海外子会社との取引。海外関連会社へのロイヤリティ。国外グループ会社への経営支援。海外子会社への貸付。海外拠点への利益配分。
これらは、日常の経理処理として見れば、「売上」「外注費」「業務委託費」「利息」「配当」「立替金」といった、見慣れた勘定科目に落ち着きます。しかし、国際税務の視点に立つと、話はそこで終わりません。
その取引価格は、第三者同士であっても説明できる水準なのか。
海外子会社に利益が過度に残っていないか。
低税率国の子会社に、実体はあるのか。
文書化資料は、税務調査に耐えられるものになっているか。
日本と外国の双方で課税された場合、どのように調整するのか。
一見すると大企業向けに見えるグローバル・ミニマム課税が、自社グループや将来のM&Aに関係してこないか。
第15テーマでは、こうした「海外子会社・国外関連者との取引」に関する高度な法人税務論点を、経営判断と申告実務の両面から整理していきます。
移転価格税制は、国税庁の事務運営指針において、租税特別措置法第66条の4「国外関連者との取引に係る課税の特例」の規定として整理されています。また、独立企業間価格とは、国外関連者との取引が、同様の状況の下で非関連者間において行われた場合に成立すると認められる価格を指します。
出典:国税庁|移転価格事務運営要領 第1章 定義及び基本方針
出典:国税庁|用語の解説
このテーマは、国際税務の「入口」ではありません。海外取引の基本を踏まえたうえで、より具体的なリスク管理へ進むためのテーマです。
第14テーマで、内国法人・外国法人、PE、源泉税、租税条約、外国税額控除、海外子会社配当を確認したうえで読んでいただくと、海外取引を「税務申告上どう扱うか」という視点から、「グループ全体としてどう説明できるか」という視点へと広げることができます。
このテーマで理解できること
第15テーマで扱う中心は、海外子会社や国外関連者との取引を、単なる会計処理や送金処理で終わらせないための判断軸です。
国内取引であれば、関係会社間取引について、寄附金、時価、同族会社の行為計算否認などが問題になります。これが国際取引になると、そこにさらに、移転価格税制、外国子会社合算税制、租税条約、外国税額控除、相互協議、国別報告事項、グローバル・ミニマム課税といった論点が重なってきます。
このテーマを読み進めることで、次のような問いについて、専門家と対話できるだけの全体像を持っていただくことを目指しています。
- 海外子会社へ販売する価格は、どのように決めるべきか。
- 親会社が海外子会社へ行う経営支援は、無償でよいのか。
- 海外子会社からロイヤリティを受け取るべきか。
- 海外子会社への貸付金利や保証料は、どの程度の水準が妥当か。
- 移転価格文書化は、どの会社に必要になるのか。
- 税務調査で国外関連取引を説明するには、どの資料が必要か。
- 海外子会社の所得が日本で合算課税されるのは、どのような場合か。
- 移転価格税制と外国子会社合算税制は、どちらを先に確認すべきか。
- 大企業向け制度に見えるグローバル・ミニマム課税について、中小・中堅企業は何を確認すべきか。
ここで重要になるのは、「制度名を知っていること」ではありません。自社の海外取引を、取引内容、契約関係、価格設定、機能とリスク、会計処理、申告調整、根拠資料へと分解して整理できることです。
なぜ国際高度論点は、経営判断に直結するのか
海外子会社との取引価格は、単に税金の問題にとどまりません。
どの国に利益が残るか。どの法人に資金が残るか。現地子会社の損益がどのように見えるか。日本親会社の利益率がどう変わるか。取引価格は、これらすべてに直結します。
たとえば、日本親会社が海外子会社に低い価格で製品を販売していれば、海外子会社に利益が残り、日本親会社の利益は小さくなります。逆に、日本親会社が海外子会社から高い価格で仕入れていれば、日本側の利益が圧縮される可能性があります。
こうした価格設定は、事業戦略、現地市場開拓、為替、資金繰り、現地税制、グループ内の責任分担と、密接に結び付いています。
