事業承継という言葉から、後継者選びや相続税対策を思い浮かべる方は少なくありません。
しかし、会社を次の世代へ引き継ぐために決めなければならないのは、「誰を次の社長にするか」「自社株にいくらの税金がかかるか」だけではありません。
誰が会社を経営するのか。議決権を持ち、重要事項を決めるのは誰か。株式や事業用資産を、いつ、どの方法で移すのか。後継者は、株式取得資金や納税資金を確保できるのか。先代経営者、親族株主、少数株主、従業員、金融機関との関係を、どう整えるのか。そして承継後、新しい経営者が数字と事実に基づいて会社を運営できるのか。
これらは、一見すると別々の問題に見えます。ところが実際には、互いに深く影響し合っています。
たとえば、株式を移しても、後継者に実質的な経営権限がなければ、安定した承継とはいえません。代表者を交代しても、議決権が親族や少数株主に分散したままでは、重要な経営判断が滞ることもあります。税負担だけを抑えようと複雑なスキームを組めば、かえって会社の資金繰りや承継後の経営を弱くしてしまう場合すらあります。
事業承継は、狭く捉えれば代表者と株式の承継です。しかし、会社を継続させるという観点に立てば、経営、資産、技術、ノウハウ、信用、取引関係、組織、管理体制を引き継ぐ、総合的な経営課題にほかなりません。
このテーマでは、事業承継を相続税対策だけに閉じ込めず、経営の承継、支配の承継、株主構成、資金、税務、資本政策、承継後の経営管理を、一つの流れとして整理していきます。
本記事は、個別の制度や実行手続を詳しく解説するものではありません。第14テーマ全体の論点地図を示し、自社の課題に応じて次に読むべき詳細コラムを選んでいただくための、案内ページと位置づけています。
このテーマで理解できること
第14テーマを読み進めることで、事業承継について、次の問いを一つずつ整理できるようになります。
経営を任せることと、会社を支配させることは同じなのか
代表取締役として会社を経営する立場と、株主として会社の重要事項を決める立場は、必ずしも一致しません。
後継者を社長に据えても、議決権の大半を先代経営者が持ち続けることはできます。逆に、株式を後継者へ移しても、取引先との関係や金融機関対応、社内の意思決定が、先代経営者に依存したままということもあります。
事業承継を安定させるには、経営者の交代と、株式・支配権の移転とを、いったん分けて考える必要があります。そのうえで、最終的に両者をどのような状態へ着地させるかを設計していきます。事業承継を「経営の承継」と「支配権である株式の承継」に分けて把握すること。これが、承継問題を整理する出発点になります。
自社株の「価値」は、何のために評価するのか
非上場株式には、上場株式のような日々の市場価格がありません。
そのため、相続税・贈与税の申告、親族間売買、会社による自己株式取得、従業員承継、MBO、少数株主からの買取り、M&Aといったように、評価の目的によって、確認すべき考え方が変わってきます。
税務上の評価額と、第三者が会社を買う場合の価格は、同じではありません。株価が高いか低いかを議論する前に、まず「誰と誰の間で、何のために評価するのか」を明確にしておく必要があります。
株主構成が、承継後の経営にどのような影響を与えるのか
株主構成は、単なる株式の保有割合ではありません。承継後の意思決定、配当、役員選任、資金調達、M&A、さらには次の事業承継にまで影響する、経営の基盤です。
株主名簿が更新されていない。過去の名義株が残っている。親族に株式が細かく分散している。所在を確認できない株主がいる。こうした問題は、平時には表面化しないことがあります。しかし、承継、増資、組織再編、M&Aといった重要な局面では、手続や交渉の障害になりかねません。
株主数が増えるほど、株主総会、通知、問い合わせ、株主名簿の更新といった管理も重くなります。かといって、少数株主の権利を軽視することはできませんし、経営の安定だけを理由に、機械的な株式集約を進めることも適切ではありません。まずは現在の株主関係を事実に基づいて確認し、そのうえで必要な対応を検討していくことになります。
どの承継方法が、自社に合っているのか
事業承継には、親族内承継、役員・従業員への承継、MBO、第三者承継といった選択肢があります。
どれが優れているかを、一律に決めることはできません。後継者の経営能力、本人の意思、株式取得資金、親族株主との関係、会社の財務体質、従業員や取引先への影響、先代経営者の引退後の生活、経営者保証。これらを合わせて比較する必要があります。
後継者候補がいることと、その方法で安定した承継を実行できることは、別の問題です。候補者がいる場合でも、資金、株式、権限、組織、金融機関対応まで、実行可能かどうかを確認しなければなりません。
