内国法人・外国法人・PEの基本

海外取引のある会社の法人税務では、まず「どの国の法人として、どの所得に対して、どの国で課税されるのか」を整理するところから始まります。

この入口で鍵になるのが、内国法人・外国法人・国内源泉所得・PE(恒久的施設)という考え方です。

これらは、単なる用語の問題ではありません。海外企業との契約、海外子会社との取引、海外拠点の設置、海外出向、ロイヤリティの支払、外国法人への業務委託、海外での営業活動といった場面で、日本で法人税申告が必要かどうか、日本で源泉徴収が必要かどうか、外国で課税された税金を日本で調整できるかどうか、そして税務調査でどの資料を示すべきかに、直接つながってくるものです。

なかでもPEは、海外取引の実務で見落とされやすい論点です。支店や登記された事務所がある場合だけでなく、国内で継続的に事業活動を行う場所、一定期間を超える建設工事現場、契約締結に関与する代理人などがある場合にも問題になります。

本稿では、国別税制や個別条約の詳細には踏み込みません。法人税申告・海外取引管理の前提として押さえておきたい「内国法人・外国法人・PE」の基本を整理していきます。

目次

まず押さえておきたい全体像

国際税務では、最初から税率や節税策を考えるのではなく、次の順番で整理していくことが大切です。

確認順序確認すること実務上の意味
1取引主体が内国法人か外国法人かどの範囲の所得が日本で課税対象になるかを判断する
2所得が国内源泉所得に該当するか外国法人・非居住者への課税や源泉徴収の入口になる
3PEがあるか申告課税・源泉課税・租税条約の判断に影響する
4所得がPEに帰属するかPEを通じた事業所得として申告対象になるかを判断する
5租税条約で修正されるか国内法どおりでよいか、軽減・免除・届出が必要かを確認する
6資料で説明できるか税務調査、契約交渉、申告書作成に耐える状態を作る

国際税務は、海外で発生した税金だけを扱う世界ではありません。日本法人の法人税申告、日本での源泉徴収、外国税額控除、移転価格、海外子会社管理──こうした実務すべての前提になる論点なのです。

内国法人とは何か

法人税法上、内国法人とは、国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいいます。これに対して、外国法人とは内国法人以外の法人を指します(出典:e-Gov法令検索|法人税法)。

ここで重要なのは、法人の実質的な活動場所ではなく、日本の法人税法上はまず「本店又は主たる事務所」が国内にあるかどうかで区分する、という点です。

たとえば、日本で設立され、日本に本店がある会社が海外支店を設けたとしても、その会社自体は内国法人のままです。海外で営業活動をしていても、法人そのものが外国法人になるわけではありません。

一方、海外で設立され、海外に本店を有する会社は、たとえ日本企業の100%子会社であっても、日本の法人税法上は外国法人です。日本親会社が実質的に経営管理しているからといって、その海外子会社が当然に内国法人になるわけではないのです。

この区分を誤ると、次のような判断でつまずきやすくなります。

誤りやすい理解正しく整理すべき視点
日本企業の海外子会社だから日本法人と同じように扱う海外子会社は原則として外国法人として別個に扱う
日本法人が海外支店を持つと外国法人になる日本に本店があれば内国法人であり、海外支店は同一法人内の拠点
海外企業でも日本で取引していれば日本法人と同じ外国法人は国内源泉所得やPEの有無を確認して課税関係を判断する
グループ会社間だから国内取引と同じ感覚でよい国外関連者取引、源泉税、租税条約、移転価格の確認が必要になる

内国法人と外国法人の区分は、国際税務の最初の分岐点だと考えてください。

内国法人と外国法人では、課税される所得の範囲が異なる

内国法人は、日本の法人税申告において、原則として各事業年度の所得を計算します。海外で生じた所得や海外支店の所得についても、日本の法人税申告に影響します。海外で課税された税金がある場合には、外国税額控除などの調整が問題になってきます。

一方、外国法人については、日本国内で稼得した国内源泉所得が日本での課税対象です。非居住者および外国法人については、日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされます(出典:国税庁|No.2878 国内源泉所得の範囲)。

この違いは、海外取引を行う会社にとって非常に重要です。

日本法人が海外で売上を得る場合には、日本法人側の法人税申告にその収益が関係してきます。他方、外国法人が日本で収益を得る場合には、その収益が国内源泉所得にあたるか、日本にPEがあるか、PEに帰属する所得かを確認する必要があります。