移転価格税制とは、こうした国外関連取引を、独立した企業同士であれば成立したであろう価格に引き直して検証する制度です。実務上も、移転価格税制は、国外関連者との取引価格を通じた所得の海外移転を防止し、国際的な所得配分と課税権の確保を図る制度として整理されています。
一方で、海外子会社に利益が残っているからといって、それが直ちに移転価格上の問題になるとは限りません。
海外子会社が販売機能、製造機能、開発機能、在庫リスク、信用リスク、為替リスクなどを実際に負担しているのであれば、それに応じた利益が残ることには、経済的な理由があります。
つまり国際税務では、「海外に利益があるから危ない」「低税率国だから否認される」といった単純な見方では足りないということです。
誰が何をしているのか。誰がリスクを負っているのか。誰が無形資産を作り、管理し、利用しているのか。そこを整理する必要があります。
第15テーマを読む前に確認しておきたい前提
第15テーマは、第14テーマ「国際税務の基本と海外取引」を前提としています。
まだ海外取引の基礎が曖昧だという場合は、先に第14テーマで、外国法人課税、PE、源泉所得税、租税条約、外国税額控除、海外子会社配当を確認しておくと、理解がぐらつきません。
特に、次の点が未整理のままであれば、第15テーマを読み進める前に、一度立ち止まることをおすすめします。
- 自社に海外子会社、海外支店、駐在員事務所、PEがあるか。
- 海外への支払について、源泉所得税や租税条約届出を確認しているか。
- 海外子会社からの配当について、外国子会社配当益金不算入や現地源泉税を確認しているか。
- 海外出向者の給与負担、役務提供、立替精算を整理しているか。
- 海外取引に関する契約書、送金資料、請求書、取引一覧が残っているか。
第15テーマは、これらの基礎情報を踏まえたうえで、国外関連者との価格設定、文書化、調査対応、合算課税、国際的二重課税へと進んでいくテーマです。
このテーマで扱う9つの詳細コラム
第15テーマは、15-1から15-9までの9本の詳細コラムで構成しています。
読む順番としては、15-1から順に進めていただくのがおすすめです。移転価格税制は、いきなり文書化やベンチマーク分析から入ると、何のための資料なのかが見えにくくなってしまいます。
まず制度の全体像を押さえる。そのうえで、対象取引、価格算定、文書化、個別取引、調査対応、外国子会社合算税制、グローバル・ミニマム課税へと進む。そうした構成にしています。
15-1. 移転価格税制の全体像
最初に読んでいただきたい導入コラムです。
このコラムでは、移転価格税制が何を問題にする制度なのかを整理します。中心にあるのは、国外関連者との取引価格を、独立企業間価格で検証するという考え方です。
海外子会社がある会社。海外関連会社との取引を始めた会社。海外拠点との価格設定を、これまで明確に決めてこなかった会社。こうした会社がまずここから読むと、移転価格税制が「大企業だけの特殊税務」ではなく、中小・中堅企業にも起こり得る取引価格の説明責任であることが見えてきます。
このコラムでは、詳細な算定方法や文書化の手順にまでは踏み込みません。まずは、移転価格税制の目的、国外関連取引、所得移転、そして税務調査で問題になる理由を確認します。
15-2. 国外関連者と対象取引の判定
次に読んでいただきたい、入口判定のコラムです。
移転価格税制の検討では、最初に「そもそも自社の取引が対象になるのか」を確認します。海外子会社との取引であっても、どの法人が国外関連者に該当するのか。形式的な資本関係だけでなく、実質的な支配関係をどう見るのか。ここを整理しておく必要があります。
このコラムでは、棚卸資産取引、役務提供、無形資産取引、金融取引など、対象になりやすい取引の種類を概観します。
海外子会社はあるものの、取引一覧や契約書が整理されていないという場合は、このコラムから自社の取引を棚卸ししていくのが実務的です。
15-3. 独立企業間価格と移転価格算定方法
15-2で対象取引を確認したうえで読んでいただく、価格設定の中核コラムです。
ここでは、独立企業間価格をどのように考えるか、比較可能性とは何か、そしてCUP、再販売価格基準法、原価基準法、TNMM、利益分割法といった算定方法がどのような役割を持つのかを整理します。
