費、臨時費用に分けます。資金差異であれば、入金遅れ、在庫増加、支払前倒し、借入返済、税金、投資支出に分けて確認します。

予実確認は、責任を追及する場ではありません。経営の仮説と現実とのズレを見つけ、次の打ち手を決めるための作業です。

資金繰りを経営会議の中心に入れる

経営会議では、損益だけでなく、資金繰りも必ず確認したいところです。

利益計画を立てても、掛け取引では売上の計上と入金のタイミングにズレが生じます。利益は計上されているのに、資金の回収が間に合わない。そうなれば、黒字倒産すら起こり得ます。だからこそ、利益計画と並んで資金計画が必要になるのです。

とくに中小・中堅企業では、次のような場面で資金繰りが急に苦しくなります。

  • 売上は伸びたが、売掛金と在庫が増えた
  • 大口案件の入金が遅れた
  • 賞与、税金、社会保険、借入返済が重なった
  • 設備投資の支払いが先行した
  • 新規事業の立ち上げ費用が想定を超えた
  • 不採算部門の赤字補填が続いている
  • 取引先から支払条件の変更を求められた
  • 金融機関への説明が遅れ、追加借入の相談が後手に回った

資金繰りは、経理・財務の担当者だけが見ればよいものではありません。

経営会議で資金繰りを共有すれば、営業、購買、製造、現場、管理部門のそれぞれが、自分たちの行動が資金にどう響くのかを理解できるようになります。

営業部門は、売上だけでなく回収条件を見る。購買部門は、仕入価格だけでなく支払条件と在庫を見る。製造部門は、稼働率だけでなく仕掛品と在庫を見る。管理部門は、固定費と支払予定を見る。経営者は、投資、借入、返済、手元資金のバランスを見る。

資金繰りを会議に組み込むと、利益と現金を分けて判断できるようになります。

課題管理は「やることリスト」ではなく「経営判断の履歴」である

経営会議で決まったことは、必ず課題管理表に残しておきたいものです。

課題管理表は、単なるToDoリストではありません。会社が何を問題ととらえ、どう判断し、誰に実行を託し、どのように進捗を確認したのか。その記録です。

課題管理表には、最低限、次の項目を入れておきます。

  • 課題名
  • 発生日
  • 背景となる数字
  • 原因仮説
  • 決定した対応策
  • 担当者
  • 期限
  • 確認指標
  • 進捗状況
  • 未完了理由
  • 次回確認事項
  • 完了判定

たとえば、「粗利率の低下」という課題があったとします。

良くない管理では、「営業部で改善する」とだけ書かれて終わります。これでは、翌月確認しても何が進んだのか分かりません。

良い管理では、こう記録します。

粗利率が計画の35%に対して31%。原因は、A商品群の値引きの増加と、B顧客向け外注費の上昇。対応策として、A商品群の値引き承認基準を見直し、B顧客向けの外注条件を再交渉する。担当は営業部長と購買責任者。期限は翌月15日。確認指標は、A商品群の値引き率、B顧客別の粗利率、外注単価。次回会議で改善状況を確認する。

ここまで決めて、はじめて経営会議の決定事項と呼べるものになります。

意思決定事項を明確にする

経営会議で何より大切なのは、何を決めたのかを明確にすることです。

会議では、さまざまな声が上がります。意見も出れば、不満も出る。報告もあれば、検討事項も出てきます。

けれども、会議のあとに残すべきは「決定事項」です。

決定事項は、たとえば次のような形ではっきりさせます。

  • 価格改定を実施する
  • 不採算取引の条件交渉を行う
  • 新規採用を一時停止する
  • 広告予算を重点媒体へ振り替える
  • 在庫処分基準を変更する
  • 設備投資を1か月延期する
  • 追加借入の相談を金融機関に行う
  • 資金繰り表を週次更新に切り替える
  • 部門別損益の集計方法を見直す
  • 次回会議からKPIを3つに絞る

そして、決定事項には必ず「担当者」「期限」「確認する数字」をセットにします。

担当者がいなければ、誰も責任を負いません。期限がなければ、先送りされます。確認する数字がなければ、効果を検証できません。

経営会議は、発言の多い会議ではなく、決定の明確な会議であるべきです。

フォローアップがなければ、会議は改善の仕組みにならない

会議で決めたことは、翌月、必ず確認します。

  • 前回の決定事項は実行されたか
  • 実行されていないなら、その原因は何か
  • 実行した結果、数字はどう変わったか
  • 追加の対応が必要か
  • 決定を修正する必要があるか
  • 完了と判断してよいか
  • 長期的にモニタリングすべきか