つまり、同じ「海外取引」であっても、次のどちらの方向の取引なのかによって、検討すべき論点が変わってくるのです。

取引の方向主な確認事項
日本法人が海外で所得を得る日本法人の益金、外国税額控除、海外PE、現地課税、租税条約
日本法人が外国法人へ支払う国内源泉所得、源泉徴収、租税条約届出、支払内容の分類
外国法人が日本で事業を行う国内源泉所得、PE、PE帰属所得、日本での申告義務
海外子会社と取引する移転価格、ロイヤリティ、役務提供、出向、配当、外国子会社合算税制

この整理をしないまま会計処理だけを進めてしまうと、支払時の源泉徴収漏れ、外国税額控除の適用漏れ、海外子会社との取引価格の説明不足、PE認定リスクなどにつながりかねません。

国内源泉所得とは何か

国内源泉所得とは、簡単にいえば、日本国内との結び付きがあるために、日本で課税対象になり得る所得のことです。

国内源泉所得の例としては、恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用・保有・譲渡による所得、国内不動産の譲渡対価、国内で行う人的役務提供の対価、不動産賃貸料、利子、配当、貸付金利子、工業所有権・著作権等の使用料、国内勤務に基因する給与などが挙げられます(出典:国税庁|No.2878 国内源泉所得の範囲)。

実務では、国内源泉所得を次のように捉えておくと整理しやすくなります。

所得の種類実務で確認すべき取引
PE帰属所得外国法人が日本のPEを通じて行う事業所得
国内資産関連所得日本国内の不動産、資産運用、資産譲渡
人的役務提供対価外国法人・非居住者が国内で行う専門業務、技術支援、芸能・スポーツ等
利子・配当内国法人からの配当、国内業務に係る貸付金利子等
使用料・ロイヤリティ特許、商標、著作権、ノウハウ、ソフトウェア、機械装置等の使用料
給与・報酬国内勤務、国内役務提供に基因するもの
匿名組合利益分配国内事業に対する匿名組合契約等に基づく利益分配

国内源泉所得に該当するかどうかは、支払名目だけでは判断できません。

たとえば「業務委託料」と記載されていても、実質的には使用料に近いことがあります。「システム利用料」とされていても、著作権等の使用料なのか、単なるクラウドサービス利用料なのかを確認しなければならない場合があります。「コンサルティング料」とされていても、役務提供地、成果物、契約内容によって税務上の性質が変わることがあります。

法人税申告や源泉徴収の実務では、勘定科目ではなく、契約内容と取引実態から国内源泉所得該当性を判断する。ここが押さえどころです。

PEとは何か

PEとは、Permanent Establishmentの略で、日本語では恒久的施設といいます。

PEは、大きく次の3つに区分されます。第一に、国内にある事業の管理場所、支店、事務所、工場、作業場、鉱山その他事業を行う一定の場所。第二に、1年を超えて行う国内の建設・据付工事等の場所。第三に、国内に置く代理人等で、反復して契約を締結する権限を有する者、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者などです(出典:国税庁|No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後))。

PEを整理すると、次のようになります。

PEの類型内容実務上の確認例
固定的施設PE支店、事務所、工場、作業場など、国内で事業を行う一定の場所日本国内に営業拠点、作業場所、実質的な執務場所があるか
建設PE1年を超える建設・据付工事等の場所工期、契約分割、指揮監督業務の期間を確認する
代理人PE契約締結権限や契約締結の主要な役割を反復して担う国内代理人等国内担当者・代理店・関連会社が契約形成にどこまで関与しているか

ここで注意しておきたいのは、PEの有無は形式だけで決まるものではない、という点です。

日本法人登記をしていないからPEがない、支店登録をしていないからPEがない、契約書上は海外法人が契約当事者だからPEがない──こうした形式だけで単純に言い切ることはできません。

PEの判定は、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して行われます。事業活動の拠点となっているホテルの一室はPEに該当し得る一方で、単なる製品の貯蔵庫はPEに該当しない、という整理がなされています(出典:国税庁|No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後))。