ただし、このコラムの目的は、読者ご自身が詳細な経済分析を完結させることではありません。どのような要素が価格の妥当性を左右するのかを理解し、専門家に相談する際に、自社の取引内容、機能、リスク、利益水準を説明できる状態になっていただくことです。
OECDは、移転価格ガイドラインを、関連者間の国境を越える取引価格について独立企業原則を適用する枠組みを示すものとして位置づけています。
出典:OECD|Transfer pricing
15-4. 移転価格文書化とローカルファイル
移転価格税制を、税務調査対応と資料管理の面から見ていくコラムです。
移転価格は、税務調査で指摘されてから初めて考えるのでは遅い論点です。価格設定方針、取引概要、機能リスク分析、比較対象、契約書、請求書、決算資料。これらを、平時から整えておく必要があります。
移転価格文書化制度では、ローカルファイル、マスターファイル、国別報告事項などが重要になります。BEPS行動13を踏まえて日本でも文書化制度が整備されており、国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類の作成・保存が重要になる、と整理できます。
このコラムは、海外子会社との取引があるにもかかわらず、文書化対応が後回しになっている会社にとって、特に重要です。
15-5. 国外関連者への役務提供・無形資産・金融取引
中小・中堅企業にも生じやすい個別取引を扱う、実務コラムです。
海外子会社に対して、本社が営業支援、管理支援、技術支援、経営指導を行っているにもかかわらず、対価を請求していない。こうしたケースは、決して少なくありません。ブランド、ノウハウ、ソフトウェア、商標、技術情報といった無形資産を、海外子会社が利用している場合もあります。海外子会社への貸付金、保証、資金繰り支援が行われることもあります。
こうした取引は、国内税務でいえば、寄附金や経済的利益供与の問題に近い側面を持っています。しかし、相手が国外関連者となると、移転価格税制、源泉税、外国税額控除、外国子会社合算税制との関係も問題になってきます。
このコラムでは、海外子会社支援を「グループだから当然」で終わらせず、どのような対価設定や資料化が必要になるのかを整理します。
15-6. 移転価格調査・APA・相互協議
移転価格リスクが顕在化した場合の対応を扱うコラムです。
移転価格調査では、通常の法人税調査よりも、取引実態、契約、機能リスク、比較対象、利益水準、海外子会社側の情報などが、深く確認されることがあります。国税庁の事務運営指針でも、移転価格課税と外国税額控除、過少資本税制、過大支払利子税制などの関係について、調査上の留意点が示されています。
出典:国税庁|移転価格事務運営要領 第3章 調査
また、移転価格税制では、日本側で課税されたとしても、相手国側で所得が調整されなければ、二重課税が生じる可能性があります。この場面で問題になるのが、APA、すなわち事前確認制度や、相互協議による解決です。
このコラムは、移転価格調査への備え、二重課税への対応、事前確認の活用可能性を知りたい会社に向いています。
15-7. 外国子会社合算税制の基本
移転価格税制とは別に、海外子会社の所得が日本で課税される可能性を扱うコラムです。
外国子会社合算税制は、海外子会社を通じた租税回避を抑制するため、一定の外国関係会社について、その所得を日本側の内国法人等の所得とみなして合算課税する制度です。外国関係会社を対象として、租税回避リスクを所得や事業の内容により把握し、実質的活動のない事業から得られる所得に相当する金額を、日本の親会社の所得とみなして課税する。そうした枠組みの制度です。
出典:国税庁|第66の6~第66条の9《内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例》関係
このコラムでは、外国関係会社、特定外国関係会社、対象外国関係会社、経済活動基準、受動的所得といった基本的な枠組みを整理します。