税制や資本政策を、どの段階で検討するのか
事業承継税制、贈与、相続、売買、自己株式、持株会社、種類株式、新株予約権、従業員持株会。事業承継では、多くの制度や手法が候補にあがります。
ただし、これらはあくまで手段であって、目的ではありません。
会社の支配を安定させたいのか。後継者の資金負担を抑えたいのか。親族間の経済的な公平を図りたいのか。役員・従業員に経営への参加意識を持たせたいのか。あるいは、将来のM&Aや外部資本の受入れに備えたいのか。
目的が違えば、適切な手段も異なります。税務上は有利に見える方法でも、会社の資金や議決権、将来の選択肢に不都合が生じるのであれば、慎重な検討が求められます。
承継後に、会社を安定して運営できるのか
事業承継は、株式移転や代表者変更の日に完了するものではありません。
新しい経営者が、月次決算、資金繰り、予算、経営計画、借入、投資、採用、部門別採算を自ら確認し、社内外に説明できる状態になって、はじめて経営の承継が実質的に進みます。
先代経営者の頭の中にあった判断基準を、数字、資料、会議、権限、業務フローとして会社に残していく。月次決算も、作成するだけで終わらせず、経営者が読み、語り、判断に使うところまで整えて、はじめて承継後の経営基盤になります。
第14テーマを読み進める順番
第14テーマは、次の順番で読み進めることで、全体像を段階的に理解できるよう構成しています。
はじめに、事業承継を早期に考える理由を確認します。次に、経営の承継と支配の承継を分け、会社を誰が動かし、誰が重要事項を決めるのかを整理します。
そのうえで、非上場株式の評価、株主構成・少数株主対策へと進みます。ここまでが、自社の現在地を把握する段階です。
続いて、親族内承継、親族外承継、MBOといった承継方法を比較し、事業承継税制と納税資金を検討します。さらに必要に応じて、種類株式、新株予約権、従業員持株会といった資本政策を検討していきます。
最後に、承継後の月次管理、資金管理、金融機関対応、社内権限を整え、事業承継をその後の成長へとつなげます。
推奨する順番は、次のとおりです。
14-1 → 14-2 → 14-3 → 14-4 → 14-5 → 14-6 → 14-7 → 14-8
まだ後継者が決まっていない場合は、まず14-1と14-5を読むと、選択肢を整理しやすくなります。
後継者は決まっているものの、株式移転が進んでいない場合は、14-2、14-3、14-4、14-6が中心になります。
役員・従業員承継やMBOを検討している場合は、14-5で承継方法を比較したうえで、14-7で支配権や資本政策の選択肢を確認してください。
すでに代表者や株式の承継を実行された会社は、14-8から読み始めることもできます。
第14テーマの詳細コラム
14-1. 事業承継を早期に考えるべき理由
事業承継の全体像を理解するための、入口となるコラムです。
後継者の選定だけでなく、会社の現状把握、経営改善、株式、資金、税務、組織、取引先、金融機関への説明まで、なぜ一定の準備期間が必要になるのかを整理します。
「後継者候補はいるが、いつ引き継ぐか決めていない」「親族内承継とM&Aのどちらを選ぶか迷っている」「まだ業績が安定しているため、承継準備は早いと思っている」。こうした経営者に、最初に読んでいただきたいコラムです。
事業承継では、準備の必要性を認識し、経営状況を見える化し、会社を磨き上げ、計画を策定して実行し、その後の成長へつなげていく。この流れが基本になります。
14-2. 経営の承継と支配の承継を分けて考える
後継者に社長を任せることと、株式・議決権を渡すことの違いを整理する、基本のコラムです。
代表者としての経営権限、株主としての議決権、取締役会や株主総会における意思決定、そして先代経営者の関与。これらを分けて考えていきます。
「後継者を代表取締役にしたが、株式は先代が持っている」「株式を贈与する時期を決められない」「会長として、どこまで経営に関与すべきか迷っている」。そうした場面で、判断の前提を整える役割を持つコラムです。
個別の株式移転手続や税額計算には踏み込まず、承継後の意思決定構造をどう設計するかに焦点を当てます。
14-3. 非上場株式の評価と承継判断の基本
自社株の価値を、評価目的ごとに整理するコラムです。
税務上の評価、親族間や役員との売買価額、少数株主との取引、M&Aにおける企業価値・株式価値。これらは、同じ考え方で決まるわけではありません。
「顧問税理士から示された株価が高いと感じる」「純資産と株価の関係が分からない」「相続税評価額とM&A価格が、なぜ違うのか知りたい」。そうした読者に向いています。
