投資信託・公社債・配当所得の申告選択|申告不要・総合課税・申告分離の判断軸

投資信託の分配金や上場株式の配当、公社債の利子を受け取ったとき、「証券会社で源泉徴収されているのだから、こちらで何かする必要はない」と考えている方は少なくありません。

確かに、金融所得の多くは支払いの時点で源泉徴収されており、一定の場合には確定申告をせずに済ませることもできます。特定口座の源泉徴収あり口座で取引していれば、証券会社側で税額の計算まで行われているため、申告書を作らなくても課税関係がそのまま完結する場面があるのは事実です。

ただ、ここで判断を誤りやすいのが、「申告しなくてよい」「申告した方がよい」「申告するとかえって不利になる」という三つを区別せずに、ひとまとめに考えてしまうことです。

配当や分配金を申告すれば、配当控除を受けられる場合があります。上場株式等の譲渡損失を抱えているなら、申告分離課税を選んだ配当等と損益通算できることもあります。その一方で、申告したことで合計所得金額や総所得金額等に算入され、扶養控除や配偶者控除、住民税の非課税判定、さらには国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料にまで影響が及ぶこともあるのです。

この記事では、投資信託・公社債・配当所得について、申告不要・総合課税・申告分離課税の選択をどう整理していけばよいのかを解説します。金融商品としての有利不利や投資判断ではなく、あくまで確定申告上の判断軸に絞ってお話しします。

目次

まず確認すべきは「何の収入か」

金融所得の申告選択では、最初に所得の種類を切り分けることが欠かせません。名称は似ていても、税務上の扱いはそれぞれ異なるからです。

受け取ったもの主な所得区分典型例
上場株式の配当配当所得上場会社からの配当金
公募株式投資信託の普通分配金配当所得株式投資信託の収益分配金
J-REIT・投資法人の分配金配当所得に含まれるが配当控除は原則注意不動産投資法人の分配金
公社債の利子利子所得国債、地方債、社債の利子
公社債投資信託の収益分配金利子所得公社債投信の分配金
特別分配金・元本払戻金非課税部分投資信託の元本払戻しに相当する分配
投資信託の売却益・解約益株式等に係る譲渡所得等投資信託を売却・解約した利益
NISA口座内の配当・分配金・売却益原則非課税NISA口座で保有する上場株式等・投資信託

利子所得とは、預貯金や公社債の利子、公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託の収益分配から生じる所得を指します。利子等の収入金額が、そのまま利子所得の金額になるという整理です。
出典:国税庁|No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)

配当所得は、配当等が支払われる際に源泉徴収されます。上場株式等の配当等であれば、原則として所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%が源泉徴収されます。これに対して、上場株式等以外の配当等や、大口株主等が受ける上場株式等の配当等は、所得税および復興特別所得税20.42%の源泉徴収となります。同じ「配当」という言葉でも、扱いが分かれる点にご注意ください。
出典:国税庁|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

投資信託の分配金は「普通分配金」と「特別分配金」を分ける

投資信託の分配金については、まず普通分配金と特別分配金を切り分けて考えます。

普通分配金は、収益の分配として課税の対象になります。公募株式投資信託の普通分配金であれば、原則として配当所得として扱われます。

一方の特別分配金、すなわち元本払戻金に相当する部分は、投資元本の一部が戻ってきたものとみなされ、非課税とされています。ただし、税金がかからないから重要ではない、というわけではありません。特別分配金があると取得価額の管理に影響するため、将来その投資信託を売却したときの譲渡損益計算にも関わってくるのです。

国税庁の令和8年版「源泉徴収のあらまし」でも、投資信託の収益分配については、毎決算期ごとに支払われる分配金と、信託契約の終了・一部解約によって支払われる分配金があるとされています。そのうえで、オープン型証券投資信託の分配金のうち元本払戻しに相当する特別分配金は非課税であり、収益の分配には含まれないと整理されています。
出典:国税庁|令和8年版 源泉徴収のあらまし 第8 配当所得の源泉徴収事務

