海外子会社を持つ会社では、次のような受け止め方をよく耳にします。
「海外子会社の利益は、配当しなければ日本では課税されない」 「現地で法人税を払っているのだから、日本側では関係ない」 「海外子会社は実際に営業しているので、外国子会社合算税制は関係ない」 「中小企業だから、タックスヘイブン対策税制の対象にはならない」
いずれも、結論としては正しい場合があります。ただ、はじめからそう決めてかかってしまうのは危険です。
外国子会社合算税制は、海外子会社などに所得を留保することで、日本での課税を回避したり先送りしたりすることを防ぐための制度です。一定の外国関係会社については、日本の親会社へ配当をしていなくても、その所得、あるいは一定の受動的所得が、日本の内国法人の所得に合算されることがあります。
つまり、この制度は「海外子会社から配当を受け取ったときの課税」を扱うものではありません。海外子会社に利益が残っている段階で、日本側の法人税申告に影響し得る制度なのです。
制度の考え方としては、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する仕組みだと整理できます。平成29年度の改正では、外国子会社の経済実態に即して課税すべきというBEPSプロジェクトの考え方を踏まえ、単なる税率だけでなく、所得や事業の内容から租税回避リスクを把握する仕組みへと見直されました。
出典:国税庁|外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)
本稿では、外国子会社合算税制の入口として、外国関係会社、特定外国関係会社、対象外国関係会社、経済活動基準、部分合算、受動的所得という論点を、実務で確認すべき順番に沿って整理していきます。
まず押さえておきたい結論
外国子会社合算税制で最初に確認すべきなのは、「海外子会社があるかどうか」ではありません。
確認していく順番は、おおむね次のとおりです。
| 確認順序 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | その外国法人が「外国関係会社」に該当するか |
| 2 | 日本側の内国法人が合算課税を受ける株主に該当するか |
| 3 | その外国関係会社の租税負担割合がどの水準か |
| 4 | 特定外国関係会社、対象外国関係会社、部分対象外国関係会社のどれに該当するか |
| 5 | 会社単位で所得が合算されるのか、受動的所得だけが部分合算されるのか |
| 6 | 申告書添付・保存書類、現地決算書、税務申告書、事業実態資料を説明できるか |
この制度の難しさは、現金が日本に入っていなくても課税が生じ得るところにあります。
日本の親会社から見れば、海外子会社の利益は現地に留まっており、日本親会社の預金が増えているわけではありません。それでも、外国子会社合算税制の要件に該当すれば、日本側で益金算入が必要になることがあります。
ですから、この制度は単なる国際税務の申告論点ではありません。海外子会社管理、配当政策、現地再投資、グループ再編、M&A、資金繰り、税効果会計にまで関わる、経営判断の論点だといえます。
外国子会社合算税制は「低税率国に子会社がある会社」だけの制度ではない
外国子会社合算税制は、以前から「タックスヘイブン対策税制」と呼ばれてきました。そのため、いわゆるタックスヘイブン国にペーパーカンパニーを持つ大企業だけの制度だと受け止められがちです。
しかし現在の制度は、単に「低税率国かどうか」だけで判断するものではありません。外国関係会社の事業実態、機能、リスク、そして所得の性質を見ていきます。
たとえば、次のような会社でも論点になり得ます。
| 海外法人の形態 | 論点になりやすい理由 |
|---|---|
| 海外販売子会社 | 現地で営業していても、管理支配や取引実態の説明が必要になる |
| 海外持株会社 | 株式保有が主たる事業の場合、ペーパーカンパニー該当性が問題になりやすい |
| 海外IP保有会社 | 使用料、無形資産収益が受動的所得や機能実態の論点になる |
| 海外金融子会社 | 利子、保証料、グループファイナンス収益が部分合算の対象になりやすい |
| M&Aで取得した海外中間持株会社 | 買収後の整理、清算、再編でCFCリスクが顕在化しやすい |
| 現地税制優遇を受けている子会社 | 名目税率ではなく、実際の租税負担割合が低くなることがある |
外国子会社合算税制は、海外子会社の存在そのものを否定する制度ではありません。問われているのは、海外法人に利益を置くことについて、その国・地域で事業を行う実体と理由があるかどうかです。
