資産売却の税務相談というと、まず気になるのは「いくらで売れたのか」ではないでしょうか。ただ、実務で最初に確認すべきものは、その金額だけではありません。
何を売ったのか。誰の資産なのか。いつ、どのように取得し、どう使ってきたのか。そして、誰へ、どのような条件で売るのか。こうした前提のひとつひとつによって、所得区分も、課税方式も、取得費、譲渡費用、特例、損失の扱い、さらには消費税まで変わってきます。
銀行口座に残った金額を眺めているだけでは、譲渡所得は計算できません。売却代金で住宅ローンや事業借入金を返済した結果、手元にほとんど資金が残らなかったとしても、税務上は譲渡益が生じていることがあります。逆に、売却代金そのものは大きくても、取得費や特例をていねいに確認していけば、課税所得が思いのほか小さくなる場合もあります。
資産の税務は、取得から保有・運用、譲渡、そして承継までが一本の線でつながっている領域です。売却した年の確定申告だけを切り取ってしまうと、過去の取得資料や減価償却、相続、共有、事業利用といった前提を見落としがちになります。とりわけ不動産では、維持管理や借入れ、承継、将来の処分可能性まで含めて、一体で整理しておく必要があります。
本稿でお伝えしたいのは、売却価格の交渉術や投資判断ではありません。資産売却について税理士へ相談する前に、どのような事実と資料を整理しておくとよいか、という一点に絞ってご説明します。
資産売却は「税率を調べる前」に整理すべきことがある
資産売却の相談では、どうしても税率や概算税額を先に知りたくなるものです。お気持ちはよく分かります。ただ、その前に少なくとも次の事項を固めておかないと、試算そのものの前提が定まりません。
- 売却対象となる資産
- 売主と実際の所有者
- 取得原因と取得年月日
- 取得価額
- 保有中の利用状況
- 売買契約日、引渡日、決済日
- 買主と売主との関係
- 売却価額と資産別の内訳
- 売却に直接要した費用
- 相続・贈与との関係
- 利用を検討する特例
- 売却損が生じた場合の扱い
- 所得税以外の税金
- 納税までの資金繰り
この中には、売却後から資料を探しても間に合うものもあります。しかし、買主との関係や売却時期、建物の取壊し、売却前後の利用状況、価格の設定根拠、特例に必要な届出など、契約を結んでしまった後では動かせない事実も少なくありません。
だからこそ、資産売却の税務相談は、申告期限が迫ってからではなく、売買契約を締結する前に行っていただくほうが、検討できる選択肢がずっと多くなります。
最初に「取引サマリー」を1枚作成する
いきなり大量の資料を集めにかかる前に、売却予定または売却済みの取引について、まずは1枚の概要表を作ってみてください。それだけで、相談がぐっと進めやすくなります。
取引サマリーに記載する事項
- 売却する資産の種類
- 所在地、銘柄、名称、数量等
- 所有者と共有者
- 取得年月日
- 取得原因
- 取得価額が分かるか
- 保有中の用途
- 売却先と売主との関係
- 売買契約日
- 引渡日・決済日
- 売却予定額または売却額
- 借入金残高
- 売却費用の見込額
- 相続・贈与の有無
- 検討している特例
- 現時点で不足している資料
- 売却後の資金使途
- 最も確認したい事項
分からない項目を、無理に推測で埋める必要はありません。むしろ「不明」「確認中」「資料なし」とそのまま書いていただくほうが、これから追加で確認すべき論点がはっきりします。
1.何を、どのような方法で譲渡するのか
税務上の「譲渡」は、一般的にイメージする売買だけを指すわけではありません。
土地や建物、借地権、株式、投資信託、金地金、宝石、書画、骨董、機械、車両、ゴルフ会員権、特許権なども、譲渡所得の対象となり得ます。さらに、交換や競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人への現物出資といった取引も、税務上は譲渡に含まれることがあります。
ですから、相談の際には「売却した」とだけお伝えいただくのではなく、どのような原因で資産が移転したのかまで、あわせてご説明ください。
資産ごとに課税方式が異なる
主な資産について、課税方式は次のように分かれます。
| 売却した資産 | 主に確認する課税関係 |
|---|---|
| 土地・建物・借地権 | 分離課税の譲渡所得 |
| 上場株式・投資信託等 | 株式等に係る申告分離課税 |
| 非上場株式 | 一般株式等に係る申告分離課税、時価、みなし配当 |
| 金地金・宝石・会員権等 | 原則として総合課税の譲渡所得。資産の性質による例外あり |
| 事業用機械・車両・備品 | 譲渡所得、事業所得等との関係、消費税 |
| 棚卸資産・販売目的の資産 | 事業所得等 |
| 国外不動産・国外株式 | 日本と現地国双方の税務、外国税額控除 |
| 暗号資産・NFT等 | 譲渡所得や株式等とは異なる取扱いを別途確認 |
同じ「売って利益が出た」という取引であっても、資産の種類によって、税率も、損失の通算範囲も、使う申告書も、添付する資料も変わってきます。
出典:国税庁|No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
出典:国税庁|No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
2.誰の資産を、誰が売るのか
