輸出物品販売場のリファンド方式|令和8年11月1日開始に向けた免税店の消費税・返金・システム対応

輸出物品販売場、いわゆる免税店の制度が、令和8年11月1日から大きく変わります。

これまでの免税店実務は、外国人旅行者などの免税購入対象者に対して、販売の時点で消費税を免除した価格で販売し、その購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムへ送信する。こうした流れが中心でした。

リファンド方式は、この考え方を大きく組み替えるものです。免税店はまず税込価格で販売し、購入者が出国時に税関で免税対象物品の持出確認を受ける。そのうえで、消費税相当額を返金する。この仕組みへと移行します。令和7年度税制改正により、リファンド方式は令和8年11月1日から実施されます。出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し

この改正は、単に「免税販売の方法が変わる」というだけの話ではありません。店舗レジ、販売価格、購入者への説明、購入記録情報、税関確認情報、返金手続、返金代行業者との契約、会計処理、消費税申告、電子データ保存、そして税務調査対応まで、すべてが連動します。

とりわけ、免税販売を重要な販売チャネルとしている小売、百貨店、ドラッグストア、家電量販店、ブランド品販売店、観光地の店舗、商業施設の運営者にとっては、制度対応の遅れがそのまま経営リスクになります。販売機会の損失、返金トラブル、申告誤り、顧客対応の混乱に直結しかねません。

本記事では、令和8年6月26日時点で公表されている国税庁・観光庁などの公式情報を前提に、輸出物品販売場のリファンド方式を、消費税の申告計算ではなく、店舗運営と経営管理の問題として整理していきます。

目次

まず押さえる結論

リファンド方式の本質は、ひと言でいえば「販売時に免税する制度」から「出国時の税関確認を経て免税が成立し、返金する制度」への転換です。

項目現行制度の考え方リファンド方式の考え方
店頭販売時一定要件を満たせば税抜価格で免税販売税込価格で販売
購入者の行動購入後、国外へ持ち出す義務購入日から90日以内の出国時に税関確認を受ける
税関確認不正対応として確認される場面がある税関確認が免税成立の中核要件
店舗側の免税要件購入記録情報等の提供・保存購入記録情報と税関確認情報の保存
返金原則として販売時に免税済みのため不要税関確認後、購入者へ消費税相当額を返金
会計処理免税売上として処理販売時は課税売上、税関確認情報保存後に免税売上へ振替
システム対応購入記録情報の送信が中心購入記録情報の送信に加え、税関確認結果の取得・保存・返金連携が必要

免税店はまず税込価格で販売し、購入者は購入日から90日以内の出国時に税関確認を受ける。免税店は購入記録情報と税関確認情報を保存することで免税の適用を受け、そのうえで購入者へ消費税相当額を返金する。これがリファンド方式の基本的な流れです。

ここで見落としてはならないのが、「販売の時点では、まだ免税が確定していない」という一点です。だからこそ、レジ、領収書、売上計上、返金予定額、返金未了残高、そして税関確認未了の取引を、それぞれ切り分けて管理しなければなりません。

令和8年11月1日から、現行制度との併用期間はない

リファンド方式は、令和8年11月1日以降に免税店で行う免税対象物品の譲渡、つまり販売から適用されます。この日以降も免税の適用を受けるにはリファンド方式への対応が不可欠であり、現行制度とリファンド方式を併用できる移行期間は設けられていません。

したがって、令和8年11月1日以後も免税販売を続ける店舗は、施行日を迎える前までに、次の状態を整えておく必要があります。

準備領域必要な状態
店舗レジ税込販売を前提に免税対象取引を識別できる
購入記録情報リファンド方式対応のデータ項目で送信できる
税関確認情報取得・保存・会計処理へ反映できる
返金手段銀行振込、カード送金、アプリ送金、現金返金等を決定している
委託契約承認送受信事業者や返金代行業者との役割分担が明確
会計処理課税売上から免税売上への振替ルールが定まっている
顧客説明90日以内の税関確認、商品提示、返金方法を多言語で案内できる
社内承認例外処理、返金不能、取消・返品、税関確認不可の処理が定まっている