つまり、PEの判断では「場所があるか」だけでなく、そこで何をしているか、誰が何の機能を果たしているか、契約や収益獲得にどの程度関与しているかが重要になるのです。

PEがあると、何が変わるのか

PEが問題になるのは、その有無によって、日本での課税方法が大きく変わるからです。

非居住者および外国法人に対する課税では、国内源泉所得のみが課税対象とされます。ただし、同じ国内源泉所得であっても、PEの有無や、その国内源泉所得がPEに帰せられる所得かどうかによって、課税関係は変わってきます(出典:国税庁|No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後))。

たとえば、外国法人が日本国内にPEを有し、その所得がPEに帰属する場合には、PEを通じた事業所得として日本で申告課税の対象になり得ます。一方、PEを有しない外国法人、あるいはPEを有していてもその所得がPEに帰属しない場合には、所得の種類によって源泉徴収のみで課税関係が完結することがあります。

実務上は、次のように整理しておくと見通しが立ちます。

区分法人税務上の見方
外国法人に日本PEがない国内源泉所得の種類に応じて、源泉徴収や限定的な申告課税を確認する
外国法人に日本PEがあるその所得がPEに帰属するかを確認する
PEに帰属する所得であるPE帰属所得として申告課税の対象になり得る
PEに帰属しない国内源泉所得である所得種類に応じて源泉徴収等を確認する
租税条約がある国内法の課税関係が条約により制限・修正される可能性がある

このため、PEの有無は、単なる外国法人側の問題にとどまりません。日本法人が外国法人に支払う側である場合にも、相手方のPEの有無や所得帰属によって、源泉徴収、租税条約届出、契約上の税負担条項の整理が必要になります。

帰属主義とAOAとは何か

PEを理解するうえで避けて通れないのが、帰属主義とAOAです。

平成26年度税制改正により、外国法人に対する課税原則は、従来のいわゆる総合主義から、2010年改訂後のOECDモデル租税条約第7条の考え方であるAOA(Authorised OECD Approach)に沿った帰属主義へと見直されました。この改正は、原則として平成28年4月1日以後開始する事業年度の所得に対する法人税から適用されています(出典:国税庁|国際課税原則の帰属主義への見直しに係る改正のあらまし)。

帰属主義を簡単にいえば、外国法人の日本PEを、あたかも本店から分離・独立した企業であるかのように見て、そのPEに帰属すべき所得を計算する、という考え方です。

PE帰属所得とは、PEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場合に得られるべき所得をいいます。この計算では、PEと本店等との間の内部取引を認識し、内部取引に係る移転価格税制を適用して所得金額を算定します(出典:国税庁|国際課税原則の帰属主義への見直しに係る改正のあらまし)。

財務省の資料でも、PE帰属所得は、PEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場合に得られる所得とされています。そして、PEと本店等との内部取引について、独立企業間価格による取引が行われたものと擬制して内部取引損益を認識する、と整理されています(出典:財務省|平成26年度改正関係参考資料(国際課税関係))。

この考え方は、実務上、非常に重要です。

従来の感覚では、同じ法人の本店と支店の間に契約書や売買があるわけではないため、内部取引を意識しない処理になりがちでした。しかし、帰属主義・AOAのもとでは、PEがどの機能を果たし、どの資産を使い、どのリスクを負い、本店等との間でどのような内部取引があったと見るべきかを整理する必要があります。

この点は、国税庁の法人税基本通達関係の改正資料でも示されています。AOAの考え方として、PEに帰せられる所得を、PEの果たす機能および事実関係に基づいて外部取引・資産・リスク・資本をPEに帰属させ、PEと本店等との内部取引を認識し、その内部取引が独立企業間価格で行われたものとして算定する。そうした考え方が採用されているのです(出典:国税庁|法人税基本通達等の一部改正について)。

実務書上も、外国法人の国内PEに帰属する所得は国内源泉所得の一つとして位置付けられます。そのPEを通じて行う事業所得を計算する際には、本店等との内部取引について独立企業間価格で行われたものとみなして所得計算を行う点が強調されています。

PE帰属所得の判断で見るべきもの

PE帰属所得は、単に日本で売上が発生したかどうかだけで決まるものではありません。

国税庁の事務運営指針では、外国法人のPE帰属所得の適否を調査する場合、外国法人が作成したPE帰属外部取引に関する書類および内部取引に関する書類を確認するとされています。そのうえで、PEおよび本店等が果たす機能、事実分析、リスク、資産、外部取引、内部取引の特定を検証することが示されています(出典:国税庁|第2章 外国法人の恒久的施設帰属所得に係る調査)。

