N-3・N-2期の準備|課題抽出と管理体制整備の起点

IPO準備において、最も重要な時期はいつかと問われれば、私は申請期ではないと考えています。

会社の上場準備が本当に前へ進むかどうかは、N-3期からN-2期にかけて、いかに早く課題を洗い出し、管理体制の整備に着手できるかで大きく変わってきます。

申請期、つまりN期に入ってから、会計方針、月次決算、内部統制、労務リスク、資本政策、取締役会運営、関連当事者取引、監査法人対応を一気に整えようとしても、時間はまず足りません。上場申請の時点では、上場会社としての管理体制がすでに一定程度整い、実際に運用されていることまで説明できなければならないからです。

IPO準備監査の実務を見ても、直前々期・直前期・申請期という流れのなかで、基本的な管理体制の整備完了のターゲットは直前々期末に置かれます。直前期には、上場会社と同レベルの管理体制で一定期間運用した実績を示すことが想定されています。

東京証券取引所も、上場準備に必要な期間として、上場申請までに申請直前2期間分の監査証明が必要になる点に留意すべきだと整理しています。

出典:日本取引所グループ|上場スケジュール

N-3・N-2期は、上場申請書類を作る時期ではありません。

会社の現状を直視し、どの論点が上場準備のボトルネックになるのかを見極め、上場会社水準へ近づけるための土台を作る。そういう時期です。

この記事では、N-3・N-2期に何を確認し、どの順番で整備し、どのような状態を目指すべきかを整理していきます。

目次

N-3・N-2期は「準備の準備」ではなく、IPOプロジェクトの起点である

IPOを考え始めた会社では、まず監査法人を探す、主幹事証券会社と接点を持つ、上場市場を調べる、といった行動から入ることが少なくありません。

もちろん、それらも大切です。

ただ、それ以上に重要なのは、自社が資本市場に対して何を説明でき、何を説明できないのかを早い段階で把握することだと考えています。

IPOは、単に証券取引所へ上場申請を行う手続ではありません。未上場会社の株式を不特定多数の投資家へ開放し、株式市場で自由に売買できるようにすることです。これによって会社はプライベートカンパニーからパブリックカンパニーへと移り変わり、一般投資家から投資を受けるにふさわしい会社であるかどうかが問われます。

その意味で、N-3・N-2期の準備は、単なる作業準備にとどまりません。

自社は投資家から見て魅力ある会社なのか。 成長ストーリーを数字で説明できるのか。 監査法人が監査できる決算体制になっているのか。 主幹事証券会社に対して事業・リスク・管理体制を説明できるのか。 上場後も法定開示・適時開示・内部統制に耐えられるのか。

こうした問いを、会社自身が初めて正面から受け止めるフェーズなのです。

IPOの本質は、投資家に対する自社株式のマーケティングでもあります。内部管理体制やドキュメンテーションは、たしかにIPOの必要条件です。しかし、それだけで十分条件になるわけではありません。投資家から見て魅力ある会社になっているか――この視点が抜け落ちると、準備はいつのまにか審査対応の作業へと矮小化されてしまいます。

まず理解すべきN-3期とN-2期の違い

N-3期とN-2期は、ひとまとめに「初期準備」と呼ばれることもありますが、実務上の役割は異なります。

N-3期は、IPOを本格的に進める前に、自社の現在地を把握し、上場準備プロジェクトとして動かすかどうかを判断する時期です。IPOの目的、成長戦略、資本政策、監査法人・主幹事証券会社との接点、ショートレビュー、初期課題の把握が中心になります。

一方のN-2期は、洗い出された課題をもとに、監査に耐える決算体制、会計方針、月次決算、内部統制、規程、ガバナンス、リスク管理、資本政策を整備する時期です。N-1期に「上場会社水準で運用する」ための土台づくりが軸になります。

整理すると、次のようになります。

時期主な目的中心となる対応
N-3期以前IPO検討と現状把握IPO目的の整理、成長戦略の確認、監査法人・主幹事証券会社との初期接点、ショートレビュー準備
N-3期課題抽出と準備方針の決定ショートレビュー、課題管理表、資本政策の棚卸し、管理体制の不足把握、社内プロジェクト化
N-2期管理体制の整備会計方針、月次決算、監査対応、内部統制、規程、労務・法務・税務、ガバナンスの整備
N-1期運用実績の蓄積整備した体制を上場会社水準で運用し、監査・審査に説明できる状態へ移行
N期申請・審査・ファイナンス上場申請、主幹事審査、取引所審査、開示書類、上場時ファイナンス

N-3期は「どこに問題があるかを知る時期」。 N-2期は「問題を解消し、上場会社水準の仕組みに変える時期」。

この違いを曖昧にしたまま進めると、ショートレビューは受けたものの指摘事項が放置され、N-1期に入ってから「実はまだ運用できていない」という状態に陥りがちです。

N-3期で最初に整理すべきこと

N-3期で最初に行うべきは、IPO準備のスケジュールを作ることではありません。

まず取り組むべきは、自社がなぜIPOを目指すのかを整理することです。

IPOによって成長資金を調達したいのか。 信用力を高めたいのか。 採用や組織づくりを強化したいのか。 既存株主のエグジットを見据えているのか。 上場後のM&Aや資本市場の活用を想定しているのか。 M&AやPEファンドの活用ではなく、あえてIPOを選ぶ理由は何か。

