不動産を売った。相続した土地を処分した。証券口座で株式や投資信託を売却した。非上場株式を親族や会社に譲渡した。保険を解約した。海外口座や国外資産を動かした。
こうした資産取引があった年の確定申告では、「利益が出たか」「税金がかかるか」という二点だけを確認すれば足りる、というわけではありません。
資産売却の税務判断で最初に整理すべきことは、いくつかあります。その資産がどの種類の所得に該当するのか。総合課税なのか、分離課税なのか。取得費や譲渡費用をどこまで説明できるのか。所有期間や特例の前提を満たしているのか。そして、損失を他の所得や翌年以降にどう扱えるのか。
さらに、相続・贈与で取得した資産、親族間や法人との低額取引、非上場株式、国外資産、海外口座、非居住者が関係する売却では、表面的な売買金額だけでは判断できない論点が出てきます。
第5テーマ「資産売却・譲渡所得・金融所得」では、不動産、金融資産、非上場株式、生活用動産、保険、会員権、国外資産などの売却・解約・移転を扱います。単発の申告処理としてではなく、資産の取得・保有・売却・承継までを見据えた税務判断として整理していきます。
このテーマで理解できること
このテーマの中心にあるのは、資産取引を「どの所得として、どの課税方式で、どの資料に基づいて申告するか」という判断です。
同じ「売却益」であっても、不動産の譲渡、上場株式等の譲渡、非上場株式の譲渡、金地金や会員権の譲渡、保険の解約、国外資産の売却では、所得区分、課税方式、申告要否、損失の扱い、必要資料がそれぞれ異なります。
譲渡所得は、譲渡した資産の種類により、土地・建物等の分離課税、株式等に係る分離課税、その他資産の総合課税などに区分して課税されます。つまり資産売却では、まず「何を売ったのか」によって、課税方式の入口そのものが変わることになります。
出典:国税庁|No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
土地や建物を売却した場合には、所有期間による長期譲渡所得・短期譲渡所得の区分が問題になります。この長期・短期の判定は、単純に売却日までの年数を数えるのではありません。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで判定します。
出典:国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
資産売却では、売却代金だけでなく、取得費と譲渡費用の整理も欠かせません。譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費には、購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費などが含まれます。
出典:国税庁|No.3252 取得費となるもの
なお、このテーマトップ記事は、個別の計算や特例要件を詳しく説明するページではありません。読者の方がご自身の資産取引を大きく分類し、次に読むべき詳細コラムを選べるようにするための、いわば論点地図です。
資産売却の判断は、売却益の有無だけでは決まらない
資産を売却したとき、多くの方が最初に気にされるのは「利益が出たかどうか」です。もちろん、利益の有無は重要な要素です。ただ、税務判断ではそれだけでは足りません。
たとえば不動産を売却した場合、取得費が分からないために、思った以上に譲渡所得が大きくなることがあります。相続で取得した不動産であれば、被相続人の取得費や取得時期を引き継ぐかどうかが問題になります。自宅や空き家の売却では、特例を使える可能性がある一方で、居住実態、所有関係、期限、添付資料の確認が必要です。
株式や投資信託であれば、特定口座の源泉徴収あり・なし、一般口座、NISA、損益通算、繰越控除、配当所得との関係を整理していきます。源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡による所得については、口座ごとに申告するか申告不要とするかを選択できます。
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度
株式等の譲渡所得等については、上場株式等と一般株式等が区分され、それぞれ別々の申告分離課税とされます。上場株式等の譲渡損失を一般株式等の譲渡所得等から控除することはできません。一般株式等の譲渡損失についても、原則として上場株式等の譲渡所得等から控除することはできない扱いです。
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
