M&A支援者の報酬体系と利益相反を確認する|手数料の安さではなく判断の質で選ぶ

M&A支援者を選ぶとき、手数料の高い・安いが気になるのは当然のことです。

ただ、M&Aにおける報酬体系は、単なる費用の問題にとどまりません。報酬がいつ発生するのか。何を基準に計算されるのか。成約しなかった場合にも支払うのか。相手方からも報酬を受け取るのか。成功報酬という仕組みが、支援者にどのような行動の動機を生むのか。そして、契約が終わった後にも手数料が発生する可能性はあるのか。

こうした点は、M&Aの進め方や、支援者から受ける助言の性質、利益相反の有無、そして最終的な意思決定に納得できるかどうかに、そのまま結びついていきます。

M&Aは、「よい相手を見つける」「高く売る」「安く買う」だけの取引ではありません。売り手にとっては、会社そのものはもちろん、株主、従業員、取引先、金融機関、経営者保証、引退後の関与にまで影響が及びます。買い手にとっても、投資仮説、価格、DD、契約条件、資金調達、PMI、買収後の管理体制といった広い範囲に関わってきます。

だからこそ、M&A支援者の報酬体系は、「いくらかかるか」だけで見るのではなく、「その報酬で、どの判断材料を、どの立場から、どこまで整えてくれるのか」という観点から確認しておきたいところです。

中小企業庁は、中小M&Aガイドライン第3版のなかで、提供される業務の内容や質と手数料の額の関係、相手方の手数料を含めた確認事項、仲介者・FAに求められる説明、仲介者における利益相反といった論点を整理しています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン

目次

報酬体系を見る前に、まず確認すべきこと

報酬体系に目を向ける前に、最初に確かめておきたいことがあります。それは、その支援者が「そもそも何をしてくれる人なのか」という点です。

ひとくちにM&A支援者といっても、その業務範囲は大きく異なります。相手方の探索を中心に担う場合もあれば、候補先の整理、情報管理、価格目線の提示、基本合意、DD調整、契約交渉、クロージング支援、さらにはPMIへの橋渡しまで関与する場合もあります。

中小M&Aガイドラインでも、仲介契約・FA契約の業務範囲として、マッチング、バリュエーション、DD、スキーム策定、クロージング、PMIなどが例示されています。そのうえで、業務範囲は仲介者・FAによって異なるため、手数料と照らし合わせて十分な内容かどうかを検討することが望ましいとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

つまり、手数料を金額だけで比べても、あまり意味はありません。

同じ成功報酬であっても、一方は相手探しと連絡調整だけ、もう一方はプロセス設計、条件整理、専門家連携、DD結果の反映、最終契約前の論点整理まで含むのであれば、単純な高低比較は成り立たないからです。

確認しておきたい順番は、次のとおりです。

  1. 仲介者なのか、片側FAなのか
  2. 誰の立場で助言するのか
  3. 業務範囲はどこまでか
  4. 税務・法務・財務DD・契約レビューは含まれるのか
  5. 報酬はいつ、何を基準に、いくら発生するのか
  6. 成約しない場合、契約終了後、候補先変更時にも費用が発生するのか
  7. 利益相反が生じる場面をどう説明し、どう管理するのか

報酬体系から先に見てしまうと、どうしても「高い・安い」の話になりがちです。本来は、「自社が後から説明できる判断をするために、必要な支援が含まれているか」を先に確かめておくほうがよいと考えています。

M&A支援者の主な報酬体系

M&A支援者の報酬は、一般的に次のような項目で構成されます。

  • 着手金
  • 月額報酬
  • 中間金
  • 成功報酬
  • 最低手数料
  • 実費
  • 外部専門家費用

中小M&Aガイドラインでも、着手金、月額報酬、中間金、成功報酬などが例示されています。成功報酬のみを請求する完全成功報酬型の仲介者・FAがいる一方で、複数の報酬項目を請求する場合もあるとされています。また、成功報酬の算定基準や最低手数料の有無・水準は仲介者・FAごとに異なるため、比較検討が望ましいとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

ここからは、それぞれの意味を、経営判断に使える形で整理していきます。

着手金

着手金は、主に仲介契約・FA契約を締結する時点で発生する報酬です。

着手金がある場合、支援者は初期段階から作業に着手しやすくなります。売り手であれば、資料整理、候補先探索の準備、譲渡方針の整理などが動き出します。買い手であれば、買収目的の整理、候補先の絞り込み、初期的な評価方針の検討などが進んでいきます。

ただし、着手金があるからといって、十分な支援が保証されるわけではありません。大切なのは、その着手金が、どのような具体的な業務に対応しているのかという点です。

契約前には、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • 着手金は何の作業に対する報酬か
  • 候補先が見つからない場合でも返還されないのか
  • 途中解約時の取扱いはどうなるのか
  • 成功報酬が発生した場合、着手金は成功報酬に充当されるのか
  • 初期整理、資料作成、候補先探索、面談調整のどこまで含まれるのか

着手金そのものは、支援者の初期作業に対する対価として合理性のあるものです。とはいえ、依頼者から見れば、M&Aが成立しなくても支払う費用でもあります。着手金を支払うのであれば、「初期段階で何が成果物として手元に残るのか」を確認しておくとよいでしょう。