ここの整理が不十分なまま準備を始めると、その後の論点がすべてブレていきます。

たとえば、成長資金の調達を目的とするなら、事業計画、資金使途、投資計画、KPI、企業価値評価が重要になります。既存株主のエグジットを意識するなら、売出し、株主構成、ロックアップ、上場後の流動性、支配権の整理が論点の中心に来ます。信用力や組織変革を重視するなら、ガバナンス、内部統制、開示体制、経営管理体制の整備が前面に出てきます。

IPOの目的は、単なる理念ではありません。

その後の資本政策、事業計画、監査対応、管理体制整備の優先順位を決める、いわば判断軸そのものなのです。

ショートレビューは「指摘事項リスト」ではなく、IPO準備の設計図である

N-3期からN-2期にかけて重要になるのが、監査法人等によるショートレビューです。

ショートレビューでは、会社の事業、会計、決算体制、内部統制、ガバナンス、労務、法務、税務、資本政策、関連当事者取引など、上場準備上の課題が幅広く確認されます。

ただ、ショートレビューを受ける目的は、単に「問題点を指摘してもらうこと」ではありません。

本当に大切なのは、その指摘事項をIPO準備プロジェクトの課題管理へ落とし込むことです。

ショートレビューで指摘された事項は、次のように分類して管理していく必要があります。

分類軸確認すべき内容
重要性上場スケジュールに影響する重大論点か
緊急性N-2期中に着手しなければ間に合わないか
関連領域会計、税務、労務、法務、内部統制、資本政策、ガバナンスのどこに関係するか
対応主体経理、CFO、経営企画、法務、人事、内部監査、外部専門家の誰が対応するか
期限N-2期末までに整備すべきか、N-1期で運用すべきか
証跡対応したことをどの資料・記録で説明できるか
未対応リスク放置した場合に監査・審査・開示・投資家説明へどう影響するか

指摘事項が多いこと自体は、問題ではありません。むしろ、N-3・N-2期に多くの課題が見つかるのは自然なことです。

問題なのは、課題の重要度を整理せず、対応期限も決めず、誰が責任を持つのかも曖昧なまま、時間だけが過ぎていくことです。

IPO準備では、「課題がある会社」よりも、「課題を把握していない会社」「課題を管理できていない会社」のほうが、はるかに危ういといえます。

期首残高の検証を軽く見てはいけない

N-2期の監査対応で特に重要になるのが、期首残高です。

上場申請では、通常、申請直前2期間分について監査法人による監査証明が必要となります。日本公認会計士協会が公表しているIPO事前準備ガイドブックでも、申請期の直前2期間について、監査法人と金融商品取引法に準ずる監査、いわゆる準金商法監査契約を締結し、会計監査を受ける必要があるとされています。

出典:日本公認会計士協会|株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック~会計監査を受ける前に準備しておきたいポイント~

このとき、N-2期の期首残高が確認できなければ、N-2期の財務諸表監査にも影響が及びます。

期首残高とは、単に前期末の貸借対照表残高を引き継ぐという意味ではありません。売掛金、棚卸資産、固定資産、借入金、未払金、引当金、税効果、資本勘定などについて、残高の実在性、網羅性、評価、権利義務、会計処理の妥当性を説明できる状態が求められます。

たとえば、次のような状態では、監査対応が難しくなります。

領域問題になりやすい状態
売掛金滞留債権の評価、回収可能性、残高確認の証跡が不十分
棚卸資産実地棚卸の記録、評価減、原価計算、滞留在庫の整理が不十分
固定資産資産台帳、現物確認、減損兆候、除却漏れが整理されていない
引当金賞与、退職給付、返品、ポイント、訴訟等の見積り根拠が不明確
税効果回収可能性の判断、将来課税所得の見積り、スケジューリングが不十分
資本勘定増資、SO、新株予約権、種類株式、自己株式の履歴が整理されていない

N-2期に入ってから過去の資料を探しても、証憑が残っていない、当時の担当者がすでに退職している、判断の根拠が分からない――こうしたことは、決して珍しくありません。