実務上は、次の観点を確認していきます。

確認事項具体的な確認内容
機能営業、交渉、製造、保管、技術支援、管理、意思決定をどこで行っているか
資産在庫、設備、無形資産、顧客リスト、システム等をどの拠点が使用しているか
リスク在庫リスク、信用リスク、為替リスク、契約リスク、品質保証リスクをどこが負うか
外部取引第三者との契約・販売・仕入・役務提供がどの拠点に帰属するか
内部取引本店とPEの間で資産移転、役務提供、資金提供等があったと見るべきか
費用配賦本店費用、共通費用、管理費用をどのようにPEに配賦するか
文書化契約書、業務分掌、稟議書、請求書、内部計算資料で説明できるか

このように、PE論点は税法だけを読んでも完結しません。会社の業務実態、契約関係、会計処理、管理会計、内部資料が結論を左右します。

租税条約との関係

国内法上、PEや国内源泉所得に該当する可能性がある場合でも、租税条約によって日本での課税関係が修正されることがあります。

国内法上のPEと異なる定めが租税条約にある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、租税条約上のPEを国内法上のPEとして扱います(出典:国税庁|No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後))。

国内源泉所得についても、租税条約によって異なる定めがある場合には、租税条約に従うことになります(出典:国税庁|No.2878 国内源泉所得の範囲)。

法人税の重要判例でも、外国法人の国内源泉所得について、租税条約において日本で課税する要件を満たすかを判断する必要があり、租税条約上の要件を満たさない限り法人税を課すことはできない、という整理が示されています。

したがって、実務では国内法だけで判断を終えてはいけません。

とくに、海外企業への使用料、利子、配当、役務提供対価などの支払では、国内法上の源泉徴収の要否を確認したうえで、租税条約により軽減・免除を受けられるか、そのための届出書や居住者証明書が必要かを確認します。

租税条約の適用を受ける場合、特典条項を有する租税条約では、届出書に加えて、特典条項に関する付表や居住者証明書が必要になることがあります。また、源泉徴収義務者が居住者証明書の原本提示を受けた場合には、その写しを作成し、提示日から5年間、国内の事務所等に保存する必要があるとされています(出典:国税庁|No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係))。

日本法人が実務で注意すべき場面

内国法人・外国法人・PEの基本は、日本法人側の法人税申告や支払実務にも直接関係してきます。

海外企業に支払う場合

外国法人へ支払う場合は、まず支払内容が国内源泉所得に該当するかを確認します。

非居住者または外国法人に対して、日本国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得を支払う者は、その支払の際、原則として所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません(出典:国税庁|No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率)。

支払が外貨建てである場合も、源泉徴収の計算では円換算が必要です。非居住者等に対する支払が外貨によっている場合には、円に換算したうえで源泉徴収を行います(出典:国税庁|No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率)。

支払前に確認すべきことは、少なくとも次のとおりです。

確認事項実務上の確認内容
相手方外国法人か、支店か、代理人か、契約上の受益者か
支払内容商品代金、役務提供対価、使用料、利子、配当、保証料、費用精算のいずれか
国内源泉所得該当性日本国内での役務提供、国内業務、国内資産との関係があるか
PEの有無相手方に日本PEがあるか、所得がPEに帰属するか
租税条約軽減・免除の可否、届出書、居住者証明書、特典条項の確認
契約条項源泉税負担者、グロスアップ、税務書類の提出義務
納付期限源泉徴収税額の納付時期、納付書の種類

この確認は、法人税申告時ではなく、契約前・支払前に行うべきものです。支払後に源泉徴収漏れが判明すると、相手方から回収できず、日本法人が実質的に負担することにもなりかねません。

海外企業が日本で活動する場合

外国法人が日本で営業活動、技術支援、工事、保守、販売支援を行う場合には、日本にPEが生じていないかを確認します。

とくに、海外本社の社員が日本に長期間滞在する場合、日本の関連会社が実質的に契約交渉や契約締結の主要な役割を担う場合、国内に継続的な作業場所がある場合には注意が必要です。