月額報酬

月額報酬は、リテーナーフィーとも呼ばれ、契約期間中に毎月発生する定額の報酬です。

これは、継続的な支援に対する対価として設計されるものです。案件探索、候補先対応、資料更新、交渉準備、社内説明資料の作成支援、プロジェクト管理など、一定期間にわたって継続的に支援を受ける場合には、合理的な仕組みといえます。

一方で、月額報酬には、案件が長期化するほど費用がかさんでいくという性質があります。

そのため、契約前には次の点を確認しておきたいところです。

  • 月額報酬は何か月発生するのか
  • 契約期間と自動更新の有無
  • 候補先探索が進まない期間も同額か
  • 月次でどのような作業報告を受けられるのか
  • 成功報酬が発生した場合に控除されるのか
  • 契約解除時に未経過分の精算があるのか

月額報酬は、支援者が継続的に関与するための仕組みです。ただ、依頼者側が進捗を把握しないまま任せきりにしてしまうと、「毎月費用は発生しているのに、何が進んでいるのか分からない」という状態に陥りかねません。

月額報酬を支払うのであれば、月次で論点、候補先、進捗、未了事項、翌月の作業予定を確認していく運用が欠かせません。

中間金

中間金は、基本合意の締結時など、M&A成立前の一定の節目で発生する報酬です。マイルストーンフィーと呼ばれることもあります。

中間金が設定されるのは、M&A成立までには長いプロセスがあり、候補先探索、初期交渉、基本合意といった段階で、支援者が一定の成果を出しているためです。

ただ、依頼者の立場からすると、基本合意の後にDDで重要な問題が見つかり、M&Aを中止することもあります。その場合でも中間金が返還されない設計になっていれば、依頼者は「まだ最終判断の前なのに費用が確定する」という状況に置かれることになります。

確認しておきたい点は、次のとおりです。

  • どの時点で中間金が発生するのか
  • 基本合意の締結だけで発生するのか
  • 独占交渉の開始で発生するのか
  • 中間金は成功報酬に充当されるのか
  • DD後に撤退した場合の取扱い
  • 基本合意の内容がどの程度固まっていれば発生するのか

中間金は、支援者にとっては途中までの成果に対する対価ですが、依頼者にとっては「まだ実行判断が確定していない段階で発生する費用」です。発生条件を曖昧にしないことが、ここでは何より重要になります。

成功報酬

成功報酬は、主にクロージング時など、案件が完了したときに発生する報酬です。

完全成功報酬型の場合、M&Aが成立しなければ支援者への報酬は発生しません。そのため、依頼者にとっては初期費用を抑えやすいように見えます。中小M&Aでは、この点を魅力に感じる方も少なくないでしょう。

ただ、成功報酬型には、見落としたくない注意点があります。

成功報酬は、M&Aが成立したときにはじめて発生します。したがって、支援者には、構造上、成約へ向かおうとする動機が生じます。これは成功報酬という仕組みからすれば当然のことであり、それ自体がただちに問題になるわけではありません。

問題になり得るのは、その動機が、依頼者にとって必要な条件変更や追加調査、契約上の保護、撤退判断よりも、成約そのものを優先する方向に働いていないか、という点です。

成功報酬型の支援者を利用する場合には、次の点を確認しておく必要があります。

  • 成功の定義は何か
  • クロージング時に発生するのか
  • 基本合意、最終契約、支払完了のどの時点で発生するのか
  • 分割払い、アーンアウト、役員退職慰労金などは基準額に含まれるのか
  • DD後に価格変更した場合、成功報酬はどう変わるのか
  • 撤退判断を支援する義務が明確か
  • 条件変更を提案した場合に、報酬はどのように計算されるのか

成功報酬は、M&A支援において広く使われている報酬体系です。ただし依頼者側は、「成約すればよい」のではなく、「この条件で実行してよいと、自分の言葉で説明できるか」を判断していかなければなりません。

成功報酬の基準額を確認する

成功報酬で特に重要になるのは、何を基準に計算するのか、という点です。

一般的には、次のような基準が使われることがあります。

  • 譲渡額または譲受額
  • 移動総資産額
  • 純資産額
  • 企業価値または事業価値に近い概念
  • 定額
  • 複数基準の組合せ

中小M&Aガイドラインでは、成功報酬の基準となる価額として、譲渡額・譲受額、移動総資産額、純資産額が整理されています。このうち移動総資産額は、譲渡額に負債額を加えたものを基準とする考え方です。そのため、同じ譲渡額であっても、負債額が大きいほど手数料が高くなることがあると説明されています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

ここは、とても大切なところです。

たとえば、売り手が実際に受け取る金額は株式譲渡代金であっても、手数料の基準が移動総資産額になっていれば、借入金が多い会社では手数料が大きく膨らむ可能性があります。買い手側でも、譲受額が高くなるほど成功報酬が増える設計であれば、支援者の報酬と、買い手が価格を抑えたいという動機とが、必ずしも一致しないことがあります。