過去の課題について対応の進捗を確認したり、重要な事項を長期的に見守ったりすることもまた、経営会議の役割です。

フォローアップが弱い会社では、会議で決めたことが実行されません。しかも、なぜ実行されなかったのか、その理由まで曖昧になりがちです。

担当者の問題だったのか。期限設定に無理があったのか。権限が足りなかったのか。部門間の調整が必要だったのか。そもそも打ち手が間違っていたのか。それとも、経営者の判断が遅れたのか。

ここを確かめなければ、同じ課題が何度でも繰り返されます。

経営会議は、決める場であると同時に、決めたことをやり切るための仕組みでもあります。

会議の出席者を見直す

経営会議を数字で意思決定する場にするには、誰が出席するかも重要なテーマです。

経営者だけの会議では、現場の情報が足りません。現場責任者だけの会議では、経営判断ができません。経理だけの会議では、数字の説明に偏ります。営業だけの会議では、利益や資金の視点が抜け落ちます。

経営会議には、会社の規模に応じて、次のようなメンバーが必要になります。

  • 代表者
  • 役員・幹部
  • 営業責任者
  • 製造・サービス提供責任者
  • 購買・在庫責任者
  • 経理・財務責任者
  • 人事・管理責任者
  • 必要に応じて外部専門家

ただし、人数を増やしすぎると、会議そのものが重くなります。出席者は、情報を持っている人、意思決定できる人、実行責任を負う人に絞るのが基本です。

議題によって、一部の人だけ参加する形をとる方法もあります。前半は全社業績・資金繰り・重要課題を経営層で議論し、後半は営業、製造、購買、人事といったテーマごとに関係者を加えていく。中小・中堅企業では、こうした現実的な運用のほうが長続きしやすい場合もあります。

経営会議に必要な時間配分

経営会議が報告会になってしまう原因のひとつが、時間配分です。

前半で各部門の報告に時間を使い切り、肝心の意思決定が最後に押し込まれる。その結果、いちばん大事な論点が、十分に議論されないまま終わってしまいます。

経営会議では、時間配分をあらかじめ決めておきたいものです。

たとえば、月1回・90分の会議であれば、次のような構成が考えられます。

時間内容目的
10分全社サマリー確認売上・利益・資金・主要KPIの全体像を把握する
20分予実差異の重要論点差異の原因と対応策を確認する
15分資金繰り・借入・投資判断資金不足リスクと投資余力を確認する
20分重点課題の意思決定価格、採用、投資、不採算対応などを決める
15分前回決定事項のフォロー実行状況と未完了理由を確認する
10分次回までの決定事項整理担当者・期限・確認指標を確定する

この配分はあくまで一例です。会社の規模や課題に応じて変えるべきですが、要は、報告よりも判断に時間を使うこと。これに尽きます。

経営会議で扱うべきでないこと

経営会議に何でも持ち込むと、会議はどんどん重くなります。

そこに上げるべきでないものも、あります。

  • 単なる作業報告
  • 担当者間で解決できる業務連絡
  • 細かな経費精算の確認
  • すでに決まっている事項の再説明
  • 数字に基づかない感情的な不満
  • 人事評価の細かな個別論
  • 会議中に初めて目にする大量の明細資料

もちろん、細部が重要になる場面もあります。それでも、経営会議は全社の重要判断をする場です。細かな論点は、事前確認、部門会議、個別ミーティングへと振り分けるべきでしょう。

経営会議に上げる議題は、次のいずれかに当てはまるものに絞ります。

  • 全社利益に影響する
  • 資金繰りに影響する
  • 重要な顧客・取引先に影響する
  • 人員計画・採用に影響する
  • 投資判断に影響する
  • 金融機関への説明に影響する
  • 内部管理やリスクに影響する
  • 経営者の意思決定が必要である

会議の質を上げるには、議題を絞ること。ここが出発点になります。

月次決算の精度が低いと、経営会議は強くならない

経営会議を数字で意思決定する場にするには、月次決算の精度が欠かせません。

月次決算の数字が遅い、粗い、比較できない、説明できない。こうした状態では、会議はたちまち感覚論に逆戻りしてしまいます。

月次決算を活かす土台になるのは、経営者自身が会計を読め、話せ、使え、見通せる状態に近づいていくことです。経営者が最新の業績を見たい、活用したいと思っていても、月次決算書の作り方が分からない、読みこなせないという壁が立ちはだかる。だからこそ、継続的な支援のもとで月次決算の体制を整えていくことが大切になります。