売買契約書の売主、登記名義人、証券口座の名義人、そして代金の受取人。これらがすべて一致しているとは限りません。
家族名義の資産、共有不動産、相続登記前の不動産、名義変更前の株式などでは、譲渡所得が誰に帰属するのかを、まず最初に整理しておく必要があります。
不動産で確認する事項
- 登記上の所有者
- 真実の所有者
- 共有者と共有持分
- 取得資金を負担した人
- 賃料等を受け取っていた人
- 固定資産税や修繕費を負担していた人
- 売却代金の分配方法
- 相続登記の状況
- 売却について共有者全員の合意があるか
共有不動産を売却するとき、代表者の口座に売却代金がまとめて入金されたとしても、その全額が代表者の譲渡所得になるわけではありません。原則として、各共有者の権利関係に応じて、収入も取得費も譲渡費用も分けて整理していきます。
株式で確認する事項
- 証券口座の名義人
- 株主名簿上の株主
- 実際の取得資金の負担者
- 相続・贈与による取得の有無
- 従業員持株会や役員持株会からの移管
- 家族名義口座を利用していないか
- 非上場株式について名義書換が完了しているか
名義と実態が食い違っている場合、影響は売却した年だけにとどまりません。過去の贈与税や相続税、配当所得等にまで及ぶことがあります。相談の際には、売却代金が誰のものかという点だけでなく、取得したときからの資金の流れを説明できる資料をご用意ください。
3.いつ譲渡したのかを時系列で整理する
資産を売却した「年」は、代金が入金された年だけで決まるとは限りません。
土地や建物については、原則として買主へ引き渡した日が譲渡日となります。ただし、売買契約の効力が発生した日を譲渡日として申告することも認められています。
そのため、年末に契約を結び、翌年に引渡し・決済を行うような取引では、どの年分の申告になるのかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
時系列表に記載する日付
- 売却方針を決定した日
- 媒介契約を締結した日
- 売買契約日
- 手付金受領日
- 条件成就日
- 引渡日
- 所有権移転登記日
- 残代金決済日
- 建物取壊し日
- 入居・退去日
- 賃貸終了日
- 海外送金日
- 株式の約定日・受渡日
土地・建物の長期譲渡所得と短期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判定します。相続や贈与で取得した土地・建物については、原則として、被相続人や贈与者の取得時期をそのまま引き継ぎます。
出典:国税庁|No.3102 譲渡所得の申告期限
出典:国税庁|No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
出典:国税庁|No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
4.売却代金は「手取り額」ではなく総額から確認する
売却代金を確認するときは、銀行口座に振り込まれた金額ではなく、契約上の譲渡対価の全体を見ていきます。
不動産の売却では、次のような金額が差し引かれたうえで入金されることがあります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- 司法書士報酬
- 測量費
- 解体費
- 借入金返済額
- 繰上返済手数料
- 固定資産税等の精算金
- 管理費・修繕積立金の精算金
- 手付金
- 滞納金
- 源泉徴収税額
これらを差し引いた後の振込額だけを見ていても、売却代金と費用の区分は分かりません。
売却代金について準備する資料
- 売買契約書
- 変更契約書
- 覚書
- 重要事項説明書
- 媒介契約書
- 売買代金精算書
- 決済明細
- 預金通帳
- 振込明細
- 手付金の受領証
- 固定資産税等の精算書
- 借入金返済明細
- 外貨建て取引の送金資料
土地と建物を一括して売却する場合には、売却代金を土地部分と建物部分に合理的に区分しておく必要があります。この区分は、建物の減価償却や、事業用建物にかかる消費税にも影響してきます。
出典:国税庁|No.6301 課税標準―土地と建物を一括して譲渡した場合
5.取得費の資料は最優先で探す
譲渡所得の基本的な計算は、次の形になります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除額
このうち、申告の段になって最も資料不足が起きやすいのが取得費です。
不動産の取得費資料
不動産については、次の資料を探していきます。
- 購入時の売買契約書
- 建築請負契約書
- 購入代金の精算書
- 仲介手数料の領収書
- 登録免許税・司法書士報酬の明細
- 不動産取得税の通知書
- 測量費、造成費
- 改良工事、増築工事の資料
- 設備工事の見積書・請求書
- 購入時の銀行振込記録
- 借入契約書
- 固定資産台帳
- 過年度の確定申告書
- 青色申告決算書
- 減価償却費の計算明細
建物については、購入代金や建築代金をそのまま取得費にするわけではありません。所有していた期間の減価償却費相当額を差し引いて計算します。自宅など、事業に使っていなかった建物であっても、一定の方法による減価償却費相当額を控除します。
典:国税庁|No.3252 取得費となるもの
出典:国税庁|No.3261 建物の取得費の計算
