相続税調査の全体像|何を確認され、どの資料を整えるべきか

相続税調査は、「申告した財産の金額が合っているかどうか」を確認するためだけの手続ではありません。

実際の調査では、もっと広い範囲の事実が確認されます。被相続人が亡くなる前の財産管理の状況、家族名義の預金や有価証券、生前贈与の実態、過去の資金移動、不動産や非上場株式の評価、債務や葬式費用の控除、小規模宅地等の特例の適用など、申告の前提となった事実関係が対象になります。

そもそも相続税は、相続や遺贈によって取得した財産に加え、相続時精算課税の適用財産や、一定期間内の暦年課税による贈与財産なども含めて課税関係を判断します。申告と納税は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。
出典:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税

調査で問われるのは、「申告書に何を書いたか」だけではありません。むしろ大切なのは、「なぜその財産を相続財産に含めたのか、あるいは含めなかったのか」「なぜその評価額としたのか」「なぜその贈与は成立していると考えたのか」を、資料と事実に基づいて説明できるかどうかです。

目次

相続税調査は、どのような事案で行われるのか

相続税の実地調査は、すべての申告に対して行われるわけではありません。国税庁は、資料情報などから申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案などについて、実地調査を実施していると公表しています。

令和6事務年度における相続税の実地調査件数は9,512件、追徴税額の合計は824億円とされています。さらに、文書や電話、来署依頼による面接といった「簡易な接触」も、申告漏れや計算誤りなどがある申告の是正に活用されています。
出典:国税庁|令和6事務年度における相続税の調査等の状況

ここから見えてくるのは、相続税調査が「偶然選ばれるもの」ではないということです。税務署が保有する資料情報、金融機関情報、過去の申告履歴、財産規模、資金移動、国外財産、贈与税申告の有無などを踏まえ、一定の着眼点を持って行われています。

したがって、調査通知を受けた段階で、税務署側はすでに確認したい論点を持っている可能性があります。もちろん、その時点で申告漏れが確定しているわけではありません。ただ、納税者側が「何を見られているのか」を理解しないまま場当たり的に対応してしまうと、本来きちんと整理できる論点まで不利に見えてしまうことがあります。

相続税調査の基本的な流れ

相続税調査は、おおむね次のような流れで進みます。

まず税務署側で、申告書や添付資料、過去の所得税申告、贈与税申告、法定調書、金融機関情報、不動産情報などが確認されます。そのうえで実地調査が必要と判断されると、相続人または税務代理人に対して、調査通知や事前通知が行われます。

実地の調査では、調査日時、場所、対象税目、対象期間、確認する帳簿書類その他の物件などが問題になります。国税庁の事務運営指針では、調査対象となる「帳簿書類その他の物件」に、法令上保存が必要なものだけでなく、調査目的を達成するために必要と認められる資料も含まれると整理されています。
出典:国税庁|税務調査手続等に関する事務運営指針 第4章

相続税の場合、法人税や所得税のように「帳簿」だけで完結するわけではありません。むしろ、預金通帳、取引履歴、証券口座の明細、保険契約、贈与契約書、不動産関係資料、遺産分割協議書、過去の生活費や医療費の支出状況、家族間の資金移動の記録など、財産の帰属や移転を説明する資料が重要になります。

調査の結果、申告内容に誤りがあると判断された場合には、調査結果の内容説明が行われ、修正申告の勧奨や更正処分、加算税の賦課決定などにつながることがあります。事務運営指針では、調査結果説明の時点で得ている情報に基づき、合理的に算定した課税標準、税額、加算税などが説明の対象になるとされています。
出典:国税庁|税務調査手続等に関する事務運営指針 第4章 調査の終了の際の手続