判定1:外国関係会社に該当するか
最初の判定は、その外国法人が「外国関係会社」に該当するかどうかです。
制度上は、居住者・内国法人等が合計で50%超を直接または間接に保有している外国法人や、実質的に支配している外国法人などが、外国関係会社に該当します。この整理は、令和8年度改正の資料においても、居住者・内国法人等が合計で50%超を直接・間接に保有し、または実質的に支配するものとして示されています。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
ここで注意したいのは、単純な直接持株割合だけで判断しないことです。
確認すべき割合には、株式等保有割合、議決権保有割合、請求権保有割合などがあります。さらに、間接保有、同族株主グループ、実質支配関係についても確認が必要です。
形式上は日本の親会社が直接50%以下しか保有していなくても、グループ全体、同族関係者、契約関係、役員関係、資金関係まで含めて見ると、外国関係会社に該当することがあります。
実務では、次のような資料を確認していきます。
| 確認資料 | 確認内容 |
|---|---|
| グループ組織図 | 日本法人、海外法人、個人株主、持株会社の関係 |
| 株主名簿・出資証明 | 直接持株割合、間接持株割合 |
| 定款・株主間契約 | 議決権、配当請求権、残余財産分配請求権 |
| 役員名簿 | 役員兼任、実質的意思決定者 |
| 出資契約・融資契約 | 経営支配、重要事項承認権、資金支配 |
| M&A資料 | 買収前後の支配関係、取得日、階層構造 |
「海外子会社」と呼んでいるからといって、外国関係会社に該当するとは限りません。逆に、形式上は子会社と呼んでいなくても、外国関係会社に該当することがあります。
判定2:日本側で合算課税を受ける内国法人か
外国関係会社に該当したとしても、すべての日本法人が直ちに合算課税を受けるわけではありません。
納税義務者の範囲としては、直接・間接の保有割合が10%以上である居住者・内国法人株主、同じく保有割合が10%以上である同族株主グループに属する居住者・内国法人株主、そして実質支配関係がある居住者・内国法人等が整理されています。
出典:国税庁|外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)
実務では、「外国関係会社に該当するか」という論点と、「自社が合算課税を受ける株主か」という論点を、分けて確認します。
たとえば、日本側の複数の法人や個人オーナーが海外法人を分散して保有している場合には、どの法人が何%分を合算するのか、同族株主グループとして判定する必要があるのか、実質支配関係があるのかを、ひとつずつ整理しなければなりません。
同族会社グループでは、個人オーナー、資産管理会社、事業会社、海外子会社が入り混じっていることが少なくありません。こうした場合に、法人単体の持株比率だけを見てしまうと、判定を誤ることがあります。
判定3:租税負担割合を見る
次に確認するのが、外国関係会社の租税負担割合です。
ここでいう租税負担割合は、単なる現地の名目法人税率ではありません。現地の税率が高くても、税制優遇、非課税所得、損金算入、欠損金、特別控除、キャピタルゲイン非課税などによって、実際の租税負担割合が低くなることがあります。
反対に、名目税率だけを見ると低く見えても、実際には一定以上の税負担が生じている場合もあります。
現在の制度の大枠では、次の水準が重要になります。
| 区分 | 租税負担割合の目安 | 合算課税の方向性 |
|---|---|---|
| 特定外国関係会社 | 27%未満 | 会社単位の合算課税の対象になり得る |
| 対象外国関係会社 | 20%未満 | 会社単位の合算課税の対象になり得る |
| 部分対象外国関係会社 | 20%未満 | 受動的所得の部分合算課税の対象になり得る |
令和5年度の改正では、特定外国関係会社について、適用免除要件である租税負担割合の閾値が30%から27%に引き下げられました。この取扱いは、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額等の計算から適用されています。
出典:国税庁|令和5年度法人税関係法令の改正の概要
実務上の注意点は、租税負担割合を「国名」で決めてしまわないことです。