基準額の違いは、単なる計算上の技術ではありません。売り手の手残り、買い手の投資採算、そして支援者の行動の動機にまで影響する論点だととらえておきたいところです。

レーマン方式を見るときの注意点

M&A支援者の成功報酬では、レーマン方式が使われることがあります。

レーマン方式とは、基準となる価額を階層に分け、それぞれの階層ごとに一定の料率を掛けて報酬を計算する方式です。一般的には、金額が大きくなるほど料率が下がる設計が多く見られます。

ただし、レーマン方式といっても、実務では支援者ごとに中身が異なります。

確認しておきたいのは、次の点です。

  • 基準額は譲渡額か、移動総資産額か、純資産額か
  • 各階層の料率はいくらか
  • 税抜・税込のどちらで表示されているか
  • 最低手数料があるか
  • 着手金や中間金が成功報酬に充当されるか
  • 分割払い、退職金、アーンアウト、役員貸借の精算などが基準額に含まれるか
  • 負債引受、保証解除、債務免除などの経済効果をどう扱うか

レーマン方式という名前だけでは、実際の手数料負担は見えてきません。同じ料率表に見えても、基準額が異なれば、手数料は大きく変わってくるからです。

最低手数料に注意する

中小・中堅企業のM&Aで、特に気をつけておきたいのが最低手数料です。

最低手数料とは、成功報酬の計算結果が一定額を下回る場合でも、あらかじめ定めた最低額を支払う仕組みのことです。

支援者の側から見れば、小規模な案件であっても一定の作業量が発生するため、最低手数料には合理性があります。規模が小さくても、秘密保持、候補先探索、資料整理、面談調整、基本合意、DD対応、契約調整、クロージング管理といった作業は欠かせないからです。

ただ、売り手側から見ると、譲渡額に対して最低手数料の負担が重くなることがあります。譲渡額から手数料、税金、借入金返済、役員貸借の精算、専門家費用を差し引いていくと、思っていたよりも手残りが少なくなる、という事態も起こり得ます。

中小M&Aガイドラインでも、最低手数料が設けられるケースは多く、最低手数料を含めた算出方法を明確に確認する必要があるとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

最低手数料を見るときは、単に金額の大きさを見るのではなく、次の順番で確認していくとよいでしょう。

  • 譲渡額に対して何%程度の負担になるか
  • 税金や借入返済後の手残りに対してどの程度の負担か
  • 別途、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士等の費用が発生するか
  • M&Aが不成立になった場合の既払費用はどうなるか
  • 小規模案件で、本当にその支援範囲が必要か
  • 支援範囲を限定した別契約が可能か

最低手数料は、「高いから悪い」というものではありません。ただ、依頼者が内容を理解しないまま契約してしまうと、後から納得しにくい費用になりやすい項目でもあります。

実費と外部専門家費用は別に確認する

M&A支援者の報酬とは別に、実費や外部専門家費用が発生することがあります。

実費には、交通費、宿泊費、資料取得費、登記簿・信用調査費用、データルーム費用などが含まれることがあります。

また、M&Aを進めていく過程では、次のような外部専門家費用が別途発生することもあります。

  • 弁護士によるNDA、基本合意、SPAレビュー
  • 公認会計士による財務DD、バリュエーション、価格調整支援
  • 税理士による税務DD、スキーム税務、株主課税の検討
  • 司法書士による登記、株式譲渡関連手続
  • 社会保険労務士による労務DD、人事制度確認
  • 不動産鑑定士、環境調査、IT専門家等による個別調査

ここで気をつけておきたいのは、「M&A支援者に依頼したのだから、DDや契約レビューも当然含まれているはずだ」と思い込まないことです。

中小M&Aガイドラインでも、仲介者・FAがDDを自ら実施しない場合には、その旨を明確に説明し、DDについては他の支援機関に依頼する必要があることを伝えるよう求めています。さらに仲介者の場合、バリュエーションやDDのように一方当事者の意向を踏まえた内容になりやすい工程について、結論を決定しないときはその旨を説明し、必要に応じて士業等専門家の意見を求めるよう伝えることが求められています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

M&A支援者の見積りを確認するときは、「総額」だけを見るのではなく、「何が含まれ、何が別料金なのか」を分解して確かめておく必要があります。

報酬体系は支援者の行動インセンティブに影響する

報酬体系は、支援者の行動の動機に影響します。

これは、支援者を疑うための見方ではありません。あくまで構造を理解するための見方です。

たとえば完全成功報酬型であれば、成約しなければ報酬は発生しません。そのため、支援者には成約を目指そうとする動機が生じます。

譲渡額を基準にした成功報酬であれば、売り手側では高い譲渡額を目指す方向と、ある程度まで整合します。一方、買い手側では、買収金額が上がるほど支援者の報酬も増えるため、買い手の価格抑制とは必ずしも整合しません。

移動総資産額を基準にした場合は、譲渡額が同じでも、負債の多い会社では手数料が高くなり得ます。最低手数料が高い場合には、小規模案件で、譲渡額に対する費用負担が重くなります。月額報酬がある場合、支援者は継続的に関与しやすくなりますが、案件期間が長引くほど依頼者の費用負担は増えていきます。