だからこそ、N-3期の段階で、期首残高に影響する論点を早めに棚卸ししておく必要があるのです。

N-2期末までに「基本的な管理体制」を整備するとはどういうことか

N-2期末までに基本的な管理体制を整備する、と聞くと、規程やマニュアルを作ることをイメージされるかもしれません。

しかし、それだけでは十分とはいえません。

管理体制の整備とは、会社の業務が、属人的な判断や場当たり的な対応ではなく、一定のルールと証跡に基づいて運用される状態を作ることです。

具体的には、次のような状態を目指していきます。

領域N-2期末までに目指す状態
月次決算毎月、一定の期日までに、同じ前提で数字が締まる
予実管理予算と実績の差異を分析し、経営会議で議論できる
会計方針重要な会計処理や見積りの方針が文書化されている
監査対応主要勘定科目について証憑、リードシート、分析資料が整備されている
業務フロー販売、購買、在庫、固定資産、経費、給与、資金、決算の流れが可視化されている
規程・権限取締役会、稟議、職務分掌、承認権限、経理処理のルールが整っている
ガバナンス取締役会、監査役、内部監査、関連当事者管理が実効的に機能し始めている
リスク管理労務、法務、税務、契約、反社、個人情報、不正リスクが棚卸しされている
資本政策株主構成、SO、優先株式、新株予約権、投資契約の履歴と影響が説明できる

ここで大切なのは、「作成」ではなく「運用できる状態」に近づけることです。

規程を作っても、実際の承認フローが規程と食い違っていれば、管理体制としては脆弱です。業務フロー図を作っても、証憑が残らず、誰が承認したのか分からなければ、監査や審査には耐えられません。月次決算資料を作っても、毎月作成の前提が変わり、後から大きく修正されるようでは、経営判断にも投資家説明にも使えません。

N-2期は、会社の仕組みを「見せるために作る時期」ではなく、「実際に使える形へ変える時期」なのです。

月次決算はN-2期整備の中心に置く

N-2期の管理体制整備で中心に据えるべきものは、月次決算です。

月次決算は、毎月の営業成績や財政状態を明らかにし、経営管理に有効な情報を提供するための仕組みです。法令上の年次決算だけでは、年度途中の業績や資金の状況を把握するには遅すぎます。月次決算を毎月実施することで、経営者は生きた数字を把握でき、予算対比や銀行対応、決算見通しにも活用できるようになります。

IPO準備において、月次決算が遅い会社は、さまざまな面で苦しくなります。

事業計画の進捗を説明できない。 業績予想の精度を検証できない。 資金繰りが後手に回る。 監査法人へ資料を出すのが遅れる。 主幹事証券会社に予実差異を説明できない。 開示体制の準備が進まない。

月次決算は、経理部門だけの作業ではありません。営業、購買、人事、経営企画、現場部門が、売上、仕入、在庫、経費、人件費、契約、投資、資金の情報を、適時に経理へ渡す必要があります。

N-2期に月次決算を整備するときは、単に締め日を早めるだけでは足りません。

確認すべきポイントは、次のとおりです。

確認項目判断の視点
締めスケジュールいつまでに誰が何を完了するか明確か
会計処理毎月同じ方針で処理されているか
概算・見積り未払費用、引当金、減価償却、棚卸、売上計上の前提が整理されているか
証憑請求書、契約書、稟議、納品書、検収資料が紐づいているか
分析前月比、前年同月比、予算比、KPIとの関係が説明できるか
修正管理後から大きな修正が入る原因を把握しているか
経営利用経営会議で意思決定に使われているか

IPO準備会社にとって、月次決算は「試算表を早く出すこと」ではありません。成長戦略を検証し、監査・審査・投資家説明に耐える数字を作るための仕組みなのです。

会計方針と会計上の見積りを早期に整理する

N-2期では、会計方針と会計上の見積りを、早めに整理しておく必要があります。

未上場会社では、税務申告や資金繰りを中心に会計処理を進めてきた結果、上場会社として求められる会計基準や開示の視点が十分に反映されていないことがあります。

特に、次のような論点は早期に検討しておきたいところです。

会計論点確認すべき内容
収益認識契約、履行義務、検収、代理人取引、返品、値引き、ポイント等
棚卸資産原価計算、評価減、滞留在庫、実地棚卸
固定資産資産計上基準、減価償却、除却、減損兆候
引当金賞与、退職給付、返品、ポイント、訴訟、保証等
税効果繰延税金資産の回収可能性、将来課税所得、スケジューリング
連結範囲子会社、関連会社、実質支配、重要性
関連当事者役員、株主、関係会社との取引、貸付、保証、資産譲渡
株式報酬SO、新株予約権、株式報酬の会計・税務・開示

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」は、顧客との契約から生じる収益について、その会計処理と開示を定めたものです。収益認識は、売上の計上時期、KPI、事業計画、監査対応に影響するため、IPO準備会社でも早期の検討が欠かせません。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準

また、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」では、会計上の見積りの開示が定められています。会計上の見積りは将来の不確実性を伴うため、財務諸表の利用者が、見積りの内容やその不確実性を理解できるようにすることが重要になります。

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第31号 会計上の見積りの開示に関する会計基準

N-2期に会計方針を整理する意味は、監査法人に合わせるためだけではありません。

投資家に説明する業績や事業計画の前提を、会社自身が腹落ちして理解するためでもあります。

売上の計上タイミングが変われば、成長率やKPIの見え方が変わります。引当金や減損の判断が変われば、利益水準が動きます。税効果の判断が変われば、純資産や当期純利益に影響が及びます。