このように資産売却の税務では、利益があるかどうかを見る前に、資産の種類、取得経緯、保有期間、口座区分、取引相手、特例、損失、国外要素を順番に確認していく必要があります。
第5テーマを読む前に押さえておきたい視点
第5テーマの各詳細コラムを読み進める前に、次の視点を持っておかれると理解がしやすくなります。
第一に、資産売却は「入金額」だけで判断しないことです。売却代金が入金されても、その全額が所得になるわけではありません。逆に、取得費資料が不足している場合には、税務上認められる取得費が想定より少なくなることもあります。
第二に、資産の名称ではなく、税務上の区分を確認することです。「投資」「資産運用」「解約」「精算」「譲渡」「買戻し」といった名称だけでは、譲渡所得、一時所得、雑所得、配当所得などの区分は決まりません。
第三に、特例は有利ではあるものの、自由に選べる制度ではないということです。居住用財産の3,000万円特別控除や空き家特例などは、要件と添付資料がそろって初めて検討できるものです。マイホームを売ったときには、一定の要件のもとで最高3,000万円まで控除できる特例が設けられています。
出典:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
第四に、資産売却は相続・贈与・共有・法人化・国外移住などと接続しやすい領域だということです。相続で取得した資産を売る場合には、相続税申告の資料、遺産分割、共有持分、取得費加算、登記、売却代金の帰属まで確認する必要があります。相続または贈与により取得した土地建物を売却した場合、取得費は被相続人や贈与者の購入代金等を基に計算し、取得時期も原則として引き継ぎます。
出典:国税庁|No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
第五に、申告するかしないかの選択が、翌年以降や住民税・国民健康保険料などに影響することがある点です。上場株式等の譲渡損失や配当等の申告選択は、所得税だけを見て決めるものではありません。翌年以降の繰越や周辺の負担まで含めて判断する必要があります。
このテーマの推奨読書順
第5テーマは、まず「5-1. 譲渡所得の全体像」からお読みいただくことをおすすめします。ここで資産売却の基本構造を確認したうえで、不動産を売った方は5-2から5-6へ、証券口座や金融商品が関係する方は5-7から5-10へ進むと、理解がつながりやすくなります。
不動産売却であれば、5-2で申告要否と分離課税を確認し、5-3で取得費・譲渡費用を整理し、5-4で居住用財産や空き家などの特例を確認します。相続した不動産を売却した方は5-5へ、親族間・法人間の売買や時価が問題になる方は5-6へ進んでください。
金融資産については、5-7で口座区分と申告要否を確認し、5-8で譲渡損失・配当等との通算・繰越控除を整理します。非上場株式や自己株式取得といった特殊な株式取引は5-9、投資信託・公社債・配当所得の申告選択は5-10で扱います。
不動産・株式以外の資産、たとえば生活用動産、貴金属、会員権、保険解約などは5-11で整理します。海外不動産、国外株式、海外口座、非居住者、外貨換算、外国税額控除、国外財産調書が関係する場合は、5-12へお進みください。
5-1. 譲渡所得の全体像
資産を売却したものの、どのように申告すべきか分からない。そうした方は、まずこのコラムからご確認ください。
この詳細コラムでは、譲渡所得とは何か、総合課税と分離課税の違い、不動産・株式・その他資産で課税方式が異なる理由、そして取得費・譲渡費用・所有期間・特例がなぜ重要になるのかを整理します。
資産売却の申告は、売却額から単純に税金を計算する作業ではありません。どの資産を、いつ取得し、どのように保有し、どのような相手に、どのような条件で譲渡したのか。それを一つずつ確認していく判断領域です。
第5テーマ全体の入口として、最初に読んでいただきたい記事です。
5-2. 不動産を売却したときの申告要否と分離課税
土地や建物を売却した方、自宅・賃貸物件・空き家・相続不動産を処分した方は、このコラムで不動産譲渡の入口を確認してください。
不動産譲渡で問題になるのは、利益が出ているか、所有期間が長期か短期か、特例を使う可能性があるか、損失の扱いがあるか、そして確定申告書にどの資料を添付すべきか、といった点です。
このコラムでは、不動産の売却が給与や事業所得とは別に分離課税で扱われること、長期・短期の区分が税率や判断に影響すること、申告要否を早い段階で確認すべき理由を整理します。
不動産取引は金額が大きく、税務署や金融機関から説明を求められることもあります。売買契約書や取得資料を含めて確認していく、その出発点となる記事です。
