架空外注費・水増し請求・キックバックが税務調査で問題になる理由|支出の実態と資金還流の確認ポイント

外注費や業務委託費は、税務調査で確認されやすい勘定科目のひとつです。

理由は、それほど難しいものではありません。外注費は、請求書や振込記録だけを見ても、「本当に役務提供があったのか」「金額は妥当なのか」「支払先に資金が残っているのか」「会社関係者へ還流していないか」までは見えにくいからです。

本来の外注費であれば、契約から発注、作業、納品、検収、請求、支払までの一連の流れを、順を追って説明できるはずです。

ところが、ここに架空外注費や水増し請求、キックバック、バックリベート、あるいは実態の薄い紹介料・手数料が混じり込むと、話は法人税だけにとどまりません。消費税、源泉所得税、重加算税、使途秘匿金、役員給与、さらには横領・背任や社内責任の問題にまで広がっていきます。

特に気をつけたいのは、「請求書がある」「振込で支払っている」「取引先も実在する」――この三つがそろっているだけでは、税務調査の場での説明として十分とは言えない、という点です。

税務調査で問われるのは、支出の形式ではなく、支出の実態だからです。

言い換えれば、「誰に、何のために、どのような役務の対価として、いくら支払い、そのお金が最終的にどこへ行ったのか」を、後からきちんと説明できるかどうか。ここが確認の中心になります。

目次

架空外注費・水増し請求・キックバックは、通常の外注費論点とは違う

外注費をめぐる税務調査では、まず「給与と外注費の区分」が論点になることがよくあります。指揮監督の有無、代替性、報酬の計算方法、材料・用具の負担、勤務の実態――こうした要素を見ながら、その働き方が雇用に近いのか、それとも独立した請負・委託に近いのかを判断していく論点です。

しかし、今回取り上げる架空外注費・水増し請求・キックバックは、それとはまったく性質の異なる、いわば異常系の論点です。

問題の中心にあるのは「外注か給与か」ではありません。そもそも支払ったとされる役務が本当に存在したのか。請求金額が実態より過大になっていないか。そして、その過大な部分が会社関係者や取引先関係者へ戻っていないか。問われるのは、こうした点です。

代表的には、次のような形で現れます。

類型典型的な内容税務調査での主な確認点
架空外注費実際には役務提供がないのに請求書だけを受け取る作業実態、成果物、外注先の能力、資金の戻り
水増し請求実際の役務はあるが、請求金額を過大にする適正価格との差額、差額の使途、誰が主導したか
キックバック支払先から役員・従業員・取引先担当者に資金が戻る個人への還流、会社収益の漏れ、横領・利益供与
バックリベート仕入先・外注先から戻るリベートを会社に入れない会社に帰属すべき収益か、個人流用か
実態不明の紹介料・手数料具体的な紹介・仲介・役務内容が不明相手先、紹介実態、契約成就との関係、金額根拠
関係者企業への優先発注親族会社・関係会社に不自然な条件で発注価格相当性、役務実態、利益移転、寄附金性

財務・税務デューデリジェンスの現場でも、資産流用の典型例として、不正なキックバックの受領、リベートの横領、血縁企業への優先発注、個人経費の付け替えといった行為がよく挙がります。これらは税務上のリスクであると同時に、会社の内部管理やガバナンスの面でも見過ごせないリスクなのです。

調査官はどこから架空外注費を疑うのか

架空外注費や水増し請求は、はじめから「この請求書は架空です」と分かる形で表に出てくるとは限りません。

実際には、調査官が決算書や申告書、勘定科目内訳書、元帳、請求書、通帳、取引先情報といった資料を一つひとつ突き合わせながら、どこかに違和感のある箇所はないかを探していく、という進み方になります。

典型的な端緒は、次のようなものです。

  • 売上は伸びているのに利益率が不自然に低下している
  • 特定の外注先への支払だけが急増している
  • 期末に外注費、業務委託費、紹介料、広告宣伝費が集中している
  • 外注先の所在地、代表者、連絡先、事業内容が曖昧である
  • 同じ筆跡、同じ様式、同じ振込パターンの請求書が多い
  • 外注先への支払直後に現金引出しや別口座への送金がある
  • 外注先が家族、従業員、役員の知人、退職者と関係している
  • 作業報告書や成果物が金額に比べて薄い
  • 見積書と請求書の金額差が説明できない
  • 借入金、役員借入金、仮払金、貸付金が不自然に動いている