会計方針は、いわば数字の作り方です。

その作り方が整理されていない会社は、成長ストーリーも説明しにくくなってしまうのです。

決算早期化は「速さ」ではなく、上場後の開示に耐える仕組みで考える

N-2期では、決算早期化も重要な論点になります。

ただし、決算早期化とは、単に早く締めることではありません。上場後は、決算短信、有価証券報告書、適時開示、監査対応、取締役会承認、IR説明が連動して動きます。だからこそ決算早期化は、最終成果物から逆算して業務を組み立てる必要があります。

決算早期化を実現している会社では、経理担当者の全員が、有価証券報告書や決算短信といった最終成果物を把握し、そこから逆算して決算・開示業務を組み立てています。逆に、決算早期化ができない会社では、単体決算、連結決算、開示業務が縦割りになり、手待ち、手戻り、重複が発生しやすくなります。

N-2期の段階では、上場会社とまったく同じ開示スケジュールで完璧に回すことまでは、難しい場合もあります。

それでも、少なくとも次の状態は目指したいところです。

項目N-2期で整えるべき視点
決算スケジュール誰が、いつ、何を締めるか明確にする
決算資料リードシート、残高明細、分析資料を標準化する
役割分担単体、連結、税務、開示、監査対応の分担を整理する
ボトルネック毎月遅れる原因を特定し、業務フローから見直す
証跡監査法人が確認できる資料の粒度を整える
最終成果物監査報告、決算短信、有報、Iの部を見据えた資料設計にする

決算早期化は、経理部門だけで完結するものではありません。営業部門の検収、購買部門の請求書、経費精算、勤怠締め、在庫情報、契約情報が遅れれば、決算もそのぶん遅れます。

N-2期では、決算早期化を経理改善としてではなく、会社全体の業務改善として捉える必要があります。

内部統制と業務フローは「典型的な流れ」から逆算する

N-2期の内部統制整備では、業務フローの可視化が欠かせません。

内部統制とは、規程やチェックリストを作ることではありません。会社の業務に潜むリスクを把握し、そのリスクを低減する仕組みを業務のなかに組み込むことです。

業務フローを理解するのは、会社に共通する業務上の課題やリスク、そしてそれを低減する内部統制を把握するためです。現実には、あるべき業務フローを知らずにリスクを特定するのは難しく、典型的な業務フローを踏まえたうえで、自社に必要な統制を整備していくのが有効です。

N-2期で確認すべき主な業務フローは、次のとおりです。

業務領域主な確認ポイント
販売・売上受注、契約、出荷、納品、検収、請求、入金、売上計上
購買・仕入発注、納品、検収、請求、支払、仕入計上
在庫入出庫、実地棚卸、評価、滞留、廃棄、原価計算
固定資産稟議、取得、検収、台帳登録、減価償却、除却、減損
経費申請、承認、証憑、支払、経費計上
人件費勤怠、給与、賞与、社会保険、退職給付、労務リスク
資金入出金、借入、返済、資金繰り、銀行対応、承認
決算月次締め、会計処理、残高確認、分析、監査資料
ITアクセス権限、マスタ変更、ログ、システム連携、委託先管理

業務フローを作る目的は、見栄えのよい図を作ることではありません。

どこにリスクがあるか。 誰が承認しているか。 証憑は残っているか。 職務分掌は効いているか。 会計処理と業務実態が一致しているか。 不正や誤謬が起きたときに発見できるか。

これらを確認するためにこそ、業務フローを描くのです。

特に成長企業では、現場のスピードを優先するあまり、営業担当者が契約から請求、入金確認までを一人で抱える、経理担当者が支払データを作成し承認も実質的に行う、システム管理者がマスタ変更と承認を兼ねる――そうした状態が生じやすくなります。

N-2期では、業務が回っているかどうかではなく、上場会社として説明できる統制が組み込まれているかどうかを確認する必要があります。

J-SOXは上場後の制度だが、N-2期から準備する

内部統制報告制度、いわゆるJ-SOXは、上場後に本格適用される制度です。

しかし、N-2期の段階から意識しておかなければ、上場後に対応できる体制を作ることはできません。

現行の改訂基準・改訂実施基準は、2024年4月1日以後に開始する事業年度の財務報告に係る内部統制の評価および監査から適用されています。内部統制の目的は、業務の有効性および効率性、報告の信頼性、法令等の遵守、資産の保全とされ、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応という基本的要素から構成されます。

出典:金融庁・企業会計審議会|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について

N-2期でJ-SOXを意識するといっても、いきなり評価文書を完璧に作り込むことではありません。

まずは、財務報告に重要な影響を与える業務プロセスを把握し、リスクと統制を整理して、将来の評価・監査に耐える証跡を残せるようにしておくことです。

特に、次の論点は早期に着手しておきたいところです。

論点N-2期での対応
全社統制経営方針、組織体制、取締役会、規程、倫理・コンプライアンス
決算財務報告プロセス月次・四半期・年次決算、会計上の見積り、開示基礎資料
業務プロセス統制販売、購買、在庫、固定資産、人件費、資金管理
IT統制アクセス権限、変更管理、システム運用、外部委託管理
不備管理指摘事項、改善策、対応期限、再発防止、運用確認
内部監査評価・モニタリングを担う機能の整備