相続税調査で最も重要なのは「財産の名義」ではなく「実質」

相続税調査で特に問題になりやすいのが、名義預金や名義財産です。

預金口座の名義が配偶者や子、孫であっても、実質的に被相続人の財産と認められる場合には、相続財産として申告すべきものと判断される可能性があります。

ここで重要なのは、「名義が誰か」だけではありません。確認されるのは、次のような事情です。

  • 誰の資金で作られた財産か
  • 誰が通帳や印鑑、キャッシュカードを管理していたか
  • 名義人はその財産の存在を認識していたか
  • 名義人が自由に使用・処分できる状態だったか
  • 財産から生じる利息、配当、収益を誰が受け取っていたか
  • 贈与として処理したのであれば、贈与者と受贈者の意思表示・受諾・管理移転があったか

こうした事情を総合して、「その財産は本当に名義人のものといえるのか」が確認されます。

家族名義の口座についても、被相続人の収入、過去の出金、振込履歴、定期預金の作成経緯、証券口座への入金原資などがあわせて確認されることがあります。名義人が「自分の口座です」と説明したとしても、その原資、管理、使用状況が被相続人に帰属していると見られれば、説明としては弱くなってしまいます。

逆に、名義人が自ら管理し、贈与契約や贈与税申告、資金移動の記録、使用の実態が整っていれば、実質的な帰属を説明しやすくなります。

預金調査では、過去の入出金が確認される

相続税調査では、被相続人の死亡時点の預金残高だけでなく、過去の入出金の動きまで確認されます。

たとえば死亡の直前に多額の出金があると、その資金がどこへ行ったのかが問われます。家族への移転なのか、生活費や医療費、施設費用として使われたのか、現金として残っているのか、それとも別口座や証券口座に移っているのか。これらをきちんと説明できなければ、相続財産の計上漏れ、名義財産、生前贈与、あるいは使途不明金として問題になる可能性があります。

預金調査で確認されやすいのは、次のような事項です。

  • 死亡前後の大口出金
  • 家族名義口座への振込
  • 定期預金の解約と再作成
  • 証券会社への資金移動
  • 貸金庫や現金保管の有無
  • 保険料の負担者
  • 不動産購入資金の原資
  • 過去の贈与税申告との整合性
  • 生活費、医療費、介護費、施設費用の支払実態

調査への対応では、通帳や残高証明を並べるだけでは足りません。資金の流れを時系列で整理し、入金・出金それぞれの意味を説明できる状態にしておくことが重要です。

特に、家族が被相続人の財産管理を代行していた場合には、代理管理の記録、支出の内容、領収書、介護施設や医療機関への支払い、生活費の支払いなどを整理しておく必要があります。「家族のために使った」「よく分からない」といった曖昧な回答にとどまると、税務署側からは財産の所在や帰属が不明確に映ってしまいます。

生前贈与は「契約書があるか」だけでは判断されない

相続税調査では、生前贈与も重要な確認対象になります。

贈与契約書を作成している、毎年110万円以下で贈与している、贈与税申告をしている。こうした事情は、贈与の成立を説明するうえで有利な材料です。ただ、それだけで必ず安全といえるわけではありません。

贈与は、贈与者が財産を無償で与える意思を表示し、受贈者がこれを受諾することで成立します。国税庁のタックスアンサーでも、贈与による財産の取得時期について、口頭による贈与、書面による贈与、停止条件付贈与など、態様に応じた整理が示されています。
出典:国税庁|No.4402 贈与税がかかる場合

調査で問題になるのは、形式上の書類よりも、実際に財産の支配が移っていたかどうかです。

たとえば、贈与契約書があっても、受贈者がその財産の存在を知らず、通帳も印鑑も被相続人が保管していて、受贈者が自由に使えない状態だったとします。この場合、実質的な贈与として説明することは難しくなります。

また、毎年同じ時期に同じ金額を移していたとしても、その都度贈与契約が成立しているのか、それとも最初から一定額を分割して移転する契約だったのかによって、税務上の見方が変わる可能性があります。国税庁も、毎年100万円ずつの贈与について、毎年贈与契約を結んで贈与が行われる場合と、最初から定期金給付契約として約束されている場合とを区別しています。
出典:国税庁|No.4402 贈与税がかかる場合