「制度が始まってから、慣れながら対応すればよい」という発想は危険です。施行の初日から、販売、購入記録、税関確認、返金、会計処理が、いずれも新制度で動き始めます。

リファンド方式の基本フロー

リファンド方式の免税販売は、次の流れに沿って整理すると、全体像がつかみやすくなります。

段階主体実務内容
1購入者免税店で旅券等を提示
2免税店免税購入対象者であることを確認
3免税店免税対象物品を税込価格で販売
4免税店又は承認送受信事業者購入記録情報を免税販売管理システムへ送信
5購入者購入日から90日以内の出国時に税関で確認を受ける
6税関・国税庁システム税関確認結果を登録
7免税店又は承認送受信事業者税関確認情報を取得・保存
8免税店又は返金委託先購入者へ消費税相当額を返金
9免税店課税売上から免税売上へ振替処理
10免税店消費税申告・証憑保存へ反映

観光庁の整理でも、2026年11月1日の販売から、出国時に空港などの税関で物品の国外持出しが確認された後に消費税相当額を返金する、リファンド方式へ移行するとされています。出典:観光庁|新制度(リファンド方式)特設ページ

このフローのうち、免税店側で特に意識しておきたいのは、「販売」「購入記録情報の送信」「税関確認情報の取得」「返金」「会計上の振替」が、一つの取引IDでひとつながりになっているという点です。

免税成立の判断は、販売単位ごとに厳しく管理する

リファンド方式では、購入者が出国時に税関確認を受けられるかどうかが、免税成立の分かれ目になります。

この税関確認は、購入記録情報1件、つまり1回の販売単位ごとに判定されます。そして、その販売単位に含まれる商品のうち1つでも税関で確認できなければ、その購入記録情報に含まれるすべての商品が免税の対象外となります。出典:観光庁|新制度(リファンド方式)特設ページ

この点は、店舗実務のうえで非常に重要です。

たとえば、1回のレシートに次の商品が含まれていたとします。

商品税率税抜価格出国時の状況
化粧品10%8,000円所持
菓子8%3,000円国内で消費済み
雑貨10%12,000円所持

このケースでは、菓子を国内で消費して所持していないために、そのレシート単位の購入記録情報全体について税関確認を受けられず、他の商品についても返金の対象にならない可能性があります。

そのため店舗側では、購入者への説明にとどまらず、販売単位の設計そのものを検討する必要が出てきます。消費されやすい商品と高額商品を同一のレシートに含めてよいのか、旅行者にどのように説明するのか、返品や取消しが発生した場合に購入記録情報をどう修正するのか。いずれも実務上の論点となります。

免税対象物品の範囲等も見直される

リファンド方式への移行にあわせて、免税対象物品の範囲などについても見直しが行われます。

具体的には、一般物品と消耗品の区分、消耗品に係る購入上限額50万円、そして特殊包装が廃止されます。あわせて、通常生活の用に供するかどうかという用途要件も廃止されます。一方で、購入下限額5千円の判定については、一般物品と消耗品を区分せず、税抜価額で行うこととされています。

項目現行制度リファンド方式
一般物品・消耗品の区分あり廃止
消耗品の購入上限額50万円廃止
消耗品の特殊包装必要廃止
通常生活の用に供する物品か要件あり用途要件廃止
購入下限額一般物品・消耗品を区分して判定区分せず税抜5千円以上で判定
消耗品の国内使用実質的に制限国内で消費すると税関確認・返金を受けられない

ここで誤解が生じやすいのが、「特殊包装が廃止されるのだから、消耗品を国内で使ってもよい」という受け止め方です。しかし、消耗品の特殊包装は廃止される一方で、飲食料品や化粧品などを国内で消費した場合には、税関確認、すなわち返金を受けることはできません。出典:観光庁|旅行者向け よくある質問(リファンド方式)

したがって、店舗側の説明は「包装は不要になります」だけでは足りません。「購入した免税対象物品は、出国時に税関で提示できる状態で所持している必要があります」というところまで、あわせて伝える必要があります。

単価100万円以上の商品は、購入記録情報の精度が重要になる

リファンド方式への移行に伴い、単価100万円(税抜価額)以上の商品を販売した場合には、商品の属性に応じて、免税対象物品を特定するに足りる事項、いわゆる商品情報詳細を購入記録情報として提供することが必須項目となります。具体的な名称、ブランド名、型番号、形状、色彩、鑑定書・保証書付きである旨、シリアル番号などを組み合わせて設定する、といった例が示されています。