J-SOX対応を後回しにすると、上場後に形式的な文書作成へ追われ、実際の統制が追いつかない状態に陥りやすくなります。

内部統制は、上場後に急いで始めるものではありません。N-2期から業務に組み込み、N-1期で運用し、上場後に評価・監査へとつないでいくものです。

規程整備は「実態」と一致していなければ意味がない

N-2期では、規程整備も進めていく必要があります。

ただし、規程は作ればよいというものではありません。実態と一致していない規程は、かえって会社の管理体制の弱さを露呈させてしまいます。

たとえば、稟議規程では一定金額以上の契約は取締役会承認とされているのに、実際には代表者の口頭決裁で進んでいる。経理規程では証憑確認が必要とされているのに、実際には請求書だけで処理している。職務分掌規程では承認者と実行者が分かれているのに、実務では同じ担当者がすべて処理している。

こうした状態では、規程は内部統制として機能しているとはいえません。

N-2期に整えるべき規程は、会社の規模や事業内容によって異なりますが、主に次のような領域が対象になります。

規程領域主な目的
取締役会規程重要事項の意思決定、審議、承認、記録
職務権限規程誰がどの範囲で承認できるか
稟議規程投資、契約、採用、支出等の意思決定ルート
経理規程会計処理、証憑、決算、支払、資産管理
販売管理規程受注、与信、売上、請求、回収
購買管理規程発注、検収、支払、仕入先管理
固定資産管理規程取得、使用、除却、棚卸、減損兆候
関連当事者管理規程役員・株主・関係会社との取引管理
内部監査規程内部監査の目的、権限、計画、報告
情報管理規程機密情報、個人情報、インサイダー情報の管理
反社会的勢力排除規程取引先確認、契約条項、継続管理

規程整備で大切なのは、「規程を実務に合わせる」ことでも、「実務を規程に合わせる」ことでもありません。

上場会社として必要な統制水準を踏まえつつ、現場が実際に回せる形で、実務と規程を同時に設計し直すことです。

ガバナンスはN-2期から動かし始める

IPO準備では、ガバナンス整備もN-2期から始めておきたいところです。

ガバナンスというと、社外役員の選任や監査役会の設置といった機関設計を思い浮かべるかもしれません。ただ、N-2期でまず重要になるのは、意思決定の質と記録を整えることです。

取締役会で、本当に重要事項が審議されているか。 議案の背景、選択肢、リスク、数字の裏付けが資料化されているか。 利益相反や関連当事者取引が適切に管理されているか。 監査役や内部監査が機能し始めているか。 経営会議と取締役会の役割が整理されているか。

監査役の実務に照らしても、監査役は取締役の職務執行、会計監査、内部統制等を監査する立場にあり、監査報告にサインするためには、その裏付けとなる監査手続や情報収集が欠かせません。

N-2期からガバナンスを整える理由は、N-1期に運用実績を示す必要があるからです。

申請期に入ってから議事録を整え始めても、過去の意思決定がどう行われていたのかまでは説明できません。関連当事者取引や役員貸付、経営者個人との取引、関係会社との取引が残っている場合も、短期間で整理しきれるとは限りません。

ガバナンスとは、書類を整える作業ではなく、経営判断を資本市場に説明できる形へ変える作業なのです。

労務・法務・税務リスクは早期に洗い出す

N-2期では、会計や内部統制だけでなく、労務・法務・税務リスクの洗い出しも必要になります。

IPO準備において、これらのリスクは後回しにされがちです。ところが、いざ主幹事証券会社の審査や取引所審査へ進む段階で、未払残業、社会保険、重要契約、許認可、訴訟、反社会的勢力、個人情報、税務調査、過去申告、資本取引の問題が発覚すると、スケジュール全体に影響が及びます。

労務については、IPOに際し、投資家保護の観点から主幹事証券会社や取引所の審査を通過する必要があり、財務については上場申請の直前2決算期間について監査法人の会計監査を受け、監査証明を得る必要があります。一方で、労務監査そのものは法定義務ではないものの、主幹事証券会社や監査法人が労務監査を受けるよう進言することで、実施されるケースが多いとされています。

法務リスクについても、法務デュー・ディリジェンスはM&Aだけでなく、IPOを含むエクイティ・ファイナンスの引受審査などでも行われる、法的問題点・リスクの調査・分析プロセスです。

N-2期で確認すべき主なリスクは、次のとおりです。

領域確認すべき論点
労務未払残業、労働時間、就業規則、36協定、社会保険、ハラスメント、管理監督者性
法務重要契約、解除条項、競業避止、許認可、知的財産、訴訟、債務保証
税務過去申告、税務調査、役員報酬、交際費、消費税、繰越欠損金、グループ税務
資本取引増資、自己株式、SO、新株予約権、種類株式、株式譲渡、みなし配当
コンプライアンス反社チェック、個人情報、内部通報、情報管理、贈収賄、広告表示
関連当事者役員、株主、親族、関係会社との取引、貸付、保証、資産売買
不正リスク経営者不正、売上前倒し、架空計上、キックバック、証憑改ざん