そこで、投資信託の分配金を確認するときは、次のような資料に目を通します。

資料確認する内容
特定口座年間取引報告書配当等の額、譲渡損益、源泉徴収税額
支払通知書分配金の種類、源泉徴収税額
取引報告書売却・解約・償還の有無
分配金通知書普通分配金と特別分配金の区分
NISA口座の報告書非課税口座内の取引かどうか
外国税額の記載資料外国税額控除や分配時調整外国税相当額控除の確認

「分配金が入金された」という事実だけでは、判断はできません。それが普通分配金なのか、元本払戻金なのか、特定口座で受け入れているのか、NISA口座なのか、外国税額があるのか。こうした点を確認したうえで、申告の判断に進みます。

申告選択は大きく3つに分かれる

上場株式等の配当等や公募株式投資信託の分配金については、一定の要件のもとで、主に次の3つの選択肢があります。

選択肢内容主な効果
確定申告不要源泉徴収だけで終わらせる合計所得金額に含めない扱いとなる一方、配当控除や源泉徴収税額の精算はできない
総合課税他の所得と合算して累進税率で申告配当控除を受けられる場合があるが、所得金額が増える
申告分離課税他の所得と分けて20.315%で申告配当控除は使えないが、上場株式等の譲渡損失との損益通算ができる場合がある

国税庁は、上場株式等の配当等について、総合課税に代えて申告分離課税を選択できること、その税率が20.315%であること、申告分離課税を選んだ場合には配当控除の適用がないこと、そして上場株式等の譲渡損失があるときは一定要件のもとで申告分離課税を選択した配当所得等から控除できることを示しています。
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

ここで押さえておきたいのは、3つの選択肢を、税額だけを見て選んではいけないということです。所得税がいくらか還付されても、住民税や国民健康保険料、扶養判定などの面で不利になってしまうことがあります。

確定申告不要を選ぶ場合

確定申告不要制度は、源泉徴収だけで課税関係を終わらせる方法です。

上場株式等の配当等については、大口株主等が受けるものを除き、金額にかかわらず確定申告を要しない扱いがあります。また、源泉徴収選択口座内の配当等であれば、口座ごとに申告するか申告不要にするかを選ぶことになります。

確定申告不要を選ぶと内容
所得税の申告原則として申告書に含めない
源泉徴収税額精算しないため、控除・還付を受けない
配当控除受けられない
譲渡損失との損益通算原則できない。ただし源泉徴収口座内で自動通算される場合あり
合計所得金額申告不要を選んだものは含まれない
住民税・国保等所得に含めないことで影響を抑えられる場合がある

国税庁は、確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額について、その年分の所得税額から差し引くことはできないとしています。また、源泉徴収選択口座内の配当等は、口座ごとに申告不要を選択する扱いとされています。
出典:国税庁|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

確定申告不要が向いている可能性があるのは、たとえば次のような場合です。

状況判断の方向性
配当等を申告すると扶養判定に影響しそう申告不要を慎重に検討
国民健康保険料・介護保険料への影響が大きい申告不要による影響抑制を検討
譲渡損失がない損益通算目的で申告する必要性は低い
配当控除の効果より所得増加の影響が大きい申告不要が有利な場合あり
特定口座源泉徴収ありで完結している申告不要で処理できる場合あり

もっとも、確定申告不要を選ぶと、すでに源泉徴収された所得税等を精算できません。課税所得が低く、総合課税で申告すれば還付が見込めるようなケースでは、申告不要が必ずしも有利とは限らない点に注意が必要です。

総合課税を選ぶ場合

総合課税は、配当所得を給与所得や事業所得、不動産所得、雑所得といった他の所得と合算し、所得税の累進税率で計算する方法です。

この方法を選ぶ最大の理由は、配当控除を受けられる場合があることにあります。国内法人から受ける一定の配当や、一定の証券投資信託の収益分配について、確定申告で総合課税を選択すれば、配当控除によって所得税額が下がる可能性があります。