高額品を扱う店舗では、次のような情報を、商品マスター・販売データ・購入記録情報へ連動させておく必要があります。

商品分類管理すべき情報例
腕時計ブランド、型番、色、素材、シリアル番号、保証書
宝飾品素材、宝石の種類、形状、鑑定書・鑑別書の有無
ブランドバッグブランド、モデル名、色、素材、シリアル番号
美術品作者、作品名、寸法、証明書、管理番号
高額家電型番、シリアル番号、保証書

購入記録情報の「品名」欄や商品分類から商品を特定できないと、購入者が空港などで円滑に税関確認を受けられないおそれがあります。これは税務だけの問題ではなく、顧客体験と店舗の信用に関わる問題でもあります。

別送の取扱いは令和7年3月31日で廃止済み

免税店で購入した免税対象物品を、購入者が自ら郵便物などとして輸出する「別送」の取扱いは、リファンド方式への移行を待たず、令和7年3月31日をもってすでに廃止されています。令和7年4月1日以降に購入した商品について、出国時に購入品を所持していない場合には、消費税が徴収されることとなります。

一方で、免税店などの販売場で顧客が運送契約を締結し、その場で商品を運送事業者へ引き渡す方法については、扱いが異なります。リファンド方式への移行後は、輸出物品販売場制度の免税販売手続ではなく、消費税法第7条の輸出免税制度によって免税の適用を受けることができるとされています。この場合、免税店における一連の免税販売手続や購入記録情報の提供は不要となりますが、事業者側で一定事項を記載した運送契約書などを保存する必要があります。

区分取扱い
購入者が購入後に自ら郵便等で海外発送する別送令和7年3月31日で廃止
出国時に商品を所持していない場合税関確認を受けられず、返金対象外となる
販売場で顧客が運送契約を締結し、その場で運送事業者へ引渡し輸出免税制度として処理できる場合がある
この場合の必要資料運送契約書等の保存、仕向地、品名、数量、価額等の確認

そのため、海外配送サービスを提供する店舗では、その取引が「免税店制度のリファンド方式」に当たるのか、それとも「通常の輸出免税」に当たるのかを、取引ごとに切り分ける必要があります。

税関確認情報は、取得するだけでなく保存しなければならない

リファンド方式では、税関確認情報の取得と保存が、免税要件の中核をなします。

税関確認結果は、免税店の送受信用機器から国税庁の免税販売管理システムへリクエスト情報を送ることで、そのリクエスト情報に一致する結果が提供される仕組みです。取得方法はPULL型のAPI連携となるため、自社システムで対応するのか、他社製品を購入するのか、あるいは承認送受信事業者へ委託するのかを検討しておく必要があります。出典:国税庁|リファンド方式(税関確認結果)のFAQ

税関確認結果は、大きく次の2種類に分かれます。

税関確認情報区分内容
税関確認済免税対象物品を持ち出す、つまり輸出することについて、譲渡日から90日以内に税関の確認を受けたもの
免税不可税関で持ち出さないことが確認されたもの、又は譲渡日から90日以内に税関確認を受けられなかったもの

税関確認結果は、免税対象物品を持ち出すことが確認された場合、持ち出さないことが確認された場合、または譲渡日から90日以内に確認を受けられなかった場合に登録されます。そして、税関確認結果のリクエスト期限は、結果が登録されてから460日間です。この期間内に税関確認情報を保存しなかった場合には、免税要件を満たしません。出典:国税庁|リファンド方式(税関確認結果)のFAQ

これは、店舗側にとって極めて実務的な期限管理を意味します。

「税関確認済になっているはず」という推測では不十分です。460日以内に税関確認情報を取得して保存し、会計処理・返金処理・申告処理へと反映させる。この一連の流れを、確実に回していく必要があります。

購入記録情報の送信エラーは、免税不成立につながる

税関確認結果は、免税販売管理システムに登録された購入記録情報に対して登録されます。裏を返せば、送信した購入記録情報がエラーなどによってシステムに受け付けられなかった場合、税関確認の対象となる購入記録情報が存在しないため、税関確認結果そのものが登録されません。出典:国税庁|リファンド方式(税関確認結果)のFAQ