5-3. 譲渡収入・取得費・譲渡費用の整理
不動産を売ったものの、取得費や譲渡費用に何を入れてよいか分からない。そうした方は、このコラムで計算の土台を整理してください。
売却代金が分かっていても、取得費が分からなければ譲渡所得は適切に計算できません。購入時の売買契約書、建築請負契約書、仲介手数料、登記費用、改良費、過去のリフォーム資料、相続時の資料などが必要になることもあります。
このコラムで扱うのは、譲渡収入、取得費、概算取得費、譲渡費用、そして相続取得時の資料確認です。詳細な金額計算よりも、まずは「何を根拠資料として集めるべきか」を確認していただく記事とお考えください。
資料が不足したまま申告すると、税額が大きく変わるだけでなく、後日の説明にも不安が残ります。
5-4. 居住用財産・空き家・買換え等の譲渡特例の考え方
自宅や実家、空き家を売却した方、あるいは売却前に特例を使えるか確認したい方は、このコラムにお進みください。
居住用財産の特例や空き家特例は、適用できれば税額に大きな影響を与えます。しかし、「自宅だから当然使える」「空き家だから使える」といった性質の制度ではありません。
居住実態、所有者、売却時期、建物の状態、相続関係、他特例との併用、添付資料。これらを一つずつ確認する必要があります。被相続人の居住用財産を売ったときの特例についても、登記事項証明書や市区町村長が交付する確認書など、一定の提出書類が求められます。
出典:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
このコラムでは、特例の有利不利を結論から決めるのではなく、まず何を確認すべきかを整理します。
5-5. 相続で取得した不動産を売却した場合の所得税判断
相続した不動産を売却した方、遺産分割後に共有不動産を処分した方、相続税申告と譲渡所得の関係が分からない方は、このコラムをご確認ください。
相続した不動産の売却では、誰が売ったのか、いつ取得したものとして扱うのか、取得費をどの資料から確認するのか、相続税の取得費加算を検討できるか、共有者ごとの申告が必要か、といった論点が出てきます。
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などを一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる制度があります。
出典:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続不動産の売却は、所得税だけでなく、相続税申告、遺産分割、登記、共有関係、売却代金の分配までつながります。単年の確定申告だけで完結しない論点です。
5-6. 親族間・法人間の低額譲渡と時価の税務リスク
家族に不動産や株式を売る。同族会社に資産を移す。個人から法人へ資産を売却する。法人から個人へ資産を移す。こうした取引を検討している方は、このコラムをお読みください。
親族間や法人間の売買では、当事者同士で合意した価格であっても、税務上その価格がそのまま認められるとは限りません。時価より著しく低い価額で譲渡した場合には、譲渡所得、みなし譲渡、みなし贈与、法人税、役員給与、寄附金、同族株主への影響などが問題になることがあります。
このコラムでは、安易な節税目的の価格設定ではなく、時価と説明可能性を中心に整理します。取引の相手が親族や同族会社である場合、契約書があるだけでは不十分です。価格の根拠、資金決済、登記、取引目的まで説明できる状態にしておく必要があります。
5-7. 上場株式等を売却した場合の口座区分と申告要否
証券口座で上場株式、ETF、REIT、投資信託などを売却した方は、このコラムで口座区分から確認してください。
上場株式等の売却では、特定口座の源泉徴収あり、特定口座の源泉徴収なし、一般口座、NISAなど、どの口座で取引したかによって申告要否や資料整理が変わってきます。
とりわけ源泉徴収ありの特定口座は、申告不要を選べる場合があります。ただし、損失を通算したい場合や繰越控除を使いたい場合には、あえて申告するという判断が必要になることもあります。
このコラムで整理するのは、金融商品の投資判断ではありません。証券口座の区分と確定申告の関係です。
5-8. 上場株式等の譲渡損失・配当等との損益通算・繰越控除
株式や投資信託で損失が出た方、損失を申告すべきか迷っている方は、このコラムをご確認ください。
上場株式等の譲渡損失は、一定の要件のもとで、上場株式等に係る配当所得等との損益通算や翌年以降の繰越控除を検討できる場合があります。ただし、申告をしないと使えない制度や、継続して申告が必要になる制度もあります。