海外子会社を持つ会社は、移転価格だけでなく、外国子会社合算税制も必ず確認すべきです。特に、低税率国、持株会社、金融子会社、知的財産保有会社、実体の薄い会社がある場合は、このコラムを読む優先度が高くなります。
15-8. 移転価格税制と外国子会社合算税制の関係
第15テーマの中でも、複数制度の整理を目的とする比較コラムです。
移転価格税制は、国外関連取引の価格が独立企業間価格であるかを検証する制度です。外国子会社合算税制は、一定の外国関係会社の所得を日本側に合算する制度です。
両者は、いずれも海外子会社や低税率国を意識する場面で問題になります。しかし、制度の目的も、対象も、計算の入口も異なります。
実務上は、移転価格税制が適用される場合には、その修正を踏まえて外国子会社合算税制を適用する場面があり、二重課税調整の観点から、両制度を切り離さずに見る必要があります。
このコラムは、「移転価格とCFCのどちらが問題になるのか分からない」「海外子会社に利益が残っているが、何から確認すべきか分からない」という読者に向いています。
15-9. グローバル・ミニマム課税と中小・中堅企業での確認視点
第15テーマの最後に読んでいただく、最新国際税務論点の位置づけコラムです。
グローバル・ミニマム課税は、一般には、大規模多国籍企業グループ向けの制度として理解されています。しかし、中小・中堅企業であっても、外国親会社の日本子会社である場合、大企業グループに買収される場合、海外M&Aを検討している場合、海外子会社を含むグループが拡大している場合には、無関係とは言い切れません。
制度面では、令和5年度税制改正によりIIRに係る法制化として各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税が創設され、令和7年度税制改正によりUTPR及びQDMTTに係る法制化として、国際最低課税残余額に対する法人税及び国内最低課税額に対する法人税が創設されています。
出典:国税庁|グローバル・ミニマム課税関係
さらに、令和8年度税制改正では、グローバル・ミニマム課税への対応や、外国子会社合算税制等の見直しが示されています。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱(5/9)
このコラムでは、大企業向け制度を詳細に計算するのではなく、中小・中堅企業がどの範囲で確認すべきかを、親会社・子会社関係、海外グループ、M&A、制度改正確認という視点から整理します。
推奨する読む順番
第15テーマは、原則として15-1から15-9まで、順に読み進めていただくことをおすすめします。
まず、15-1で移転価格税制の全体像をつかみます。ここで、国外関連取引、独立企業間価格、所得移転、税務調査の基本的な関係を理解します。
次に、15-2で対象となる国外関連者と取引を判定します。ここを飛ばしてしまうと、自社にどの取引があるのかを把握しないまま、算定方法や文書化へ進むことになりかねません。
そのうえで、15-3で価格算定の考え方を確認し、15-4で文書化とローカルファイルに進みます。ここまでで、移転価格税制の基本的な判断プロセスが見えてきます。
続いて、15-5で役務提供、無形資産、金融取引という、実務上問題になりやすい取引を確認します。そして15-6で、調査、APA、相互協議という出口リスクを確認します。
その後、15-7で外国子会社合算税制の基本に進み、15-8で移転価格税制との関係を整理します。最後に、15-9でグローバル・ミニマム課税を含む最新論点の位置づけを確認します。
この順番で読み進めると、制度を断片的に覚えるのではなく、「自社の海外取引をどの順番で確認するか」が見えてくるはずです。
読者の状況別に、どこから読むべきか
海外取引を始めたばかりの会社であれば、15-1、15-2、15-5から読むとよいでしょう。まずは、どの取引が国外関連取引に当たるのか、海外子会社への支援や貸付がどのような税務論点を持つのかを整理することが先決です。
すでに海外子会社があり、親会社・子会社間の価格設定が曖昧なままだという会社は、15-1から15-4までを順に読むことをおすすめします。特に、契約書や価格設定方針がない場合には、文書化の前提となる事実整理が必要になります。