生前贈与を調査の場で説明するためには、契約書、振込記録、贈与税申告書に加えて、受贈者による管理の状況、贈与後の財産の使われ方まで含めて整理しておく必要があります。

令和6年以後の贈与は、相続税調査でも確認の重要性が高い

令和6年1月1日以後の贈与については、相続税との関係で確認すべき事項が増えています。

暦年課税にかかる贈与財産を相続税へ加算する対象期間は、令和6年1月1日以後の贈与について段階的に見直されています。国税庁の説明によれば、相続開始日が令和8年12月31日以前の場合は相続開始前3年以内、令和13年1月1日以後は相続開始前7年以内が加算対象期間とされています。
出典:国税庁|No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続時精算課税についても、令和6年1月1日以後の贈与では、相続時精算課税にかかる基礎控除額110万円が設けられました。なお、相続時精算課税を選択した場合、その贈与者からの贈与については、以後、暦年課税へ変更できない点にも注意が必要です。
出典:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択

こうした見直しを踏まえると、相続税調査では、過去の贈与について次のような確認が重要になります。

  • 暦年課税の贈与か、相続時精算課税の贈与か
  • 贈与者ごとの管理ができているか
  • 贈与税申告書と実際の資金移動が一致しているか
  • 相続税の課税価格に加算すべき贈与を漏らしていないか
  • 贈与財産の取得時期と価額を説明できるか
  • 相続時精算課税選択届出書や添付資料が適切に提出されているか

生前贈与は、相続対策として行われることが多いものです。しかし調査の場では、「対策として有効だったか」よりも、「法律上・事実上、財産の移転が成立していたか」が確認されます。

財産評価では、評価額だけでなく評価根拠が問われる

相続税申告では、財産評価も大きな論点になります。

特に、不動産、非上場株式、同族会社への貸付金、借地権、貸家建付地、小規模宅地等の特例などは、評価額に大きな影響を与えます。

土地や家屋は、相続税や贈与税の計算上、評価が必要です。国税庁は、土地の評価方法として路線価方式と倍率方式を示しており、家屋については固定資産税評価額に1.0を乗じて評価するとしています。また、賃貸されている土地や家屋は、権利関係に応じて評価額が調整されることがあります。
出典:国税庁|No.4602 土地家屋の評価

ただし、相続税調査では「路線価で計算しているから大丈夫」とは限りません。

評価単位の取り方、土地の利用状況、貸付の実態、空室状況、使用貸借、親族間の賃貸借、私道、無道路地、地積規模の大きな宅地、特殊な形状の土地など、評価額に影響する事実関係が確認されます。

小規模宅地等の特例を適用している場合には、その土地が本当に居住用・事業用・貸付事業用として使われていたのか、取得者要件や継続要件を満たしているのか、遺産分割の状況はどうかが問題になります。

財産評価への対応では、計算結果だけでなく、評価に使った前提となる事実を説明できる資料が重要です。

  • 固定資産税課税明細書
  • 登記事項証明書
  • 公図、測量図、住宅地図
  • 賃貸借契約書
  • 家賃入金記録
  • 利用状況が分かる写真や資料
  • 建物の用途や空室状況
  • 同族会社との契約関係
  • 評価明細書の計算根拠
  • 特例適用に必要な事実関係資料

評価額をめぐる争いは、単なる計算ミスの問題ではありません。「どの事実を前提に評価したのか」という争いになりやすい領域です。

相続人対応では、説明の一貫性が重要になる

相続税調査では、相続人が複数いることも少なくありません。

その場合、誰が被相続人の財産を管理していたのか、誰が通帳や印鑑を保管していたのか、誰が申告資料を集めたのか、誰が生前贈与や預金移動の経緯を把握しているのかが重要になります。