つまり報酬体系は、M&Aの意思決定そのものに影響を与えるということです。

報酬体系を確認する目的は、「少しでも安い支援者を探すこと」ではありません。支援者の行動の動機を理解したうえで、自社が判断を手放さないようにすることにあります。

仲介者における利益相反

仲介者は、売り手と買い手の双方と契約し、双方から手数料を受け取ることがあります。

この形であれば、売り手と買い手の双方の意向を把握しながら、M&A成立に向けて調整を進めることができます。中小M&Aでは、相手方の探索や、円滑な手続進行という面で有効に機能することもあります。

一方で、売り手と買い手の利害は、必ずしも一致するものではありません。

売り手は、より高い価格、軽い補償責任、経営者保証の解除、従業員・取引先への配慮、手離れのよい条件を望みます。買い手は、適正な価格、十分なDD、契約上の保護、価格調整、補償、前提条件、買収後の管理可能性を重視します。

このように、価格、支払条件、DD、表明保証、補償、経営者保証、クロージング条件、成立後の運営といった場面では、両者の利害が対立します。

中小M&Aガイドラインでは、仲介者は双方の当事者から手数料を受ける旨を伝えること、両当事者間で利益が対立する事項を開示することなどが必要とされています。さらに、相手方の手数料も依頼者の利益に影響する構造にあるため、仲介契約を締結する前に、相手方の手数料に関する事項も書面交付などによって説明すべきだとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

仲介者を利用すること自体に問題があるわけではありません。問題は、仲介者の立場を理解しないまま、自社側の助言者であるかのように扱ってしまうことにあります。

仲介者が特に慎重であるべき領域

仲介者は、双方の合意形成を支援します。ただ、次の領域では、どうしても一方当事者の利害が反映されやすいため、慎重な整理が求められます。

  • バリュエーション
  • DD結果の評価
  • 価格調整
  • 補償条項
  • 表明保証
  • 経営者保証
  • クロージング条件
  • 撤退判断
  • 相手方の信用調査
  • 最終契約後のリスク説明

中小M&Aガイドラインでは、仲介者は利益相反防止の観点から、バリュエーションやDDのように一方当事者の意向を踏まえた内容になりやすい工程の結論を決定しないなど、両当事者の利益が対立する工程で実施できる支援には限界があると整理されています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

こうした場面では、必要に応じて、公認会計士、税理士、弁護士といった独立した専門家のレビューを入れることが重要になります。

特に売り手側では、提示価格だけでなく、手残り、税務、表明保証責任、補償、経営者保証、支払条件まで確認しておきたいところです。買い手側では、価格、DD結果、契約上の保護、買収後の資金繰り、PMI負担、撤退ラインを確認しておく必要があります。

禁止・問題となり得る利益相反行為を理解する

利益相反は、構造として存在するものです。

ただし、そのなかには、単なる構造上の注意点にとどまらず、不適切な行為として問題になり得るものもあります。

たとえば、次のような行為は、依頼者の判断を歪めてしまいます。

  • 一方当事者から伝達を求められた事項を、他方に伝えない
  • 一方当事者が実際には告げていない事項を、偽って伝える
  • 一方当事者に有利、または不利な情報を認識しているのに秘匿する
  • 正規の手数料とは別に、価格差分の一定割合を追加報酬として要求する
  • 成約を優先し、不利な事情を説明しない
  • 相手方の資金力や信用に問題があるのに、十分に確認しない

中小M&Aガイドラインでは、仲介者は両当事者に対して中立・公平でなければならず、不当に一方当事者の利益または不利益となるような利益相反行為をしてはならないとされています。また、伝達すべき事項を伝えないこと、虚偽の伝達、一方当事者に有利・不利な情報の秘匿などが、問題となる行為として整理されています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

依頼者側は、支援者を選ぶ際に、こうした利益相反をどのように説明しているかを見ておきたいところです。

「利益相反はありません」と言い切る支援者よりも、「この場面では利害が対立し得るので、ここから先は自社側の専門家の確認を入れたほうがよい」と説明できる支援者のほうが、実務上は信頼しやすい、というのが正直なところです。

相手方の手数料も確認する

仲介者の場合、自社だけでなく、相手方からも手数料を受け取ることがあります。

このとき、相手方の手数料は自社には関係ないように見えるかもしれません。しかし実際には、相手方の手数料もM&Aの条件に影響し得ます。

たとえば、買い手側が高額な手数料を負担するとなれば、買い手の総投資額は増えます。その結果、買収価格、支払条件、価格調整、引継ぎ条件、補償条件などに影響が及ぶことがあります。

また、仮に売り手側が手数料の減額を受けたとしても、その分、相手方の手数料が増額されているのであれば、全体としての経済条件には影響が出ている可能性があります。

中小M&Aガイドラインでは、相手方の手数料の額は依頼者の利益に影響する構造にあるため、仲介契約を締結する前に、相手方の報酬率、報酬基準額、最低手数料、発生タイミングなどについても説明すべきだとされています。さらに、相手方の手数料を増額する場合には、一定の開示が必要になることも整理されています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