つまり店舗側では、購入記録情報を送ったという事実だけで安心してはいけません。受信結果通知を確認し、正常に受け付けられたかどうかまで管理しておく必要があります。

管理項目実務上の意味
購入記録情報の送信日時送信漏れ・遅延の確認
受信結果通知受付済みかエラーかの確認
エラー内容修正・再送信の要否
再送信履歴重複送信・未受付の判定
購入記録ID税関確認情報、返金、会計処理との紐付け
取消データ税関確認結果登録前か後かで可否が異なる

また、税関確認結果が登録された後は、購入記録情報の取消データを送信することはできません。仕様として、税関確認結果が登録された購入記録情報の取消しはできないものとされています。出典:国税庁|リファンド方式(税関確認結果)のFAQ

そのため、販売取消し、返品、入力誤り、レシートの再発行といった店舗の例外処理は、税関確認結果が登録される前に適切に処理できる体制を整えておく必要があります。

販売時は課税売上、税関確認情報保存後に免税売上へ振り替える

リファンド方式で会計処理上の誤りがもっとも起きやすいのは、販売の時点と免税成立の時点にズレが生じる点です。

商品販売時に課税売上げとして処理した取引は、税関確認情報の保存によって免税要件を満たすことになります。そのため、その後に免税売上げへ振り替える処理が必要です。この振替は、税関確認情報を取得するたびに行う方法のほか、月次など一定のタイミングでまとめて行う方法でも差し支えないとされています。

さらに、商品販売を行った課税期間と税関確認情報を保存した課税期間が異なる場合には、販売を行った期の申告を修正するのではなく、税関確認情報を保存した期において調整する方法も認められています。ただし、その処理は継続して行う必要があります。

会計処理のイメージは、次のとおりです。

時点処理
店頭販売時税込価格で販売し、課税売上として記帳
購入記録情報送信時購入記録情報IDを売上データへ紐付け
税関確認済取得時税関確認情報を保存
返金時購入者へ消費税相当額を返金
月次又は都度課税売上から免税売上へ振替
決算・申告時免税売上、課税売上、返金未了額を整合確認

ここで肝心なのは、会計ソフト上の税区分を変えれば済むわけではない、という点です。税関確認情報が保存されているか、返金処理が行われたか、返金不能分があるか、そして販売期と確認期が異なる取引をどの期で調整する方針か。これらを一貫して説明できる状態にしておくことが求められます。

返金方法は消費税法令では限定されていない

リファンド方式では、税関確認を経た後に、購入者へ消費税相当額を返金します。

この返金手続をどのように実施するかについては、消費税法令上のルールが定められているわけではありません。具体的な返金方法としては、銀行振込、クレジットカード送金、アプリ送金、税関確認を受けた出国港内での現金返金などが考えられます。また、返金手続は免税店を経営する事業者自らが行うほか、承認送受信事業者などに委託する方法も選択肢となります。出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し

返金方法実務上の検討事項
クレジットカード送金購入時カードとの紐付け、返金遅延、取消との違い
銀行振込口座情報取得、海外送金、手数料、本人確認
アプリ送金対応国、利用者認証、返金履歴
出国港内現金返金現金管理、委託先、本人確認、混雑対応
クーポン・ポイント顧客同意、返金相当額との関係、会計処理
返金代行委託契約、手数料負担、資金移動業・犯収法等の確認

なお、返金手数料を旅行者の負担とするか、免税店の負担とするかについても、消費税法令上の定めはありません。返金手続を委託する代行業者との間で相談すべき事項とされています。また、政府が返金手続に係る手数料を徴収することはありません。出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)

返金手数料を誰が負担するかは、価格表示、顧客満足度、粗利、返金未了リスクにまで影響します。免税対象売上が大きい店舗であれば、販売価格戦略の一部として検討しておくべき論点です。

返金委託には、税法以外の法令確認も必要になる

返金を外部の事業者に委託する場合、あるいは免税店が自ら返金を行う場合には、消費税法だけを見ていては足りません。

返金手続の委託を受けて返金を行う事業者については、資金決済法に基づく資金移動業の登録、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認、外国為替及び外国貿易法に基づく経済制裁対象者などへの返金可否確認といった、消費税法以外の法令対応が必要となる場合があります。そして、免税店を経営する事業者が自ら返金手続を行う場合にも、一定の場合には同様の対応が求められます。出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し