相続人ごとに認識が食い違っていると、調査官から見れば、事実関係が整理されていない、あるいは財産の管理状況が不明確であるように映ってしまいます。

特に注意したいのは、次のような場面です。

  • 一部の相続人だけが財産管理をしていた
  • 他の相続人は家族名義預金の存在を知らなかった
  • 被相続人の意思能力が低下していた時期に資金移動がある
  • 相続人間で遺産分割をめぐる対立がある
  • 過去の贈与について、贈与者側と受贈者側の説明が異なる
  • 申告を担当した相続人と、実際に財産を受け取った相続人が異なる

調査への対応では、税務署に説明する前に、相続人間で事実関係を整理しておく必要があります。もちろん、事実を作る、口裏を合わせるという意味ではありません。誰が何を知っているのか、どの資料で確認できるのか、不明な点はどこまで調べたのかを整理しておく、ということです。

修正申告に応じるかどうかは、慎重に判断する

調査の結果、申告漏れや評価の誤りを指摘され、修正申告を勧奨されることがあります。

修正申告をすること自体が、常に悪いわけではありません。事実関係や法令上の取扱いを確認した結果、当初申告に誤りがあると判断されるのであれば、修正申告によって是正することが合理的な場合もあります。

一方で、調査官の指摘内容に納得できない場合や、事実認定・評価方法・重加算税の要否に争いがある場合には、すぐに修正申告へ応じてよいのかを慎重に検討する必要があります。

国税庁の税務調査手続FAQでも、調査結果の説明後に修正申告を勧奨された場合について、修正申告をすると不服申立てはできないものの、更正の請求はできる旨が説明されています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

修正申告に応じるかどうかは、少なくとも次の観点から整理しておくべきです。

  • 指摘された財産は、本当に相続財産に該当するか
  • 評価方法に誤りがあるのか、判断の余地があるのか
  • 資料で反証できる余地があるか
  • 加算税、延滞税、重加算税の可能性はどうか
  • 相続人間の負担関係に影響するか
  • 将来、同様の財産管理や贈与について問題が残らないか
  • 更正を受けて不服申立てを検討する余地があるか

「早く終わらせたい」という心理から、内容を十分に理解しないまま修正申告に応じてしまうと、後から争いにくくなることがあります。逆に、根拠が乏しいまま争い続ければ、税額や附帯税、相続人間の負担、専門家費用が大きくなることもあります。

必要なのは、楽観論でも強硬論でもなく、証拠関係に基づいた現実的な判断です。

重加算税は、単なる申告漏れだけで決まるものではない

相続税調査で大きな問題になり得るのが、重加算税です。

重加算税は、単に申告漏れがあったというだけで当然に課されるものではありません。問われるのは、隠蔽または仮装と評価される行為があったかどうかです。

たとえば、相続人が財産の存在を知らなかったのか、知っていながら申告しなかったのか。資料を提出しなかったのか、そもそも資料の存在を認識していなかったのか。名義財産について、被相続人の財産であるという認識があったのか。調査時の説明が事実と異なっていたのか。

こうした事情によって、単なる申告漏れにとどまるのか、重加算税が問題になる事案なのかが分かれてきます。

相続税調査では、質問応答記録書や調査時の発言が、後の事実認定に影響することがあります。調査官から質問を受けた際に、記憶が曖昧なことを断定してしまったり、資料を確認する前に不用意に説明してしまったりすると、後から訂正が難しくなる場合があります。

重加算税が示唆された場合には、次の点を分けて整理する必要があります。

  • 申告漏れ財産の存在を、誰が、いつ認識していたか
  • 財産を申告しなかった理由は何か
  • 税理士にどの資料を渡していたか
  • 相続人がどこまで財産管理に関与していたか
  • 調査時の説明に虚偽や矛盾があるか
  • 資料の隠匿、改ざん、破棄などを疑われる事情があるか
  • 単なる評価判断や認識違いとして説明できる余地があるか