詳細コラムでは、評価目的、株主区分、会社規模、純資産、利益、配当などの関係を整理します。ただし、個別企業の株価算定そのものは行いません。
なお、取引相場のない株式の税務評価については、2026年3月25日付で財産評価基本通達の一部が改正され、2026年4月1日以後に相続、遺贈または贈与で取得した財産に対応する評価明細書も公表されています。古い年度の計算例や様式をそのまま使わず、評価時点の通達、類似業種比準価額、様式を確認する必要があります。
出典:国税庁|『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)
出典:国税庁|取引相場のない株式(出資)の評価明細書
14-4. 株主構成・少数株主対策を整える
株主名簿、議決権割合、名義株、分散株式、所在不明株主、少数株主権など、承継前に確認すべき株主管理の論点を扱います。
「創業時の株主が残っている」「親族に株式が分散している」「株主名簿と法人税申告書の株主欄が一致しない」「株券を発行したか分からない」。こうした会社では、承継方法や税制を検討する前に、株主関係の事実確認が必要です。
このコラムでは、株式を集約すべきかどうかを一律に決めるのではなく、経営の安定、少数株主の権利、買取資金、税務、将来のM&Aへの影響を、どのように比較していくかを整理します。
なお、個別の株主紛争、強制取得、裁判手続については、弁護士等による法的な検討が必要になります。
14-5. 親族内承継・親族外承継・MBOを比較する
誰に承継するかを決めるための、比較・判断のコラムです。
親族内承継、役員・従業員承継、MBO、第三者承継について、後継者の経営能力、株式取得資金、税務、従業員・取引先への影響、金融機関対応、承継後の経営体制という観点から比較します。
親族内に候補者がいる場合でも、本人の意思や能力、他の相続人との関係、株式移転後の支配権を確認する必要があります。役員・従業員承継では、後継者の株式取得資金と借入負担が大きな論点になります。第三者承継では、会社の見える化、株主整理、企業価値、M&A後の経営が重要になります。
このコラムは、承継方法を選ぶための判断軸を扱います。M&Aの具体的な進め方、企業価値評価、デューデリジェンス、契約、PMIについては、第15テーマで詳しく扱います。
中小企業庁が公表する中小M&Aガイドラインについては、2024年8月改訂の第3版が現行ページに掲載されています。第三者承継を実行する段階では、支援機関の利益相反、手数料、契約内容、セカンドオピニオンなども含め、最新のガイドラインを確認しておく必要があります。
出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン
14-6. 事業承継税制・納税資金を考える前提
事業承継税制を使うかどうかを判断する前に、制度の位置づけと資金面の論点を整理するコラムです。
事業承継税制は、一定の要件の下で、非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の場合に免除する制度です。単純な非課税制度ではなく、申告、認定、株式保有、事業継続、継続届出などを伴います。
税額だけで利用を決めるのではなく、後継者が将来にわたり要件を守れるか、M&Aや株式譲渡など将来の選択肢をどこまで制約するか、猶予税額をどのように管理するかを、あわせて確認しなければなりません。
また、税制を使わない場合でも、贈与税、相続税、譲渡所得税、株式取得資金、代償分割資金、先代経営者の退職金などを含めた、資金計画が必要になります。
2026年度税制改正により、法人版事業承継税制の特例措置に必要な特例承継計画の提出期限は、2027年9月30日まで延長されています。一方で、特例措置の対象となる贈与・相続等の適用期限は2027年12月31日です。期限だけを見て急いで適用を決めるのではなく、会社、先代経営者、後継者、株主構成、承継後の計画が、制度要件と整合するかどうかを事前に確認しておく必要があります。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱(2/9)
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)
出典:国税庁|事業承継税制特集
14-7. 種類株式・新株予約権・持株会を承継に活かす考え方
普通株式の移転だけでは解決しにくい承継課題に対して、資本政策の選択肢を整理する、発展的なコラムです。