したがって、返金業務を設計する際には、次のような役割分担を契約で明確にしておく必要があります。

論点契約で確認すべき事項
返金資金の原資免税店が預託するのか、代行業者が立替えるのか
返金手数料購入者負担、店舗負担、販売価格への織込み
返金不能時どの時点で未払を雑益処理するか
本人確認誰が実施し、証跡を誰が保存するか
外為法確認制裁対象者等のチェック主体
返金遅延免税店・代行業者・購入者への通知
苦情対応店舗、コールセンター、代行業者の窓口
データ連携税関確認情報、返金完了情報、取消情報の共有
監査対応返金履歴と会計処理の照合方法

返金委託は、単なる事務代行ではありません。消費税上の免税要件、顧客対応、資金管理、個人情報保護、マネーロンダリング対策が交差する領域です。

購入者に返金できなかった場合でも、税関確認情報があれば免税適用は可能

購入者が返金方法を登録しない、返金口座に不備がある、カード返金に失敗するなど、免税店側で返金できない場面も現実には想定されます。

こうした場合であっても、免税購入対象者に返金できなかったという理由で、ただちに免税が否定されるわけではありません。税関確認情報を保存していれば、免税の適用を受けることができます。出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)

ただし、これは「返金しなくてよい」という意味ではありません。顧客との契約、説明、返金規約、未払管理といった問題は、依然として残ります。

返金不要となった消費税相当額を雑益で処理するまでの期間について、法令上の定めはありません。とはいえ、旅行者とのトラブルを避ける観点からは、返金申請が行われない場合には一定日数の経過をもって返金できないこととする旨を、免税販売手続の際に案内し、あらかじめ合意しておく。こうした対応が考えられます。出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)

そのため店舗側では、返金未了残高について次のような管理が必要になります。

管理項目内容
返金予定額税関確認済となった取引ごとの返金額
返金方法登録状況登録済み、未登録、エラー
返金期限規約上の申請期限・支払期限
返金不能理由口座不備、カード不備、購入者未登録等
再通知履歴メール、アプリ通知、店頭案内等
雑益処理時期合意済み規約に基づく処理
消費税処理免税売上への振替との整合

返金不能分を放置すると、貸借対照表上の未払金、顧客対応、雑益計上、そして税務調査時の説明にまで影響が及びます。

免税店の許可・区分・委託制度も見直される

リファンド方式への移行にあわせて、免税店の区分や許可要件についても見直しが行われます。

まず、一般型免税店と手続委託型免税店の区分が統合されます。既存の一般型免税店または手続委託型免税店は、電子化未対応の免税店を除き、令和8年11月1日以降、新制度の一般型免税店の許可を受けたものとみなされます。一方で、令和8年10月31日までに購入記録情報の提供方法などの届出書を提出していない、免税販売手続電子化未対応の免税店は、同日をもって免税店許可の効力を失うこととされています。

項目実務上の影響
一般型・手続委託型の区分統合制度上は新制度の一般型へ整理
既存免税店原則として新制度の許可を受けたものとみなされる
電子化未対応店舗令和8年10月31日で許可効力を失う
委託型店舗既存委託関係が変わらなければ特段の手続なく継続可能
一般型店舗の委託承認免税手続事業者へ免税販売手続を委託できる
移転手続リファンド方式では変更届出書で可能となる見直し
許可要件免税販売手続、購入記録情報、税関確認情報の受領を適正に実施する体制が必要

なお、一般型免税店が自ら免税販売手続を行いながら、あわせて承認免税手続事業者に委託して行わせる併用については、リファンド方式の開始、すなわち令和8年11月1日と同時に行うことができるとされています。出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)

複数の店舗を持つ事業者、百貨店やショッピングセンター、商店街、空港施設内の店舗では、店舗ごとの許可状況、電子化対応状況、委託関係を一覧化しておくことが欠かせません。