株式の売却をした方については、申告書提出が必要となる主な例が示されています。一般口座などで株式等を譲渡して所得を得た方、特定口座の譲渡損失を他の上場株式等の譲渡益から差し引く方、上場株式等の譲渡損失を配当所得等から差し引く方、繰越控除を行う方などが、これにあたります。
出典:国税庁|株式の売却をした方や配当等を受け取った方へ
このコラムでは、損失を「税金を減らす材料」として見るだけでなく、申告選択が翌年以降や住民税・国民健康保険料などに与える影響も含めて整理します。
5-9. 非上場株式・個人間売買・自己株式取得の所得税判断
非上場会社の株式を売買する方、同族会社の株式を親族間で移転する方、会社による自己株式取得を検討している方は、このコラムにお進みください。
非上場株式には、上場株式のような明確な市場価格がありません。そのため、時価、同族株主、支配関係、みなし配当、譲渡所得、贈与税、法人税への波及を整理していく必要があります。
個人間売買、法人への譲渡、自己株式取得では、同じ株式の移動であっても所得区分や課税関係が変わることがあります。とりわけ後継者への株式移転、役員退任、事業承継、少数株主の整理といった場面では、所得税だけでなく相続税・贈与税・法人税の観点も欠かせません。
このコラムでは、非上場株式の評価そのものを詳細に計算するのではなく、所得税判断としてどこを確認すべきかを整理します。
5-10. 投資信託・公社債・配当所得の申告選択
投資信託の分配金、上場株式の配当、公社債の利子・譲渡・償還、特定口座内の配当等。これらについて申告するべきか迷っている方は、このコラムをご確認ください。
金融所得では、申告不要、総合課税、申告分離課税などの選択が問題になることがあります。その選択によって、所得税だけでなく、配当控除、外国税額控除、損益通算、住民税、国民健康保険料などへの影響が変わる場合もあります。
このコラムで整理するのは、金融商品の利回りや銘柄選定ではなく、申告選択による税務上の影響です。税額が少し有利になるかどうかだけではなく、他の所得や社会保険料等への波及を含めて判断することが大切になります。
なお、NISAなど金融所得に関する制度は、税制改正の影響を受けることがあります。令和8年度税制改正に伴う株式等を譲渡した場合の特例等の改正についても、NISAに関する改正を含むあらましが公表されています。
出典:国税庁|個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度税制改正のあらまし
5-11. 生活用動産・保険・会員権等の資産取引
身の回りの資産を売った方、貴金属や美術品を売却した方、ゴルフ会員権を処分した方、保険を解約した方は、このコラムで所得区分を確認してください。
生活用動産のなかには、原則として譲渡所得が非課税となるものがあります。ただし、貴金属、宝石、書画、骨とうなどで一定額を超えるものは除かれることがあります。家具、じゅう器、通勤用自動車、衣服など、生活に通常必要な動産の譲渡による所得は課税されません。一方で、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は、その対象から除かれます。
出典:国税庁|No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
保険の満期金や解約返戻金については、契約者、保険料負担者、受取人、受取方法により、一時所得や雑所得などの整理が必要になることがあります。保険料負担者と保険金受取人が同一人の場合の満期保険金等は、受取方法により一時所得または雑所得として課税されます。
出典:国税庁|No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
このコラムでは、「小さな取引だから申告不要」と早合点せず、資産の性質と所得区分から判断していきます。
5-12. 国外資産・海外口座・非居住者に関わる資産売却
海外不動産、国外株式、海外証券口座、海外銀行口座、海外赴任、移住、非居住者による日本資産の売却。これらが関係する方は、このコラムへお進みください。
国外資産の売却では、まず居住者、非永住者、非居住者の区分を確認します。日本の居住者であれば、国外資産の売却益も日本で課税対象になる可能性があります。一方、非居住者であっても、日本国内不動産など国内源泉所得に該当するものは、日本で課税対象になる場合があります。
このコラムでは、国外不動産、国外株式、非居住者、居住者区分、外貨換算、外国税額控除、国外財産調書、国外転出時課税などを扱います。