種類株式を使えば、議決権、配当、取得に関する条件を、普通株式とは異なる形で設計できる場合があります。新株予約権は、将来の株式取得機会を設ける手段として、後継者や役員・従業員のインセンティブ設計に用いられることがあります。従業員持株会は、従業員の資産形成や経営参加意識に関わる一方で、退職時の買取り、議決権、株式分散、管理負担を考慮する必要があります。
これらは柔軟な手段です。ただし、複雑な条件を付ければ付けるほどよい、というものではありません。
支配権の安定、親族間の経済的バランス、後継者へのインセンティブ、将来の資金調達、M&A、そして次の事業承継までを見通し、発行の目的と権利の内容を一致させることが重要です。
このコラムでは、承継と支配権設計の観点を中心に扱います。成長資金の調達や、ストックオプションとしての活用については、第16テーマでより詳しく扱います。
14-8. 承継後に会社を安定運営するための管理体制
事業承継を実行したあと、新しい経営体制を安定させるための、実務コラムです。
後継者が代表者になっても、資金繰り、借入、重要取引、価格決定、採用、投資判断を先代経営者しか把握していなければ、実質的な経営移行は進みません。
承継後は、月次決算、資金繰り表、経営計画、予実管理、経営会議、金融機関説明、社内権限、株主管理を、後継者が使える形に整える必要があります。
経営計画も、作成して終わる資料ではありません。月次実績、行動計画、改善策を確認し、必要に応じて金融機関へ説明していく。この継続的な運用こそが重要です。
「代表変更後も、先代への確認が減らない」「後継者が、会社の資金を十分に把握していない」「金融機関への説明を、先代に任せている」「新旧経営者の権限が曖昧なままになっている」。こうした会社に、優先して読んでいただきたいコラムです。
自社の課題から、読むコラムを選ぶ
後継者が決まっていない
まず14-1で、事業承継をいつから、何のために進めるのかを確認してください。
そのうえで、14-5で親族内承継、役員・従業員承継、MBO、第三者承継を比較します。社内外に候補者がいない場合には、第15テーマの中小M&Aも併せて確認することになります。
後継者は決まったが、株式をどう移すか決まっていない
14-2で経営の承継と支配の承継を分け、14-3で株式評価の目的を確認します。
そのうえで、14-4で現在の株主構成を整理し、14-6で税制と資金負担を検討します。最初から贈与、売買、事業承継税制のいずれかに決め打ちせず、承継後に必要な議決権、資金、税負担を比較していく。この順番が重要です。
株式が親族や元役員に分散している
14-4が中心になります。
株主名簿、過去の株式異動、株券発行の有無、名義株の可能性、株主の所在、議決権割合を確認しなければなりません。その事実確認を経ずに株式集約や自己株式取得を進めると、法務・税務上の別の問題を生む可能性があります。
必要に応じて、14-2、14-3、14-7も併せて確認してください。
役員・従業員に承継したい
14-5で親族外承継とMBOの特徴を整理し、後継者の株式取得資金、借入返済、経営者保証、他の役員・従業員との関係を確認します。
そのうえで、14-7で種類株式、持株会、新株予約権等を検討します。ただし、資本政策だけで、後継者の資金力や経営能力の問題が解消されるわけではありません。利益計画、資金計画、金融機関説明も、同時に必要になります。
事業承継税制を使うべきか迷っている
14-3で株式評価を確認したあと、14-6へ進んでください。
税制を利用した場合と利用しない場合の税負担だけでなく、継続要件、将来の株式処分、M&A、後継者交代、猶予税額の管理まで、比較する必要があります。
制度の期限が近いという理由だけで利用を決めず、会社の将来方針と整合するかどうかを確認することが重要です。
すでに承継を実行した
14-8を優先してください。
株式と代表者の変更が終わっていても、月次数字、資金、金融機関対応、意思決定権限が先代経営者に依存しているなら、経営の承継はまだ途中です。
14-2で支配と権限の状態を再確認し、14-4で株主管理に漏れがないかを確認することも有効です。
このテーマでは扱わないこと
第14テーマは、一般的な中小・中堅企業の事業承継、株主構成、資本政策を対象としています。医療法人、病院、診療所その他の医療機関に固有の承継制度、規制、税務・法務は扱いません。
また、各コラムは、経営判断に必要な論点と確認事項を整理するものです。個別企業の株価算定、相続税・贈与税の計算、種類株式の発行条件設計、契約書作成、登記、株主紛争対応を代替するものではありません。
第三者承継・M&Aの実行、企業価値評価、デューデリジェンス、最終契約、PMIについては、第15テーマで扱います。