たとえば建設業の調査では、完成工事売上高と完成工事原価の伸び率に不自然な乖離があったり、完成工事総利益率が低下していたりすると、売上除外や架空外注費、原価の過大計上を疑うきっかけになることがあります。また、架空外注費が想定される事案では、二重帳簿や簿外預金口座の利用といった、隠蔽・仮装の行為まで疑われるケースも少なくありません。

ただ、ここで押さえておきたいのは、利益率が下がったからといって、それがそのまま不正を意味するわけではない、ということです。大型案件の受注、外注依存度の上昇、材料価格の高騰、人員不足、工期の遅延――こうした合理的な理由で利益率が動くことも、当然あります。

とはいえ、合理的な理由があるのであれば、その理由を資料で説明できる状態にしておくことが欠かせません。口頭で「忙しかったから外注が増えた」と伝えるだけでは、説明としては足りないのです。案件別の原価、外注先別の明細、工程表、発注書、作業報告書、検収記録、見積比較、社内の承認資料――こうした裏づけが求められます。

「支払った事実」と「損金になる事実」は別である

税務調査の場でよく見かける誤解に、「実際に振込をしているのだから、当然、会社の経費になるはずだ」という考え方があります。

しかし法人税の上で損金として認めてもらうには、支払ったという事実だけでは足りません。会社の事業に関連して、実際に役務提供や取引があったこと、そしてその金額が合理的であることまで、あわせて説明できる必要があります。

たとえば、次のような支出は、同じ「外注費」として処理されていても、税務上の評価は異なります。

実態税務上の主な問題
実際に外注作業があり、金額も相当原則として外注費として説明しやすい
実際に作業はあるが金額が過大過大部分の損金性、資金還流、交際費・給与・寄附金等が問題
作業実態がない架空経費として損金否認、消費税仕入税額控除否認、重加算税リスク
役員に資金が戻っている役員給与・認定賞与、貸付金、使途秘匿金、重加算税リスク
従業員が個人的に受領している横領、損害賠償請求、給与課税、会社の管理責任が問題
相手先・使途を説明できない使途不明金・使途秘匿金、重加算税リスク

たとえば、架空の外注加工費を計上し、それに合わせて架空の仮払消費税まで計上していた事案では、存在しない損金をあたかも存在するかのように見せかけた架空経費の計上であり、同時に、存在しない課税仕入税額を存在するかのように装うものだと整理されています。

つまり外注費の調査対応では、「支払ったかどうか」だけでなく、「何を受け取ったのか」「なぜその金額なのか」「最終的に誰が得をしたのか」を、それぞれ切り分けて確認していく必要があるわけです。

水増し請求では「差額の行き先」が核心になる

水増し請求は、架空外注費よりもかえって判断が難しい場合があります。

というのも、こちらは実際に何らかの作業が行われているからです。

たとえば、本来であれば100万円の作業に対して120万円の請求書を受け取り、そのうち100万円は外注先への正当な対価、残りの20万円は現金で会社関係者に戻ってくる――こうした形です。

この場合、税務上は次のような複数の見方があり得ます。

  • 20万円は外注費ではなく交際費・謝礼である
  • 20万円は会社の簿外資金である
  • 20万円は代表者への貸付金である
  • 20万円は代表者または従業員への給与・賞与である
  • 20万円は使途不明金・使途秘匿金である
  • 20万円は会社に戻るべきリベートを個人が横領したものである

実務の上では、この水増し部分をどう認定するかは、税務署の所管法人か国税局調査部の所管法人か、誰が受け取ったのか、そして証拠がどこまで残っているのかによって、整理の方向が変わってきます。水増し部分が交際費なのか、簿外資産なのか、給与なのか、それとも貸付金なのか――その判断は、支出の目的、資金を受け取った相手、会社側の認識、返済や精算の有無といった事情に左右されます。