海外子会社の所在国が一般に低税率国とは見られていなくても、税制優遇や所得の種類によって、租税負担割合が下がることがあります。また、現地決算書の税金費用だけを見ても、CFC税制上の租税負担割合を正しく判断できるとは限りません。
判定4:特定外国関係会社か
特定外国関係会社とは、租税回避リスクが高いと見られる外国関係会社の類型です。
代表的には、次の3つが挙げられます。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| ペーパーカンパニー | 活動の実体がない外国関係会社 |
| 事実上のキャッシュ・ボックス | 総資産に比して受動的所得の占める割合が高い外国関係会社 |
| ブラック・リスト国所在会社 | 情報交換に関する国際的取組への協力が著しく不十分な国・地域に所在する外国関係会社 |
これらの類型は、活動の実体がない外国関係会社、総資産に比して受動的所得の占める割合が高い外国関係会社、情報交換に関する国際的取組への協力が著しく不十分な国等に所在する外国関係会社として掲げられています。
出典:国税庁|外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)
特定外国関係会社に該当すると、租税負担割合が27%未満の場合には、会社単位で合算課税の対象になり得ます。
実務で特に注意したいのが、海外持株会社です。
海外展開やM&Aでは、現地統括会社や中間持株会社を置くことがあります。事業上の理由があり、地域統括、資金管理、投資管理、現地人材管理、許認可管理を実際に行っているのであれば、直ちに問題になるわけではありません。
しかし、実態としては株式を保有しているだけで、現地役職員もおらず、意思決定は日本で行っており、会議体もなく、現地に事務所もない、という状態であれば、ペーパーカンパニー該当性が問題になります。
「海外持株会社を置いている理由」を、税務上だけでなく、事業上・管理上の必要性としても説明できるか。ここが重要になります。
判定5:経済活動基準を満たすか
特定外国関係会社に該当しない場合でも、次は経済活動基準を確認します。
経済活動基準は、外国関係会社がその国・地域で実体ある事業活動を行っているかを判断するための基準です。現在の制度では、主に次の4つを確認します。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 事業基準 | 主たる事業が株式保有、無形資産提供、船舶・航空機リース等でないこと。ただし一定の統括会社、金融持株会社、航空機リース会社などは除外あり |
| 実体基準 | 本店所在地国に、主たる事業に必要な事務所等を有すること |
| 管理支配基準 | 本店所在地国で、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること |
| 所在地国基準又は非関連者基準 | 原則として主として本店所在地国で事業を行っていること。卸売業など一定業種では、主として関連者以外の者と取引を行っていること |
こうした事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準または非関連者基準という枠組みは、令和8年度改正の資料においても整理されています。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
この基準は、形式だけでは判断できません。
たとえば、現地に登記上の住所があるだけでは、実体基準を満たすとは限りません。現地に役員がいたとしても、その役員が実質的に意思決定していなければ、管理支配基準が問題になります。
主たる事業を行うのに必要な事務所等については、外国関係会社の主たる事業の業種、業態、活動内容等を踏まえて判定するものとされ、賃借によって使用している事務所等も含まれるとされています。また、事業の管理・支配・運営については、事業計画の策定等を行い、その計画等に従って裁量をもって事業を執行し、その結果と責任が外国関係会社に帰属していることが求められます。
出典:国税庁|租税特別措置法関係通達 第66条の6~第66条の9
対象外国関係会社とは何か
経済活動基準のいずれかを満たさない外国関係会社は、対象外国関係会社に該当し得ます。
対象外国関係会社については、租税負担割合が20%未満の場合、会社単位の合算課税の対象になり得ます。実務上は、次のようなケースで問題になります。
| 状況 | 問題になりやすい理由 |
|---|---|
| 現地販売子会社だが、事業計画や価格決定を日本親会社が行っている | 管理支配基準の説明が必要 |