外部株主、PEファンド、成長資金調達、ストックオプション、IPOを主目的とする資本政策については、第16テーマで扱います。
読み始める前に確認しておきたい資料
事業承継の検討では、最初から高度なスキーム案を作る必要はありません。
まずは、現在の事実を確認できる資料を揃えるところから始めます。
会社の定款、登記事項証明書、株主名簿、過去の株主総会・取締役会議事録、法人税申告書の株主情報、直近の決算書と月次試算表、借入金一覧、主要な契約・許認可、先代経営者と会社の貸借関係、自社株評価に使用した過去資料など。こうした資料が対象になります。
後継者候補が決まっている場合は、就任予定時期、株式取得方法、取得資金、承継後の役員構成、先代経営者の関与方針も整理しておきます。
重要なのは、資料が揃っていることだけではありません。
株主名簿と申告書の株主情報が一致しているか。登記上の役員と、実際の意思決定者が一致しているか。会社所有の資産と、経営者個人所有の資産が区分されているか。借入、担保、経営者保証を、後継者が把握しているか。過去の株式異動について、契約書や資金移動の証拠が残っているか。
資料同士の不一致は、それ自体が、承継前に解消すべき論点です。
事業承継は、税務・法務・財務・経営を分けずに考える
事業承継では、一つの判断が、複数の領域に影響します。
株式を贈与すれば、贈与税だけでなく、議決権、遺留分、承継後の配当、次の相続にまで影響します。
会社が自己株式を取得すれば、株式集約に役立つ可能性がある一方で、会社から資金が流出し、財源規制、売主株主の課税、金融機関への説明が問題になります。
持株会社を設ければ、複数会社の支配関係を整理できる場合がありますが、組織再編税制、会計、借入、管理コストを確認する必要があります。
種類株式を使えば、権利関係を柔軟に設計できますが、定款、株主総会、評価、税務、将来のM&Aへの影響を検討しなければなりません。
そのため、事業承継では、税理士だけ、弁護士だけ、金融機関だけで結論を出すのではなく、会社法、税務、会計、資金、経営計画を横断して論点を整理することが重要です。必要に応じて、公認会計士・税理士、弁護士、司法書士、金融機関、M&A専門家などが役割を分担します。
専門家に経営判断を委ねるわけではありません。
経営者と後継者が自ら判断できるように、現在の事実、選択肢、税負担、資金負担、権利関係、将来への影響を比較できる状態をつくる。これが、専門家を活用する目的です。
事業承継・株主構成・資本政策の整理をご検討の方へ
事業承継の相談では、「税金がいくらになるか」だけを確認しても、十分な判断材料にはなりません。
後継者に何を引き継ぐのか。経営と支配を、いつ移すのか。現在の株主構成に問題はないか。株式評価、納税、買取りに必要な資金を確保できるか。承継後に、後継者が会社を安定して運営できるか。
これらを、一つの計画として整理していく必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継を単独の税務手続としてではなく、株主構成、非上場株式評価、資金計画、月次管理、金融機関説明、承継後の経営体制まで含む、経営課題として整理します。
まだ承継方法が決まっていない段階でも、現在の株主、財務、資金、後継者候補を確認することで、今後の選択肢と、準備の優先順位を明確にできます。
振り返り
| 理解する段階 | 中心となる問い | 次に読む詳細コラム |
|---|---|---|
| 承継の入口 | なぜ早期に準備し、何を引き継ぐ必要があるのか | 14-1. 事業承継を早期に考えるべき理由 |
| 経営と支配の整理 | 社長を任せることと株式を渡すことはどう違うのか | 14-2. 経営の承継と支配の承継を分けて考える |
| 株価の確認 | 自社株は、何の目的で、どのように評価するのか | 14-3. 非上場株式の評価と承継判断の基本 |
| 株主関係の整備 | 分散株式、名義株、少数株主をどう整理するのか | 14-4. 株主構成・少数株主対策を整える |
| 承継方法の選択 | 親族、役員・従業員、第三者の誰に承継するのか | 14-5. 親族内承継・親族外承継・MBOを比較する |
| 税務・資金の確認 | 税制を使うべきか、納税・取得資金をどう確保するのか | 14-6. 事業承継税制・納税資金を考える前提 |
| 資本政策の検討 | 普通株式以外の手段を使う必要があるのか | 14-7. 種類株式・新株予約権・持株会を承継に活かす考え方 |
| 承継後の安定運営 | 後継者が数字と事実に基づいて経営できるか | 14-8. 承継後に会社を安定運営するための管理体制 |