相続・贈与で取得した資産
相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費は、原則として相続税評価額や贈与税評価額ではありません。被相続人や贈与者が取得したときの購入代金等を、そのまま引き継ぎます。
したがって、相続した不動産を売却する場合には、ご自身の相続関係資料だけでなく、被相続人の取得資料までさかのぼって探す必要があります。
- 被相続人の売買契約書
- 建築請負契約書
- 被相続人の過年度申告書
- 被相続人の固定資産台帳
- 遺産分割協議書
- 遺言書
- 相続税申告書
- 相続登記費用の資料
- 相続時の不動産取得税資料
- 相続前後の増改築資料
「相続税申告書に載っている評価額をそのまま取得費にすればよい」と考えてしまうと、譲渡所得を誤るおそれがあります。
出典:国税庁|No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
取得費が分からない場合
土地・建物の取得費が分からないときは、売却価額の5%を概算取得費とすることができます。
ただし、この5%の概算取得費は、資料を探さずに最初から選ぶための制度ではありません。たとえば3,000万円で売却した不動産の取得費を5%とすると、取得費は150万円にとどまり、売却価額の大部分が譲渡益計算の対象になってしまいます。
古い資産の場合、契約書が見当たらなくても、次のような資料から取得費を検討できることがあります。
- 購入時の預金通帳
- 借入金契約書
- 抵当権設定資料
- 建築確認関係資料
- 登記資料
- 施工会社の記録
- 過年度の申告書
- 相続人が保管する書類
- 株主名簿、株式異動証明書
- 証券会社の取引履歴
取得費の裏付けが弱いときは、採用した金額そのものだけでなく、どのような調査を行い、なぜその金額を合理的と判断したのかまで記録に残しておくことが大切です。
出典:国税庁|No.3258 取得費が分からないとき
6.株式等の取得費は口座資料だけで完結しないことがある
上場株式等では、特定口座年間取引報告書に取得費が反映されていることがあります。ただし、次のような取引がある場合には、別途の確認が欠かせません。
- 一般口座から特定口座への移管
- 相続・贈与による取得
- 従業員持株会からの移管
- 複数回の取得
- 株式分割・株式併合
- 合併、会社分割、株式交換
- 新株予約権の行使
- 外国株式の取得
- 非上場株式から上場株式への変更
- 過去の証券会社の廃業・統合
- 家族から取得した株式
- 発行会社による自己株式取得
同じ銘柄を複数回にわたって取得し、その一部を売却する場合は、原則として総平均法に準ずる方法によって取得費を計算します。
株式売却の相談に必要な資料
- 特定口座年間取引報告書
- 売買報告書
- 取引残高報告書
- 一般口座の取引履歴
- 配当金計算書
- 株式取得時の払込資料
- 持株会の精算資料
- 相続税申告書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の証券資料
- 株式分割・合併等の通知
- 非上場会社の株主名簿
- 株式譲渡契約書
- 株価算定資料
- 過年度の確定申告書
- 繰越損失の明細書
出典:国税庁|No.1464 譲渡した株式等の取得費
出典:国税庁|No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費
7.譲渡費用と、単なる資金流出を分ける
資産を売却する際に支払った金額が、すべて譲渡費用になるわけではありません。
譲渡費用となるのは、原則として、その資産を売るために直接要した費用です。
不動産の主な譲渡費用
- 売却のための仲介手数料
- 売主が負担した売買契約書の印紙税
- 売却のための測量費
- 売却のために支払った立退料
- 土地を売るために行った建物取壊し費用
- 借地権を売るための名義書換料
- より有利な売却のため、既存契約を解除して支払った一定の違約金
一方で、次のような支出は、支払ったという理由だけでは譲渡費用になりません。
- 住宅ローンや事業借入金の元本返済
- 抵当権設定後の通常の利息
- 固定資産税
- 通常の修繕費
- 管理費
- 売却までの水道光熱費
- 引越費用
- 家財処分費
- 売却代金の取立費用
- 私生活上の支出
家財処分費や修繕費などは、具体的な契約条件や支出の目的によって、扱いを検討する必要があります。請求書に書かれた名称だけで判断するのではなく、「その支出がなければ売却できなかったのか」「売却のために直接行ったものなのか」という視点で確認していきます。
出典:国税庁|No.3255 譲渡費用となるもの
8.特例は売却後ではなく売却前から要件を確認する
資産売却に関する特例は、申告書に制度名を書き込めば適用できる、というものではありません。
所有関係、利用実態、売却期限、買主との関係、取壊しの時期、他の特例との併用関係、添付資料など、確認すべき要件が数多くあります。
マイホームの3,000万円特別控除
自宅を売却した場合、一定の要件を満たせば、所有期間にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円を控除できることがあります。
ただし、その前に次のような事実を確認しなければなりません。