月次決算の精度を高めるには、次の点を確認します。

  • 売上計上のタイミングが継続しているか
  • 仕入・外注費が月次で適切に反映されているか
  • 未払費用や前払費用を、必要に応じて月次で反映しているか
  • 在庫を概算でも確認しているか
  • 減価償却費を月次で配分しているか
  • 部門別・商品別の入力ルールが整っているか
  • 役員貸付金、仮払金、未収入金などが放置されていないか
  • 資金繰り表と試算表の整合性を確認しているか

完璧な月次決算を求めすぎると、肝心の会議に間に合わなくなります。かといって、粗すぎる数字では意思決定に使えません。

中小・中堅企業では、「早く出すための概算」と「判断を誤らないために必要な精度」。この両者のバランスをどこで取るかを決めることが重要です。

経理・財務部門の役割は、数字を作るだけではない

経営会議を変えていくうえで、経理・財務部門が担う役割は小さくありません。

経理は、仕訳の入力や支払処理だけを行う部門ではありません。企業の戦略を数字に落とし込むには、売上・利益・資金・外部説明に耐えうる現実的な数字が要ります。経理には、計算をこなすだけでなく、会社全体に数字の視点を浸透させていく役割があります。

予算管理においても同じです。予算部門には、戦略的な視点を交えた編成方針の作成支援、必要な情報を正確かつタイムリーに提供すること、経営会議への示唆に富んだ報告資料の用意、そして各部門では気づきにくい洞察の提示が求められます。

経理・財務部門は、ただ「数字を締める」だけでなく、次のような役割を担います。

  • 月次数字を、早く、正しく、比較可能な形で作る
  • 予実差異の重要論点を整理する
  • 部門別採算やKPIを、経営会議で使える形へ整える
  • 資金繰りの見通しを更新する
  • 経営者が判断すべき事項を、資料の上で明確にする
  • 会議後の決定事項と数字の変化を追跡する
  • 金融機関や外部関係者に説明できる資料を整える

経理・財務部門が「処理部門」から「判断支援部門」へと変わったとき、経営会議の質もまた変わります。

金融機関への説明にも経営会議の質が表れる

月次数字、予実差異、資金繰り、改善策。これらを経営会議で整理できている会社は、金融機関への説明も、おのずとしやすくなります。

金融機関は、利益の出ている月次決算だけを求めているわけではありません。業績が良くても悪くても、月次の業績をタイムリーに共有し、その原因と解決策を実践している会社。こうした会社にこそ、継続的で前向きな支援が期待しやすくなります。

経営計画を作っている場合には、月次の目標利益計画と行動計画の実績を金融機関に報告し、計画を下回っているなら改善策もあわせて伝える。私は、これが金融機関から評価されやすいポイントだと考えています。

金融機関対応は、お願いをする場ではありません。会社の現状、課題、改善策、資金の見通しを説明する場です。

そのためには、経営会議で次の内容を整理しておく必要があります。

  • 直近月次の業績
  • 計画との差異
  • 差異の原因
  • 改善策
  • 改善策の進捗
  • 資金繰り見通し
  • 借入返済の状況
  • 設備投資や採用の計画
  • 経営者としての判断