総合課税を選ぶと内容
税率他の所得と合算して累進税率
配当控除一定の配当所得で適用可能
譲渡損失との損益通算上場株式等の譲渡損失とは通算できない
合計所得金額含まれる
扶養・配偶者控除判定に影響する可能性あり
国民健康保険料等算定に影響する可能性あり

国税庁は、総合課税の対象とした配当所得について、一定のものを除き配当控除の適用を受けられるとしています。そして、配当控除を受けるには確定申告が必要です。
出典:国税庁|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
出典:国税庁|No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

総合課税が有利に働きやすいのは、課税所得が低く、配当控除の効果が源泉徴収済み税額の精算に有利に作用する場合です。ただし、ここでも所得税だけで判断してはいけません。総合課税で申告した配当所得は合計所得金額等に含まれるため、次のような影響が生じ得ます。

影響先確認すべきこと
扶養控除扶養親族本人の合計所得金額に影響しないか
配偶者控除・配偶者特別控除配偶者本人の所得判定に影響しないか
住民税非課税判定非課税限度額を超えないか
国民健康保険料所得割の算定に影響しないか
介護保険料所得段階に影響しないか
後期高齢者医療保険料保険料や窓口負担判定に影響しないか
児童手当・各種給付所得制限や自己負担判定に影響しないか

総合課税は「配当控除があるから有利」と単純に割り切れるものではありません。給与所得、年金所得、不動産所得、事業所得、医療費控除、扶養関係、国保の加入状況まで含めて、全体を見渡す必要があります。

申告分離課税を選ぶ場合

申告分離課税は、上場株式等の配当等を他の所得と分け、所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%、合わせて20.315%で申告する方法です。

この方法を選ぶ主な理由は、上場株式等の譲渡損失との損益通算にあります。

申告分離課税を選ぶと内容
税率20.315%
配当控除受けられない
譲渡損失との損益通算一定の上場株式等の譲渡損失と通算可能
繰越損失との関係過去3年以内の繰越損失を使える場合あり
合計所得金額申告した所得は含まれる
住民税・国保等影響する場合あり

国税庁は、上場株式等に係る譲渡損失があるとき、一定要件のもとで、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等から控除できるとしています。あわせて、確定申告で選択した後は、修正申告や更正の請求によって選択を変更できないことも示しています。
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

たとえば、同じ年に上場株式や投資信託の売却損があり、あわせて配当や分配金がある場合には、申告分離課税を選んで損益通算することで、源泉徴収された税額の還付を受けられることがあります。

ただし、申告分離課税を選んだ配当所得については、配当控除を受けることはできません。また、申告した所得は合計所得金額等に含まれるため、住民税や社会保険料等への影響も確認しておく必要があります。

上場株式等の譲渡損失がある場合の考え方

上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡して生じた損失は、確定申告により、上場株式等の配当等に係る利子所得・配当所得と損益通算できる場合があります。損益通算しても控除しきれない損失は、一定要件のもとで、翌年以後3年間にわたって繰越控除できることもあります。

損失の状況確認すべき判断
同じ特定口座内で譲渡損失と配当等がある証券会社内で自動通算されているか
複数の証券会社にまたがって損益がある確定申告で全体通算するか
前年以前の繰越損失がある今年も連続して申告が必要か
NISA口座内で損失がある損益通算・繰越控除はできない
一般株式等の損失がある上場株式等との通算可否を確認
相対取引による損失がある損益通算・繰越控除の対象外となる場合あり

国税庁は、上場株式等の譲渡損失について、確定申告により上場株式等の配当等に係る利子所得・配当所得と損益通算できること、控除しきれない損失は翌年以後3年間繰越控除できること、そしてNISA口座内の損失は損益通算・繰越控除できないことを示しています。
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