- 実際に主たる居住用として使用していたか
- 入居・退去の年月日
- 一時的な入居ではないか
- 別荘ではないか
- 以前住んでいた家である場合、売却期限内か
- 取壊し後に駐車場等として使用していないか
- 買主が親族や特殊な関係の法人ではないか
- 過去に同種の特例を利用していないか
- 住宅ローン控除等との併用関係に問題がないか
この特例は、結果として税額が発生しない場合であっても、原則として確定申告が必要です。
出典:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
相続した空き家の特別控除
被相続人が居住していた一定の空き家を相続し、一定期間内に売却した場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
2026年6月26日現在、この特例の対象となる譲渡期間は2027年12月31日までです。2024年1月1日以後の譲渡で、対象家屋等を取得した相続人が3人以上である場合には、控除限度額は1人当たり2,000万円となります。
主な確認事項は、次のとおりです。
- 1981年5月31日以前に建築された家屋か
- 区分所有建物ではないか
- 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったか
- 老人ホーム入所中であった場合の要件を満たすか
- 相続後に賃貸、事業、居住の用に供していないか
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の年末までに売却するか
- 売却代金の合計額が1億円以下か
- 親族等への売却ではないか
- 市区町村の確認書を取得できるか
- 耐震改修や取壊しの要件を満たすか
2024年1月1日以後の譲渡では、売却後、翌年2月15日までに買主側等で一定の耐震改修または取壊しが完了した場合にも、要件を満たす可能性があります。
なお、同じ資産について、空き家特例と相続税の取得費加算の特例を同時に適用することはできません。どちらが有利になるかは、相続税額、取得費、売却益、各相続人の持分などをもとに比較していきます。
出典:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
相続財産の取得費加算
相続または遺贈で取得した土地、建物、株式等を一定期間内に譲渡した場合には、納付した相続税額の一部を取得費に加算できることがあります。
主な要件は、次のとおりです。
- 相続または遺贈により財産を取得したこと
- その取得者に相続税が課税されていること
- 相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
- 譲渡所得として申告すること
- 所定の計算明細書を添付すること
この制度は、「相続税評価額を取得費にする制度」ではありません。被相続人から引き継いだ取得費に、計算した相続税額の一部を加算する制度です。
出典:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
その他の特例
売却する資産や目的によっては、次のような特例が関係してくることがあります。
- マイホームの軽減税率
- 居住用財産の買換え
- 居住用財産の譲渡損失
- 低未利用土地等の特別控除
- 収用等の特別控除
- 特定事業用資産の買換え
- 農地等の譲渡特例
- 保証債務を履行するための資産譲渡
- 公益法人等への寄附に関する特例
これらは、適用期限や対象資産、売却先、代替資産、証明書などの要件が細かく定められています。売却した後になって特例名を探すよりも、契約前に適用候補を洗い出しておくほうが、はるかに安全です。
出典:国税庁|No.3223 譲渡所得の特別控除の種類
9.親族・自社・関連会社への売却は時価資料を残す
第三者間の通常の売買であれば、合意した売却価額が市場価格を反映していることが多いでしょう。
一方で、次のような取引では、価格の妥当性そのものが重要な税務論点になります。
- 親子間の不動産売買
- 兄弟姉妹間の共有持分売買
- 個人から自分の会社への売却
- 会社から役員・株主への売却
- 同族会社間の売却
- 非上場株式の親族間売買
- 債務引受けを伴う売却
- 共有物分割に伴う代償金
- 持分放棄
- 現物出資
法人へ低額で売却する場合
個人が土地や建物を法人へ、時価の2分の1未満で売却した場合には、実際の売却価額ではなく、時価を収入金額として譲渡所得を計算する取扱いがあります。
ただし、売却価額が時価の2分の1以上であれば常に問題がない、という意味ではありません。取引の目的、当事者の関係、価格決定の過程、法人側の受贈益、株主への利益移転などを含めて検討する必要があります。
個人間の低額譲渡
個人から個人へ、著しく低い価額で財産を譲渡した場合には、買主側に、時価と支払対価との差額について贈与税が課されることがあります。
個人間における「著しく低い価額」の判定は、法人への低額譲渡で用いる2分の1基準とは異なり、個々の事情に基づいて判断されます。
出典:国税庁|No.3217 時価より低い価額で売ったとき
出典:国税庁|No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
相談時に準備する時価資料
- 不動産鑑定評価書