| 現地に人員がほとんどいない | 実体基準・管理支配基準の説明が必要 |
| 売上の大半がグループ会社向け | 非関連者基準が問題になる可能性 |
| 主たる事業が無形資産の保有・提供 | 事業基準の確認が必要 |
| 実際の事業は別国で行われている | 所在地国基準が問題になる可能性 |
ここで大切なのは、「現地法人が赤字だから関係ない」と考えないことです。
外国子会社合算税制では、外国関係会社ごとに課税対象金額を計算します。特定外国関係会社または対象外国関係会社が複数ある場合でも、ある会社に欠損が生じているからといって、その欠損を他の外国関係会社の所得と通算することはできないとされています。
出典:国税庁|租税特別措置法関係通達 第66条の6~第66条の9
つまり、海外子会社群全体で見れば利益が出ていないとしても、特定の外国関係会社に所得があれば、その会社単位で合算課税が問題になることがあるのです。
部分対象外国関係会社とは何か
経済活動基準をすべて満たす外国関係会社は、原則として会社単位の合算課税からは外れます。
しかし、それで完全に終わり、というわけではありません。
特定外国関係会社に該当せず、経済活動基準を満たす外国関係会社であっても、租税負担割合が20%未満で、受動的所得がある場合には、その受動的所得について部分合算課税が問題になります。
これが部分対象外国関係会社です。
部分対象外国関係会社の基本的なイメージは、次のとおりです。
| 状況 | 税務上の方向性 |
|---|---|
| 実体ある事業を行っている | 会社全体の所得は原則として合算対象外 |
| ただし租税負担割合が20%未満 | 受動的所得の有無を確認 |
| 利子、配当、使用料、金融所得等がある | 部分合算課税の対象になり得る |
| 少額免除基準等に該当 | 合算対象から外れる可能性あり |
実務上、部分合算は見落とされやすい論点です。
海外販売子会社が実体ある事業を行っていると、経営者や経理担当者は「CFCは問題なし」と判断しがちです。しかし、その会社が余剰資金を運用して利子収入を得ている、グループ会社に貸付をしている、無形資産の使用料を受け取っている、有価証券を保有しているといった場合には、受動的所得の部分合算を確認する必要があります。
受動的所得とは何か
受動的所得とは、簡単にいえば、所在地国で人員・設備・事業活動を伴って稼いだ事業所得というよりも、資産保有や金融取引、権利保有から生じる性質が強い所得のことです。
一定の受動的所得の範囲としては、受取配当等、受取利子等、有価証券貸付対価、有価証券譲渡損益、デリバティブ取引損益、外国為替差損益、その他の金融所得、保険所得、固定資産貸付対価、無形資産等使用料、無形資産等譲渡損益、異常所得などが挙げられています。
出典:国税庁|外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)
典型的には、次のような所得が確認の対象になります。
| 所得の種類 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|
| 利子 | グループファイナンスか、余剰資金運用か、通常必要な業務を行っているか |
| 配当 | 持株割合、投資目的、現地持株会社の機能 |
| ロイヤリティ | 無形資産をどこで開発・管理しているか |
| 有価証券譲渡益 | 投資会社か、事業上必要な保有か |
| デリバティブ損益 | ヘッジ目的か、運用目的か |
| 為替差損益 | 事業取引に伴うものか、金融取引に伴うものか |
| 固定資産賃貸料 | 事業実体を伴う不動産事業か、単なる資産保有か |
| 異常所得 | 通常の事業活動から見て過大・特殊な所得ではないか |
受動的所得の判断では、勘定科目だけで決めてしまわないことが重要です。
たとえば同じ「為替差益」でも、通常の販売・仕入取引に伴って発生したものと、資金運用や金融取引に伴って発生したものとでは、評価すべき実態が異なります。
「現地で事業をしている」だけでは足りない
外国子会社合算税制の実務でもっとも難しいのは、事業実態の説明です。
現地に社員がいる。オフィスがある。売上がある。現地で税務申告もしている。
これだけで十分とは限りません。
重要なのは、その外国関係会社が、どの事業を、どの国で、誰の意思決定によって、どの責任を負って行っているか、という点です。