なお、株式等の譲渡損失は、給与所得や不動産所得など他の所得の黒字から差し引けるわけではありません。上場株式等と一般株式等の区分を超えた通算についても、制限があります。
出典:国税庁|No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い

「損が出たのだから、確定申告すれば給与所得と相殺できる」という理解は誤りです。損失を使える範囲、翌年へ繰り越すための申告の継続、添付書類の有無を、一つずつ確認していく必要があります。

特定口座源泉徴収あり口座での自動通算

源泉徴収ありの特定口座では、証券会社がその口座内の譲渡損益を計算し、源泉徴収を行っています。さらに、一定の届出をして配当等を源泉徴収口座に受け入れている場合には、その口座内で上場株式等の譲渡損失と配当等が通算されることがあります。

国税庁は、源泉徴収口座に受け入れた上場株式等に係る利子等・配当等について、その源泉徴収口座内に上場株式等の譲渡損失があるときは、利子等・配当等の総額からその損失を控除した金額に対して源泉徴収税額を計算するとしています。
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度

ただし、次のような場合には、あらためて確定申告を検討します。

状況確定申告を検討する理由
複数の証券会社で損益がある口座をまたいだ通算は自動では行われない
前年以前の繰越損失がある繰越控除には連続申告が必要
源泉徴収口座内の譲渡損失を申告する同口座の配当等も併せて申告が必要
一般口座の取引がある自分で取得費・譲渡損益を計算する必要がある
外国証券口座で配当等を受け取った国内源泉徴収がなく、申告不要の前提を満たさない場合がある

源泉徴収口座内の配当等は、口座ごとに申告するか申告不要にするかを選びます。1回ごとの配当について、細かく選び分けるものではありません。
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度

公社債・公社債投資信託の利子等は総合課税を選べない

公社債や公社債投資信託のなかには、配当ではなく利子所得として整理されるものがあります。

利子所得は、原則として源泉分離課税により課税関係が完結し、確定申告はできません。ただし、平成28年1月1日以後に支払を受ける特定公社債等の利子等については、申告分離課税の対象となる一方で、確定申告をしないことも選べます。

種類申告選択
預貯金利子原則として源泉分離課税。確定申告不可
一般的な利子所得原則として源泉分離課税
特定公社債等の利子等申告不要または申告分離課税
公社債投資信託の収益分配利子所得として扱われるものがある
同族会社社債の一定の利子総合課税となる場合がある

国税庁は、特定公社債等の利子等について、申告分離課税の対象となる一方で、確定申告をしないことも選べるとしています。また、特定公社債等とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債などの一定の公社債や、公社債投資信託などを指すとされています。
出典:国税庁|No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)

公社債利子等で注意しておきたいのは、上場株式等の配当所得とは違い、申告する場合には申告分離課税の対象となり、総合課税を選べないという点です。国税庁の確定申告書作成コーナーの説明でも、上場株式等の配当等に係る利子所得は、申告する場合には申告分離課税の対象となり、総合課税は選択できないとされています。
出典:国税庁|配当所得の課税方法

したがって、公社債利子や公社債投信の分配金について、「総合課税で申告して配当控除を受ける」という判断はできません。上場株式等の譲渡損失との通算を検討するのであれば、申告分離課税として申告することになります。

配当控除を使えるもの・使えないもの

総合課税を選ぶうえで重要になるのが配当控除です。とはいえ、すべての配当や分配金について配当控除が使えるわけではありません。

収入の種類配当控除の考え方
国内上場会社の配当一定要件で配当控除の対象
公募株式投資信託の普通分配金一定要件で配当控除の対象。ただし控除率に注意
外国法人からの配当配当控除の対象外
J-REIT・投資法人の分配金配当控除の対象外となるものがある
申告分離課税を選んだ配当所得配当控除は適用不可
確定申告不要を選んだ配当配当控除は適用不可