- 不動産会社の査定書
- 複数社の買取提案
- 近隣の成約事例
- 路線価資料
- 固定資産税評価証明書
- 収益還元計算
- 賃貸借契約書
- 借地権・底地等の権利資料
- 修繕・瑕疵・越境等の資料
- 非上場会社の決算書
- 株主名簿
- 株価算定書
- 事業計画
- 取締役会・株主総会議事録
- 価格決定過程を記載したメモ
相続税評価額や固定資産税評価額を、そのまま売買時価として使えるとは限りません。価格を決める前に、「どの評価目的で、どの基準日に、どの権利関係を前提として算定した価格なのか」を確認しておきます。
親族間や同族関係者間の売買では、不動産や非上場株式の時価と、その価格を採用した根拠を、資料として残しておくことが重要です。
10.上場株式は口座区分と申告選択を整理する
上場株式等を売却した場合には、銘柄ごとの損益だけでなく、どの口座で保有していたかを確認します。
口座ごとに確認する事項
- 特定口座・源泉徴収あり
- 特定口座・源泉徴収なし
- 一般口座
- NISA口座
- 外国証券会社の口座
- 従業員持株会口座
- 複数の証券会社
- 相続した証券口座
源泉徴収ありの特定口座内で生じた利益は、申告不要とできる場合があります。ただし、他の口座の損失との通算、配当等との損益通算、過年度からの繰越損失の利用を検討する場合には、確定申告の要否とその影響を比較しておく必要があります。
上場株式等の譲渡損失は、一定の上場株式等の配当所得等と通算できる場合があります。通算しきれなかった損失は、確定申告を続けることで、翌年以後3年間にわたって繰り越せることがあります。
一方、一般株式等と上場株式等は別の区分であり、原則として、相互に損失を通算することはできません。
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
出典:国税庁|No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度
NISAの損失は通算できない
NISA口座内の譲渡益は非課税となる一方で、NISA口座内で生じた損失は、税務上ないものとみなされます。
そのため、特定口座や一般口座の利益、上場株式等の配当等との損益通算はできませんし、翌年以後への繰越控除も認められません。
出典:国税庁|No.1535 NISA制度
11.非上場株式は売却先と取引形態を確認する
非上場株式の売却では、売却価額だけでなく、次の点を確認していきます。
- 売却先が個人か法人か
- 売却先が発行会社か第三者か
- 売主と買主の同族関係
- 株式の取得経緯
- 株主間契約
- 譲渡制限
- 会社の承認手続
- 株価の算定方法
- 相続税評価との違い
- みなし配当の有無
- 相続税の取得費加算
- 事業承継税制の適用状況
- 過去の組織再編や増減資
発行会社へ売却する場合
非上場株式をその発行会社へ売却すると、受取額の一部がみなし配当となり、残りが株式譲渡の対価となる場合があります。
相続によって取得した一定の非上場株式を、一定期間内に発行会社へ売却する場合には、みなし配当課税を適用せず、対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例を利用できることがあります。
この特例を利用するには、株式を発行会社へ譲渡する日までに、所定の届出書を発行会社へ提出しておく必要があります。 売却した後になって相談しても、この期限を取り戻せない可能性があります。
出典:国税庁|No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合
出典:国税庁|No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例
12.売却損が出ても、給与等と相殺できるとは限らない
資産を損失で売却した場合であっても、その損失を他の所得から自由に差し引けるわけではありません。
土地・建物の譲渡損失
土地・建物の譲渡損失は、原則として、他の土地・建物の譲渡益とは通算できます。しかし、通算しきれなかった損失を、給与所得や事業所得から差し引くことはできません。
一定の居住用財産の譲渡損失については、要件を満たす場合に限り、他の所得との損益通算や、翌年以後への繰越控除が認められることがあります。
株式等の譲渡損失
上場株式等の損失には一定の通算・繰越制度がありますが、一般株式等の損失、相対取引による損失、NISA口座内の損失などには制限があります。
生活用資産・会員権等
資産の種類によっては、損失が生じても、他の所得と損益通算できない場合があります。売却益だけでなく、損失が出た場合の取扱いも、売却前の試算に含めておく必要があります。
出典:国税庁|No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
出典:国税庁|No.2250 損益通算
13.事業用資産の売却は消費税も確認する
個人事業者や不動産オーナーが資産を売却する場合には、所得税と消費税を、それぞれ別に確認します。
課税事業者が事業用の建物、機械、車両、備品等を売却した場合、その売却は、事業に付随して行われる資産の譲渡として、消費税の課税対象となることがあります。
一方、土地や借地権の譲渡は、消費税の非課税取引です。
土地・建物を一括売却する場合