実体基準または管理支配基準を満たすことを明らかにする書類の例としては、本店所在地国で開催した株主総会または取締役会の議事録、事業方針や業績目標を定めた資料、本店所在地国で策定した事業計画書や社内稟議書、外国関係会社の役員名で締結した契約書や作業指図書、役員報酬の負担を確認できる賃金台帳・損益計算書・契約書等が挙げられています。
出典:国税庁|外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)
この点は、税務調査でも重要になります。
現地子会社の役員が日本親会社の社員を兼務している場合、それ自体で直ちに管理支配基準を満たさないわけではありません。しかし、その人が現地法人の役員として意思決定し、現地法人のために職務を執行し、その責任と報酬負担が現地法人に帰属していることを、きちんと説明できる必要があります。
「実態はある」と言うだけでは足りません。実態を示す資料が必要なのです。
CFC税制と海外子会社配当の関係
海外子会社から配当を受ける場合、一定の要件を満たせば、外国子会社配当益金不算入制度の対象となることがあります。
ただし、外国子会社合算税制は、配当とは別のタイミングで問題になります。
外国子会社配当益金不算入制度は、海外子会社から日本親会社へ配当されたときの、日本側の課税を考える制度です。一方で外国子会社合算税制は、一定の外国関係会社に所得が留保されている段階で、日本側の所得に合算する制度です。
この違いを理解していないと、次のような誤解が生じます。
| 誤解 | 実際の確認 |
|---|---|
| 配当しなければ日本で課税されない | CFC要件に該当すれば、配当前でも合算課税の可能性がある |
| 配当益金不算入があるからCFCは関係ない | 配当課税とCFC合算は別制度 |
| CFCで合算された後に配当すると二重課税になる | 課税済所得に係る配当の調整規定を確認する必要がある |
| 現地税金を払っていれば問題ない | 租税負担割合、所得性質、経済活動基準の確認が必要 |
配当政策を考える際には、CFC課税済み所得、現地源泉税、外国子会社配当益金不算入、外国税額控除、資金需要を、一体で見ていく必要があります。
令和7年度改正:合算時期と添付・保存書類の見直し
外国子会社合算税制は、改正が続いています。
令和7年度の改正では、外国関係会社に係る課税対象金額等の合算時期について、その外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4月を経過する日を含む内国法人の事業年度とされました。改正前は、2か月を経過する日を含む事業年度への合算でした。
出典:国税庁|令和7年度法人税関係法令の改正の概要 外国子会社合算税制の見直し
この改正は、実務上とても重要です。
海外子会社の現地決算、現地税務申告、税額計算、租税負担割合の算定、受動的所得の分析には、いずれも時間がかかります。合算時期が後ろ倒しになったことで、従来よりも実務対応の時間は確保されました。それでも、決算直前になって初めて確認するのでは不十分です。
また令和7年度改正では、申告書に添付または保存することとされている外国関係会社に関する書類から、株主資本等変動計算書及び損益金の処分に関する計算書、貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書が除外されました。
出典:国税庁|令和7年度法人税関係法令の改正の概要 外国子会社合算税制の見直し
ただし、書類の負担が軽減されたからといって、事業実態や租税負担割合を説明する資料が不要になったわけではありません。税務調査で説明できる状態を整えておくことは、引き続き重要です。
令和8年度改正:清算・ペーパーカンパニー特例・租税負担割合計算の見直し
令和8年度改正でも、外国子会社合算税制の見直しが行われています。
具体的には、解散した部分対象外国関係会社または外国金融子会社等に係る特例の創設、ペーパーカンパニー特例に係る資産割合要件について一定の場合に判定を不要とする見直し、所得額に応じて税率が高くなる場合に最高税率を用いて租税負担割合を計算できる特例について一定の場合には適用できないこととする見直しが示されています。これらは、外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額等について適用されます。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
海外子会社を清算する、M&A後に海外中間持株会社を整理する、現地事業から撤退する、休眠会社を解消する。こうした場面では、この改正の影響を確認しておく必要があります。