国税庁は、配当控除を受けられる配当所得について、日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、証券投資信託の収益の分配などのうち、確定申告で総合課税の適用を受けた配当所得に限られるとしています。したがって、外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象になりません。
出典:国税庁|No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

また国税庁は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はないとしています。
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

配当控除を使うかどうかは、所得税だけを見れば有利に見えることがあります。しかし、住民税・社会保険料・扶養判定まで含めると結果が変わってくるため、単純に「総合課税が有利」と言い切ることはできません。

大口株主等・非上場株式の配当は選択肢が狭い

同じ上場株式の配当であっても、大口株主等が受ける配当については、一般的な上場株式配当と同じ選択ができません。

国税庁は、大口株主等が受ける上場株式等の配当等や、上場株式等以外の配当等は総合課税の対象となり、申告分離課税や確定申告不要制度を選択できないとしています。また、令和5年10月1日以後に支払われる上場株式等の配当等については、本人の保有分だけでなく、一定の同族会社を通じた保有割合も含めて3%以上となる場合には、大口株主等と同様に扱われることがあります。
出典:国税庁|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

オーナー会社、同族会社、資産管理会社、役員持株会、親族保有株式などが絡む場合には、証券口座の表示だけで判断せず、持株割合や関係法人の保有状況まで確認しておく必要があります。

NISA口座の配当・分配金は非課税だが、注意点がある

NISA口座で保有する上場株式等や投資信託から生じる配当等・分配金・譲渡益は、原則として非課税です。

金融庁は、NISAについて、株式や投資信託などの金融商品から得られる売却益・配当・分配金が非課税となる制度だと説明しています。さらに、2024年から新制度が始まり、非課税保有期間の無期限化や制度の恒久化が行われました。
出典:金融庁|NISAを知る:NISA特設ウェブサイト

国税庁も、令和6年以降のNISAについて、18歳以上の居住者等がNISA口座で取得した上場株式等の配当等や譲渡益は非課税になるとしています。ただし、上場株式等の配当等が非課税となるのは、金融商品取引業者等を経由して交付されるもの、すなわち株式数比例配分方式を選択したものに限られます。あわせて、NISA口座内の譲渡損失はないものとみなされるため、特定口座や一般口座の譲渡益・配当等との損益通算や繰越控除はできません。
出典:国税庁|No.1535 NISA制度

NISAについては、次の点を確認してください。

確認事項注意点
配当金の受取方式上場株式の配当は株式数比例配分方式でないと非課税にならない場合がある
投資信託の分配金NISA口座内で受け取る分配金か確認
NISA口座内の損失損益通算・繰越控除は不可
旧NISAの商品2024年以降の新NISAとは別枠で管理される場合がある
課税口座との混在特定口座・一般口座の損益とは分けて整理

「NISAだから、すべて申告不要」とだけ覚えておくのでは不十分です。受取方式、口座区分、損失の扱い、旧制度からの移行状況を、あわせて確認します。

住民税・国民健康保険料への影響は必ず確認する

金融所得の申告選択で、とりわけ重要になるのが、住民税と社会保険料への影響です。

以前は、所得税では総合課税や申告分離課税で申告しつつ、住民税では申告不要を選ぶという、異なる課税方式の選択が可能な時期がありました。しかし、令和6年度、すなわち令和5年分の所得税確定申告からは、所得税と個人住民税の課税方式が一致する扱いへと変わりました。

伊勢市は、令和6年度の個人住民税・令和5年分確定申告より、上場株式等の配当所得等について所得税と個人住民税の課税方式を一致させる改正が行われたと説明しています。所得税で申告不要を選択すれば個人住民税でも申告不要となり、所得税で総合課税または分離課税で申告すれば個人住民税でも同じ課税方式で申告したことになるとされています。
出典:伊勢市|上場株式等の配当所得等に係る課税方式の一致