重加算税の判断は、税額だけの問題にとどまりません。納税者側の信用、相続人間の関係、専門家との責任分担にも影響します。だからこそ、調査中の発言や資料提出は慎重に行う必要があります。

相続税調査で最初に整理すべき資料

調査通知を受けたら、まず資料を集めることになります。ただし、資料をただ集めるだけでは十分ではありません。

重要なのは、「税務署が確認したい論点に対して、どの資料がどの事実を説明するのか」を整理することです。

調査前に確認しておきたい資料は、少なくとも次のようなものが挙げられます。

  • 相続税申告書一式
  • 財産評価明細書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人関係図、戸籍関係資料
  • 被相続人の預金通帳、取引履歴、残高証明書
  • 家族名義口座のうち、被相続人資金との関係があるもの
  • 証券口座の取引明細
  • 生命保険契約、保険料負担者が分かる資料
  • 不動産登記事項証明書、固定資産税課税明細書
  • 賃貸借契約書、家賃入金資料
  • 非上場株式の評価資料、会社決算書
  • 贈与契約書、贈与税申告書、振込記録
  • 介護費、医療費、施設費、生活費の支出資料
  • 債務、未払金、葬式費用の資料
  • 貸金庫、現金、貴金属、美術品等に関する資料
  • 国外財産に関する資料

ここで避けたいのは、「聞かれたら出す」「分からなければその場で考える」という対応です。

調査前に資料を確認していないと、調査官からの質問に対して不正確な回答をしてしまうおそれがあります。分からないことは、分からないと答えたうえで、後日資料を確認して説明する方がよい場合もあります。

相続税調査は、調査後の財産管理にもつながる

相続税調査は、過去の申告内容を確認する手続です。しかし実務の上では、それだけで終わらせるべきものではありません。

調査で名義預金が問題になったのであれば、今後の家族間の財産管理を見直す必要があります。生前贈与の説明が弱かったのであれば、今後の贈与契約、資金移動、贈与税申告、財産管理の方法を整える必要があります。不動産評価や小規模宅地等の特例で問題が生じたのであれば、次の相続や事業承継に向けて、土地の利用状況、賃貸借契約、会社との取引関係を整理する必要があります。

相続税調査で確認される論点は、そのまま将来の相続対策にも直結します。

  • 家族名義財産の整理
  • 贈与契約と財産管理の見直し
  • 不動産の利用状況の整理
  • 同族会社との貸付金・借入金の整理
  • 非上場株式評価の前提資料の整備
  • 相続人間で共有すべき財産情報の整理
  • 納税資金の確認
  • 遺言、遺産分割、承継方針の見直し

相続税調査は、たしかに不安な出来事です。しかし、財産の実態を整理し、次の相続や承継に向けて管理体制を整える機会にもなります。

専門家を付けずに相続税調査へ対応するリスク

相続税調査は、相続人だけで対応することも不可能ではありません。

ただし、相続税調査では、税法だけでなく、民法上の贈与、相続人間の権利関係、財産評価、金融資産の移動、同族会社、特例適用、加算税、不服申立てまで、複数の論点が絡み合います。

専門家を付けずに対応する場合には、特に次のようなリスクがあります。

  • 税務署の質問の意図を読み違える
  • 名義財産や生前贈与の争点を整理しないまま説明してしまう
  • 資料提出の順序や説明不足により、かえって疑義を深めてしまう
  • 修正申告に応じるべきか、更正を待つべきか判断できない
  • 重加算税のリスクを軽く見てしまう
  • 相続人間で説明が食い違う
  • 不利な発言が記録化される
  • 調査後の再発防止や、次の相続対策につながらない

専門家の役割は、単に税務署とのやり取りを代行することではありません。事実関係を整理し、資料を確認し、税務上の論点を切り分け、説明方針を整え、修正申告・更正・不服申立てといった選択肢を比較できる状態にすることです。