自社の手数料だけを見て「安い」と判断するのではなく、相手方の手数料も含めた全体の動機を確認しておくことが大切です。

FAにも利益相反はあり得る

FAは、原則として売り手または買い手のどちらか一方の立場に立って助言します。

そのため、仲介者に比べると、自社側の利益に沿った支援を受けやすい構造があります。売り手側FAであれば、売却条件、候補先比較、情報開示、価格交渉、DD対応、契約条件の整理を、売り手の立場から支援します。買い手側FAであれば、買収戦略、投資仮説、候補先評価、価格、DD、契約条件、社内承認を、買い手の立場から整理します。

ただ、FAであっても、利益相反がまったくないわけではありません。

典型的には、次のような論点があります。

  • 成功報酬が成約への動機を生む
  • 特定候補先や特定金融機関との関係がある
  • 紹介手数料やリファラルフィーがある
  • 相手方FAから何らかの支払いを受ける
  • 自社グループ内の別部門が資金調達やDDを受注する
  • フェアネス・オピニオンや評価業務の独立性が問題になる
  • 途中で「止めるべき」と言いにくい報酬設計になっている

中小M&Aガイドラインでは、FAの場合であっても、相手方を支援するFAから支払を受けるときは、支払額、名目、支払時期について依頼者に説明すべきだとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

FAは片側助言者として重要な役割を果たします。ただ、依頼者側としては、FAの報酬設計、関連取引、紹介関係、専門家連携の独立性についても確認しておきたいところです。

専任条項を確認する

仲介契約・FA契約では、専任条項が定められることがあります。

専任条項とは、契約期間中、他のM&A支援者に依頼しない、あるいは他の候補先探索ルートを使わないことを求める条項です。

専任条項には、一定の合理性があります。支援者が人的・物的なコストをかけて候補先探索や交渉を行う以上、依頼者が複数の支援者を無秩序に使えば、情報管理が難しくなってしまいます。同じ候補先に複数のルートから接触すれば、相手方の信頼を損ねることにもなりかねません。

一方で、専任条項の範囲が広すぎると、依頼者の選択肢を必要以上に狭めてしまいます。

確認しておきたい点は、次のとおりです。

  • 他の支援者に相談できるか
  • セカンドオピニオンは許されるか
  • 税理士、弁護士、公認会計士への相談も制限されるのか
  • 自社で見つけた候補先への接触も禁止されるのか
  • 専任期間はどのくらいか
  • 解除できる条件は何か
  • 進捗がない場合に契約を見直せるか

中小M&Aガイドラインでは、契約前の説明事項として、専任条項、セカンドオピニオンの可否、直接交渉の制限、テール条項、契約期間、解除条項などが挙げられています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

M&Aでは、秘密保持と選択肢の確保とのバランスが重要です。専任条項は、まさにそのバランスを左右する条項だといえます。

直接交渉の制限を確認する

仲介契約・FA契約では、依頼者が相手方候補と直接交渉することを制限する条項が入ることがあります。

これにも、一定の合理性があります。交渉の窓口を一本化すれば、条件交渉、情報管理、スケジュール管理がしやすくなるからです。

しかし、直接交渉の制限が広すぎると、自社がもともと知っている候補先や、自社で新たに見つけた候補先との検討まで制限されてしまうおそれがあります。さらに、通常の取引関係に関する連絡まで制限されると、事業運営に支障が出かねません。

中小M&Aガイドラインでは、直接交渉の制限は、原則として、M&A専門業者が関与・接触し、紹介した候補先に限定すべきであり、交渉の目的もM&Aに関するものに限定すべきだと整理されています。また、その有効期間は、仲介契約・FA契約が終了するまでに限定すべきだとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

直接交渉の制限は、支援者の報酬を保護するだけでなく、依頼者の自由な経営判断にも影響します。契約前に必ず確認しておきたい条項です。

テール条項を確認する

テール条項とは、仲介契約・FA契約が終了した後、一定期間内にM&Aが成立した場合に、契約は終わっていても元の支援者が手数料を請求できるとする条項です。

テール条項にも、一定の合理性があります。支援者が候補先を紹介し、相当程度までプロセスを進めたにもかかわらず、依頼者が手数料を避けるために契約を終了し、その後で同じ候補先とM&Aを成立させる──こうした場合に、支援者の貢献をどう評価するか、という問題があるためです。

しかし、テール条項が広すぎると、依頼者の将来のM&A判断を縛ってしまいます。

中小M&Aガイドラインでは、テール期間は最長でも2年から3年以内を目安とすることが望ましいとされ、対象は、M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に紹介された譲り受け側に限定すべきだとされています。また、ロングリストやショートリスト、ノンネーム・シートの提示にとどまる場合は、テール条項の対象とすべきではないと整理されています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

テール条項を見るときは、次の点を確認しておきたいところです。

  • テール期間は何年か
  • 対象候補先は誰か
  • ネームクリア済みの候補先に限定されているか
  • 単にロングリストに載った候補先まで含まれていないか
  • 契約終了後に自社で見つけた候補先も対象になるのか
  • 複数の支援者から同じ候補先を紹介された場合の取扱い
  • 手数料発生条件が明確か