契約書上、外国法人が契約当事者になっていても、日本側の活動実態によってはPEが問題になり得るのです。

日本法人が海外支店を持つ場合

日本法人が海外支店や海外PEを有する場合、その日本法人は内国法人であり続けます。そのため、海外支店の所得も日本の法人税申告に関係してきます。

一方で、海外で課税される場合には、外国税額控除の検討が必要になります。平成26年度税制改正では、内国法人の外国税額控除制度について、国外PE帰属所得が国外源泉所得とされ、外国法人のPE帰属所得と同様に内部取引を認識して計算することとされました(出典:国税庁|国際課税原則の帰属主義への見直しに係る改正のあらまし)。

つまり、日本法人の海外支店についても、その海外拠点がどの機能を担い、どの資産を使い、どのリスクを負うかを整理しておくことが重要になります。

「支店」と「子会社」は税務上まったく違う

海外展開では、支店と子会社の違いを曖昧にしたまま処理してしまうことがあります。

しかし、税務上は大きく異なります。

区分法人格日本法人側の見方主な税務論点
海外支店日本法人と同一法人内国法人の一部海外PE、外国税額控除、国外PE帰属所得、内部取引
海外子会社日本法人とは別法人外国法人・国外関連者移転価格、外国子会社配当、外国子会社合算税制、出向、ロイヤリティ
外国法人の日本支店外国法人と同一法人外国法人の日本PEPE帰属所得、日本申告、内部取引、源泉税
外国法人の日本子会社日本法人として別法人内国法人通常の内国法人課税、親会社との国外関連取引

海外支店は「同じ法人の一部」であり、海外子会社は「別法人」です。

そのため、海外支店とのやり取りでは、同一法人内の内部取引・国外PE帰属所得・外国税額控除が問題になります。一方、海外子会社との取引では、別法人間取引として、移転価格、ロイヤリティ、利子、役務提供、配当、外国子会社合算税制などが問題になります。

この切り分けを誤ると、法人税申告、源泉徴収、外国税額控除、移転価格文書化のいずれにも影響が及びます。

PE判断で「ない」と決めつけてはいけない場面

中小・中堅企業でも、次のような場面ではPEの検討が必要になります。

場面確認すべき理由
海外企業の社員が日本で継続的に業務を行っている固定的施設PEや人的役務提供の国内源泉所得が問題になる可能性がある
日本の関連会社が海外企業の契約交渉を実質的に行っている代理人PEの可能性を確認する必要がある
海外企業が日本で長期工事・据付・保守を行う建設PEや国内源泉所得を確認する必要がある
海外企業の日本向け営業拠点として特定場所を継続使用している固定的施設PEの有無を確認する必要がある
海外本社と日本支店の間で費用配賦や内部取引があるPE帰属所得、内部取引、文書化が問題になる
日本法人が海外支店を通じて事業を行っている国外PE帰属所得と外国税額控除を確認する必要がある

PEの有無は、取引開始時点では意識されていなくても、税務調査や海外税務当局の確認をきっかけに問題になることがあります。

そのため、海外取引を始めた段階、海外企業が日本で活動する段階、海外支店や駐在員事務所を設ける段階で、早めに整理しておきたいところです。

法人税申告前に整理しておくべき資料

内国法人・外国法人・PEに関する判断では、資料が決め手になります。

税務上の結論は、契約書だけではなく、実際の活動、意思決定、役務提供、資産利用、リスク負担によって左右されます。したがって、申告時や調査時に説明できる資料を残しておくことが欠かせません。

資料確認する目的
海外取引先一覧相手方が外国法人か、関連者か、国・地域を確認する
契約書・注文書・請求書取引内容、支払名目、税負担条項、役務提供地を確認する
送金明細・入金明細支払時期、外貨換算、源泉税控除、入金差額を確認する
業務報告書・成果物役務提供の内容と場所を確認する
組織図・業務分掌本店、支店、子会社、代理人の機能を確認する
出張記録・滞在記録国内外での活動期間、PE・役務提供地を確認する
代理店契約・販売支援契約代理人PEや契約締結関与の有無を確認する
海外支店の損益資料国外PE帰属所得、外国税額控除の検討資料にする
本店費用・共通費用の配賦資料PE帰属所得計算の合理性を示す
租税条約届出書・居住者証明書源泉税の軽減・免除の根拠資料にする
稟議書・議事録海外拠点設置、契約締結、価格設定の意思決定を残す

とくにPE帰属所得については、外部取引をPEに帰属させるための文書、内部取引を認識し性質決定するための文書、費用配賦の合理性を説明する文書が重要であることが示されています(出典:国税庁|国際課税原則の帰属主義への見直しに係る改正のあらまし)。