数字に基づいて意思決定ができている会社は、外部への説明にも強くなります。

経営会議を変えるための実務ステップ

経営会議を変えるといっても、最初から高度な会議体を作る必要はありません。

中小・中堅企業では、まず次の順番で整えていくのが現実的です。

1. 会議の目的を決める

何のために経営会議を開くのかを、はっきりさせます。

月次業績の確認、予実差異の分析、資金繰りの確認、投資判断、不採算対応、重点施策の進捗確認、金融機関説明の準備、部門間の調整。

目的が曖昧なままでは、議題も資料も散らかってしまいます。

2. 毎月の開催日を固定する

月次決算が出たあと、できるだけ早いタイミングで開きます。

会議日が固定されると、月次の締め、資料作成、部門報告、資金繰りの更新といったスケジュールも整いやすくなります。

3. 会議資料を絞る

最初は、次の5点に絞ることをおすすめします。

  • 全社月次サマリー
  • 予実差異分析
  • 資金繰り表
  • KPI・重点施策の進捗表
  • 課題管理表

これだけでも、経営判断に必要な骨格は作れます。

4. 決定事項を必ず残す

会議の最後に、決定事項を確認します。

何を決めたか。誰が担当するか。いつまでに行うか。次回どの数字で確認するか。

この4点が残っていなければ、その会議はまだ終わっていない、と考えるべきです。

5. 翌月に必ずフォローする

前回の決定事項を、会議の冒頭で確認します。

これを繰り返すうちに、会議は実行管理の仕組みへと育っていきます。

経営会議の質を高めるチェックリスト

自社の経営会議を見直すときは、次の項目を確認してみてください。

チェック項目確認すべき内容
月次数字会議時点で前月の試算表・部門別損益・資金繰りが確認できるか
予実差異重要な差異について原因と対応策が整理されているか
資金繰り今後3か月から6か月の資金見通しを確認しているか
KPI売上・利益に至る先行指標を確認しているか
会議資料見た瞬間に重要論点が分かる資料になっているか
出席者意思決定できる人、実行責任を持つ人が参加しているか
議題報告ではなく判断が必要なテーマに絞られているか
決定事項担当者、期限、確認指標が明確になっているか
フォローアップ前回決定事項の進捗を翌月確認しているか
外部説明金融機関等に説明できる内容として整理されているか

このチェックリストの多くで課題が見つかる場合は、経営会議だけでなく、月次決算、予算管理、資金繰り、部門別採算、経理体制までさかのぼって見直す必要があります。

専門家に相談すべき場面

経営会議の改善は、自社だけでも始められます。

ただ、次のような状態であれば、会計・税務・財務の専門家を交えて整理したほうがよい場面だと言えます。

  • 月次決算が遅く、会議に間に合わない
  • 試算表はあるが、経営者が判断に使えていない
  • 予実差異の原因分析ができていない
  • 部門別採算がなく、どの部門が利益を生んでいるか分からない
  • 資金繰り表がなく、投資や借入の判断が後手に回っている
  • 会議資料が多すぎて、論点が見えない
  • 決定事項が実行されず、同じ課題が毎月繰り返されている
  • 金融機関に月次実績や改善策を説明できていない
  • 経理担当者に数字づくりが属人化している
  • 後継者、幹部、外部関係者に説明できる管理体制を整えたい

専門家の役割は、経営判断を代行することではありません。

経営者がご自身で判断できるように、月次数字の信頼性、予実差異の論点、資金繰りの見通し、部門別採算、会議資料、決定事項の管理を整えていくこと。そこにあります。

経営会議を変えることは、会社の意思決定の仕組みそのものを変えることにほかなりません。

まとめ|経営会議は、会社の数字を次の行動に変える場である

経営会議は、単なる報告会ではありません。

月次数字を確認する。予実差異を分析する。資金繰りを見通す。KPIを確認する。課題を整理する。意思決定を行う。担当者と期限を決める。そして翌月、実行状況を確認する。

この流れが回り始めると、会社の経営管理は大きく変わっていきます。

数字は、申告や報告のための結果ではありません。経営者が次の一手を判断するための材料です。

経営会議が数字で意思決定する場になれば、売上拡大、値上げ、採用、設備投資、借入、不採算事業の見直し、承継、M&A。こうした重要な判断も、感覚だけに頼らず、数字と事実に基づいて進めやすくなります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、月次決算、予実管理、資金繰り、部門別採算、経営会議資料、金融機関説明を切り離さず、経営判断に使える数字づくりを大切にしています。

経営会議を開いてはいるものの、報告だけで終わってしまっている。月次数字はあるのに、次の行動に結びついていない。資金繰りや投資判断を、これ以上後手に回したくない。金融機関や後継者、幹部に説明できる管理資料を整えたい。

そうした課題をお持ちの場合は、まず現在の月次資料、予算表、資金繰り表、経営会議資料をもとに、どこを整えれば意思決定に使える状態になるのかを確認することから始めるとよいでしょう。必要に応じて、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

振り返り

論点重要な考え方
経営会議の目的報告ではなく、月次数字をもとに次の判断を決める
会議資料分厚い資料ではなく、論点が見える資料にする
月次レビュー売上、粗利、利益、部門別採算、資金、KPIを確認する
予実確認達成・未達だけでなく、経営仮説と現実のズレを検証する
資金繰り損益とは別に、入出金、借入返済、税金、投資支出を確認する
課題管理やることリストではなく、経営判断と実行状況の履歴として残す
意思決定事項担当者、期限、確認指標まで決めて初めて決定事項になる
フォローアップ前回決定事項を翌月確認し、実行管理の仕組みにする
出席者情報を持つ人、意思決定できる人、実行責任を持つ人に絞る
時間配分報告よりも判断に時間を使う
月次決算の精度早さと、判断に耐える正確性のバランスを取る
経理・財務の役割数字を作るだけでなく、経営判断に使える形へ整理する
金融機関対応月次実績、差異、改善策、資金見通しを説明できる状態にする
専門家活用経営判断を代行させるのではなく、判断の前提となる数字と論点を整える
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次