テール条項は、契約終了後に問題化しやすい条項です。契約の時点で、十分に理解しておく必要があります。

責任・免責条項を確認する

仲介契約・FA契約では、支援者の責任や免責について定められることがあります。

M&A支援者は、相手方探索、資料整理、プロセス管理、条件調整などを担います。しかし、M&Aの最終判断は、あくまで依頼者自身が行うものです。そのため契約上、支援者の責任範囲が限定されることがあります。

一方で、支援者の説明不足、重要情報の不開示、利益相反の未説明、手続管理のミス、守秘義務違反などによって、依頼者に損害が生じる可能性もあります。

確認しておきたい点は、次のとおりです。

  • どのような場合に支援者が責任を負うのか
  • 損害賠償の上限はあるか
  • 故意・重過失の場合も免責されるのか
  • 守秘義務違反の責任はどうなるか
  • 情報の正確性について、支援者はどこまで責任を負うのか
  • 契約終了後も効力を持つ条項は何か
  • 紛争が生じた場合の対応はどうなるか

中小M&Aガイドラインでは、責任・免責条項についても契約前に説明すべき事項として整理されています。ただし、説明されたことと、法的に効力が認められることとは別問題である、とも付け加えられています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

責任・免責条項は、契約書の後ろのほうに置かれがちです。しかし実務上は、見過ごせない重要な条項です。

報酬体系を確認するときの実務的な視点

報酬体系を確認するときは、次の順番で見ていくと整理しやすくなります。

1. まず、総額を把握する

着手金、月額報酬、中間金、成功報酬、最低手数料、実費、外部専門家費用、消費税まで含めて、最終的にいくら発生し得るかを確認します。

売り手であれば、譲渡代金から手数料、税金、借入返済、役員貸借の精算、専門家費用を差し引いた手残りを見ます。買い手であれば、買収代金だけでなく、手数料、DD費用、契約費用、登記費用、資金調達費用、PMI費用まで含めた総投資額を見ます。

2. 次に、発生タイミングを確認する

いつ支払うのかを確認します。

M&Aが成立する前に発生するのか。基本合意の時点で発生するのか。最終契約の締結時に発生するのか。クロージング時に発生するのか。分割払いの場合、どの時点で成功報酬が計算されるのか。そして、契約終了後にも発生する可能性があるのか。

発生のタイミングは、資金繰りと撤退判断に影響します。

3. 基準額を確認する

成功報酬の基準額が何かを確認します。

譲渡額なのか。移動総資産額なのか。純資産額なのか。役員退職慰労金、負債引受、借入返済、価格調整、アーンアウトを含むのか。税抜・税込のどちらか。最低手数料が優先されるのか。

基準額を誤解すると、想定よりも高い手数料になる可能性があります。

4. 業務内容と照合する

手数料と業務範囲が見合っているかを確認します。

相手探しだけなのか。条件交渉まで含むのか。基本合意の確認まで含むのか。DDの調整だけなのか、実施まで含むのか。税務・法務・財務の専門家は別料金なのか。最終契約前の論点整理まで含むのか。クロージング後の支援はあるのか。

報酬は、業務内容とセットで見なければ判断できません。

5. 利益相反の説明を確認する

仲介者であれば、相手方からも手数料を受けるのか、相手方の手数料体系はどうなっているのか、利益が対立する事項をどう開示するのかを確認します。

FAであっても、相手方FAからの支払い、紹介手数料、関連会社取引、成功報酬による成約への動機を確認します。

利益相反の説明が曖昧なまま契約に進むのは、避けたいところです。

売り手側が特に確認すべきこと

売り手側では、報酬体系が手残りと条件判断に直結します。

確認しておきたい主な論点は、次のとおりです。

  • 譲渡額に対して手数料がどの程度か
  • 税金や借入返済後の手残りはいくらか
  • 役員退職慰労金、役員貸借、個人所有資産の整理は報酬基準に含まれるか
  • 最低手数料の負担が重すぎないか
  • 相手方の手数料が譲渡条件に影響しないか
  • 経営者保証の解除・移行をどこまで支援するか
  • 表明保証・補償の内容を誰が確認するか
  • セカンドオピニオンが可能か
  • 契約終了後のテール条項が広すぎないか

売り手にとって重要なのは、「いくらで売れたか」だけではありません。手数料、税金、保証、支払条件、補償責任、引継ぎ義務まで含めて、最終的に譲渡してよい条件かどうかを判断する必要があります。

買い手側が特に確認すべきこと

買い手側では、報酬体系が総投資額と投資判断に影響します。

確認しておきたい主な論点は、次のとおりです。

  • 買収金額が高くなるほど支援者の報酬も増える設計か
  • 買収価格の上限を整理する支援が含まれるか
  • DDスコープ設計や専門家調整が含まれるか
  • 財務DD、税務DD、法務DDは別料金か
  • 価格調整や補償条項への反映支援が含まれるか
  • 資金調達、金融機関説明、社内承認資料の支援が含まれるか
  • 買わない判断、条件変更、撤退判断を支援できるか
  • 買収後のPMI課題を整理する支援があるか