購入者説明は、制度対応の一部である

リファンド方式では、購入者が適切に税関確認を受けなければ、返金は成立しません。だからこそ、店舗側の説明不足は、そのまま顧客トラブルへと直結します。

免税店を経営する事業者は、免税販売手続を行う際に、購入者へ次の点を説明する必要があります。購入日から90日以内の出国時に税関で旅券を提示するなどして確認を受ける必要があること、税関の求めに応じて免税対象物品を提示できるようにしておかなければならないこと、そして税関確認を受けた免税対象物品を遅滞なく輸出しなければならず、輸出しない場合には消費税が徴収されること。これらを、リーフレットの交付や掲示などによって伝えることが求められます。出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し

店舗側で最低限説明しておきたい内容は、次のとおりです。

説明事項店舗側の実務対応
税込価格で販売すること免税店でも店頭では税込支払となる旨を明示
出国時に税関確認が必要購入日から90日以内であることを案内
商品を提示できる状態で所持受託手荷物に預ける前に手続が必要
一部商品が不足するとレシート全体が不可となる可能性同一購入記録単位のリスクを説明
消耗品を国内消費すると返金不可特殊包装廃止と国内使用禁止を区別して説明
返金方法店舗又は返金事業者の案内に従うことを説明
返金時期税関確認後に返金されることを説明
返金申請期限店舗規約で定める場合は明示
高額品鑑定書・保証書等の提示を求められる可能性を説明

また、購入者は手荷物を航空会社に預ける前に、免税手続用の端末で手続を行う必要があります。一度預けた受託手荷物を引き戻すことはできません。出典:観光庁|旅行者向け よくある質問(リファンド方式)

この説明を、販売員任せにしてはいけません。多言語のリーフレット、レシート表示、購入後のメール、アプリ通知、返金登録画面、店内掲示を組み合わせ、同じ内容を繰り返し伝える。そうした設計が必要になります。

レジ・販売管理・会計システムで必要となるデータ設計

リファンド方式に対応するには、POSレジを改修するだけでは足りません。販売データ、購入記録情報、税関確認情報、返金情報、そして会計仕訳が、一本の線でつながっている必要があります。

データ領域必要な項目
販売データ販売日、販売時刻、販売場、レシート番号、税込金額、税率別金額
購入者情報旅券情報、在留資格、免税購入対象者確認結果
商品情報品名、数量、税率、税抜価額、商品分類、高額商品詳細
購入記録情報送信日時、受信結果通知、エラー、購入記録ID
税関確認情報税関確認済、免税不可、登録日、取得日、保存先
返金情報返金予定額、返金方法、返金手数料、返金日、返金不能理由
会計情報課税売上、免税売上振替、返金未払、雑益、手数料
例外処理返品、取消、再送信、税関確認後取消不可、顧客未登録
保存情報電子データ保存先、検索項目、保存期間、アクセス権限

なお、免税販売管理システムのAPI仕様書、コード表、サンプルデータ、テスト環境は、いずれもリファンド方式対応で公表されています。出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し

自社システムで購入記録情報を送信している事業者は、購入者への直接返金、または返金手続の委託が必要になります。出典:観光庁|新制度(リファンド方式)特設ページ

月次で確認すべき管理項目

リファンド方式では、販売日、税関確認日、返金日、会計上の振替日が一致しないことが、むしろ通常の姿となります。だからこそ、月次での確認が欠かせません。

月次確認項目確認の目的
免税対象販売額店舗・税率別の対象取引を把握
購入記録情報送信件数送信漏れ・エラーを検出
受信結果通知未確認件数税関確認結果が登録されないリスクを検出
税関確認済件数免税売上振替と返金対象を特定
免税不可件数課税売上のまま処理すべき取引を把握
90日経過未確認件数免税不可化の予備管理
460日以内未取得件数税関確認情報取得漏れを防止
返金予定額返金資金と未払金を管理
返金完了額返金代行業者との精算確認
返金不能額顧客対応・雑益処理の検討
課税売上から免税売上への振替額消費税申告との整合確認
高額商品取引商品情報詳細、保証書等との照合
エラー・取消・返品例外処理の承認記録

これらを決算のときにまとめて確認しようとすると、90日、460日、返金処理、税関確認情報の保存を、もはや追いきれなくなります。免税売上の金額が大きい事業者ほど、「販売・税関確認・返金・会計」の未了一覧を月次で確認する仕組みが必要になります。