事業用の土地・建物を一括して売却する場合には、土地部分は非課税、建物部分は課税となります。そのため、売却価額を合理的に区分しておく必要があります。
契約書に土地と建物の金額を記載していたとしても、その区分が実態に照らして合理的といえるかを確認します。
事業・家事兼用資産
事業用と家事用の両方に使用していた建物や車両等については、利用の実態に応じた区分を検討します。
そのために、次の資料を準備します。
- 固定資産台帳
- 減価償却費明細
- 購入時の請求書
- 売買契約書
- 事業使用割合の記録
- 消費税申告書
- 課税事業者関係の届出書
- 簡易課税制度の届出書
- インボイス登録通知書
- 土地・建物の価額区分資料
一時的な資産売却であっても、その金額が課税売上高に含まれることで、その年の消費税額や、その後の納税義務の判定などに影響する可能性があります。
出典:国税庁|No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税
出典:国税庁|No.6931 消費税等と譲渡所得
出典:国税庁|事業用及び家事用の両方に使用している資産を売却した場合
14.国外資産・非居住者が関係する場合
国外資産の売却では、日本の確定申告だけでなく、資産の所在地国や売却先国の申告、源泉徴収、租税条約、外国税額控除まで確認します。
日本居住者が国外不動産を売却する場合
日本の居住者は、原則として、国外不動産の売却益についても日本で課税対象となります。
現地国でも所得税等が課される場合には、二重課税を調整するために、外国税額控除を利用できることがあります。
相談の際には、次の資料を準備します。
- 外国の売買契約書
- 現地の決済明細
- 取得時の契約書
- 現地の税務申告書
- 納税証明書
- 源泉徴収証明書
- 仲介手数料・弁護士費用等の資料
- 外貨の入出金明細
- 取得日・売却日の為替資料
- 日本への送金資料
- 日本語訳
- 現地専門家とのメール
外貨建ての不動産売却では、売却価額、取得費、譲渡費用を、それぞれ円換算する必要があります。売却代金を日本へ送金した日の為替レートで、全額をまとめて換算するとは限りません。
出典:国税庁|No.3560 居住者が海外の不動産を売却した場合の課税関係等
出典:国税庁|No.1240 居住者に係る外国税額控除
日本居住者が国外株式を売却する場合
国外株式の売却益も、日本の居住者については、原則として日本の課税対象です。
外国で税金が課された場合であっても、そのすべてが当然に日本の外国税額控除の対象となるわけではありません。租税条約上、そもそも外国側に課税権があるのか、外国所得税に該当するのか、控除限度額はいくらか、といった点を確認します。
出典:国税庁|No.1937 居住者が海外で株式等を売却した場合の課税関係等
非居住者が日本の不動産を売却する場合
売主が日本の非居住者で、日本国内にある土地や建物を売却する場合には、買主は原則として、売却代金の10.21%を源泉徴収する必要があります。
ただし、譲渡対価が1億円以下で、買主である個人が自己または親族の居住用に取得する場合などには、源泉徴収が不要となることがあります。
売主にとって、この源泉徴収額は最終的な税額とは限りません。確定申告によって譲渡所得を計算し、精算していくことになります。
出典:国税庁|No.1932 海外勤務中に不動産を売却した場合
出典:国税庁|No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき
出国前後に有価証券等を売却する場合
一定の居住者が、1億円以上の有価証券等を保有したまま国外へ転出する場合には、実際に売却していなくても、国外転出時課税の対象となることがあります。
出国、海外赴任、移住、あるいは非居住者への贈与・相続が予定されている場合には、通常の売却相談とは別に、居住者区分、国外転出時課税、納税管理人、納税猶予などを早めに確認しておきます。
出典:国税庁|No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
15.売却代金から納税資金を先に分ける
資産売却では、「売却代金が入ってから税額を考える」という進め方は避けたいところです。
不動産売却では、次のような支払が、売却代金から先に差し引かれることがあります。
- 借入金元本
- 繰上返済手数料
- 仲介手数料
- 測量・解体費
- 登記費用
- 共有者への分配
- 相続人間の清算
- 現地国の源泉税
- その他の債務
これらを支払った後であっても、所得税・復興特別所得税、住民税、消費税等の納付が残ることがあります。
相談時に作成したい資金繰り表
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却代金総額 | |
| 借入金返済額 | |
| 仲介・測量・解体等 | |
| 共有者等への分配 | |
| 源泉徴収税額 | |
| 所得税等の概算 | |
| 住民税等の概算 | |
| 消費税の概算 | |
| 手元に残る見込額 |
分割払いや割賦、あるいは代金の一部が未収となっている場合には、売却代金を全額回収するより前に、申告・納税期限を迎えてしまう可能性があります。
売却代金を、再投資や住宅購入、借入返済、家族への分配などに使う前に、納税予定額をあらかじめ別口座へ確保しておくことが、実務上は有効です。