買い手にとって重要なのは、案件を取得すること自体ではありません。自社にとって意味のある対象を、適切な条件で取得し、買収後に管理できる状態をつくることです。

ですから、報酬体系を見るときも、「案件を成立させる支援」だけでなく、「買収してよいかを判断する支援」が含まれているかを見ておく必要があります。

手数料の安さだけで選ばない

M&A支援者を選ぶとき、手数料が安いことは、確かに魅力に映ります。

しかし、安い支援が必ずしもよい支援とは限りません。

M&Aでは、初期段階の目的整理、候補先選定、情報管理、価格前提、DDスコープ、基本合意、最終契約、クロージング条件、成立後対応までが、ひと続きにつながっています。ここで重要な論点を見落とせば、安い手数料以上の損失が生じかねません。

一方で、高い支援者であれば安心、というわけでもありません。

高い報酬を支払っても、業務範囲が曖昧で、税務・法務・財務の専門判断は別料金、説明は成約に向かう話ばかりで、撤退判断を支援してくれないのであれば、十分な価値があるとはいえないでしょう。

見るべきなのは、価格そのものではなく、次のような点です。

  • 自社の目的を整理してくれるか
  • 価格以外の条件も見てくれるか
  • 支援範囲を明確に説明してくれるか
  • 利益相反を率直に説明してくれるか
  • 専門家に接続すべき論点を区別してくれるか
  • DD結果を条件に反映する視点があるか
  • 必要な場面では止める判断も示してくれるか
  • 後から説明できる資料や判断過程を残せるか

M&A支援者の報酬は、単なる費用ではありません。判断の質を整えるためのコストだととらえています。

登録支援機関と手数料体系の公表も確認する

中小企業庁は、M&A支援機関登録制度を設けています。中小M&Aガイドラインの遵守宣言などを登録要件として、M&A支援を行うFAや仲介業者を登録する仕組みです。また、事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、FA費用や仲介費用などについて、登録されたFAまたは仲介業者が提供する支援に係るもののみを補助対象とする旨が示されています。

出典:中小企業庁|M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表について

同じページでは、登録M&A支援機関の検索データベースが提供され、手数料体系もあわせて公表されていると案内されています。

出典:中小企業庁|M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表について

ただし、登録されていることは、支援者を選ぶための十分条件ではありません。

登録の有無に加えて、次の点を確認しておきたいところです。

  • 自社の案件類型に対応できるか
  • 担当者が実際にどこまで関与するか
  • 手数料体系が具体的に説明されているか
  • 相手方手数料の説明があるか
  • 業務範囲と報酬の対応関係が明確か
  • 専門家連携の体制があるか
  • 不利な論点も指摘してくれるか
  • 契約書の確認時間を十分に確保してくれるか

登録制度は、支援機関を比較するための入口として有用です。ただ、最終的には、個別の案件に必要な支援と、相性とを確認していく必要があります。

契約前に必ず確認したい質問

仲介者・FAと契約する前には、少なくとも次の質問はしておきたいところです。

報酬に関する質問

  • 着手金、月額報酬、中間金、成功報酬、最低手数料はありますか
  • それぞれ、いつ発生しますか
  • 成功報酬の基準額は何ですか
  • 譲渡額、移動総資産額、純資産額のどれを基準にしますか
  • 借入金、役員退職金、分割払い、アーンアウトは含まれますか
  • 既払の着手金や中間金は、成功報酬から控除されますか
  • 不成立、撤退、契約解除の場合の費用はどうなりますか
  • 手数料以外の実費は何が発生しますか
  • 外部専門家費用は別途必要ですか

業務範囲に関する質問

  • 候補先探索だけですか、条件整理まで含みますか
  • 価格目線やバリュエーションはどこまで支援しますか
  • DDの実施、調整、専門家選定は含まれますか
  • 基本合意書やSPAの確認は含まれますか
  • 契約書は弁護士が確認しますか
  • 税務論点は税理士が確認しますか
  • 財務DDや価格調整は公認会計士が確認しますか
  • クロージング後の支援は含まれますか

利益相反に関する質問

  • 仲介ですか、FAですか
  • 相手方からも手数料を受け取りますか
  • 相手方の手数料体系を説明してもらえますか
  • 価格交渉や条件交渉で利害が対立する場合、どのように対応しますか
  • 自社に不利な情報がある場合、どのように説明されますか
  • バリュエーションやDDの結論を誰が判断しますか
  • セカンドオピニオンは可能ですか
  • 他の専門家に相談する場合、秘密保持上の制限はありますか

契約条項に関する質問

  • 専任条項はありますか
  • 直接交渉の制限はありますか
  • テール条項はありますか
  • テール期間と対象候補先は明確ですか
  • 契約期間と更新条件はどうなっていますか
  • 中途解約は可能ですか
  • 責任・免責条項はどうなっていますか
  • 契約終了後も有効な条項は何ですか

これらの質問に対して、明確な説明が得られない場合は、その場で契約に進むのではなく、他の支援者や専門家への相談を検討したほうがよいでしょう。

報酬体系を確認することは、支援者を疑うことではない

報酬や利益相反を確認すると聞くと、支援者を疑っているように感じられるかもしれません。

しかし、そうではありません。

M&Aは、会社の将来に関わる重要な経営判断です。売り手も買い手も、後から株主、金融機関、従業員、取引先、後継者、社内関係者に対して、きちんと説明できる状態にしておく必要があります。