また同ページでは、上場株式等の配当所得等や譲渡所得等を確定申告すると、個人住民税でも合計所得金額や総所得金額等に算入され、扶養控除・配偶者控除、非課税判定、国民健康保険料、後期高齢者医療保険、介護保険料、各種行政サービスに影響する場合があるとも説明されています。
出典:伊勢市|上場株式等の配当所得等に係る課税方式の一致

三次市も、令和6年度・令和5年分より所得税と市民税・県民税の課税方式が一致し、異なる課税方式を選択できなくなったとしています。そのうえで、上場株式等の配当所得等および譲渡所得を確定申告すると、市民税・県民税でも合計所得金額に算入され、扶養・配偶者控除、国民健康保険税額、介護保険料、後期高齢者医療保険料等に影響する場合があると説明しています。
出典:三次市|上場株式等の配当所得等に係る課税方式

この改正により、「所得税では申告して還付を受け、住民税では申告不要にして国保への影響を避ける」という判断は、令和6年度以降、原則として使えなくなりました。申告するかどうかは、所得税と住民税を一体で見て判断する必要があります。

申告した後に選択を変えられない点に注意する

上場株式等の配当等について、申告不要・総合課税・申告分離課税のいずれかを選択した後は、修正申告や更正の請求によって選択を変更できない場面があります。

国税庁は、上場株式等の配当等の課税関係について、確定申告でいずれかを選択した後は、修正申告や更正の請求で選択を変更できないとしています。
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

国税庁の確定申告書作成コーナーの説明でも、利子所得・配当所得について申告不要・総合課税・申告分離課税の選択をした後、修正申告や更正の請求で申告分離課税へ変更することはできないと示されています。
出典:国税庁|配当所得の課税方法

ですから、申告書作成ソフトで試算して還付額が出たとしても、そのまま提出してしまうのは危険です。次の項目を確認したうえで、選択を決めていきます。

提出前に確認すること確認理由
配当控除の対象か総合課税のメリットがあるか判断するため
譲渡損失があるか申告分離課税で損益通算するか判断するため
繰越損失があるか連続申告が必要か確認するため
住民税・国保への影響所得税だけで有利不利を判断しないため
扶養・配偶者控除への影響家族全体の税負担に影響するため
NISA口座の損益か通算・申告対象にならない場合があるため
外国税額があるか外国税額控除を検討するため
大口株主等に該当しないか選択肢が制限されるため

国外口座・外国株式・外国投資信託がある場合

外国株式の配当、外国ETF、外国投資信託、あるいは海外証券口座で受け取る配当・分配金がある場合には、国内証券口座だけのケースよりも確認事項が増えます。

日本の居住者は、原則として国内外の所得が課税の対象になります。外国で源泉徴収された税金があれば、日本の申告で外国税額控除を検討することもあります。一方で、外国証券会社の国外口座で配当等を受け取っている場合には、国内で源泉徴収されていないことがあり、国内源泉徴収を前提とした申告不要の扱いをそのまま使えないことがあります。国外上場株式の配当についても、国内支払取扱者を経由しないと、申告不要の前提が崩れる点に注意します。

なお、外国法人から受ける配当等は、配当所得に該当したとしても、配当控除の対象にはなりません。
出典:国税庁|No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

国外証券口座がある場合は、次のような資料を整理します。

資料確認する内容
外国証券会社の年間取引報告配当、分配金、売却損益
外国税額の明細外国で源泉徴収された税額
為替レート資料円換算の根拠
取引日・支払日資料収入計上日、換算日
国内証券会社経由かどうか国内源泉徴収の有無
国外財産調書・財産債務調書の要否資産残高が一定規模以上の場合の確認

国外資産がある場合、「証券会社から日本の申告用資料が来ないから申告不要」と考えてしまうのは危険です。むしろ、日本国内の資料が整っていないからこそ、取引履歴、支払日、外国税額、為替換算を、自分の手で整理しておく必要があります。