16.資産別の相談資料チェックリスト
すべての資産に共通する資料
- 本人確認資料
- 売買契約書
- 変更契約書、覚書
- 売却代金の入金資料
- 取得時の契約書
- 取得代金の支払資料
- 売却費用の請求書・領収書
- 過年度の確定申告書
- 売主・買主との関係が分かる資料
- 取引の時系列表
- 採用したい特例の候補
- 納税資金の見込表
不動産売却
- 登記事項証明書
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 購入時の精算書
- 建築請負契約書
- 固定資産税評価証明書
- 固定資産税納税通知書
- 仲介手数料
- 測量資料
- 解体資料
- 増改築資料
- 減価償却明細
- 借入金返済表
- 居住履歴
- 賃貸借契約書
- 共有関係資料
- 不動産査定書、鑑定評価書
相続した資産
- 戸籍・相続人関係図
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続税申告書
- 相続税納税資料
- 被相続人の取得資料
- 被相続人の過年度申告書
- 相続登記資料
- 空き家の利用状況資料
- 市区町村の確認書関係資料
- 各相続人の売却状況
上場株式・投資信託
- 特定口座年間取引報告書
- 一般口座の取引履歴
- NISA口座資料
- 配当金計算書
- 複数証券会社の年間資料
- 過年度の損失申告書
- 相続・贈与資料
- 外国税の資料
- 株式分割・合併等の通知
非上場株式
- 株式譲渡契約書
- 株主名簿
- 定款
- 株式取得資料
- 増資・減資資料
- 過去の組織再編資料
- 直近数年分の決算書
- 法人税申告書
- 株価算定書
- 株主間契約
- 譲渡承認決議
- 自己株式取得に関する資料
- 相続税申告書
- 発行会社への届出書案
事業用資産
- 固定資産台帳
- 減価償却明細
- 取得時の請求書
- 事業供用日
- 事業使用割合
- 消費税申告書
- 課税事業者・簡易課税関係届出書
- インボイス登録資料
- 廃業・法人成り関係資料
国外資産
- 外国語の契約書
- 日本語訳
- 現地税務申告書
- 現地納税証明書
- 源泉徴収証明書
- 外貨入出金資料
- 為替換算資料
- 送金資料
- 居住者・非居住者判定資料
- 租税条約関係書類
- 国外財産調書
- 財産債務調書
17.資料が不足していても、事実関係は先に整理する
すべての資料がそろうまで、相談を先延ばしにする必要はありません。
大切なのは、何があり、何がなく、何をこれから確認する必要があるのかを、一覧にしておくことです。
相談の際には、次のように区分すると整理しやすくなります。
確認済み
- 売買契約書がある
- 取得年月日が分かる
- 共有持分が分かる
- 売却先が決まっている
未確認
- 取得時の仲介手数料
- 増改築費用
- 被相続人の取得価額
- 株式分割前の取得単価
- 過去の特例利用状況
資料なし
- 古い売買契約書
- 建築請負契約書
- 一般口座の取引履歴
今後決める事項
- 契約時期
- 引渡時期
- 建物の取壊し
- 売却先
- 土地・建物の価額区分
- 納税資金の確保方法
「資料なし」と「取得費なし」は、同じではありません。資料が見当たらない場合でも、調査の方法、代替となる資料、合理的な推計の可能性を検討していきます。
18.売却前に相談した方がよいケース
次のいずれかに該当する場合には、売買契約や資産移転の前に税務相談を行っておく意義が、より大きくなります。
- 相続した不動産を売却する
- 被相続人の取得資料が見つからない
- 空き家特例を検討している
- 自宅を取り壊して土地を売る
- 以前住んでいた住宅を売る
- 店舗併用住宅を売る
- 共有不動産を売る
- 親族へ売る
- 自分の会社へ売る
- 非上場株式を発行会社へ売る
- 非上場株式の時価が分からない
- 事業用建物・設備を売る
- 課税事業者またはインボイス登録事業者である
- 売却損を他の所得と通算したい
- 外国の不動産・株式を売る
- 海外転出を予定している
- 売主が非居住者である
- 分割払いや未収代金がある
- 売却代金の大半を借入返済に充てる
- 過年度の減価償却処理に不安がある
- 過去の申告内容と現在の所有関係が一致しない
すでに売却済みであっても、契約書、取得資料、費用資料、特例要件を早めに整理しておけば、申告期限の直前に慌てて判断する事態を避けられます。
資産売却で生じやすい誤解
「売却代金から借入金を返したので利益はない」
借入金の元本返済は、通常、取得費でも譲渡費用でもありません。手元に残った資金が少なくても、譲渡益が生じていることがあります。
「相続税評価額が取得費になる」
原則として、被相続人の取得費を引き継ぎます。相続税評価額を、そのまま取得費にするものではありません。
「契約書がないので、すぐ5%の概算取得費を使う」
概算取得費は利用できます。ただしその前に、通帳、借入資料、登記、過年度申告書、施工資料などを確認する余地があります。
「売却時に支払ったものはすべて譲渡費用になる」
譲渡費用は、原則として、売却に直接要した費用です。借入金返済、固定資産税、通常の修繕費などは、別に整理します。
「赤字なら給与所得と相殺できる」
土地・建物、株式、生活用資産などでは、損失の通算範囲に制限があります。
「特例を使えば税金がゼロなので申告不要」