CFC税制は、海外進出の局面だけでなく、海外子会社の出口局面でも問題になるのです。
申告実務で確認すべき資料
外国子会社合算税制を検討する際には、次のような資料を、早めに集めておく必要があります。
| 資料 | 確認目的 |
|---|---|
| 海外子会社の決算書 | 所得、税金、資産、受動的所得の把握 |
| 現地税務申告書 | 外国法人税額、課税所得、税制優遇の確認 |
| 株主名簿・出資関係資料 | 外国関係会社該当性、10%判定 |
| グループ組織図 | 直接・間接保有、同族株主グループの整理 |
| 定款・会社登記資料 | 所在地、事業目的、株主権利 |
| 取締役会議事録・稟議書 | 管理支配基準、意思決定の所在 |
| 事業計画・予算資料 | 現地法人が自ら事業を管理しているか |
| オフィス賃貸契約 | 実体基準、固定施設の確認 |
| 雇用契約・給与台帳 | 現地役職員の実在、業務従事状況 |
| 取引契約書 | 売上、仕入、ロイヤリティ、貸付、保証の内容 |
| 金融取引資料 | 利子、保証料、グループファイナンスの確認 |
| 無形資産関連資料 | 使用料、開発・管理機能、権利保有の実態 |
| 配当資料 | 課税済所得、配当益金不算入、源泉税の確認 |
大切なのは、海外子会社から資料を日本語に翻訳してもらうこと、ではありません。まず、その資料が「何を説明するためのものか」を明確にすることです。
資料は、「外国関係会社に該当するか」「どの類型か」「経済活動基準を満たすか」「租税負担割合はいくらか」「受動的所得はいくらか」「申告書添付・保存義務を満たすか」という判断に対応させて、整理していきます。
実務で多い判断ミス
外国子会社合算税制で実務上よく見られるミスには、次のようなものがあります。
| ミス | 何が問題か |
|---|---|
| 現地名目税率だけで判断する | 実際の租税負担割合と異なることがある |
| 直接持株割合だけで判断する | 間接保有、同族株主グループ、実質支配を見落とす |
| 配当がないから検討しない | CFCは配当前の所得にも関係する |
| 海外子会社が営業しているので対象外とする | 経済活動基準、受動的所得を別途確認する必要がある |
| 持株会社を事業会社と同じ感覚で扱う | ペーパーカンパニー該当性が問題になりやすい |
| 現地税理士任せにする | 日本側のCFC税制は日本親会社の申告論点 |
| 税務調査時に資料を作ろうとする | 取締役会、稟議、現地管理の実態は後から作れない |
| M&A後の海外中間会社を放置する | 買収後の整理・清算でCFCリスクが顕在化する |
この制度では、「現地では問題ない」という説明だけでは、日本側の申告判断としては十分ではありません。
現地税務上問題がないことと、日本の外国子会社合算税制上、合算が不要であること。この2つは、別の判断なのです。
経営判断としてのCFC税制
外国子会社合算税制は、税務申告だけの問題ではありません。
経営の面でも、次のような意思決定に影響します。
| 経営判断 | CFC税制との関係 |
|---|---|
| 海外子会社設立 | 所在国、機能、人員、契約、意思決定体制の設計が必要 |
| 海外持株会社設立 | 持株会社としての機能とペーパーカンパニー該当性を確認 |
| ロイヤリティ設定 | 無形資産所得、移転価格、受動的所得を同時に確認 |
| グループファイナンス | 利子、保証料、受動的所得、移転価格を確認 |
| 配当政策 | CFC課税済所得、配当益金不算入、源泉税を確認 |
| M&A | 買収対象グループ内の海外法人を税務DDで確認 |
| 海外撤退・清算 | 清算時の所得、債務免除益、令和8年度改正の特例を確認 |
| 税効果会計 | 合算所得が税金費用、繰延税金資産・負債に影響する可能性 |
海外子会社は、利益をどこに残すか、どこで再投資するか、どの国に人員を配置するか、どの会社が無形資産を保有するか。こうしたグループ経営の中心に位置しています。
CFC税制は、その設計が日本側できちんと説明できるものかどうかを問う制度でもあるのです。
専門家に相談すべきタイミング
次のような場面では、申告期限の直前ではなく、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
- 海外子会社を新設する
- 海外持株会社を設ける
- 海外子会社が現地税制優遇を受ける