ロイヤリティ、経営指導料、貸付金利、保証料がある会社は、15-5を重点的に確認してください。これらは金額が大きくなくても、税務調査で「なぜその対価なのか」を問われやすい取引です。
税務調査や、親会社からの資料提出要請に備えたい会社は、15-4と15-6を読むと、どの資料を平時から整えておくべきかが見えやすくなります。
低税率国の海外子会社、持株会社、知財保有会社、金融子会社がある会社は、15-7と15-8を優先してください。移転価格税制だけでなく、外国子会社合算税制の確認が必要になる可能性があります。
外国親会社の日本子会社、大企業グループへの売却を検討している会社、海外M&Aを予定している会社は、15-9まで読み進めていただくことをおすすめします。グローバル・ミニマム課税は、現在の自社単体の規模だけで判断すると、見落としが生じる場合があります。
このテーマで深掘りしないこと
第15テーマは、移転価格税制・外国子会社合算税制・国際高度論点を扱いますが、すべての国際税務をここで扱うわけではありません。
源泉所得税、租税条約、PE、外国税額控除、海外子会社配当の基本は、第14テーマで整理します。
海外出向者の給与負担、出向契約、源泉所得税、人材移動に関する税務は、第8テーマで扱います。
税務調査手続、質問検査権、修正申告、更正、加算税、重加算税は、第17テーマで扱います。
また、時価、経済合理性、同族会社の行為計算否認、租税回避と節税の境界は、第16テーマで横断的に確認します。
第15テーマでは、これらの論点のうち、国外関連者取引、移転価格文書化、外国子会社合算税制、グローバル・ミニマム課税に関係する部分に絞って整理します。
このテーマを読むときの実務上の視点
第15テーマを読むときは、制度名を覚えることよりも、自社の取引を次の順番で棚卸しすることが重要です。
まず、海外子会社・海外関連会社・外国親会社・海外支店・PEの有無を確認します。
次に、それぞれの会社や拠点との間で、物品販売、仕入、役務提供、ロイヤリティ、貸付、保証、出向者給与、立替精算、配当があるかを整理します。
そのうえで、取引ごとに、契約書があるか、価格設定方針があるか、請求書・送金資料があるか、会計処理と税務申告が整合しているかを確認します。
さらに、海外子会社の利益率、現地税率、事業実体、役員・従業員、事務所、意思決定、資産、リスク負担を整理します。
最後に、移転価格税制、外国子会社合算税制、外国税額控除、源泉税、グローバル・ミニマム課税のうち、どの制度が関係する可能性があるかを検討します。
この流れで整理しておけば、専門家に相談する際にも、「何が分からないのか」「どの資料が不足しているのか」「どの判断を急ぐべきか」が明確になります。
このテーマで特に注意したい会社
第15テーマは、海外取引のあるすべての会社に関係します。なかでも、次のような会社は、早めに確認しておく価値があります。
- 海外子会社に販売会社や製造会社がある会社。
- 海外子会社に管理支援、営業支援、技術支援を行っている会社。
- 海外子会社に商標、ノウハウ、ソフトウェア、技術情報を使わせている会社。
- 海外子会社へ貸付や債務保証をしている会社。
- 低税率国に子会社、持株会社、金融会社、知財会社がある会社。
- 海外子会社から配当を受けている会社。
- 外国親会社の日本子会社で、親会社から国際税務資料の提出を求められる会社。
- M&Aにより海外グループへ入る可能性がある会社。
- 上場準備、監査対応、グループ再編を予定している会社。
これらの会社では、税額そのものだけでなく、資料化、説明責任、会計上の整合性、そして親会社・株主・金融機関・買主への説明が重要になります。
国際高度論点で資料化すべきもの
第15テーマ全体を通じて、繰り返し重要になるのが、資料化です。
移転価格税制では、取引価格の妥当性を、後から説明する必要があります。外国子会社合算税制では、外国関係会社の実体、所得内容、租税負担割合、経済活動基準を説明する必要があります。グローバル・ミニマム課税では、対象となる企業グループかどうか、親会社・子会社関係、連結収入、国別情報を確認する必要があります。