調査対応で気をつけたいのは、納税者側が事実を整理しないまま、調査官の言葉に引きずられて、「代表者が使いました」「裏金です」「外注先に頼んでやってもらいました」などと安易に断定してしまうことです。

もちろん、事実がそうであるなら認める必要があります。ただ、確認を済ませる前に断定してしまうと、重加算税や認定賞与、源泉所得税、使途秘匿金、さらには質問応答記録書の記載にまで、影響が及びかねません。

キックバック・バックリベートは「会社に帰属する収益か」「個人の不正か」を分ける

キックバックやバックリベートのケースでは、資金が会社の外から戻ってくる構図になるため、外注費の否認だけでは話が終わりません。

たとえば、外注先から担当従業員へ現金が戻っていたとします。このとき、その資金が会社に帰属するリベートなのか、従業員が個人的に外注先から不正に受け取った利益なのか、会社がそれを黙認していたのか、あるいは役員が指示していたのか――こうした点を一つずつ整理しなければなりません。

ここで判断を誤ると、次のような処理が混在してしまいます。

  • 会社の雑収入・受取リベートの計上漏れ
  • 外注費の過大計上
  • 従業員に対する給与・賞与認定
  • 役員に対する認定賞与
  • 従業員への損害賠償請求権
  • 貸付金または仮払金処理
  • 横領損失や貸倒損失の時期
  • 源泉所得税の徴収漏れ
  • 消費税の課税仕入れ・課税売上の修正
  • 重加算税

会社が被害者の立場にある場合と、会社ぐるみで利益調整や裏金づくりを行っていた場合とでは、税務上の整理も、社内での対応も、外部への説明も、まるで違うものになります。

そのため、キックバックが疑われる場面では、まず「誰が主導したのか」「会社の意思決定として行われたのか」「資金を受け取ったのは誰か」「会社として返還を請求しているのか」を確認しておくことが大切です。

消費税では「請求書がある」だけでは仕入税額控除を守れない

架空外注費や水増し請求では、消費税もまた、大きな論点になります。

インボイス制度のもとでは、仕入税額控除を受けるために、原則として帳簿と適格請求書等の保存が求められます。課税仕入れ等にかかる消費税額を控除するには、その事実を記載し、区分経理に対応した帳簿と、事実を裏づける請求書等の両方を保存しておかなければならない、というのが国税庁の整理です。
出典:国税庁|No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存

ただし、ここでいう請求書等は、あくまで「実際に課税仕入れがあったこと」を前提とした資料です。

ですから、本当は役務提供のない架空外注費であれば、たとえ請求書やインボイスが手元にそろっていても、課税仕入れそのものが存在しないと判断される可能性があります。

また水増し請求の場合は、実際の役務提供に対応する部分と、上乗せされた水増し部分とを分けて考える必要があります。水増しされた部分に実際の役務提供がなく、それが単なる資金還流や裏金づくりにすぎないのであれば、その部分の仕入税額控除は否認されるリスクがあります。

さらに、使途不明金や費途のはっきりしない交際費等についても注意が必要です。取引の記録や相手先、支出の内容が明らかでないため、仕入税額控除の可否が問題になります。費途が明らかでない支出については、仕入税額控除ができないと整理される場面があるのです。

源泉所得税は「外注費処理だから関係ない」とは限らない

外注費や紹介料として処理していても、その実態によっては、源泉所得税が問題になることがあります。

源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、支払を受ける相手が居住者か内国法人かによって変わってきます。具体的には、原稿料や講演料、弁護士・公認会計士等への報酬、外交員等への報酬、芸能関係の報酬、ホステス等への報酬などが挙げられます。さらに、謝礼や研究費、取材費、車代といった名目であっても、その中身が報酬・料金等と変わらないのであれば、源泉徴収の対象になるとされています。
出典:国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

架空外注費や水増し請求の調査では、次のような場面で源泉所得税が問題になり得ます。

  • 個人への報酬・料金を源泉徴収せず外注費処理していた
  • 実態は給与なのに、個人事業主への外注費として処理していた
  • 役員や従業員に資金が還流していた
  • キックバックを受けた個人に給与・賞与認定がされる
  • 実質的な受取者が請求書上の法人ではなく個人である