- 海外子会社の租税負担割合が20%未満または27%未満になる可能性がある
- 海外子会社にロイヤリティ、利子、保証料、配当、有価証券譲渡益がある
- 現地法人の役員が日本親会社の役員・使用人を兼務している
- 海外子会社の意思決定が実質的に日本で行われている
- M&Aで海外子会社群を取得する
- 海外中間持株会社を整理・清算する
- 別表17関係の記載や添付・保存資料に不安がある
特にCFC税制は、取引後・決算後になって初めて検討すると、資料が足りないという事態になりがちです。
オフィス、役員、現地会議、事業計画、契約、給与負担、現地税務申告といった資料は、その時点で実際に存在していたことに意味があります。後から整える資料には、どうしても限界があるのです。
まとめ:外国子会社合算税制は、海外子会社管理の品質を問う制度である
外国子会社合算税制は、単なる「低税率国課税」ではありません。
外国関係会社に該当するか。日本側で合算課税を受ける株主か。租税負担割合はいくらか。特定外国関係会社か。経済活動基準を満たすか。対象外国関係会社か。部分対象外国関係会社か。受動的所得があるか。申告書類と実態資料を説明できるか。
この順番で整理していく必要があります。
海外子会社を持つ会社にとって、CFC税制の検討は、単年度の法人税申告だけで完結するものではありません。海外子会社の機能設計、資金管理、配当政策、M&A、組織再編、撤退判断にまで影響します。
税負担を適正に管理することは、もちろん重要です。しかしそれ以上に重要なのは、海外子会社に利益が残る理由を、事業実態、契約、会計、税務、資料の面から後で説明できる状態にしておくことです。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
海外子会社の所得が日本で合算課税される可能性があるかどうかは、国名や税率だけでは判断できません。
外国関係会社の判定、租税負担割合、経済活動基準、受動的所得、申告書添付・保存資料、海外子会社配当、移転価格税制との関係を、一体で整理していく必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、海外子会社を持つ法人について、法人税申告だけでなく、海外子会社管理、グループ内取引、配当政策、M&A後の整理、清算・撤退の局面まで含めて、後から説明できる税務判断を重視してご支援しています。
海外子会社のCFCリスクを一度整理しておきたいという場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。
振り返り:本稿の重要ポイント
| 論点 | 実務上の要点 |
|---|---|
| 制度の目的 | 海外子会社等を利用した日本での課税回避・繰延べに対応する制度 |
| 配当との違い | 配当がなくても、一定の外国関係会社の所得が日本側で合算されることがある |
| 外国関係会社 | 居住者・内国法人等が50%超を直接・間接保有又は実質支配する外国法人等を確認 |
| 日本側株主 | 10%以上保有、同族株主グループ、実質支配関係を確認 |
| 租税負担割合 | 名目税率ではなく、制度上の計算に基づき判定する |
| 特定外国関係会社 | ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュ・ボックス、ブラック・リスト国所在会社 |
| 特定外国関係会社の基準 | 現行では租税負担割合27%未満が会社単位合算の重要な目安 |
| 経済活動基準 | 事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準を確認 |
| 対象外国関係会社 | 経済活動基準のいずれかを満たさず、租税負担割合20%未満の場合に会社単位合算の対象になり得る |
| 部分対象外国関係会社 | 経済活動基準を満たしても、租税負担割合20%未満で受動的所得がある場合に部分合算を確認 |
| 受動的所得 | 利子、配当、使用料、金融所得、無形資産所得、異常所得などを確認 |
| 書類整備 | 決算書、現地税務申告書、議事録、事業計画、契約書、給与資料、オフィス資料が重要 |
| 令和7年度改正 | 合算時期が外国関係会社の事業年度終了日の翌日から4月経過日を含む内国法人事業年度へ見直し |
| 令和8年度改正 | 清算・ペーパーカンパニー特例・租税負担割合計算に関する見直しを確認 |
| 経営への影響 | 資金繰り、配当政策、M&A、海外再編、税効果会計、金融機関説明に波及する |