平時から残しておきたい資料としては、組織図、資本関係図、海外子会社一覧、海外取引一覧、契約書、請求書、送金資料、取引価格の決定資料、稟議書、取締役会議事録、海外子会社の決算書・申告書、移転価格文書、現地税務資料、出向契約、ロイヤリティ契約、貸付契約、保証契約などが挙げられます。
資料がないからといって、税務上の結論そのものが必ず誤りになるわけではありません。しかし、後から説明できない処理は、税務調査、M&A、親会社報告、監査対応、金融機関説明の場面で、必ず弱点になります。
第15テーマのゴール
第15テーマのゴールは、読者に移転価格の専門家や国際税務専門家になっていただくことではありません。
自社の海外取引について、少なくとも次のことを整理できる状態になることです。
- どの海外関係会社と取引しているのか。
- どの取引が国外関連取引に当たる可能性があるのか。
- 取引価格を、どのような考え方で決めているのか。
- 無償・低額・高額の役務提供や、ロイヤリティ未収がないか。
- 海外子会社に利益が残る理由を、説明できるか。
- 文書化資料や契約書が、不足していないか。
- 外国子会社合算税制の確認が必要な子会社があるか。
- 移転価格税制と外国子会社合算税制を、混同していないか。
- グローバル・ミニマム課税について、対象外又は関係ありと判断した理由を残せるか。
ここまで整理できれば、顧問任せ・担当者任せではなく、自社の論点を理解したうえで専門家に相談することができます。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
海外子会社との取引、ロイヤリティ、経営支援料、海外貸付、保証料、外国子会社合算税制、グローバル・ミニマム課税。これらは、制度ごとの知識だけでは判断しにくい論点です。
必要になるのは、取引実態、契約関係、会計処理、税務申告、海外子会社の機能とリスク、さらには将来のM&A・承継・再編まで含めて、会社として説明できる状態を作っておくことです。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人税申告だけでなく、海外子会社管理、移転価格税制、外国子会社合算税制、外国税額控除、M&A税務、税務調査対応を一体で整理し、後から説明できる税務判断を重視しています。
海外取引が増えてきた。海外子会社との取引価格に不安がある。外国子会社合算税制の対象可能性を確認したい。親会社や買主から国際税務資料を求められている。このような場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。
振り返り:第15テーマで押さえるべきこと
| 項目 | 振り返り |
|---|---|
| テーマの役割 | 海外子会社・国外関連者との取引について、移転価格、文書化、CFC、グローバル・ミニマム課税を俯瞰する |
| 読む前提 | 第14テーマで、PE、源泉税、租税条約、外国税額控除、海外子会社配当の基本を確認しておくと理解しやすい |
| 最初に読む記事 | 15-1で移転価格税制の全体像を確認する |
| 入口判定 | 15-2で国外関連者と対象取引を確認する |
| 価格設定 | 15-3で独立企業間価格と算定方法の考え方を理解する |
| 資料管理 | 15-4で移転価格文書化とローカルファイルを確認する |
| 個別取引 | 15-5で役務提供、無形資産、金融取引を確認する |
| 調査対応 | 15-6で移転価格調査、APA、相互協議を確認する |
| 海外子会社所得 | 15-7で外国子会社合算税制の基本を確認する |
| 制度の関係 | 15-8で移転価格税制と外国子会社合算税制を比較する |
| 最新論点 | 15-9でグローバル・ミニマム課税と中小・中堅企業での確認視点を整理する |
| 実務上の核心 | 制度を覚えることより、取引実態、契約、価格設定、機能リスク、資料化を整理することが重要 |
| 相談前に準備すべき資料 | 組織図、資本関係図、海外取引一覧、契約書、請求書、送金資料、海外子会社決算書、移転価格資料、現地税務資料 |