国外財産調書については、その年の12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する一定の居住者は、提出しなければならないとされています。
出典:国税庁|国外財産調書及び財産債務調書の提出
また国外転出時課税制度については、国外転出時に1億円以上の有価証券等を所有等している場合に、所得税の確定申告等の手続が必要となります。
出典:国税庁|国外転出時課税制度
国外資産の税務判断では、海外で課税されたかどうかだけを見るわけにはいきません。日本での申告義務、外国税額控除、為替換算、調書制度、租税条約、出国前後の手続まで含めて整理する必要があります。
不動産売却と金融所得は、同じ「資産売却」でも見ているものが違う
第5テーマでは不動産売却と金融所得を同じテーマ内で扱いますが、両者は税務判断の性質が異なります。
不動産売却で重要になるのは、取得時資料、所有期間、譲渡費用、居住実態、相続関係、特例、共有、登記、売買契約書です。資料は過去にさかのぼることが多く、相続や贈与が絡むと、売却した本人だけでは分からない資料が必要になることもあります。
一方、金融所得で中心となるのは、証券口座の区分、年間取引報告書、配当明細、損益通算、繰越控除、申告不要制度、住民税・国民健康保険料への影響です。資料は金融機関から取得しやすいのですが、その反面、申告するかしないかの選択による影響を見落としやすい領域でもあります。
非上場株式や親族間取引には、さらに別の難しさがあります。市場価格がないため、時価の説明、同族関係、法人税・贈与税との接点、取引の実態が問題になります。
生活用動産、保険、会員権、国外資産については、そもそも譲渡所得なのか、一時所得なのか、雑所得なのか、非課税なのか。この所得区分の確認から始めることになります。
このテーマで扱わないこと
このテーマトップ記事では、各特例の詳細要件、税率の具体計算、申告書の記載例、個別商品の投資判断、国別の海外税制比較、非上場株式評価の詳細計算までは扱いません。
これらは、各詳細コラムまたは個別相談で整理すべき領域です。
とりわけ、居住用財産の特例、空き家特例、相続税の取得費加算、非上場株式の時価、国外資産、外国税額控除、国外転出時課税は、結論だけを急ぐと誤りやすい論点です。制度名だけで判断せず、契約書、登記、証券資料、過年度申告書、相続資料、資金移動、居住実態を確認したうえで検討していきましょう。
第5テーマと他テーマのつながり
資産売却は、第5テーマだけで完結するものではありません。
所得区分に迷う場合は、第2テーマ「所得区分と課税方式の判断」に戻る必要があります。とくに一時所得、雑所得、譲渡所得の境界は、保険、解約金、会員権、臨時収入といった場面で重要になります。
不動産を保有・賃貸していた場合は、第4テーマ「不動産収入・不動産活用の税務判断」と接続します。賃貸していた不動産を売却するのであれば、減価償却、修繕、資本的支出、不動産所得の過年度申告が譲渡所得にも影響します。
証券口座の損失や不動産譲渡損失をどう扱うかは、第9テーマ「損益通算・損失・納税資金」と接続します。損失が出たからといって、常に他の所得と相殺できるわけではありません。
相続・贈与で取得した資産、低額譲渡、親族間取引、国外資産は、第10テーマ「所得税と周辺税目・資産保有」と強く関係します。所得税だけでなく、相続税、贈与税、法人税、住民税、固定資産税などの影響も確認していきます。
資料保存や説明可能性は、第7テーマ「青色申告・帳簿・資料保存・電子帳簿保存法」および第11テーマ「税務調査・修正申告・加算税・説明可能性」とつながります。資産売却では、売却年だけでなく、取得時からの資料が重要になるためです。
実際に専門家へ相談する前には、第12テーマ「相談前整理・専門家活用・継続的な税務判断」で、売買契約書、取得資料、証券資料、相続資料、通帳、過年度申告書などを整理しておかれると、判断の質が高まります。
資産売却の相談前に、まず整理しておきたいこと
資産売却についてご相談いただく前には、結論を急ぐよりも、まず事実関係を整理しておくことが重要です。
不動産であれば、次のような資料を確認します。
- 売買契約書、購入時資料
- 登記事項証明書、固定資産税通知書
- リフォーム資料、仲介手数料、譲渡費用
- 相続関係資料、共有者の有無
株式や投資信託であれば、年間取引報告書、取引明細、配当明細、口座区分、NISAの有無、過年度の損失繰越の有無を確認します。
非上場株式であれば、株主構成、取引相手、売買価格の根拠、会社の決算書、自己株式取得の有無、同族関係を整理します。
相続・贈与で取得した資産であれば、被相続人や贈与者の取得資料、相続税申告書、遺産分割協議書、贈与契約書、登記資料を確認します。