支援者の報酬体系、業務範囲、利益相反、契約条項を確認することは、信頼関係を壊す作業ではありません。むしろ、信頼関係を築くための前提だと考えています。

良い支援者であれば、自らの報酬体系、業務範囲、利益相反、専門外の領域、そして外部の専門家に確認すべき論点を、きちんと説明できるはずです。

依頼者側も、「安くしてください」とだけ交渉するのではなく、「この費用で、どの判断材料を、どの範囲まで整えてもらえるのか」を確認しておきたいところです。

重要局面ではセカンドオピニオンを活用する

中小M&Aガイドラインでは、仲介契約・FA契約の具体的な内容や報酬の妥当性などについて、必要に応じて事業承継・引継ぎ支援センターを含む他の支援機関に意見を求めること、すなわちセカンドオピニオンも有効であるとされています。

出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)

セカンドオピニオンは、支援者を批判するためのものではありません。

重要な意思決定を自社だけで抱え込まず、別の専門家の視点から、論点の抜け漏れ、報酬と業務範囲の対応、利益相反、税務・財務・契約上の未確認事項を確認するためのものです。

特に、次のような場面で有効に働きます。

  • 仲介契約・FA契約を締結する前
  • 手数料体系が複雑で理解しにくいとき
  • 最低手数料が大きく、手残りへの影響が大きいとき
  • 相手方の手数料が不明なとき
  • 専任条項やテール条項が広いとき
  • 基本合意に進む前
  • DD範囲を決める前
  • DD結果を価格・契約に反映する場面
  • 最終契約を締結する前
  • 実行するか撤退するか迷う場面

M&Aで大切なのは、成約に向けて急ぐことではなく、後から説明できる判断をすることです。

M&A支援者の報酬・利益相反に不安がある場合は早めに相談する

M&A支援者との契約は、M&Aプロセスの入口にあたります。

この入口の段階で、報酬体系、業務範囲、利益相反、セカンドオピニオン、専任条項、テール条項を曖昧にしたまま進めてしまうと、その後の基本合意、DD、価格交渉、最終契約、クロージングの局面で、修正が難しくなることがあります。

特に、次のような状況では、早めに専門家へ相談する意味があります。

  • 仲介者またはFAから提案書を受け取った
  • 報酬体系や最低手数料の意味が分からない
  • 完全成功報酬型と言われたが、具体的な計算方法が分からない
  • 相手方の手数料が開示されていない
  • 専任条項やテール条項の範囲が広い
  • M&A支援者の説明だけで契約してよいか不安がある
  • 基本合意に進む前に、価格・税務・財務・契約論点を整理したい
  • DD後の条件変更や撤退判断について、独立した視点が欲しい

犬飼公認会計士・税理士事務所では、M&Aを単なる成約手続ではなく、会社の将来に関わる経営判断としてとらえ、財務・税務・管理体制・説明可能性を踏まえた論点整理を重視しています。

仲介者・FAの報酬体系や業務範囲の確認、手数料と支援内容の対応関係、利益相反が生じる場面、財務・税務・DD・契約へ接続すべき論点を整理したい場合は、お問い合わせページからご相談ください。

M&A支援者任せにせず、数字と事実に基づいて判断できる状態を整えるところから、お手伝いいたします。

振り返り|M&A支援者の報酬体系と利益相反

確認項目確認すべき内容判断上の意味
着手金契約時に発生するか、成功報酬に充当されるか不成立でも発生する費用として、初期成果物と対応しているかを見る
月額報酬契約期間、更新、月次報告、進捗管理の有無長期化した場合の費用負担と支援実態を確認する
中間金基本合意時など、どの節目で発生するか最終判断前に確定する費用として、発生条件を明確にする
成功報酬クロージング時など、いつ発生するか成約への動機を理解し、条件変更・撤退判断との関係を見る
報酬基準額譲渡額、移動総資産額、純資産額など同じ取引でも基準により手数料が変わるため、必ず確認する
最低手数料成功報酬計算額より優先される最低額小規模案件では手残りに大きく影響する
実費・外部専門家費用弁護士、税理士、公認会計士、司法書士等の費用が別か見積り総額と必要な専門確認の範囲を把握する
仲介者の相手方手数料相手方からも報酬を受けるか、金額・基準・時期利益相反と経済条件への影響を理解する
FAの関連報酬紹介料、相手方FAからの支払い、関連会社取引片側助言でも利益相反がないとは限らない
専任条項他支援者やセカンドオピニオンが制限されるか選択肢確保と情報管理のバランスを見る
直接交渉制限自社で発見した候補先との接触も制限されるか自由な経営判断を不必要に制限しないか確認する
テール条項契約終了後の期間、対象候補先、発生条件契約終了後の手数料リスクを確認する
責任・免責条項損害賠償、守秘義務違反、説明不足の責任範囲支援者に求められる責任と限界を把握する
セカンドオピニオン契約前後で他専門家に相談できるか後から説明できる判断を行うための確認手段になる

参考情報・出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン
参考情報・出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)
参考情報・出典:中小企業庁|M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表について
参考情報・出典:M&A支援機関登録制度事務局|M&A支援機関登録制度

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