よくある誤り

「源泉徴収されているから、申告してもしなくても同じ」と考える

源泉徴収済みであっても、申告不要・総合課税・申告分離課税のどれを選ぶかで結果は変わります。配当控除、損益通算、源泉徴収税額の控除、合計所得金額への算入、住民税・国保への影響が、それぞれ異なってくるためです。

配当控除だけを見て総合課税を選ぶ

総合課税で申告すると、所得税の還付が出ることがあります。しかし、申告した所得は住民税や国民健康保険料等に影響することがあります。所得税の還付額だけで判断してはいけません。

譲渡損失があるのに、配当を申告不要にしてしまう

上場株式等の譲渡損失と配当等を通算したいのであれば、配当所得について申告分離課税を選ぶ必要があります。申告不要のままでは、通算できないことがあります。

特定口座内で自動通算済みなのに、全体の損益を確認しない

同じ証券会社の源泉徴収口座内では、自動で通算されることがあります。しかし、複数の証券会社に口座があると、口座をまたいだ損益通算は自動では行われません。確定申告で全体を整理するかどうかを確認します。

NISA口座内の損失を通算しようとする

NISA口座内の利益は非課税ですが、損失もまた、税務上なかったものとして扱われます。NISA口座の損失を特定口座や一般口座の利益と通算したり、翌年へ繰り越したりすることはできません。

公社債利子を総合課税で申告できると思っている

特定公社債等の利子等は、申告する場合でも申告分離課税です。総合課税を選ぶことはできません。配当所得と利子所得を、同じように扱わないよう注意します。

特別分配金を課税対象にしてしまう

投資信託の特別分配金、すなわち元本払戻金に相当する部分は非課税です。ただし、取得価額の管理に影響するため、将来の譲渡損益計算まで見据えて、資料を保存しておきます。

住民税の課税方式を別に選べると思っている

令和6年度以降、上場株式等の配当所得等については、所得税と個人住民税で異なる課税方式を選ぶことができなくなりました。過去の知識のまま判断してしまわないよう、注意が必要です。

申告選択の実務判断フロー

投資信託・公社債・配当所得について、申告するかどうかを判断するときは、次の順番で整理していきます。

ステップ確認事項
1収入の種類を確認する。配当所得か、利子所得か、譲渡所得等か
2口座区分を確認する。特定口座源泉徴収あり、特定口座源泉徴収なし、一般口座、NISA口座、国外口座
3分配金の内訳を確認する。普通分配金か、特別分配金か
4上場株式等の譲渡損失があるか確認する
5前年以前からの繰越損失があるか確認する
6配当控除の対象になる配当か確認する
7大口株主等や非上場株式配当に該当しないか確認する
8外国税額があるか確認する
9申告した場合の合計所得金額・総所得金額等への影響を確認する
10扶養、配偶者控除、住民税非課税、国保、介護保険、後期高齢者医療への影響を確認する
11所得税・住民税を一体で試算する
12一度選択すると変更できない前提で、申告方式を決定する

判断パターン別の整理

状況検討しやすい選択注意点
配当だけで、譲渡損失がない申告不要または総合課税配当控除と住民税・国保影響を比較
上場株式等の譲渡損失がある申告分離課税配当控除は不可。所得算入の影響を確認
前年以前の繰越損失がある確定申告連続申告と付表添付が必要
所得が低く配当控除の効果が大きい総合課税扶養・国保等への影響に注意
国民健康保険加入者申告不要を含め慎重に比較申告した所得が保険料に影響する場合あり
NISA口座内の分配金・譲渡益原則申告不要損失は通算できない。配当受取方式に注意
公社債利子・公社債投信分配申告不要または申告分離総合課税は選べない
外国株式・外国ETFの配当個別確認配当控除不可、外国税額控除、国内源泉徴収の有無を確認
大口株主等の配当原則総合課税申告不要・申告分離が使えない場合あり