実務判断の進め方

内国法人・外国法人・PEの論点は、次の順序で整理していくと判断しやすくなります。

1. 法人格を確認する

まず、取引相手や拠点が、同一法人の一部なのか、別法人なのかを確認します。

海外支店、海外子会社、駐在員事務所、代理店、業務委託先、販売会社は、それぞれ税務上の扱いが異なります。

2. 所得の種類を確認する

次に、売上、使用料、役務提供対価、利子、配当、不動産所得、資産譲渡所得など、所得の性質を整理します。

勘定科目だけで判断せず、契約内容・成果物・役務提供地・権利の使用有無を確認します。

3. 国内源泉所得に該当するか確認する

外国法人への支払や、外国法人の日本での収益について、国内源泉所得に該当するかを確認します。

この判断は、源泉徴収や外国法人の申告義務に直結します。

4. PEの有無を確認する

国内に事業を行う一定の場所があるか、長期工事があるか、契約締結に関与する代理人がいるかを確認します。

形式的な拠点名や登記の有無だけではなく、実際の機能を確認することが大切です。

5. PEに所得が帰属するか確認する

PEがある場合でも、その所得がPEに帰属するかを確認します。

機能、資産、リスク、外部取引、内部取引、費用配賦を整理し、PE帰属所得を説明できる状態にしておきます。

6. 租税条約を確認する

国内法上の課税関係を確認したうえで、租税条約による修正を確認します。

条約適用には、届出書、居住者証明書、特典条項に関する付表などの手続が必要になることがあります。

7. 申告・源泉・資料保存に落とし込む

最後に、法人税申告、源泉徴収、外国税額控除、別表、支払調書、資料保存へと落とし込みます。

税務判断は、結論だけではなく、資料と記録まで整えて初めて実務上の意味を持ちます。

まとめ:内国法人・外国法人・PEは国際税務の入口である

内国法人・外国法人・PEは、国際税務の基礎用語ですが、実務上は非常に重要な判断領域です。

論点重要なポイント
内国法人国内に本店又は主たる事務所を有する法人。海外支店があっても日本法人であることに変わりはない
外国法人内国法人以外の法人。日本親会社の海外子会社であっても、原則として別個の外国法人として扱う
国内源泉所得外国法人・非居住者が日本で課税されるかを判断する入口になる
PE外国法人が日本で申告課税を受けるか、所得がどこに帰属するかを左右する
帰属主義PEを本店等から分離・独立した企業のように見て、PEに帰属する所得を計算する考え方
AOAPEの機能、資産、リスク、内部取引を踏まえてPE帰属所得を算定する考え方
租税条約国内法の課税関係を修正する可能性があり、届出・証明書の確認が必要
実務資料契約書、業務実態、送金資料、滞在記録、費用配賦資料、稟議書が判断を支える
相談タイミング契約前、支払前、海外拠点設置前、申告前に確認することが望ましい

国際税務では、「海外取引だから海外だけの問題」と考えてしまうと、国内申告・源泉徴収・税務調査対応で問題が生じます。

内国法人か外国法人か。国内源泉所得か。PEがあるか。PEに所得が帰属するか。租税条約で修正されるか。資料で説明できるか。

この順序で確認していくことで、法人税申告の精度を高められるだけでなく、海外取引や海外展開を、将来の経営判断に耐える形で進めやすくなります。

内国法人・外国法人・PEに関する法人税務の整理をご相談ください

海外取引や海外拠点がある場合、法人税申告では、売上・費用の計上だけでなく、内国法人・外国法人の区分、国内源泉所得、PE、租税条約、源泉徴収、外国税額控除、移転価格までを一体で確認する必要があります。

「海外企業への支払で源泉徴収が必要か分からない」 「海外企業の日本での活動がPEに該当しないか確認したい」 「海外支店や海外子会社との取引を法人税申告でどう整理すべきか不安がある」 「契約前・送金前・申告前に国際税務の論点を整理したい」

このような場合には、契約書、取引資料、送金資料、組織図、海外拠点資料を確認したうえで、税務上の論点を早めに整理しておくことが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人税申告を単なる申告書作成としてではなく、会社の取引実態、会計処理、税務判断、資料管理を結び付けて整理する実務としてご支援しています。

海外取引・海外拠点・外国法人との取引に関する法人税務の確認が必要な場合は、当事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

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