相続税調査では、相続人が「何を知らなかったのか」「何を知っていたのか」「どの資料で確認できるのか」を、丁寧に整理する必要があります。これは、感覚的な説明だけで乗り切るのが難しい領域です。

相続税調査の通知を受けたら、最初に行うべきこと

相続税調査の通知を受けたら、まず次の順番で整理していくことが重要です。

第一に、通知内容を確認します。調査日時、場所、対象税目、対象期間、担当部署、税務代理人への連絡の有無を確認します。

第二に、相続税申告書と添付資料を再確認します。どの財産をどの評価額で申告したのか、どの特例を使ったのか、どの財産を申告対象外と判断したのかを整理します。

第三に、預金・証券・保険・不動産・贈与・債務の論点を分けます。特に、家族名義財産、死亡前後の大口出金、生前贈与、評価減の適用は、重点的に確認します。

第四に、相続人間で事実関係を確認します。財産管理をしていた人、申告資料を集めた人、贈与を受けた人、被相続人の生活状況を知っている人、それぞれの認識を整理します。

第五に、専門家に相談する場合は、早めに資料を共有します。調査当日の直前では、資料の確認や説明方針の整理が十分にできない可能性があります。

相続税調査は、初動の整理によって、その後の対応の質が大きく変わります。

まとめ|相続税調査は、財産の「説明可能性」が問われる

相続税調査は、税務署と対立するための場ではありません。

その一方で、調査官の指摘を十分に検討しないまま、そのまま受け入れればよいというものでもありません。

大切なのは、財産の帰属、資金移動、贈与の成立、評価額の根拠、特例適用の要件、修正申告や重加算税の判断を、事実と資料に基づいて整理しておくことです。

相続税調査で問われるのは、「節税できたか」ではありません。

その財産は、誰のものだったのか。その資金は、どこから来て、どこへ移ったのか。その贈与は、本当に成立していたのか。その評価額には、合理的な根拠があるのか。そして、その申告内容を、後からきちんと説明できるのか。

こうした視点で整理できているかどうかが、相続税調査への対応の出発点になります。

相続税調査の通知を受けた場合や、名義預金・生前贈与・財産評価・重加算税リスクについて不安がある場合には、調査当日を迎える前に、資料と事実関係を整理しておくことが重要です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税調査における事実関係の整理、申告内容の確認、財産評価・名義財産・生前贈与の論点整理、修正申告や今後の対応方針の検討について、専門家として冷静に整理する支援を行っています。

相続税調査への対応を一人で抱え込まず、まずは現在のご状況と調査通知の内容を整理するところから、ご相談ください。

振り返り|相続税調査で押さえるべき重要ポイント

論点調査で確認されること実務上の確認ポイント
調査通知調査日時、対象税目、対象期間、調査場所通知内容を記録し、税務代理人への連絡状況を確認する
申告財産申告した財産に漏れがないか申告書、評価明細、添付資料を再確認する
名義預金・名義財産名義人と実質所有者が一致しているか原資、管理者、通帳・印鑑の保管、使用状況を整理する
預金移動死亡前後の出金や家族口座への移動入出金の時系列、使途、残存財産の有無を確認する
生前贈与贈与が実質的に成立していたか契約書、振込記録、贈与税申告、受贈者管理を確認する
財産評価不動産・株式等の評価根拠が妥当か評価単位、利用状況、権利関係、特例要件を確認する
相続人対応相続人間の説明に矛盾がないか誰が何を知っているか、資料で確認できるかを整理する
修正申告指摘を受け入れるべきか事実、法令、証拠、加算税、不服申立ての可能性を比較する
重加算税隠蔽・仮装と評価される事情があるか認識、行為、資料提出、発言内容を慎重に整理する
調査後対応同じ問題を繰り返さない体制があるか財産管理、贈与管理、相続対策、資料保存を見直す
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