源泉所得税は、支払う側に徴収と納付の義務が生じます。そのため、調査でこうした処理が発覚すると、本税にとどまらず、納税告知、不納付加算税、延滞税にまで影響が及んでいきます。

使途秘匿金・使途不明金は、税額だけでなく信用に影響する

水増し請求やキックバックでは、支出先や最終的な受領者をうまく説明できない、という事態が起こりがちです。

そうなると、今度は使途不明金や使途秘匿金が問題になってきます。

使途秘匿金とは、相当の理由がないにもかかわらず、支出の相手方の氏名・名称、住所・所在地、支出の事由などを帳簿書類に記載していない支出が問題とされる制度です。租税特別措置法62条には、使途秘匿金の支出があった場合の課税の特例が定められています。
出典:e-Gov法令検索|租税特別措置法

国税庁が示す法人税申告書別表の記載要領でも、租税特別措置法62条1項にいう使途秘匿金の支出がある場合には、法人税額の計算にあたって別表一の外書き金額を含めて計算する旨が示されています。
出典:国税庁|別表十七(三の六)の記載の仕方

使途秘匿金は、単なる損金不算入だけにとどまる問題ではありません。支出先や目的を隠した資金として扱われるため、税務上の負担はもちろん、金融機関や取引先、株主との関係、M&A、さらには社内統制の観点からも、重大な信用問題へと発展しかねないのです。

重加算税では「隠蔽・仮装」の事実が問われる

架空外注費や水増し請求が明らかになると、重加算税が問題になりやすくなります。

法人税の重加算税に関する事務運営指針では、隠蔽・仮装にあたる例として、二重帳簿の作成、帳簿書類の破棄や隠匿、帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方と通じての虚偽証憑の作成、簿外資金による役員賞与その他の費用の支出などが挙げられています。
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

架空外注費や水増し請求では、次のような事情が重加算税の判断に影響します。

  • 請求書や領収書を実態と異なる内容で作成している
  • 外注先と通謀して虚偽の請求書を作成している
  • 現金で戻した資金を帳簿に記載していない
  • 二重帳簿や裏帳簿を作成している
  • 取引先や従業員に口裏合わせを依頼している
  • 調査前または調査中に資料を破棄・改ざんしている
  • 水増し部分を別勘定に付け替えて隠している
  • 代表者や経理責任者が認識していた

一方で、外注費の処理に誤りがあったからといって、それがそのまま重加算税につながるわけではありません。実際に役務提供があり、金額や計上時期の判断を誤っただけというのであれば、隠蔽・仮装とまでは言えない可能性もあります。

ですから重加算税を判断する際には、「不適切な処理があったかどうか」だけでなく、隠す行為、装う行為、通謀、改ざん、虚偽証憑、資金の還流、そして当事者の認識があったかどうかまで、丁寧に確認していくことが欠かせません。

反面調査・金融機関調査では何が確認されるか

架空外注費やキックバックが疑われる場合、税務署は本人側の帳簿を確認するだけでは終わらず、取引先や金融機関への確認まで行うことがあります。

反面調査では、外注先に対して次のような事項が確認されやすくなります。

  • 請求書を誰が作成したか
  • 実際にどの作業を行ったか
  • 作業した人数、日数、場所
  • 作業報告書や成果物の有無
  • 請求金額の算定根拠
  • 支払後に現金を戻した事実の有無
  • 会社役員・従業員との関係
  • 同様の取引が他にもあるか

金融機関調査では、支払先口座への入金後の動きが確認されます。

  • 入金直後の現金引出し
  • 会社関係者や親族への送金
  • 役員・従業員個人口座への入金
  • 同一日に複数の外注先から同額が動いている
  • 現金引出し後の使途が不明
  • 裏口座、簿外口座の存在