法務・コンプライアンスのリスクは、法務部門だけの問題ではありません。財務部門、経理部門、人事部門、生産・流通の現場にも存在します。また、コンプライアンスは単なる法令遵守にとどまらず、社会規範や、ステークホルダーの利益・要請に適うことまで含む、広い概念です。

N-2期でリスクを発見すること自体は、決して悪いことではありません。むしろ、早期に発見できれば、是正、影響額の把握、監査法人・主幹事証券会社への説明、再発防止策の設計まで、余裕をもって進められます。

問題は、リスクを見ないまま申請期へ進んでしまうことです。

資本政策は「後で直す」ことが難しい

N-3・N-2期に必ず棚卸ししておきたい論点が、資本政策です。

資本政策とは、株式数や持株比率の管理ではありません。資金調達、支配権、希薄化、創業者利益、投資家権利、役職員インセンティブ、上場後の株主構成に影響する経営判断です。

資本戦略は、会社の成長期や衰退期にその将来を大きく左右する重要な戦略であり、増資、種類株式、新株予約権、自己株式などは、成長期に有効に活用されます。ただ、その選択を誤れば、会社の将来に大きな影響を及ぼしかねません。

N-2期までに確認すべき資本政策の論点は、次のとおりです。

論点確認すべき内容
株主構成創業者、役職員、VC、事業会社、親族、関係会社の持株状況
投資契約拒否権、情報権、役員選任権、上場時終了条項、譲渡制限
種類株式優先配当、残余財産分配、転換条件、取得条項、議決権
新株予約権発行履歴、行使価格、付与対象、行使条件、希薄化
SO税制適格性、付与方針、会計処理、上場時開示、役職員説明
自己株式取得履歴、財源規制、会計・税務、株主構成への影響
株式譲渡過去の譲渡価格、税務、名義株、株主間契約
上場時設計公募、売出し、ロックアップ、安定株主、流通株式

特にスタートアップやベンチャー企業では、創業初期の株主構成、エンジェル投資家、VC投資、優先株式、J-KISS、新株予約権、ストック・オプションが複雑に絡み合います。エクイティファイナンスでは、投資契約、株主間契約、議決権、報告受領権、拒否権、ドラッグアロングといった条件が、将来のIPOやM&Aに影響することがあります。

資本政策は、時間が経てば経つほど、修正が難しくなっていきます。

株主が増える。 契約が複雑になる。 税務影響が出る。 既存株主の同意が必要になる。 上場時に整理すべき権利が増える。

そのため、N-3・N-2期のうちに、少なくとも過去の発行・譲渡・契約・SOの履歴を一覧化し、将来の上場時に問題となりうる点を確認しておく必要があります。

事業計画とKPIは、管理体制整備と同時に進める

N-2期の準備では、どうしても管理体制ばかりに目が向きがちです。

しかし、IPOの本質が投資家に対する自社株式のマーケティングである以上、成長ストーリーと事業計画の整理も同時に進めなければなりません。

事業計画とは、事業を通じて達成したい定性的・定量的な目標に対して、どのような経営資源・事業施策が必要かの仮説を立て、目標達成と仮説検証の方法・手順・指標を定めるものです。

N-2期に事業計画を整える意味は、申請書類に載せる将来計画を作ることではありません。

月次決算、予実管理、KPI、資金繰り、採用計画、投資計画と結びつけ、会社が成長を管理できる状態を作ることにあります。

確認すべき論点は、次のとおりです。

論点確認すべき内容
成長仮説どの市場で、何を強みに、どのように成長するか
売上計画顧客数、単価、継続率、受注率、販売チャネルとの整合性
利益計画粗利率、人件費、広告宣伝費、研究開発費、固定費の前提
投資計画人材、設備、システム、開発、M&A等の投資時期
資金計画調達資金、借入、運転資金、投資資金、資金繰り
KPI事業モデルを説明する主要指標、月次で追える指標
予実管理差異分析、責任部署、改善アクション、経営会議への反映
リスク計画未達要因、感応度、代替施策、開示上の説明

成長計画が管理体制と切り離されている会社は、上場準備で苦しくなります。

事業計画は強気だが、月次決算が遅い。 KPIはあるが、会計数値とつながっていない。 資金使途はあるが、投資計画と予算に落ちていない。 採用計画はあるが、人件費予算や労務体制が追いついていない。

これでは、投資家に説明できる成長ストーリーにはなりません。

N-2期では、事業計画と管理体制を別々に整えるのではなく、両者をしっかり接続させることが重要です。

主幹事証券会社・監査法人とはいつ接点を持つべきか

N-3・N-2期でよく寄せられる悩みが、監査法人や主幹事証券会社とは、いつ接点を持つべきかという問いです。

一般論としては、監査証明の必要期間や準備負荷を踏まえると、早めに接点を持つことが望ましいといえます。ただし、「早く会えばよい」という単純な話でもありません。

監査法人との接点では、次のような事項が重要になります。

監査法人との接点確認すべきこと
監査受嘱可能性監査法人が監査を受けられる会社の状態か
ショートレビュー会計・内部統制・管理体制の課題を把握する
期首残高監査開始時点で必要な残高・証憑を確認する
会計方針重要論点を早期に協議する
決算体制月次・年次決算資料の水準を確認する
内部統制監査上依拠できる統制の整備状況を確認する