マイホームの3,000万円特別控除などは、税額がゼロになる場合であっても、適用を受けるためには確定申告が必要です。
「NISAで損が出たので、特定口座の利益と相殺できる」
NISA口座内の損失は税務上ないものとみなされ、損益通算も繰越控除もできません。
「親族間なら当事者が納得した価格でよい」
税務上は、時価との差額について、売主・買主の双方に課税関係が生じることがあります。価格決定の根拠となる資料が必要です。
資産売却の税務判断について相談したい方へ
資産売却の税務は、売却額を申告書に入力するだけの作業ではありません。
取得資料、利用実態、所有関係、売却時期、買主との関係、特例、時価、消費税、国外課税、納税資金。これらを結び付けて、はじめて申告の内容を判断できます。
とりわけ、相続した資産、取得費が不明な資産、共有不動産、非上場株式、関連当事者間の取引、事業用資産、国外資産については、売却前の確認が、その後の選択肢と説明可能性を大きく左右します。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、見せたい税額に数字を合わせるのではなく、契約、権利関係、取引の経緯、取得資料、資金の流れを確認したうえで、税務署や将来のご自身に説明できる形へ整理することを大切にしています。
売却前の概算整理、取得費や譲渡費用の確認、特例の比較、親族・自社との取引、相続財産や非上場株式の売却について整理したい場合は、当事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
※本稿は2026年6月26日現在の公表情報を基礎とした一般的な解説です。実際の課税関係は、対象年分の法令、資産の種類、取得経緯、契約内容、所有関係、利用実態、居住者区分、提出済みの届出書等によって異なります。時限措置や適用期限、金融・証券税制などは税制改正により変更されることがあるため、実際の売却年における制度をご確認ください。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱
重要事項の振り返り
| 整理する論点 | 相談前に確認する事項 | 主な資料 | 結論が変わる理由 |
|---|---|---|---|
| 資産の種類 | 不動産、上場株式、非上場株式、事業用資産、国外資産等 | 資産一覧、契約書、口座資料 | 所得区分・課税方式が異なる |
| 所有者 | 名義、実質所有者、共有持分、相続状況 | 登記、株主名簿、遺産分割協議書 | 誰が申告するかが変わる |
| 譲渡方法 | 売買、交換、代物弁済、現物出資、財産分与等 | 契約書、合意書 | 売買以外でも譲渡課税が生じ得る |
| 譲渡時期 | 契約日、引渡日、決済日、登記日 | 売買契約書、決済資料 | 申告年・所有期間判定が変わる |
| 譲渡価額 | 総額、土地建物区分、精算金、未収金 | 契約書、精算書、通帳 | 手取り額だけでは収入金額を判断できない |
| 取得費 | 購入代金、取得時費用、増改築、減価償却 | 購入契約、請求書、固定資産台帳 | 譲渡益の金額に直接影響する |
| 取得費不明 | 代替資料、調査経緯、概算取得費 | 通帳、借入資料、登記、過年度申告 | 5%概算取得費を使う前に検討余地がある |
| 相続・贈与 | 被相続人等の取得費、取得時期、相続税 | 相続税申告書、被相続人の取得資料 | 相続税評価額が取得費とは限らない |
| 譲渡費用 | 売却に直接要したか | 仲介、測量、解体等の請求書 | 資金流出すべてが控除対象ではない |
| 居住用特例 | 居住実態、退去・取壊し、買主との関係 | 住民票、契約、登記、利用資料 | 3,000万円控除等の適用可否が変わる |
| 相続空き家 | 建築時期、相続後利用、売却期限、価格 | 市区町村確認書、相続・登記資料 | 要件と期限が細かく、他特例との併用制限がある |
| 取得費加算 | 相続税額、売却期限、譲渡所得該当性 | 相続税申告書、計算明細 | 相続税の一部を取得費へ加算できる場合がある |
| 関連当事者取引 | 親族・法人との関係、価格根拠 | 査定、鑑定、株価算定、議事録 | みなし譲渡・みなし贈与等が生じ得る |
| 上場株式 | 口座区分、複数口座、配当、繰越損失 | 年間取引報告書、過年度申告書 | 申告不要・通算・繰越の選択が変わる |
| NISA | NISA口座内の損益 | NISA取引報告書 | 損失は通算・繰越できない |
| 非上場株式 | 時価、取得経緯、売却先、自己株式取得 | 株主名簿、決算書、株価算定書 | みなし配当・譲渡所得・届出期限が関係する |
| 売却損 | 資産区分、他の利益、特例要件 | 損益計算資料、過年度申告書 | 他所得との通算には制限がある |
| 消費税 | 課税事業者、事業利用、土地建物区分 | 消費税申告書、固定資産台帳 | 事業用建物・設備の売却は課税対象となり得る |
| 国外資産 | 居住者区分、現地税、為替、租税条約 | 現地申告書、納税証明、送金資料 | 日本と現地国双方の申告・外国税額控除が関係する |
| 納税資金 | 借入返済後の手元資金、税金の支払時期 | 資金繰り表、返済明細 | 手元資金と税務上の譲渡益は一致しない |
| 将来への影響 | 翌年の住民税、消費税、再投資、承継 | 売却後資金計画 | 売却年だけでなく翌年以降の負担へ波及する |