この段階で重要になるのは、納税者側の説明と、取引先や金融機関から得られる情報とが食い違っていないか、という点です。

ここで取引先に不適切な連絡をとり、口裏を合わせようとすれば、かえって隠蔽・仮装の事実を裏づけてしまうことになりかねません。

質問応答記録書では、事実確認前の断定を避ける

架空外注費や水増し請求、キックバックが疑われる場面では、調査官から質問応答記録書の作成を求められることがあります。

この記録書には、資金の流れや関与した人物、当事者の認識、指示の有無、目的、資料を作成した経緯などが書き留められていきます。実務の上では、質問応答記録書は、課税庁側が不足している課税要件の事実を、納税者の供述によって補う場面で大きな意味を持つことがあります。

特に避けるべきなのは、資料を確認しないまま、次のように断定してしまうことです。

  • 「架空だったと思います」
  • 「社長の指示でした」
  • 「裏金として使いました」
  • 「外注先に頼んで請求書を作ってもらいました」
  • 「税金を減らすためでした」
  • 「相手先は言えません」

事実であれば、もちろん説明する必要があります。ただ、その前に、記憶と資料が一致しているか、それは誰の認識なのか、どの取引を指しているのか、金額はいくらなのか――こうした点を確認したうえで回答するのが筋です。

ときには「分かりません」「資料を確認したうえで回答します」「その時点では記憶がありません」と答えるべき場面もあります。調査に協力することと、確認できていないことを断定しないことは、決して矛盾しないのです。

指摘を受けたときに最初に整理すべきこと

税務調査で架空外注費やキックバックを指摘されたとき、まず取りかかるべきなのは、急いで修正申告書を作ることではありません。

はじめに、指摘された取引を次のように分解していきます。

整理項目確認内容
対象取引どの年度、どの外注先、どの請求書が問題か
役務実態実際に作業・納品・成果物があったか
金額適正な対価と水増し部分を分けられるか
支払方法振込、現金、相殺、仮払金処理の有無
資金還流誰に、いくら、いつ戻ったか
受益者会社、役員、従業員、取引先担当者の誰が利益を得たか
会社の認識代表者、経理、現場責任者が認識していたか
消費税課税仕入れ、仕入税額控除、インボイス保存への影響
源泉所得税給与・報酬・賞与認定の可能性
重加算税隠蔽・仮装、虚偽証憑、通謀の有無
後続処理返還請求、損害賠償、貸倒れ、修正申告の範囲

この整理を飛ばしたまま修正申告に応じてしまうと、思わぬ落とし穴があります。法人税だけを直して消費税や源泉所得税を見落としたり、会社が被害者である可能性を検討しないまま役員賞与として処理してしまったり、重加算税の前提となる事実を不用意に認めてしまったり――こうしたことが起こりかねません。

してはいけない対応

不正な支出が疑われる場面では、最初の動き方を誤ると、その後の調査対応が一気に不利になってしまいます。

次のような対応は避けるべきです。

  • 外注先に口裏合わせを依頼する
  • 請求書、契約書、作業報告書を後から作り直す
  • 日付を過去に合わせる
  • メールやチャットを削除する
  • 現金の動きを説明できないまま「交際費」と処理する
  • 代表者貸付金や仮払金に安易に振り替える
  • 従業員不正なのか会社行為なのかを整理しない
  • 消費税と源泉所得税への波及を確認しない
  • 調査官の提示した処理案をそのまま受け入れる
  • 質問応答記録書を十分確認せず署名する

不利な事実を隠すべきではありません。

かといって、不利な事実を正確に整理しないまま提出したり供述したりするのも、これはこれで危険です。

税務調査への対応で大切なのは、隠すことではなく、証拠にもとづいて事実を整理することなのです。

再発防止は「経理チェック」だけでは足りない

架空外注費やキックバックの再発を防ぐ取り組みは、経理部門だけで完結するものではありません。

というのも、外注先の選定や価格交渉、現場での検収、支払の承認、資金の決済といった一連の流れは、営業、購買、工事、制作、管理、経理と、いくつもの部門にまたがっているからです。