日本公認会計士協会は、IPOを目指す企業に質の高い監査が安定的に提供されるための環境整備に取り組んでおり、監査法人によるIPO支援体制、専門的知見やノウハウの蓄積、品質管理向上の取組などを紹介しています。

出典:日本公認会計士協会|監査法人によるIPO支援

また、上場に際して監査人は登録上場会社等監査人である必要がある点も、JPXの新規上場基本情報で説明されています。

出典:日本取引所グループ|上場関係者と役割

一方、主幹事証券会社との接点では、次の事項が重要になります。

主幹事証券会社との接点確認すべきこと
上場可能性の初期感触市場、業績、成長性、管理体制の現状
事業計画成長ストーリー、KPI、収益性、資金使途
資本政策株主構成、VC、SO、優先株式、売出し
内部管理体制規程、取締役会、内部統制、内部監査
リスク労務、法務、税務、関連当事者、反社
スケジュールN-2、N-1、申請期の現実的な進め方

監査法人は会計監査の視点から、主幹事証券会社は上場適格性や株式販売の視点から会社を見ます。両者の視点は重なり合いますが、同じではありません。

ですから、N-3・N-2期では、監査法人・主幹事証券会社・会計税務の専門家・弁護士・社会保険労務士の役割を整理し、課題ごとに誰と協議すべきかを切り分けておくことが重要です。

課題管理表はIPO準備の中核資料になる

N-3・N-2期の実務で最も重要な管理資料の一つが、課題管理表です。

IPO準備では、会計、監査、内部統制、労務、法務、税務、資本政策、ガバナンス、事業計画、システム、開示体制など、数多くの論点が同時に立ち上がります。

これらを、経営者の頭の中や、各担当者のメモだけで管理しきることはできません。

課題管理表には、少なくとも次の項目を入れておきたいところです。

項目内容
課題番号論点を一意に管理する番号
領域会計、監査、内部統制、労務、法務、税務、資本政策等
課題内容何が問題なのか
影響監査、審査、開示、事業計画、資本政策への影響
重要度重大・中程度・軽微など
対応方針是正、追加調査、文書化、専門家確認など
担当者社内責任者と外部専門家
期限いつまでに対応するか
ステータス未着手、対応中、完了、保留
証跡対応完了を示す資料・議事録・契約書・規程等
残課題完了後に残る論点

ここで大切なのは、課題管理表を作ることそのものではなく、経営会議やIPOプロジェクト会議で継続的に更新していくことです。

課題管理表が更新されない会社では、指摘事項が放置されます。担当者が変わると経緯が分からなくなります。監査法人、主幹事証券会社、外部専門家への説明も、その場しのぎになりがちです。

反対に、課題管理表が機能している会社では、対応の優先順位が見えてきます。経営者が判断すべき論点と、実務担当者が処理すべき論点を切り分けられます。上場スケジュールへの影響も、早めに把握できます。

IPO準備は、課題が発生しないプロジェクトではありません。

課題を管理し、説明し、解消していくプロジェクトなのです。

N-2期で避けたい5つの誤解

N-2期の準備では、次のような誤解がよく見られます。

1. 監査法人が指摘してから対応すればよい

監査法人は重要な関係者ですが、会社の管理体制を代わりに作ってくれるわけではありません。

監査法人から指摘されてから対応する、という姿勢では、どうしても対応が後手に回ります。特に、期首残高、会計方針、内部統制、月次決算、税効果、収益認識などは、早い段階で会社側が論点を整理しておく必要があります。