国外資産であれば、居住者区分、海外口座資料、外貨建取引明細、現地申告書、外国税額控除の資料、国外財産調書の提出要否を整理します。
これらの資料がそろっていない段階で、「申告不要」「特例が使える」「損失を通算できる」と判断してしまうのは危険です。資産売却の税務は、見せたい結論に数字を合わせるものではありません。資料と事実から説明できる結論を組み立てていく作業です。
第5テーマの読み進め方
資産売却の内容がまだ漠然としている方は、まず5-1で全体像を確認してください。
不動産を売却した方は、5-2、5-3、5-4を順に読むと、申告要否、計算の土台、特例の考え方が整理できます。相続不動産であれば5-5、親族間や法人との取引であれば5-6へ進みます。
証券口座で株式や投資信託を売却した方は、5-7で口座区分を確認し、損失や配当との通算がある場合は5-8をお読みください。配当や分配金の申告選択が気になる方は、5-10へ進みます。
非上場株式、自己株式取得、事業承継に関係する株式移転は、5-9を優先してください。
不動産や株式以外の資産取引、保険、会員権、貴金属、生活用動産は、5-11で整理します。
海外資産、海外口座、非居住者、海外赴任、国外転出が絡む場合は、5-12を早めに確認されることをおすすめします。
資産売却の税務判断で迷う方へ
資産売却の確定申告は、売却した年だけの手続ではありません。取得時の資料、過年度の利用状況、相続・贈与の経緯、資産の保有目的、口座区分、契約内容、時価、国外要素。これらが、現在の申告判断に影響してきます。
とりわけ、不動産売却、相続不動産、非上場株式、親族間・法人間取引、国外資産、海外口座、保険や会員権の整理は、自己判断だけでは見落としが起こりやすい領域です。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、資産売却について、単に申告書を作成するだけにとどまりません。取得費資料、譲渡費用、特例適用、損失の扱い、時価、相続・贈与との接点、翌年以降への影響まで含めて整理します。
売却済みの資産について申告が必要か不安な方、これから売却する資産について事前に税務上の影響を確認したい方、相続・法人・国外要素が絡み判断に迷う方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。資料と事実に基づき、税務署・金融機関・将来のご自身に説明できる形で、資産取引の税務判断を整理いたします。
振り返り
| 確認したいこと | 読むべき詳細コラム | 判断の入口 |
|---|---|---|
| 資産売却全体の考え方を知りたい | 5-1 譲渡所得の全体像 | 資産の種類、課税方式、取得費、譲渡費用、特例を俯瞰する |
| 土地や建物を売却した | 5-2 不動産を売却したときの申告要否と分離課税 | 申告要否、長期・短期、分離課税、添付資料を確認する |
| 取得費や譲渡費用が分からない | 5-3 譲渡収入・取得費・譲渡費用の整理 | 購入時資料、改良費、売却費用、概算取得費を整理する |
| 自宅や空き家の特例を確認したい | 5-4 居住用財産・空き家・買換え等の譲渡特例 | 居住実態、所有関係、期限、添付資料を確認する |
| 相続した不動産を売却した | 5-5 相続で取得した不動産を売却した場合の所得税判断 | 取得費、取得時期、相続税との関係、共有を整理する |
| 親族や会社との売買を検討している | 5-6 親族間・法人間の低額譲渡と時価の税務リスク | 時価、みなし譲渡、みなし贈与、法人税への波及を確認する |
| 証券口座で株式を売った | 5-7 上場株式等を売却した場合の口座区分と申告要否 | 特定口座、一般口座、NISA、申告不要を確認する |
| 株式や投信で損失が出た | 5-8 上場株式等の譲渡損失・配当等との損益通算・繰越控除 | 損益通算、繰越控除、申告継続を確認する |
| 非上場株式を売買する | 5-9 非上場株式・個人間売買・自己株式取得の所得税判断 | 時価、同族関係、みなし配当、事業承継との接点を確認する |
| 配当や投資信託の申告選択に迷う | 5-10 投資信託・公社債・配当所得の申告選択 | 申告不要、総合課税、申告分離、周辺負担を確認する |
| 生活用動産・保険・会員権を処分した | 5-11 生活用動産・保険・会員権等の資産取引 | 非課税、一時所得、雑所得、譲渡所得の区分を確認する |
| 海外資産・海外口座・非居住者が関係する | 5-12 国外資産・海外口座・非居住者に関わる資産売却 | 居住者区分、外貨換算、外国税額控除、調書制度を確認する |