相談前に整理しておきたい資料

金融所得の申告選択は、資料がそろっていれば、比較的整理しやすくなります。逆に、資料が断片的なままだと、申告不要・総合課税・申告分離のどれが妥当なのか、判断しにくくなってしまいます。

資料用途
特定口座年間取引報告書配当等、譲渡損益、源泉徴収税額の確認
上場株式配当等の支払通知書配当所得・利子所得の確認
投資信託の分配金通知書普通分配金・特別分配金の確認
取引残高報告書保有商品、NISA・課税口座の区分
一般口座の取引明細取得費、譲渡価額、譲渡損益の計算
前年以前の確定申告書控え繰越損失の有無、過去の申告方式の確認
確定申告書付表上場株式等の損益通算・繰越控除の確認
国外証券口座の年間明細外国配当、外国税額、売却損益
NISA口座の取引報告非課税口座内の取引確認
家族の所得資料扶養・配偶者控除への影響確認
国民健康保険料・介護保険料通知申告影響の検討
住民税通知書課税方式・所得反映状況の確認

確定申告の作業では、証券会社の資料をただ転記するだけでは足りません。どの所得を申告に含め、どの所得を申告不要にするのかを、自分で判断していく必要があります。

重要事項の振り返り

論点要点
投資信託の分配金普通分配金は課税対象、特別分配金・元本払戻金は非課税部分
上場株式等の配当申告不要、総合課税、申告分離課税を選べる場合がある
公社債利子原則は利子所得。特定公社債等の利子等は申告不要または申告分離
総合課税配当控除を受けられる場合があるが、合計所得金額等に含まれる
申告分離課税税率は20.315%。配当控除なし。譲渡損失との通算に使う場合がある
確定申告不要合計所得金額に含めない扱いとなる一方、源泉税の精算や配当控除は不可
譲渡損失との損益通算上場株式等の譲渡損失は申告分離課税を選んだ配当等と通算できる場合あり
繰越控除控除しきれない損失は翌年以後3年間繰越できる場合があるが、連続申告が必要
NISA利益は非課税だが、損失は通算・繰越できない
配当控除国内法人等の一定の配当で総合課税を選んだ場合に検討。外国法人配当等は対象外
大口株主等申告不要・申告分離を選べない場合がある
住民税令和6年度以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選べない
国保・介護保険等申告した金融所得が保険料や各種判定に影響する場合あり
選択変更一度選択すると修正申告・更正の請求で変更できない場合がある
相談前資料年間取引報告書、支払通知書、分配金通知書、過年度申告書、住民税・保険料通知を整理

投資信託・公社債・配当所得の申告選択に迷う方へ

投資信託、公社債、配当所得の確定申告は、単に「還付が出るかどうか」だけで判断するものではありません。

申告不要にするのか。総合課税で配当控除を受けるのか。申告分離課税で譲渡損失と通算するのか。NISA口座内の取引をどう分けるのか。外国税額控除を検討するのか。住民税や国民健康保険料にどの程度影響するのか。扶養や配偶者控除に影響しないか。

こうした点を確認しないまま申告してしまうと、所得税だけを見れば有利に思えても、家計全体では不利になってしまうことがあります。しかも、いったん選んだ申告方式を後から変更できない場面もあるため、申告前の整理がとても大切になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、投資信託・公社債・上場株式等の配当所得について、特定口座年間取引報告書や分配金通知書、譲渡損失、繰越損失、NISA、住民税・国保への影響まで確認したうえで、申告する・しないの判断を整理しています。

配当や分配金を申告すべきか迷っている方、譲渡損失との通算や繰越控除を正しく使いたい方、所得税の還付だけでなく住民税・保険料への影響まで見ておきたい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。単年の申告書作成にとどまらず、資産形成と家計全体への影響を見据えて、後からきちんと説明できる申告判断を一緒に整えてまいります。

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