再発防止としては、次のような仕組みが必要になります。

  • 新規外注先の登録時に実在性、事業内容、代表者、所在地、関係者性を確認する
  • 外注先と役員・従業員・親族との関係を申告させる
  • 一定金額以上の外注は見積比較または価格根拠を残す
  • 契約、発注、納品、検収、請求、支払の三点照合を行う
  • 成果物・作業報告・現場写真・工数表を保存する
  • 現金精算を制限し、振込を原則とする
  • 同一担当者による発注・検収・支払承認を避ける
  • 期末の外注費、紹介料、広告宣伝費、販売促進費を重点レビューする
  • 外注先別の利益率・支払額推移を月次で確認する
  • キックバック禁止、接待・謝礼・紹介料の承認ルールを明文化する
  • 内部通報制度や相談窓口を機能させる

不正は、必ずしも悪意だけから生まれるわけではありません。

「昔からこうしている」「現場の裁量だから」「紹介料だから詳しくは聞かない」「取引先との関係上、やむを得ない」――こうした曖昧さの積み重ねが、不正や、説明のつかない支出の温床になっていきます。

架空外注費・キックバックが疑われる場合は、早めに専門家へ相談する

架空外注費や水増し請求、キックバックは、単なる経費否認だけの問題ではありません。

法人税、消費税、源泉所得税、重加算税、使途秘匿金、役員給与、従業員の不正、損害賠償、金融機関への説明、社内処分、そして再発防止――これらが一度に動き出します。

特に、税務調査ですでに外注費や紹介料を指摘されている場合、あるいは社内で外注先からの資金還流が疑われる場合には、早い段階で次の資料を整理しておく必要があります。

  • 対象年度の総勘定元帳
  • 外注先別・案件別の支払一覧
  • 契約書、発注書、見積書、請求書
  • 作業報告書、成果物、検収資料
  • 外注先とのメール、チャット、議事録
  • 通帳、振込データ、現金出納帳
  • 役員・従業員への仮払金、貸付金、立替金明細
  • 調査官から指摘された事項のメモ
  • 質問応答記録書の作成を求められている場合の経緯

犬飼公認会計士・税理士事務所では、税務調査への対応を、単なる税務署とのやり取りとしてとらえてはいません。取引の実態、資金の流れ、会計処理、税務上の評価、質問応答記録書、修正申告の判断、重加算税のリスク、そして再発防止まで、一体のものとして整理していきます。

外注費や業務委託費、紹介料、販売促進費、広告宣伝費、手数料の実態について税務調査で確認を受けている場合や、社内で水増し請求・キックバックの疑いが見つかった場合には、まず対象となる取引と関係資料を整理したうえで、お問い合わせページよりご相談ください。

出典・参考情報

出典:国税庁|No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
出典:国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
出典:国税庁|別表十七(三の六)の記載の仕方
出典:e-Gov法令検索|法人税法
出典:e-Gov法令検索|国税通則法
出典:e-Gov法令検索|租税特別措置法
出典:e-Gov法令検索|消費税法

重要ポイントの振り返り

論点確認すべきこと誤ると起きるリスク
架空外注費実際の作業、成果物、検収、外注先の能力損金否認、仕入税額控除否認、重加算税
水増し請求適正対価との差額、差額の使途、誰が主導したか役員賞与、給与、貸付金、使途秘匿金
キックバック資金が誰に戻ったか、会社に帰属すべき収益か収益計上漏れ、横領、源泉所得税、重加算税
紹介料・手数料紹介実態、契約成就との関係、金額根拠交際費、寄附金、使途不明金
消費税実際の課税仕入れ、インボイス、帳簿保存仕入税額控除否認、加算税
源泉所得税実質的な受取者、給与・報酬該当性納税告知、不納付加算税、延滞税
重加算税虚偽証憑、通謀、改ざん、二重帳簿、簿外資金重加算税、不服申立て上の不利な事実認定
反面調査外注先の説明、金融機関の資金移動との整合性説明矛盾、隠蔽仮装の疑い拡大
質問応答記録書確認済み事実と記憶を分けて回答する不利な供述の記録化
修正申告判断法人税・消費税・源泉・重加算税を分けて整理安易な事実認定の受入れ、争点喪失
再発防止外注先登録、三点照合、承認ルール、資金管理同種不正の再発、金融機関・取引先信用低下
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