税務調査で確認されやすい事項

リファンド方式の税務調査では、「免税売上として申告しているか」だけが問われるわけではありません。免税要件を満たすための一連の証拠が、そろっているかどうかが確認されると考えられます。

調査上の確認事項説明に必要な資料
免税店の許可許可通知、販売場一覧、電子化対応状況
購入者が免税購入対象者か旅券確認記録、在留資格、証明書類区分
購入記録情報が送信されているか送信ログ、受信結果通知、エラー対応履歴
税関確認情報を保存しているか税関確認済データ、保存先、取得日
90日以内に確認を受けたか譲渡日、税関確認日
460日以内に取得・保存したか取得履歴、保存履歴
免税不可取引を免税売上にしていないか免税不可データ、課税売上処理
課税売上から免税売上への振替が適正か振替仕訳、月次集計表、継続適用方針
返金処理が行われているか返金明細、送金データ、返金不能管理
返金不能分をどう処理したか返金規約、顧客案内、雑益処理資料
高額商品の特定情報が正確か商品マスター、保証書、鑑定書、シリアル番号
返品・取消が適正か取消ログ、再送信履歴、承認記録
委託先管理承認送受信事業者、返金代行契約、役割分担

税務調査対応の品質は、申告書そのものではなく、取引が発生した時点のデータ設計で決まります。後から「おそらく確認済みだった」と説明しても、税関確認情報を保存していなければ、免税要件を満たすことはできません。

現場で起きやすい判断ミス

リファンド方式では、次のような誤りが起きやすくなります。

誤り問題点
令和8年11月1日以後も税抜価格で販売してしまうリファンド方式に対応していない販売となる
購入記録情報を送信しただけで免税売上にする税関確認情報の保存が必要
受信結果通知を確認していない購入記録情報が受け付けられていない可能性
1商品だけ不足しても他商品は返金できると説明する購入記録情報単位で免税不可になる可能性
消耗品の特殊包装廃止を国内使用可能と誤解する国内消費した場合、税関確認・返金を受けられない
返金手数料負担を決めていない顧客トラブル、粗利低下、返金未了につながる
税関確認済でも返金未了なら免税不可と誤解する税関確認情報保存があれば免税適用は可能だが、返金債務は残る
税関確認結果登録後に購入記録情報を取消せると考える登録後の取消データ送信はできない
販売期と確認期が異なる取引を毎期バラバラに処理する継続性がなく、申告説明が困難になる
返金未了残高を管理しない未払金・雑益・顧客対応が不明確になる

制度対応の難しさは、個々の要件そのものよりも、販売現場、システム、会計、返金、証憑保存が分断されやすい点にあります。

施行前に行うべき準備

令和8年11月1日の施行に向けて、免税店を経営する事業者は、次の順序で準備を進めていくのが望ましいといえます。

時期準備事項
直ちに免税店許可、電子化対応状況、店舗一覧、委託関係を棚卸し
直ちに現行のPOS・免税販売システム・会計連携の現状を確認
令和8年夏まで返金方法を決定し、委託する場合は委託先候補を選定
令和8年夏まで返金手数料、返金期限、返金不能時の規約を検討
令和8年秋までリファンド方式対応のシステム改修・テストを完了
令和8年秋まで販売員向け研修、多言語説明資料、店内表示を準備
令和8年10月施行日前後の販売日、返品、予約、取置き、深夜営業の切替基準を確認
令和8年11月以後月次で購入記録情報、税関確認情報、返金、振替処理を照合
決算前課税売上・免税売上・返金未了額・雑益処理を総点検

とりわけ、令和8年10月31日までに電子化対応が済んでいない免税店は、免税店許可の効力を失うおそれがあります。免税販売を継続する予定の店舗は、許可、電子化、システム、返金という各論点を、早い段階で点検しておくべきです。

本記事で扱わない論点

本記事は、輸出物品販売場制度のリファンド方式を中心に扱っています。次の論点は関連はするものの、判断の構造が異なるため、別途の確認が必要です。

論点本記事で扱わない理由
一般の物品輸出免税輸出許可書等に基づく輸出免税であり、免税店制度とは別
直送取引の輸出免税リファンド方式ではなく消費税法第7条の輸出免税として整理する場面がある
越境ECの少額輸入貨物物品ECの第二種プラットフォーム課税として別論点
デジタルサービスのプラットフォーム課税電気通信利用役務の提供に関する制度
外国公館免税制度観光客向け免税店制度とは別制度であり、リファンド方式への移行はない
関税・酒税・たばこ税消費税以外の税目であり、商品ごとに個別確認が必要
資金決済法・犯収法・外為法の詳細返金方法により関係するが、所管法令が異なる
消費者保護・多言語表示税務とは別に、販売規約・表示・苦情対応として法務確認が必要