2. 規程を作れば管理体制は整ったといえる

規程は必要ですが、規程だけでは不十分です。

実際に承認されているか、議事録が残っているか、証憑が保存されているか、運用違反がないか、改善されているか――そこまでが問われます。

3. 月次決算は経理部門だけの問題である

月次決算は、会社全体の情報の集約です。

営業、購買、人事、現場部門、経営企画、システム部門が適時に情報を渡さなければ、経理だけで早期化を実現することはできません。

4. 資本政策は上場直前に調整できる

資本政策は、やり直しが難しい論点です。

既存株主、投資契約、税務、SO、優先株式、支配権、売出し、流通株式に影響するため、N-3・N-2期から整理しておく必要があります。

5. 労務・法務・税務は問題が出たら対応すればよい

労務・法務・税務のリスクは、発見が遅れるほど対応が難しくなります。

未払残業、重要契約、許認可、税務処理、関連当事者取引、反社チェック、不正リスクは、申請期に発覚するとスケジュールへ直接影響します。

N-2期末までの到達イメージ

N-2期末の時点で、すべてが完璧である必要はありません。

ただ、N-1期に上場会社水準の運用実績を積むためには、少なくとも次の状態を目指したいところです。

領域N-2期末までの到達イメージ
IPO目的上場の目的、成長戦略、資金使途の方向性が整理されている
事業計画売上、利益、KPI、投資、人員、資金繰りの前提が整理されている
月次決算毎月一定期日までに締まり、予実差異を説明できる
会計方針重要な会計処理・見積りが文書化され、監査法人と協議できる
期首残高主要残高の証憑・明細・評価が確認可能な状態にある
決算資料リードシート、残高明細、分析資料が標準化されている
内部統制主要業務フロー、リスク、統制、証跡が整理されている
規程主要規程が整備され、実務との不一致が把握されている
ガバナンス取締役会、監査役、内部監査、関連当事者管理が動き始めている
労務・法務・税務主要リスクが棚卸しされ、是正方針が決まっている
資本政策株主構成、SO、投資契約、優先株式等の履歴と影響が整理されている
課題管理課題管理表が更新され、担当・期限・証跡が管理されている

この水準まで到達できていれば、N-1期で運用実績を積む準備は整います。

反対に、N-2期末の時点で、課題が見えていない、月次決算が遅い、会計方針が未整理、規程が実態と合っていない、資本政策の履歴が分からない、労務・法務リスクが未調査――こうした状態のままでは、N-1期に安定運用へ移ることは難しくなります。

N-3・N-2期は、耳の痛い論点を早く見つける時期

IPO準備を進めていくと、会社にとって耳の痛い論点が出てきます。

月次決算が遅い。 売上計上の根拠が弱い。 予実管理が機能していない。 資本政策が複雑になっている。 SOの設計に不備がある。 重要契約が整理されていない。 未払残業の可能性がある。 関連当事者取引が残っている。 取締役会が実質的に機能していない。 内部監査が形だけになっている。

それでも、これらがN-3・N-2期で見つかるのであれば、まだ対応の余地があります。

IPO準備で本当に避けるべきなのは、問題があること、ではありません。問題があるのに見ていないこと、見えているのに先送りすること、そして先送りした結果として、申請期に説明不能になってしまうことです。

N-3・N-2期の準備は、会社の弱点を早く見つけるためのものです。

弱点を見つけることは、上場に近づくためだけでなく、会社を強くするための第一歩でもあります。

N-3・N-2期の準備に不安がある場合は、早めに論点を整理する

N-3・N-2期は、IPO準備のなかでも特に判断の難しい時期です。

上場を目指すべきか。 監査法人といつ接点を持つべきか。 主幹事証券会社に何を相談すべきか。 ショートレビューの前に何を整えるべきか。 月次決算、会計方針、内部統制、資本政策のどれを優先すべきか。 労務・法務・税務リスクをどこまで調査すべきか。

これらは、チェックリストだけでは判断できません。会社の事業内容、成長戦略、資本政策、管理体制、監査対応、関係者の状況によって、優先順位は変わってくるからです。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、IPOを単なる上場手続としてではなく、成長戦略、資本政策、会計・税務、内部管理体制、開示責任をつなぐ経営テーマとして整理しています。

「IPOを検討しているが、N-3・N-2期で何から始めるべきか分からない」 「ショートレビューを受ける前に、自社の課題を整理しておきたい」 「月次決算、会計方針、資本政策、内部統制の優先順位を確認したい」 「監査法人や主幹事証券会社に相談する前に、論点を整理しておきたい」

このような段階であっても、早めに現在地を把握しておくことで、その後の準備の進め方は大きく変わってきます。

N-3・N-2期の準備状況や、自社のIPO準備上の課題を整理したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

この記事の振り返り

重要論点押さえるべきポイント
N-3期の役割IPO目的、現状把握、ショートレビュー、課題抽出、準備方針の決定
N-2期の役割N-1期で運用実績を積むための管理体制整備
ショートレビュー指摘事項を受けるだけでなく、課題管理表に落とし込むことが重要
期首残高申請直前2期間の監査証明に向けて、N-2期の期首残高を説明できる状態が必要
月次決算経営判断、予実管理、監査対応、主幹事審査、投資家説明の基礎
会計方針収益認識、見積り、引当金、減損、税効果などを早期に整理する
決算早期化単なるスピードではなく、開示・監査に耐える決算プロセスを作ること
内部統制業務フロー、リスク、統制、証跡を実務に組み込むこと
規程整備規程と実務が一致し、実際に運用されていることが重要
ガバナンス取締役会、監査役、内部監査、関連当事者管理をN-2期から動かす
労務・法務・税務申請期に発覚すると影響が大きいため、早期に棚卸しする
資本政策株主構成、SO、優先株式、投資契約は後で直しにくいため早期整理が必要
事業計画成長ストーリー、KPI、資金使途、月次管理を接続する
課題管理担当、期限、証跡、影響を管理し、経営判断に使える状態にする
最終目標N-2期末までに基本的な管理体制を整え、N-1期で安定運用へ移る
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