なお、外国公館免税制度については、リファンド方式への移行はなく、引き続き税抜価格で販売できるとされています。一方で、外交または公用の在留資格を有する非居住者に、免税店制度として免税対象物品を販売する場合には、リファンド方式への対応が必要です。また、輸出酒類販売場制度も、令和8年11月1日からリファンド方式へ移行するとされています。出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)

主な出典・確認先

出典:国税庁|輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し
出典:国税庁|輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します
出典:国税庁|リファンド方式(税関確認結果)のFAQ
出典:観光庁|免税店向け よくある質問(リファンド方式)
出典:観光庁|新制度(リファンド方式)特設ページ
出典:観光庁|旅行者向け よくある質問(リファンド方式)
出典:観光庁|免税店相談窓口

リファンド方式は、免税店の業務設計そのものを変える

輸出物品販売場のリファンド方式は、税務部門だけで完結する制度ではありません。

販売時に税込で売る。購入記録情報を送る。税関確認情報を取得する。返金する。課税売上から免税売上へ振り替える。返金未了を管理する。そして税務調査では、購入記録情報、税関確認情報、返金データ、会計処理を一連のものとして説明する。

この全体がひとつながりになって、はじめてリファンド方式に対応した免税店運営が成り立ちます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、消費税を申告書作成だけの問題としてではなく、契約、販売、証憑、会計、資金繰り、内部統制、税務調査対応までを含む、経営管理の問題として整理しています。

免税販売を継続する予定がある、承認送受信事業者や返金代行業者との契約を見直したい、POS・会計処理・返金未了管理の設計に不安がある、令和8年11月1日の施行前に自社の対応状況を点検したい。こうした場合には、現在の店舗一覧、免税販売データ、委託契約、会計処理方針、システム連携図を整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所のお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

重要事項実務上のポイント
開始時期リファンド方式は令和8年11月1日から開始
併用期間現行制度との併用期間はない
店頭販売免税対象物品も税込価格で販売する
免税成立購入者が購入日から90日以内の出国時に税関確認を受け、免税店が税関確認情報を保存することで免税要件を満たす
返金税関確認後に購入者へ消費税相当額を返金する
購入記録情報送信だけでなく、受信結果通知の確認が必要
税関確認情報460日以内に取得・保存しなければ免税要件を満たさない
税関確認結果税関確認済又は免税不可として提供される
取消制限税関確認結果登録後は購入記録情報の取消データを送信できない
会計処理販売時は課税売上、その後に免税売上へ振替
期ずれ販売期と税関確認情報保存期が異なる場合、確認保存期で調整する方法も認められるが継続処理が必要
一般物品・消耗品区分、消耗品50万円上限、特殊包装は廃止
消耗品の国内使用包装廃止後も国内で消費すると税関確認・返金を受けられない
高額商品税抜単価100万円以上は商品情報詳細の設定が必要
別送購入者が自ら郵便等で海外発送する別送は令和7年3月31日で廃止済み
直送販売場で運送契約を締結し運送事業者へ引き渡す取引は、輸出免税として整理する場合がある
返金方法消費税法令上は限定されず、銀行振込、カード送金、アプリ送金、現金返金等が考えられる
返金委託資金決済法、犯収法、外為法等の確認が必要になる場合がある
返金不能税関確認情報を保存していれば免税適用は可能だが、返金未了残高と雑益処理の管理が必要
店舗許可電子化未対応の免税店は令和8年10月31日で許可効力を失う可能性がある
購入者説明90日以内、税関確認、商品提示、消耗品の国内使用不可、返金方法を多言語で説明する
月次管理販売、購入記録情報、税関確認情報、返金、会計振替を月次で照合する
税務調査購入記録情報、税関確認情報、返金ログ、振替仕訳、例外処理記録を一連で説明できる状態が必要
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